説明

圧電式骨伝導レシーバおよびこれを用いた骨伝導通信システム

【課題】 全体の構成が簡易で、構成部品点数も少なく、また形状も簡易で、小型、コンパクト化が図れ、しかも必要とされる所要の振動を得て外部に取り出すことができる圧電式骨伝導レシーバ、これを用いた通信システムを得る。
【解決手段】 密閉ケース10内に配設した圧電振動子14により音声等を振動として装着者の頭部の骨に直接伝えるための圧電式骨伝導レシーバを、密封ケースの接触面11aに、周方向に沿って薄肉なエッジ部13を形成し、このエッジ部で取り囲まれた接触面の内側に、圧電振動子を中心を支持した状態で配設し、この圧電振動子の相対向する周辺部分に、変形錘16,16を搭載して設けることで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導により音声等を聞くことができる圧電式骨伝導レシーバおよびこの圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、騒音レベルの大きい環境下において音声等をきくことができる骨伝導レシーバを採用することが注目を集めている。また、この種の骨伝導レシーバは、頭部の骨に振動を伝えることにより、音声等を聞くことができることから、周囲への音の拡散を防止できる等の利点もあり、種々の構造のものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】 特開2005−151183号公報
【特許文献2】 特開2006−148295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から知られている骨伝導レシーバは、いずれも一長一短があり、構造面、形状面、さらに性能面の全てを満足し得るものは未だ提案されていない。たとえば、構造面では、構成が簡単で、しかもこの骨伝導レシーバを構成する構成部品点数が必要最小限であること等が望まれる。また、形状面では、小型かつコンパクトな構成で、しかも簡易な形状であること等が望まれる。さらに、性能面では、音声等を伝えるための所要の振動が得られ、しかもその振動を所要の状態で外部に取り出すことができること等が望まれる。
【0005】
また、このような骨伝導レシーバは、携帯電話等の送受信を行う通信システム等に用いられることが多いが、このような通信システムを構成するうえでも、できるだけ簡易な構成により所要の性能を発揮し得ることが望まれている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、全体の構成が簡易で、構成部品点数も少なく、また形状も簡易で、小型かつコンパクト化が図れ、しかも必要とされる所要の振動を得て、これを外部に取り出すことにより、骨伝導レシーバとしての機能を発揮することができる圧電式骨伝導レシーバ、およびこの圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る圧電式骨伝導レシーバは、密閉ケース内に配設した圧電振動子により音声等を振動として装着者の頭部の骨に直接伝えるための圧電式骨伝導レシーバであって、密封ケースの接触面には、周方向に沿って薄肉なエッジ部が形成されるとともに、この薄肉なエッジ部により取り囲まれた接触面の内側には、圧電振動子が中心を支持された状態で配設され、この圧電振動子の相対向する周辺部分には、変形錘が搭載して設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明(請求項2記載の発明)に係る圧電式骨伝導レシーバは、請求項1記載の圧電式骨伝導レシーバにおいて、圧電振動子は、異型形状で形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明(請求項3記載の発明)に係る圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムは、請求項1または請求項2記載の圧電式骨伝導レシーバをヘルメットの内側に設け、このヘルメットの顎紐にマイクロフォンを設けるとともに、これらの圧電式骨伝導レシーバとマイクロフォンとが接続されたインターフェースに通信端末を接続することにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項4記載の発明)に係る圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムは、請求項3記載の骨伝導通信システムにおいて、マイクロフォンとして、圧電式骨伝導マイクロフォンを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係る圧電式骨伝導レシーバによれば、密封ケース内に圧電振動子を設け、その振動エネルギを、一方向又は複数の方向から取り出すことができる構造としているので、全体の構造が簡単で、しかも全体の小型かつコンパクト化が図れ、また圧電振動子の所要の振動を適切かつ確実に取り出して、骨伝導レシーバとしての性能を発揮することができる等の種々優れた効果がある。
【0012】
また、本発明に係る圧電式骨伝導レシーバによれば、振動エネルギを、一定方向に集中するための中心取付型の圧電振動子に、振動周波数の特性を広帯域化および高効率化のための変形錘または変形ダンパを有する構造としているから、所要の振動を適切かつ確実に得ることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る圧電式骨伝導レシーバによれば、圧電振動子の電極板または圧電セラミックスを異型化して構成しているから、圧電振動子のより一層の広帯域化が可能である等の利点もある。
【0014】
また、本発明に係る圧電式骨伝導レシーバによれば、圧電振動子を設けたケースにおいて、圧電振動子から振動を取り出す方向に、エッジ状の窪みを設けるように構成しているから、圧電振動子からの振動を適切かつ確実に、しかも効率よく取り出すことができるという利点もある。
【0015】
