説明

圧電振動子の製造方法および圧電振動子の製造装置。

【課題】 接合材塗布状況の良否判定を高精度に行うことができ、安定した特性の圧電振動子を得ることができる、圧電振動子の製造方法および圧電振動子の製造装置を提供する。
【解決手段】 圧電振動子の製造装置は、供給移載装置6と当該供給移載装置からベースの供給を受けるインデックステーブルIとインデックステーブル上の所定の位置に対応して配置された製造ステーションS0〜S11と、インデックステーブルからベースの排出をする排出移載装置7とからなる。接合材下塗布工程ののち、電子カメラで下塗布画像を取得し、レーザ変位計により下塗布高さデータを取得する。そして良否判定工程では下塗布の画像データと高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布状態を調べ、良否判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はATカット水晶振動板等の圧電振動板をベースに接合する際の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子は、適用される機器のモバイル化等により小型化がさらに進んでおり、これに対応して圧電振動子の組み立て製造工程においては、画像処理技術を用いた製造装置が普及している。
【0003】
例えば、圧電振動子は励振電極の形成された圧電振動素子をベース(気密容器)に気密封止する必要があるが、圧電振動素子をベースの電極パッドに導電接合材を用いて接合する際に、画像処理技術を用いることがある。具体的には、電極パッドにペースト状の導電接合材を塗布し、この塗布状態を電子カメラで撮影し、画像データを得る。この画像データに基づいて導電接合材の塗布状態の良否を判定し、良品判定品に対してのみ圧電振動素子を搭載する等の選択処理を行っていた。
【0004】
このような画像処理による良否判定は、圧電振動子の小型化が進むにつれて、必要不可欠な状態となっていたが、一方で電子カメラによる画像データは導電接合材の上面からのものであり、導電接合材の高さに係る情報が不足するという問題があった。例えば、図7(a)で示すように、電極パッド91全体に導電接合材が塗布されているが、電極パッド上面に塗布された導電接合材92の粘性が低く、全体として導電接合材の量が不足している場合や、図7(b)に示すように、電極パッド91の上面に塗布された導電接合材92の表面に凹凸があり、中央部が凹んだ状態で塗布されている場合があった。このような場合、画像データによる良否判定は良品判定となることがあるが、実際の製造においては、導電接合材の過少性や不均一性により、最終的に圧電振動子として必要な性能が得られなくなる場合があった。
【特許文献1】特開2001−292045号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、安定した特性を得ることができる圧電振動子の製造方法および圧電振動子の製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、接合材の塗布状態を画像処理技術と高さ測定技術により認識することにより、塗布状態の良否判定精度を向上させるもので、次の各方法および装置により実現できる。
【0007】
請求項1は、ベースに形成された電極パッド上に接合材を介して圧電振動板を接合する圧電振動子の製造方法であって、
前記電極パッド上に接合材を塗布する工程と、
前記電極パッドと前記塗布した接合材との画像データを取得する工程と、
前記塗布した接合材の高さデータを取得する工程と、
前記画像データを取得する工程と高さデータを取得する工程で取得した各データに基づき、接合材の塗布状態の良否判定を行う工程と、を有する圧電振動子の製造方法である。
【0008】
このような工程により、接合材の特性、例えば粘性、チクソ性、硬化特性等の諸特性により、塗布した接合材の形状、サイズがばらつくことがあるが、塗布された接合材について良否判定を行うので、安定した特性の圧電振動子を得ることができる。
【0009】
また前記各データに基づいて、必要に応じて接合材の塗布量、塗布位置、あるいは接合材の特性を変更して、後のベースに対してより適切な塗布が行えるようフィードバック制御を行ってもよい。
【0010】
このような製造方法は、平面的に回転するインデックステーブルを用いた圧電振動子の製造に適用してもよく、請求項2に示すように、平面的に回転するインデックステーブルに複数のインデックスステージが設けられ、前記インデックステーブルに搭載されたベースに接合材を介して圧電振動板を接合する圧電振動子の製造方法であって、
