説明

圧電振動デバイスの周波数測定装置および周波数調整装置、ならびに圧電振動デバイスの周波数測定方法

【課題】目的周波数を限定することなく圧電振動デバイスの正確な周波数調整を行う。
【解決手段】周波数測定装置2の制御部8には、予め設定する目的周波数に基づいて分解能を自動的に可変させる可変制御部81と、この可変制御部81による設定条件に基づいて目的周波数と測定した周波数との周波数演算を行う演算制御部82と、が設けられている。可変制御部81では、ゲートタイムが、目的周波数に基づいて可変される。すなわち、測定した周波数が30MHz以上の場合そのゲートタイムが3msecに設定され、周波数が30MHz未満の場合そのゲートタイムが1msecに設定される。このゲートタイムの可変によって、測定した周波数が30MHz以上であっても、測定した周波数が30MHz未満であっても、分解能が1Hzに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの周波数測定装置および周波数調整装置、ならびに圧電振動デバイスの周波数測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスの周波数調整工程には、圧電振動板に金属などを蒸着させて周波数を低くする工程と、圧電振動板に予め形成された金属材料をエッチングして周波数を高くする工程とがある。
【0003】
この圧電振動デバイスの周波数調整には、圧電振動デバイスの周波数を連続的に測定して表示する周波数測定装置が用いられ、当該測定装置において測定した周波数に基づいて圧電振動デバイスの周波数を調整している(例えば、特許文献1ご参照。)。
【特許文献1】特開平11−61387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、圧電振動デバイスの高周波化が進んでいる。そこで、圧電振動デバイスの周波数を高周波に調整する場合、上記した特許文献1に記載の測定器などの従来の周波数測定装置を用いて調整する周波数を高周波の値に設定して周波数測定を行う。
【0005】
しかしながら、従来の周波数測定装置では、一定の周波数の分解能に測定条件が設定されている。例えば、低周波もしくは高周波の分解能に測定条件が設定される。
【0006】
目的とする周波数(目的周波数)が低周波であり、低周波の分解能に測定条件が設定された場合、高周波になるにつれて周波数の値の下数桁の表示が定まらない。例えば、周波数がデジタル表示されている場合、表示管全部が点灯し、実際の値とは異なる下数桁が8の状態になったままになり、周波数を正確に測定することができない。
【0007】
また、目的周波数が高周波であり、高周波の分解能に測定条件が設定された場合、分解能が下がる。しかしながら、低周波では高精度の分解能が必要とされており、低周波における周波数の調整の精度が劣化する。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、目的周波数を限定することなく高精度に圧電振動デバイスの正確な周波数測定を行う圧電振動デバイスの周波数測定装置および周波数調整装置、ならびに圧電振動デバイスの周波数測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの周数数測定装置は、圧電振動デバイスの周波数を調整するために周波数を測定する周波数測定装置において、予め設定する目的周波数に基づいて分解能を自動的に可変させる可変制御部が設けられたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記可変制御部が設けられているので、前記目的周波数に基づいて周波数の測定間隔を可変させることにより、分解能を可変させることが可能となる。そのため、周波数の最終桁(最小単位)を分解能(例えば1Hz)一定に保つことが可能となり、例えば、分解能が下がった場合であっても、当該周波数測定装置において自動的に分解能を一定に保って測定することが可能となる。その結果、予め設定する目的周波数を限定することなく圧電振動デバイスの周波数調整を行うことが可能となる。
前記構成において、前記可変制御部により、ゲートタイムが前記目的周波数に基づいて可変されてもよい。
【0011】
この場合、ゲートタイムが前記目的周波数に基づいて可変されるので、容易に分解能を一定に保つことが可能となる。
【0012】
前記構成において、特定の境界周波数が設定されるとともに、特定のゲートタイムが設定され、前記目的周波数が前記境界周波数以上である場合、前記可変制御部によりゲートタイムは前記特定のゲートタイムより長い時間に設定され、前記目的周波数が前記境界周波数未満である場合、前記可変制御部によりゲートタイムは前記特定のゲートタイムに時間設定されてもよい。例えば、前記特定の境界周波数が30MHz、前記特定のゲートタイムが1msecに設定された場合、前記目的周波数が30MHz以上の場合にゲートタイムを3msecに設定してもよく、前記目的周波数が30MHz未満の場合にゲートタイムを1msecに設定してもよい。
【0013】
