説明

圧縮機

【課題】高圧ドーム形の圧縮機で用いられる膨張型の消音機構(47)において、吐出ガスの流出経路での該吐出ガスの屈曲を防止することにより膨張型消音機構(47)としての機能の低下を防止するとともに、吐出ガスの流出経路を十分な長さにすることにより低周波の脈動騒音を低減できるようにする。
【解決手段】圧縮機構(20)に設けられた吐出口(29)を覆って吐出ガスの膨張空間(42)を形成するとともに該膨張空間(42)からケーシング(10)内への吐出ガス出口(46)が形成された吐出カバー(43)を有する消音機構(47)を備えた圧縮機において、膨張空間(42)を、吐出口(29)と吐出ガス出口(46)とを通る1周以上の渦巻き状経路に沿って形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉ケーシング内に圧縮機構が収納された圧縮機に関し、特に、ケーシング内が圧縮機の吐出圧力になる高圧ドーム形の圧縮機に設けられる消音機構の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の圧縮機として、密閉型のケーシング内に圧縮機構と電動機とが設けられ、ケーシングに固定された吸入管が圧縮機構の吸入口に連通するとともに、圧縮機構から吐出された高圧ガスがケーシング内に充満した後、該ケーシングに設けられた吐出管から外部へ吐出されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の圧縮機では、ケーシングは、縦長円筒状の胴部と、胴部の上端に固定された上部鏡板と、胴部の下端に固定された下部鏡板とから構成された密閉容器により構成されている。電動機はステータとロータとから構成され、ステータがケーシングの上下方向の中間位置において該ケーシングに固定されている。圧縮機構は上記電動機の下方の空間側でケーシングに固定され、駆動軸を介して電動機のロータと連結されている。そして、ケーシングの胴部には上記圧縮機構に接続される吸入管が設けられる一方、上部鏡板には電動機の上方の空間に開口した吐出管が設けられている。
【0004】
圧縮機構は、円筒状のシリンダと、シリンダの上端面に固定される上側軸受部材(フロントヘッド)と、シリンダの下端面に固定される下側軸受部材(リヤヘッド)と、これらのシリンダ、フロントヘッド、及びリヤヘッドにより区画されるシリンダ室内に偏心回転可能に配置された回転ピストンとを有し、回転ピストンが駆動軸に連結されている。
【0005】
フロントヘッドには、圧縮機構から上向きに高圧ガスを吐出する吐出口が形成されている。また、圧縮機構には、この吐出口を覆って吐出ガスの膨張空間を形成する吐出カバー(マフラ)が設けられている。
【0006】
上記特許文献1の圧縮機では、膨張空間の容積を拡げるため、吐出カバー内の空間に連通するようにシリンダの外周縁部に円弧状の空間を形成している。そして、圧縮機構から吐出カバー内の空間に吐出された吐出ガスをシリンダの円弧状空間に一端から導入し、吐出ガスがこの円弧状空間を流れた後、該円弧状空間の他端からケーシング内に流出するようにしている。こうすることで、膨張空間の容積を拡げ、消音効果の向上を図っている。
【特許文献1】特開平8−334095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来の圧縮機では、圧縮機構の吐出口から上向きに吹き出された吐出ガスを吐出カバーで反射させてシリンダの円弧状空間に導入するようにしているため、吐出ガスの圧力波が屈曲し、膨張型消音機構として十分に機能しない。
【0008】
また、上記円弧状空間はシリンダの半周から2/3周程度の長さにしか形成することができず、十分な経路長が得られないため、特に低周波数の脈動騒音を低減する効果が低い問題もあった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高圧ドーム形の圧縮機で用いられる膨張型の消音機構において、吐出ガスの流出経路での該吐出ガスの屈曲を防止することにより膨張型消音機構としての機能の低下を防止するとともに、吐出ガスの流出経路を十分な長さにすることにより低周波の脈動騒音を低減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、ガスを圧縮して吐出する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を収納するケーシング(10)と、圧縮機構(20)の吸入側に連通する吸入管(14)と、該ケーシング(10)内の空間に開口するようにケーシング(10)に設けられた吐出管(15)と、圧縮機構(20)に設けられた吐出口(29)を覆って吐出ガスの膨張空間(42)を形成するとともに該膨張空間(42)からケーシング(10)内への吐出ガス出口(46)が形成された吐出カバー(43)を有する消音機構(47)とを備えた圧縮機を前提としている。
【0011】
そして、この圧縮機は、上記膨張空間(42)が、吐出口(29)と吐出ガス出口(46)とを通る1周以上の渦巻き状経路に沿って形成されていることを特徴としている。
【0012】
この第1の発明では、圧縮機構(20)の吐出口(29)から吐出カバー(43)内に吐出された吐出ガスは、該吐出カバー(43)に形成された渦巻き状の膨張空間(42)を通って流れ、該吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)からケーシング(10)内に吐出される。膨張空間(42)を1周以上の渦巻き状経路に沿って形成しているため、膨張空間(42)の経路長を従来の消音機構(47)における膨張空間(42)の経路長よりも長くすることができる。
【0013】
