説明

圧電発音体

【課題】製造に手間がかからずコストを低減し、歩留まりを向上できる圧電発音体を提供する。
【解決手段】交流電圧の印加により屈曲振動し発音するユニモルフ型の圧電発音体100であって、接着側主面に、駆動電極および他方の駆動電極112の取り出し電極116を有する圧電素子110と、一対の導体パターン124、126を有する主面で圧電素子110に接着される配線基板120と、配線基板120の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレーム130とを備え、接着側主面の駆動電極116および取り出し電極と一対の導体パターン124、126との間の各導通は、接着により取られている。これにより、製造時に導線をハンダ付けする必要がなくなり、容易に導通がとれ作業コストを低減できる。また、歩留まりを向上できる。また、接続のバラツキを低減し、発音体の音響的特性を一定に維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧が印加されることで屈曲振動し発音する圧電発音体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を振動させることにより音を発生させる圧電発音体が、用途に応じ、ブザー、サウンダー、レシーバー等に応用されている。図16(a)、(b)は、従来のユニモルフ型の圧電発音体1100を示す正面図および断面図である。圧電発音体1100は金属板1120の片面に圧電素子1110が貼り付けられた構造を有している。金属板1120と圧電素子1110は、いずれも円板状である。
【0003】
金属板1120は、フレーム1130に固着されている。フレーム1130上に形成された2つの端子1141、1142には電圧が印加される。端子1142と金属板1120とを接続する導線1152および金属板1120と圧電素子1110上の第1電極1116との接触経路が設けられている。その一方で、端子1141と圧電素子1110上の第2電極1112とを接続する導線が設けられている。圧電素子1110に印加され、それにより、圧電素子1110が面方向に伸縮することにより、圧電素子1110が固着された金属板1120全体が屈曲し音が発生する。
【0004】
図17(a)、(b)は、従来のバイモルフ型の圧電発音体1200を示す正面図および断面図である。圧電発音体1200は金属板1220の両面に2枚の圧電素子1210、1260が貼り付けられた構造を有している。金属板1220および圧電素子1210、1260は、略長方形状である。圧電発音体1200では2枚の圧電素子1210、1260の一方が面方向に伸長するとき、もう一方が面方向に収縮し、圧電素子1210、1260が固着された金属板1220全体が屈曲し音が発生する。
【0005】
また、バイモルフ型の圧電発音体には、音響特性のバラツキを防止しようとするものも提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1記載の圧電型電気音響変換器は、一方の主面に外部電極を備えた一対の圧電素子と、これらの間に配設され絶縁基板の両主面に貼着された圧電振動板と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部を備えた支持体とを備えている。そして、振動板の縁部近傍を全周にわたって支持体の環状の支持部に均一に接着することで、安定して所定の音響特性を得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−17433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16、図17に示すような圧電発音体では、フレーム上の端子と圧電素子とを導通させるために導線が多用されており、導線を用いた接続には、一般的に手動によるハンダ付けが採用されている。このような手作業は、手間がかかりコストアップの一因となる。また、手ハンダであるため、ハンダ量やハンダ位置のバラツキが大きく、発音体としての特性(音圧、共振周波数等)のバラツキの増大に繋がる。
【0008】
一方、特許文献1記載の圧電型電気音響変換器は、圧電振動板の構成上のバランスをとり、振動板の縁部近傍を全周にわたって支持体の環状の支持部に均一に接着しており、音響特性を安定させているが、精密に製造する必要があり、製造の手間がかかりコスト増加や歩留まり低下を招きかねない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、音響特性のバラツキを抑えつつ、製造に手間がかからずコスト低減、歩留まり向上を可能にする圧電発音体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電発音体は、交流電圧の印加により屈曲振動し発音するユニモルフ型の圧電発音体であって、接着側主面に、駆動電極および他方の駆動電極の取り出し電極を有する圧電素子と、一対の導体パターンを有する主面で前記圧電素子に接着される配線基板と、前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、前記接着側主面の駆動電極および取り出し電極と前記一対の導体パターンとの間の各導通は、前記接着により取られていることを特徴としている。
