説明

圧電発音体及び電子機器

【課題】
圧電発音体を角形状として実装時のデッドスペースの低減を図るとともに、音圧特性を確保し、1次共振周波数を低減方向に制御する。
【解決手段】
圧電発音体10は、略長方形状の振動板14の一方の主面に、略長方形状の圧電素子18が貼り合わせられた圧電振動板12を、支持体26で支持した構成となっている。前記振動板14は、一対の短辺14Aが、略長方形の支持体26の枠状縁部の短辺26Aに重なり合うようにして全幅に亘って強固に固定される。一方、振動板14の長辺側の縁部14Bは、略中央部が内側に向かって鼓状に湾曲した形状となっており、支持体26の長辺26Bとの間に間隙28を生じるように形成されている。該間隙28は、振動板14とヤング率が異なる可撓性を有する弾性シート30で覆われているため、振動板14が柔軟に動き、高音圧を確保し、1次共振周波数の制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの電子機器及びその音響部品として用いられる圧電発音体に関し、更に具体的には、角形状の圧電発音体の音圧特性の確保と周波数制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モバイル機器や携帯電話機などの発音体部分には、丸形のダイナミックスピーカ,もしくは、金属板などの振動板の表面に圧電素子を貼り合わせたユニモルフ構造(またはバイモルフ構造)の丸形の圧電発音体が用いられている。このうち、圧電発音体は、薄型化に適した簡易な電気音響変化手段として広く利用されている。ところで、一般的な角形スピーカは、外形は角形状であっても、発音体の振動板は丸形となっている場合がある。しかしながら、発音体形状を丸形とすると、実装時にデッドスペースを生じることから、小型化の面では不都合である。そこで、実装時のデッドスペース低減を図るために、発音体を角形とする技術が提案されている。
【0003】
例えば、以下に示す特許文献1には、キャップ状に絞り加工した金属板の天板部に平行にスリットを設け、これらスリット間の部位に矩形の圧電板を電気的かつ機械的に対面接合してユニモルフ型振動板を構成し、前記スリットを、可撓性を持つ封止材料で封止して、前記金属板の周壁部下端を基板に接着固定した圧電音響部品が開示されている。
【特許文献1】特開平11−355891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような背景技術では、封止材料で封止されたスリット間に圧電板を設けることにより、従来の丸形の振動板を用いた場合に比べれば変位の自由度は上がるものの、金属板の周壁の下端部全てを基板に接合しているため、飛躍的に振動の自由度が上がるとはいいがたい。また、スリットの長さや間隔の変更,圧電板の寸法の変更により、電気的性質を変更できるとしているものの、これらの寸法などと1次共振周波数との関連が明確化されておらず、実装時に十分な音圧特性が得られなかったり、周波数制御を良好に行えなかったりする可能がある。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、圧電発音体を角形状として実装時のデッドスペースの低減を図るとともに、音圧特性を確保し、1次共振周波数を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の圧電発音体は、一対の長辺側の縁部が鼓状に湾曲した略長方形状の振動板と、該振動板の少なくとも一方の主面に貼り合わせられた圧電素子を含む圧電振動板,前記振動板の湾曲した長辺側の縁部との間に間隙を有するとともに、前記振動板の一対の短辺を、該短辺の幅全体に亘って支持する支持体,前記振動板の長辺側縁部と前記支持体との間隙を覆う可撓性を有する弾性シート,を備えるとともに、前記弾性シートと前記振動板のヤング率が異なることを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記弾性シートのヤング率を、1×10〜1×1011Paとしたことを特徴とする。好ましくは、前記弾性シートのヤング率を、1×10〜1×1011Paとしたことを特徴とする。
【0008】
