説明

圧電インバータ装置

【課題】 放電灯の点灯時に、圧電トランスに印加される入力電流の駆動周波数を繰り返し掃引することなく、放電灯を点灯させることのできる回路構成を提供する。
【解決手段】 圧電インバータ装置11において、圧電トランス12からの出力電圧を示す出力電圧検出回路13からの出力電圧信号と、放電灯20を流れる電流値を示す帰還電流検出回路14からの帰還電流信号とを、信号加算部15において加算した後に制御回路部16に入力することとする。制御回路部16を構成する制御IC17において、両者の加算信号は帰還電流信号入力端子FBIのみに入力することとし、一方で出力電圧信号入力端子OVPは接地して、信号の入力を行わないように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスを駆動させることにより放電灯を点灯させる圧電インバータ装置に関するもので、とくに冷陰極管を点灯させるのに好適な制御回路を有する圧電インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電灯の一種である冷陰極管は主として液晶ディスプレイなどのバックライトとして用いられるが、その使用時には数百〜千数百Vの高電圧で交流駆動する必要があり、そのための駆動装置として、圧電トランスを用いて冷陰極管の駆動を行う、圧電インバータ装置が用いられている。従来の一般的な圧電インバータ装置の例について、図3ないし図5を基に説明する。図3は従来の圧電インバータ装置の構成を示す回路図であり、図4は冷陰極管の点灯動作時における、図3での各部の処理信号の波形を示すタイムチャート、図5は圧電トランスの動作特性を示すグラフであって、入力電流の周波数と出力電圧との関係を示している。
【0003】
図3において、圧電インバータ装置31は、冷陰極管である放電灯40を点灯させるとともに、点灯後は放電灯40の動作を安定化させるための制御を続ける回路を有する装置である。従来の圧電インバータ装置31は一般に圧電トランス32、前記圧電トランス32を駆動するための圧電トランス駆動回路39、前記圧電トランス駆動回路39を制御する制御回路部36、前記圧電トランス32からの出力電圧を検出する出力電圧検出回路33、負荷である放電灯40が点灯した場合に前記放電灯40に流れる電流を検出する帰還電流検出回路34から構成されており、制御回路部36内には制御IC37が配置されている。ここで冷陰極管である放電灯40を点灯させるためには、放電灯40に対して最初は数千Vの電圧を印加する必要がある。一方、放電灯40の点灯後には、その内部抵抗が低下するとともに動作の維持に必要な印加電圧が低下することになるので、圧電インバータ装置31は点灯前とは制御の方法を変えて、安定的な発光を維持する制御を行う必要がある。
【0004】
冷陰極管である放電灯の点灯に必要な圧電インバータ装置の動作について、図5を基に説明する。一般に圧電トランスは、負荷が高抵抗の場合には数千Vという非常に高い交流の出力電圧を与えることができる素子であり、その出力電圧は、入力される電流の周波数によって決定される。図5において、圧電トランスの未点灯時の出力51は、入力電流の周波数がf1の場合にはV1であるが、周波数がf2まで減少するとV2に上昇する。一方、放電灯の点灯後には負荷である放電灯の内部抵抗が低下することになるので、その出力電圧は点灯後の出力52のレベルまで大きく下がる。
【0005】
従って、放電灯が点灯可能となる圧電トランスの出力電圧の条件を挟むように予めV1とV2を設定しておいて、未点灯時に圧電トランスに印加する入力電流の駆動周波数をf1からf2まで変化させる(掃引する)ならば、放電灯に印加される電圧がいずれ点灯可能な値に達することになる。なお圧電トランスの出力電圧の上限値となるV2はその耐久性を考慮して決定される必要があり、圧電トランスの製品ばらつきを勘案しても使用時に破損することがなく、十分な信頼性が得られる値とするべきである。またV2がそのような条件を満たす値になるようにf2は定められる。
【0006】
