説明

圧縮機駆動装置

【課題】空調負荷に応じた回転数で圧縮機を駆動することができる圧縮機駆動装置を提供すること。
【解決手段】空調負荷が要求する圧縮機10の要求回転数Ncがエンジン150のアイドリング回転数Nidleを下回ったときには、発電機154のみで圧縮機10を駆動するモータ駆動モードに切替える。一方、要求回転数Ncがエンジン150のアイドリング回転数Nidleを上回ったときには、エンジン150のみで圧縮機10を駆動するエンジン駆動モードに切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを構成する圧縮機を駆動するための圧縮機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として例えば特許文献1に記載されているものが公知である。これは、エンジンを用いて圧縮機を回転駆動し、冷凍サイクルの空調負荷に応じた圧縮機回転数となるようにエンジン回転数を調整するものである。エンジン回転数はある一定の回転数範囲内で動作するものであるから、この回転数範囲内でエンジン回転数を変更することで空調負荷の変動に応じている。
【0003】
ところで、冷凍サイクルの空調負荷に対応する圧縮機回転数がエンジンアイドリング回転数以下となる場合には、エンジン回転数を空調負荷に応じた回転数とすることができないため、エンジンの作動・停止を繰り返し行うことで要求される空調負荷に応じている。
【特許文献1】特開2005−140373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような上記従来装置では、低負荷状態が持続するような場合には、エンジン始動を繰り返すため、エンジン始動用スタータが疲労しやすい。また、冷凍サイクルが断続的に動作するため、空調感覚に違和感を覚え易いという不具合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷凍サイクルの負荷に応じた回転数で圧縮機を駆動することができる圧縮機駆動装置を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、エンジンとモータとが直結している簡単な構成においても、エンジンによる圧縮機駆動と、モータによる圧縮機駆動とを選択可能にすることにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、エンジンとモータとが直結している構成においても、モータによって圧縮機を駆動するときの電力消費を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、冷凍サイクルを構成する圧縮機をエンジンと回転電機とで駆動するための圧縮機駆動装置であって、冷凍サイクルの負荷に対応する圧縮機の要求回転数に応じて駆動モードを決定する制御手段を備え、制御手段は、要求回転数がエンジンのアイドリング回転数を下回ったときには、回転電機のみで圧縮機を駆動するモータ駆動モードに切替える一方、要求回転数がエンジンのアイドリング回転数を上回ったときには、エンジンのみで圧縮機を駆動するエンジン駆動モードに切替えることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、アイドリング回転数で圧縮機を駆動しても空調能力が過多となるときには、モータ駆動モードに切替えて回転電機により圧縮機が駆動される。一方、アイドリング回転数以上の回転数で圧縮機を駆動するときには、エンジン駆動モードに切替えてエンジンにより圧縮機が駆動される。
【0010】
これにより、負荷に対応した適切な回転数で継続的に圧縮機を駆動することができるため、冷凍サイクルを継続的に作動させて空調感覚を向上させることができる。
【0011】
請求項2の発明では、モータ駆動モードに切替えられたときには、回転電機を始動した後にエンジンを停止することを特徴としている。
【0012】
また、請求項4の発明では、エンジン駆動モードに切替えられたときには、エンジンを始動した後に回転電機を停止させることを特徴としている。
【0013】
請求項2及び請求項4の発明によれば、圧縮機を駆動し続けたままで回転電機による駆動へと切替えることができるため、駆動モードを切替えたとしても冷凍サイクルを連続的に運転できる。
【0014】
請求項3の発明では、回転電機の始動後、回転電機の回転数をアイドリング回転数に調速した後にエンジンを停止させることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明によれば、回転電機始動時の突入電流を低減することができるため、回転電機の周辺機器に対する影響を抑制することができる。
【0016】