ここで、消音機構(47)における音響減衰量のピーク周波数は、膨張空間(42)の経路長の4倍に反比例する特性を有している。そのため、経路長を長くすれば、音響減衰量のピーク周波数を低くすることができる。つまり、吐出ガスの圧力波の低周波成分を消音機構(47)で吸収することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、圧縮機構(20)の吐出口(29)が膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)が膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成されていることを特徴としている。
【0016】
これらの第2,第3の発明では、圧縮機構(20)の吐出口(29)及び吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)を膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成しているので、膨張空間(42)の端面での圧力波の反射が起こり、定在波が発生する。
【0017】
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれか1つにおいて、吐出ガスカバーの吐出ガス出口(46)が膨張空間(42)内における圧力の定在波の節に対応する位置に形成されていることを特徴としている。
【0018】
この第4の発明では、上記吐出ガス出口(46)を定在波の節の位置に配置しているため、吐出ガスが最も振幅の小さい状態で吐出ガス出口(46)から吐出されることになる。
【0019】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれか1つにおいて、膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に絞り通路(48)が設けられ、該膨張空間(42)が絞り通路(48)を介して複数段に形成されていることを特徴としている。
【0020】
この第5の発明では、絞り通路(48)の前段での膨張作用と、絞り通路(48)の後段での膨張作用とにより、多段階の消音作用を得ることができる。
【0021】
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれか1つにおいて、渦巻き状に形成された膨張空間(42)の経路長を変化させる経路長可変機構(50)を備えていることを特徴としている。
【0022】
この第6の発明では、経路長可変機構(50)により膨張空間(42)の経路長を変化させることができる。膨張空間(42)の経路長を変化させると、音響減衰量のピーク周波数を変化させることが可能となる。
【0023】
第7の発明は、第6の発明において、経路長可変機構(50)が圧縮機構(20)の回転速度に応じて膨張空間(42)の経路長を変更させるように構成されていることを特徴としている。
【0024】
この第7の発明では、圧縮機が可変回転速度形(可変容量形)である場合に、圧縮機構(20)の回転速度に応じて経路長を変更することができる。ここで、圧縮機の吐出ガスの脈動騒音は、圧縮機の回転周波数のほぼ整数倍の周波数成分が大半を占める。そこで、経路長可変機構(50)を用いて膨張空間(42)の経路長を変化させるようにすると、音響減衰量のピーク周波数を圧縮機の回転周波数のほぼ整数倍の値(その圧縮機で最も問題になる脈動騒音の周波数)に合わせることができる。
【0025】
第8の発明は、第1から第7の発明のいずれか1つにおいて、圧縮機構(20)が、駆動軸(33)と、円筒状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の一方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するフロントヘッド(22)と、該シリンダ(21)の他方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するリヤヘッド(23)と、シリンダ(21)とフロントヘッド(22)とリヤヘッド(23)とにより区画されるシリンダ室(25)に位置して駆動軸(33)に連結され、シリンダ室(25)内で偏心回転をするピストン(24)とを有し、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間に、圧縮機構(20)の吐出口(29)と吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)とに連通する渦巻き状の溝(42)が形成されて膨張空間(42)が構成されていることを特徴としている。
【0026】
この第8の発明では、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間の渦巻き状の溝(42)により膨張空間(42)が形成され、圧縮機構(20)の吐出口(29)から膨張空間(42)に吐出された吐出ガスがこの膨張空間(42)を通って吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)から圧縮機のケーシング(10)内に吐出される。
【0027】
第9の発明は、第1から第7の発明のいずれか1つにおいて、圧縮機構(20)が、駆動軸(33)と、円筒状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の一方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するフロントヘッド(22)と、該シリンダ(21)の他方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するリヤヘッド(23)と、シリンダ(21)とフロントヘッド(22)とリヤヘッド(23)とにより区画されるシリンダ室(25)に位置して駆動軸(33)に連結され、シリンダ室(25)内で偏心回転をするピストン(24)とを有し、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間に、圧縮機構(20)の吐出口(29)に連通する第1の渦巻き状の溝(42a)が形成され、該フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方とシリンダ(21)との間に、吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)に連通する第2の渦巻き状の溝(42b)が形成され、第1の渦巻き状の溝(42a)と第2の渦巻き状の溝(42b)とが連通して膨張空間(42)を構成していることを特徴としている。