しかし実際には圧電トランスの出力電圧を一度だけ変化させても、その間に放電灯の点灯が起きない場合がある。放電灯に点灯可能な電圧が印加された直後には、管電流のエネルギーがまず冷陰極管内を満たすガスの昇温や電離、蛍光物質の暗黒状態から励起状態への移行のために消費され、すぐには発光の臨界状態に至らないためである。このため圧電トランスへの入力電流の周波数がf2に達した時点で放電灯が未点灯の場合は掃引を停止し、入力電流の周波数をもう一度f1に戻して、再び圧電トランスの出力電圧をV1からV2まで変化させることが行われている。この掃引を数回程度繰り返しているうちに、放電灯内のガスの昇温などの前記の条件が満たされ、臨界状態に達して放電灯が点灯することになる。
【0007】
この一連の圧電トランスに印加される入力電流の駆動周波数の掃引のために、図3に示す出力電圧検出回路33と帰還電流検出回路34が用いられる。ここで出力電圧検出回路33は、圧電トランス32の出力電圧を分圧する分圧抵抗R1およびR2、ここで分圧された出力電圧を整流するダイオードD1、整流された出力電圧を平滑するコンデンサC1および抵抗R3から構成される。分圧抵抗R1とR2の抵抗比を変更することによって、圧電トランス32の出力電圧信号の最大値を調整することができる。また帰還電流検出回路34は、放電灯を流れる帰還電流を電圧に変換する抵抗R4、変換された電圧を整流するダイオードD2、整流された電圧を平滑するコンデンサC2および抵抗R5から構成される。ここで帰還電流を電圧に変換する抵抗R4の抵抗値を変更することによって、帰還電流信号の最大値を調整することができる。
【0008】
出力電圧検出回路33で平滑された出力電圧信号は制御回路部36を構成する制御IC37の出力電圧信号入力端子OVP(以下OVP)へ、また帰還電流検出回路34で平滑された帰還電流信号は同じく制御IC37の帰還電流信号入力端子FBI(以下FBI)へ入力される。圧電インバータ装置31の動作開始から放電灯40が点灯するまでの間は、制御ICの駆動周波数制御部38ではOVPへ入力された出力電圧信号を基に、圧電トランス32の駆動周波数が制御される。その際に、駆動周波数制御部38は駆動周波数を所定の範囲内で次第に低い周波数に変化させることで、圧電トランス32からの出力電圧を最大で例えば2.8kVP-P(peak to peak)以上へ急激に高める掃引動作を行い、以降は放電灯の点灯までこの動作を繰り返す。
【0009】
図4および図5をもとに、この時の圧電インバータ装置における動作について説明する。図4は圧電トランスからの出力電圧A(図3の測定点Aにおける圧電トランス32からの出力電圧の側定値。以下同じ)のP−P(peak to peak)包絡線、およびOVPでの出力電圧信号B(図3の測定点Bにおける出力電圧信号の側定値。以下同じ)、FBIでの帰還電流信号C(図3の測定点Cにおける帰還電流信号の側定値であり電圧信号である。以下同じ)を同じ時系列にて並べて記載したタイムチャートである。初期状態での圧電トランスへの入力電流の周波数は図5におけるf1であり、この時の出力電圧Aは図5におけるV1および−V1である。出力電圧信号Bは、圧電トランスに印加する入力電流の駆動周波数の掃引に伴って急激に立ち上がり、最大値に達する。この時には出力電圧AのP−P包絡線の値も同時に急激に増加し、上限値であるV2、−V2に達する。上限値に達した時点で圧電トランスへの入力電流の周波数は図5におけるf2となっている。
【0010】
出力電圧信号Bが上限値に達すると、制御ICの駆動周波数制御部による制御が実施され、入力電流の周波数が図5におけるf1まで急激に変化する。それによって、出力電圧AのP−P包絡線の値はV1まで急激に降下し、以降は圧電トランスへの入力電流の駆動周波数の掃引が繰り返される度にV1からV2までの変化を繰り返す。この変動は出力電圧信号Bにおいても同様であり、図4に示すタイムチャートにはのこぎり状の波形が繰り返し現れる。なおこの時点までは放電灯が点灯していないために、帰還電流信号Cは初めからずっと0V(ゼロボルト)のままで変化しない。