他の形態は、前記圧電素子の短辺の長さをw,長辺方向略中央部における前記間隙の幅をaとしたときに、a=w/46〜w/10の関係を満たすことを特徴とする。更に他の形態は、前記振動板または弾性シートのヤング率を、長手方向中央部よりも、その両端側で大きくしたこと,あるいは、前記振動板または弾性シートの厚さを、前記振動板の長手方向両端側よりも、長手方向中央部で薄くしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の電子機器は、請求項1〜6のいずれかに記載の圧電発音体を利用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、少なくとも一方の主面に圧電素子が貼り合わせられた略長方形状の振動板の長辺側の縁部を鼓状に湾曲形成し、支持体によって前記振動板短辺を全幅に亘って支持する。そして、該支持体と前記振動板の湾曲した縁部との間隙を、前記振動板とヤング率が異なる可撓性を有する弾性シートで覆うことで、長辺方向の振動板の動きを柔軟にし、高音圧を確保しながら、1次共振周波数を低減方向に制御できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
最初に、図1〜図8を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の圧電発音体の外観を示す斜視図である。図2(A)は、前記図1を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図2(B)は、前記図1を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図3は、本実施例1の構成を示す分解斜視図である。図1〜図3に示すように、本実施例の圧電発音体10は、略長方形状の振動板14の一方の主面に、略長方形状の圧電素子18が貼り合わせられたユニモルフ構造の圧電振動板12を、支持体26で支持した構成となっている。
【0013】
図2に示すように、前記圧電素子18は、圧電層20A,20B,20Cと電極層22A,22B,22C,22Dを交互に積層した構造となっており、金属などによって構成された振動板14の上面略中央に、導電性接着剤などで接着される。圧電層20A〜20Cとしては、例えば、PZTが用いられ、電極層22A〜22Dとしては、例えば、AgもしくはAg/Pd合金が用いられる。前記電極層22A及び22Cは、スルーホール24Aにより接続されており、前記電極層22B及び22Dは、スルーホール22Bにより接続されて振動板14と同電位となっている。
【0014】
前記振動板14は、一対の短辺14Aが、略長方形の支持体26の枠状縁部の短辺26Aに重なり合うようにして、前記振動板14の短辺14Aの全幅に亘って適宜手段で強固に固定される。これにより、圧電素子18が変位した際に、振動板14の短辺側における逃げが抑制される。また、振動板14の長辺側の縁部14Bは、略中央部が内側に向かって鼓状に湾曲した形状となっており、支持体26の枠状縁部の長辺26Bとの間に間隙28を生じるように形成されている。なお、長辺方向略中央部での間隙28の幅(すなわち、長辺方向略中央部における振動板14の長辺側縁部14Bと支持体26の長辺26Bの最短距離)aは、前記圧電素子18の短辺の長さをwとしたときに、a=w/46〜w/10の範囲内で規定することが望ましい。これは、例えば、前記aがw/46よりも小さいと、一次共振周波数が1kHzを超えてしまい、aがw/10よりも大きいと、音圧向上の効果が得られないためである。このような振動板14は、一方の短辺14A側に、電極引き出し用の突出部16が形成されている。
【0015】
上述したように、前記振動板14は、長辺側の縁部14Bが鼓状に湾曲しているため、支持体26の長辺26Bと重なることがなく、図1及び図2(A)に示すように、支持体26との間に間隙28を生じる。前記間隙28は、可撓性を有するとともに、前記振動板14とヤング率が異なる弾性シート30で覆われている。該弾性シート30としては、例えば、各種ゴム,シリコーン樹脂シート,発泡ポリウレタンシート,和紙等が利用される。このような構成とすると、振動板14が動きやすくなり、良好な音圧特性を得ることができる。なお、長辺側縁部14Bの形状は、1次共振の振動モードから、長辺の負荷の軽減に好適であるという点で鼓形状が選択されている。
【0016】
以上のような圧電発音体10は、例えば、次のような手順で製造される。まず、振動板14の略中央部に圧電素子18を導電性接着剤などで貼り付けて圧電振動板12を構成し、その振動板14の長辺側の縁部14Bに、弾性シート30を設ける。そして、弾性シート30を設けた圧電振動板12の短辺14Aを、支持体26の縁部の短辺26Aに重ね合わせて、適宜手段で強固に固定する。その後、圧電素子18の表面の電極層22Aに設けられた導電性樹脂32A及び導体パターン34Aを介して、電極層22A及び22Cが外部に引き出され、振動板14の突出部16からは、導電性樹脂32B及び導体パターン34Bを介して、電極層22B及び22Dが外部に引き出される。なお、前記導体パターン34Aの裏面には、振動板14との電気的な接触を防止するための絶縁性シート36が設けられている。導体パターン34A及び34Bとしては、例えば、銅箔等が用いられる。
【0017】