請求項5の発明では、エンジンの始動後、エンジン回転数が自立回転可能な回転数以上となったときに回転電機を停止させることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、スタータを用いることなくエンジンを始動することができることができるため、エンジン始動によるスタータの疲労の虞がない。
【0018】
請求項6の発明では、回転電機はエンジンに直結された発電機で構成されており、エンジンにはデコンプレッション装置を備えており、モータ駆動モードに切替えられたときには、デコンプレッション装置を作動することを特徴としている。
【0019】
請求項7の発明では、回転電機はエンジンに直結された発電機で構成されており、エンジンにはデコンプレッション装置を備えており、エンジン駆動モードに切替えられたときには、デコンプレッション装置の作動を停止することを特徴としている。
【0020】
請求項6及び請求項7の発明は、エンジンに直結された発電機を回転電機として用いる構成である。このように構成すれば、モータ駆動モードで用いる回転電機を別途設ける必要がないため、構成を簡略化することができる。
【0021】
請求項6の構成では、モータ駆動モード時には圧縮機とともにエンジンを回転させることとなるが、デコンプレッション装置を作動させていることでクランキングトルクが減少されて発電機に対する負荷を低減することができる。また、発電機に対する負荷が低減されることで、発電機の消費電力を低減することができる。
【0022】
また、請求項7の発明のように、エンジン駆動モードに切替えたときには、デコンプレッション装置の作動を停止すればエンジンを始動することができる。
【0023】
請求項8の発明では、制御手段は、エンジン駆動モードにおいて、エンジンが過負荷であると判断したときには、エンジンと回転電機とで圧縮機を駆動する併用駆動モードに切替えることを特徴としている。
【0024】
エンジンが過負荷となっている場合、特にディーゼルエンジンでは黒煙排気が発生することがあり、また、エンジンが負荷に耐えられずに停止することもある。本発明構成では、発電機により圧縮機の駆動を補助することで、上記の不具合をも解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1の実施形態>
本発明の実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。本実施形態は、エンジンを駆動源とするエンジン駆動式の冷凍サイクル装置であり、全体構成を図1に示す。
【0026】
本実施形態の冷凍サイクル装置は、室内空調に供されるものであり、冷房運転と暖房運転の2つの運転モードを有している。このうち、暖房運転時には、エンジン150からの排熱を回収利用するヒートポンプサイクルとして機能する。この冷凍サイクル装置は、室外機1と室内機2とから構成されており、サイクル中の冷媒循環経路には、圧縮機10、四方弁20、室内熱交換器30、室外熱交換器40、冷媒加熱器50が配されている。
【0027】
圧縮機10は、エンジン150により駆動されるものであり、冷媒を圧縮し、圧縮後の高圧気相冷媒を吐出する。四方弁20は、運転モードに応じて圧縮機10の冷媒吐出側及び冷媒加熱器50の冷媒流入側のそれぞれを互い違いに室内熱交換器30及び室外熱交換器40に接続切替する。具体的には、冷房運転時には、圧縮機10の冷媒吐出側と室外熱交換器40とを接続するとともに、室内熱交換器30と冷媒加熱器50の冷媒流入側とを接続する。暖房運転には、圧縮機10の冷媒吐出側と室内熱交換器30とを接続するとともに、室外熱交換器40と冷媒加熱器50の冷媒流入側とを接続する。
【0028】
圧縮機10と四方弁20との間には、圧縮機10から吐出された冷媒と、その冷媒に含まれる潤滑油とを分離するオイルセパレータ60が配されている。このオイルセパレータ60で分離された潤滑油は、圧縮機10の冷媒吸引側に戻される。
【0029】
室内交換機30は、複数備えられており、各室内熱交換器30に対応して設けられた送風ファン31により吹き付けられた室内空気と熱交換するようになっている。これらの室内熱交換器30は、暖房運転時には、室内空気を加熱して内部を流通する冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。また、冷房運転時には室内空気を冷却して内部を流通する冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
【0030】
室外熱交換器40は、複数備えられており、送風ファン41により吹き付けられた室外空気と熱交換するようになっている。これらの室外熱交換器40は、冷房運転時には、室外空気を加熱して内部を流通する冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。また、暖房運転時には、室内空気を冷却して内部を流通する冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
