説明

圧縮機

【課題】貯油室の油面の乱れを抑えることができるとともに、油分離室の潤滑油を外部へ持ち出しにくくすることができる圧縮機を提供すること。
【解決手段】スクロール型圧縮機10には、油分離室41で分離された潤滑油が流入する予備貯油室42が、油分離室41の周壁である第4区画壁部12gを室形成壁の一部に用いて形成されている。この第4区画壁部12gには、油分離室41の潤滑油を予備貯油室42に導入する導入路43が形成されている。導入路43は、一端の導出口43aが周壁の内周面で油分離室41に開口するとともに、他端の導入口43bが予備貯油室42に開口している。重力方向における予備貯油室42の下側に、貯油室44が設けられるとともに、予備貯油室42の底壁(第1区画壁部13d)に、予備貯油室42から貯油室44に潤滑油を流出させる流出口45が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に、冷媒を圧縮する圧縮部を有し、該圧縮部から吐出された冷媒が導入されるとともに、冷媒を旋回させる周壁を備える油分離室を有し、さらに、油分離室で冷媒から分離された潤滑油の貯油室を有し、該貯油室の潤滑油を圧縮部の吸入側に供給するように構成された圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧縮機としては、例えば、特許文献1が挙げられる。図5に示すように、特許文献1の圧縮機80のハウジング81内において、圧縮部(図示せず)に連通する冷媒吐出室82と、この冷媒吐出室82に連通する冷媒吐出口83と、の間の冷媒通路内には、分離室(油分離室)84が形成されている。分離室84は、円筒状の内壁85によって区画形成されるとともに、分離室84内には円筒状の分離管86が配置されている。この分離管86は、上端が冷媒吐出口83に接続されるとともに、下端が分離室84の底壁84bと間隔をおいて開放されている。
【0003】
分離室84の冷媒吐出室82側の上部には一対の連通孔87が形成されるとともに、分離室84の底壁84bの中央には導入孔84aが形成されている。分離室84の下側には、貯油室88が形成されるとともに、この貯油室88は、仕切壁89によって第1の貯油室90と第2の貯油室91に分割されている。第1及び第2の貯油室90,91の下部には、それぞれ切欠部90a,91aが形成されるとともに、両切欠部90a,91aは連通路92によって連通している。第1の貯油室90と分離室84は、導入孔84aによって連通するとともに、第2の貯油室91は、圧縮部の冷媒吸入側と連通している。
【0004】
そして、冷媒吐出室82から連通孔87を経て分離室84に吐出された冷媒は、分離室84の内壁85に沿って旋回する。このとき、冷媒は、分離管86の下端から冷媒吐出口83を経て圧縮機80の外部に吐出され、冷媒に含まれる潤滑油は、内壁85に付着して、冷媒から分離される。分離された潤滑油は、分離室84の導入孔84aを経て貯油室88の第1の貯油室90に吐出される。第1の貯油室90の潤滑油は、両切欠部90a,91a及び連通路92を経て第2の貯油室91から冷媒吸入側に吸入される。
【0005】
このため、特許文献1の圧縮機80においては、分離室84から吐出された潤滑油の勢いによって、第1の貯油室90の油面が乱されても、第2の貯油室91の油面が乱されることが抑えられ、冷媒が気泡となって冷媒吸入側に吸入されることが防止される。したがって、特許文献1の圧縮機80では、潤滑油を冷媒吸入側へ安定して供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−171860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1において、冷媒に含まれる潤滑油は、分離室84の内壁85に付着することで冷媒から分離される。そして、分離後の潤滑油は、内壁85から分離室84の底壁84bに沿って流動し、その底壁84bの中央に形成された導入孔84aを経て貯油室88(第1の貯油室90)に吐出される。このため、分離室84の潤滑油は、底壁84bに沿って流動する分、貯油室88に吐出されるまでに時間を要し、底壁84bを流動する最中に冷媒とともに圧縮機80の外部に持ち出されてしまう。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、貯油室の油面の乱れを抑えることができるとともに、油分離室の潤滑油を外部へ持ち出しにくくすることができる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハウジング内に、冷媒を圧縮する圧縮部を有し、該圧縮部から吐出された前記冷媒が導入されるとともに、前記冷媒を旋回させる周壁を備える油分離室を有し、さらに、前記油分離室で前記冷媒から分離された潤滑油の貯油室を有し、該貯油室の潤滑油を前記圧縮部の吸入側に供給するように構成された圧縮機に関する。