説明

圧電型エキサイタ

【課題】片持ち梁状のビームを備えた圧電型エキサイタにおいて、励振用パネルへの取付状態での使用に異常を来たすことなく所期の振動特性を確保する。
【解決手段】ビーム20を片持ち梁状に支持するビーム支持部材30に対して、ベースプレート40が、その下面に接触した状態で固定された構成とする。その際、ベースプレート40は、ビーム支持部材30の左右両側において立ち上がる左右1対の側面壁44を備えた略U字形の断面形状を有し、かつ、この断面形状を維持したままビーム20の自由端側へその途中位置まで延びるように形成された構成とする。これにより、振動力が増大しても、ベースプレート40における自由端側の端部に応力が集中しないようにする一方、ビーム20の自由端がベースプレート40に当接する可能性を低くし、また、励振用パネル2を押圧したときの触感に違和感が生じたり、ベースプレート40が剥離してしまうおそれをなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、励振用パネル(例えば液晶ディスプレイのタッチパネル等)を振動させるために、この励振用パネルに取り付けられた状態で使用される圧電型エキサイタに関するものであり、特に、片持ち梁状のビームを備えた圧電型エキサイタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶ディスプレイを備えた携帯用端末等において、そのスピーカとして、液晶ディスプレイのタッチパネルを振動させるように構成されたものが知られている。そして、そのスピーカを駆動するためのアクチュエータとして、片持ち梁状のビームを備えた圧電型エキサイタが知られている。
【0003】
このような圧電型エキサイタの構成としては、平板状に形成されたシムの上面および/または下面に圧電素子が固定されてなるビームと、このビームを片持ち梁状に支持するビーム支持部材と、このビーム支持部材の下面に接触した状態でこれに固定されたベースプレートとを備えたものが広く知られている。
【0004】
この圧電型エキサイタは、そのベースプレートの下面において励振用パネルに貼着等により取り付けられた状態で、圧電素子に電圧が印加されることにより、ビームが上下に撓んで振動し、これによりタッチパネルを振動させるように構成されている。
【0005】
「特許文献1」には、このような圧電型エキサイタにおけるベースプレートの構成として、ビーム支持部材の左右両側において立ち上がる左右1対の側面壁を備えた略U字形の断面形状を有しており、かつ、この略U字形の断面形状を維持したままビームの自由端まで延びるように形成された構成が記載されている。
【特許文献1】特開2011−129971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、従来の圧電型エキサイタを使用状態(すなわち上下反転させて励振用パネル2の下面に取り付けた状態)で示す側面図である。
【0007】
圧電型エキサイタの構成として、図8(a1)に示すように、ビーム102の基端部を支持するビーム支持部材104が位置している部分にのみベースプレート106が配置された構成となっている場合には、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、図8(a2)に示すように、圧電型エキサイタへの入力電圧が増大してその振動力が増大すると、励振用パネル2に取り付けられたベースプレート106におけるビーム102の自由端側の端部106aに応力が集中してしまう。このため、ベースプレート106は、その自由端側の端部106aにおいて励振用パネル2の下面から浮き上がってしまい、励振用パネル2からの所期の反力が得られなくなってしまう。そして、このような反力ロスが生じると、振動特性にバラツキが生じてしまうこととなる。なお、図8(a2)においては、説明の都合上、ビーム102の撓み変形の様子を実際よりも誇張して示している。
【0009】
また、ベースプレート106の端部106aの浮き上がりによって、ビーム102の有効長が、ビーム支持部材104における上記自由端側の端縁の位置からビーム102の自由端までの長さLよりも、浮き上がり分の長さα分だけ長いL+αとなってしまう。このため、図9(a)に示すように、本来は振動力の大小にかかわらず一定の値に維持されるべき最低共振周波数F0が、図9(b)に示すように、振動力の増大に伴って低下してしまい、所期の振動特性が得られなくなってしまう。
【0010】
これに対し、上記「特許文献1」に記載されているような構成を採用すれば、図8(b)に示すように、励振用パネル2とベースプレート206との接触面積をビーム102の長手方向に広範囲にわたって確保することができ、かつ、ベースプレート206を略剛体として構成することができるので、振動力の増大によってベースプレート106の一部に応力が集中してしまうのを未然に防止することが可能となる。
【0011】