前記インデックスステージにベースを搭載する工程と、
前記ベースに形成された電極パッド上に接合材を塗布する工程と、
前記電極パッドと前記塗布した接合材との画像データを取得する工程と、
前記塗布した接合材の高さデータを取得する工程と、
前記画像データを取得する工程と高さデータを取得する工程に基づき、接合材の塗布状態の良否判定を行う工程と、を有する圧電振動子の製造方法であってもよい。
【0011】
さらに、請求項3に示すように、前記接合材の塗布状態の良否判定後、良品判定された接合材に対して圧電振動板を搭載し、接合を行う工程を有する圧電振動子の製造方法であってもよい。
【0012】
前記良否判定で“否”判定、すなわち不良品と判定された接合材塗布品は、製造工程から排出してもよいし、排出せずに圧電振動板搭載等の後工程では何らの製造作業を行わず、最終的に不良品として排出してもよい。あるいは“否”判定された接合材塗布品のうち再生可能な製品については、接合材の再塗布作業を行ってもよい。
【0013】
なお、圧電振動板を電極パッドに接合するにあたり、接合材を同一接合部分に複数回塗布する場合がある。例えば、電極パッドに下塗布接合材を塗布し、当該下塗布接合材上に圧電振動板を搭載する。さらに、下塗布接合材の上部であって、前記圧電振動板上に上塗布接合材を塗布する。このような2段階の接合材の塗布時においても、各塗布工程後の段階で各々画像データの取得と高さデータの取得をすることにより、接合材塗布毎の良否判定を行わせてもよい。
【0014】
また請求項4に示すように、前記塗布した接合材の高さデータの取得は、接合材の表面にレーザを照射し、受光することにより行ってもよい。レーザ照射は例えば塗布された接合材の画像データから中心あるいは重心を求め、当該領域にレーザを照射してもよいし、他の任意の領域にレーザ照射を行ってもよい。
【0015】
また請求項5に示すように、前記レーザを走査しながら照射、受光することにより、接合材表面の複数箇所の高さを測定した圧電振動子の製造方法であってもよい。このような走査駆動は、塗布された接合材の中心あるいは重心を含んで走査してもよい。また、塗布された接合材に対して複数ラインの走査を行ってもよい。この場合高さ情報をより高精度に得ることができ、接合材の全体形状および体積のデータを得ることができる。さらに、塗布された接合材に対して複数ラインでマトリクス状の走査を行うことにより、より高精度な接合材の全体形状および体積のデータを得ることができ、接合材の塗布状態の良否判定をより高精度に行うことができる。
【0016】
本発明は、上記圧電振動子の製造方法に対応した製造装置についても提案をしている。具体的には請求項6に示すように、表面に複数のインデックスステージが設けられ、平面的に回転する機構を有するインデックステーブルと、
前記インデックスステージに対してベースを搭載するベース供給ステーションと、
前記ベース供給ステーションの後工程の位置に配置され、ベースの電極パッドに対して接合材を塗布する接合材塗布ステーションと、
前記接合材塗布ステーションの後工程の位置に配置され、ベースの電極パッドに塗布した接合材の画像データを取得する接合材塗布画像取得ステーションと、
前記接合材塗布画像取得ステーションの後工程の位置に配置され、前記接合材の高さを測定する接合材高さデータ取得ステーションと、
接合材塗布画像取得ステーションと接合材高さデータ取得ステーションの後工程の位置に配置され、接合材に対して圧電振動板を搭載する圧電振動板接合ステーションと、
前記接合材塗布画像取得ステーションで得た画像データと前記接合材高さデータ取得ステーションで得た高さデータに基づき接合材の良否判定をする判定部とを有する圧電振動子の製造装置である。
【0017】
また上記製造装置において、請求項7に示すように、前記接合材の高さデータ取得ステーションでは接合材の表面にレーザを照射、受光するレーザ変位計を用いた構成としてもよい。
【0018】
なお、当該レーザ変位計は、インデックスステージに搭載されたベースに対して、走査照射可能な構成としてもよい。走査は1軸方向に1または複数のラインであってもよいし、マトリクス状に走査する構成であってもよい。また複数の軸方向に走査する場合は、走査する軸方向毎に製造ステーションを設けてもよい。この場合は走査機構が簡素な混成となるのでコスト安の製造装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗布された接合材の画像データと接合材の高さデータに基づき接合材の塗布状況データを詳細に得ることができるので、塗布状況の良否判定を高精度に行うことができ、安定した特性の圧電振動子を得ることができる、圧電振動子の製造方法および圧電振動子の製造装置を得ることができきる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態について、圧電振動子としてATカット水晶振動板を用いた水晶振動子の製造方法を例にとり図面とともに説明する。