汎用の周波数測定装置には、前記目的周波数によって表示する桁を自動的に変更させる機能を有するものがあるが、このような場合、出力された値を外部装置等で誤認する場合がある。しかしながら、本発明によれば、変更を行う周波数を前記境界周波数として設定して、この境界周波数と前記目的周波数とを比較することによりゲートタイムを可変させ、出力データの桁数を一定に保つことが可能となる。
【0014】
前記構成において、測定した圧電振動子の周波数に関連する内容を表示する表示部が設けられてもよい。
【0015】
この場合、前記表示部が設けられているので、ユーザによる周波数の測定が容易となる。また、前記可変制御部により周波数の最小単位の設定を同じにすることが可能となったので、分解能が下がる高周波であっても、低周波の周波数の測定と同様に測定することが可能となる。前記可変制御部が設けられていない周波数測定装置の場合、分解能が固定されているので、周波数に関連する内容を表示部に表示した場合であっても、その最終桁の値が変動しつづけ、値が定まることがない。これに対し、本発明では、前記可変制御部により低周波でも高周波でも周波数の最小単位の設定を同じにすることが可能となったので、表示部に表示する周波数の最小単位の値を定めることが可能となる。なお、ここでいう表示部に表示する周波数に関連する内容とは、測定した周波数の値であってもよく、前記目的周波数と測定した周波数との周波数差ΔFの値であってもよい。
【0016】
前記構成において、周波数の測定は、200回/secの間隔で行われてもよい。なお、この時の周波数の最小単位は1Hzである。
【0017】
この場合、周波数の測定が200回/secの間隔で行われるので、短時間で高精度に圧電振動デバイスの周波数測定を行うことが可能となる。
【0018】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの周波数調整装置は、圧電振動デバイスの周波数を調整する周波数調整装置において、本発明にかかる周波数測定装置と、圧電振動デバイスの周波数を可変させて周波数を調整する調整部と、前記周波数測定装置によって測定された周波数に基づいて、前記調整部による圧電振動デバイスの周波数変動を止める制止部と、が設けられ、前記調整部および前記制止部は、前記周波数測定装置により制御されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記周波数測定装置と前記調整部と前記制止部とが設けられ、前記調整部および前記制止部は、前記周波数測定装置により制御されるので、予め設定する周波数を限定することなく周波数の測定を正確に行い、その測定した周波数に基づいた圧電振動デバイスの周波数調整を行うことが可能となる。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの周波数測定方法は、圧電振動デバイスの周波数を調整するために周波数を測定する周波数測定方法において、予め設定する目的周波数に基づいて分解能を自動的に可変させる可変制御工程を有することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、前記可変制御工程を有するので、前記目的周波数に基づいて分解能を可変させて、前記目的周波数を境にして周波数の測定間隔を可変させることが可能となる。そのため、周波数の設定を一桁ずらすことが可能となり、例えば、分解能が下がった場合であっても、当該方法において自動的に測定することが可能となる。その結果、予め設定する周波数を限定することなく圧電振動デバイスの周波数調整を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる圧電振動デバイスの周波数測定装置および周波数調整装置、ならびに圧電振動デバイスの周波数測定方法によれば、目的周波数を限定することなく圧電振動デバイスの周波数調整を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0024】
本実施の形態にかかる周波数調整装置1は、水晶振動子の一製造工程を担う装置であり、水晶振動子の周波数を目的周波数に調整する装置である。
【0025】
この周波数調整装置1には、図1に示すように、水晶振動子の周波数を予め設定した目的周波数(下記参照)に調整するための真空本室11と、大気圧を真空状態にする真空予備室12と、50個の水晶振動子を搭載するキャリア13と、真空本室11にキャリア13を搬送するための搬送レール14と、が設けられている。また、真空本室11と真空予備室12とは連続して配されており、キャリア13は真空予備室12を介して外部から真空本室11に搬送され、真空本室11内において周波数調整を行った水晶振動子を搭載したキャリア13は真空予備室12を介して外部に搬出される。
【0026】
真空予備室12には、外部へキャリア13を搬入出させる搬入出口と、真空本室11にキャリア13を搬入出させる連結口とには、ゲート15(15a、15b、15c、15d)が設けられている。このゲート15による搬入出口と連絡口との開閉により、真空本室11は真空状態に保たれる。
【0027】