【0031】
室内熱交換器30と室外熱交換器40との間には、気液分離器70及び膨張弁80が配置されている。気液分離器70は、液相冷媒と気相冷媒とを分離し、液相冷媒のみを外部に流出させるものである。膨張弁80は、気液分離器70よりも室外熱交換器40側に位置しており、冷房運転時には全開状態とされる一方、暖房運転時には弁開度の調整により室内熱交換器30を流出した冷媒を減圧膨張する。
【0032】
各室内熱交換器30のうち気液分離器70に連なる配管には、それぞれ室内側減圧弁32及びストレーナ33が設けられている。室内側膨張弁32は、冷房運転時には、室外熱交換器40から流出する冷媒を減圧膨張する減圧弁として機能し、暖房運転時には冷媒の流量を調整する流量弁として機能する。また、ストレーナ33は、冷媒中の塵埃を除去するものであり、各室内側膨張弁32の冷媒流れ上下流側のそれぞれに設けられている。
【0033】
冷媒加熱器50は、例えば、プレート式熱交換器により構成されており、内部を流通する冷媒をエンジン冷却水により加熱するものである。この冷媒加熱器50内を流通させるエンジン冷却水の流量は、三方弁90の弁開度により調整されるようになっている。
【0034】
冷媒加熱器50の冷媒流出側と圧縮機10の冷媒吸引側との間には、アキュムレータ100が配置されている。このアキュムレータ100は、冷媒加熱器50を流出した冷媒を液相冷媒と気相冷媒とに分離し、分離後の気相冷媒を圧縮機10の冷媒吸引側に流出させるようになっている。
【0035】
室外側と室内側とを連結する一対の冷媒配管には、室外側と室内側との冷媒流路を開閉するための開閉バルブ110がそれぞれ設けられている。また一対の冷媒配管の一方側には、冷媒中の水分を除去するための乾燥剤を有するドライヤ120が配されている。
【0036】
室外機1内には、電磁弁140及びリキッド弁130が設けられている。電磁弁140及びリキッド弁130は、除霜運転時に開かれることにより、圧縮機10から吐出した冷媒を室内熱交換器30及び室外熱交換器40をバイパスさせて圧縮機10に還流させるようになっている。また、リキッド弁130は、圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度が一定以上に上昇したときにも開弁され、室内熱交換器30を流出した冷媒を圧縮機10側にバイパスさせる。
【0037】
サイクル中の冷媒流路には、冷媒温度あるいは冷媒圧力を検出するためのセンサが配置されている。具体的には、室内機1側には、圧縮機10に吸引される冷媒の温度及び圧力と、圧縮機10から吐出される冷媒の温度及び圧力とをそれぞれ検出するための吸入温度センサ311、吸入圧力センサ312、吐出温度センサ313、吐出圧力センサ314が設けられている。また、室外熱交換器40に出入りする冷媒の温度をそれぞれ検出する温度センサ321,322、外気温度を検出する外気温度センサ323、冷媒加熱器50を出入りする冷媒の温度をそれぞれ検出する温度センサ331,332が設けられている。
【0038】
室内機2側には、各室内熱交換器30を出入りする冷媒の温度を検出する温度センサ341,342、室内熱交換器30に吸入される室内空気の温度を検出する吸入空気温度センサ343、室内熱交換器30から吹き出される室内空気の温度を検出する吹出空気温度センサ344が設けられている。
【0039】
エンジン150は、圧縮機10を駆動するものであり、負荷状態に応じて回転数を変更する。使用回転数範囲は、例えば1200〜2400rpmとされている。1200rpmは、アイドリング回転数Nidleである。このエンジン150からの排熱は、内部を流通するエンジン冷却水に回収され、エンジン冷却水が冷却水回路160を流通することで、回収された排熱が外部に放熱され、あるいは冷媒加熱器50内を流通する冷媒に回収される。
【0040】
エンジン冷却水回路160には、エンジン150と冷媒加熱器50との間を循環する加熱器側経路RAと、エンジン150とラジエター151との間を循環するラジエター側経路RBとの2つの経路が設けられている。この2つの経路RA,RBへの切替は、三方弁90の弁開度により調整されるようになっている。また、各経路RA,RBへ流入させるエンジン冷却水の流量比についてもこの三方弁90の弁開度により調整されるようになっている。
【0041】