【0011】
これにより、製造時に導線をハンダ付けする必要がなくなり、容易に導通がとれ作業コストを低減できる。また、作業が容易になるため歩留まりを向上できる。また、接続のバラツキを低減し、発音体の音響的特性を一定に維持できる。
【0012】
(2)また、本発明の圧電発音体は、交流電圧の印加により屈曲振動し発音するバイモルフ型の圧電発音体であって、接着側主面に、駆動電極および他方の駆動電極の取り出し電極を有する一対の圧電素子と、前記一対の圧電素子の間に設けられ、一対の導体パターンを有する両主面で前記一対の圧電素子に接着される配線基板と、前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、前記接着側主面の駆動電極および取り出し電極と前記一対の導体パターンとの間の各導通は、前記接着により取られていることを特徴としている。
【0013】
これにより、製造時に導線をハンダ付けする必要がなくなり、容易に導通がとれ作業コストを低減できる。また、作業が容易になるため歩留まりを向上できる。また、接続のバラツキを低減し、発音体の音響的特性を一定に維持できる。
【0014】
(3)また、本発明の圧電発音体は、交流電圧の印加により屈曲振動し発音するユニモルフ型の圧電発音体であって、接着側主面に一方の駆動電極を有する圧電素子と、一方の導体パターンを有する主面で前記圧電素子に接着される配線基板と、前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、前記一方の駆動電極と前記一方の導体パターンとの間の導通は、前記接着により取られており、前記圧電素子の他方の駆動電極と前記配線基板の他方の導電パターンとの導通は、導線または導電性接着剤により取られていることを特徴としている。
【0015】
これにより、容易に導通がとれ作業コストを低減できる。また、作業が容易になるため歩留まりを向上できる。また、接続のバラツキを低減し、発音体の音響的特性を一定に維持できる。
【0016】
(4)また、本発明の圧電発音体は、交流電圧の印加により屈曲振動し発音するバイモルフ型の圧電発音体であって、接着側主面に一方の駆動電極を有する一対の圧電素子と、前記一対の圧電素子の間に設けられ、一方の導体パターンを有する両主面で前記一対の圧電素子に接着される配線基板と、前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、前記一方の駆動電極と前記一方の導体パターンとの間の導通は、前記接着により取られており、前記一対の圧電素子の他方の駆動電極と前記配線基板の他方の導電パターンとの導通は、導線または導電性接着剤により取られていることを特徴としている。
【0017】
これにより、容易に導通がとれ作業コストを低減できる。また、作業が容易になるため歩留まりを向上できる。また、接続のバラツキを低減し、発音体の音響的特性を一定に維持できる。
【0018】
(5)また、本発明の圧電発音体は、前記接着により取られた導通は、前記圧電素子の電極と前記配線基板の導体パターンとが直接接触することで行われていることを特徴としている。これにより、単純かつ安価に接着し、電極と導体パターンとの導通を取ることができる。
【0019】
(6)また、本発明の圧電発音体は、前記圧電素子は前記配線基板と異方性導電接着剤で接着され、前記圧電素子の電極は、前記配線基板の導体パターンと異方性導電接着剤を介して導通が取られていることを特徴としている。これにより、導体パターンの面積が小さく直接接触では導通が取れ難い場合には、異方性導電接着剤を用いることで容易に導通を取ることができる。
【0020】
(7)また、本発明の圧電発音体は、前記配線基板は、前記導体パターンを有する主面の反対側の主面に接着された金属板を有することを特徴としている。これにより、配線基板の絶縁層よりヤング率の大きい金属板を追加することで、圧電発音体の共振周波数を上げることができ、高い周波数の音を発生させることができる。
【0021】
(8)また、本発明の圧電発音体は、前記配線基板は、厚み方向中央に金属板を有することを特徴としている。これにより、配線基板の絶縁層よりヤング率の大きい金属板を追加することで、圧電発音体の共振周波数を上げることができ、高い周波数の音を発生させることができる。
【0022】