そして、圧縮機においては、前記油分離室で分離された潤滑油が流入する予備貯油室が、前記油分離室の周壁を室形成壁の一部に用いて形成されるとともに、前記周壁に、前記油分離室の潤滑油を前記予備貯油室に導入する導入路が形成され、前記導入路は、一端の導出口が前記周壁の内周面で前記油分離室に開口するとともに、他端の導入口が前記予備貯油室に開口している。さらに、重力方向における前記予備貯油室の下側に、前記貯油室が設けられるとともに、前記予備貯油室の底壁に、前記予備貯油室から前記貯油室に前記潤滑油を流出させる流出口が形成されている。
【0010】
これによれば、油分離室に吐出された冷媒は、油分離室の周壁によって旋回し、この旋回によって潤滑油が冷媒から分離されるとともに、分離された冷媒は周壁に沿って流下する。ここで、予備貯油室が、油分離室の周壁を室形成壁の一部に用いて形成されているため、周壁を挟んで油分離室と予備貯油室が隣り合って配設されている。また、周壁に形成された導入路においては、導入路の導出口が油分離室の周壁の内周面で開口している。このため、周壁に沿って流下する潤滑油は、そのまま周壁内周面から導出口に入り、導入路を経て予備貯油室に導入される。よって、油分離室で分離された潤滑油は、油分離室の底壁を流動することなく、予備貯油室に導入される。したがって、背景技術のように油分離室の潤滑油が油分離室の底壁を流動する場合と比べると、潤滑油は予備貯油室に速やかに導入され、冷媒によって油分離室から持ち出されにくくなる。
【0011】
また、油分離室で分離された潤滑油の勢いは、潤滑油が導入路を経ること、及び予備貯油室に一旦導入されることにより抑えられる。さらに、予備貯油室の潤滑油が流出口を経ることで潤滑油の勢いは抑えられ、貯油室に流出する際には潤滑油の勢いはほとんど無くなっている。加えて、予備貯油室と貯油室は、別々の空間であるため、予備貯油室に潤滑油が導入されても、貯油室の油面が乱されることはない。したがって、貯油室に潤滑油が流出されても、貯油室の油面の乱れを抑えることができる。
【0012】
また、前記導出口は、前記重力方向における前記油分離室の下部側に位置するとともに、前記導入口は、前記重力方向における前記導出口より上側で、かつ前記予備貯油室の下部側に位置するように形成されていてもよい。
【0013】
これによれば、油分離室から導入路に導入された潤滑油は、導入路を通過する際、重力に逆らって予備貯油室に引き上げられるため、潤滑油が導入路を通過するに連れて勢いを落とすことができる。
【0014】
また、前記予備貯油室は、区画部によって前記導入口側の導入室と、前記流出口側の流出室とに区画されるとともに、前記導入室と前記流出室とは前記重力方向における前記区画部より上側の連通部によって連通していてもよい。
【0015】
これによれば、油分離室から予備貯油室に導入された潤滑油は、まず、導入室に導入される。すると、導入室に導入された潤滑油は、区画部によって流出室へ流動することが堰き止められ、導入室で一旦滞留することとなり、潤滑油の勢いはほとんど無くなる。そして、導入室に滞留した潤滑油が区画部を越えるまでオーバーフローすると、導入室の潤滑油は、連通部を経て流出室に供給される。したがって、予備貯油室に導入された潤滑油が、そのまま直接貯油室へ流出する場合と比べると、貯油室に流出する潤滑油の勢いを落とすことができる。
【0016】
また、前記予備貯油室は、複数のハウジング形成部材を連結して形成され、前記ハウジング形成部材同士の間にガスケットが挟持されるとともに、前記区画部は前記ガスケットにより形成されていてもよい。
【0017】
これによれば、ガスケットは、ハウジング形成部材同士の間をシールするために設けられる。そして、このガスケットで区画部を形成するため、予備貯油室内に区画部を別途設ける等の必要がなく、区画部を簡単に設けることができる。また、ガスケットを加工するだけで区画部の高さを簡単に調節することができる。
【0018】
また、前記油分離室、前記予備貯油室、及び前記貯油室は、複数のハウジング形成部材を連結して形成されていてもよい。
これによれば、油分離室、予備貯油室、及び貯油室を2つのハウジング形成部材に跨って形成することができ、各室を例えば1つのハウジング形成部材だけに形成する場合と比べると容積を大きく確保することができる。
【0019】
また、前記圧縮部は、スクロール型であってもよい。
