説明

圧電性ナノチューブによって仲介される細胞電気刺激

ナノトランスデューサーを標的部位で局在化させる工程と、超音波によるナノトランスデューサーの外部刺激により同部位で電気刺激を誘発する工程とを含む、電気刺激によるin vivoでの細胞刺激処置に使用される圧電性ナノトランスデューサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性ナノ運搬体を使用することにより、in vitroおよびin vivoの両方で非侵襲性の電気細胞刺激を誘発する方法に関する。特に、これは、特定の非侵襲性外部刺激(超音波)を電気入力に変換して細胞を刺激することが可能な窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)である。
【背景技術】
【0002】
電気療法
電気細胞刺激により、脳深部刺激(deep brain stimulation)、胃不全麻痺後の胃の刺激、心臓刺激、筋刺激などの生物医学分野での数多くの用途が見出されている。特に、神経障害において、電気脳刺激は、しばしば唯一の治療形態である。適当な電気刺激により、特定物質の増殖、代謝、または産生に関して培養細胞中でポシティブな応答が誘発されることが長い間実証されている。Supronowiczおよび共同作業者は、カーボンナノチューブ存在下での電気刺激により、電流インパルスによって刺激されたin vitroでの骨芽細胞の細胞外物質の増殖および産生が改善されることを実証している(Supronowicz et al. (2002) Journal of Biomedical Materials Research, 59, p. 499-506)。Chachques et al. (2004) International Journal of Cardiology, 95, p. 68-69は、心筋幹細胞をin vitroで電気刺激することによって、管状筋細胞での増殖、発達、組織化、および分化がどのように増加するかを示している。
【0003】
脳深部刺激は、パーキンソン病、慢性の震え、ジストニー、および他の多動障害などの影響の大きい病状に対して効果が証明された処置である。国際的に承認されている機能的電気刺激の臨床用途はすべて、神経構造の直接的な興奮および筋機能の場合には筋の間接的な活性化に基づいている。
【0004】
さらに、ラットの研究において、電気刺激は、様々な程度の変性後でさえ、筋膜の電気特性および電気化学特性の再構築が1回だけでなく繰り返し可能であることが実証されている。
【0005】
別のラット研究(Carraro et al. (2002) Basic and Applied Myology, 12, p. 53-63)は、未処置の除神経筋(denervated muscle)において、低いけれども長く続く再生能(再生された筋形成)を細胞レベルで実証し、さらに、筋病変の繰り返し後におけるこの活性の顕著な増加を実証している。同様に、下肢の末梢性除神経を有する対麻痺患者では筋原性刺激が並行して観察された。
【0006】
しかしながら、電気刺激を行うための現在の方法は、侵襲性が高い。脳刺激を行う方法では、脳内電極を挿入し、移植できるインパルス発生器を適用して、電極自体に接続することが企図される。このin vivoでの刺激は、非常に多くの禁忌を伴う。それらの中には、随伴する精神病理学とともに、制御不能な凝固因子異常および術後痴呆症を発症する潜在的リスクに言及する必要がある。さらに、脳室拡大の発症のリスク、硬膜下、クモ膜下、心室内、または脳内血腫の発症のリスクも無視できない。最後だからといって重要でないということではないが、出血のリスクは、深刻なものでさえ、各患者の3〜5%付近に達する一方、卒中、感染症、および脳障害の場合もある。これらの発作はすべて長期の障害となり、最悪のケースでは患者は死に至る。さらに、抗生物質処置に対応しない、装置によって引き起こされるしばしば起こる感染症では、明確に電極を除去する必要がある。
【0007】
すべてのこれらの複雑性のため、効果的で有望ではあるが、神経刺激が、如何に今日まで、病理学の進んだ段階の単なる処置に制限されている一方、すべての他の薬理学的治療が全く効果的でないことを理解することは容易である。
【0008】
筋組織での試験においても、機能的電気刺激は、除神経筋肉組織を維持し、機能的に回復し、再構築するための効果的で効力な手段であることが実証されている。しかしながら、当該技術は、神経刺激のケースで既に見出されている、侵襲性が高いという同じ問題を伴う。
【0009】
ヒト治療および診断において、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノフィブリルなどのナノ構造体の使用が知られている。
【0010】
欧州特許出願第EP−A−1593406号(M.Pizziら)には、焦電性または圧電性複合材料および薬物からなるマイクロキャパシタまたはナノキャパシタから構成される電気化学治療用装置が記載されている。当該装置は、血液循環に入れ、外部から稼動させて、薬物を放出することができる。当該マイクロキャパシタ/ナノキャパシタは、振動源または電磁放射線源によって稼動させることができる。上記文献では、細胞刺激に言及しておらず、ナノチューブまたは外部供給源としての超音波にも言及していない。
【0011】
欧州特許出願EP−A−1818046号(M.Pizziら)には、膜によって封入され、かつ、薬物を含む強誘電性材料、焦電性材料、または圧電性材料からなるナノキャパシタから構成されるマイクロ装置が記載されている。当該装置は、血流に投入することができ、外部から、適当な刺激を用いて、膜を穿孔し(エレクトロポレーション)、かつ、薬物を放出する電位差を発生させることができる。当該装置の目的及び構成は、本発明の目的から逸脱したものである。
【0012】
米国特許出願第US200902265号には、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron-Captur Therapy))による癌治療用の窒化ホウ素ナノチューブが記載されている。この文献には、抗腫瘍薬物の運搬体としてのカーボンナノチューブの使用も記載されている。本発明の実施形態では、薬物を含むカーボンナノチューブが高出力超音波によって破裂される。この文献は、細胞刺激を記載しておらず、窒化ホウ素ナノチューブの圧電性効果の適用についても記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、今日の電気療法技術によく見られる深刻な副作用を与えることなく電気細胞刺激の適用を可能とする、新規な機器および技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、圧電性ナノトランスデューサーが完全に非侵襲性の電気療法の治療において効果的に用いることができるとの驚くべき発見に基づくものであり、ナノトランスデューサーによって発生する電気刺激は、適当な出力の超音波により患者の身体外部の(ワイアレスタイプの)ストレスを介して引き起こされる。したがって、本発明は、圧電性ナノトランスデューサーが局在化している系の外部で発生される超音波場によって圧電性ナノトランスデューサーが刺激されるというだけではなく、標的細胞内部に局在化するナノトランスデューサーによって発生する電気刺激がin vitroまたはin vivoでの実(real)細胞系での効果的な電気刺激を引き起こすのに十分に高いものである、との実験による実証に基づいている。
【0015】
したがって、本発明の第1の目的は、ナノトランスデューサーを標的部位で局在化させる工程と、超音波によるナノトランスデューサーの外部刺激によって同部位において電気刺激を誘発する工程とを含む、電気刺激による細胞刺激のin vivo処置に使用するための圧電性ナノトランスデューサーである。
