説明

圧縮機

【課題】スタッドを有するターミナル端子の温度上昇を抑制する。
【解決手段】圧縮機は、ターミナル端子(30)を備えている。ターミナル端子(30)は、ケーシング(11)の内外を貫通するように設けられ、駆動モータ(12)と外部電源とを電気的に接続するための導電性を有した棒状のスタッド(31)を有している。スタッド(31)は、下部がケーシング(11)内の冷媒の流路である低圧空間(S1)に位置し、さらに、スタッド(31)には、下端面を凹陥してなる中空部(35)が形成されている。中空部(35)は、側壁(35a)の厚さが、表皮深さ、つまり、電流が流れる表層部の深さよりも大きくなるように、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関し、特に、ターミナル端子の温度上昇の抑制に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ターミナル端子を有する圧縮機が知られている。例えば、特許文献1には、この種の圧縮機が開示されている。この圧縮機では、ターミナル端子はケーシングの開口部を蓋するように設けられたターミナルプレートに配設されている。ターミナル端子は、ターミナルプレートの貫通孔に貫通するように設けられた導電性を有する棒状のスタッドと、スタッドと貫通孔との間を絶縁する絶縁部とを有している。そして、スタッドの一端部がケーシング内の駆動モータに、他端部がケーシング外の外部電源にそれぞれ電気的に接続される。その結果、密閉されたケーシング内で駆動モータが供電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−30472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧縮機では、高い導電性を得るため、スタッドは主として銅で形成されていた。しかし、銅は熱膨張しやすい材料であるため、銅によって形成されたスタッドでは、熱膨張によって周囲の絶縁部を破損させてしまう恐れがある。
【0005】
そこで、このような絶縁部の破損を防止するため、銅よりも熱膨張しにくい鉄系の材料でスタッドが形成されることがある。しかし、鉄系の材料では電気抵抗が大きいため、スタッドに電流が流れると温度上昇しやすく、スタッドが高温になってしまう。このようなスタッドの温度上昇を抑制するには、スタッドの径を大きくして電気抵抗を小さくすることも考えられるが、ターミナル端子の大型化を招いてしまう。
【0006】
そこで本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スタッドの径を大きくすることなく、スタッドの温度上昇を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と該圧縮機構(20)を駆動する駆動モータ(12)とが収容されると共に、内部に上記冷媒の流路が形成されたケーシング(11)と、ケーシング(11)の内外を貫通するように設けられ、駆動モータ(12)と外部電源とを電気的に接続するための導電性を有した棒状のスタッド(31)と、ケーシング(11)におけるスタッド(31)の貫通孔(11e)と該スタッド(31)との間を絶縁する絶縁部(32)とを備えた圧縮機を前提としている。そして、上記スタッド(31)は、ケーシング(11)の内側の端部が上記冷媒の流路に位置するように設けられると共に、ケーシング(11)の内側の端面を凹陥してなる中空部(35)を有し、中空部(35)の側壁(35a)の厚さt[m]が、外部電源の電源周波数をf[Hz]、上記スタッド(31)の電気抵抗をρ[Ωm]及び透磁率をμ[H/m]とすると、下記式(1)
【0008】
【数1】

【0009】
の関係式を満たすものである。
【0010】
電源周波数f[Hz]が高くなると、スタッド(31)には表層部にしか電流が流れなくなる。上記式(1)の右辺は、表皮深さ、つまり電源周波数f[Hz]の電流が流れる表層部の深さを表している。
【0011】
上記第1の発明では、中空部(35)の側壁(35a)の厚さt[m]が表皮深さよりも大きくなるように、中空部(35)が形成されている。つまり、中空部(35)は、スタッド(31)の表層部よりも内側の電流が流れない中央部を凹陥して形成されている。そのため、スタッド(31)に中空部(35)が形成されても、スタッド(31)の電気抵抗が大きくなって通電時におけるスタッド(31)の発熱量が増加することがない。
【0012】
さらに、上記第1の発明では、スタッド(31)のケーシング(11)内側の端部が、ケーシング(11)内の冷媒の流路に位置している。そして、中空部(35)が、スタッド(31)のケーシング(11)内側の端面を凹陥して形成されている。上記流路に冷媒が流れると、冷媒は中空部(35)にも流入するため、冷媒は外壁面だけでなく内壁面にも接触してスタッド(31)から熱を奪うため、スタッド(31)は冷却される。
【0013】