図1は本実施の形態に係る水晶振動子に用いるベースの平面図であり、図2は図1のA−A断面図であって、電子カメラで撮影している状態を示す図、図3は図1のA−A断面図であって、レーザを照射する状態を示す図、図4は接合材に対してレーザビームを照射する走査ラインを示す平面図である。また図5はインデックステーブルを用いた製造装置を説明する模式図であり、図6は製造フローを示す図である。
【0021】
図1において1はベース、2は接合材、3は水晶振動板(点線にて図示)を示している。
【0022】
ベース1は上部が開口した直方体箱形状の構成であり、外周の堤部10とその内側の収納部15を有している。平面で見て収納部13の長辺方向の一端には電極パッド11,12が形成されている。ベースの材料はアルミナ等のセラミックからなり、一部の表面と内部にはメタライズ配線パターンが形成されている。図2に示すようにベースは断面でみて凹形状であり、ベースの底部には外部接続端子13,14が形成され、当該外部接続端子13,14は各々前記電極パッド11,12とメタライズ配線パターン(図示せず)により導通している。
【0023】
電極パッドの表面には接合材2,2が塗布される。当該接合材2,2は導電フィラーが分散されたペースト状の樹脂接合材であり、導電性樹脂接合材を構成している。本実施の形態においてはシリコーン系樹脂に銀やパラジウム等の金属フィラーを添加したペースト状の接合材を用いている。このペースト状の接合材をディスペンサを用いて電極パッドに吐出することにより、全体として凸形状の塗布形状となる接合材を形成する。なお、接合材は電極パッドの中央部分に塗布されることが好ましく、偏在した状態に塗布すると接合性能が低下することがある。また接合材の形状は断面で見て凸形状や台形状が好ましい。
【0024】
水晶振動板3はATカット水晶振動板からなり、矩形形状を有している。図示していないが表裏中央部分には表裏1対の励振電極が形成され、各々の励振電極は長辺の一端側に引き出され、前記電極パッドと接合される引出電極が形成されている。
【0025】
図2に示すように電極パッドに形成された接合材の上方から電子カメラ5を用いて接合材2の画像を撮影する。電子カメラで取得した画像データは、図示しないメモリに格納され後述の良否判定に用いられる。なお、図2において電子カメラは実際より小さく描いている。
【0026】
さらに図3に示すように、電極パッドに形成された接合材2の表面に対してレーザ変位計4を用いてレーザを照射し、接合材2の高さを測定する。レーザ変位計4はレーザの出射口41と入射口42を有し、出射口から出射したレーザビームBは接合材の表面で反射し、反射光を入射口42を介してレーザ受光素子により受光して接合材の高さを測定する。当該高さデータもメモリに格納され後述の良否判定に用いられる。なお、図3においてレーザ変位計は実際より小さく描いている。
【0027】
なお、高さの測定におけるレーザ照射は、例えば塗布された接合材の画像データから中心あるいは重心を求め、当該領域にレーザを照射してもよいし、他の任意の領域にレーザ照射を行ってもよい。
【0028】
また接合材に対して走査することにより、複数点の高さ情報を求めてもよい。具体的には図4(a)に示すように、塗布された接合材2の中心を含んで走査し、走査ライン上の複数の点の高さを求めてもよいし、図4(b)に示すように、塗布された接合材2に対して複数ラインの走査を行ってもよい。このような走査により、高さ情報をより高精度に得ることができ、接合材の全体形状および体積のデータを得ることができる。
【0029】
さらに、図4(c)に示すように、塗布された接合材に対して複数ラインでマトリクス状の走査を行うことにより、より高精度な接合材の全体形状および体積のデータを得ることができ、接合材の塗布状態の良否判定をより高精度に行うことができる。
【0030】
判定部(図示せず)では、画像データによる接合材の面積情報と高さデータによる高さ情報に基づき、面積情報と高さ情報が予め設定された基準内に入っている場合に良品判定を行い、いずれか一方でも基準から外れている場合は不良品として判定する。なお、判定基準は使用する接合剤の特性等に応じて適宜決定すればよく、画像情報、高さ情報のいずれか一方が所定基準に入っていれば良品判定をする場合もある。
【0031】
この良否判定に基づき良品判定されたベースに対してのみ、例えば水晶振動板を搭載する等の後工程を実施する。
【0032】