真空本室11の内部には、水晶振動子の周波数を調整する調整部16が設けられている。この調整部16は、水晶振動子の周波数の粗調整を行う粗調整部17と微調整を行う微調整部18とから構成される。また、これら粗調整部17および微調整部18にはそれぞれシャッタ(図示省略、本発明でいう制止部)が設けられ、キャリア13に搭載された水晶振動子の周波数が予め設定した目的周波数の範囲内に調整された場合、シャッタの閉口により周波数調整を止める。
【0028】
次に、上記した周波数調整装置1における水晶振動子の周波数調整を以下に、図1を参照して説明する。なお、ゲート15は全て閉口されており、真空本室11内は真空状態になっている。
【0029】
50個の水晶振動子を搬送レール14上のキャリア13に搭載する(地点A)。
【0030】
キャリア13を搬送レール14に配すると、ゲート15aが開口されてキャリア13が真空予備室12内に搬送される(地点B)。そして、キャリア13が真空予備室12に搬送されるとゲート15aが閉口され、その後に真空予備室12内が真空状態にされる。真空予備室12内が真空状態になると、ゲート15bが開口されてキャリア13が真空本室11内に搬送される(地点C)。そして、ゲート15bが閉口されて水晶振動子の周波数調整が行われる。
【0031】
地点Cでは、水晶振動子の周波数粗調整が行われる。この周波数粗調整では、水晶振動子の金属膜形成領域に部分的に真空蒸着を行う、重み付加による周波数調整を行う。
【0032】
水晶振動子の周波数粗調整が終わると、キャリア13は地点Dに搬送され、水晶振動子の周波数微調整が行われる。この周波数微調整でも同様に、水晶振動子の金属膜形成領域に部分的に真空蒸着を行う、重み付加による周波数調整を行う。なお、当該周波数調整は、上記真空蒸着法を用いた重み付加による方法以外に、例えば調整領域に予め金属膜を形成しておき、レーザービームや電子ビーム、あるいはイオンミーリングにより当該金属膜を除去する、重み除去による方法等を採用することが可能である。
【0033】
水晶振動子の周波数調整を終えると、反転部19により搬送レール14による搬送方向が反転し(地点E、図1に示す矢印方向)、キャリア13はゲート15cまで搬送される(地点F)。そして、ゲート15cが開口されて、キャリア13は真空予備室12内に搬送される(地点G)。
【0034】
真空予備室12にキャリア13が搬送されると、ゲート15cが閉口され、真空予備室12内の真空状態が大気圧にされる。真空予備室12内が大気圧になると、ゲート15dが開口されてキャリア13は外部に搬出され(地点H)、ゲート15dが閉口される。そして、キャリア13に搭載した水晶振動子を、周波数調整の良否別にそれぞれのケース(図示省略)に搬出される。
【0035】
水晶振動子を搬出した後に、キャリア13は、反転部19により搬送レール14による搬送方向が反転し(地点I、図1に示す矢印方向)、水晶振動子の搭載位置(地点A)に搬送される。
【0036】
ところで、上記した周波数調整装置1における水晶振動子の周波数調整では、周波数を測定し、水晶振動子の周波数を目的周波数に調整した後に周波数調整を止めるように調整部16を制御する周波数測定装置2が用いられる。
【0037】
この周波数測定装置2は、調整部16による周波数の粗調整及び微調整において、連続的に水晶振動子の周波数を測定し、周波数が目的周波数に調整された時に周波数調整を止めるようにシャッタを制御するものである。また、この周波数測定装置2は、粗調整部17および微調整部18のそれぞれに対応して個別に設けられている。また、この2つの周波数測定装置2の構成は、周波数の調整範囲が異なるだけであり、同一構成からなる。そのため、これら2つの周波数測定装置2の構成には、同一符号を付する。そして、本実施の形態では、微調整部18に対応した周波数測定装置2を説明し、粗調整部17に対応した周波数測定装置2の説明を省略する。
【0038】
本実施の形態にかかる周波数測定装置2には、図2、3に示すように、当該測定装置2の電源3と、周波数を設定する設定部4と、測定した水晶振動子の周波数に関連する内容を表示する表示部5と、設定部4における条件設定に基づいて点灯するランプ部6と、設定部4における条件設定に基づいて音声出力する音声出力部7と、当該測定装置2を制御する制御部8と、が設けられている。
【0039】
設定部4には、図3に示すように、目的周波数を設定する目的周波数設定部41と、測定する周波数を条件設定するための周波数設定部42と、が設けられている。
【0040】
目的周波数設定部41では、周波数の微調整により調整したい周波数(目的周波数)が設定される。本実施の形態にかかる目的周波数は、その単位をHzとして入力する。
【0041】
周波数設定部42では、測定した周波数によって水晶振動子が良品であるか否かを把握するために、周波数領域が5つの領域に区別される。また、この周波数設定部42では、4つの周波数の境界が設定される。本実施の形態では、この4つの境界を、高周波側の境界から順に第1境界43、第2境界44、第3境界45、第4境界46、と定義する(図2参照)。この周波数設定部42は、測定した水晶振動子の周波数が第1境界を超えた場合その水晶振動子を不良品と判断し、測定した水晶振動子の周波数が第4境界以下である場合その水晶振動子を良品と判断するように制御部8により制御される。なお、本実施の形態では、この周波数設定部42で設定する周波数の値は設定部で設定した周波数に対する測定した周波数の周波数差ΔFの絶対値である(下記する制御部8参照)。また、本実施の形態にかかる4境界43、44、45、46にあたる周波数は、その単位をHzとして入力する。