(9)また、本発明の圧電発音体は、前記配線基板上に複数の前記圧電素子が一次元または二次元的な配列で配置され、前記複数の圧電素子のそれぞれに設けられた駆動電極および他方の駆動電極の取り出し電極は、前記配線基板上の一対の導体パターンによって並列に導通され、前記各圧電素子の間には配線基板の厚み方向の変位を拘束するフレームを備えることを特徴としている。このように圧電素子が一次元または二次元的な配列で配置されるため、各圧電素子およびこれに接着する配線基板から発生される音波は建設的に干渉することで、指向性の高い音を発生させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、音響特性のバラツキを抑えつつ、製造に手間がかからずコスト低減、歩留まり向上を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図2】圧電素子の(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図である。
【図3】配線基板の(a)平面図および(b)側面図である。
【図4】第2の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図5】圧電素子の(a)平面図、(b)側面図および(c)底面図である。
【図6】第3の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図7】第1圧電素子の(a)平面図、(b)断面図、第2圧電素子の(c)平面図、(d)断面図である。
【図8】配線基板の(a)平面図、(b)側面図および(c)底面図である。
【図9】第4の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図10】第5の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図11】第6の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図12】配線基板の平面図である。
【図13】第7の実施形態に係る圧電発音体の平面図である。
【図14】第8の実施形態に係る圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図15】配線基板の平面図である。
【図16】従来のユニモルフ型の圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【図17】従来のバイモルフ型の圧電発音体の(a)平面図および(b)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1(a)(b)は、圧電発音体100の平面図および断面図である。図1に示すように、圧電発音体100は、ユニモルフ型であって、交流電圧の印加により屈曲振動し発音する。圧電発音体100は、圧電素子110、配線基板120およびフレーム130で構成されている。以下、各部について詳しく説明する。
【0027】
図2(a)〜(c)は、圧電素子の平面図、側面図、底面図である。圧電素子110は、円板状に形成され、圧電体111、駆動電極112、側面電極113、取り出し電極114、駆動電極116を有している。圧電体111は、駆動電極間に印加される交流電圧を伸縮に変換する圧電材料で構成されている。用いられる圧電材料にはたとえばPZTやチタン酸バリウムが挙げられる。圧電体111は、予め厚み方向について分極処理がなされている。駆動電極112は、側面電極113を介して反対側の主面118の取り出し電極114に接続されている。接着側主面118には、駆動電極116および他方の駆動電極112の取り出し電極114が設けられている。
【0028】
図3(a)(b)は、配線基板120の平面図および側面図である。配線基板120は、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ(ガラス布基材エポキシ樹脂)、ガラスポリイミド(ガラス布基材ポリイミド樹脂)等の絶縁材料により形成された弾性を有する基板本体121とその基板本体121の一方の主面128a上に設けられた導体パターン124、126を有する。導体パターン124、126は、たとえば銅メッキ(厚み数十μm)で形成され、基板本体121の一方の主面128aに一対で設けられている。そして、配線基板120は、導体パターン124、126の両方が設けられた主面128aで圧電素子110に接着されている。
【0029】
圧電発音体100において、接着側主面118の駆動電極116および取り出し電極114のそれぞれは、接着により一対の導体パターン126、124のそれぞれに導通されている。これにより、製造時に導線をハンダ付けで接続する必要がなくなり、手間がかからず作業コストを低減できる。また、後述のフレーム130が配線基板120の振動の支点を固定しているときには、接続のバラツキを低減し、発音体の特性を一定に維持できる。
【0030】
圧電素子110と配線基板120とは、たとえば嫌気性硬化型エポキシ接着剤により密着状態で接着されている。その結果、圧電素子110の取り出し電極114は、配線基板120の導体パターン124と直接接触し導通している。また、駆動電極116は、配線基板120の導体パターン126と直接接触し導通している。これにより、単純かつ安価な接着で、電極と導体パターンとの導通を取ることができる。