このような構成の圧電発音体10の振動板14は、形状異方性(2回対称)を有している。また、短辺14Aが全幅で支持されており、長辺側の縁部14Bが可動部となっている。従って、可動辺(長辺側縁部14B)に垂直な方向に対して2種類(振動板14と弾性シート30の2種類)以上のバネ定数で構成されている。前記構成とすることにより、固定部(短辺14A)に垂直な方向でバネ定数が連続/非連続に変化する。このため、振動板14の長辺方向の中央部においては、圧電素子18の変位に伴って大きな振幅が得られる一方、振動板14の長辺方向の両端部においては、前記圧電素子18の変位に伴って大きな面積で振動板14に撓みが生じ、この結果、圧電素子18の変位により大きな容積の空気を動かすことができ、高い音圧で良好な音質を得ることができる。
【0018】
次に、図4及び図5を参照して、上述した構成の圧電発音体10における弾性シート30のヤング率について検討する。検討に用いる圧電振動体10は、振動板14の寸法(図3のW×L)を、16×30mm,圧電素子18の寸法(図3のw×l)を、10×25mm,長辺方向略中央部における間隙28の幅aを0.7としたものを用いた。図4は、弾性シート30のヤング率を1×10(1M)〜1×1011(100G)Paまで変化させた場合の、周波数と音圧の関係を示すシミュレーション結果である。図4において、横軸は、周波数[Hz]を示し、縦軸は音圧レベル(SPL:Sound Pressure Level)[dB]を示している。なお、横軸は対数目盛となっている。
【0019】
図4に示すように、長辺方向に設ける弾性シート30のヤング率が1MPaのときの1次共振周波数は300Hz,10MPaのときは320Hz,100MPaのときは420Hz,1GPaのときは720Hz,10GPaのときは1kHz,100GPaのときは1.3kHzとなっており、1次共振周波数を、300Hz〜1.3kHzの範囲で制御できることがわかる。
【0020】
図5には、前記図4で得られた1次共振周波数と、弾性シート30のヤング率の関係が示されている。図5において、横軸は、弾性シート30のヤング率[Pa]を表しており、対数目盛となっている。縦軸は、1次共振周波数[Hz]を示している。なお、横軸における「E」は10のべき乗を示しており、「E+06」は、「10」である。図5からは、弾性シート30のヤング率を1×10〜1×1011Paの範囲で規定することにより、1次共振周波数を、モバイル機器再生周波数400Hz〜1.5kHzの範囲で制御可能であることが確認された。具体的には、ヤング率の変化と1次共振周波数の変化の比率が、1M〜10MPaの間では10:1.06,10M〜100MPaの間では10:1.31,100M〜1GPaの間では10:1.71,1G〜10GPaの間では10:1.38,10G〜100GPaの間では10:1.3であることを利用して1次共振周波数を制御するようにする。特に、周波数領域700Hz〜1.4kHz付近では、「y=8E−09x+525.68」の式が概略適用可能であることから、精度よく周波数制御を行うことができる。例えば、上記寸法で、弾性シート30として、ヤング率1GPa付近のゴム材質を利用すると、1次共振周波数750Gzで87dBの音圧を確保することができる。
【0021】
次に、図6及び図7を参照して、振動板14の形状,すなわち、振動板14と支持体26の間隙の形状について検討する。図6(A)は、本実施例の平面図を示す図,図6(B)は、比較例の平面図を示す図である。図6(B)に示す比較例の圧電発音体60は、基本的な構成は、図6(A)に示す圧電発音体10と同様であるが、振動板62の長辺62Bが直線であって、前記圧電発音体10のような鼓状に湾曲した部分がない。このため、比較例では、支持体26と振動板62の間隙64は、直線のスリット状となっている。なお、図6では、間隙形状の違いを容易に理解できるように、弾性シートが省略されているが、実際には、それぞれの間隙28又は64を覆うように、弾性シートが設けられている。
【0022】
図7には、本実施例の圧電発音体10と比較例の圧電発音体60における周波数と音圧レベルの関係が示されている。横軸は、周波数[Hz]を表し、縦軸は音圧レベル(SPL)[dB]を示している。圧電発音体10及び60において、支持体26の外形寸法は、短辺16mm×長辺30mm×厚さ0.7mm,圧電素子18は、3層積層構造(1層18μm),振動板14及び62の外形寸法は、短辺14mm×長辺30mmで共通とした。そして、それぞれの間隙28及び64の長辺方向中央部の幅aを、0.3mm及び0.7mmとしたものについて、間隙の形状,すなわち、振動板の形状による音圧特性の比較を行った。なお、振動板14ないし62と、弾性シート(図示せず)との重なり幅は、約1mmとした。図7の結果を見ると、間隙の中心幅aが0.3mm,0.7mmのいずれの場合であっても、比較例の圧電発音体60と比較して、本実施例の圧電発音体10のほうが、ピーク音圧の向上が見られる。例えば、間隙の中心幅aが0.3mmの場合には、振動板14を鼓形状とした圧電発音体10のほうが、振動板62を長方形とした比較例の圧電発音体60と比べて、周波数1kHzにおいて、約9dBもの差が確認された。このように、振動板形状を鼓状とすることにより、音圧特性の向上が可能であることがわかる。