しかしながら、このようにした場合には、ビーム102が振動したとき、その自由端がベースプレート206に当接して異音を発生させやすくなってしまう、という問題がある。また、ベースプレート206は略剛体として構成されているので、ユーザが指等によって励振用パネル2を押圧したとき、その触感に違和感が生じてしまう、という問題がある。さらに、ユーザの操作により、励振用パネル2が強く押圧されると、この励振用パネル2は撓み変形しようとするが、ベースプレート206は略剛体として構成されているので、その長手方向の両端部206a、206bにおいて励振用パネル2から剥離してしまうおそれがある、という問題がある。
【0012】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、片持ち梁状のビームを備えた圧電型エキサイタにおいて、励振用パネルへの取付状態での使用に異常を来たすことなく所期の振動特性を確保することができる圧電型エキサイタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、ベースプレートの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0014】
すなわち、本願発明に係る圧電型エキサイタは、
平板状に形成されたシムの上面および/または下面に圧電素子が固定されてなるビームと、このビームを片持ち梁状に支持するビーム支持部材と、このビーム支持部材の下面に接触した状態で該ビーム支持部材に固定されたベースプレートとを備え、上記ベースプレートの下面において励振用パネルに取り付けられるように構成された圧電型エキサイタにおいて、
上記ベースプレートが、上記ビーム支持部材の左右両側において立ち上がる左右1対の側面壁を備えた略U字形の断面形状を有しており、かつ、この略U字形の断面形状を維持したまま上記ビームの自由端側へ該ビームの途中位置まで延びるように形成されている、ことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成において、「上面」や「下面」等の方向性を示す用語は、圧電型エキサイタを構成する各部材相互間の位置関係を明確にするために便宜上用いたものであって、これにより圧電型エキサイタを実際に使用する際の方向性が限定されるものではない。
【0016】
上記構成において、「この略U字形の断面形状を維持したまま」とは、必ずしも同一の断面形状を維持したままであることまでは必要とせず、ベースプレートをその全長にわたって略剛体として構成可能な範囲内であれば、左右1対の側面壁の高さが変化するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記構成に示すように、本願発明に係る圧電型エキサイタは、ビームを片持ち梁状に支持するビーム支持部材に対して、その下面に接触した状態でベースプレートが固定されており、このベースプレートの下面において励振用パネルに取り付けられるように構成されているが、上記ベースプレートは、ビーム支持部材の左右両側において立ち上がる左右1対の側面壁を備えた略U字形の断面形状を有しており、かつ、この略U字形の断面形状を維持したままビームの自由端側へ該ビームの途中位置まで延びるように形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、ベースプレートは、ビーム支持部材が位置している部分にのみ配置されているわけではなく、略U字形の断面形状を維持したまま略剛体としてビームの自由端側へ該ビームの途中位置まで延びているので、圧電型エキサイタへの入力電圧が増大してその振動力が増大しても、ベースプレートにおける上記自由端側の端部に応力が集中してしまうようなことはない。したがって、ベースプレートがその自由端側の端部において励振用パネルから浮き上がってしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、励振用パネルからの反力ロスによって振動特性にバラツキが生じてしまうのを未然に防止することができ、また、ベースプレートの端部の浮き上がりによって、ビームの有効長が見かけ上長くなってしまうことにより最低共振周波数F0が振動力の増大に伴って低下し、所期の振動特性が得られなくなってしまうのを未然に防止することができる。
【0019】
その際、略剛体として構成されたベースプレートが延びているのは、ビームの途中位置までであるので、ビームの振動によりその自由端がベースプレートに当接してしまう可能性を低くすることができ、これにより異音の発生を効果的に抑制することができる。また、ユーザが指等によって励振用パネルを押圧したとき、その触感に違和感が生じてしまうおそれや、励振用パネルが強く押圧されたことにより、ベースプレートがその長手方向の両端部において励振用パネルから剥離してしまうおそれをなくすことができる。
【0020】
このように本願発明によれば、片持ち梁状のビームを備えた圧電型エキサイタにおいて、励振用パネルへの取付状態での使用に異常を来たすことなく所期の振動特性を確保することができる。
【0021】