次にインデックステーブルを用いた製造装置および製造方法について図面とともに説明する。図5はインデックステーブルを用いた製造装置を示す模式図であり、供給移載装置6と当該供給移載装置からベースの供給を受けるインデックステーブルIとインデックステーブル上の所定の位置に対応して配置された製造ステーションS0〜S11と、インデックステーブルからベースの排出をする排出移載装置7とからなる。また、本製造装置は、ベースに対して接合材を2回塗布する製造ステーションを有しており、これら各塗布後に画像撮影と高さ測定の製造ステーションを有している。
【0033】
供給移載装置6は移載アクチュエータ61とパレット62を固定するパレット配置部からなる。移載アクチュエータ61はX−Yの2軸方向に動作可能なアクチュエータである。アクチュエータの先端部には吸引孔(図示せず)が配置されており、当該吸引孔にてベースを吸引する。パレット配置部に配置されたパレット62は、マトリクス状にベース収納孔が設けられ、各収納孔にベース1が格納されている。
【0034】
インデックステーブルIは全体として円板構成であり、その表面外周近傍にインデックスステージI0〜I11が周状に均等配置されている。ところでインデックステーブルIは平面的に回転駆動可能となっており、当該回転は例えばサーボモータで駆動される。サーボモータはインデックステーブル駆動制御部(図示せず)からのパルス信号で駆動し、回転速度、回転量等を制御するが、これによりインデックステーブル3を任意の設定で動作させることができる。本実施の形態においては、各インデックスステージを均等な間隔を持って12カ所設けているので、製造実行時には30度づつ間欠的に回転を行う。この回転量は必要な製造工数に応じて任意に設定することができ、サーボモータへの制御信号により調整することができる。
【0035】
前記インデックスステージに対して製造作業が行えるよう、製造ステーションS0〜S11が配置されている。ベース供給ステーションS0は供給移載装置6から供給されたベースをインデックスステージに配置する。ベース供給ステーションS0の隣にはベース位置決めステーションS1が設けられている。当該ベース位置決めステーションS1ではベースをインデックスステージの所定位置に配置するよう、平面的に位置補正を行うことのできるX−Yアクチュエータにより設置位置の微調整を行う。これによりベースはインデックスステージの中央部分あるいは所定の位置に正確に位置決めされる。
【0036】
ベース位置決めステーションの隣にはベース画像取得ステーションS2が設けられている。当該ベース画像取得ステーションS2の上部には電子カメラが設けられ、ベースを上面から撮影し、ベースの平面画像を取得する。なお、当該画像データは一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0037】
ベース画像取得ステーションの隣には電極パッド高さ測定ステーションS3が設けられている。当該電極パッド高さ測定ステーションS3の上部にはレーザ変位計が設けられ、ベースの電極パッドに対してレーザを照射し、反射光を受光することにより電極パッドの高さを測定する。なお、レーザ照射領域は前記画像データに基づき決定してもよい。ここで取得した高さデータも一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0038】
前記メモリに格納されたベースの画像データおよび電極パッドの高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布位置と塗布量そして塗布時のディスペンサの高さ等の下塗布用パラメータを決定する。
【0039】
なお、これらベース画像取得ステーションS2と電極パッド高さ測定ステーションS3,そして電極パッドの情報を判定する判定部を設けない構成としてもよい。
【0040】
電極パッド高さ測定ステーションの隣には接合材下塗布ステーションS4が設けられている。当該接合材下塗布ステーションS4では、接合材供給装置が配置され、当該供給装置のディスペンサが電極パッドに近接する。そしてディスペンサの接合材が充填されたシリンジから所定量の接合材が前記電極パッドに対して吐出し、塗布される。この塗布条件は前述の下塗布用パラメータによって設定され、接合材の供給位置、供給量、供給時のシリンジの高さが制御され、塗布が実行される。なお、接合材の吐出量はシリンジ内に供給されるエアにより制御される。
【0041】