【0031】
このように配線基板120上に圧電素子110を接着するだけで電気的な導通を取ることができるので、作業コストを抑えることができる。たとえば、このような接着はスクリーン印刷で配線基板120上の所定箇所に接着剤を塗布しておき、圧電素子110を配置し、圧着(場合により熱圧着)することで接着することができる。このような方法は特に複数の接着を一度に行う場合に有効である。このような構成の圧電発音体100において、導体パターン124と導体パターン126との間に交流信号を印加すると、その電圧に応じて圧電素子110および配線基板120が屈曲振動(ユニモルフ構造の振動)し、それによって音が発生する。
【0032】
圧電素子110は配線基板120と異方性導電接着剤で接着されていてもよい。異方性導電接着剤は、一定の方向(圧着方向)にのみ電気的な接続が可能な接着剤であり、たとえば異方向性導電フィルム(ACF)、異方性導電ペースト(ACP)である。異方向性導電フィルムは、フィルム状の絶縁樹脂材料の中に微細な導電性粒子を分散させた素材で接着と同時に電極間に鋏まれた導電粒子を介して縦方向には電気的接続、横方向には絶縁の機能を持つ。
【0033】
このような異方性導電接着剤を用いた場合、配線基板120の電極形状に合わせた異方性導電接着剤を準備する必要はなく、配線基板一面に異方性導電接着剤を配置して接着できる。圧電素子110の駆動電極116および取り出し電極114は、配線基板120の導体パターン126、124との間で異方性導電接着剤を介して導通を取ることができる。これにより、導体パターン126、124の面積が小さく直接接触では電気的に接続し難い場合でも、容易に導通を取ることができる。
【0034】
なお、圧電素子110と配線基板120との導通のうち、一部の導通のみ接着で行い、他の導通は導線とハンダを用いて行うか、導電接着剤で行うこととしてもよい。
【0035】
フレーム130は、ポリカーボネートやABS等の樹脂やよりヤング率の高い金属等で形成され、圧電素子110の周囲で配線基板120を固定している。フレーム130は、配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束する。フレーム130は、モールド等の液状硬化樹脂で形成することもできる。フレーム130の固定により圧電素子110とその下の配線基板120を所望の振動数で振動させることが可能になる。
【0036】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、圧電素子110の駆動電極112を、側面電極113を介して取り出し電極114まで取出しているが、バイア電極を用いてもよい。図4(a)(b)は、バイア電極で電極の取出しを行う圧電発音体200の平面図および断面図である。圧電発音体200は、圧電素子210、配線基板120およびフレーム130で構成されている。
【0037】
図5(a)〜(c)は、圧電素子210の平面図、側面図および底面図である。圧電素子210は、圧電体211、駆動電極212、バイア電極213、取り出し電極214、駆動電極216を有している。圧電体211は、圧電材料で構成され、厚み方向について分極処理がなされている。駆動電極212は、バイア電極213を介して反対側の主面218の取り出し電極214に接続されている。バイア電極213は、圧電体211を貫通するバイアホールを開けて導電材料を詰めることで作られる。接着側主面218には、駆動電極216および取り出し電極214が設けられている。
【0038】
[第3の実施形態]
上記の実施形態では、圧電発音体は、圧電素子を配線基板の一方側にのみ備えるユニモルフ型であるが、配線基板の両側に圧電素子を設けたバイモルフ型であってもよい。図6(a)(b)は、バイモルフ型の圧電発音体300の平面図および断面図である。図6に示すように、圧電発音体300は、バイモルフ型であって、交流電圧の印加により屈曲振動し発音する。圧電発音体300では、配線基板120の両主面に一対の圧電素子110、360が接着されている。
【0039】
図7(a)〜(d)は、それぞれ一方の圧電素子の平面図、断面図、他方の圧電素子の平面図、断面図である。図7(a)(b)に示すように、圧電素子110は、接着側主面118に、駆動電極116および他方の駆動電極112の取り出し電極114を有する。図7(c)(d)に示すように、圧電素子360は、接着側主面368に、駆動電極366および他方の駆動電極362の取り出し電極364を有する。
【0040】
駆動電極116および取り出し電極114のそれぞれは、圧電素子110の接着側主面118に設けられている。また、一対の導体パターン324a、326aは配線基板320の一方の主面328aに設けられている。一方、駆動電極366および取り出し電極364のそれぞれは、圧電素子360の接着側主面368に設けられている。
【0041】