冷却水回路160には、エンジン150を流出したエンジン冷却水を上記の各経路RA,RB側に流通させることなくエンジン150に流入させるためのバイパス通路RCが形成されており、このバイパス通路RCと各経路RA,RB側との分岐点にはサーモ弁170が配されている。このサーモ弁170は、通過するエンジン冷却水の温度が所定温度よりも低いときには、バイパス通路RC側へエンジン冷却水を流すように弁体を開く。上記所定温度は、例えば、65℃である。また、エンジン冷却水の温度が所定温度以上となっているときには、各経路RA,RB側へエンジン冷却水を流すように弁体を開く。また、バイパス通路RCとエンジン150のエンジン冷却水流入側との間には、エンジン冷却水を循環させるための冷却水ポンプ180が配されている。
【0042】
エンジン150には、デコンプレッション装置が設けられている。デコンプレッション装置には、その作動、非作動を切り替えるデコンプソレノイド152を備える。エンジン150には、燃料バルブ153が設けられている。このデコンプソレノイド152は、デコンプレッション装置によって、エンジン150のポンプ作用を無効化し、エンジン150を外部動力により回転させる際の動力消費を低減する。デコンプレッション装置としては、例えば、エンジン150の動弁機構を停止させるものや、エンジン150のシリンダ内圧力を開放するものが知られている。当該ソレノイド152がオンされたときには内部圧力が開放される一方、オフされているときには内部圧力が保持される。燃料バルブ153は、燃料噴射装置への燃料供給状態を切替えるものであり、この燃料バルブ153がオンされているときには燃料供給がなされ、オフされているときには燃料供給が遮断される。
【0043】
また、エンジン150には、回転電機としての発電機154が設けられている。発電機154は、その回転軸がエンジン150のクランクに直結されており、エンジン150の回転に伴って発電する。発電電力は、レギュレータ等の電圧安定化回路を介してバッテリー等の蓄電装置に蓄電される。本実施形態の発電機154は、発電機能のほかに、圧縮機10を駆動するための電動機としても機能する。このため、発電機154にはインバータ等の電源回路154Aが設けられており、この電源回路154Aからの電源供給によって運転されるようになっている。
【0044】
リモコン200は、使用者の操作入力によって運転モード、設定温度等を設定するものであり、設定項目に関する情報が制御装置210に送信されるようになっている。
【0045】
制御手段としての制御装置210は、設定項目に関する情報、各種温度センサ及び圧力センサの検出信号に基づいて、運転モード及び駆動モードを決定する。そして、決定した運転モード及び駆動モードに応じて、四方弁20、室内側減圧弁32、膨張弁80、三方弁90、エンジン150、発電機154等の制御を行う。
【0046】
本実施形態の構成は以上であり、続いてその動作について説明する。本実施形態では、決定された運転モードが冷房運転であるときには、制御装置210は、四方弁20を切替制御して、圧縮機10の冷媒吐出側と室外熱交換器40とを接続するとともに、室内熱交換器30と冷媒加熱器50の冷媒流入側とを接続する。そして、室内側減圧弁32の弁開度を負荷状態に応じて調整するとともに、膨張弁80を全開状態とする。
【0047】
従って、サイクル中の冷媒は、圧縮機10、室外熱交換器40、室内熱交換器30、冷媒加熱器50の順番で流通する。冷媒は、図1中の破線矢印の方向に流通する。冷媒は、室内熱交換器30では、送風ファン31により吹き付けられた室内空気を冷却する。また、冷房運転時には、冷媒にエンジン130の排熱を回収させる必要がないため、三方弁90を制御して、エンジン冷却水をラジエター側経路RBに流通させる。
【0048】
暖房運転時には、制御装置210は、四方弁20を切替制御して、圧縮機10の冷媒吐出側と室内熱交換器30とを接続するとともに、室外熱交換器40と冷媒加熱器50の冷媒流入側とを接続する。そして、膨張弁80の弁開度を負荷状態に応じて調整するとともに、室内側減圧弁32を全開状態とする。
【0049】
従って、サイクル中の冷媒は、圧縮機10、室内熱交換器30、室外熱交換器40、冷媒加熱器50の順番で流通する。冷媒は、図1中の実線矢印の方向に流通する。冷媒は、室内熱交換器30では、送風ファン31により吹き付けられた室内空気を加熱する。また、暖房運転時には、エンジン70の排熱を冷媒に回収させるために、三方弁90を制御してエンジン冷却水を加熱器側経路RAに流通させる。
【0050】
制御装置210は、各運転モードにおいて冷凍サイクルの空調負荷に対応する圧縮機10の要求回転数Ncを決定し、決定された要求回転数Ncに応じて駆動モードを切替える。以下、駆動モード切替制御について説明する。
【0051】
「駆動モード決定処理」