さらに、本発明に係る圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムによれば、上述した作用効果をもつ圧電式骨伝導レシーバをヘルメットに装着し、これを携帯電話端末や圧電式骨伝導マイクロフォンに組み合わせてなる構成としたので、簡単な構成であるにもかかわらず、騒音レベルが高い環境下でも送受信が可能であり、工事現場等において効果を発揮し得る通信システムを得ることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1ないし図3は本発明に係る圧電式骨伝導レシーバおよびこれを用いた骨伝導通信システムの一実施形態を示す。
これらの図において、始めに、図3に示す骨伝導通信システム1の概要を以下に説明する。
【0017】
すなわち、この骨伝導通信システム1は、本発明を特徴づける圧電式骨伝導レシーバ2と、圧電式マイクロフォン3と、インターフェイス4と、これに接続される携帯電話端末5とによって構成されている。なお、インターフェース4は、上述した圧電式骨伝導レシーバ2と圧電式マイクロフォン3とが接続され、これらと携帯電話端末5とを接続する役割りを果たす。ここで、携帯電話端末5としては無線機やPHS等であってもよいことは言うまでもない。
【0018】
そして、本発明による骨伝導通信システム1によれば、圧電式骨伝導レシーバ2がヘルメット6の内側であって音の振動を鼓膜を介さずに装着者の頭蓋骨から内耳に直接伝えることができる位置に適宜の組み付け手段により取り付けられている。また、圧電式マイクロフォン3は、ヘルメット6の顎紐7等の一部であって装着者の声の振動を拾えることができる位置にマジックテープ等で取り付けられている。
【0019】
そして、このようにヘルメット6に圧電式骨伝導レシーバ2や圧電式マイクロフォン3を組み付けると、例えば工事現場等のように騒音の激しい現場で作業する作業者にとって扱い易く、しかも安全な骨伝導通信システム1を得ることができるのである。
【0020】
さて、本発明によれば、上述した構成による骨伝導通信システム1において、音声等を振動として骨に直接伝えるための圧電式骨伝導レシーバ2を、図1(a),(b)および図2(a),(b)に示すように構成したところを特徴としている。
【0021】
これを詳述すると、図2中符号10で示す密封ケースは、ほぼカップ状の樹脂製ケース本体11と、その開口部を閉塞する樹脂製カバー12とからなり、全体として薄型円盤状を呈するように構成されている。ここで、この密封ケース10は、防水または防塵構造をもつように、ケース本体11とカバー12とは溶着、その他の接合手段により密封されている。
【0022】
前記ケース本体11の表面11aは、装着者の頭部に接する接触面となるところであり、その周辺部には、全周にわたって薄肉なエッジ部13が形成され、このエッジ部13に取り囲まれた中央部分が振動することで装着者の頭部に振動を伝えることができるようになっている。
【0023】
上記ケース本体11の内側には、内側ボス部11bが設けられ、この部分に振動源としての圧電振動子14が中心取付型として支持されている。この圧電振動子14は、セラミック製電極板によって構成され、上述した内側ボス部11bに中心穴を嵌挿した状態でナット14で固定されている。なお、図1中符号18は圧電振動子14に接続された口出し線、19はコードであり、これにより外部から音声信号が圧電振動子14に入力されるようになっている。
【0024】
このような構成によれば、密封ケース10内の圧電振動子14による振動エネルギを、一方向または複数の方向から取り出すことができるために、圧電振動子の所要の振動を適切かつ確実に取り出して、骨伝導レシーバとしての性能を発揮することができるのである。
【0025】
ここで、この圧電振動子14は、全体がほぼ円盤形状を呈する部材において相対向する周辺部分の上下を切り欠くことにより、図1(b)に示すような形状で形成されている。さらに、この圧電振動子14の周辺部分の左右には、変形錘16,16が搭載して設けられている。この実施形態では、円盤状の圧電振動子の周辺部分に環状錘を搭載した状態で、相対向する周辺部分を、平行する線で切り欠いた形状となるように構成されている。この変形錘16,16の形状としては、これに限らず、適宜の形状で形成することは自由である。要は、圧電振動子15の両側に所定の重量を加えることができる形状であればよい。
【0026】
そして、このような変形錘16,16を有する圧電振動子14によれば、その振動エネルギを、一定方向に集中するための中心取付型の圧電振動子14に、振動周波数の特性を広帯域化および高効率化のための変形錘16,16を有する構造としているから、所要の振動を適切かつ確実に得ることができるのである。ここで、上述した変形錘16,16の代わりに、制振作用等をもつゴムなどによる変形ダンパを設けてもよい。
【0027】
なお、上述した実施形態では、圧電振動子14と変形錘16,16とを、円形の相対向する周辺部分を切り落とすことで異型化してなる構造で構成した場合を示したが、これに限らず、図4(a)に示すように、圧電振動子14を四角形状に形成し、その相対向する両側部分に変形錘16,16を搭載するように構成してもよい。また、図4(b)に示すように、円板状の圧電振動子14の相対向する周辺部分に変形錘16,16を搭載することによっても、上述した場合とほぼ同等の作用効果、つまり圧電振動子のより一層の広帯域化を図ることができるのである。
【0028】
さらに、上述した実施形態では、圧電振動子14を内蔵した圧電式骨伝導レシーバ2を、ヘルメット6の内側に取り付けて装着者の頭部に当接させるようにしたが、たとえば図5に示すように、密封ケース10の振動を取り出す部分に、図5に示すように、取付部20を膨出させて設け、これを装着者の頭部に直接取り付けるように構成してもよい。
【0029】
以上の構成による圧電式骨伝導レシーバ2によれば、全体の構成が簡単で、小型且つコンパクトな構成であるにもかかわらず、圧電振動子14の所要の振動を適切に取り出して装着者の頭部に伝えることができるものであり、骨伝導レシーバとしての性能を発揮させることができるのである。