これによれば、ハウジング内では、スクロール型の圧縮部は、その外周側から冷媒を吸入することから、圧縮部の吸入側を圧縮部の外周側に配置することができる。したがって、圧縮部の外周側ではなく、圧縮部の軸方向に沿った側方に吸入側を配置するためのスペースを確保する必要がなく、そのスペースに油分離室、予備貯油室、及び貯油室を配置することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、貯油室の油面の乱れを抑えることができるとともに、油分離室の潤滑油を外部へ持ち出しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の圧縮機を示す断面図。
【図2】(a)は図1の2a線断面図、(b)は図1の2b線断面図。
【図3】ガスケット及び圧縮機内を示す図。
【図4】予備貯油室及び貯油室を示す図3の4−4線断面図。
【図5】背景技術を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をスクロール型圧縮機に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジングは、センターハウジング(シェル)12の一端にフロントハウジング11が連結されるとともに、センターハウジング12の他端にリヤハウジング13が連結されて形成されている。フロントハウジング11と、センターハウジング12と、リヤハウジング13は複数の締結ボルトBによって共締めされている。本実施形態では、センターハウジング12、フロントハウジング11、及びリヤハウジング13がハウジング形成部材を構成している。
【0023】
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング内には、冷媒を圧縮するスクロール型の圧縮部Cが設けられている。詳細には、センターハウジング12は、フロントハウジング11側に開口する有底筒状に形成されるとともに、このセンターハウジング12内に圧縮部Cを構成する固定スクロール16が形成されている。固定スクロール16は、センターハウジング12の底を形成する固定基板14と、この固定基板14からセンターハウジング12側に延設された渦巻状の固定渦巻壁15と、からなる。
【0024】
フロントハウジング11には回転軸17の大径部17aがラジアルベアリング18を介して回転可能に支持されるとともに、回転軸17の大径部17aにおいて、固定スクロール16側の端面17bには偏心軸19が一体形成されている。偏心軸19の軸線は、回転軸17の軸線から外れた位置にある。
【0025】
偏心軸19にはバランスウエイト20及びブッシュ21が相対回転可能に支持されている。ブッシュ21には、圧縮部Cを構成する可動スクロール23が固定スクロール16と対向するようにニードルベアリング24を介して相対回転可能に支持されている。可動スクロール23は、固定基板14に対向する可動基板25と、固定渦巻壁15と互いに噛み合うように可動基板25に立設された渦巻状の可動渦巻壁26と、からなる。
【0026】
固定スクロール16の固定基板14及び固定渦巻壁15と、可動スクロール23の可動基板25及び可動渦巻壁26との間には、容積変更可能な圧縮室Sが形成される。固定基板14には、吐出ポート14aが形成されるとともに、吐出ポート14aは圧縮室Sに連通している。この吐出ポート14aは、固定基板14に固定された吐出弁14bによって開閉されるとともに、吐出弁14bは固定基板14に固定されたリテーナ14cによって開度が規制される。
【0027】
吐出ポート14aは、センターハウジング12とリヤハウジング13によって区画された吐出室31に連通している。センターハウジング12の外周壁と可動スクロール23の可動渦巻壁26の最外周部との間には、圧縮部Cの吸入側となる吸入室30が区画形成されている。すなわち、ハウジング内では、吸入室30は、圧縮部Cの外周側に配置されている。また、センターハウジング12の外周壁には、吸入室30に連通する吸入口12aが形成されている。
【0028】
フロントハウジング11において、可動基板25の外周側に対向する端面には自転阻止孔11aが可動基板25の周方向に複数配設されるとともに、可動基板25には、自転阻止孔11aと同数の自転阻止孔25aが可動基板25の周方向に複数配設されている。自転阻止孔11a,25aには自転阻止ピン32の端部が挿入されている。
【0029】
そして、回転軸17及び偏心軸19の回転に伴い、可動スクロール23が公転し、吸入口12aから吸入室30に吸入された冷媒は、固定基板14と可動基板25との間へ流入する。可動スクロール23の公転に伴い、自転阻止ピン32の周面が自転阻止孔11a,25aの内周面に沿って摺接し、可動スクロール23は、自転することなく公転する。圧縮室Sは、可動スクロール23の公転に伴って容積減少しつつ両スクロール16,23の渦巻壁15,26の内終端部間に向けて収束して行く。圧縮室Sの容積減少によって圧縮された冷媒ガスは、吐出ポート14aから吐出室31へ吐出される。