【0016】
本発明の実施形態において、圧電性ナノトランスデューサーは、薬学的に許容可能なポリマーでコーティングすることによって生体適合性となり、および/または標的部位に対して親和性を有する特定のリガンドで官能化されおよび/またはその追尾を可能とするマーカー分子で官能化される。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、圧電性ナノトランスデューサーは、ナノチューブ、例えば、窒化ホウ素ナノチューブである。
【0018】
本発明のナノトランスデューサーは、組織細胞での内在化およびその後にそれらを電気刺激することによる種々の組織の再生または再構成処置において利用される。
【0019】
本発明の第2の目的は、電気療法処置で使用するための超音波リモートフィールド(ultrasonic remote field)により刺激することが可能な圧電性ナノチューブおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬使用のための製剤およびこれを調製する方法;特に、非凝集形態の前記ナノチューブおよび分散剤としての生体適合性ポリマーを含む懸濁液/溶液の液体形態である製剤である。
【0020】
本発明の第3の目的は、in vitroでの電気細胞刺激(電気刺激による細胞刺激)の方法であって、
圧電性ナノトランスデューサーを培地または細胞成長支持体に分散する工程と、
前記培地または成長支持体中で細胞をインキュベートする工程と、
外部超音波場によるナノトランスデューサーの刺激により電気刺激を誘発する工程と
を含む、方法である。この目的の実施形態において、成長支持体は、組織工学用の高分子足場またはインプラントまたは接着基体である。
【0021】
本発明のさらなる目的は、超音波(US)による外部刺激の結果として電気刺激を発生することが可能な上述の圧電性ナノトランスデューサーを含む、in vitroまたはin vivoでの細胞成長用支持体(足場)もしくは細胞接着基体または組織工学における使用のための支持体(足場)である。
【0022】
本発明によって提起される解決策は、電気細胞刺激の利益を最大にするが現在の臨床技術により引き起こされる悪影響の問題および副作用をなくすか劇的に減少させる効果的な電気刺激を誘発する利点を提供する。提起する方法は、in vivoでの組織の電気刺激のための現在の方法における非侵襲性を完全に低減し、in vitroにおける電気刺激のいずれの形態を非常に簡単なものとする。in vitroでの細胞刺激に関し、提起する解決策では、刺激用の電気回路、電気接続、または培地に接続する他の装置が必要なく、これにより、当該系において細胞成長条件を改善することが容易となる。ナノトランスデューサーは、培地(CM)中に分散され、あるいは、細胞成長のための支持構造体(高分子足場、接着など)に包埋され、次いで、超音波場で刺激することができる。さらに、in vitroおよびin vivo用途いずれにおいても、様々な必要性によりよく対応するために、使用する電力を個々の場合で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を例示する細胞モデル図を報告するものである。外部超音波刺激の結果として、BNNTを内在化するすべての細胞に内部電気刺激を与える。
【図2】初代ヒト骨芽細胞(HOB)を0(コントロール)、5、10、15μg/mlのBNNT(n=6)とともに24時間、48時間、72時間インキュベートした後のMTTアッセイの結果を図示するものである。各群の間には、統計的有意差は観察されなかった。
【図3】細胞内在化試験の結果を報告するものである。蛍光マーカー(量子ドット)で標識した。BNNT含有CMとともにHOBを6時間インキュベートした後、蛍光顕微鏡法により、BNNTが細胞内部で検出された。
【図4】HOBもしくはコントロールの細胞質断片またはBNNTで処置したHOBの細胞質断片のTEM顕微鏡写真を示すものである。この結果では、BNNTの内在化が確認され、細胞質小胞中にBNNTに匹敵するナノ粒子の存在が示される。BNNTの内在化は、エンドサイトーシスによって起こる。
【図5】RT−PCR分析結果を報告し、単一の刺激(BNNTまたはUSのいずれか)および組み合わせた刺激(BNNT+US)の両方で処置したHOBの遺伝子発現を示すものである。Runx2の発現はBNNTによってダウンレギュレーションとなるが、OPN発現レベルはUSによって高くなることが見出された。コラーゲンIの発現は変化がなかったが、APおよびOCNの発現はBNNTおよびUSの両方の処置によって相乗的に影響を受けた。
【図6】細胞あたりのOCN産生レベルを報告するものである。BNNTおよびBNNT+USで処置した試料は、USで処置した試料およびコントロールよりも高いOCN産生を示した。
【図7】vonKossaによる比色細胞化学分析の結果を報告するものである。分析は、未処置(黒)、超音波(HOB+US)での刺激、ナノチューブ(HOB+BNNT)での刺激、あるいはナノチューブでの刺激、かつ、超音波(HOB+BNNT+US)での刺激を行った、初代ヒト骨芽細胞(HOB)の試料上のカルシウム塩の産生に関する。最大の石灰沈着(より黒色の染色)は、BNNTで処置し、かつ、USで刺激したHOBで達成された。
【図8】葉酸で(a)官能化されたまたは(b)官能化されていない、10μg/mlの蛍光BNNT(量子ドットと結合されている)とともに90分間インキュベートしたヒト膠芽細胞腫多形細胞の蛍光画像を報告するものである。
【図9】実施例14で記載するように5日間の処置後のカルセイン標識したPC12細胞の画像である。図9a:GC−BNNTとともにインキュベートせず、かつ、超音波で処置していない細胞;図9b:GC−BNNTとともにインキュベートし、かつ、超音波で処置していない細胞;図9c:GC−BNNTとともにインキュベートせず、かつ、超音波で処置した細胞;図9d:GC−BNNTとともにインキュベートし、かつ、超音波で処置した細胞。
【図10】実施例14で記載するように処置したPC12細胞を示すものである。図10a:分化傾向の分析;図10b:細胞あたりの神経突起の数;図10c:神経突起の長さ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ナノトランスデューサー
本発明に好適な圧電性ナノトランスデューサーは、圧電性材料からなるまたは圧電性材料を含む、100nm未満の少なくとも1次元、好ましくは2次元または3次元の、それ自体既知であるナノ構造体、例えば、粒子、チューブ、ロッド、球体、フィブリル、フィラメントである。有用な材料の具体例は、窒化ホウ素であり、他の有用な材料の具体例には、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム(一般に、すべてのペロブスカイト)およびポリフッ化ビリニデン(PVDF)が包含される。ナノチューブの群には、単壁、二重壁、または多重壁ナノチューブが包含され、それらは、2つの端および単に一端が開いてもよく、あるいは2つの端が閉じていてもよい。そのようなナノチューブの具体例は、窒化ホウ素ナノチューブである。
【0025】
窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)は、より有名なカーボンナノチューブ(CNT)(古典的な形態である巻き上げたグラファイトシートにおいて、原子間距離はほとんど変わらずに、交互するBおよびN原子をC原子に完全に置き換えたもの)と構造が類似している。BNNTは、Chen Y. et al (1999) Chemical Physics Letter, 299, p 260-264またはYu J. et al (2005) Chemistry of Materials, 17, p 5172-5176で記載されるように、ボールミルアトマイゼーション法を行い、続いて、アニーリングすることによって作製される。国際的な科学団体では、それらの関心の急激な高まりの声があがっており(Chopra et al. (1995) Science, 269, p. 966-967)、特有の関連する物理化学特性に起因して非常に注目され、それらはいくつかの構造及び電子用途の理想的な候補となっている(Terronesら (2007) Materials Today, 10, p. 30-38)。
【0026】
CNTと同様の高いヤング率に加えて(Chopra et al. (1998) Solid State Communications 105, p. 297-300)、BNNTは、優れた化学的及び熱的安定性を有する。半導体に典型的な電気挙動から優れた伝導体の電気挙動の範囲までの様々な電気挙動を示すCNTとは異なり、BNNTは、CNTと比較してより安定な電気特性を示し、5.5eVの均一なバンドギャップを有する。実際に、CNTの対掌性(したがってその電気特性)の制御に対する進展は緩やかである一方、BNNTは、B−N結合の極性のために、好ましくは「ジグザグ」と定義される構造を示す。これらの特性すべてにより、BNNTは、多くのナノ技術用途について特に興味深いものとなる。BNNTは、優れた圧電性を有する。圧電性は、ある結晶が適用する機械的圧力に応じて電位差を生成する能力である。BNNTの自発分極および圧電性特性の第一原理(ab initio)計算により、BNNTは、ほとんどの圧電性ポリマーよりも大きい応答値を有し、かつウルツ鉱をベースとする半導体によって示される応答値に匹敵する応答値を有し、優れた圧電性系として機能することが実証されている。さらに、BNNTの曲げ力が、高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)内で直接測定され、これらの構造の並外れた可撓性が確認されている(Golberg et al. (2007) Advanced Materials, 19, p. 2413-2432)。これらの観察は、効果的かつ革新的なナノ運搬体としてのBNNTの顕著な可能性を裏付けるものである。
【0027】
生体適合性ナノトランスデューサー
生物医学用途で最初に求められるものは、免疫反応を起こさずに投与することができ、かつ、対象とする細胞に容易に内在できるナノトランスデューサーの、生理溶液中で安定であって生体適合性である懸濁液の生成である。非常に有望なアプローチは、ナノ構造をコーティングし、かつ、該ナノ構造が生体適合性となり、水性媒体に容易に分散可能となるかまたは準溶液となる、ポリマーの使用である。この目的に好適なポリマーは、例えば、ポリサッカライド、例えば、キトサン、グリコールキトサン、ポリ−L−リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアスパラギン酸などのポリマー、またはそれらのコポリマーである。ポリマーは、陽イオンポリマー、例えば、ポリリジンおよびポリエチレンイミンであることが好ましい。ポリエチレンイミンなどの正電荷ポリマーを用いたナノチューブの高分子かつ共有または非共有コーティング方法が、Ciofaniら (2008) J. Nanosci. Nanotechnol, 8, p. 6223-6231または Ciofaniら (2008) Biotechnology and Bioengineering, 101, p. 850-858に記載されている。ポリリジンでのコーティング方法は、本明細書の実施例において後述する。
【0028】
ナノトランスデューサーを生体適合性にすることに加えて、上記のポリマーの使用により、均一で、凝集体がなく、したがって標的細胞中において容易に内在可能な分散体を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明のナノトランスデューサーは、種々のタイプの分子で官能化してもよく、第一には、標的細胞内部までその追尾(tracking)を確実にする検出可能なマーカー分子で官能化してもよい。
【0030】
細胞アッセイに好適な任意のタイプの既知マーカー、例えば、蛍光基質、発色団、または放射性同位をこの目的のために用いることができる。次いで、ナノトランスデューサーは、治療または診断用に対象の細胞に対して標的とする特定のリガンドで官能化してもよい。これらのリガンドは、IgGなどの特定の抗体またはそれらの断片、葉酸または他の既知のバイオパートナー(biopartner)などの特定の膜受容体に特異的なリガンドである。上記の基質に対する受容体を過剰発現する膠芽細胞腫細胞(図8)によって葉酸で官能化したBNNTが如何に好ましくは内在化されることが最近示されている(Ciofani et aL (2009) Nanoscale Res Lett, 4, p. 113-121)。
【0031】
特定の分子による官能化はin vivoで特に有用であり、標的細胞による運搬体の認識を可能とする。特定の細胞の効果を標的化することは、in vivoで、例えば、神経または筋刺激の適用などにおいて非常に重要である。例えば、血流中に注入された官能化BNNTの分散液を電気刺激が必要な部位に局在化させ、次いで、後者は、外部の超音波場を適用することにより行われる。
【0032】
ナノトランスデューサーの局在化/投与
本発明の圧電性ナノ運搬体は、標的部位で局在化される。このことは、標的部位への直接投与、例えば、処置組織でのin situ注射などの結果として、当該部位の細胞でのナノトランスデューサーの内在化によって起こる。代替の侵襲性がより低い投与経路は、親和性に起因してナノ構造を運び、標的部位に蓄積することで、対象の細胞により内在化が可能となる特定のリガンドで官能化されたナノ運搬体を血流に投与することである。
【0033】
さらなる投与の選択肢は、造影剤(臨床使用用製品であるSonoVueなど)として用いられるものなどの、脂質微小気泡中のBNNTのカプセル化から成る。このリン脂質微小気泡は、六フッ化硫黄SF(肺レベルで除去された、完全に無害でほとんど溶けない気体)を含み、懸濁液の注入によって血流に入り、赤血球(2〜5μm)に匹敵するサイズを有する。次いで、上記のリン脂質微小気泡は、毛細血管には到達するが血流からは出ない。上記の微小気泡は、BNNTを対象の部位に導入し、運び入れる。前者は超音波刺激で破裂され、後者の束縛をなくす。これに対して、BNNTは、微小循環を出て、エコグラフィック監視下で標的部位に到達する。上記の微小気泡は、さらに、標的とする化学治療用の可能性のある薬物担体として用いることができる。
【0034】
本発明に従って処置を行いやすい代表的な組織は、筋、神経、骨、軟骨、心筋組織、内耳有毛細胞、網膜の桿細胞および錐細胞、味細胞、触覚細胞および嗅細胞などのすべての感覚細胞を含む組織、すなわち、化学受容体、温度受容体、光受容体、機械受容体を有し、かつ、受けた刺激を付近のニューロンを活性化する膜分極の差異に変換するすべてのそれらの細胞を含む組織、あるいは、再生もしくは再構成処置、または急性、慢性、神経筋疼痛処置、または損傷した組織の治癒処置が必要である任意の他の組織または器官、例えば腱および靱帯である。
【0035】
圧電性ナノトランスデューサーの電気刺激によって成長が活性化され、刺激され、または促進される特定の細胞の種類には、一般に、筋細胞、筋芽細胞、神経細胞、心筋細胞、骨芽細胞、破骨細胞、心臓幹細胞、幹細胞、および上記の感覚細胞が含まれる。
【0036】
例として、神経系レベルでの刺激の場合、BNNT懸濁液をin situで注入するかあるいは適当な官能化に際して血流に注入し、次いで、外部刺激により出力(power)を発生することができ、高侵襲性の経皮的かつ貫通性のインプラントを必要としない。