上記構成において、左右1対の側面壁が、ビーム支持部材における上記自由端側の端縁の位置においてシムの板厚中心よりも上方まで延びるように形成された構成とすれば、応力が集中しやすい部分においてベースプレートの剛性を十分に確保することができ、これにより上記作用効果を一層高めることができる。
【0022】
上記構成において、ベースプレートにおける上記自由端側の端縁の位置は、ビームの途中位置であればその具体的な位置は特に限定されるものではないが、ビーム支持部材における上記自由端側の端縁の位置からビームの自由端までの長さに対して1/4〜3/4の範囲内の長さの位置に設定されたものとすれば、上記作用効果を確実に確保することができる。
【0023】
上記構成において、ベースプレートにおける上記自由端側の端部に、ビームが上方側へ所定量以上撓み変形したときに該ビームに当接するストッパが形成された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0024】
すなわち、圧電型エキサイタが組み込まれた携帯用端末等が落下等により外部衝撃を受けると、そのビームには過大振幅が生じてしまうこととなるが、ビームの途中位置まで延びるベースプレートには、その自由端側の端部にストッパが形成されているので、ビームが上方側へ過大に撓み変形してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、携帯用端末等におけるプリント基板やカバー部材等の構成部材にビームが当接して破損してしまうのを未然に防止することができる。また、このような破損が生じるほどには強く当接しないまでも、振動力の増大に伴ってビームがプリント基板やカバー部材等に当接し、これにより異音が発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0025】
この場合において、ストッパの具体的な構成は特に限定されるものではないが、ベースプレートにおける左右1対の側面壁の上端縁から互いに近づく方向へ向けて水平面に略沿って延びる左右1対の横爪部によってストッパを構成すれば、これら各横爪部の長さを比較的自由に設定することができ、これによりストッパとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0026】
このようにする代わりに、ベースプレートにおける左右1対の側面壁の上記自由端側の端縁から互いに近づく方向へ向けて鉛直面に略沿って延びる左右1対の縦爪部によってストッパを構成すれば、これら各縦爪部をシムにのみ当接させる構成とすることが可能となり、これにより圧電素子の損傷を未然に防止することができる。
【0027】
上記構成において、ビームの上面におけるベースプレートの上記自由端側の端縁の近傍からビームの自由端の近傍までの間の領域に、平板状のクッション部材が取り付けられた構成とすれば、圧電型エキサイタが組み込まれた携帯用端末等が外部衝撃を受けたとき、そのプリント基板やカバー部材等に対してクッション部材を当接させるようにすることができ、その緩衝作用によりビームが破損してしまうのを効果的に防止することができる。
【0028】
上記構成において、ベースプレートの底面壁における上記自由端側の端部に、上方側へ突出する突起部が形成された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0029】
すなわち、ビームの振動モードによっては、ビームは、その長手方向の途中位置において最大振幅が発生することとなる。その際、ビームの途中位置まで延びるベースプレートの底面壁における上記自由端側の端部に、上方側へ突出する突起部が形成された構成としておくことにより、ビームの長手方向の途中位置に過大振幅が発生してしまう前にビームを突起部に当接させるようにすることができ、これによりビームが破損してしまうおそれを軽減することができる。その際、この突起部の構成として、弾性変形可能な構成としておくことが、ビームの破損防止の観点からより好ましい。
【0030】
上記構成において、ビーム支持部材における上記自由端側の端縁の左右両端部に、ベースプレートにおける左右1対の側面壁に沿って上記自由端側へ突出する左右1対のガイド壁が形成された構成とした上で、ビーム支持部材がその各ガイド壁においてベースプレートの各側面壁に接着固定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0031】
すなわち、ビーム支持部材の各ガイド壁とベースプレートの各側面壁とが接着固定された構成とすることにより、ベースプレートにおける上記自由端側の端部に集中的に発生する応力を、両ガイド壁の突出方向に分散させることができる。そしてこれにより、ビーム支持部材をベースプレートに対してその底面壁に密着した状態に維持することができるので、振動力の増大に伴って最低共振周波数F0が低下してしまうのを、より一層確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は、本願発明の一実施形態に係る圧電型エキサイタを上向きに配置した状態で示す側面図、(b)は、その平面図