接合材下塗布ステーションの隣には下塗布画像取得ステーションS5が設けられている。当該下塗布画像取得ステーションS5の上部には電子カメラが設けられ、電極パッド上に塗布された接合材を上部から撮影し、電極パッドと接合材の平面画像を取得する。なお、当該画像データは一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0042】
下塗布画像取得ステーションの隣には下塗布高さ測定ステーションS6が設けられている。当該下塗布高さ測定ステーションS6の上部にはレーザ変位計が設けられ、電極パッド上の接合材に対してレーザを照射し、反射光を受光することにより接合材の高さを測定する。本実施の形態においては図4(a)に示すように、接合材の中心を通るようレーザの走査を行い、複数ポイントの高さデータを取得している。なお、当該高さデータも一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0043】
そして前記メモリに格納された下塗布の画像データと高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布状態を調べ、良否判定を行う。本実施の形態では接合材の高さが所定範囲であり、塗布形状が凸形状等の良好な形状であれば良品判定を行い、条件に合致しない高さ、形状であれば不良品判定を行う。なお、良品判定のベースのみ次工程の圧電振動板搭載ステーションで搭載を実施し、不良品については次工程以降の製造作業を停止するよう制御される。
【0044】
圧電振動板搭載ステーションS7では、励振電極が形成された水晶振動板をベース内に搭載し、接合材を介して電極パッドと水晶振動板の電極とが導電接合される。水晶振動板は平行平面研磨により薄板に加工された矩形状のATカット水晶振動板であり、パーツフィーダ(図示せず)により個別に供給され、パーツフィーダから移載装置(図示せず)を介してベースに搭載される。なお、前記下塗布の高さ情報等の各データを参照して、搭載時の位置決めを調整してもよい。
【0045】
パーツフィーダについては図示していないが、投入された多数個の水晶振動板を整列して排出口へ供給する装置であり、すり鉢状の容器にらせん状の流路を形成し、容器11に微小振動を与えることにより、ランダムに投入された水晶振動板が排出口に順次押し出される構成である。なお、パーツフィーダに代えて例えばマトリクス状の水晶振動板収納室を有するパレットからインデックステーブルに供給する方式であってもよい。
【0046】
圧電振動板搭載ステーションの隣には接合材上塗布ステーションS8が設けられている。当該接合材上塗布ステーションS8では、接合材供給装置が配置され、接合材の充填されたシリンジから所定量の接合材を水晶振動板の上面であって前記接合材の上面に対して吐出し、塗布される。なお、接合材の吐出量はシリンジ内に供給されるエアにより制御される。
【0047】
接合材上塗布ステーションの隣には上塗布画像取得ステーションS9が設けられている。当該上塗布画像取得ステーションS9の上部には電子カメラが設けられ、前記塗布された接合材を上部から撮影し、接合材および水晶振動板そして電極パッドの平面画像を取得する。なお、当該画像データは一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0048】
上塗布画像取得ステーションの隣には上塗布高さ測定ステーションS10が設けられている。当該上塗布高さ測定ステーションS10の上部にはレーザ変位計が設けられ、ベースの電極パッドに対してレーザを照射し、反射光を受光することにより接合材の高さを測定する。本実施の形態においては図4(b)に示すように、接合材に対して平行な複数ラインのレーザの走査を行い、複数ポイントの高さデータを取得している。なお、当該高さデータも一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0049】
そして前記メモリに格納された上塗布の画像データと高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布状態を調べ、良否判定を行う。前述のとおり接合材の高さが所定範囲であり、塗布形状が適切な凸形状等の良好な形状であれば良品判定を行い、条件に合致しない高さ、形状であれば不良品判定を行う。なお、上塗布接合材に対するレーザ走査は複数のラインで行っているので、接合材の体積に近いより高精度の高さ情報を得ることができる。
【0050】
上塗布高さ測定ステーションの隣にはベース排出ステーションS11が設けられている。ここでは排出移載装置7により、インデックスステージのベースをパレット72に移載する。供給移載装置7は移載アクチュエータ71とパレット72を固定するパレット配置部からなる。移載アクチュエータ71はX−Yの2軸方向に動作可能なアクチュエータである。アクチュエータの先端部には吸引孔(図示せず)が配置されており、当該吸引孔にてベースを吸引する。パレット配置部に配置されたパレット72は、マトリクス状にベース収納孔が設けられ、各収納孔にベースが格納されている。