第2の発明では、上記第1の発明において、上記スタッド(31)は、中空部(35)の側壁(35a)を貫通する孔部(35b)を有している。
【0014】
上記第2の発明では、中空部(35)に複数の開口が設けられている。そのため、中空部(35)に流入した冷媒は、滞留せずに流出しやすくなり、中空部(35)内の冷媒の流動が促進される。
【0015】
第3の発明では、上記第1または第2の発明において、上記スタッド(31)は、中空部(35)の側壁面が凹凸状に形成されている。
【0016】
上記第3の発明では、中空部(35)の側壁面が凹凸状に形成されることで、側壁面の表面積が大きくなる。側壁面の表面積が大きくなると、冷媒とスタッド(31)との接触面積が大きくなるため、スタッド(31)は一層冷却され易くなる。
【0017】
第4の発明では、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記スタッド(31)は、非磁性の鋼材料で形成されている。
【0018】
上記第4の発明では、スタッド(31)は非磁性材料によって形成されている。非磁性材料は、磁性材料に比べて透磁率が小さいため、上記式(1)において表皮深さが大きくなる。従って、電流が流れる表層部の断面積が大きくなり、電気抵抗が小さくなって電流が流れやすくなる。さらに、スタッド(31)は鋼材料で形成されているため、スタッドの熱膨張は比較的小さく、熱膨張によってスタッド(31)の周囲の絶縁部(32)を破損することが抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、中空部(35)の側壁(35a)の厚さt[m]が、表皮深さ、つまり、電流が流れる表層部の深さよりも大きくなるように、中空部(35)を形成するようにした。これにより、通電時におけるスタッド(31)の発熱量を増加させることなく、中空部(35)を形成できる。つまり、スタッド(31)に中空部(35)を形成しても、発熱量を従来と同程度に抑えることができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、スタッド(31)の中空部(35)がケーシング(11)内の冷媒の流路に位置するように、スタッド(31)を設けるようにした。これにより、冷媒は中空部(35)の外壁面だけでなく内壁面にも接触するため、冷媒とスタッド(31)との接触面積を増大させることができる。そのため、冷媒によって、スタッド(31)を十分に冷却できる。
【0021】
このように、本発明では、スタッド(31)の発熱量を従来程度に抑えつつ、スタッド(31)を十分に冷却できるため、スタッド(31)の温度上昇を抑制できる。そのため、スタッド(31)の径を大きくして、発熱量を低減させる必要はない。
【0022】
第2の発明によれば、スタッド(31)の中空部(35)の側壁(35a)に、貫通する孔部(35b)を形成するようにした。孔部(35b)が形成されると、中空部(35)内の冷媒の流動を促進できる。そのため、スタッド(31)の冷却効率を高めることができ、スタッドの温度上昇を一層抑制できる。
【0023】
第3の発明によれば、スタッド(31)の中空部(35)の側壁面を凹凸状に形成するようにした。これにより、側壁面の表面積が大きくなって、冷媒とスタッド(31)との接触面積を増大させることができる。そのため、スタッド(31)の温度上昇を一層抑制できる。
【0024】
第4の発明によれば、スタッド(31)を非磁性の鋼材料で形成するようにした。これにより、スタッド(31)の電気抵抗を小さくして電流を流れやすくできる。さらに、スタッド(31)は鋼材料で形成されているため、スタッドの熱膨張は比較的小さく、熱膨張によって生じるスタッド(31)の周囲の絶縁部(32)の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態に係るスクリュー圧縮機の縦断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るスクリュー圧縮機の横断面図である。
【図3】図3は、実施形態に係るスクリューロータ及びゲートロータの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態に係るスクリューロータ及びゲートロータの別角度からの斜視図である。
【図5】図5は、実施形態に係るターミナル端子及びターミナルプレートの平面図である。
【図6】図6は、実施形態に係るターミナル端子の縦断面図である。
【図7】図7は、実施形態に係るスクリュー圧縮機の圧縮機構の動作を示す平面図であって、(a)は吸入行程を示し、(b)は圧縮行程を示し、(c)吐出行程を示す。
【図8】図8は、実施形態の変形例1に係るターミナル端子の縦断面図である。
【図9】図9は、実施形態の変形例2に係るターミナル端子の縦断面図である。