【図2】図1(b)のII−II線断面詳細図
【図3】図2のIII−III線断面詳細図
【図4】上記圧電型エキサイタを斜め上方から見て示す斜視図
【図5】上記圧電型エキサイタを主要構成要素に分解して斜め上方から見て示す斜視図
【図6】上記実施形態の第1変形例に係る圧電型エキサイタの要部を示す斜視図
【図7】(a)は、上記実施形態の第2変形例に係る圧電型エキサイタを上向きに配置した状態で、その要部を示す側断面図、(b)は、(a)のb−b線断面図
【図8】(a1)は、従来例を使用状態で示す側面図、(a2)は、その作用を示す側面図、(b)は、他の従来例を使用状態で示す側面図
【図9】(a)は、圧電型エキサイタの適正な振動特性を示すグラフ、(b)は、上記従来例の振動特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0034】
図1は、本願発明の一実施形態に係る圧電型エキサイタ10を上向きに配置した状態で示す図であって、(a)が側面図、(b)が平面図である。また、図2は、図1(b)のII−II線断面詳細図であり、図3は、図2のIII−III線断面詳細図である。さらに、図4は、圧電型エキサイタ10を斜め上方から見て示す斜視図であり、図5は、圧電型エキサイタ10を主要構成要素に分解して斜め上方から見て示す斜視図である。
【0035】
これらの図に示すように、本実施形態に係る圧電型エキサイタ10は、平板状に形成されたシム22の上下両面に圧電素子24がそれぞれ固定されてなるバイモルフ型のビーム20と、このビーム20を片持ち梁状に支持するビーム支持部材30と、このビーム支持部材30の下面に接触した状態で該ビーム支持部材30に固定されたベースプレート40とを備えた構成となっている。
【0036】
そして、この圧電型エキサイタ10は、そのベースプレート40の下面において、液晶ディスプレイのタッチパネル等の励振用パネル2に貼着等により取り付けられた状態で用いられるようになっている。その際、この圧電型エキサイタ10は、その圧電素子24に電圧が印加されることにより、ビーム20が上下に撓んで振動し、これにより励振用パネル2を振動させるように構成されている。
【0037】
ビーム20のシム22は、平面視において長方形の外形形状を有するステンレス鋼板等の金属板であって、その長手方向の寸法が30〜40mm程度(例えば35mm程度)、幅方向の寸法が3〜6mm(例えば5mm程度)程度、厚みが0.2〜0.4mm程度(例えば0.3mm程度)の値に設定されている。
【0038】
このシム22は、その長手方向の一端部が、ビーム支持部材30にインサート成形により埋設固定されており、これによりビーム20の片持ち支持が行われるようになっている。その際、このシム22の基端部22bは、その上面が部分的にビーム支持部材30から露出しており、この露出部分によって圧電型エキサイタ10の第1端子が構成されている。
【0039】
上下1対の圧電素子24は、シム22の上下両面においてビーム支持部材30から露出している部分に貼着されている。これら各圧電素子24は、平面視においてシム22よりもひと回り小さい長方形の外形形状を有している。すなわち、これら各圧電素子24は、その長手方向に関しては、ビーム支持部材30におけるビーム20の自由端側(以下、単に「自由端側」という)の端縁30aの位置からビーム20の自由端(具体的にはシム22の端縁22a)の近傍までの間の領域に形成されており、その幅方向に関しては、シム22よりもやや狭い範囲内の領域に形成されている。これら各圧電素子24は、その厚みが0.2〜0.4mm程度(例えば0.3mm程度)の値に設定されている。
【0040】
そして、上側に位置する圧電素子24の上面および下側に位置する圧電素子24の下面には、その全範囲にわたって金属箔26がそれぞれ貼着されている。この金属箔26は、ステンレス鋼や42ニッケル合金等の硬度の高い金属材料により構成されており、その厚みは0.02〜0.04mm程度(例えば0.03mm程度)の値に設定されている。
【0041】
ビーム支持部材30は、シム22をインサートとして成形された樹脂成形品として構成されている。このビーム支持部材30は、その厚みが1.5〜2.5mm程度(例えば1.9mm程度)の値に設定されており、その上下両面がシム22の板厚中心に対して略等距離の位置に形成されている。その際、このビーム支持部材30の自由端側の端縁30aは鉛直面状に形成されているが、この端縁30aの左右両端部には、自由端側へ向けて先細りとなる台形形状で突出する左右1対のガイド壁30bが形成されている。
【0042】
このビーム支持部材30には、その長手方向に延びる溝部30cが形成されており、この溝部30cには、ビーム支持部材30の基端部側からU字形のピン60が嵌め込まれるようにして装着されている。このピン60は、その1対の開放端部がビーム20の上下1対の金属箔26にハンダ62によって導通固定されている。そして、このピン60によって圧電型エキサイタ10の第2端子が構成されている。