【0042】
制御部8には、図3に示すように、予め設定する目的周波数に基づいて分解能を自動的に可変させる可変制御部81と、この可変制御部81による設定条件に基づいて目的周波数と測定した周波数との周波数演算を行う演算制御部82と、が設けられている。
【0043】
可変制御部81では、ゲートタイムが目的周波数に基づいて可変される。すなわち、測定した周波数が30MHz以上の場合そのゲートタイムが3msecに設定され、周波数が30MHz未満の場合そのゲートタイムが1msecに設定される。このゲートタイムの可変によって、測定した周波数が30MHz以上であっても、測定した周波数が30MHz未満であっても、分解能が1Hzに設定される。
【0044】
演算制御部82では、上記した可変制御部81による設定条件に基づいて、測定した周波数と設定した目的周波数との周波数差ΔFの値を算出する。この演算制御部82における演算は、目的周波数に対して測定した周波数を減算して行われる。
【0045】
ランプ部6は、上記した周波数設定部42の4つの境界43、44、45、46に対応したものであり、Uランプ61とHランプ62とMランプ63とLランプ64とSランプ65とから構成される。Uランプ61は、演算制御部82により算出された周波数差ΔFの値が第1境界43を超えた場合に点灯する。Hランプ62は、演算制御部82により算出された周波数差ΔFの値が第1境界43以下であって第2境界44を超える場合に点灯する。Mランプ63は、演算制御部82により算出された周波数差ΔFの値が第2境界44以下であって第3境界45を超える場合に点灯する。Lランプ64は、演算制御部82により算出された周波数差ΔFの値が第3境界45以下であって第4境界46を超える場合に点灯する。Sランプ65は、演算制御部82により算出された周波数差ΔFの値が目的周波数から第4境界46未満である場合に点灯する。
【0046】
表示部5では、演算制御部82により算出された周波数差ΔFの値が表示される。
【0047】
音声出力部7では、測定した周波数と目的周波数の差である周波数差ΔFに比例し、可聴音がなる。この可聴音の周波数は前記周波数差ΔFの変化に伴ってその周波数が変化するように構成される。従って、周波数差ΔFが0に近づく、すなわち目的周波数に近づくことを鳴音により確認することができる。なお、つまみ部71によりその可聴音の出力レベルを調整することができる。
【0048】
次に、上記した周波数測定装置2における水晶振動子の周波数測定を以下に、図2、3、4を参照して説明する。なお、上記した周波数調整装置1の調整部16における各調整工程において、周波数測定装置2より、水晶振動子の周波数の測定が200回/secの間隔で行われる。
【0049】
まず、目的周波数設定部41において目的周波数を設定する(ステップS1)。また、周波数設定部42における4境界43、44、45、46にあたる周波数をそれぞれ設定する。なお、本実施の形態では、4境界43、44、45、46にあたる周波数を順に、99999Hz、50000Hz、10000Hz、200Hzと設定する。これらの周波数設定を終えた後に、電源3により電力供給を行う。電源の入力の後に、微調整部18から測定対象の水晶振動子の周波数に関する入力信号が200回/secの間隔で入力される。
【0050】
次に、ステップS1において目的周波数を30MHzに設定すると(ステップS2においてYes)、可変制御部81によりゲートタイムが3msecに設定され、周波数の最小単位が1Hzに設定される(ステップS3、本発明でいう可変制御工程)。
【0051】
また、ステップS1において目的周波数を10MHzに設定すると(ステップS2においてNo)、可変制御部81によりゲートタイムが1msecに設定され、同様に周波数の最小単位が1Hzに設定される(ステップS4、本発明でいう可変制御工程)。
【0052】
ステップS3、4においてゲートタイムが設定された後に、演算制御部82により、設定されたゲートタイムに基づいて、測定した周波数と設定した目的周波数との周波数差ΔFの値が算出される(ステップS5に示す次処理工程)。
【0053】
そして、演算制御部82により算出された測定した周波数と設定した目的周波数との周波数差ΔFの値が、図2に示す表示部5に表示される。そして、その周波数差ΔFの絶対値を範囲内とする周波数設定部42により区別された周波数領域に対応したランプ部6のランプが点灯する。
【0054】
例えば、周波数差ΔFの絶対値が0Hzであり、第4境界46の周波数が200Hzである場合、Sランプ65が点灯する。また、この時、制御部8から調整部16に、シャッタを駆動させるための出力信号が出力され、上記した周波数調整装置1では、測定した水晶振動子が良品と判断される。そして、調整部16では、シャッタによる水晶振動子へのエッチングまたは蒸着遮断により周波数調整が終了する。