【図10】図10は、実施形態の変形例3に係るステンレス及び鉄の表皮深さを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態及び変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0027】
《発明の実施形態1》
本実施形態の圧縮機は、スクリュー圧縮機(10)である。スクリュー圧縮機(10)は、例えば、冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示省略)に接続されて冷媒を圧縮するものである。図1及び図2に示すように、このスクリュー圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、該ケーシング(11)に収容された駆動モータ(12)、圧縮機構(20)及び駆動軸(21)とを備えている。
【0028】
上記ケーシング(11)の内部には、冷媒回路から低圧の冷媒が流入されるとともにその冷媒を圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧の冷媒が流入する高圧空間(S2)とが、区画部材(29)によって区画形成されている。ケーシング(11)の低圧空間(S1)側には、冷媒回路から冷媒を吸入する吸入口(11a)が設けられている。
【0029】
上記駆動モータ(12)は、ステータ(13)と、ロータ(14)とを備えている。ステータ(13)は、低圧空間(S1)においてケーシング(11)の内周面に固定されている。ロータ(14)には、駆動軸(21)の一端部が連結され、駆動軸(21)がロータ(14)とともに回転軸(X)回りに回転するように構成されている。
【0030】
上記圧縮機構(20)は、ケーシング(11)内に形成された円筒壁(16)と、円筒壁(16)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。
【0031】
上記スクリューロータ(40)は、図3及び図4に示すように、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)の外径は、円筒壁(16)の内径よりも若干小さく設定されており、スクリューロータ(40)の外周面が円筒壁(16)の内周面と摺接するように構成されている。スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の軸方向一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では6本)形成されている。
【0032】
上記スクリューロータ(40)の軸方向一端側の周縁部にはテーパ面(45)が形成されていて、螺旋溝(41)の一端部はテーパ面(45)に開口している。各螺旋溝(41)は、テーパ面(45)に開口する一端部(図1における左端部)が始端部となり、他端部(図1における右端部)が終端部となっている。一方、螺旋溝(41)の終端部は、スクリューロータ(40)の軸方向他端側においてその側周面に開口している。また、上記スクリューロータ(40)の他端部には、螺旋溝(41)が形成されている本体部(40a)よりも外径が小さな小径部(46)が形成されている。
【0033】
上記スクリューロータ(40)には、図1に示すように、軸方向に貫通孔(47)が形成され、その貫通孔(47)には駆動軸(21)が挿通されている。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。駆動軸(21)の先端部は、圧縮機構(20)の高圧側(図1における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側)に位置する軸受ホルダ(60)に回転自在に支持されている。この軸受ホルダ(60)は、玉軸受(61)を介して駆動軸(21)を支持している。
【0034】
上記ゲートロータ(50)は、図3及び図4に示すように、長方形板状に形成された複数(本実施形態では11枚)のティース(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。各ゲートロータ(50)は、円筒壁(16)の外側にスクリューロータ(40)を挟んで対称に配置され、軸心がスクリューロータ(40)の軸心と直交している。各ゲートロータ(50)は、ティース(51)が円筒壁(16)の一部を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。
【0035】
上記ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のティース(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ティース(51)の背面に当接している。
【0036】