【0043】
ベースプレート40は、ビーム支持部材30の下面に沿って水平方向に延びる底面壁42と、この底面壁42からビーム支持部材30の左右両側においてその両側壁面に沿って鉛直方向に立ち上がる左右1対の側面壁44とで構成されており、角張った略U字形の断面形状を有している。このベースプレート40は、板厚0.05〜0.2mm程度(例えば0.1mm程度)のステンレス鋼板等の金属板に曲げ加工等を施すことにより形成されている。
【0044】
このベースプレート40には、その左右1対の側面壁44における基端縁(すなわち自由端側の端縁とは反対側の端縁)の近傍にカシメ爪40cがそれぞれ形成されている。そして、このベースプレート40は、その底面壁42をビーム支持部材30の下面に接触させた状態で、左右1対のカシメ爪40cをビーム支持部材30の上面に対して左右両側からカシメることによりビーム支持部材30に固定されるようになっている。
【0045】
このベースプレート40の左右1対の側面壁44は、左右1対のカシメ爪40cよりも基端縁側においては、比較的低い高さで形成されているが、左右1対のカシメ爪40cよりも自由端側においては、比較的高い高さで形成されている。具体的には、左右1対のカシメ爪40cよりも基端縁側においては、各側面壁44の上端縁44bがシム22の下面と略同じ高さで形成されており、一方、左右1対のカシメ爪40cよりも自由端側においては、各側面壁44の上端縁44aがビーム支持部材30の上面と略同じ高さで形成されている。
【0046】
このベースプレート40は、各側面壁44の上端縁44aがビーム支持部材30の上面と略同じ高さに位置する略U字形の断面形状を維持したまま、ビーム20の自由端側へ該ビーム20の途中位置まで水平方向に延びるように形成されている。その際、このベースプレート40における自由端側の端縁40cの位置は、ビーム支持部材30における自由端側の端縁30aの位置からビーム20の自由端(すなわちシム22の自由端側の端縁22a)までの長さLに対して1/4〜3/4の範囲内の長さL1(例えばL1=2/5×L程度)の位置に設定されている。
【0047】
このベースプレート40には、その左右1対の側面壁44における自由端側の端部に、横爪部40bがそれぞれ形成されている。これら左右1対の横爪部40bは、左右1対の側面壁44の上端縁から互いに近づく方向へ向けて略直角に折れ曲がって水平面に略沿って延びるように形成されている。その際、これら各横爪部40bは、その上面が各側面壁44の上端縁と略面一になるように形成されている。そして、これら左右1対の横爪部40bは、ビーム20が上方側へ所定量以上撓み変形したときに該ビーム20に当接するストッパとして機能するようになっている。
【0048】
このベースプレート40の底面壁42における自由端側の端部には、上方側へ突出する突起部40dが形成されている。この突起部40dは、底面壁42における自由端側の端部の幅方向中心部分を、ベースプレート40の略板厚分だけ高くなるように段上がりで変形させることにより構成されている。
【0049】
ビーム支持部材30は、その左右1対のガイド壁30bの各々においてベースプレートにおける左右1対の側面壁44の各々に接着固定されている。この接着固定は、例えば、ビーム支持部材30にベースプレート40をカシメ固定した後に、各ガイド壁30bと各側面壁44との間に接着剤64を注入することにより行われるようになっている。
【0050】
ビーム20の上面には、ベースプレート40の自由端側の端縁の近傍からビーム20の自由端の近傍までの間の領域に、平板状のクッション部材50が貼着等により取り付けられている。このクッション部材50は、平面視において圧電素子24よりも僅かに幅の狭い長方形の外形形状を有している。このクッション部材50は、その厚みが0.4〜0.6mm程度(例えば0.5mm程度)の値に設定されている。
【0051】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る圧電型エキサイタ10は、ビーム20を片持ち梁状に支持するビーム支持部材30に対して、その下面に接触した状態でベースプレート40が固定されており、このベースプレート40の下面において励振用パネル2に取り付けられるように構成されているが、ベースプレート40は、ビーム支持部材30の左右両側において立ち上がる左右1対の側面壁44を備えた略U字形の断面形状を有しており、かつ、この略U字形の断面形状を維持したままビーム20の自由端側へ該ビーム20の途中位置まで延びるように形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0053】