【0011】
圧電トランスへの入力電流の駆動周波数の掃引が数回程度繰り返されると、放電灯の点灯のための発光の臨界状態に達することとなり、図5において出力電圧AのP−P包絡線の値がV1からV2まで変動する間のいずれかの時点で点灯が開始する。放電灯の点灯後は、放電灯の内部抵抗が急激に低下するとともに、放電灯内を通過する帰還電流が発生する。これに伴い帰還電流信号Cは図4に示すように0Vから急激に立ち上がり、そのため制御ICの駆動周波数制御部はFBIに入力された帰還電流信号によって駆動周波数を制御することとなって、圧電トランスの出力電圧を例えば1.4kVP-P以上の値で安定させる。これは、制御ICのOVPおよびFBIの両方に有意な電圧の信号が入力された場合に、駆動周波数制御部は優先的にFBIへの入力信号の値による制御を行うように駆動回路部が構成されているためである。
【0012】
ここで図5に示すように放電灯の点灯によって放電灯の内部抵抗が低下するために、圧電トランスの出力電圧は未点灯時よりも大きく低下することになり、図4の出力電圧AのP−P包絡線、出力電圧信号Bの双方は、ともに未点灯時の最大値よりかなり低い値で安定化することになる。放電灯の点灯後は、帰還電流信号Cの微妙なゆらぎをもとに、駆動周波数制御部は圧電トランスに印加する入力電流の周波数をわずかに変化させることで、放電灯の明るさを常に一定値に保つよう制御を行うこととなる。
【0013】
なお以上記した従来技術である、圧電トランスの出力電圧を検出する出力電圧検出回路、および放電灯を流れる電流を検出する帰還電流検出回路をともに設けて、両回路による検出値をもとに、制御回路によって圧電トランスの駆動周波数を制御する方法に関しては、特許文献1および特許文献2に記載がなされている。このうち特許文献1は、従来技術による圧電インバータ装置に圧電トランスの破損防止のための新規の回路を付加して信頼性を高めた技術に関するものであり、また特許文献2は、圧電インバータ装置の小型化のために、圧電トランスの出力電圧の検出回路として電圧検出用のアンテナパターンを設けた技術に関する内容である。
【0014】
【特許文献1】特開2000−78741号公報
【特許文献2】特開2004−164889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の圧電インバータ装置では、以上記した圧電トランスに印加する入力電流の駆動周波数の掃引によって、放電灯の点灯時に圧電トランスの出力電圧を図5に示すV1からV2まで変化させる動作を繰り返していた。この繰り返しは放電灯の点灯までに一般に数回程度行われる。1回の掃引に要する時間は数ms程度と非常に短いために、この短時間の掃引の間に圧電トランスには急激な内部歪みの変動が生じることになる。またこの間は放電灯の内部抵抗が高い状態であるために出力電圧の変動も大きく、掃引の繰り返しは結果として圧電トランスに対して寿命を縮める影響を与えていると考えられる。さらに事情は放電灯においても同様であって、この短時間の掃引の繰り返しが結果として放電灯の寿命に影響する可能性も検討される。
【0016】
従って、本発明の目的は、放電灯の点灯の度に実施されていた、圧電トランスの出力電圧を繰り返し急激に変動させて放電灯を点灯させる従来の方法の見直しを行い、それによって従来よりも圧電トランスおよび放電灯の両方の寿命を延ばすことが可能な、圧電インバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明では、放電灯の点灯のために従来行っていた圧電トランスの出力電圧を繰り返し変動させる動作を廃止して、点灯動作開始時の1回のみとする。そのために、従来繰り返し実施していた圧電トランスに印加される入力電流の駆動周波数の掃引を行わず、放電灯が点灯するまでは圧電トランスに対して一定の周波数の電流を印加し続ける回路構成とする。従来使用していた制御回路部を構成する制御ICはそのまま用いるものの、圧電トランスの駆動周波数の掃引を行わずに放電灯を点灯させるために、制御ICの各端子のうちのFBIには、帰還電流検出回路からの出力電圧信号と出力電圧検出回路からの出力電圧信号とを加えた両者の加算信号を入力する。一方OVPは接地することとして、そこには常に何の信号も加えない構成とする。
