説明

圧電アクチュエータを用いた移動機構及びそのような移動機構を有する磁気ディスク装置

【課題】 圧電素子−スライダ間及び圧電素子-サスペンション間の接着部が常に一定の面積で接着される構成の圧電アクチュエータを用いた移動機構を提供することを課題とする。
【解決手段】 スライダ6は、ジンバル部8aに支持されたマイクロアクチュエータ20により回転移動される。圧電アクチュエータ20を構成する圧電素子22,24は接着剤26によりスライダ6及びジンバル部8aに固定される。段差により画成された接着面を有する接着剤塗布部30が圧電素子22,24に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエータを用いた移動機構に係り、特に圧電素子を用いた磁気ヘッド移動用アクチュエータを用いて磁気ヘッドを微小移動させる微小移動機構を備えた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の小型化、精密化が進んでおり、微小な移動を精度よく実現できるアクチュエータへの需要が高まっている。例えば、光学系の焦点補正や傾角制御、インクジェットプリンタ装置、磁気ディスク装置のヘッドアクチュエータ等では、微小距離を移動制御することができるマイクロアクチュエータが必要となっている。
【0003】
このような状況の中で、磁気ディスク装置に関し、市場の拡大と装置の高性能化に伴い、記録容量の大容量化が益々重要となってきている。一般に磁気ディスク装置の大容量化はディスク1枚あたりの記憶容量を大きくすることで達成される。ディスクの大きさ、すなわち直径を変えずに高記録密度を達成するためには、単位長さあたりのトラック数(TPI)を大きくすること、すなわち、トラックの幅を狭くすることが不可欠である。このため、トラックの幅方向におけるヘッドの位置精度を高くすることが必要であり、高位置決め精度が可能なヘッド用マイクロアクチュエータの開発が要望されている。
【0004】
従来のヘッド位置決めには、ヘッド(スライダ)を保持しているサスペンションの固定部にあるコアースアクチュエータが用いられていた。従来はこの方式でも媒体の記録密度を十分カバーできていた。しかし、近年の記録装置の大容量化にともなう記録密度の高密度化により、従来方式ではヘッドの位置決め精度が不十分となり、ヘッドの読み取り、書き込み不良が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、ヘッド位置決め精度を改善する方法として、スライダを直接移動させるマイクロアクチュエータをスライダとサスペンションの間に配置する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。マイクロアクチュエータはコアアースアクチュエータの動作とは独立にアームの先端に取り付けられたヘッドを微小移動させることが可能である。
【特許文献1】特開2002−74870号公報
【特許文献2】特開2001−167545号公報
【特許文献3】特開2001−84723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているようなマイクロアクチュエータを有する構造では、スライダの微小移動にばらつきが生じるという問題がある。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、圧電素子−スライダ間および圧電素子-サスペンション間の接着部が常に一定の面積で接着される構成の圧電アクチュエータを用いた移動機構及びそのような移動機構を有する磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、圧電アクチュエータを用いた移動機構であって、該圧電アクチュエータを構成する圧電素子と、該圧電アクチュエータにより移動される移動部と、該圧電アクチュエータを支持する支持部とを有し、前記移動部と前記支持部との少なくとも一方は、前記圧電素子に固定され、前記圧電素子、前記移動部及び前記支持部の少なくとも一つは、段差により画成された接着面を有することを特徴とする圧電アクチュエータを用いた移動機構が提供される。
【0009】