すなわち、ベースプレート40は、ビーム支持部材30が位置している部分にのみ配置されているわけではなく、略U字形の断面形状を維持したまま略剛体としてビーム20の自由端側へ該ビーム20の途中位置まで延びているので、圧電型エキサイタ10への入力電圧が増大してその振動力が増大しても、ベースプレート40における自由端側の端部に応力が集中してしまうようなことはない。したがって、ベースプレート40がその自由端側の端部において励振用パネル2から浮き上がってしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、励振用パネル2からの反力ロスによって振動特性にバラツキが生じてしまうのを未然に防止することができ、また、ベースプレート40の端部の浮き上がりによって、ビーム20の有効長が見かけ上長くなってしまうことにより最低共振周波数F0が振動力の増大に伴って低下し、所期の振動特性が得られなくなってしまうのを未然に防止することができる。
【0054】
その際、略剛体として構成されたベースプレート40が延びているのは、ビーム20の途中位置までであるので、ビーム20の振動によりその自由端がベースプレート40に当接してしまう可能性を低くすることができ、これにより異音の発生を効果的に抑制することができる。また、ユーザが指等によって励振用パネル2を押圧したとき、その触感に違和感が生じてしまうおそれや、励振用パネル2が強く押圧されたことにより、ベースプレート40がその長手方向の両端部において励振用パネル2から剥離してしまうおそれをなくすことができる。
【0055】
このように本実施形態によれば、片持ち梁状のビーム20を備えた圧電型エキサイタ10において、励振用パネル2への取付状態での使用に異常を来たすことなく所期の振動特性を確保することができる。
【0056】
その際、本実施形態においては、左右1対の側面壁44が、ビーム支持部材30における自由端側の端縁30aの位置においてシム22の板厚中心よりも上方まで延びるように形成されているので、応力が集中しやすい部分においてベースプレート40の剛性を十分に確保することができ、これにより上記作用効果を一層高めることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、ベースプレート40における自由端側の端縁40aの位置が、ビーム支持部材30における自由端側の端縁30aの位置からビーム20の自由端(すなわちシム22の自由端側の端縁22a)までの長さLに対して1/4〜3/4の範囲内の長さL1の位置に設定されているので、上記作用効果を確実に確保することができる。
【0058】
さらに、本実施形態においては、ベースプレート40における自由端側の端部に、その左右1対の側面壁44の上端縁から互いに近づく方向へ向けて水平面に略沿って延びる左右1対の横爪部40bが形成されており、ビーム20が上方側へ所定量以上撓み変形したとき、これら左右1対の横爪部40bをストッパとしてビーム20に当接させる構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0059】
すなわち、圧電型エキサイタ10が組み込まれた携帯用端末等が落下等により外部衝撃を受けると、そのビーム20には過大振幅が生じてしまうこととなるが、ビーム20の途中位置まで延びるベースプレート40には、その自由端側の端部にストッパとしての左右1対の横爪部40bが形成されているので、ビーム20が上方側へ過大に撓み変形してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、携帯用端末等におけるプリント基板やカバー部材等の構成部材にビーム20が当接して破損してしまうのを未然に防止することができる。また、このような破損が生じるほどには強く当接しないまでも、振動力の増大に伴ってビーム20がプリント基板やカバー部材等に当接し、これにより異音が発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0060】
その際、左右1対の横爪部40bによってストッパが構成されていることから、これら各横爪部40bの長さを比較的自由に設定することができ、これによりストッパとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0061】
また、各圧電素子24の表面には金属箔26が貼着されているので、各横爪部40bにビーム20が当接したとき、圧電素子24が破損してしまうのを未然に防止することができる。
【0062】
さらに、本実施形態においては、ビーム20の上面におけるベースプレート40の自由端側の端縁40aの近傍からビーム20の自由端の近傍までの間の領域に、平板状のクッション部材50が取り付けられているので、圧電型エキサイタ10が組み込まれた携帯用端末等が外部衝撃を受けたとき、そのプリント基板やカバー部材等に対してクッション部材50を当接させるようにすることができ、その緩衝作用によりビーム20が破損してしまうのを効果的に防止することができる。
【0063】
そして、本実施形態においては、ベースプレート40の底面壁42における自由端側の端部に、上方側へ突出する突起部40dが形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0064】