図8(a)〜(c)は、配線基板320の平面図、側面図および底面図である。配線基板320は、一対の圧電素子110、360の間に設けられ、一対の導体パターン324a、326aを有する。配線基板320は、両主面328a、328bで一対の圧電素子110、360に接着される。圧電素子110と圧電素子360は同じ形状であるが、圧電素子110と圧電素子360では分極方向が逆である。また、配線基板320の絶縁材料で形成された基板本体321の両主面328a、328bに形成された導体パターンは、それぞれバイア導体により接続されている。すなわち、導体パターン324aと導体パターン324bとの間、導体パターン326aと導体パターン326bとの間は、それぞれバイア導体325、327により接続されている。
【0042】
そして、導体パターンが形成された配線基板120の両面に圧電素子110、360が接着されることにより、導体パターン324a、324bと圧電素子110の取り出し電極114、圧電素子360の取り出し電極364が導通されている。同様に、導体パターン326a、326bと圧電素子110の駆動電極116、圧電素子360の駆動電極366が導通されている。
【0043】
これにより、製造時に導線をハンダ付けする必要がなくなり、手間がかからずコストを低減できる。また、接続のバラツキを低減し、発音体の特性を一定に維持できる。このようにして、容易に導通がとれ、作業コストを低減できる。なお、圧電素子110と配線基板320との導通のうち、一部の導通のみ接着で取り、他の導通は導線とハンダを用いて取るか、導電接着剤で取ることとしてもよい。
【0044】
このような構成の圧電発音体300において、導体パターン324aと導体パターン326aとの間に交流信号を印加する。そして、その電圧に応じて圧電素子110が面方向に伸張し圧電素子110が面方向に収縮することにより、圧電素子110、360および配線基板320が屈曲振動(バイモルフ構造の振動)し、それによって音が発生する。
【0045】
[第4の実施形態]
上記の実施形態では、配線基板120を振動板として用いているが、高周波に対応できるように配線基板120に高いヤング率の板が接着されたものを振動板として用いてもよい。図9(a)(b)は、圧電発音体400の平面図および断面図である。図9(a)(b)に示すように、ユニモルフ型の圧電発音体400において、配線基板420は、一対の導体パターンを有する主面128aの反対側の主面128bに接着された金属板440を有する。
【0046】
金属板440は、たとえばガラスエポキシ等の絶縁材料よりもヤング率の大きいアルミニウムや銅等の金属で形成されている。これにより、配線基板420の基板本体421よりヤング率の大きい金属板440を接着することで、圧電発音体400の共振周波数を上げることができ、高い周波数の音を発生させることができる。金属板440の厚みは、0.3mm以上1mm以下が好ましい。なお、金属板440に代えて、セラミックス板を用いてもよい。たとえば、アルミナ板であれば安価で入手しやすい。
【0047】
配線基板120に金属板440を接着した振動板は、配線基板120に金属板440を貼り付けて作製してもよいし、予め金属板440の表面に絶縁層と導体パターンを形成して金属ベース配線基板として作製してもよい。さらに、配線基板120に金属板440を貼り付けるのではなく、メッキまたは蒸着で膜状の金属板440を形成してもよい。
【0048】
[第5の実施形態]
図10(a)(b)は、圧電発音体500の平面図および断面図である。上記の実施形態では、配線基板120の主面128bに金属板440を接着しているが、配線基板120の厚み方向中央に金属板を設けてもよい。配線基板120は、厚み方向中央に金属板540を有する。図10に示すように、金属板540が配線基板120に埋め込まれている。これにより、配線基板の絶縁層よりヤング率の大きい金属板540を追加することで、圧電発音体の共振周波数を上げることができ、高い周波数の音を発生させることができる。特に圧電発音体500がバイモルフ型である場合には配線基板120の厚み方向中央に金属板540が設けられていることが好ましい。
【0049】
なお、配線基板120の厚み方向中央に金属板540を設けた振動板は、配線基板120の厚み方向中央に金属板540を埋め込んで作製してもよいが、予め金属板540の両主面に絶縁層と導体パターンを形成して金属ベース配線基板として作製してもよい。
【0050】
[第6の実施形態]
上記の実施形態では、配線基板の同一主面上には単一の圧電素子が設けられているが、複数の圧電素子が1次元に規則性を有する配列で配置されていてもよい。図11(a)(b)は、圧電素子が1次元に配列された圧電発音体600の平面図および断面図である。図11(a)(b)に示すように、圧電発音体600は、複数の圧電素子110、配線基板620およびフレーム630で構成されている。
【0051】
図12は、複数の圧電素子110および配線基板620の平面図である。図12に示すように、配線基板620上で圧電素子110は、直線上に同一周期で配置され、接着されている。このように圧電素子110が一次元的な配列で配置されるため、各圧電素子110およびこれに接着する配線基板620から発生される音波は建設的に干渉する。その結果、指向性の高い音を発生させることができる。