【0018】
放電灯の未点灯時には、従来ならば制御ICはOVPからの入力信号に基づき、圧電トランスに印加される入力電流の駆動周波数を制御するように構成されている。しかし本発明においてはOVPへの入力信号は常に0Vであるので、OVPからの入力による圧電トランスの駆動周波数の掃引制御は実施されない。一方、FBIには放電灯の未点灯時であっても出力電圧検出回路からの出力電圧信号が入力されているので、制御ICはこの入力信号に基づき、点灯開始の初期段階以外は圧電トランスの駆動周波数をほぼ一定値に保つ制御を行うこととなる。これは、FBIに入力信号がある場合には、制御ICはOVPからの入力信号に優先して、FBIへの入力信号に基づく制御を行うように構成されていることによる。
【0019】
放電灯が未点灯の場合には、出力電圧検出回路からの出力電圧信号は圧電トランスの出力電圧に見合った、0Vではない電圧の信号であり、一方帰還電流検出回路からの出力電圧信号は常に0Vである。従って両者が加算されたFBIへの入力信号は、実質的に出力電圧検出回路からの出力電圧信号のみとなって0Vにはならない。またFBIへの入力信号をもとにした制御回路部での制御では、圧電トランスに印加される入力電流の駆動周波数の掃引が行われないために、放電灯が未点灯の場合であっても前記入力電流の周波数はほぼ一定値となる。前記2種類の出力電圧信号の加算部において、出力電圧検出回路からの出力電圧信号の信号強度を適切な値に保つこととすれば、放電灯に印加される圧電トランスからの出力電圧を、放電灯が点灯可能な範囲の値に固定することが可能である。
【0020】
このようにして、放電灯に対して点灯に適切な固定電圧を加えるように回路を構成するならば、放電灯に印加される電圧を短い周期で変動させなくとも点灯のために必要な発光の臨界状態にいずれ達することとなり、放電灯の点灯が開始される。放電灯が点灯すると、帰還電流検出回路からの出力電圧信号が生じるとともに、出力電圧検出回路からの出力電圧信号は信号レベルが大きく低下することとなるので、両者が加算されたFBIへの入力信号は今度は実質的に帰還電流検出回路からの出力電圧信号のみとなる。そのため放電灯の点灯以降は従来の圧電インバータ装置の場合と全く同様に、帰還電流検出回路からの出力電圧信号をもとに圧電トランスの駆動周波数の調整が行われることとなり、放電灯の点灯状態の維持制御が続けられる。
【0021】
なお、点灯動作開始時には圧電トランスの駆動周波数の掃引を行わなくても、圧電トランスの出力電圧が必要な固定電圧まで上昇するにはやはり一定の時間が必要であるため、この間に1回だけ周波数掃引を行って圧電トランスの出力電圧の上昇の制御を行う構成としてもよい。そのためにはFBIには前記の加算信号を入力するものの、OVPを接地せずに出力電圧検出回路からの出力電圧信号を入力する構成とすることが好適である。この場合は、点灯動作の開始直後に一度のみ行われる圧電トランスへの印加電圧の掃引の上限を規定する手段として、このOVPへの入力信号を利用することになる。この場合には点灯動作開始直後の圧電トランスの出力電圧の上昇過程を制御回路部によって制御することができる。
【0022】
ただし前記のように制御ICはFBIへの入力信号をOVPへの入力信号より優先して処理するよう設計されている。そのため、このOVPへの入力信号によって印加電圧の上限値を規定する構成を実現するためには、FBIへの入力信号が一定値以下の場合に、制御ICがFBIへの入力信号に優先してOVPへの入力信号による制御を行うなどの機能を、制御回路部の内部または外部に新たに設けておく必要がある。
【0023】