【0023】
次に、本実施例の圧電発音体10を試作し、実測音圧特性の確認を行った。試作品は、外形寸法が、短辺16mm×長辺30mm×厚さ0.7mmとなるようにし、振動板14として、厚さ30μmの42Ni合金を利用した。また、圧電素子18は、短辺10mm×長辺25mmとし、一層が18μmの圧電層を3層積層し、圧電層20A〜20CとしてPZT系セラミック材料を利用し、電極層22A〜22Dとして、Ag合金を利用した。また、支持体26としては、Al(A5052)を使用した。図8は、前記試作品の周波数と実測音圧の関係を、シミュレーション結果とともに示す図であり、横軸は周波数[Hz],縦軸は音圧レベル(SPL)[dB]を表している。なお、横軸は対数目盛となっている。この結果から、図8に示すように、1次共振周波数700Hzで音圧が約100dBという高音圧が得られることが確認された。
【0024】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)一方の主面に圧電素子18が貼り合わせられた略長方形状の振動板14の長辺側の縁部14Bを鼓状に湾曲形成し、支持体26によって前記振動板短辺14Aを支持する。そして、該支持体26と前記縁部14Bとの間隙28を、前記振動板14とヤング率が異なる弾性シート30で覆うこととしたので、長辺方向の振動板14の動きを柔軟にし、高音圧を確保しながら、1次共振周波数を低減方向に制御できるという効果が得られる。
(2)前記弾性シート30のヤング率と1次共振周波数の関係を明確化することができるため、1次共振周波数を所望の範囲で制御することが可能となる。
(3)圧電発音体10を角形状とすることにより、実装時のデッドスペース低減を図ることができる。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した材料,形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。例えば、前記実施例では、弾性シート30を、長辺側の縁部14Bにのみ設けることとしたが、図9(A)に示す圧電発音体10Aのように、振動板14の外周部全体を覆うような弾性シート50を設けるようにしても同様の効果が得られる。
【0026】
(2)前記実施例では、積層構造の圧電素子18を利用することとしたが、単層構造の圧電素子を用いるようにしてもよい。また、積層構造の場合には、圧電層と電極層の積層数,内部電極の接続パターンなども必要に応じて適宜変更可能である。
(3)前記実施例での電極引き出し構造も一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。
【0027】
(4)前記実施例では、一種類の弾性シート30を用いることとしたが、図9(B)に示す圧電発音体10Bのように、長辺方向の略中央部に、両端側の弾性シート52と異なるヤング率を有する他の弾性シート52を利用し、所望の音圧特性が得られるように適宜調整してよい。また、弾性シート30と弾性シート50を重ねて利用するなど、部分的に弾性シートを複数枚重ねて利用するようにしてもよい。
【0028】
(5)弾性シート30のヤング率を、長辺方向に沿って部分的に変更するようにしてもよい。例えば、長辺方向中央部の弾性シート30の厚みを両端側に比べて薄くしたり、中央部よりも両端側でヤング率が大きくなるような弾性シートを利用したりするなどである。同様に、振動板14のヤング率を、長辺方向に沿って部分的に変更するようにしてもよい。この場合も、弾性シート30の場合と同様に、長辺方向中央部の振動板14の厚みを両端側に比べて薄くしたり、中央部よりも両端側でヤング率が大きくなるようにしたりすることで実現可能である。更に、両端側での弾性シート30と支持体26の重なり幅を広くするようにしてもよい。このように、圧電発音体10の中心部を柔らかくすることで、より一層振動板14の動きを柔軟にすることができる。
【0029】
(6)前記製造手順も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。例えば、前記実施例では、弾性シート30を貼った圧電振動板12を支持体26に取り付けることとしたが、図9(C)に示すように、筐体54が支持体を兼ねるようにしてもよい。すなわち、筐体54の一部に、放音孔58を有する凹状の角穴56を設け、その縁部に、圧電振動板12を固定するようにしてもよい。もちろん、この場合も、振動板14は、短辺14Aのみを筐体54に固定し、長辺側の縁部14Bは、弾性シート30を介して間接的に固定される。