【0028】
この第9の発明では、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間の第1の渦巻き状の溝(42a)と、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方とシリンダ(21)との間の第2の渦巻き状の溝(42b)とにより膨張空間(42)が形成され、圧縮機構(20)の吐出口(29)から膨張空間(42)に吐出された吐出ガスがこの膨張空間(42)を通って吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)から圧縮機のケーシング(10)内に吐出される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、膨張空間(42)を、吐出口(29)と吐出ガス出口(46)とを通る1周以上の渦巻き状経路に沿って形成しているため、膨張空間(42)の経路長を従来の消音機構(47)における膨張空間(42)の経路長よりも長くすることができる。したがって、音響減衰量のピーク周波数を低くすることができるので、吐出ガスの圧力波の低周波成分を消音機構(47)で吸収することができる。
【0030】
また、膨張空間(42)を渦巻き状に形成したことにより、吐出ガスは膨張空間(42)の経路に沿って平面状を流れ、3次元的に屈曲することなく吐出ガス出口(46)まで滑らかに流れる。そのため、吐出ガスの圧力波が屈曲することによる膨張型消音機構(47)の機能の低下も防止できる。
【0031】
上記第2,第3の発明によれば、圧縮機構(20)の吐出口(29)及び吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)を膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成しているので、膨張空間(42)の端面での圧力波の反射が確実に起こり、定在波が確実に発生する。
【0032】
上記第4の発明によれば、吐出ガスカバーの吐出ガス出口(46)を膨張空間(42)内における圧力の定在波の節に対応する位置に形成しているため、吐出ガスが最も振幅の小さい状態で吐出ガス出口(46)から吐出されることになる。このため、脈動騒音を低減できる。
【0033】
上記第5の発明によれば、膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に絞り通路(48)を設け、該膨張空間(42)を複数段に形成したことにより、多段階の消音作用を得ることができるので、音響減衰量のピーク値を広域にわたって向上させ、消音機能を高めることができる。
【0034】
上記第6の発明によれば、渦巻き状に形成された膨張空間(42)の経路長を変化させる経路長可変機構(50)を設けたことにより、膨張空間(42)の経路長を変化させて、音響減衰量のピーク周波数を変化させることが可能となる。したがって、音響減衰量のピークを個々の圧縮機で問題になる圧力波の周波数に合わせることができる。
【0035】
上記第7の発明によれば、経路長可変機構(50)を用いて膨張空間(42)の経路長を変化させるようにすることで、音響減衰量のピーク周波数を圧縮機の回転周波数のほぼ整数倍の値(その圧縮機で最も問題になる脈動騒音の周波数)に合わせることができるので、騒音低減効果を高めることができる。
【0036】
上記第8の発明によれば、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間の渦巻き状の溝(42)により膨張空間(42)を形成し、圧縮機構(20)の吐出口(29)から膨張空間(42)に吐出された吐出ガスがこの膨張空間(42)を通って吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)から圧縮機のケーシング(10)内に吐出されるようにしているので、消音機構(47)の構造を簡単にすることができる。
【0037】
上記第9の発明によれば、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間の第1の渦巻き状の溝(42a)と、フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方とシリンダ(21)との間の第2の渦巻き状の溝(42b)とにより膨張空間(42)を形成し、圧縮機構(20)の吐出口(29)から膨張空間(42)に吐出された吐出ガスがこの膨張空間(42)を通って吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)から圧縮機のケーシング(10)内に吐出されるようにしているので、消音機構(47)の構造を簡単にすることができるとともに、経路長をより長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
《発明の実施形態1》
実施形態1の圧縮機は、図1及び図2に示すように、いわゆる回転ピストン型の圧縮機(1)で構成されている。この圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、ガスを圧縮して吐出する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する電動機(30)とが収納され、全密閉型に構成されている。また、この圧縮機(1)は、電動機(30)がインバータ制御されて容量が段階的または連続的に可変となる可変容量型の圧縮機に構成されている。そして、この圧縮機(1)は、電動機(30)によって圧縮機構(20)を駆動することにより、例えば、冷媒を吸入、圧縮した後に吐出して冷媒回路内で循環させるものである。