即ち、本発明は、放電灯を点灯させる圧電トランスと、圧電トランス駆動回路と、前記圧電トランス駆動回路を制御する制御回路部と、前記放電灯に流れる電流を検出する帰還電流検出回路と、前記圧電トランスの端子電圧を検出する出力電圧検出回路とを有する圧電インバータ装置であって、前記放電灯の未点灯時に、前記圧電トランス駆動回路によって前記圧電トランスを駆動する際の駆動周波数を、前記制御回路部による制御によって固定することを特徴とする、圧電インバータ装置である。
【0024】
また、本発明は、前記帰還電流検出回路および前記出力電圧検出回路からの出力信号を加算して、前記制御回路部の帰還電流信号入力端子に入力することを特徴とする、圧電インバータ装置である。
【0025】
さらに、本発明は、前記制御回路部の出力電圧信号入力端子を接地することを特徴とする、圧電インバータ装置である。
【0026】
さらに、本発明は、前記制御回路部の出力電圧信号入力端子に前記出力電圧検出回路からの出力信号を入力することを特徴とする、圧電インバータ装置である。
【0027】
さらに、本発明は、前記放電灯が冷陰極管であることを特徴とする、圧電インバータ装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、放電灯の点灯のための圧電インバータ装置において、その点灯動作時に、圧電トランスに印加する入力電流の駆動周波数の掃引を行うことなく放電灯を点灯させることができるだけでなく、また点灯後の放電灯の点灯状態の維持制御についても従来の圧電インバータ装置と同じように実施することができる。具体的には、従来放電灯の点灯に至るまでに数回程度行われていた、圧電トランスに印加される入力電流の駆動周波数の掃引を廃止して動作開始時の1回のみとするものであり、これにより圧電トランス内部での歪みの急激な変動を防止することができる。これによって圧電トランスの寿命を縮めていた要因の一つを取り除いてその寿命を延ばし、信頼性を高めた圧電インバータ装置を提供することができる。またこの事情は放電灯においても同様であり、駆動電圧の急激な変動の繰り返しを廃止することによって、使用される放電灯の寿命を延ばすという点においても効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態における圧電インバータ装置について、図1および図2に基づいて説明する。
【0030】
図1は本発明の実施の形態における圧電インバータ装置における構成を示す回路図であり、図2は冷陰極管である放電灯の点灯動作時における、図1での各部の処理信号の波形を示すタイムチャートである。図1において、圧電インバータ装置11は従来例の場合と同様に、放電灯20を点灯させるとともに、点灯後は放電灯20の動作の安定化のための制御を続ける回路を有する装置である。
【0031】
圧電インバータ装置11は圧電トランス12、前記圧電トランス12を駆動するための圧電トランス駆動回路19、前記圧電トランス駆動回路19を制御する制御回路部16、前記圧電トランス12からの出力電圧を検出する出力電圧検出回路13、前記放電灯20に流れる電流を検出する帰還電流検出回路14、および出力電圧検出回路13と帰還電流検出回路14からの出力を加算して制御回路部16に入力する信号加算部15から構成されている。また前記制御回路部16内には、周波数制御を行うための制御IC17が配置されており、前記制御IC17は内部に駆動周波数制御部18を有する。信号加算部15および制御IC17への信号入力の経路以外は、制御回路部16に用いられている制御ICを含め、図3に示す従来の圧電インバータ装置と同一構成の回路図となっている。
【0032】
出力電圧検出回路13で平滑された出力電圧信号と帰還電流検出回路14で平滑された帰還電流信号はそれぞれ信号加算部15に入力され、信号経路に各々設けられたダイオードD3,D4を経た後に互いに加算されて、その後に抵抗R6によってその出力電圧の調整が行われる。信号加算部15を経た信号は、制御回路部16内の制御IC17の帰還電流信号入力端子FBI(以下FBI)に入力される。一方、出力電圧信号入力端子OVP(以下OVP)は、制御IC17における制御には関与させないために接地される。
【0033】