【0030】
次に、図1、図2(a)、(b)及び図3にしたがって、センターハウジング12とリヤハウジング13との連結によって区画されるマフラー室40、油分離室41、予備貯油室42、及び貯油室44について説明する。
【0031】
センターハウジング12の固定基板14において、リヤハウジング13側の外周縁からはセンタ側外周壁部12cが環状に立設されている。また、リヤハウジング13の底部13aにおいて、この底部13aの外周縁であり、センタ側外周壁部12cに対向する位置には、環状のリヤ側外周壁部13cが立設されている。そして、センターハウジング12とリヤハウジング13の連結状態では、センターハウジング12とリヤハウジング13との間にガスケット50が挟持されるとともに、このガスケット50により、各室40,41,42,44からの冷媒及び潤滑油の洩れが抑制されている。
【0032】
図2(a)及び(b)に示すように、固定基板14において、重力方向の下部には、第1区画壁部12dがセンタ側外周壁部12cの2箇所を繋ぐように立設されるとともに、固定基板14と、第1区画壁部12dと、センタ側外周壁部12cとから囲まれる空間により、貯油室44の一部が形成されている。一方、リヤハウジング13の底部13aにおいて、重力方向の下部には、第1区画壁部13dがリヤ側外周壁部13cの2箇所を繋ぐように立設されるとともに、底部13aと、第1区画壁部13dと、リヤ側外周壁部13cとから囲まれる空間により、貯油室44の一部が形成されている。そして、図4に示すように、センターハウジング12とリヤハウジング13の連結により、2つの貯油室44が組み合わされ、ハウジング内に1つの貯油室44が形成されている。なお、図2(a)に示すように、センターハウジング12のセンタ側外周壁部12cの端面には、貯油室44と吸入室30とを連通させる導入通路12hがセンタ側外周壁部12cのほぼ半周に亘って凹設されている。
【0033】
また、固定基板14の重力方向の上部には、第2区画壁部12eがセンタ側外周壁部12cの2箇所を繋ぐように立設されるとともに、固定基板14と、第2区画壁部12eと、センタ側外周壁部12cとから囲まれる空間により、マフラー室40の一部が形成されている。一方、図2(b)に示すように、リヤハウジング13の底部13aにおける重力方向の上部には、第2区画壁部13eがリヤ側外周壁部13cの2箇所を繋ぐように立設されるとともに、底部13aと、第2区画壁部13eと、リヤ側外周壁部13cとから囲まれる空間により、マフラー室40の一部が形成されている。そして、図3に示すように、センターハウジング12とリヤハウジング13の連結により、2つのマフラー室40が組み合わされ、ハウジング内に1つのマフラー室40が形成されている。なお、マフラー室40は、リヤ側外周壁部13cに形成された吐出口13bに連通するとともに、この吐出口13bは外部に接続されている。
【0034】
また、図2(a)に示すように、固定基板14には、第3区画壁部12fが重力方向に延び、かつ第1区画壁部12dと第2区画壁部12eを繋ぐように立設されている。そして、固定基板14と、センタ側外周壁部12cと、第1区画壁部12dと、第2区画壁部12eと、第3区画壁部12fとから囲まれる空間により、吐出室31の一部が形成されている。一方、図2(b)に示すように、リヤハウジング13の底部13aには、第3区画壁部13fが重力方向に延び、かつ第1区画壁部13dと第2区画壁部13eを繋ぐように立設されている。そして、底部13aと、リヤ側外周壁部13cと、第1区画壁部13dと、第2区画壁部13eと、第3区画壁部13fとから囲まれる空間により、吐出室31の一部が形成されている。図1に示すように、センターハウジング12とリヤハウジング13の連結により、2つの吐出室31が組み合わされ、ハウジング内に1つの吐出室31が形成されている。
【0035】
また、図2(a)に示すように、固定基板14において、第3区画壁部12fの側方には、第4区画壁部12gが、第1区画壁部12dと第2区画壁部12eを繋ぐように立設されている。そして、固定基板14と、第1区画壁部12dと、第2区画壁部12eと、第3区画壁部12fと、第4区画壁部12gとから囲まれる空間により、油分離室41の一部が形成されている。一方、図2(b)に示すように、リヤハウジング13の底部13aにおいて、第3区画壁部13fの側方には、第4区画壁部13gが、第1区画壁部13dと第2区画壁部13eを繋ぐように立設されている。そして、底部13aと、第1区画壁部13dと、第2区画壁部13eと、第3区画壁部13fと、第4区画壁部13gとから囲まれる空間により、油分離室41の一部が形成されている。図3に示すように、センターハウジング12とリヤハウジング13の連結により、2つの油分離室41が組み合わされ、ハウジング内に1つの油分離室41が形成されている。