【0051】
なお、ベース排出においては、良品用パレット、不良品用パレットそれぞれを用意し、判定部の判定結果に基づき、それぞれ分類して格納してもよい。
【0052】
次に本装置を用いてベースに水晶振動板を接合する製造方法について、図5,図6とともに説明する。図6は製造方法を示すフローチャートである。なお、図6に記載したS0〜S11の表示は図5に示す各製造ステーションに対応するものである。
【0053】
まず、ベース供給工程においては、ベース供給ステーションS0にインデックスステージを位置させ、供給移載装置6により、パレット62のベースをインデックスステージI0に移載する。その後インデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージI0をベース位置決めステーションS1に移動する。ベース位置決め工程ではベース位置決めステーションS1において、ベースがインデックスステージI0の中央部分に位置するように微調整移動させ、ベース位置決め工程を実行する。なお、このとき次のインデックスステージI1はベース供給ステーションS0に移動し、ベース供給が行われ、この動作が順次連続して行われる。
【0054】
ベース位置決めステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージをベース画像取得ステーションS2に移動する。ベース画像取得工程では、電子カメラの撮影によりベースの電極パッド部分を含んで平面画像を取得し、メモリに格納する。
【0055】
そしてベース画像取得ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージI0をベース電極パッド高さ取得ステーションS3に移動する。電極パッド高さ取得工程では、レーザ変位計によりベースの電極パッド部分の高さを測定し、メモリに格納する。
【0056】
前記メモリに格納されたベースの画像データおよび電極パッドの高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布位置と塗布量そして塗布時のディスペンサの高さ等の下塗布用パラメータを決定する。
【0057】
次にベース電極パッド高さ取得ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージI0を接合材下塗布ステーションS4に移動する。接合材下塗布工程では、接合材供給装置のディスペンサが電極パッドに近接し、ディスペンサのシリンジから所定量の接合材が前記電極パッドに対して吐出し、塗布される。この塗布条件は前述の下塗布用パラメータによって設定され、接合材の供給位置、供給量、供給時のシリンジの高さが制御され、塗布が実行される。なお、接合材の吐出量はシリンジ内に供給されるエアにより制御される。
【0058】
次に接合材下塗布ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを下塗布画像取得ステーションS5に移動する。下塗布画像取得工程では、電子カメラを用い、電極パッド上に塗布された下塗布接合材を上部から撮影し、接合材と電極パッドの平面画像を取得する。なお、当該画像データは一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0059】
そして下塗布画像取得ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを下塗布高さ測定ステーションS6に移動する。下塗布高さ測定工程では、レーザ変位計により、電極パッド上の接合材に対してレーザを照射し、反射光を受光することにより接合材の高さを測定する。本実施の形態においては図4(a)に示すように、前記画像データを参照して接合材の位置を、形状を認識し、この接合材の中心を通るようレーザの走査を行い、複数ポイントの高さデータを取得している。なお、高さの測定方法は上記方法に限定されるものではなく、図4各図に示す走査測定方法や接合材の中心領域を測定する方法等の他の方法を採用してもよい。またこれは上塗布高さ測定工程においても同様である。ここで測定した高さデータも一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0060】