【0040】
上記ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端開口部に接合された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端開口部に接合された下部鏡板(13)とから縦長円筒状の密閉容器に構成されている。
【0041】
上記ケーシング(10)内の空間は、電動機(30)を挟んで上下に位置する第1空間(S1)及び第2空間(S2)に区画されている。この実施形態1では、第1空間(S1)が電動機(30)の下方に配置され、第2空間(S2)が電動機(30)の上方に配置されている。そして、第1空間(S1)に圧縮機構(20)が配置されている。
【0042】
上記ケーシング(10)には、胴部(11)の下部に吸入管(14)が設けられ、上部鏡板(12)には吐出管(15)が設けられている。上記吸入管(14)は、上記ケーシング(10)を介して圧縮機構(20)の吸入側に連通し、上記吐出管(15)は、該ケーシング(10)内の空間に開口するように上部鏡板(12)に固定されている。つまり、上記吸入管(14)はケーシング(10)における第1空間(S1)側の位置に設けられ、上記吐出管(15)はケーシング(10)における第2空間(S2)側の位置に設けられている。なお、上記吸入管(14)にはアキュムレータ(16)が接続されている。
【0043】
上記圧縮機構(20)は、シリンダ(21)と、フロントヘッド(22)と、リヤヘッド(23)と、回転ピストン(24)とを備え、シリンダ(21)の上端にフロントヘッド(22)が、下端にリヤヘッド(23)が固定されている。
【0044】
上記シリンダ(21)は、厚肉の円筒状に形成されている。そして、上記シリンダ(21)の内周面とフロントヘッド(22)の下端面とリヤヘッド(23)の上端面との間には、円柱状のシリンダ室(25)が区画形成されている。このシリンダ室(25)は、該シリンダ室(25)内で回転ピストン(24)が偏心回転動作をするように構成されている。
【0045】
上記電動機(30)は、ステータ(31)とロータ(32)とを備えている。上記ロータ(32)には圧縮機構(20)を駆動する駆動軸(33)が連結されている。この駆動軸(33)は、ケーシング(10)内の中心を通り、且つシリンダ室(25)を上下方向に貫通している。上記フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)には、駆動軸(33)を支持するための軸受部(22a,23a)がそれぞれ形成されている。
【0046】
上記駆動軸(33)は、本体部(33b)と、シリンダ室(25)内に位置する偏心部(33a)とによって構成されている。この偏心部(33a)は、本体部(33b)よりも大径に形成され、駆動軸(33)の回転中心から所定量偏心している。そして、この偏心部(33a)には、圧縮機構(20)の回転ピストン(24)が装着されている。図2に示すように、この回転ピストン(24)は、円環状に形成され、その外周面がシリンダ(21)の内周面と実質的に一点で接触するように形成されている。
【0047】
上記シリンダ(21)には、該シリンダ(21)の径方向に沿ってブレード溝(21a)が形成されている。このブレード溝(21a)には、長方形の板状に形成されたブレード(26)がシリンダ(21)の径方向へ摺動可能に装着されている。上記ブレード(26)は、ブレード溝(21a)内に設けられたスプリング(27)によって径方向内方へ付勢され、先端が常に回転ピストン(24)の外周面に接触している。
【0048】
上記ブレード(26)は、シリンダ(21)の内周面と回転ピストン(24)の外周面との間のシリンダ室(25)を吸入室(25a)と圧縮室(25b)とに区画している。そして、上記シリンダ(21)には、該シリンダ(21)の外周面から内周面へ径方向に貫通し、吸入管(14)と吸入室(25a)とを連通する吸入口(28)が形成されている。また、上記フロントヘッド(22)には、駆動軸(33)の軸方向に貫通し、圧縮室(25b)とケーシング(10)内の空間とを連通する吐出口(29)が形成されている。
【0049】
上記フロントヘッド(22)には、吐出口(29)を開閉するための吐出弁機構(40)が設けられている。上記吐出弁機構(40)は、リード弁(41)と、このリード弁(41)のたわみ量を規制する弁押さえ(図示せず)とを備えている。上記リード弁(41)は、弁押さえが上方から重ねられ、フロントヘッド(22)と弁押さえとの間に挟まれている。そして、上記リード弁(41)及び弁押さえは、基端側で締付ボルトによってフロントヘッド(22)に固定されている(図示省略)。
【0050】
上記フロントヘッド(22)には、圧縮機構(20)に設けられた吐出口(29)を覆って吐出ガスの膨張空間(42)を形成する吐出カバー(43)が装着されている。この吐出カバー(43)は、端板(44)と側壁(45)とが一体的に形成されたものであり、端板(44)には、該膨張空間(42)からケーシング(10)内へ吐出ガスが流れる吐出ガス出口(46)が形成されている。そして、この膨張空間(42)を有する吐出カバー(43)により、本実施形態1の消音機構(47)が構成されている。
【0051】
吐出カバー(43)の断面形状(図1のIII−III線断面形状)を図3(A)に示している。図示するように、上記膨張空間(42)は、吐出口(29)と吐出ガス出口(46)とを通る1周以上の渦巻き状経路に沿って形成されている。この渦巻き状経路は、渦巻き状の壁(43a)により区画形成されている。駆動軸の中心を基準とする座標系を考えると、この渦巻き状経路における図3(A)の第4象限の内側の通路に吐出口(29)が配置され、第1象限の外側の通路に吐出ガス出口(46)が配置されている。ただし、吐出口(29)や吐出ガス出口(46)の配置は図の配置に限定するものではない。