すなわち、ビーム20は、振動モードによっては(具体的には2次や3次の振動モードでは)、その長手方向の途中位置において最大振幅が発生することとなる。その際、ビーム20の途中位置まで延びるベースプレート40の底面壁42における自由端側の端部に、上方側へ突出する突起部40dが形成された構成としておくことにより、ビーム20の長手方向の途中位置に過大振幅が発生してしまう前にビーム20を突起部40dに当接させるようにすることができ、これによりビーム20が破損してしまうおそれを軽減することができる。
【0065】
なお、このような作用効果は、ビーム20の長手方向の途中位置に過大振幅が発生してしまう前に、ストッパとして構成された左右1対の横爪部40bがビーム20に当接することによっても得ることができる。
【0066】
また、本実施形態においては、ビーム支持部材30における自由端側の端縁30aの左右両端部に、ベースプレート40における左右1対の側面壁44に沿って自由端側へ突出する左右1対のガイド壁30bが形成されており、そして、このビーム支持部材30は、その各ガイド壁30bにおいてベースプレート40の各側面壁44に接着固定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0067】
すなわち、ビーム支持部材30の各ガイド壁30bとベースプレート40の各側面壁44とが接着固定された構成とすることにより、ベースプレート40における自由端側の端部に集中的に発生する応力を、両ガイド壁30bの突出方向に分散させることができる。そしてこれにより、ビーム支持部材30をベースプレート40の底面壁42に密着した状態に維持することができるので、振動力の増大に伴って最低共振周波数F0が低下してしまうのを、より一層確実に阻止することができる。
【0068】
上記実施形態においては、ベースプレート40の各側面壁44におけるカシメ爪40cよりも自由端側の上端縁44aが、ビーム支持部材30の上面と略同じ高さで水平方向に延びるように形成されているものとして説明したが、このようにする代わりに、例えば、上端縁44aの位置が自由端側へ向けて徐々に低くなるように形成されたものとすることも可能である。このようにした場合においても、ベースプレート40を略剛体としてビーム20の自由端側へ該ビーム20の途中位置まで延びる構成を維持することができるので、ベースプレート40の軽量化を図った上で、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
上記実施形態においては、ビーム20がバイモルフ型のビームとして構成されている場合について説明したが、モノモルフ型や積層型のビームとして構成されている場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0071】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0072】
図6は、本変形例に係る圧電型エキサイタ110の要部を示す斜視図である。
【0073】
同図に示すように、本変形例に係る圧電型エキサイタ110は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、そのベースプレート140に形成されたストッパの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0074】
すなわち、本変形例においては、ビーム20が上方側へ所定量以上撓み変形したときに該ビーム20に当接するストッパが、ベースプレート140の自由端側の端縁140aにおける左右1対の側面壁144の上端部から互いに近づく方向へ向けて略直角に折れ曲がって鉛直面に略沿って延びる左右1対の縦爪部140bで構成されている。
【0075】
本変形例の構成を採用した場合には、これら各縦爪部140bを、ビーム20に対してそのシム22にのみ当接させる構成とすることが可能となり、これにより圧電素子24の損傷を未然に防止することができる。
【0076】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0077】
図7は、本変形例に係る圧電型エキサイタ210を上向きに配置した状態で示す図であって、(a)が要部側断面図、(b)がそのb−b線断面図である。
【0078】
同図に示すように、本変形例に係る圧電型エキサイタ210は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、そのベースプレート240に形成された突起部240dの構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0079】
すなわち、本変形例においても、ベースプレート240の底面壁242における自由端側の端部に、上方側へ突出する突起部240dが形成されているが、この突起部240dは、底面壁242の端部における幅方向中心部分を、その自由端側の端縁240aから所定長にわたって切り起こして、ベースプレート240の略板厚分だけ高くなるように段上がりで片持ち梁状に形成することにより構成されている。