そして良否判定工程では前記メモリに格納された下塗布の画像データと高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布状態を調べ、良否判定を行う。前述のとおり接合材の高さが所定範囲であり、塗布形状が凸形状等の良好な形状であれば良品判定を行い、条件に合致しない高さ、形状であれば不良品判定を行う。なお、良品判定のベースのみ次工程の圧電振動板搭載ステーションで搭載を実施し、不良品については次工程以降の製造作業を停止するよう制御されるが、この工程において不良品をインデックステーブルから排出する選択動作を設けてもよい。
【0061】
次に下塗布高さ測定ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを圧電振動板搭載ステーションS7に移動する。圧電振動板搭載工程では、励振電極が形成された水晶振動板を移載装置によりベース内に搭載し、接合材を介して電極パッドと水晶振動板の電極とが導電接合される。なお、前述のとおり前工程で良品判定されたベースに対してのみ水晶振動板が搭載される。
【0062】
次に圧電振動板搭載ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを接合材上塗布ステーションS8に移動する。接合材上塗布工程では、接合材供給装置のシリンジから所定量の接合材を水晶振動板の上面および前記接合材の上面に対して吐出し、塗布される。なお、接合材の吐出量はシリンジ内に供給されるエアにより制御される。
【0063】
次に接合材上塗布ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを上塗布画像取得ステーションS9に移動する。上塗布画像取得工程では、電子カメラを用い、電極パッド上に塗布された下塗布接合材を上部から撮影し、接合材等の平面画像を取得する。なお、当該画像データは一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0064】
そして上塗布画像取得ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを上塗布高さ測定ステーションS10に移動する。上塗布高さ測定工程では、レーザ変位計により、電極パッド上の接合材に対してレーザを照射し、反射光を受光することにより接合材の高さを測定する。本実施の形態においては図4(b)に示すように、接合材に対して平行な複数ラインのレーザの走査を行い、複数ポイントの高さデータを取得している。なお、高さの測定方法は上記方法に限定されるものではなく、図4各図に示す走査測定方法や接合材の中心領域を測定する方法等の他の方法を採用してもよい。ここで測定した高さデータも一時的にメモリ(図示せず)に格納される。
【0065】
そして良否判定工程では、前記メモリに格納された上塗布の画像データと高さデータに基づき、判定部(図示せず)が接合材の塗布状態を調べ、良否判定を行う。前述のとおり接合材の高さが所定範囲であり、塗布形状が凸形状等の良好な形状であれば良品判定を行い、条件に合致しない高さ、形状であれば不良品判定を行う。なお、上塗布接合材に対するレーザ走査は複数のラインで行っているので、接合材の形状に近いより高精度の高さ情報および体積情報を得ることができる。
【0066】
そして上塗布高さ測定ステーションからインデックステーブルを時計回りに30度回転させ、当該インデックスステージを製品排出ステーションS11に移動する。製品排出工程では、排出移載装置7により、インデックスステージのベース(製品)をパレット72に移載する。供給移載装置7は移載アクチュエータ71とパレット72を固定するパレット配置部からなる。移載アクチュエータ71はX−Yの2軸方向に動作可能なアクチュエータである。アクチュエータの先端部には吸引孔(図示せず)が配置されており、当該吸引孔にてベースを吸引する。パレット配置部に配置されたパレット72は、マトリクス状にベース収納孔が設けられ、各収納孔にベースが格納されている。
【0067】
なお、ベース排出においては、良品用パレット、不良品用パレットのそれぞれを用意し、判定部の判定結果に基づき、それぞれ分類して格納してもよい。
【0068】
上記実施の形態において、ベースおよび電極パッドの画像および高さ情報を得る構成としているが、この工程を用いなくてもよい。また接合材は下塗布と上塗布を行っているが、下塗布と下塗布に係る画像データ取得および高さデータ取得の各工程のみで実施してもよい。
【0069】
また前記各データに基づいて、必要に応じて接合材の塗布量、塗布位置、あるいは接合材の特性を変更して、後のベースに対してより適切な塗布が行えるようフィードバック制御を行ってもよい。
【0070】