【0030】
図6(a),(b)は、上述した骨伝導通信システム1において用いている骨伝導マイクロフォン3を示すものであり、図において、符号31はたとえばPZT圧電センサなどからなる圧電受信子であり、振動圧力等の変異を受けると電圧が変動することで装着者の音声信号を取り出すことができるようになっている。この圧電受信子31は、装着者の咽喉に接触するパッド32の反接触面側に保持され、保護カバーとなるケース33により覆われることで保護されるようになっている。
【0031】
上記のパッド32は、外部からの騒音等をカットし、一定レベル以上の振動(接触振動)に特に反応させる目的で3点支持構造(図中32a,32b,32cの部分)となっている。なお、図中34は圧電受信子31からの出力を取り出すための可撓より線からなる口出し線、35は出力コード35aを有する出力シールド線で、また36は強振動(ショック)等を受けたときの高出力ノイズから他の機器を保護するための過振過出力保護抵抗である。
【0032】
そして、このような構成による骨伝導マイクロフォン3を用いると、装着者の発声を適切かつ確実に拾って、出力信号として取り出すことができ、マイクロフォンとしての機能を発揮させることができるのである。
【0033】
また、上述した構成による圧電式骨伝導レシーバ2等を用いた骨伝導通信システム1によれば、上述した作用効果をもつ圧電式骨伝導レシーバ2をヘルメット6の内側に装着し、これを携帯電話端末5や圧電式骨伝導マイクロフォン3に組み合わせてなる構成としたので、簡単な構成であるにもかかわらず、騒音レベルが高い環境下でも送受信が可能であり、工事現場等において効果を発揮し得る通信システムを得ることができるのである。
【0034】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、圧電式骨伝導レシーバ2やこれを用いた骨伝導通信システム1を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば上述した圧電式骨伝導レシーバ2は、装着者の頭部に接触させることで音声等を振動を介して聞くことができることから、音楽、ラジオ用のスピーカとして用いたりすることが可能で、ヘルメットやヘッドセット、あるいは枕などに装着することも可能であり、また水中スピーカとして用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】 本発明に係る圧電式骨伝導レシーバの一実施形態を示し、(a)は側断面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。
【図2】 本発明に係る圧電式骨伝導レシーバにおける圧電振動子を取り出して示すものであり、(a)は平面図、(b)その断面図である。
【図3】 本発明に係る圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムの一実施形態を示す概略図である。
【図4】 (a),(b)は本発明に係る圧電式骨伝導レシーバにおける圧電振動子の変形例を示す図である。
【図5】 本発明に係る圧電式骨伝導レシーバの変形例を説明するための概略断面図である。
【図6】 本発明に係る骨伝導通信システムに用いる圧電式骨伝導マイクロフォンの一実施形態を示し、(a)は概略断面図、(b)はその正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…骨伝導通信システム、2…圧電式骨伝導レシーバ、3…圧電式骨伝導マイクロフォン、4…インターフェース、5…携帯電話端末(通信端末)、6…ヘルメット、7…顎紐、10…密閉ケース、11…ケース本体、12…カバー、13…エッジ部、14…圧電振動子、15…ナット、16…変形錘、20…取付部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ケース内に配設した圧電振動子により音声等を振動として装着者の頭部の骨に直接伝えるための圧電式骨伝導レシーバであって、
前記密封ケースの接触面には、周方向に沿って薄肉なエッジ部が形成されるとともに、
この薄肉なエッジ部により取り囲まれた接触面の内側には、圧電振動子が中心を支持された状態で配設され、
この圧電振動子の相対向する周辺部分には、変形錘が搭載して設けられていることを特徴とする圧電式骨伝導レシーバ。
【請求項2】
請求項1記載の圧電式骨伝導レシーバにおいて、
前記圧電振動子は、異型形状で形成されていることを特徴とする圧電式骨伝導レシーバ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の圧電式骨伝導レシーバをヘルメットの内側に設け、
このヘルメットの顎紐にマイクロフォンを設けるとともに、
これらの圧電式骨伝導レシーバとマイクロフォンとが接続されたインターフェースに通信端末を接続することにより構成されていることを特徴とする圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システム。
【請求項4】
請求項3記載の圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システムにおいて、
マイクロフォンとして、圧電式骨伝導マイクロフォンを用いたことを特徴とする圧電式骨伝導レシーバを用いた骨伝導通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−178051(P2008−178051A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34103(P2007−34103)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(502310162)株式会社ヤマザキ (1)
【出願人】(506412206)
【Fターム(参考)】