図2に示すように、上記ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、円筒壁(16)に隣接してケーシング(11)内に区画形成されたゲートロータ室(18)に収容されている。図2におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。一方、図2におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(18)内の軸受ハウジング(52)に玉軸受(53)を介して回転自在に支持されている。なお、各ゲートロータ室(18)は、低圧空間(S1)に連通している。
【0037】
ケーシング(11)は、貫通穴(11b)が形成された台座部(11c)を一体に有している。この台座部(11c)は、ケーシング(11)の上部から突出するように形成され、その上面が概ね水平な平坦面となっている。台座部(11c)の上面には、貫通穴(11b)を蓋するように、四角状の板材であるターミナルプレート(11d)が取り付けられている。ターミナルプレート(11d)は、ケーシング(11)の一部を構成している。そして、ターミナルプレート(11d)には、ターミナル端子(30)が設けられている。
【0038】
図5及び図6に示すように、上記ターミナル端子(30)は、6本のスタッド(31)を備えている。スタッド(31)は、導電性を有する棒状の部材であり、鉄によって形成されている。スタッド(31)は、ターミナルプレート(11d)に形成された貫通孔(11e)に挿入され、ターミナルプレート(11d)から突出するように設けられている。つまり、スタッド(31)は、ケーシング(11)の内外を貫通するように設けられている。スタッド(31)と貫通孔(11e)との間には、スタッド(31)とターミナルプレート(11d)とを絶縁する絶縁部(32)が設けられている。絶縁部(32)は、例えば、ガラスによって形成されている。
【0039】
ターミナルプレート(11d)の下側、つまり、ケーシング(11)の内側に位置するスタッド(31)の下部には、駆動モータ(12)の巻線を接続する接続部(33)が設けられている。一方、ターミナルプレート(11d)の上側、つまり、ケーシング(11)の外側に位置するスタッド(31)の上端部には、外部電源(図示省略)に接続されたリード線を接続するための接続部(34)が設けられている。このように、駆動モータ(12)は、スタッド(31)を介して外部電源と電気的に接続されている。
【0040】
スタッド(31)の下部が位置するケーシング(11)内の空間は、低圧空間(S1)である。つまり、スタッド(31)の下部は、低圧の冷媒が圧縮機構(20)へ向かう流路に位置している。そして、スタッド(31)には、スタッドの下端が凹陥されて中空部(35)が形成されている。
【0041】
中空部(35)は、内部の空間が円柱状であり、側壁(35a)が一定の厚さで形成されている。中空部(35)の側壁(35a)は、中空部(35)の側壁(35a)の厚さをt[m]、外部電源の電源周波数をf[Hz]、スタッド(31)を構成する材料の電気抵抗をρ[Ωm]、透磁率をμ[H/m]とすると、下記式(1)の関係式を満たすように形成されている。
【0042】
【数1】

【0043】
上記式(1)の右辺は、表皮深さを示している。一般に、電源周波数f[Hz]が高くなると、導体中には表層部にしか電流は流れなくなるが、表皮深さとは、電源周波数f[Hz]の電流が流れる表層部の深さのことである。式(1)に示すように、中空部(35)の側壁(35a)は、厚さt[m]が表皮深さよりも大きくなるように形成されている。つまり、中空部(35)は、スタッド(31)の表層部よりも内側の電流が流れない中央部を凹陥して形成されている。
【0044】
−運転動作−
以下、上記スクリュー圧縮機(10)の運転動作について説明する。図1に示すように、スクリュー圧縮機(10)において駆動モータ(12)が起動すると、駆動軸(21)の回転に伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を繰り返す。ここでは、図7において網掛けを付した圧縮室(23)に着目して説明する。
【0045】
図7(a)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。また、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図7(a)の下側に位置するゲートロータ(50)のティース(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このティース(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って圧縮室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧冷媒が吸入口(24)を通じて圧縮室(23)へ吸い込まれる。
【0046】