上述の発明による圧電アクチュエータを用いた移動機構において、前記圧電素子は、接着剤で前記移動部又は前記支持部に固定された固定部と、固定されずに変形可能な活性部とを有し、該固定部と該活性部との間に前記段差が設けられることにより、前記活性部の表面と前記移動部の表面又は前記支持部の表面との間の距離は、前記固定部の表面と前記移動部の表面又は前記支持部の表面との間の距離より大きいこととすることが好ましい。
【0010】
また、上述の圧電アクチュエータを用いた移動機構において、前記活性部は短冊形状であり、長手方向の両端に前記固定部が一体的に設けられたこととしてもよい。前記圧電アクチュエータは一対の前記圧電素子を用いた回転アクチュエータであって、該回転アクチュエータは前記移動部と前記支持部との間に設けられて前記移動部を前記支持部に対して回転させることとしてもよい。さらに、前記段差は10μm〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上述の圧電アクチュエータを用いた移動機構を有する磁気ディスク装置であって、前記移動部は磁気ヘッドを有するスライダであり、前記支持部は該スライダを支持するサスペンションに形成されたジンバル部であり、前記圧電アクチュエータは前記スライダと前記ジンバル部との間に設けられて前記スライダを前記ジンバル部に対して移動させることを特徴とする磁気ディスク装置が提供される。
【0012】
さらに、本発明よれば、圧電アクチュエータを構成する圧電素子の形成方法であって、 電極と圧電セラミックス原料シートとを積層してシート状の積層体を形成し、該積層体に複数の貫通開口を整列して形成し、前記積層体を焼成し、前記貫通開口の列に沿って所定の深さの溝を形成し、前記溝により段差が形成され、段差の低い部分が圧電素子の変形部である活性部となり、段差の高い部分が他の部材に接着剤にて固定される固定部となるように、前記積層体を切断して圧電素子を個片化することを特徴とする圧電素子の形成方法が提供される。上述の圧電素子の形成方法において、前記所定の深さの溝を形成する前に前記積層体を研磨して厚みを調整することが好ましい。また、前記溝の形成は、ダイシングブレードによる切削又は超音波工具を用いた研磨により行なうことができる。
【0013】
また、本発明によれば、圧電アクチュエータを構成する圧電素子の形成方法であって、 電極と圧電セラミックス原料シートとの積層体上に、整列した開口を有する所定の厚みのセラミックスシートをさらに積層してシート状の開口付き積層体を形成し、該開口付き積層体にパンチング加工により貫通開口を形成することにより、前記開口の列に沿って前記所定の厚みに等しい深さの溝を形成し、前記開口付き積層体を焼成し、前記溝により段差が形成され、段差の低い部分が圧電素子の変形部である活性部となり、段差の高い部分が他の部材に接着剤にて固定される固定部となるように、前記積層体を切断して圧電素子を個片化することを特徴とする圧電素子の形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧電素子−移動部間および圧電素子−支持部間の接着部が常に一定の面積となるように接着させるためには、僅かに多めの接着剤を塗布し、接着面積が狭くなることを防止する。この際、接着剤が多過ぎる場合に、余分な接着剤を逃がすために、圧電素子の接着部分(固定部)と非接着部分(活性部)との間に段差を設け、余分な接着剤を段差で形成された比較的幅の大きな隙間へ逃がすことで正確な接着面積を確保することができる。したがって、本発明によれば、高密度磁気ディスクに対応した高精度の位置決めを達成することのできる圧電アクチュエータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明を適用可能な磁気ディスク装置の平面図である。図1に示す磁気ディスク装置2は、回転可能な磁気ディスク4と、磁気ディスク4から情報を読み出したり磁気ディスク4に情報を書き込むための磁気ヘッドを有するスライダ6とを有する。
【0017】
スライダ6はサスペンション8の先端(図2におけるジンバル部8a)に取り付けられており、サスペンション8の根元部分はキャリッジアーム10に固定されている。キャリッジアーム10は電磁アクチュエータ12によりアーム軸14を中心として回転される。これにより、スライダ6は磁気ディスク4の半径方向(図中矢印で示す)に移動可能である。
【0018】