図2のフローチャートに示すように、ステップS100では、要求回転数Ncがエンジン150のアイドリング回転数Nidleよりも小さいか否かを判断する。要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleよりも小さいときには(ステップS100でYes)、ステップS110に進んで駆動モードをモータ駆動モードに切替える。一方、要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleよりも大きいときには(ステップS100でNo)、ステップS120に進んで駆動モードをエンジン駆動モードに切替える。
【0052】
エンジン駆動モードに切替えられたとき、あるいはエンジン駆動モードに切替えられているときには、ステップS130にて各種センサからの情報に基づいてエンジン150の負荷状態を判断し、エンジン150が過負荷であると判断したときには(ステップ130でYes)、ステップS140にてエンジン150とともに発電機154をも用いて圧縮機10を駆動する併用駆動モードに切替える。また、エンジン150が過負荷でないと判断されたときには、(ステップS130でNo)、エンジン駆動モードを維持する。
【0053】
「モータ駆動モード」
モータ駆動モードでの処理を図3に示す。まず、ステップS200では圧縮機10の駆動源がエンジン150から発電機154に切替えられたか否かを判断する。切替の判断は、当該モータ駆動モードが選択されたときに、以下に示すステップS210〜S250の処理をし終えたか否かで判断することができる。
【0054】
ここで、発電機154への切替が完了しているときには(ステップS200でYes)、ステップS260に進み、発電機回転数Ngが要求回転数Ncとなるように調速制御する。
【0055】
一方、発電機154への切替がなされていないときには(ステップS200でNo)、ステップS210にて電源回路154Aからの電源供給を開始し、ステップS220で発電機回転数Ngがアイドリング回転数Nidleとなるように発電機154を調速制御する。
【0056】
ステップS230では、発電機回転数Ngがアイドリング回転数Nidleに到達したか否かを判断する。発電機回転数Ngがアイドリング回転数Nidleに到達したときには(ステップS230でYes)、ステップS240でデコンプソレノイド152をオンすることでエンジンシリンダ内の圧力を開放し、ステップS250で燃料バルブ153をオフしてエンジンへの燃料供給を停止する。この後、ステップS260に進み、空調負荷に合わせて発電機154を調速制御する、即ち、発電機回転数Ngが要求回転数Ncとなるように発電機154を調速制御する。
【0057】
「エンジン駆動モード」
エンジン駆動モードでの処理を図4に示す。まず、ステップS300では、圧縮機10の駆動源が発電機154からエンジン150に切替えられたか否かを判断する。切替の判断は、当該エンジン駆動モードが選択されたときに、以下に示すステップS310〜S350の処理をし終えたか否かで判断することができる。
【0058】
ここで、エンジン150への切替が完了しているときには(ステップS300でYes)、ステップS360に進み、エンジン回転数Negが要求回転数Ncとなるようにエンジン150を調速制御する。
【0059】
一方、エンジン150への切替が完了していないときには(ステップS300でNo)、ステップS310にて発電機回転数Ngを300rpm以上に維持し、ステップS320で燃料バルブ153をオンするとともに、ステップS330でデコンプソレノイド152をオフする。
【0060】
ステップS340では、エンジン回転数Negが700rpm以上となったか否かを判断する。この700rpmは、エンジン150が自立回転可能な回転数として予め設定されている。700rpm以上であれば、エンジン150が始動したと判断し、ステップS350で電源回路154Aからの駆動信号の供給を停止して電動機153による駆動を停止する。この後、ステップS360に進み、空調負荷に合わせてエンジン150を調速制御する、即ち、エンジン回転数Negが要求回転数Ncとなるようにエンジン150を調速制御する。
【0061】
「併用駆動モード」
エンジン駆動モードでの処理を図4に示す。まず、ステップS400で発電機154を始動した後、ステップS410で空調負荷に合わせて発電機154を調速制御する。
【0062】
以下、各駆動モードへの切替動作について説明する。
【0063】
「要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleを下回ったとき」
暖房時において、空調負荷及び室外気温が低いとき等、サイクルの空調負荷が低下することで要求回転数Ncがエンジンアイドリング回転数Nidleを下回ったときには、エンジン150の回転数をアイドリング回転数Nidleにまで低下させてもサイクル能力が過多となるため、圧縮機10をアイドリング回転数Nidle以下で駆動する必要がある。このような場合には、駆動モードがモータ駆動モードに切替えられる(ステップS100でYes、ステップS110)。