【0037】
in vitroでの方法および細胞成長用支持体
本発明の代替の実施形態において、圧電性ナノ運搬体は、電気刺激による細胞の活性化、刺激、または成長促進および/または再生のためのin vitroでの方法で利用される。
【0038】
in vitroでの刺激および組織工学用途に関し、本発明は、細胞刺激、ならびに代謝、増殖、細胞外マトリックスの産生および代謝産物の産生に関する培養組織の状態を改善する可能性を促進する。実際に、いくつかの細胞類型学において、電気刺激は、その成長に対して正の効果を有することが長い間証明されてきた。本発明によって示される解決策により、刺激用の電気回路、電気接続、または培地に接続された他の装置を必要とすることなく、これらの結果を達成することが可能である。さらに、提案するナノトランスデューサーは、上記のように培地中で投与することができ、高分子足場または接着基体などの細胞成長用の支持構造体中に包埋し、次いで、後述のような超音波場によって刺激することができる。
【0039】
液体培地を培養する場合、圧電性ナノトランスデューサーは、好ましくは生体適合性となりおよび/または上記のような特定のリガンドまたはマーカー分子で官能化され、培養細胞に対して毒性効果を示す濃度ではない培地中に安定的かつ均一に分散される。5〜100μg/mlで含まれる濃度、例えば、5、10、15、25、50、75μg/mlの濃度では、72時間までのインキュベーション後において全く毒性効果を生じなかった。
【0040】
1〜10時間、例えば、細胞の種類に依存して、1、3、5、6時間インキュベートすることは、細胞でのナノトランスデューサーの内在化を得るのに十分であることが蛍光アッセイにより明確となっている。6時間インキュベートすることは、窒化ホウ素ナノチューブをヒト骨芽細胞中に内在化するのに有効であることが証明された。
【0041】
高分子支持体などの固体支持体またはゲルなどの半固体支持体上での培養の場合、圧電性ナノトランスデューサーは、支持体中にその調製中、均一な形で包埋される。特に、支持体の調製方法には、圧電性ナノトランスデューサーをポリマーまたはそのモノマーを含む溶液または分散液またはエマルジョンに分散する工程と、モノマーを重合する工程と、液体培地を取り除き、ナノトランスデューサーを含む固体または半固体マトリックスを得る工程とが企図される。細胞成長用の支持体は、それ自体既知である。それらの調製に利用するポリマーは、生体適合性かつ細胞親和性(cytocompatible)ポリマーである。特に、組織のin vitroでの産生およびその後のin vivoでの移植用に組織工学で利用されるポリマーは、さらに、次の性質:生体吸収性、(または生物分解性もしくは生侵食性(bioerodible))、免疫不活性、非毒性、非発癌性であることが必要である。
【0042】
成長支持体の調製に有用な既知のポリマーは、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコレート、それらのコポリマー、ポリピロリドン、セルロースに由来するポリマー、キトサン/キチン、ポリリジン、ポリエチレンイミンである。本発明の支持体の調製に好適なその他のポリマーは、国際公開公報第WO−A−2001/087193号に記載され、その内容は本出願に取り入れられる。請求項13〜15のいずれか1項に記載の支持体を調製する方法には、以下の工程、すなわち、圧電性ナノトランスデューサーをポリマーまたはそのモノマーを含む溶液または分散液またはエマルジョンに分散させる工程と、前記液体培地を取り除き、ナノトランスデューサーを含む固体または半固体マトリックスを得る工程とが含まれる。
【0043】
標的細胞での内在化
in vivoおよびin vitroで実施する際のいずれも、細胞刺激処置の効果は、対象の細胞における圧電性ナノトランスデューサーの内在化のレベルに依存する。蛍光試験により、インキュベーション時間を1〜10時間とすることは、本発明のナノトランスデューサーの効果的な内在化を達成するのに十分であることが実証された。例えば葉酸で官能化された10μg/mlの蛍光BNNTとともに90分間インキュベートしたヒト膠芽細胞腫多形細胞は、高い内在化レベルであることが実証された(図8)。また、初代ヒト骨芽細胞の培養物も、6時間インキュベートした後、ポリ−L−リジンで処理され蛍光マーカーで標識した窒化ホウ素ナノチューブを効果的に内在化した(図3)。
【0044】
神経PC12細胞の培養物も、12時間インキュベートした後に、グリコール−キトサンで処理した窒化ホウ素ナノチューブを効果的に内在化した。
【0045】
超音波は、非侵襲性が低く、ほとんど副作用がないので、いくつかの医用分野で広く利用されている。既知の主要な用途の中では、診断(超音波検査)、外傷後疼痛治療、リハビリテーションでの適用、美容医学(aestheticmedicine)などがある。
【0046】
本発明によれば、標的部位においてin vivoで局在化し、対象細胞によって内在化したら、あるいは、培地に分散するかまたは接着基体または細胞成長用の高分子支持体(足場)に包埋した場合に、圧電性ナノトランスデューサーを、機械的音波である超音波場によって刺激する。これらは、in vitro細胞系の外部のまたは処置を受ける患者身体の外部の発電機によって作り出される。in vivo処置において、場は、通常、標的部位の近くに位置する。
【0047】
本発明に好適な超音波を生成するためには、信号周波数および電圧、したがって信号強度を調整することができる任意の市販の装置を用いることができる。例えば、エコグラフィック刺激頭部ならびに調整可能な電源および周波数を有する標準の機器を用いることができる。
【0048】
単なる例として、ここで、ナノ運搬体(ナノチューブ)の圧電性挙動モデルを記載する。本発明書で既に述べた圧電性は、材料の電気的挙動とフックの法則との組み合わせであり、そのような組み合わせは次式によって纏めることができる。
【数1】

ここで、Dは材料の全分極であり、Eは電場であり、εは真空誘電率であり、εは比誘電率であり、Pは、
【数2】

によって示される圧電現象に起因する分極であり、ここで、dは圧電定数の3×6マトリックスであり、σは応力テンソルであり、6成分に簡潔化する。材料内部における電荷の非存在下で、マックスウェルの式から、
【数3】

が得られ、したがって、以下の系が得られる:
【数4】

【0049】
簡潔化の目的のため、長さlのナノチューブに、超音波の効果により垂直軸zに沿って応力σzzを与えると仮定する。
【0050】
Pの唯一の非空(non-nil)成分は、
【数5】

となり、ここから、
【数6】

が演繹され、z軸に沿ってEを積分すると、
【数7】

が得られ、これは、機械的応力σzzの適用によって発生するナノチューブ端での電位差を示している。言うまでもなく、この応力の制御パラメータ(本発明者らの場合、超音波場、インパルスの周波数、数、期間、および強度)は用途に依存して変化する。すべての細胞系に対して有効な結果を得るための最適な条件は、当業者が経験的に容易に得ることができる。
【0051】
20kHz〜20MHzの範囲の任意の周波数を本発明の方法で有用に用いることができる一方、超音波信号強度は、照射を受けた細胞および組織の損傷の臨界閾値未満である必要がある。この臨界閾値は、本方法がin vitroまたはin vivoで適用される場合に様々であり、適用時間に強く依存する。本発明の方法において、信号適用時間は5〜30秒であり、1日あたり及び1週間あたり2回もしくは3回以上繰り返す。
【0052】