以上のような構成の磁気ディスク装置2において、図2に示すように、スライダ6とサスペンション8のジンバル部8aとの間に、微小移動機構としてマイクロアクチュエータ20が設けられる。マイクロアクチュエータ20は、第1の圧電素子22と第2の圧電素子24とよりなり、接着剤26によりジンバル部8a及びスライダ6に固定される。ここで、マイクロアクチュエータ20は圧電アクチュエータであり、ジンバル部8aは圧電アクチュエータが固定され支持される支持部に相当し、スライダ6は圧電アクチュエータにより移動又は回転される移動部に相当する。
【0019】
具体的には、第1の圧電素子22の一端部の表面がジンバル部8aに接着され、第1の圧電素子22の他端部の裏面がスライダ6に接着される。また、第2の圧電素子24の一端部の表面がジンバル部8aに接着され、第2の圧電素子24の他端部の裏面がスライダ6に接着される。
【0020】
第1の圧電素子22は電圧が印加されると図2中矢印A方向に収縮するように構成されている。一方、第2の圧電素子24は電圧が印加されると図2中矢印B方向に収縮するように構成されている。したがって、第1及び第2の圧電素子22,24に同時に電圧が印加されると、第1の圧電素子22が収縮すると同時に第2の圧電素子も収縮するため、スライダ6の先端側は図2中矢印Cで示す方向に移動し、後端側は図2中矢印Dで示す方向に移動する。すなわち、スライダ6は圧電素子22,24よりなるマイクロアクチュエータ20の中心を軸として僅かな角度だけ回転する。
【0021】
上記回転移動によりスライダ6に組み込まれている磁気ヘッドを微小変位させることで、スライダ6に組み込まれた磁気ヘッッドの微細な位置合わせを行なうことができる。スライダ6の移動量は、マイクロアクチュエータ20の大きさや印加する電圧に依存するが、磁気ヘッドの微小移動を実現するには、例えば、スライダ6の角部(図2中6A及び6Bで示す)において1μm〜800nmに設定される。
【0022】
すなわち、ヘッドが搭載されているスライダを、スライダの重心を中心として回転させることにより、磁気ディスクのトラックの幅方向へ微小移動させている。発明者らは、この微小移動をさせる際、圧電素子とスライダとの間および圧電素子とサスペンションとの間の接着面積が一定でないとスライダの微小移動にバラツキが生じるという問題があることを見出した。
【0023】
圧電素子の接着剤塗布面積は非常に狭いため、接着剤量が僅かに少ないだけでも接着面積が狭くなり、接着強度が減少するためである。接着剤面積が設計値より少ない場合、スライダの変位量にばらつきが生じるという問題がある。一方、僅かに多いだけでも、圧電素子の活性部(変形する部分)まで接着されてしまい、スライダの変位量が減少するという問題がある。
【0024】
ここで、接着剤26の塗布量がばらつくと、ジンバル部8aと圧電素子22,24との間の接着面積、及びスライダ6と圧電素子22,24との間の接着面積が一定ではなくなり、マイクロアクチュエータ20の移動量や移動方向が一定ではなくなるという問題がある。例えば、接着面積が一定であれば、スライダ6の角部6Aが850nmだけ移動し、角部6Bが対称に850nmだけ移動する設計となっていても、スライダ6に対する圧電素子22,24の接着面積がばらついて異なっていると、例えば、スライダ6の角部6Aは850nmだけ移動するが、角部6Bは750nmしか移動しないといった結果となる。
【0025】
そこで、本実施例では、圧電素子22,24の接着面積が接着剤26の塗布量が変動しても一定となるように、圧電素子22,24の表面及び裏面に段差を設けている。すなわち、図3に示すように、各圧電素子22,24の両端の固定部を、固定部の間の活性部(電圧を印加することにより収縮又は伸長する部分)より僅かに高くして段差を設けている。
【0026】
図3はスライダ6と圧電素子22,24とを分離した状態で示す拡大斜視図である。マイクロアクチュエータ20を構成する圧電素子22,24の各々は、その長手方向の両端に固定部22a,22b;24a,24bを有している。固定部22aと22bとの間には細長い短冊形状の活性部22cが延在しており、活性部22cが収縮することで固定部22aと22bとは互いに接近する方向に移動する。また、固定部24aと24bとの間には細長い短冊形状の活性部24cが延在しており、活性部24cが収縮することで固定部24aと24bとは互いに近接する方向に移動する。
【0027】