【0064】
エンジン150から発電機154への切替は、はじめに、電源回路154Aから発電機154に対して電源供給がなされて発電機154が作動し、その回転数Ngがアイドリング回転数Nidleとなるように調速される(ステップS210、ステップS220)。発電機回転数Ngがアイドリング回転数Nidleに調速された時には(ステップS230でYes)、デコンプソレノイド152がオンされるとともに、燃料バルブ153がオフされることでエンジン150が停止する(ステップS240、ステップS250)。従って、発電機154は、エンジン150を回転させながら圧縮機10を駆動する。
【0065】
発電機154への駆動切替が完了した後、サイクルの空調負荷に応じて発電機回転数Ngが調速される(ステップS200、ステップS260)。
【0066】
このように、圧縮機10を駆動し続けたまま圧縮機10の駆動源をエンジン150から発電機154に切替えることができ、冷凍サイクルを連続的に運転できる。また、発電機154が回転されている状態で始動されるため、始動トルクが低減され、始動時の突入電流を低減することもできる。さらには、デコンプソレノイド152をオンすることで、エンジンのクランキングトルクが低減されることで、発電機154の負荷が低減され、その消費電力を低減することができる。
【0067】
「要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleを上回ったとき」
サイクルの空調負荷が増加して要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleを上回ったときには、エンジン150の使用回転数範囲内で圧縮機10を駆動することができるため、駆動モードがエンジン駆動モードに切替えられる(ステップS100でNo、ステップS120)。
【0068】
発電機154からエンジン150への切替は、はじめに、発電機回転数Ngがアイドリング回転数Nidleとなるように発電機154が調速され(ステップS310)、発電機154が調速された後に、燃料バルブ153がオンされるとともにデコンプソレノイド152がオフされてエンジン150が始動される(ステップS310、S320、S330)。
【0069】
そして、エンジン回転数Ngが、エンジン150が700rpm以上となったときには(ステップS340でYes)、発電機154の駆動を停止する(ステップS350)。従って、発電機154はエンジン150を始動するためのスタータとして機能している。
【0070】
エンジン150への駆動切替の完了後、サイクルの空調負荷に応じてエンジン回転数Negが調整される(ステップS300、ステップS360)。
【0071】
このように、圧縮機10を駆動し続けたまま圧縮機10の駆動源を発電機154からエンジン150に切替えることができ、冷凍サイクルを連続的に運転できる。また、エンジン150を始動する際には、発電機154がスタータとして機能するため、エンジン150の始動用スタータを使用する必要がなく、スタータの疲労を低減することができる。
【0072】
「エンジン過負荷時」
冷房時において、空調負荷及び室外気温が高いとき等、エンジン150が過負荷であると判断されたときには、発電機154をも圧縮機10の駆動に用いる併用駆動モードに切替えられる(ステップS130でYes、ステップS140)。
【0073】
当該モードに切替えられたときには、エンジン150は既に作動しているので、発電機154を始動して圧縮機10の駆動トルクを増加させる。
【0074】
エンジンが過負荷となっているときには、黒煙排気が発生することがあり、さらには、エンジンが負荷に耐えられずに停止することもあるが、このように発電機154により圧縮機10の駆動を補助することで、上記の不具合を解消しつつ、必要な空調能力を発揮することができる。
【0075】
以上、本実施形態によれば、要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleを下回ることでエンジン150による圧縮機10の駆動では空調能力が過多となるときには、モータ駆動モードに切替えて電動機153により圧縮機10を駆動する一方、要求回転数Ncがアイドリング回転数Nidleを上回ったときには、エンジン駆動モードに切替えてエンジン150で圧縮機10を駆動することで、必要な空調能力に対応した回転数で圧縮機10を駆動することができる。
【0076】
このように、圧縮機10を要求回転数Nc回に応じた回転数で駆動し続けることができるため、冷凍サイクルを継続的に動作させて空調感覚を向上させることができる。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0078】