【0036】
図2(a)に示すように、センターハウジング12においては、固定基板14と、センタ側外周壁部12cと、第1区画壁部12dと、第4区画壁部12gとから囲まれる空間により、予備貯油室42の一部が形成されている。この予備貯油室42の容積は、貯油室44の容積より小さくなっている。一方、図2(b)に示すように、リヤハウジング13において、底部13aと、リヤ側外周壁部13cと、第1区画壁部13dと、第4区画壁部13gとから囲まれる空間により、予備貯油室42の一部が形成されている。そして、図4に示すように、センターハウジング12とリヤハウジング13の連結により、2つの予備貯油室42が組み合わされ、ハウジング内に1つの予備貯油室42が形成されている。
【0037】
図3に示すように、ハウジング内では、吐出室31の側方、すなわち重力方向(上下方向)に交差する方向に油分離室41が配設されている。油分離室41の周壁は、センターハウジング12の固定基板14と、第3区画壁部12fと、第4区画壁部12gと、リヤハウジング13の底部13aと、第3区画壁部13fと、第4区画壁部13gと、を組み合わせて円筒状に形成されている。なお、油分離室41の周壁とは、油分離室41の上壁(第2区画壁部12e,13e)及び底壁(第1区画壁部12d,13d)を除いた壁のことであり、油分離室41内で冷媒に旋回流を発生させるために円筒状に形成された壁のことである。
【0038】
油分離室41の周壁を形成する第3区画壁部12fには、吐出室31と油分離室41を連通させる吐出孔31aが形成されている。また、油分離室41の上壁を形成する第2区画壁部12e,13eの中央には、油分離室41とマフラー室40を連通させる吐出通路41aが形成されている。そして、吐出室31とマフラー室40とは、油分離室41を介して連通しており、吐出室31に吐出された冷媒は、油分離室41を経てマフラー室40に吐出されるようになっている。
【0039】
また、ハウジング内では、油分離室41の側方、すなわち重力方向(上下方向)に交差する方向であり、油分離室41の底より上側に予備貯油室42が配設されている。この予備貯油室42は、センターハウジング12の固定基板14と、センタ側外周壁部12cと、第1区画壁部12dと、第4区画壁部12gと、第2区画壁部12eと、リヤハウジング13の底部13aと、リヤ側外周壁部13cと、第1区画壁部13dと、第4区画壁部13gと、第2区画壁部13eとを組み合わせて区画形成されている。
【0040】
よって、予備貯油室42の室形成壁である第4区画壁部12g,13gは、油分離室41の周壁も形成しており、予備貯油室42は、油分離室41の周壁を室形成壁の一部に用いて形成されている。すなわち、第4区画壁部12g,13gは、油分離室41と予備貯油室42の室形成壁を兼用しており、油分離室41と予備貯油室42とは、第4区画壁部12g,13gを挟んで、重力方向に交差する方向(側方)に隣り合っている。
【0041】
センターハウジング12の第4区画壁部12gには、油分離室41と予備貯油室42とを連通する導入路43が、第4区画壁部12gの端面を凹ませて形成されている。なお、導入路43の通路方向に延びる開口は、両第4区画壁部12g,13gの間にガスケット50が挟持されることで、ガスケット50によって閉鎖されている。導入路43の一端の導出口43aは、重力方向において油分離室41の下部に連通し、導入路43の他端の導入口43bは、導出口43aより上側で、かつ予備貯油室42の下部に連通している。導出口43aは、第4区画壁部12g(周壁の内周面)から油分離室41に開口している。また、導入口43bは、第4区画壁部12gから予備貯油室42に開口している。
【0042】
そして、油分離室41と予備貯油室42との圧力差により、油分離室41で分離された潤滑油は、導入路43を経て予備貯油室42の下部側に導入されるようになっている。導入路43の通路断面積は、重力方向に直交する方向への油分離室41の断面積より小さくなっている。
【0043】
ハウジング内では、重力方向において、吐出室31、油分離室41、及び予備貯油室42の下側に貯油室44が配設されている。また、予備貯油室42において、センターハウジング12の第1区画壁部12d、及びリヤハウジング13の第1区画壁部13dは、予備貯油室42の底壁を形成するとともに、貯油室44の上壁を形成する。図2(b)に示すように、リヤハウジング13の第1区画壁部13dであり、予備貯油室42の底壁を形成する部位には、予備貯油室42と貯油室44とを連通する流出口45が、第1区画壁部13dの端面を凹ませて形成されている。流出口45の通路方向に延びる開口は、両第1区画壁部12d,13dの間にガスケット50が挟持されることで、ガスケット50によって閉鎖されている。なお、流出口45の通路断面積は、重力方向に直交する方向への予備貯油室42及び貯油室44の断面積より小さくなっている。