【0052】
図3(A)に示すように、圧縮機構(20)の吐出口(29)は膨張空間(42)における渦巻き状経路の端部の位置ではなく、その途中の位置に形成されている。また、吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)も、膨張空間(42)における渦巻き状経路の端部の位置ではなく、その途中の位置に形成されている。
【0053】
圧縮機構(20)の吐出口(29)から渦巻き状の膨張空間(42)に吹き出された吐出ガスは、図3(A)において時計回り方向へ流れ、吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)からケーシング(10)内に吹き出される。一方、膨張空間(42)内では、吐出ガスの圧力波(進行波)に対し、該膨張空間(42)の両端面(42a,42b)で生じる反射波が作用することにより、定在波が発生する。上記吐出ガス出口(46)は、上記膨張空間(42)内における圧力の定在波の節に対応する位置に形成されている。
【0054】
なお、図3(B)は、膨張空間(42)と吐出口(29)及び吐出ガス出口(46)の位置関係を模式的に表した図である。膨張空間の経路長をl、膨張空間の端面(42b)から吐出ガス出口(46)までの距離をl0とすると、
0=l/4、または
0=l/2
の関係式を満たすようにするとよい。
【0055】
−運転動作−
次に、上述した圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0056】
まず、上記電動機(30)に通電すると、ロータ(32)が回転し、該ロータ(32)の回転が駆動軸(33)を介して圧縮機構(20)(20)の回転ピストン(24)に伝達される。これによって、上記圧縮機構(20)(20)が所定の圧縮動作を行う。
【0057】
具体的に、図2を参照しながら圧縮機構(20)(20)の圧縮動作について説明する。上記回転ピストン(24)が電動機(30)の駆動によって図の右回り(時計回り)に回転すると、その回転に従って吸入室(25a)の容積が拡大し、該吸入室(25a)に低圧の冷媒が吸入口(28)を介して吸入される。この吸入室(25a)への冷媒の吸入は、回転ピストン(24)がシリンダ室(25)内を偏心回転して吸入口(28)のすぐ右側でシリンダ(21)と回転ピストン(24)とが接触する状態となるまで続く。
【0058】
上記のように、回転ピストン(24)が1回転して冷媒の吸入が終了すると、冷媒が圧縮される圧縮室(25b)が形成される。なお、この圧縮室(25b)の隣には、新たな吸入室(25a)が形成され、該吸入室(25a)への冷媒の吸入が繰り返される。上記圧縮室(25b)の冷媒は、回転ピストン(24)の回転に伴って圧縮室(25b)の容積が減少することにより、圧縮される。
【0059】
上記圧縮室(25b)が所定の高圧になると、該圧力がリード弁(41)に作用することによって、吐出口(29)が開く。上記圧縮室(25b)の冷媒は、吐出口(29)から吐出カバー(43)内に吐出される。そして、上記高圧の冷媒が吐出されて圧縮室(25b)が低圧になると、リード弁(41)が自身のバネ力によって吐出口(29)を閉鎖する。このようにして、冷媒の吸入、圧縮及び吐出が繰り返される。
【0060】
圧縮機構(20)から吐出された高圧の冷媒は、吐出カバー(43)内の膨張空間(42)から吐出ガス出口(46)を通ってケーシング(10)内の第1空間(S1)内に吹き出される。その際、膨張空間(42)における膨張作用により吐出ガスの脈動騒音が低減される。
【0061】
ここで、膨張型の消音機構の概念図である図4を用いて、音響減衰量がピークになる周波数について説明する。図4において、膨張空間の経路長をl(m)とし、音速をc(m/s)とすると、音響減衰量がピークとなる周波数f(Hz)は、
f=nc/4l
で表される関係式を満たす。この関係式において、nは奇数である。このことから、音響減衰量がピークになる周波数は、膨張空間(42)の長さが長いほど低周波数側に移行し、その周波数の奇数倍ごとに音響減衰量のピークが立ち上がることが分かる。
【0062】
また、音響減衰量TLは、
TL=10・log10{1+(1/4)(m−1/m)2sin2kl}
で表される関係式を満たす。ここで、m=(D2/D1)2、k=2πf/cである。
【0063】
以上の関係式から、c=170(m/s)、l=60(mm)、m=5とすると、音響減衰量のピークは図5(A)に示すように約700(Hz)の奇数倍で現れ、c=170(mm)、l=400(mm)、m=5とすると、音響減衰量のピークは図5(B)に示すように約100(Hz)の奇数倍で現れる。このように、せいぜい経路長を60(mm)程度にしかすることのできない従来の膨張型消音機構に比べると、経路を渦巻き状にして約400(mm)にすることにより、低周波の脈動騒音を大幅に減衰できる。また、音響減衰量のピーク周波数が低周波数側に振られるとともに、ピーク周波数がその奇数倍ごとに立ち上がるため、低周波から高周波の全域にわたって騒音低減効果が高くなる。
【0064】
−実施形態1の効果−
このように、本実施形態1によれば、膨張空間(42)を、吐出口(29)と吐出ガス出口(46)とを通る1周以上の渦巻き状経路に沿って形成したことにより、該膨張空間(42)の経路長を従来よりも長くすることが可能となり、特に低周波数の脈動騒音を低減する効果を高められる。また、音響減衰量のピーク周波数が低周波側に振られ、その奇数倍で立ち上がる結果、低周波から高周波の全域に亘って騒音低減効果を高められる効果も得られる。
【0065】
また、この実施形態1では、圧縮機構(20)吐出口(29)から吐出された吐出ガスが膨張空間(42)から吐出ガス出口(46)を通ってケーシング(10)内へ吐出される際に、圧力波が途中で屈折せず、渦巻き状経路に沿って平面上を滑らかに流れるので、膨張型消音機構として十分な効果を得ることもできる。
【0066】