上記の適用時間に対して、信号強度は、50mW/cm〜25W/cmの範囲で変化してもよい。in vivoでの処置では、最大強度の場合、30秒以下の適用時間で100mW/cm〜10W/cmの強度を用いることが好ましい。in vitroでの処置ではより高い強度が許容され、常に5〜30秒の適用時間で、10W/cm〜25W/cmの範囲で変化し、上記のように繰り返す。5〜30秒の適用時間で20W/cmの強度を用いる場合、100〜600J/cmに等しいエネルギーを発生する。
【0053】
US波誘発細胞電気療法の効果は、細胞の発達、分化、成熟または生存能(vitality)の指標として一般に認識されている種々の細胞パラメータを分析することによって容易に評価することができる。
【0054】
有効な試験は、当業者に周知の技術:PCRもしくはRT−PCRまたは任意の他の既知アッセイによる典型的な遺伝子の細胞発現レベルの評価である。
【0055】
もう一つの試験は、例えば、そのレベルが活性化または細胞の生存能自体の程度に関連し得る、細胞によて発現されるタンパク質または代謝産物もしくは任意の他の細胞によって生成される有機または無機物質の酵素アッセイ、酵素抗体法、免疫放射定量測定法、または比色アッセイによる決定である。
【0056】
細胞膜電位の研究(パッチクランプ、ボルテージクランプ、カレントクランプなどの計画下で)に通常用いられる電気生理学的試験は、ナノチューブが仲介する刺激が、特に神経ネットワークにおいて電位自体および電気信号伝播の際に誘発する干渉を検証するのに特に有用である。
【0057】
用途
細胞の非侵襲性電気刺激は、脳深部刺激、胃不全麻痺後の胃の刺激、心臓刺激、筋刺激など、臨床および前臨床の両方における生物医学分野での数多くの用途が見出される。臨床用途に関して、脳深部刺激は、パーキンソン病、慢性の震え、ジストニーおよび他の多動障害などの影響の大きい病状に対して効果が証明されている治療である。
【0058】
さらに、細胞刺激は、再生薬および/または組織工学用途での広範な使用が見出される。この技術は、種々の原因の筋除神経(muscle denervations)を有する患者を回復させるための新規な方法としての使用について高い可能性を有している。組織工学および再生薬用途に関しては、BNNTを細胞成長に好適な高分子基体または足場に取り入れる可能性を考慮すべきである。
【0059】
さらに、この非侵襲性方法により、細胞外マトリックスの代謝、増殖、および産生のための培養組織の状態を改善することが可能となる。
【0060】
放棄(Disclaimer)
本出願で具体的に特定される任意の構成要素は、例示であって限定するものではないと理解するものであり、したがって、本発明の要旨を変更することなしに、付与される保護範囲から除かれ得るものである。
【0061】
本発明を後述の実施例によって例示する。
【実施例】
【0062】
実施例1:ヒト骨芽細胞(HOB)の単離および展開
インフォームドコンセントを得た後、大腿骨関節置換術施術を行った患者の大腿骨骨頭から取り除いた柱骨(trabecularbone)試料を用いた。試料を無菌条件下でより細かい断片に分断した。その後、骨断片を抗生物質および抗真菌剤を補充した無菌の生理食塩水中に入れ、数回洗浄し、脂肪、骨髄、組織の残渣および血液細胞を取り除いた。確立した方法(Di Silvio et al. Human cell culture. London (UK): Kluwer Academic Publishers; 2001. p. 221-241)に従い、単離を行った。ネイティブの組織からの細胞移動が1〜2週間以内に観察され、外植片の付近に骨様の層が形成された。細胞を、DMEM低グルコース(Sigma−Aldrich、ミラノ、イタリア)、10%FCS(Invitrogen)、10%L−グルタミン(Sigma−Aldrich)、HEPES(Sigma−Aldrich)、非必須アミノ酸(Sigma−Aldrich)、アスコルビン酸(Sigma−Aldrich)、抗生物質および抗真菌剤(ミネラル補充はない)を含む培地(CM)中で培養した。コンフルエンスに達したとき、細胞は1:3で及第した。P1細胞を用いて、細胞化学および免疫組織化学による特徴づけを行った。P2ヒト骨芽細胞(HOB)をBNNTでの研究に用いた。
【0063】
実施例2:BNNTの調製および結合
オーストラリア国際大学(キャンベラ、オーストラリア)から供給されたBNNTを、ボールミリングおよびアニーリング法(Chen Y et al. (1999) Chemical Physics Letter 299, p. 260-264; Yu J et al. (2005) Chemistry of Materials 17, p. 5172-5176)を用いて作製した。試料の純度および組成(供給元から提供されたもの)に関する詳細は、収率>80%、窒化ホウ素>97wt%、ミリングプロセス由来の金属触媒(FeおよびCr)約1.5wt%、吸着O約1.5wt%であった。
【0064】
BNNTの懸濁水溶液および分散水溶液に用いるポリマーは、Fluka(81339)から入手したポリ−L−リジン(PLL)(分子量70、000〜150、000)とした。すべての実験は、上述のリン酸緩衝液(PBS)中で行った(Ciofani G. et al. (2008) Biotechnol. Bioeng. 101 , p. 850-858)。簡単に言うと、0.1%PLL溶液中のBNNT粉末試料をBranson超音波発生装置2510(Bransonic)で12時間超音波処置した。すべての実験において、超音波発生装置の出力を20Wに設定した。次に、試料を1,100×gで10分間遠心分離し、非分散の残渣および不純物を取り除いた。
【0065】
過剰なPLLを、3サイクル、30、000×g、30分間、4℃(Allegra 64R、Beckman)での超遠心分離によって取り除いた。PLLでナノチューブを非共有コーティングした結果として、PLL−BNNT分散液を得た。分光学的分析をLIBRAS12分光光度計UVA/Vis/NIR(Biochrom)で行い、分散液を特徴付けし、BNNT濃度を定量化した(Ciofani et al. (2008) J. Nanosci. Nanotechnol. 8, p. 6223-6231)。
【0066】
PLL−BNNTを、局在化/細胞の追尾研究のためにカルボキシル基で官能化した量子ドットと共有結合した。カルボキシル量子ドットは、Invitrogen(Qdot(商標) 605ITK(登録商標))から供給された。
【0067】
PLLのアミノ基と量子ドットのカルボキシル基との間の結合反応を供給元の指示通りに行った。簡単に言うと、PLL−BNNT(50μg/ml)4mlを、量子ドット(8μM)4μlおよびアクチベーターとしての1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド(10mg/ml、EDC、03450、Flukaから入手)60μlと混合した。
【0068】
最適な結合のために、溶液を室温で90分間穏やかに撹拌し、最後に遠心分離して(1、000×g、10分間)大きな凝集体を取り除いた。最後に、超遠心分離(2サイクル、30,000×g、30分間、4℃)を行い、未結合の量子ドットを取り除き、これにより、標識したBNNT(QD−PLL−BNNT)の分散液を得た。
【0069】
実施例3:MTTアッセイ
細胞生存能を評価するために、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド、M−2128、Sigma)細胞成長アッセイを、5、10、および15μg/mlのBNNT最終濃度を含むPLL−BNNT修飾培地とともに24時間、48時間、および72時間インキュベートした後に行った。トリプシン化処理し、Burkerチャンバーで細胞計数を行った後、HOBを96ウェルプレートで平板培養した。接着が確認されたら(播種から約6時間後)、細胞をMTT0.5mg/mlとともに2時間インキュベートした。次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)100μlを各ウェルに添加し、550nmでの吸収度をVERSAMaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。参考試験(BNNT非存在下で培養した細胞)をコントロールとして行った。