冷陰極管である放電灯20を点灯させるためには、圧電トランス12を用いて数千Vの電圧を放電灯20に対して印加する必要がある。しかし一度放電灯20が点灯すると、その内部抵抗が低下するとともに点灯状態の維持に必要な印加電圧が点灯前より低下することになるので、圧電インバータ装置11は点灯前とは制御の方法を変えて、安定的な発光を維持する制御に移行する必要がある。本発明における圧電インバータ装置11では、放電灯20の点灯動作、および点灯後の放電灯20の発光を維持するための制御の両方を安定的に実施することができる。
【0034】
図2をもとに、そのような放電灯の点灯動作時、および点灯後の圧電インバータ装置における動作について説明する。図2は圧電トランスからの出力電圧AのP−P(peak to peak)包絡線(図1の測定点Aにおける圧電トランス12からの出力電圧の側定値。以下同じ)、および制御ICのOVPでの接地信号B(図1の測定点Bにおける信号電圧の側定値。以下同じ)、FBIでの加算信号C(図1の測定点Cにおける加算された信号電圧の側定値。以下同じ)を同じ時系列にて並べて記載したタイムチャートである。接地信号Bは信号加算部において接地されているために、放電灯の点灯、未点灯に関わらず常に0Vである。未点灯状態での圧電トランスへの入力電流の周波数は、最初は制御ICが初期値として定める値であるが、開始直後に一度のみ掃引が行われ、それ以降は適当な周波数に保持されることとなる。
【0035】
この点灯動作開始時の初期の圧電トランスへの入力電流の周波数は、図3の従来例の場合と同じ制御ICを用いるならば図5におけるf1であり、その時には圧電トランスからの出力電圧AのP−P包絡線の値は従来例と同じくV1である。その後は圧電トランスへの入力電流の周波数は減少していき、出力電圧AのP−P包絡線の値は逆に増加して上限値である図2のV’および−V’に達してそこで保持される。このV’および−V’はFBIでの加算信号Cをもとに制御ICの駆動周波数制御部が定める値である。なおV’は掃引の開始点である図5のV1よりももちろん大きく、また圧電トランスの安全上の上限値であるV2を上回らない値に定める必要がある。
【0036】
ここで放電灯が未点灯の場合は放電灯の内部を流れる帰還電流が発生せず、また帰還電流検出回路からの出力は0Vである。このため加算信号Cは、圧電トランスからの出力電圧AのP−P包絡線の値と、出力電圧検出回路を構成する分圧抵抗R1およびR2の比によって決定される。従って分圧抵抗R1およびR2の比を適切に調整することにより、未点灯時のFBIでの加算信号Cの値を定めることができる。これによって制御ICが制御し保持する出力電圧AのP−P包絡線の上限値であるV’および−V’の値を任意に定めることができる。
【0037】
圧電トランスからの出力電圧AのP−P包絡線の値がV’および−V’に達した後は、圧電トランスからの出力電圧が一定に保持されるように、放電灯が点灯するまでその駆動周波数の調整が続けられることとなる。帰還電流検出回路からの出力が0Vであるため、FBIへ入力される加算信号Cは出力電圧検出回路からの出力信号そのものであり、この加算信号によって制御ICの駆動周波数制御部が圧電トランスの駆動周波数を一定値に保持し、それによって圧電トランスからの出力電圧を、例えば2.8kVP-P以上に安定させる制御を行う。この駆動を続けると、圧電トランスの駆動周波数の掃引を繰り返し実施しなくてもいずれ発光の臨界状態に達することになり、そのため放電灯が点灯することになる。
【0038】
放電灯の点灯後には、放電灯の内部抵抗が急激に低下するとともに、放電灯からの帰還電流が発生する。これに伴い帰還電流検出回路における出力信号は0Vから急激に立ち上がり、同時に出力電圧AのP−P包絡線の値は急激に低下する。それによって出力電圧検出回路からの出力信号も低下して、前記の帰還電流検出回路における出力信号よりも小さくなる。このため、FBIへ入力される加算信号Cは、帰還電流検出回路における出力信号そのものとなり、制御ICの駆動周波数制御部は、FBIに入力されるこの加算信号Cによって、放電灯からの帰還電流が所定値となるように圧電トランスの駆動周波数の制御を続けることとなる。これによって圧電トランスからの出力電圧を例えば1.4kVP-P以上の値に安定させることにより、放電灯の点灯を維持制御することができる。