さらに、圧縮機構(20)の吐出口(29)及び吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)を膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成しているので、定在波が確実に発生し、しかも上記吐出ガス出口(46)を定在波の節の位置に配置しているため、吐出ガスが最も振幅の小さい状態で吐出ガス出口(46)から吐出されることになる。
【0067】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、図6に示すように、膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に絞り通路(48)が設けられて、該膨張空間(42)が絞り通路(48)を介して複数段に形成されたものである。絞り通路(48)は、膨張空間(42)の渦巻き状経路中に設けられた隔壁(49)の細孔により構成されている。
【0068】
その他の構成は実施形態1と同じである。
【0069】
図7は、c=170(mm)、1段目の経路長l1=400(mm)、2段目の経路長l2=200(mm)とした場合の音響減衰特性を示すグラフである。図示するように、渦巻き状経路を2段にして、各段の経路長を異ならせると、実施形態1に比べて音響減衰量のピーク値を高めることができる。したがって、広い範囲で消音効果を高めることができる。
【0070】
なお、この実施形態2では膨張空間(42)を2段の渦巻き状に形成しているが、3段以上にしてもよい。
【0071】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3は、実施形態1の消音機構(47)の構造において、渦巻き状の膨張空間(42)の経路長を変化させることができる経路長可変機構(50)を設けた例である。
【0072】
図8において、経路長可変機構(50)は、膨張空間(42)の端面(42b)寄りで側渦巻き状経路に沿って位置変化可能なスライドブロック(51)と、このスライドブロック(51)と端面(42b)との間に設けられたスプリング(52)と、膨張空間(42)における端面(42b)の近傍に設けられた低圧導入口(53)とから構成されている。低圧導入口(53)には、図示していないが、電磁弁のような開閉弁、または開度可変の電動弁が設けられている。
【0073】
この例では、膨張空間(42)の端面(42b)側に低圧導入口(53)から低圧ガスを導入することにより、スライドブロック(51)の第1面(51a)側と第2面(51b)側とに圧力差が生じる。そのため、スライドブロック(51)を渦巻き状経路に沿って移動させる力が発生し、その力によってスライドブロック(51)が移動して膨張空間(42)の経路長が変化する。このように経路長を変化させると、音響減衰量のピーク周波数を調整することが可能となる。
【0074】
上記経路長可変機構(50)は、圧縮機(1)が可変回転速度形(可変容量形)である場合に、圧縮機構(20)の回転速度に応じて経路長を変更させるように構成することができる。具体的には、圧縮機(1)の吐出ガスの脈動騒音は、圧縮機(1)の回転周波数のほぼ整数倍の周波数成分が大半を占める。そこで、経路長可変機構(50)を用いて膨張空間(42)の経路長を変化させるようにすると、音響減衰量のピーク周波数を圧縮機(1)の回転周波数のほぼ整数倍の値(その圧縮機において最も問題になる脈動騒音の周波数)に合わせることができる。その結果、騒音低減効果を高めることができる。
【0075】
(第1変形例)
経路長可変機構(50)は、図9に示すように、スライドブロック(51)と、このスライドブロック(51)の位置を調整するための調整ねじ(55)とから構成することもできる。調整ねじ(55)は、吐出カバー(43)のねじ穴(55a)に螺合しており、膨張空間(42)の端面(42b)からの突出量を調整することにより、スライドブロック(51)の位置を調整することができる。具体的には、上記突出量を増やすと、スライドブロック(51)を膨張空間(42)の端面(42b)から離れる方向へ押し出すことができる一方、上記突出量を減らすと、膨張空間(42)の圧力でスライドブロック(51)が該端面(42b)に接近する方向へ移動する。
【0076】
この第1変形例においても、膨張空間(42)の経路長を調整することにより、音響減衰量のピーク周波数を調整することができる。また、圧縮機(1)が可変回転速度形(可変容量形)である場合に、圧縮機構(20)の回転速度に応じて経路長を変更させることができるため、音響減衰量のピーク周波数を圧縮機(1)の回転周波数のほぼ整数倍の値(その圧縮機で最も問題になる脈動騒音の周波数)に合わせて騒音低減効果を高めることができる。
【0077】
(第2変形例)
経路長可変機構(50)は、図10に示すように、吐出ガス通路(57)が形成された回転式のバルブ(56)により構成することもできる。この回転式のバルブ(56)は、「閉」状態にすると膨張空間(42)の経路長を短くすることができ、「開」状態にすると膨張空間(42)の経路長を長くすることができるように構成されている。なお、図ではバルブ(56)の外周面と吐出カバー(43)と間の隙間を誇張して表しているが、実際にはこの隙間は微細な隙間である。
【0078】
この第2変形例においても、膨張空間の経路長を調整することができるので、音響減衰量のピーク周波数を調整することができる。また、圧縮機(1)が可変回転速度形(可変容量形)である場合に、圧縮機構(20)の回転速度に応じて経路長を変更させることができるため、音響減衰量のピーク周波数を圧縮機(1)の回転周波数のほぼ整数倍の値(その圧縮機で最も問題になる脈動騒音の周波数)に合わせて騒音低減効果を高めることができる。
【0079】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4は、膨張空間(42)をフロントヘッド(22)に形成し、吐出カバー(43)を平板状に形成したものである。
【0080】