【0070】
実施例4:蛍光BNNTの細胞内追尾
QD−PLL−BNNTを培地に1:10比で添加し、5.0μg/mlのPLL−BNNT最終濃度とした。6時間インキュベートした後に蛍光顕微鏡法を用いて、細胞内在化の研究を行った(24ウェルプレート中の60,000個の細胞)。リソソーム追尾アッセイを、Lyso Tracker色素(Invitrogen)とともにインキュベートしたHOBについて行った。これは、生細胞中の酸性の細胞小器官を標識するための蛍光酸親和性色素(fluorescent acidotropic dye)である。蛍光色素は、低pHによって特徴付けされる細胞区画に蓄積した。これらの研究では、細胞を、QD−PLL−BNNTに6時間暴露した後に1:2,500の希釈でLyso trackerを含む培地中で2時間インキュベートした。
【0071】
実施例5:透過型電子顕微鏡法(TEM)による分析
TEM分析のために、10μg/ml(HOB+BNNT)の濃度でBNNTを含むCMで一晩処置したHOB(コントロール)およびHOBを用いた。細胞をCMから取り除いた後に遠心分離し、PBS(0.1M、pH7.2)中の0.5%w/vグルタルアルデヒド−4%w/vホルムアルデヒド溶液に4℃で2時間固定した。洗浄後、試料を1%w/vのOsO PBS(0.1M、pH7.2)中で1時間、後固定し(post-fixed)、洗浄し、酸性化アセトン−ジメチルアセタール(Fluka、ブークス、スイス)で乾燥した(dehydrated)。最後に、試料をBEEMカプセル#00(StructureProbe、ウエストチェスター、米国)中のEpon/Durcupan樹脂に56℃で48時間包埋した。ダイヤモンド・ナイフ(Diatome、ビール / ビエンヌ、スイス)を備えたUltrotome Novaウルトラミクロトーム(LKB、ブロンマ、スウェーデン)を用いて、超薄断片(厚さ20〜30nm)を得た。これらの断片を200正方形メッシュニッケルグリッド上に置き、飽和酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛水溶液で対比染色し、次いで、Jeol JEM−I00SX透過型電子顕微鏡で観察した。
【0072】
実施例6:電気刺激するためのBNNTトランスデューサの超音波(US)適用
この研究は、表1(下記)で報告する通りに計画した。BNNTの内在化するHOBまたはBNNTを内在化しないHOBに超音波を暴露し、非暴露のコントロールと比較した。
【表1】

【0073】
20W、5秒、1日あたり3回を1週間行うスキームでUS刺激を行った。
【0074】
刺激終了の際、試料をすべての群について3つずつ(300,000個の細胞/フラスコ)用いて、DNAおよび骨特異的生体分子(アルカリホスファテーシス(alkaline phosphatasis)およびオステオカルシン)の定量アッセイを行った一方、各群あたり1つの試料を用いて、RT−PCRによる遺伝子発現(Runx2、AP、オステオポンチン、コラーゲンI、オステオカルシン遺伝子)を調べた。さらに、他のHOB試料を、細胞化学研究(カルシウム沈着に対するVonKossa染色)のためにスライド(20,000個の細胞/スライド)上で培養した。
【0075】
実施例7:全RNAおよび逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
全RNAを、HighPureRNA単離キット(Roche、マンハイム、ドイツ)を用いて、製造元の指示に従って細胞培養物(1試料/群)から単離した。抽出したRNAをジエチルピロカーボネート(DEPC−水)で処理した水に再懸濁し、260nmの吸収度を評価することによってRNA濃度を測定した。同一量のRNAを、Transcriptor First Strand cDNA合成キット(Roche)を用いてcDNAに逆転写した
【0076】
続いて、cDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。Runx2/cbfa−1、アルカリホスファテーシス(AP)、オステオポンチン(OPN)、コラーゲンI型及びII型(CoII−I)、オステオカルシン(OCN)、およびハウスキーピング遺伝子GAPDHの増幅に利用したPCR条件およびプライマーを表2に報告する。PCR産物を2.5%アガロースゲル上に充填し、エチジウムブロミドで染色した。
【表2】

【0077】
実施例8:定量分析用の細胞試料の調製
以下のアッセイ(DNAおよびOCN含量)について、細胞試料をT25フラスコ中で1週間培養した(n=3)。両アッセイを同じ試料で連続して行った。さらに、操作誤差を最小限にするために、個々の試料について3回ずつ実施した。簡単にいうと、培地を細胞試料から注意深く取り除き、ddHOを添加した。次いで、試料を−20℃で冷凍し、その後のアッセイ用に保存した。細胞溶解物を得るために、試料を2回の冷凍/解凍サイクルにかけた:一晩−20℃で冷凍し、水浴中で37℃で10分間解凍し、続いて15秒撹拌し、DNAおよびタンパク質を溶液中に入れた。
【0078】
9.予備アッセイ
図1は、本発明を再生するための図式モデルを示している。
【0079】
9.1.最初に、HOBをBNNT含有培地に曝した。PLLを分散剤として用いて、培地中のBNNTの安定な分散液を得た。PLLは、正のアミノ末端基を有する細胞親和性ポリマーである。異なる濃度のPLL−BNNT(5、10、および15μg/ml)とともに24、48、72時間インキュベーションを行った後、HOB生存能はコントロールと区別されなかった(図2)。HOBは、使用濃度でのPLL−BNNTともにインキュベートした後、代謝活性の統計的に有意な減少を示さなかった(すべの場合で、コントロールに関してp>0.05)。10μg/ml用量を用いて、続いて実験を行った。
【0080】
9.2.蛍光BNNTでの蛍光アッセイにより、ヒト骨芽細胞におけるBNNT内在化が、BNNT含有培地とともに細胞を6時間インキュベートした後に起こることが明確に示された(図3)。
【0081】
9.3.HOBによるBNNT内在化は、TEMによっても確認された。TEM分析により、上記のBNNTに匹敵する形状およびサイズを有する無機ナノ粒子が、処置した細胞試料のみの細胞質小胞中で検出し得ることが明確に示された(図4)。内在化は、エンドサイトーシスによって起こる。
【0082】
10.HOB培地物でのナノトランスデューサーおよびUSの効果
10.1DNA含量
細胞溶解物中の二重鎖DNA(ds−DNA)含量を、PicoGreenキット(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)を用いて測定した。PicoGreen色素はds−DNAに結合し、得られる蛍光強度は溶液中のds−DNA濃度と正比例する。0〜6μg/mLの範囲の濃度でのddHO中のDNA標準溶液を調製し、測定する50μlの標準物または試料を96ウェルプレート中に充填して定量した。作業用緩衝液およびPicoGreen色素溶液を製造元の指示に従って調製し、100μl/ウェルおよび150μl/ウェルをそれぞれ添加した。暗所において室温でインキュベートした後、プレートリーダー(Victor、PerkinElmer Inc.社、MA、米国)で励起波長485nmおよび発光波長535nmを用いて蛍光強度を測定した。細胞数を次の関係を考慮することによって計数した:1ヒト2倍体細胞=7.18pg DNA.