また本実施の形態においては、ATカット水晶振動板の製造例について説明したが、屈曲振動を用いた音叉型振動子等他の振動モードの圧電振動子の製造に適用してもよい。また、他の水晶振動板とIC素子をベースに格納した水晶発振器等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
水晶振動子、水晶発振器等の圧電振動デバイスあるいは他の電子部品の量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に用いるベースの平面図
【図2】図1のA−A断面図であって、画像データ取得を示す図
【図3】図1のA−A断面図であって、高さデータ取得を示す図
【図4】接合材に対するレーザ走査を示す図
【図5】圧電振動子の製造装置を示す模式図
【図6】圧電振動子の製造方法を示すフローチャート
【図7】接合材の塗布状態を示す図
【符号の説明】
【0073】
1 ベース
2 接合材
3 水晶振動板(圧電振動板)
4 レーザ変位計
5 電子カメラ
6 供給移載装置
7 排出移載装置
I インデックステーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに形成された電極パッド上に接合材を介して圧電振動板を接合する圧電振動子の製造方法であって、
前記電極パッド上に接合材を塗布する工程と、
前記電極パッドと前記塗布した接合材との画像データを取得する工程と、
前記塗布した接合材の高さデータを取得する工程と、
前記画像データを取得する工程と高さデータを取得する工程で取得した各データに基づき、接合材の塗布状態の良否判定を行う工程と、
を有する圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
平面的に回転するインデックステーブルに複数のインデックスステージが設けられ、前記インデックスステージに搭載されたベースに接合材を介して圧電振動板を接合する圧電振動子の製造方法であって、
前記インデックスステージにベースを搭載する工程と、
前記ベースに形成された電極パッド上に接合材を塗布する工程と、
前記電極パッドと前記塗布した接合材との画像データを取得する工程と、
前記塗布した接合材の高さデータを取得する工程と、
前記画像データを取得する工程と高さデータを取得する工程で取得した各データに基づき、接合材の塗布状態の良否判定を行う工程と、
を有する圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
前記接合材の塗布状態の良否判定後、良品判定された接合材に対して圧電振動板を搭載し、接合を行う工程を有する請求項1または請求項2記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
前記塗布した接合材の高さデータの取得は、接合材の表面にレーザを照射し、受光することにより行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
前記レーザを走査しながら照射、受光することにより、接合材表面の複数箇所の高さを測定したことを特徴とする請求項4記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
表面に複数のインデックスステージが設けられ、平面的に回転する機構を有するインデックステーブルと、
前記インデックスステージに対してベースを搭載するベース供給ステーションと、
前記ベース供給ステーションの後工程の位置に配置され、ベースの電極パッドに対して接合材を塗布する接合材塗布ステーションと、
前記接合材塗布ステーションの後工程の位置に配置され、ベースの電極パッドに塗布した接合材の画像データを取得する接合材塗布画像取得ステーションと、
前記接合材塗布画像取得ステーションの後工程の位置に配置され、前記接合材の高さを測定する接合材高さデータ取得ステーションと、
接合材塗布画像取得ステーションと接合材高さデータ取得ステーションの後工程の位置に配置され、接合材に対して圧電振動板を搭載する圧電振動板接合ステーションと、
前記接合材塗布画像取得ステーションで得た画像データと前記接合材高さデータ取得ステーションで得た高さデータに基づき接合材の良否判定をする判定部とを有する圧電振動子の製造装置。
【請求項7】
前記接合材の高さデータ取得ステーションでは接合材の表面にレーザを照射、受光するレーザ変位計を用いたことを特徴とする請求項6記載の圧電振動子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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