上記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図7(b)の状態となる。図7(b)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図7(b)の上側に位置するゲートロータ(50)のティース(51)と噛み合わされ、このティース(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってティース(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室(23)内の冷媒が圧縮される。
【0047】
上記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図7(c)の状態となる。図7(c)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、吐出口(図示省略)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となっている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってティース(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮された冷媒が圧縮室(23)から高圧空間(S2)へ押し出されてゆく。
【0048】
ところで、駆動モータ(12)を起動すると、外部電源からターミナル端子(30)のスタッド(31)を介して駆動モータ(12)に電流が流れるため、スタッド(31)が発熱して温度上昇してしまう。
【0049】
ところが、本実施形態では、スタッド(31)の下部がターミナルプレート(11d)から突出してケーシング(11)内の低圧空間(S1)に位置している。さらに、スタッド(31)には、下端面を凹陥して中空部(35)が形成されている。そのため、低圧空間(S1)の冷媒が、中空部(35)に接触してスタッド(31)から熱を奪い、スタッド(31)を冷却することができる。しかも、低圧空間(S1)の冷媒が中空部(35)内に流入するため、冷媒は、中空部(35)の外壁面だけでなく内壁面にも接触して冷却が行われる。このように、中空部(35)を設けることで冷媒とスタッド(31)との接触面積を大きくでき、スタッド(31)を十分に冷却して、スタッド(31)の温度上昇を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、中空部(35)の側壁(35a)の厚さt[m]が、表皮深さ、つまり、電流が流れる表層部の深さよりも大きくなるように、中空部(35)が形成されている。つまり、中空部(35)は、表層部よりも内側の電流が流れない中央部を凹陥して形成されている。そのため、スタッド(31)に中空部(35)が形成されても、スタッド(31)の電気抵抗が大きくなって、通電時におけるスタッド(31)の発熱量が増加することはない。このように、本実施形態では、スタッド(31)の発熱量を増加させずに、スタッド(31)を十分冷却できるため、スタッド(31)の温度上昇を十分抑制できる。
【0051】
−実施形態の効果−
本実施形態では、中空部(35)の側壁(35a)の厚さt[m]が、表皮深さ、つまり、電流が流れる表層部の深さよりも大きくなるように、中空部(35)を形成するようにした。これにより、通電時におけるスタッド(31)の発熱量を従来と同程度に抑えつつ、中空部(35)を形成できる。
【0052】
また、本実施形態では、スタッド(31)の下部が冷媒の流路を形成するケーシング(11)内の空間に位置するようにスタッド(31)を設けるようにした。これにより、冷媒がスタッド(31)から熱を奪って、スタッド(31)を冷却できる。
【0053】
また、本実施形態では、スタッド(31)の下部が中空部(35)になっているため、冷媒とスタッド(31)との接触面積を増大させることができ、スタッド(31)を冷媒によって十分に冷却できる。
【0054】
また、本実施形態では、スタッド(31)の下部を低圧空間(S1)に位置させるようにした。これにより、スタッド(31)をケーシング(11)内で最も低温の冷媒で冷却でき、冷却能力を向上させることができる。
【0055】
このように、本実施形態では、スタッド(31)の発熱量を従来程度に抑えつつ、スタッド(31)を十分に冷却できるため、スタッド(31)の温度上昇を抑制できる。そのため、スタッド(31)の径を大きくして、発熱量を低減させる必要はない。
【0056】
また、本実施形態では、スタッド(31)が鉄で形成されている。鉄は銅等の他の金属材料と比べて熱膨張が小さい。そのため、スタッド(31)の熱膨張によって生じる絶縁部(32)の破損を抑制できる。
【0057】
《実施形態の変形例1》
本発明は、図8に示すように、上記実施形態において、中空部(35)の側壁(35a)に貫通する孔部(35b)を設けるようにしても良い。
【0058】
孔部(35b)は、中空部(35)の側壁(35a)において、ターミナルプレート(11d)の下面近傍に2つ貫通形成されている。これら2つの孔部(35b)は、中空部(35)内の空間を挟んで対向している。