【0083】
10.2.オステオカルシン(OCN)産生
オステオカルシン(γ−カルボキシグルタミン酸)は、骨芽細胞によって合成される特異性の高い骨タンパク質であり、これらの細胞に特異的な代謝活性マーカーとみなすことができる。酵素抗体ELISA N−MID オステオカルシンキット(Cobas、Roche、インディアナポリス、インディアナ州、米国)を用い、製造元の指示に従って、同じ溶解物を用いてOCNを測定し、ALP活性およびDNA含量を評価した。
【0084】
10.3.カルシウムマトリックスの細胞化学分析
ヒドロキシアパタイトマトリックスの沈着を実証するVonKossa染色を用いて、HOB成熟を調べた。スライド上で成長させたHOBを1%ホルマリン(Bio−Optica)を用いて4℃で10分間固定し、1%硝酸銀(Fluka、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、米国、およびSigma)を用いて15分間染色した。0.5%のピロガロール(Fluka)とともに細胞をインキュベートし、次いで、それらを5%のチオ硫酸ナトリウム(Fulka)ともに5分間、5回攪拌することによって染色を行った。最後に、細胞を0.1%のヌクレアファーストレッド(nuclear fast red)色素(Fluka)で対比染色した。試料を乾燥し、DPX(Fluka)でマウントした。光学顕微鏡法を用いることにより、鉱物の沈着を黒色の顆粒として評価した。
【0085】
10.4.統計的分析方法
データ分析を分散分析(ANOVA)によって行い、続いて有意性を試験するためのスチューデントのt−試験を行い、これは5%MTTに設定した。MTT試験は2回ずつ行い、他のすべてのアッセイは3回ずつ行った。すべての場合において、3つの独立した実験を行った。結果は、平均値±標準誤差(SEM)として表わす。
【0086】
10.5.結果
のようにして、HOB細胞(HOB)をBNNT+USの組み合わせた刺激で1週間処置した。
【0087】
特に初期(Runx2、コラーゲンI、AP、OPN)および後期(OPN、OCN)分化のHOB成熟を示す遺伝子発現をRT−PCRによって調べた。OPNは、増殖段階の初期であり、かつ、石化(mineralization)の開始における後期であり得る、二峰性(bimodal)発現を有する。結果を図5に報告する。RT−PCRによる増幅により、単一の処置(BNNTまたはUS)または組み合わせた処置(BNNTおよびUS)の結果としてのHOB分化に対する電気刺激の効果が明確に示された。具体的に、Runx2は、BNNTによって低下することが見出された一方、OPN発現レベルはUSによって刺激された。コラーゲンIの発現は変わらなかったが、APおよびOCNの発現はBNNT+USの組み合わせた処置によって相乗的に影響された。特に、APは、USによってBNNTよりも低下し、組み合わせた処置(BNNT+US)によってその発現がさらに低減された。逆に、OCNの発現は個々の処置のいずれによっても刺激され、さらに、組み合わせた処置(BNNT+US)後に最大レベルに達する。
【0088】
さらに、遺伝子活性化に続く、骨芽細胞の後期に非常に特異的であるタンパク質であるOCNの合成を定量した(図6)。HOBでのOCN合成は、USによる単一の処置によってわずかに増加し、BNNTによる単一の処置で大幅に増加した。BNNT+USの組み合わせた処置の結果、細胞中のOCN産生は最大となり、相乗効果が明確に示された。
【0089】
最後に、スライド上へのvon Kossa染色による細胞化学分析により、組み合わせた処置を受けた試料におけるカルシウム沈着(黒色染色)の合成が最も高かったことが示された(図7)。カルシウムマトリックスの沈着は、成熟後期としての成熟骨芽細胞で起こった。
【0090】
結論
本発明者らの注目すべき結果により、組み合わせた処置は、単に個々の刺激の合計によるものではない特定の方法で細胞系に影響を及ぼすことが明確に示される。特に、BNNT+USで処置した試料では、初期遺伝子(Runx2、AP)のダウンレギュレーションおよび後期遺伝子(OPNおよびOCN)のアップレギュレーションが観察された。OCNは、成熟骨芽細胞の分化および石化の進行を示す骨形成の後期に特異性の高いマーカーである。このOCN産生を定量化し、27fg/細胞であることが見出されれた。最後に、細胞化学により、カルシウム沈着の誘発が示された。したがって、BNNTは、超音波刺激後にin vitroでの骨芽細胞の成熟を促進する細胞内のナノトランスデューサーとして働くと結論できる。
【0091】
実施例11:窒化ホウ素ナノチューブを含むグリコール−キトサンポリマー(GC−BNNT)の調製
BNNTを、the Nano and Ceramic Materials Research Center, Wuhan Institute of Technology(中国)から購入した。(供給元によって提供される)試料の純度および組成の詳細は、収率>80%、窒化ホウ素98.5重量%を含む。
【0092】
BNNTの分散および安定化のために用いるポリマーは、グリコールキトサン(G−キトサン81339、Sigmaから購入、コードG7753)とした。すべての実験をリン酸緩衝溶液(PBS)中で行った。簡単に言うと、BNNT(5mg)をポリスチレンチューブ中の10mlの0.1%G−キトサン溶液中に混合した。試料を、20Wの出力を用いて12時間超音波処置し(Bransonic超音波発生装置2510による)、これにより、BNTTナノチューブ壁がG−キトサンの非共有結合コーティングを有する、安定なG−キトサン−BNNT分散液が得られた。したがって、得られた分散液は、LIBRA S12分光光度計UV/Vis/NIR(Biochrom)を用いて分光学的分析によって特徴付けした。BNNT分散液の顕微写真を、FEI 200 FIB顕微鏡およびZeiss 902 TEMを用いて得た。
【0093】
実施例12: 窒化ホウ素ナノチューブを含むグリコール−キトサンポリマー(GC−BNNT)調製物で修飾された培地とともにインキュベートしたPC12細胞を用いたMTTアッセイ
生存能試験のため、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド、M−2128、Sigmaから入手)細胞成長アッセイを、PC12細胞(ATCCCRL−1721)について、0〜100μg/mlで含まれるBNNT最終濃度を含むGC−BNNT分散液で修飾された培地とともに24、48、72時間インキュベートした後に行った。トリプシン化処理およびBurkerチャンバーでの細胞計数後、HOBを6つの96ウェルプレートに播いた。接着を確認したら(播種後約6時間)、細胞をMTT0.5mg/mlとともに2時間インキュベートした。次いで、100μlのジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)を各ウェルに添加し、550nmでの吸収度をVERSAMaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。参照コントロール試験(k−;BNNT非存在下で培養した細胞)を行った。
【0094】
実施例13: PC12細胞での窒化ホウ素ナノチューブを含むグリコール−キトサンポリマー(GC−BNNT)調製物の内在化試験
GC−BNNT分散液の内在化の研究をPC12細胞系(ATCCCRL−1721)に対して行った。PC12細胞を、10%ウマ血清、5%ウシ胎仔血清、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを含むダルベッコ修飾培地で培養した。細胞を37℃で維持した(すなわち95%空気/5%CO)。
【0095】
ナノチューブ(GC−BNNT)の内在化をTEM(透過型電子顕微鏡法)によって分析した。PC12細胞を培養し、2×10細胞/T25プレートの濃度にした。接着後、細胞をGC−BNNTを含有するCMとともに12時間インキュベートし、5μg/mlの最終濃度とした。細胞をCMから取り除いた後に遠心分離し、4℃で2時間、PBS(0.1M、pH7.2)中の0.5%w/vグルタルアルデヒド−4%w/vホルムアルデヒド溶液で固定した。洗浄後、試料を1時間、1%w/vOsOPBS(0.1M、pH7.2)中で後固定し、洗浄し、酸性化アセトン−ジメチルアセタール(Fluka、Buchs、スイス)で乾燥した。最後に、試料をBEEM#00カプセル(Structure Probe、ウエストチェスター、米国)中のEpon/Durcupan樹脂に56℃で48時間包埋した。ダイヤモンド・ナイフ(Diatome、ビール / ビエンヌ、スイス)を備えたUltrotome Novaウルトラミクロトーム(LKB、ブロンマ、スウェーデン)を用いて、超薄断片(厚さ20〜30nm)を得た。これらの断片を200正方形メッシュニッケルグリッド上に置き、飽和酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛水溶液で対比染色し、次いで、Zeiss 902透過型電子顕微鏡で観察した。