固定部22a,22b;24a,24bの各々の表面及び裏面側には、段差により画成された接着面を有する接着剤塗布部30が形成されている。接着剤塗布部30の接着面に接着剤26を塗布して圧電素子22,24の上にスライダ6を搭載することにより、圧電素子22,24の固定部22b,24aをスライダ6に固定する。一方、圧電素子22,24の固定部22a,24bは接着されずにスライダ6に対して移動できるようになっている。接着されない固定部22a,24bは、接着される固定部22b,24aと同じ段差で形成されており、例えば接着するときにスライダ6が搭載された際に、スライダ6が圧電素子22,24に対して略平行となるように構成されている。
【0028】
図3にはスライダ6と圧電素子22,24との取り付け構造しか示されていないが、ジンバル部8aと圧電素子22,24との取り付け構造も同様である。ただし、圧電素子22,24をジンバル部8aに取り付ける際は、スライダ6に接着された固定部22b,24aとは反対側の固定部22a,24bの接着剤塗布部30の接着面に接着剤26が塗布され、固定される。
【0029】
図4は圧電素子24とスライダ6との間の接着を示す断面図である。圧電素子24の接着剤塗布部30の接着面に液体状の接着剤26をディスペンサにより塗布し、スライダをその上に搭載する。接着剤26として、UV硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、あるいはそれらを混合した接着剤を用いることができる。接着剤26の塗布量は、接着剤塗布部30の表面(接着面)全体に接着剤26が行き渡るだけの量よりも僅かに多い量としておく。したがって、接着剤26は接着剤塗布部30とスライダ6の対向面との間全体に行き渡り、且つ余分な接着剤26は接着剤塗布部30とスライダ6との間から流れ出して、例えば図5に示すように活性部24cの表面と接着剤塗布部30の側面とにより形成される角部に溜まることとなる。
【0030】
スライダ6と接着剤塗布部30との間において、接着剤26の厚みTは約5μmとなる。接着剤塗布部30の表面(接着面)と活性部24cの表面との段差Hは10μm〜50μmの範囲に設定され、好ましくは10μm〜20μmの範囲となるように設定される。この程度の段差Hがあると接着剤26は下側の活性部24cの表面側に流れ、スライダ6の表面で接着剤26が付着する部分は、接着剤塗布部30に対向する部分だけとなる。
【0031】
なお、図4では接着剤塗布部30の段差の側面は接着剤塗布部30の表面に対して垂直であるが、垂直に限ることなく、傾斜面であってもよい。ただし、流れ出た接着剤26がスライダ6の表面から直ちに離間するようにするためには、接着剤塗布部30の段差の側面は接着剤塗布部30の表面に対して垂直であることが好ましい。
【0032】
上述の接着部の構成は、圧電素子22とスライダ6との間にも同様な接着部の構成が適用され、また、圧電素子22,24とジンバル部8aとの間にも同様な接着部の構成が適用される。
【0033】
さらに、本実施例では、圧電素子に段差を設けて接着剤塗布部30の接着面を設けているが、図5に示すように、段差により画成された接着面又は接着剤塗布部をジンバル部8a又はスライダ6に設けることとしてもよい。
【0034】
上述の構成によれば、接着剤26を多めに塗布して接着面積が小さくなることを防止した場合に、余分な接着剤26が接着部から流れ出ても非接着部である活性部24cとスライダ6とを接着・固定してしまうことはなく、接着剤塗布部30のみがスライダ6に接着・固定されることとなる。これにより、圧電素子22,24とスライダ6との間の接着面積を一定にすることができ、接着面積のばらつきによるマイクロアクチュエータ20の移動距離のばらつきを抑制することができる。その結果、安定して精度良くマイクロアクチュエータ20を駆動して、磁気ヘッドを位置合わせすることができる。マイクロアクチュエータ20を用いて磁気ヘッドを補助的に駆動することにより、高密度記録用の記録媒体(磁気ディスク)に対応して、磁気ヘッドを精度良く位置決めすることができる。
【0035】
次に、上述のマイクロアクチュエータ20を構成する圧電素子22,24の製造方法について説明する。圧電素子22,24の製造方法として、ダイシング加工を用いる方法と、超音波加工を用いる方法と、圧電素子の積層段階でパンチング加工を用いる方法が考えられる。
【0036】