【0044】
図4に示すように、予備貯油室42に連通する導入路43と流出口45は、ガスケット50を挟んでセンターハウジング12側とリヤハウジング13側に隔てられている。また、予備貯油室42内は、ガスケット50よりなる区画部50aによって、導入口43b側の導入室42aと、流出口45側の流出室42bとに区画されている。区画部50aは、本来なら予備貯油室42の全体を開口させるようにガスケット50に形成する孔を、予備貯油室42の上側のみを開口させるように小さく形成することで形成されている。区画部50aは、予備貯油室42における重力方向の半分程度の高さを有するとともに、区画部50aの上端と予備貯油室42の上壁との間には、導入室42aと流出室42bを連通させる連通部42cが形成されている。
【0045】
次に、スクロール型圧縮機10の作用について図3及び図4を用いて説明する。
さて、圧縮部Cで圧縮された冷媒は、吐出孔31aを経て吐出室31から油分離室41の上側に吐出されるとともに、油分離室41の周壁に沿って上側から下側に向けて旋回する。そして、この旋回によって、冷媒に含まれる潤滑油は油分離室41の周壁に付着し、冷媒から分離される。油分離室41で潤滑油が分離された冷媒は、吐出通路41aを経てマフラー室40に吐出され、マフラー室40の冷媒は吐出口13bを経てスクロール型圧縮機10外部へ吐出される。
【0046】
油分離室41の周壁に付着した潤滑油は、その周壁の内周面に開口する導出口43aに到達すると、油分離室41と予備貯油室42との圧力差により、導入路43を経て予備貯油室42の下部側に導入される。このとき、導入路43の通路断面積は、油分離室41の断面積より小さいため、潤滑油は、導入路43を通過する際に、導入路43で絞られ、減圧される。また、導入路43の導出口43aは、導入口43bより重力方向の下側に位置するため、予備貯油室42に導入される潤滑油は導入路43によって予備貯油室42に向けて引き上げられる。
【0047】
そして、導入路43を経て油分離室41から予備貯油室42に導入された潤滑油は、導入口43bから導入室42a内に導入される。導入口43bの位置は、区画部50aの上端より低いため、潤滑油は区画部50aによって堰き止められ、導入室42aに一旦滞留する。その後、導入室42aで滞留した潤滑油がオーバーフローすると、導入室42aの潤滑油は連通部42cを経て流出室42bに流出する。
【0048】
流出室42bに流出した潤滑油は、流出口45を経て自重により貯油室44に流出する。流出口45の通路断面積は、予備貯油室42及び貯油室44の断面積より小さくなっている。このため、潤滑油は、流出口45を通過する際に絞られ、減圧される。
【0049】
そして、油分離室41で分離された潤滑油が、導入路43、予備貯油室42、及び流出口45を経ることで、その流速(勢い)が抑えられて貯油室44に送られる。その後、貯油室44の潤滑油は、導入通路12hを経て吸入室30へ供給される。
【0050】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ハウジング内に油分離室41を設けるとともに、その油分離室41の側方に予備貯油室42を隣り合わせて配設し、この予備貯油室42の一部を、油分離室41の周壁を形成する第4区画壁部12g,13gを用いて形成した。また、第4区画壁部12gに、油分離室41と予備貯油室42を連通させる導入路43を形成し、導入路43の導出口43aを油分離室41の周壁の内周面に開口させた。このため、油分離室41の周壁に沿って流下する潤滑油は、導出口43aから導入路43を経て予備貯油室42に導入され、油分離室41の底壁を流動することなく、予備貯油室42に導入される。したがって、油分離室41の潤滑油が、背景技術のように油分離室41の底壁を流動する場合と比べると、予備貯油室42に速やかに導入され、冷媒によって油分離室41から持ち出されにくくなり、冷媒からの潤滑油の分離能が向上する。
【0051】