【0096】
実施例14:PC12細胞刺激実験
PC12細胞を平板培養し、標準の培養条件で24時間保存した。次いで、標準のCMを、2%ウシ胎仔血清、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、および60ng/mlの濃度のNGF(SIGMAから購入)を含む分化培地に置き換えた。このように調製した細胞を並行して行った4つの実験で用いた:1)超音波(US)刺激を行わず、分化培地中で細胞培養する、2)US刺激を行って、分化培地で細胞培養する、3)GC−BNNT(5μg/ml)を含む培地の存在下で細胞培養する、4)US刺激を行って、GC−BNNT(5μg/ml)を含む培地の存在下で細胞を培養する。Bransonic 2510超音波発生装置を利用して、20W、40kHz、5秒、4回/日、5日間の刺激を用いた。
【0097】
4つの各実験について、50個超の細胞を2μMカルセインで標識し、分化、神経突起の長さ、細胞あたりの神経突起の数の評価についてデジタル画像によって分析した。
【0098】
実施例15:PC12細胞刺激実験から得られた結果
上記のように、PC12細胞をGC−BNNTおよび超音波(US)の組み合わせた刺激で5日間処置した。4つの各実験において、細胞分化における有意差は検出されず(図10a)、すべての細胞は95%分化に達し、統計的有意差はなかった(p>0.05)。図6cは、GC−BNNTとともにインキュベートし、かつ、超音波で刺激された細胞の群が、他の群よりも大きい平均の神経突起の長さを有することを示している。これらの結果は、ナノチューブを含むポリマーの存在下でインキュベートした細胞の超音波刺激が、神経細胞における神経突起の顕著な成長を決定することを明らかに示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記ナノトランスデューサーを標的部位に局在させる工程と、
超音波によるナノトランスデューサーの外部刺激によって同部位で電気刺激を誘発する工程と、
を含む、電気刺激によるin vivoでの細胞刺激処置に使用するための圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項2】
前記ナノトランスデューサーが、薬学的に許容可能なポリマーでコーティングすることによって生体適合性となる、請求項1に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項3】
前記ナノトランスデューサーが、前記標的部位に対して親和性を有する特定のリガンドおよび/またはその追尾を可能とするマーカー分子で官能化される、請求項1または2に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項4】
前記圧電性ナノトランスデューサーが、窒化ホウ素ナノチューブである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項5】
前記ナノトランスデューサーが、安定した懸濁液に非凝集形態で分散される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項6】
前記処置が、組織の再生または再構成処置または疼痛処置もしくは損傷した組織の治癒処置である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項7】
前記ナノトランスデューサーの局在化が、細胞の内在化により起こる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項8】
前記標的部位には、筋細胞、筋芽細胞、神経細胞、心筋細胞、骨芽細胞、破骨細胞、幹細胞、感覚細胞、例えば、内耳有毛細胞、網膜の桿細胞および錐細胞、味細胞、触覚細胞および嗅細胞が含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電性ナノトランスデューサー。
【請求項9】
電気療法の処置で使用するための超音波リモートフィールドによって刺激することが可能な圧電性ナノチューブおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬製剤。
【請求項10】
非凝集形態で分散された前記ナノチューブおよび分散剤としての生体適合性ポリマーを含む、液体形態の請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
無害な気体を含む脂質またはリン脂質微小気泡中にカプセル化した前記圧電性ナノチューブを含む、請求項9または10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記ナノチューブが、薬学的に許容可能なポリマーでコーティングすることによって生体適合性となり、および/または、標的部位に対して親和性を有する特定のリガンドおよび/またはその追尾を可能とするマーカー分子で官能化される、請求項9または11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記ナノチューブが、窒化ホウ素ナノチューブである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
超音波による外部刺激の結果として電気刺激を発生することが可能な圧電性ナノトランスデューサーを含む、in vitroまたはin vivoでの細胞成長または組織工学用の高分子またはセラミック支持体(足場)。
【請求項15】
前記ナノトランスデューサーが、薬学的に許容可能なポリマーでコーティングすることによって生体適合性となり、および/または、特定のリガンドおよび/またはその追尾を可能とするマーカー分子で官能化される、請求項14に記載の支持体。
【請求項16】
前記圧電性トランスデューサが、窒化ホウ素ナノチューブである、請求項14または15に記載の支持体。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の支持体を調製する方法であって、
前記圧電性ナノトランスデューサーを前記ポリマーまたはそのモノマーを含む溶液または分散液またはエマルジョンに分散させる工程と、
前記液体培地を取り除いて、前記ナノトランスデューサーを含む固体または半固体マトリックスを得る工程と
を含む、方法。
【請求項18】
in vitroでの電気刺激による細胞刺激の方法であって、
圧電性ナノトランスデューサーを培地または細胞成長支持体に分散させる工程と、
前記細胞を前記培地または成長支持体中でインキュベートする工程と、
前記培地または成長支持体の外部の超音波場によるナノトランスデューサーの刺激により電気刺激を誘発する工程と
を含む、方法。
【請求項19】
前記成長支持体が、組織工学用の高分子またはセラミック足場、インプラント、または接着基体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノトランスデューサーが、薬学的に許容可能なポリマーでコーティングすることによって生体適合性となり、および/または、標的部位に対して親和性を有する特定のリガンドおよび/またはその追尾を可能とするマーカー分子で官能化される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノトランスデューサーが、窒化ホウ素ナノチューブである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2012−523452(P2012−523452A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505280(P2012−505280)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051602
【国際公開番号】WO2010/119403
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248238)フォンダジオン イスティチュート イタリアーノ ディ テクノロジア (1)
【Fターム(参考)】