【0052】
配線基板620は、一対の導体パターン624、626を有しており、複数の圧電素子110のそれぞれに設けられた駆動電極116および他方の駆動電極112の取り出し電極114は、配線基板620上の一対の導体パターン624、626によって並列に導通されている。配線基板620の両主面で、フレーム630がそれぞれの圧電素子の110周囲を囲むように配線基板620に接着されている。フレーム630は、空隙を形成する円形の辺縁631を有し、この辺縁631が各圧電素子110の間では配線基板620の厚み方向の変位を拘束する。これにより、各圧電素子110による振動は、円形の辺縁631では制限され、各圧電素子110の位置では配線基板620を自由に振動させ、各振動位置で独立して音波を発生させる。なお、本実施形態では、フレーム630は配線基板620の両主面に配置されているが、配線基板の一方の主面側だけに配置されても構わない。
【0053】
このように構成された圧電発音体600の導通パターン624、626の間に交流電圧が印加されると、それぞれの圧電素子110およびこれに接する配線基板620が屈曲振動し、それぞれから音を発生する。そして、それぞれの圧電素子110およびこれに接する配線基板620から発生される音波は、建設的に干渉することにより、圧電素子が配列された方向に対しては指向性の高い音を発生させることができる。
【0054】
[第7の実施形態]
上記の実施形態では、フレーム630が円形の空隙を有するが、正方形の空隙を有してもよい。図13は、圧電発音体700の平面図である。図13に示すように、圧電発音体700は、複数の圧電素子110、配線基板620およびフレーム730で構成されている。圧電素子110は、直線上に同一周期で配置されている。配線基板620は、一対の導体パターン624、626を有しており、複数の圧電素子110のそれぞれに設けられた駆動電極116および他方の駆動電極112の取り出し電極114は、配線基板620上の一対の導体パターン624、626によって並列に導通されている。
【0055】
フレーム730は、空隙を形成する正方形の辺縁731を有し、この辺縁731が各圧電素子110の間では配線基板620の厚み方向の変位を拘束する。各圧電素子110による振動は、円形の辺縁731では制限され、各圧電素子110の位置では配線基板620を自由に振動させ、各振動位置で独立して音波を発生させる。このように、空隙を正方形とする方が円形とするより振動の共振ピークがブロードになり、各圧電素子110や接着等のバラツキによる振動の周波数特性への影響を低減し、音響特性を安定させることができる。
【0056】
[第8の実施形態]
上記の実施形態では、配線基板の同一主面上に複数の圧電素子が1次元に配列されているが、2次元に配列されていてもよい。図14(a)(b)は、圧電発音体800の平面図および断面図である。また、図15は、配線基板820の平面図である。
【0057】
図14(a)(b)に示すように、圧電素子110は、2次元的に同一周期で配置されている。このように圧電素子110が2次元的な配列で配置されるため、各圧電素子110およびこれに接着する配線基板820から発生される音波は建設的に干渉する。その結果、指向性の高い音を発生させることができる。
【0058】
なお、図14に示す例では、複数の圧電素子110は、2次元上で六方格子(最密充填)の位置に配列されているが、直角直交格子の位置に配置されてもよい。ただし、六方格子の配置とした方が、配置された平面上で方向による偏りが少ないため、音響特性上は好ましい。
【0059】
配線基板820は、一対の導体パターン824、826を有しており、複数の圧電素子110のそれぞれに設けられた駆動電極116および他方の駆動電極112の取り出し電極114は、配線基板820上の一対の導体パターン824、826によって並列に導通されている。フレーム830は、空隙を形成する円形の辺縁831を有し、この辺縁831が各圧電素子110の間では配線基板820の厚み方向の変位を拘束する。これにより、各圧電素子110による振動は、円形の辺縁831(支点の位置)では制限され、各圧電素子110について配線基板820を自由に振動させ、各振動位置で独立して音波を発生させる。
【0060】
フレーム830の空隙は円形であるが、正方形であってもよい。これにより、空隙が円形の場合に比べて各振動の共振ピークがブロードになり、音響特性を安定させることができる。
【0061】
なお、以上の実施形態では、圧電素子の側面電極またはバイア電極を用い接着用主面の取り出し電極への導通を取っているが、ペースト状の導電接着剤を塗布して導通させてもよい。また、以上の実施形態では、製造を容易にし、コストを低減するためには単板の圧電素子を用いるのが好ましいが、積層型の圧電素子を用いることも可能である。また、以上の実施形態では、圧電素子の形状が円板であるが、矩形板状であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100、200、300、400、500、600、700、800 圧電発音体