【0039】
上記の説明は、制御ICへの入力信号の値が一定となるように周波数制御を行うものであり、圧電インバータ装置として従来用いられていた出力電圧検出回路、帰還電流検出回路、制御回路部および圧電トランス駆動回路などの一連の回路素子をそのまま用いて実現可能である点が特徴である。制御ICのFBIには加算信号を入力し、OVPは接地もしくは出力電圧検出回路からの出力信号を入力することによって、従来の制御回路が有する機能である掃引の繰り返しをキャンセルすることとしている。この方法によって、非掃引の点灯回路と圧電トランスの周波数制御回路を設けて掃引回路を不要とした他の専用ICを用いた圧電インバータ装置の場合と、同様の効果を得ることができる。
【0040】
なお、上記の説明は、本発明の実施の形態に係る圧電インバータ装置の回路構成における場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の圧電インバータ装置における構成を示す回路図。
【図2】本発明の圧電インバータ装置における、放電灯の点灯動作時の図1の各部の処理信号の波形を示すタイムチャート。
【図3】従来の圧電インバータ装置における構成を示す回路図。
【図4】従来の圧電インバータ装置における、放電灯の点灯動作時の図3の各部の処理信号の波形を示すタイムチャート。
【図5】従来の圧電インバータ装置における圧電トランスの動作特性を示すグラフ。入力電流の周波数と出力電圧との関係を示す。
【符号の説明】
【0042】
11,31 圧電インバータ装置
12,32 圧電トランス
13,33 出力電圧検出回路
14,34 帰還電流検出回路
15 信号加算部
16,36 制御回路部
17,37 制御IC
18,38 駆動周波数制御部
19,39 圧電トランス駆動回路
20,40 放電灯
51 未点灯時の出力
52 点灯後の出力
A 圧電トランスの出力電圧の測定点
B 出力電圧信号の測定点
C 帰還電流信号の測定点
R3〜R6 抵抗
C1,C2 コンデンサ
D1〜D4 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を点灯させる圧電トランスと、圧電トランス駆動回路と、前記圧電トランス駆動回路を制御する制御回路部と、前記放電灯に流れる電流を検出する帰還電流検出回路と、前記圧電トランスの端子電圧を検出する出力電圧検出回路とを有する圧電インバータ装置であって、
前記放電灯の未点灯時に、前記圧電トランス駆動回路によって前記圧電トランスを駆動する際の駆動周波数を、前記制御回路部による制御によって固定することを特徴とする、圧電インバータ装置。
【請求項2】
前記帰還電流検出回路および前記出力電圧検出回路からの出力信号を加算して、前記制御回路部の帰還電流信号入力端子に入力することを特徴とする、請求項1に記載の圧電インバータ装置。
【請求項3】
前記制御回路部の出力電圧信号入力端子を接地することを特徴とする、請求項2に記載の圧電インバータ装置。
【請求項4】
前記制御回路部の出力電圧信号入力端子に前記出力電圧検出回路からの出力信号を入力することを特徴とする、請求項2に記載の圧電インバータ装置。
【請求項5】
前記放電灯が冷陰極管であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電インバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−177118(P2008−177118A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11391(P2007−11391)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】