まず、ダイシング加工を用いる方法について、図6を参照しながら説明する。
【0037】
まず、PNN−PT−PZセラミックスグリーンシート(圧電セラミックス原料シート)上にPt電極を所望の枚数スクリーン印刷して積層し、シート状の積層体であるセラミックス積層シート40を形成する。積層シート40に整列した長方形の貫通開口42をパンチング加工により形成した後、積層シート40を焼成して圧電素子の集合体とする。続いて、積層シート40を研磨して所定の厚さにする。その後、セラミックス積層シート40の貫通開口の列に沿って、ダイシングブレード44を用いて切削して切り込みをいれ(図6(a)参照)、積層シート40の表面に所定の深さ(例えば10μm〜20μm)の溝46を形成する(図6(b)参照)。この溝46の深さが、出来上がった圧電素子の接着剤塗布部の段差Hに相当する。
【0038】
溝を形成したら、次に、溝と溝の間で切断して、一列に並んだ開口を有する短冊状部分40aに分割する(図6(c)参照)。その後、圧電素子の駆動電極となる部分を短冊状部分40aの側面に形成し、短冊状部分40aの開口の中央と開口と開口の間の部分の中央で切断して圧電素子とする(図6(d)参照)。
【0039】
超音波加工を用いる方法は、上述のダイシング加工を用いる方法と基本的に同じであり、溝46を形成する際にダイシングブレードを用いるのではなく、超音波加工による研磨により溝46を形成する点が異なる。
【0040】
次に、圧電素子の積層段階でパンチング加工を用いる方法について、図7を参照しながら説明する。
【0041】
まず、PNN−PT−PZセラミックスグリーンシート上にPt電極を所望の枚数スクリーン印刷して積層し、且つその積層シートの上に、予めパンチング加工により複数の開口52を整列して形成したグリーンシート50を更に積層し、開口付き積層体である積層シート54を形成する(図7(a),7(b)参照)。ここで、グリーンシート50の厚みは、出来上がった圧電素子の段差Hに相当する。
【0042】
その後、開口52の列において、開口52と同じ幅で隣接した開口52の間の部分をパンチング加工により除去して積層シート56とする。これにより、段差Hに相当する溝が形成された積層シート56が形成される。次に、積層シート56を脱脂してから焼成した後、開口部が短冊状になるように帯状に切断し、電極を形成する。(図7(d)参照)。そして、図6(d)に示す方法と同様に圧電素子を個片化する(図7(e)参照。)。
【0043】
以上のように、接着剤塗布部30を有する圧電素子22,24は様々な方法で形成することができる。本発明者は、上述の方法にて接着剤塗布部30を有する圧電素子22,24を形成し、実際にスライダ6とジンバル部8aとの間に設けてマイクロアクチュエータ20を作成し、30Vの電圧を印加してスライダ6の移動量を測定した。測定の結果、移動量のばらつきが減少し、改良されたマイクロアクチュエータを実現できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を適用可能な磁気ディスク装置の平面図である。
【図2】図1に示すサスペンションの先端部分の構成を示す分解斜視図である。
【図3】スライダと圧電素子とを分離した状態で示す拡大斜視図である。
【図4】スライダと圧電素子との間の接着部を拡大して示す断面図である。
【図5】スライダ又はジンバル部に段差を設けて接着面を画成した場合を示す断面図である。
【図6】ダイシング加工を用いて圧電素子を製作する工程を説明するための図である。
【図7】パンチング加工を用いて圧電素子を製作する工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
2 磁気ディスク装置
4 磁気ディスク
6 スライダ
8 サスペンション
8a ジンバル部
10 キャリッジアーム
12 電磁アクチュエータ
14 アーム軸
20 マイクロアクチュエータ
22,24 圧電素子、
22a,22b,24a,24b 固定部
22c、24c 活性部
26 接着剤
30 接着剤塗布部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電アクチュエータを用いた移動機構であって、
該圧電アクチュエータを構成する圧電素子と、該圧電アクチュエータにより移動される移動部と、該圧電アクチュエータを支持する支持部とを有し、