図11(A)は消音機構(47)の断面図、図11(B)は吐出カバー(43)の平面図、図11(C)はフロントヘッド(22)の平面図である。図示するように、フロントヘッド(22)の上面には、渦巻き状の経路に沿って形成された溝(42)が形成されている。そして、フロントヘッド(22)の上面に平板状の吐出カバー(43)を固定することで、フロントヘッド(22)と吐出カバー(43)との間に、上記溝(42)により膨張空間が形成されるようになっている。この膨張空間(42)は、上記各実施形態と同様に、圧縮機構(20)の吐出口(29)と吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)とに連通している。
【0081】
このように構成しても、膨張空間(42)の経路長を十分な長さにすることができるので、特に低周波数の脈動騒音を低減する効果を高められる。また、音響減衰量のピーク周波数が低周波側に振られることによって、低周波から高周波の全域に亘って騒音低減効果を高められる効果も得られる。
【0082】
また、この実施形態4においても、圧縮機構(20)吐出口(29)から吐出された吐出ガスが膨張空間(42)から吐出ガス出口(46)を通ってケーシング(10)内へ吐出される際に、圧力波が途中で屈折せず、渦巻き状経路に沿って平面上を滑らかに流れるため、膨張型消音機構として十分な効果を得ることもできる。
【0083】
さらに、圧縮機構(20)の吐出口(29)及び吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)を膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成しているので、定在波が確実に発生する。また、上記吐出ガス出口(46)を定在波の節の位置に配置すると、吐出ガスを最も振幅の小さい状態で吐出ガス出口(46)から吐出させることができる。
【0084】
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5は、膨張空間(42)をシリンダ(21)とフロントヘッド(22)に跨るように形成し、吐出カバー(43)を平板状に形成したものである。
【0085】
図12(A)は消音機構(47)の断面図、図12(B)は吐出カバー(43)の平面図、図12(C)はフロントヘッド(22)の平面図である。図示するように、フロントヘッド(22)の上面には、圧縮機構(20)の吐出口(29)に連通する第1の渦巻き状溝(42a)が形成されている。また、シリンダ(21)の上面には、フロントヘッド(22)に形成された第1連通孔(42c)を介して上記第1の渦巻き状溝(42a)に連通する第2の渦巻き状溝(42b)が形成されている。第2の渦巻き状溝(42b)は、第2連通孔(42d)を介して吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)と連通するように形成されている。そして、フロントヘッド(22)と吐出カバー(43)との間に、第1の渦巻き状溝(42a)からなる第1の膨張空間(42a)が形成され、フロントヘッド(22)とシリンダ(21)との間に、第2の渦巻き状溝(42b)からなる第2の膨張空間(42b)が形成されている。このように第1の膨張空間(42a)と第2の膨張空間(42b)とが互いに連通することにより、この実施形態5の膨張空間(42)が形成されている。
【0086】
この実施形態5では、実施形態4と比べてもさらに膨張空間の経路長を長くすることができるので、低周波数の脈動騒音を低減する効果をより一層高めることができる。また、音響減衰量のピーク周波数が低周波側に振られることによって、低周波から高周波の全域に亘って騒音低減効果を高められる効果が得られる点などは実施形態4と同じである。
【0087】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0088】
上記実施形態では、ピストン(24)とブレード(26)とが別体になった回転ピストン型の圧縮機について説明したが、本発明はピストン(24)とブレード(26)とが一体になってシリンダ(21)に対して揺動をする揺動ピストン型の圧縮機に適用することもできる。
【0089】
また、上記実施形態では、電動機(30)がケーシング(10)に内蔵された圧縮機について説明したが、電動機はケーシング(10)の外部に設けてもよい。
【0090】
さらに、上記各実施形態ではフロントヘッド(22)側に消音機構(47)を設けた例について説明したが、場合によっては消音機構(47)はリヤヘッド(23)側に設けてもよい。
【0091】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明は、ケーシング内が圧縮機の吐出圧力になる高圧ドーム形の圧縮機で、膨張型の消音機構が設けられるものについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施形態1に係る圧縮機の縦断面図である。
【図2】図1の圧縮機の圧縮機構を示す横断面図である。
【図3】図3(A)は図1のIII−III線断面図、図3(B)は膨張空間と吐出口及び吐出ガス出口の位置関係を模式的に表した図である。
【図4】図4(A)は膨張型消音機構の概念図、図4(B)は音響減衰量と周波数との関係を示すグラフである。
【図5】図5(A)は従来の消音機構の音響減衰量と周波数との関係を示すグラフ、図5(B)は実施形態1の消音機構の音響減衰量と周波数との関係を示すグラフである。
【図6】実施形態2に係る消音機構の吐出カバーを示す断面図である。
【図7】実施形態2の消音機構の音響減衰量と周波数との関係を示すグラフである。
【図8】実施形態3に係る消音機構の吐出カバーを示す断面図である。
【図9】実施形態3の第1の変形例に係る消音機構の吐出カバーを示す断面図である。
【図10】実施形態3の第2の変形例に係る消音機構の吐出カバーを示す断面図である。
【図11】実施形態4に係る消音機構を示す図であり、図11(A)は消音機構の断面図、図11(B)は吐出カバーの平面図、図11(C)はフロントヘッドの平面図である。