【0080】
本変形例の構成を採用した場合には、ビーム20の長手方向の途中位置に過大振幅が発生してしまう前にビーム20を突起部240dに当接させるようにすることができ、しかもその際、この突起部240dを撓ませて弾性変形させることができるので、ビーム20が破損してしまうおそれを効果的に軽減することができる。
【0081】
なお、上記実施形態および各変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0082】
2 励振用パネル
10、110、210 圧電型エキサイタ
20 ビーム
22 シム
22a、30a、40a、140a、240a 自由端側の端縁
22b 基端部
24 圧電素子
26 金属箔
30 ビーム支持部材
30b ガイド壁
30c 溝部
40、140、240 ベースプレート
40b 横爪部(ストッパ)
40c カシメ爪
40d、240d 突起部
42、242 底面壁
44、144 側面壁
44a、44b 上端縁
50 クッション部材
60 ピン
62 ハンダ
64 接着剤
140b 縦爪部(ストッパ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成されたシムの上面および/または下面に圧電素子が固定されてなるビームと、このビームを片持ち梁状に支持するビーム支持部材と、このビーム支持部材の下面に接触した状態で該ビーム支持部材に固定されたベースプレートとを備え、上記ベースプレートの下面において励振用パネルに取り付けられるように構成された圧電型エキサイタにおいて、
上記ベースプレートが、上記ビーム支持部材の左右両側において立ち上がる左右1対の側面壁を備えた略U字形の断面形状を有しており、かつ、この略U字形の断面形状を維持したまま上記ビームの自由端側へ該ビームの途中位置まで延びるように形成されている、ことを特徴とする圧電型エキサイタ。
【請求項2】
上記左右1対の側面壁が、上記ビーム支持部材における上記自由端側の端縁の位置において上記シムの板厚中心よりも上方まで延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の圧電型エキサイタ。
【請求項3】
上記ベースプレートにおける上記自由端側の端縁の位置が、上記ビーム支持部材における上記自由端側の端縁の位置から上記ビームの自由端までの長さに対して1/4〜3/4の範囲内の長さの位置に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の圧電型エキサイタ。
【請求項4】
上記ベースプレートにおける上記自由端側の端部に、上記ビームが上方側へ所定量以上撓み変形したときに該ビームに当接するストッパが形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の圧電型エキサイタ。
【請求項5】
上記ストッパが、上記ベースプレートにおける上記左右1対の側面壁の上端縁から互いに近づく方向へ向けて水平面に略沿って延びる左右1対の横爪部で構成されている、ことを特徴とする請求項4記載の圧電型エキサイタ。
【請求項6】
上記ストッパが、上記ベースプレートにおける上記左右1対の側面壁の上記自由端側の端縁から互いに近づく方向へ向けて鉛直面に略沿って延びる左右1対の縦爪部で構成されている、ことを特徴とする請求項4記載の圧電型エキサイタ。
【請求項7】
上記ビームの上面における上記ベースプレートの上記自由端側の端縁の近傍から上記ビームの自由端の近傍までの間の領域に、平板状のクッション部材が取り付けられている、ことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の圧電型エキサイタ。
【請求項8】
上記ベースプレートの底面壁における上記自由端側の端部に、上方側へ突出する突起部が形成されている、ことを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の圧電型エキサイタ。
【請求項9】
上記ビーム支持部材における上記自由端側の端縁の左右両端部に、上記ベースプレートにおける上記左右1対の側面壁に沿って上記自由端側へ突出する左右1対のガイド壁が形成されており、
上記ビーム支持部材が、上記各ガイド壁において上記ベースプレートの各側面壁に接着固定されている、ことを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の圧電型エキサイタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30846(P2013−30846A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163671(P2011−163671)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】