【0030】
(7)本発明の好適な応用例としては、携帯電話,携帯情報端末(PDA),ボイスレコーダ,PC(パソコン)などの各種電子機器のスピーカがあるが、これらに限定されるものではなく、他の公知の各種の電子機器に本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、少なくとも一方の主面に圧電素子が貼り合わせられた略長方形状の振動板の長辺側の縁部を鼓状に湾曲形成し、支持体によって前記振動板短辺を全幅に亘って支持する。そして、該支持体と前記振動板の湾曲した縁部との間隙を、前記振動板とヤング率が異なる可撓性を有する弾性シートで覆って、振動板の長辺方向の動きの自由度を向上させ、高音圧を確保しながら、1次共振周波数を低減方向に制御することとしたので、角形状の圧電発音体の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1を示す外観斜視図である。
【図2】前記実施例1を示す断面図であり、(A)は前記図1を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(B)は前記図1を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図3】前記実施例1の構造を示す分解斜視図である。
【図4】前記実施例1の角形スピーカの周波数と音圧の関係を、弾性シートのヤング率ごとに解析した結果を示す図である。
【図5】前記実施例1の角形スピーカにおける弾性シートのヤング率と1次共振周波数の関係を示す図である。
【図6】前記実施例1と比較例の振動板形状を示す平面図である。
【図7】前記実施例1及び比較例の周波数と音圧の関係を示す図である。
【図8】前記実施例1の試作品の周波数と実測音圧の関係を示す図である。
【図9】本発明の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10,10A,10B:圧電発音体
12:圧電振動板
14:振動板
14A:短辺
14B:縁部
16:突出部
18:圧電素子
20A〜20C:圧電層
22A〜22D:電極層
24A,24B:スルーホール
26:支持体
26A:短辺
26B:長辺
28:間隙
30:弾性シート
32A,32B:導電性樹脂
34A,34B:導体パターン
36:絶縁性シート
50,52:弾性シート
54:筐体
56:角穴
58:放音孔
60:圧電発音体
62:振動板
62A:短辺
62B:長辺
64:間隙
a:長辺方向略中央部での間隙の幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の長辺側の縁部が鼓状に湾曲した略長方形状の振動板と、該振動板の少なくとも一方の主面に貼り合わせられた圧電素子を含む圧電振動板,
前記振動板の湾曲した長辺側の縁部との間に間隙を有するとともに、前記振動板の一対の短辺を、該短辺の幅全体に亘って支持する支持体,
前記振動板の長辺側縁部と前記支持体との間隙を覆う可撓性を有する弾性シート,
を備えるとともに、
前記弾性シートと前記振動板のヤング率が異なることを特徴とする圧電発音体。
【請求項2】
前記弾性シートのヤング率を、1×10〜1×1011Paとしたことを特徴とする請求項1記載の圧電発音体。
【請求項3】
好ましくは、前記弾性シートのヤング率を、1×10〜1×1011Paとしたことを特徴とする請求項2記載の圧電発音体。
【請求項4】
前記圧電素子の短辺の長さをw,長辺方向略中央部における前記間隙の幅をaとしたときに、a=w/46〜w/10の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項5】
前記振動板または弾性シートのヤング率を、長手方向中央部よりも、その両端側で大きくしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項6】
前記振動板または弾性シートの厚さを、前記振動板の長手方向両端側よりも、長手方向中央部で薄くしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の圧電発音体を利用したことを特徴とする電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−245975(P2006−245975A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58370(P2005−58370)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】