【図12】実施形態5に係る消音機構を示す図であり、図12(A)は消音機構の断面図、図12(B)は吐出カバーの平面図、図12(C)はフロントヘッドの平面図である。
【符号の説明】
【0094】
10 ケーシング
14 吸入管
15 吐出管
20 圧縮機構
21 シリンダ
22 フロントヘッド
23 リヤヘッド
24 ピストン
25 シリンダ室
29 吐出口
33 駆動軸
42 渦巻き状の溝(膨張空間)
42a 第1の渦巻き状の溝(膨張空間)
42b 第2の渦巻き状の溝(膨張空間)
43 吐出カバー
46 吐出ガス出口
47 消音機構
48 絞り通路
50 経路長可変機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮して吐出する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を収納するケーシング(10)と、圧縮機構(20)の吸入側に連通する吸入管(14)と、該ケーシング(10)内の空間に開口するようにケーシング(10)に設けられた吐出管(15)と、圧縮機構(20)に設けられた吐出口(29)を覆って吐出ガスの膨張空間(42)を形成するとともに該膨張空間(42)からケーシング(10)内への吐出ガス出口(46)が形成された吐出カバー(43)を有する消音機構(47)とを備えた圧縮機であって、
上記膨張空間(42)が、吐出口(29)と吐出ガス出口(46)とを通る1周以上の渦巻き状経路に沿って形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
圧縮機構(20)の吐出口(29)が膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2において、
吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)が膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つにおいて、
吐出ガスカバーの吐出ガス出口(46)が膨張空間(42)内における圧力の定在波の節に対応する位置に形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つにおいて、
膨張空間(42)における渦巻き状経路の途中の位置に絞り通路(48)が設けられ、該膨張空間(42)が絞り通路(48)を介して複数段に形成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つにおいて、
渦巻き状に形成された膨張空間(42)の経路長を変化させる経路長可変機構(50)を備えていることを特徴とする圧縮機。
【請求項7】
請求項6において、
経路長可変機構(50)は圧縮機構(20)の回転速度に応じて膨張空間(42)の経路長を変更させるように構成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つにおいて、
圧縮機構(20)は、駆動軸(33)と、円筒状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の一方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するフロントヘッド(22)と、該シリンダ(21)の他方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するリヤヘッド(23)と、シリンダ(21)とフロントヘッド(22)とリヤヘッド(23)とにより区画されるシリンダ室(25)に位置して駆動軸(33)に連結され、シリンダ室(25)内で偏心回転をするピストン(24)とを有し、
フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間に、圧縮機構(20)の吐出口(29)と吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)とに連通する渦巻き状の溝(42)が形成されて膨張空間(42)が構成されていることを特徴とする圧縮機。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1つにおいて、
圧縮機構(20)は、駆動軸(33)と、円筒状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の一方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するフロントヘッド(22)と、該シリンダ(21)の他方の端面に固定されて駆動軸(33)が貫通するリヤヘッド(23)と、シリンダ(21)とフロントヘッド(22)とリヤヘッド(23)とにより区画されるシリンダ室(25)に位置して駆動軸(33)に連結され、シリンダ室(25)内で偏心回転をするピストン(24)とを有し、
フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方と吐出カバー(43)との間に、圧縮機構(20)の吐出口(29)に連通する第1の渦巻き状の溝(42a)が形成され、該フロントヘッド(22)及びリヤヘッド(23)の一方とシリンダ(21)との間に、吐出カバー(43)の吐出ガス出口(46)に連通する第2の渦巻き状の溝(42b)が形成され、第1の渦巻き状の溝(42a)と第2の渦巻き状の溝(42b)とが連通して膨張空間(42)を構成していることを特徴とする圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−40107(P2007−40107A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221992(P2005−221992)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】