前記移動部と前記支持部との少なくとも一方は、前記圧電素子に固定され、
前記圧電素子、前記移動部及び前記支持部の少なくとも一つは、段差により画成された接着面を有することを特徴とする圧電アクチュエータを用いた移動機構。
【請求項2】
請求項1記載の圧電アクチュエータを用いた移動機構であって、
前記圧電素子は、接着剤で前記移動部又は前記支持部に固定された固定部と、固定されずに変形可能な活性部とを有し、該固定部と該活性部との間に前記段差が設けられることにより、前記活性部の表面と前記移動部の表面又は前記支持部の表面との間の距離は、前記固定部の表面と前記移動部の表面又は前記支持部の表面との間の距離より大きいことを特徴とする圧電アクチュエータを用いた移動機構。
【請求項3】
請求項2記載の圧電アクチュエータを用いた移動機構であって、
前記活性部は短冊形状であり、長手方向の両端に前記固定部が一体的に設けられたことを特徴とする圧電アクチュエータを用いた移動機構。
【請求項4】
請求項3記載の圧電アクチュエータを用いた移動機構であって、
前記圧電アクチュエータは一対の前記圧電素子を用いた回転アクチュエータであって、該回転アクチュエータは前記移動部と前記支持部との間に設けられて前記移動部を前記支持部に対して回転させることを特徴とする圧電アクチュエータを用いた移動機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の圧電アクチュエータを用いた移動機構であって、
前記段差は10μm〜20μmの範囲であることを特徴とする圧電アクチュエータを用いた移動機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の圧電アクチュエータを用いた移動機構を有する磁気ディスク装置であって、
前記移動部は磁気ヘッドを有するスライダであり、
前記支持部は該スライダを支持するサスペンションに形成されたジンバル部であり、
前記圧電アクチュエータは前記スライダと前記ジンバル部との間に設けられて前記スライダを前記ジンバル部に対して移動させることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項7】
圧電アクチュエータを構成する圧電素子の形成方法であって、
電極と圧電セラミックス原料シートとを積層してシート状の積層体を形成し、
該積層体に複数の貫通開口を整列して形成し、
前記積層体を焼成し、
前記貫通開口の列に沿って所定の深さの溝を形成し、
前記溝により段差が形成され、段差の低い部分が圧電素子の変形部である活性部となり、段差の高い部分が他の部材に接着剤にて固定される固定部となるように、前記積層体を切断して圧電素子を個片化する
ことを特徴とする圧電素子の形成方法。
【請求項8】
請求項7記載の圧電素子の形成方法であって、
前記所定の深さの溝を形成する前に前記積層体を研磨して厚みを調整することを特徴とする圧電素子の形成方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の圧電素子の形成方法であって、
前記溝の形成は、ダイシングブレードによる切削又は超音波工具を用いた研磨により行なうことを特徴とする圧電素子の形成方法。
【請求項10】
圧電アクチュエータを構成する圧電素子の形成方法であって、
電極と圧電セラミックス原料シートとの積層体上に、整列した開口を有する所定の厚みのセラミックスシートをさらに積層してシート状の開口付き積層体を形成し、
該開口付き積層体にパンチング加工により貫通開口を形成することにより、前記開口の列に沿って前記所定の厚みに等しい深さの溝を形成し、
前記開口付き積層体を焼成し、
前記溝により段差が形成され、段差の低い部分が圧電素子の変形部である活性部となり、段差の高い部分が他の部材に接着剤にて固定される固定部となるように、前記積層体を切断して圧電素子を個片化する
ことを特徴とする圧電素子の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14557(P2006−14557A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191472(P2004−191472)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】