(2)ハウジング内には、油分離室41の側方に予備貯油室42が配設されるとともに、油分離室41と予備貯油室42は導入路43によって連通されている。また、予備貯油室42の下側に貯油室44が配設されるとともに、予備貯油室42と貯油室44は流出口45によって連通されている。そして、油分離室41で分離された潤滑油の勢いは、潤滑油が導入路43を経ること、及び予備貯油室42に一旦導入されることにより抑えられる。さらに、予備貯油室42の潤滑油が流出口45を経ることで潤滑油の勢いは抑えられ、貯油室44に流出される際には潤滑油の勢いはほとんど無くなっている。加えて、予備貯油室42と貯油室44は、別々の空間であるため、予備貯油室42に潤滑油が導入されても、貯油室44の油面が乱されることはない。したがって、貯油室44に潤滑油が流出されても、貯油室44の油面の乱れを抑えることができる。その結果、冷媒が気泡となって吸入室30に吸入されることが防止され、潤滑油を吸入室30へ安定して供給することができる。
【0052】
(3)油分離室41内では、周壁に沿って冷媒が上側から下側に向けて旋回し、その旋回によって潤滑油が油分離室41の周壁を流動する。潤滑油は、冷媒の旋回によって導入路43の導出口43aに向けて送られるため、分離された潤滑油を導入路43に向けてガイドする別部材も必要ない。
【0053】
(4)油分離室41で分離された潤滑油は、導入路43を経て予備貯油室42に導入され、その後、流出口45を経て貯油室44に流出される。このため、潤滑油は、油分離室41から貯油室44に到達するまでの間に、導入路43と流出口45を通過することで2度絞られる。よって、潤滑油が貯油室44に流出されるときには、潤滑油の勢いを抑えることができる。
【0054】
(5)油分離室41と予備貯油室42を導入路43で連通させた。そして、導入路43の導出口43aを油分離室41の下部側に位置するように形成するとともに、導入路43の導入口43bを、導出口43aより上側で、かつ予備貯油室42の下部側に位置するように形成した。よって、油分離室41の潤滑油は、重力に逆らって予備貯油室42に引き上げられるため、この引き上げされる際に、潤滑油の勢いを落とすことができる。したがって、予備貯油室42に潤滑油が導入される際の、予備貯油室42での油面の乱れを抑えることができる。
【0055】
(6)さらに、導入路43の導入口43bは、予備貯油室42の下部側に形成されている。よって、予備貯油室42に貯まった油面に潤滑油が滴下されることがなく、予備貯油室42での油面の乱れを抑えることができる。
【0056】
(7)予備貯油室42は、区画部50aによって、導入路43の導入口43b側の導入室42aと、流出口45側の流出室42bに区画されるとともに、連通部42cによって導入室42aと流出室42bは連通している。このため、油分離室41から予備貯油室42に導入された潤滑油は、区画部50aによって堰き止められ、導入室42aで一旦滞留させられるため、潤滑油の勢いをほとんど無くすことができる。
【0057】
(8)そして、導入室42aに滞留した潤滑油がオーバーフローすると、導入室42aの潤滑油が、連通部42cを介して流出室42bに供給される。したがって、流出室42bに供給される潤滑油は勢いがなく、流出室42bの油面が乱されることがない。よって、油面の安定した流出室42bから貯油室44に潤滑油が流出されるため、貯油室44に潤滑油が流出しても、貯油室44の油面が乱れることはない。
【0058】
(9)予備貯油室42を導入室42aと流出室42bに区画する区画部50aは、ガスケット50によって形成されている。ガスケット50は、センターハウジング12とリヤハウジング13で挟持され、各室31,40,41,42,44をシールするために設けられる。したがって、スクロール型圧縮機10に必須のガスケット50で区画部50aを形成するため、予備貯油室42内に区画部を一体形成する等の必要がなく、区画部50aを簡単に設けることができる。
【0059】
(10)予備貯油室42を導入室42aと流出室42bに区画する区画部50aは、ガスケット50によって形成されている。このため、ガスケット50を加工するだけで区画部50aの高さを簡単に調節することができる。
【0060】
(11)油分離室41、予備貯油室42、及び貯油室44は、センターハウジング12とリヤハウジング13それぞれに形成された各室41,42,44の一部同士を組み合わせて形成されている。よって、各室41,42,44を2つのハウジング12,13に跨って形成することができ、各室41,42,44を例えばリヤハウジング13だけに形成する場合と比べると容積を大きく確保することができる。
【0061】
(12)圧縮機10は、スクロール型の圧縮部Cを備える。スクロール型の圧縮部Cの吸入室30は、圧縮部Cよりリヤハウジング13側ではなく、圧縮部Cの外周側に配置されている。このため、圧縮機10の軸方向(回転軸17の軸方向)に沿った圧縮部Cよりリヤハウジング13側(側方)に、油分離室41、予備貯油室42、及び貯油室44を配置することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、油分離室41、予備貯油室42、及び貯油室44を、センターハウジング12とリヤハウジング13に跨って形成したが、各室41,42,44をリヤハウジング13又はセンターハウジング12に形成してもよい。