上記実施形態では、発電機154を圧縮機10を駆動するための駆動源として用いた構成を示したが、例えば、圧縮機10を駆動するための専用の電動機を備えた構成であっても良い。
【0079】
上記実施形態では、モータ駆動モード切替時において、発電機154を始動した後にエンジン150の駆動を停止させるようにしていたが、例えば、発電機154の始動をエンジン駆動停止と同時あるいは、停止後としてもよい。
【0080】
上記実施形態では、エンジン駆動モード切替時において、エンジン150を始動した後に発電機154の駆動を停止させるようにしていたが、例えば、エンジン150の始動を発電機154の駆動停止と同時あるいは、停止後としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態に係るヒートポンプサイクル装置の全体構成を示した概念図である。
【図2】駆動モード決定処理の内容を示したフローチャートである。
【図3】モータ駆動モードの処理内容を示したフローチャートである。
【図4】エンジン駆動モードの内容を示したフローチャートである。
【図5】併用駆動モードの内容を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
10…圧縮機
150…エンジン
152…デコンプソレノイド(デコンプレッション装置)
153…発電機(電動機)
210…制御装置(制御手段)
Nc…要求回転数
Neg…エンジン回転数
Ng…発電機回転数
idle…アイドリング回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルを構成する圧縮機をエンジンと回転電機とで駆動するための圧縮機駆動装置であって、
前記冷凍サイクルの負荷に対応する前記圧縮機の要求回転数に応じて駆動モードを決定する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記要求回転数が前記エンジンのアイドリング回転数を下回ったときには、前記回転電機のみで圧縮機を駆動するモータ駆動モードに切替える一方、
前記要求回転数が前記エンジンのアイドリング回転数を上回ったときには、前記エンジンのみで圧縮機を駆動するエンジン駆動モードに切替えることを特徴とする圧縮機駆動装置。
【請求項2】
前記モータ駆動モードに切替えられたときには、前記回転電機を始動した後にエンジンを停止することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機駆動装置。
【請求項3】
前記回転電機の始動後、前記回転電機の回転数を前記アイドリング回転数に調速した後に前記エンジンを停止させることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機駆動装置。
【請求項4】
前記エンジン駆動モードに切替えられたときには、前記エンジンを始動した後に前記回転電機を停止させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧縮機駆動装置。
【請求項5】
前記エンジンの始動後、エンジン回転数が自立回転可能な回転数以上となったときに前記回転電機を停止させることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機駆動装置。
【請求項6】
前記回転電機は前記エンジンに直結された発電機で構成されており、
前記エンジンにはデコンプレッション装置を備えており、
前記モータ駆動モードに切替えられたときには、前記デコンプレッション装置を作動することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧縮機駆動装置。
【請求項7】
前記回転電機は前記エンジンに直結された発電機で構成されており、
前記エンジンにはデコンプレッション装置を備えており、
前記エンジン駆動モードに切替えられたときには、前記デコンプレッション装置の作動を停止することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧縮機駆動装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記エンジン駆動モードにおいて、前記エンジンが過負荷であると判断したときには、前記エンジンと前記回転電機とで前記圧縮機を駆動する併用駆動モードに切替えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の圧縮機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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