【0055】
また、周波数差ΔFの絶対値が100000Hzであり、第1境界43の周波数が99999Hzである場合、Uランプ61が点灯する。また、この時、制御部8から調整部16に、周波数調整を止めるための出力信号が出力され、上記した周波数調整装置1では、測定した水晶振動子が不良品と判断される。そして、調整部16では、シャッタによる水晶振動子へのエッチングまたは蒸着遮断により周波数調整が終了する。
【0056】
なお、Hランプ62、Mランプ63、Lランプ64が点灯した場合、まだ周波数調整中であることを意味し、周波数調整装置1による水晶振動子の周波数調整が行われ、周波数測定装置2による水晶振動子の周波数測定が行われる。
【0057】
上記したように、本実施の形態にかかる周波数調整装置1によれば、調整部16と周波数測定装置2とシャッタとが設けられ、シャッタは周波数測定装置2により制御されるので、予め設定する周波数を限定することなく周波数の測定を正確に行い、その測定した周波数に基づいた水晶振動子の周波数調整を行うことができる。
【0058】
また、上記したように、本実施の形態にかかる周波数測定装置2によれば、可変制御部81が設けられているので、目的周波数に基づいて分解能を可変させて、目的周波数を境にして周波数の測定間隔を可変させることができる。そのため、周波数の最小単位の設定を同じ1Hzにすることができ、例えば、分解能が下がった場合であっても、当該周波数調整装置1において自動的に測定することができる。その結果、予め設定する周波数を限定することなく水晶振動子の周波数調整を行うことができる。また、本実施の形態にかかる周波数測定方法では、可変制御工程を有するので、同様の作用効果を有する。
【0059】
また、表示部5が設けられているので、ユーザによる周波数の測定が容易となる。また、可変制御部81により周波数の最小単位の設定を1Hzにすることができるので、分解能が下がる高周波であっても、低周波の周波数の測定と同様に測定することができる。
【0060】
すなわち、可変制御部81が設けられていない周波数測定装置の場合、分解能が固定されているので、周波数に関連する内容を表示部に表示した場合であっても、その最小単位の値が変動しつづけ、値が定まることがない。これに対し、本実施の形態にかかる周波数測定装置2では、可変制御部81により周波数の設定を一桁ずらすことができるので、表示部5に表示する周波数の最小単位の値を定めることができる。
【0061】
また、周波数の測定が200回/secの間隔で行われるので、短時間で正確に水晶振動子の周波数測定を行うことができる。
【0062】
また、可変制御部81により、ゲートタイムが目的周波数に基づいて可変されるので、容易に分解能を可変させることができる。
【0063】
ところで、汎用の周波数測定装置には、前記目的周波数によって表示する桁を自動的に変更させる機能を有するものがあるが、このような場合、出力された値を外部装置等で誤認する場合がある。しかしながら、本実施の形態にかかる周波数測定装置2によれば、特定の境界周波数が設定されるとともに、特定のゲートタイムが設定され、目的周波数が境界周波数以上である場合、可変制御部81によりゲートタイムは特定のゲートタイムより長い時間に設定され、目的周波数が境界周波数未満である場合、可変制御部81によりゲートタイムは特定のゲートタイムに時間設定されている。そのため、変更を行う周波数を境界周波数として設定して、この境界周波数と目的周波数とを比較することによりゲートタイムを可変させ、出力データの桁数を一定に保つことができる。具体的に本実施の形態では、特定の境界周波数が30MHz、特定のゲートタイムが1msecに設定され、目的周波数が30MHz以上の場合にゲートタイムが3msecに設定され、目的周波数が30MHz未満の場合にゲートタイムが1msecに設定されている。
【0064】
なお、本実施の形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子を用いたが、これに限定されるものではなく、他の圧電素子を用いたデバイスであってもよい。
【0065】
また、本実施の形態ではキャリア13に50個の水晶振動子を搭載可能としたが、これに限定されるものではない。
【0066】
また、本実施の形態では、粗調整部17と微調整部18とにそれぞれ対応させた周波数測定装置2を設けたが、これに限定されるものではなく、調整部16に対応させた周波数調整装置1を1つ設けてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、表示部5に目的周波数と測定した周波数との周波数差ΔFの値を表示しているが、これに限定されるものではなく、測定した周波数の値であってもよい。この場合、音声出力部7もしくはランプ部6によって目的周波数と測定した周波数との周波数差ΔFを確認する。
【0068】