【0063】
○ 実施形態では、ガスケット50により区画部50aを形成したが、ガスケット50で区画部50aを形成せず、センターハウジング12又はリヤハウジング13に区画部を直接形成してもよいし、ガスケット50とは別部材で区画部を設けてもよい。
【0064】
○ 実施形態では、予備貯油室42を導入室42aと流出室42bに区画したが、予備貯油室42を区画しなくてもよい。
○ 実施形態では、導入路43の導出口43aを、油分離室41の下部側に位置させるとともに、導入口43bを、導出口43aより上側で、かつ予備貯油室42の下部側に位置するように、導入路43を形成したが、これに限らない。例えば、導出口43aが油分離室41の周壁に形成されているのであれば、導出口43aの位置は任意に変更してもよく、導出口43aが油分離室41の上部側に形成されていてもよい。
【0065】
○ 実施形態では、圧縮部Cをスクロール型に具体化したが、圧縮部Cはベーン型であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
C…圧縮部、10…圧縮機としてのスクロール型圧縮機、11…ハウジングを形成するハウジング形成部材としてのフロントハウジング、12…ハウジングを形成するハウジング形成部材としてのセンターハウジング、12d…予備貯油室の底壁を形成する第1区画壁部、12f…周壁を形成する第3区画壁部、12g…周壁及び室形成壁を形成する第4区画壁部、13…ハウジングを形成するハウジング形成部材としてのリヤハウジング、13a…周壁を形成する底部、13d…予備貯油室の底壁を形成する第1区画壁部、13f…周壁を形成する第3区画壁部、13g…周壁を形成する第4区画壁部、14…周壁を形成する固定基板、41…油分離室、42…予備貯油室、42a…導入室、42b…流出室、42c…連通部、43…導入路、43a…導出口、43b…導入口、44…貯油室、45…流出口、50…ガスケット、50a…区画部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、冷媒を圧縮する圧縮部を有し、該圧縮部から吐出された前記冷媒が導入されるとともに、前記冷媒を旋回させる周壁を備える油分離室を有し、さらに、前記油分離室で前記冷媒から分離された潤滑油の貯油室を有し、該貯油室の潤滑油を前記圧縮部の吸入側に供給するように構成された圧縮機において、
前記油分離室で分離された潤滑油が流入する予備貯油室が、前記油分離室の周壁を室形成壁の一部に用いて形成されるとともに、前記周壁に、前記油分離室の潤滑油を前記予備貯油室に導入する導入路が形成され、
前記導入路は、一端の導出口が前記周壁の内周面で前記油分離室に開口するとともに、他端の導入口が前記予備貯油室に開口し、
さらに、重力方向における前記予備貯油室の下側に、前記貯油室が設けられるとともに、前記予備貯油室の底壁に、前記予備貯油室から前記貯油室に前記潤滑油を流出させる流出口が形成されている圧縮機。
【請求項2】
前記導出口は、前記重力方向における前記油分離室の下部側に位置するとともに、前記導入口は、前記重力方向における前記導出口より上側で、かつ前記予備貯油室の下部側に位置するように形成されている請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記予備貯油室は、区画部によって前記導入口側の導入室と、前記流出口側の流出室とに区画されるとともに、前記導入室と前記流出室とは前記重力方向における前記区画部より上側の連通部によって連通している請求項1又は請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記予備貯油室は、複数のハウジング形成部材を連結して形成され、前記ハウジング形成部材同士の間にガスケットが挟持されるとともに、前記区画部は前記ガスケットにより形成される請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記油分離室、前記予備貯油室、及び前記貯油室は、複数のハウジング形成部材を連結して形成される請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記圧縮部は、スクロール型である請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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