110、210、360 圧電素子
111、211 圧電体
112、212、362 駆動電極
113 側面電極
114、214、364 取り出し電極
116、216、366 駆動電極
118、218、368 圧電素子の接着側主面
120、320、420、620、820 配線基板
121、321、421 基板本体
124、324a、324b、326a、326b、624、626、824、826 導体パターン
126、326a、326b 導体パターン
128a、128b、328a、328b 配線基板の主面
130、630、730、830 フレーム
213 バイア電極
325、327 バイア導体
440、540 金属板
631、731、831 フレームの辺縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧の印加により屈曲振動し発音するユニモルフ型の圧電発音体であって、
接着側主面に、駆動電極および他方の駆動電極の取り出し電極を有する圧電素子と、
一対の導体パターンを有する主面で前記圧電素子に接着される配線基板と、
前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、
前記接着側主面の駆動電極および取り出し電極と前記一対の導体パターンとの間の各導通は、前記接着により取られていることを特徴とする圧電発音体。
【請求項2】
交流電圧の印加により屈曲振動し発音するバイモルフ型の圧電発音体であって、
接着側主面に、駆動電極および他方の駆動電極の取り出し電極を有する一対の圧電素子と、
前記一対の圧電素子の間に設けられ、一対の導体パターンを有する両主面で前記一対の圧電素子に接着される配線基板と、
前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、
前記接着側主面の駆動電極および取り出し電極と前記一対の導体パターンとの間の各導通は、前記接着により取られていることを特徴とする圧電発音体。
【請求項3】
交流電圧の印加により屈曲振動し発音するユニモルフ型の圧電発音体であって、
接着側主面に一方の駆動電極を有する圧電素子と、
一方の導体パターンを有する主面で前記圧電素子に接着される配線基板と、
前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、
前記一方の駆動電極と前記一方の導体パターンとの間の導通は、前記接着により取られており、
前記圧電素子の他方の駆動電極と前記配線基板の他方の導電パターンとの導通は、導線または導電性接着剤により取られていることを特徴とする圧電発音体。
【請求項4】
交流電圧の印加により屈曲振動し発音するバイモルフ型の圧電発音体であって、
接着側主面に一方の駆動電極を有する一対の圧電素子と、
前記一対の圧電素子の間に設けられ、一方の導体パターンを有する両主面で前記一対の圧電素子に接着される配線基板と、
前記配線基板の厚み方向の変位を振動の支点位置で拘束するフレームと、を備え、
前記一方の駆動電極と前記一方の導体パターンとの間の導通は、前記接着により取られており、
前記一対の圧電素子の他方の駆動電極と前記配線基板の他方の導電パターンとの導通は、導線または導電性接着剤により取られていることを特徴とする圧電発音体。
【請求項5】
前記接着により取られた導通は、前記圧電素子の電極と前記配線基板の導体パターンとが直接接触することで行われていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項6】
前記圧電素子は前記配線基板と異方性導電接着剤で接着され、
前記圧電素子の電極は、前記配線基板の導体パターンと異方性導電接着剤を介して導通が取られていることを特徴とする請請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項7】
前記配線基板は、前記導体パターンを有する主面の反対側の主面に接着された金属板を有することを特徴とする請求項1または請求項3記載の圧電発音体。
【請求項8】
前記配線基板は、厚み方向中央に金属板を有することを特徴とする請求項2または請求項4記載の圧電発音体。
【請求項9】
前記配線基板上に複数の前記圧電素子が一次元または二次元的な配列で配置され、
前記複数の圧電素子のそれぞれに設けられた駆動電極および他方の駆動電極の取り出し電極は、前記配線基板上の一対の導体パターンによって並列に導通され、
前記フレームは、前記各圧電素子の間に設けられていることを特徴とする請請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電発音体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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