また、本実施の形態では、目的周波数を10、30MHzと設定したが、これに限定されるものではなく、任意に設定してもよい。例えば、100MHzであってもよい。この場合、可変制御部81では、30MHzと90MHzを境にして分解能が自動的に可変させるよう設定されることが好ましい。なお、この場合30MHzと90MHzとに設定したが、好適な例であって、これに限定されるものではなく、他の周波数に設定してもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、周波数の測定を200回/secの間隔で行っているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、任意の間隔で周波数の測定を行ってよい。
【0070】
なお、本実施の形態では、制止部としてシャッタを用いているが、これに限定されるものではなく、水晶振動子の周波数の変動を止めるものであれば、任意のものでよい。
【0071】
また、本実施の形態では、単位をHzとして設定部4の入力を行うが、これに限定されるものではなく、任意に単位を設定してもよい。
【0072】
また、本実施の形態では、測定した水晶振動子の周波数が第1境界43を超えた場合のみに、その水晶振動子を不良品と見なしているが、これに限定されるものではなく、不良品と見なす範囲は任意に変更可能である。例えば、測定した水晶振動子の周波数が第2境界44もしくは第3境界45を超えた場合に、その水晶振動子を不良品と見なしてもよい。
【0073】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
圧電振動デバイスの製造装置に適用できる。特に、圧電振動デバイスの振動基板に水晶を用いた場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施の形態にかかる水晶振動子の周波数調整装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態にかかる水晶振動子の周波数測定装置の概略構成図である。
【図3】本実施の形態にかかる水晶振動子の周波数測定装置の概略構成ブロック図である。
【図4】本実施の形態にかかる水晶振動子の周波数測定工程の一部を示したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0076】
1 周波数調整装置
16 調整部
2 周波数測定装置
5 表示部
81 可変制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動デバイスの周波数を調整するために周波数を測定する周波数測定装置において、
予め設定する目的周波数に基づいて分解能を自動的に可変させる可変制御部が設けられたことを特徴とする圧電振動デバイスの周波数測定装置。
【請求項2】
前記可変制御部により、ゲートタイムが前記目的周波数に基づいて可変されることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの周波数測定装置。
【請求項3】
特定の境界周波数が設定されるとともに、特定のゲートタイムが設定され、
前記目的周波数が前記境界周波数以上である場合、前記可変制御部によりゲートタイムは前記特定のゲートタイムより長い時間に設定され、
前記目的周波数が前記境界周波数未満である場合、前記可変制御部によりゲートタイムは前記特定のゲートタイムに時間設定されることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイスの周波数測定装置。
【請求項4】
測定した圧電振動子の周波数に関連する内容を表示する表示部が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動デバイスの周波数測定装置。
【請求項5】
周波数の測定は、200回/secの間隔で行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電振動デバイスの周波数測定装置。
【請求項6】
圧電振動デバイスの周波数を調整する周波数調整装置において、
請求項1乃至5のいずれかに記載の周波数測定装置と、
圧電振動デバイスの周波数を可変させて周波数を調整する調整部と、
前記周波数測定装置によって測定された周波数に基づいて、前記調整部による圧電振動デバイスの周波数変動を止める制止部と、が設けられ、
前記調整部および前記制止部は、前記周波数測定装置により制御されることを特徴とする圧電振動デバイスの周波数調整装置。
【請求項7】
圧電振動デバイスの周波数を調整するために周波数を測定する周波数測定方法において、
予め設定する目的周波数に基づいて分解能を自動的に可変させる可変制御工程を有することを特徴とする圧電振動デバイスの周波数測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−30009(P2006−30009A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209823(P2004−209823)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】