【0059】
このように孔部(35b)が形成されると、中空部(35)に流入した冷媒は、滞留せずに流出しやすくなり、中空部(35)内の冷媒の流動が促進される。さらに、孔部(35b)は、低圧空間(S1)の冷媒の流れに対して略平行に形成されている。そのため、冷媒は、孔部(35b)を通って中空部(35)内に流入しやすくなる。このように、中空部(35)内の冷媒の流動を促進させてスタッド(31)の冷却能力を高めることができ、スタッド(31)の温度上昇を一層抑制できる。尚、この変形例1では、孔部(35b)の数及び配置については、この限りではない。
【0060】
《実施形態の変形例2》
本発明は、図9に示すように、上記実施形態において、中空部(35)の内壁面を凹凸状にしても構わない。
【0061】
中空部(35)の内壁面には、凹凸状のねじ山部(35c)が形成されている。このように、中空部(35)の内壁面が凹凸状に形成されると、内壁面の表面積が大きくなる。そのため、低圧空間(S1)の冷媒とスタッド(31)との接触面積を大きくでき、スタッド(31)の温度上昇を一層抑制できる。尚、この変形例2では、中空部(35)の内壁面を凹凸状にしたが、これに限らず、外壁面を凹凸状にしても構わない。また、凹凸の形状についてもこの限りではない。
【0062】
《実施形態の変形例3》
上記実施形態において、スタッド(31)の構成材料を鉄からステンレスに変更しても構わない。ステンレスは、非磁性材料であるため、図10に示すように透磁率が低い。そのため、表皮深さ、つまり電流が流れる表層部の深さが大きくなり、スタッド(31)の導電性を高くできる。さらに、ステンレスは鉄と同様に鋼材料であるため、銅等の他の金属材料と比べて熱膨張が小さく、スタッド(31)の熱膨張によって絶縁部(32)が破損することを抑制できる。このように、熱膨張による破損を抑制でき、且つ導電性の高いターミナル端子(30)を形成できる。
【0063】
《実施形態のその他の変形例》
上記実施形態の圧縮機は、スクリュー圧縮機(10)であったが、圧縮機の型式はこれに限らず、例えば、ロータリー型、スクロール型、レシプロ型の何れの圧縮機であっても構わない。
【0064】
上記実施形態では、スタッド(31)の中空部(35)が低圧空間(S1)に位置しているが、スタッド(31)の中空部(35)の位置はこれに限らず、高圧空間(S2)等、ケーシング(11)内の冷媒の流路であれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、ケーシング(11)内に圧縮機構(20)と駆動モータ(12)とが収容された圧縮機について有用である。
【符号の説明】
【0066】
11 ケーシング
11e 貫通孔
12 駆動モータ
20 圧縮機構
31 スタッド
32 絶縁部
35 中空部
35a 側壁
35b 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と該圧縮機構(20)を駆動する駆動モータ(12)とが収容されると共に、内部に上記冷媒の流路が形成されたケーシング(11)と、
上記ケーシング(11)の内外を貫通するように設けられ、上記駆動モータ(12)と外部電源とを電気的に接続するための導電性を有した棒状のスタッド(31)と、
上記ケーシング(11)における上記スタッド(31)の貫通孔(11e)と該スタッド(31)との間を絶縁する絶縁部(32)とを備えた圧縮機であって、
上記スタッド(31)は、上記ケーシング(11)の内側の端部が上記冷媒の流路に位置するように設けられると共に、上記ケーシング(11)の内側の端面を凹陥してなる中空部(35)を有し、
上記中空部(35)の側壁(35a)の厚さt[m]が、上記外部電源の電源周波数をf[Hz]、上記スタッド(31)の電気抵抗をρ[Ωm]及び透磁率をμ[H/m]とすると、下記式(1)
【数1】

の関係式を満たす
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記スタッド(31)は、上記中空部(35)の側壁(35a)を貫通する孔部(35b)を有している
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記スタッド(31)は、上記中空部(35)の側壁面が凹凸状に形成されている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項において、
上記スタッド(31)は、非磁性の鋼材料で形成されている
ことを特徴とする圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−15052(P2013−15052A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147443(P2011−147443)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】