圧電素子を用いた風力発電装置
【課題】構造が比較的単純で、高い効率で発電が可能で、設置場所の制限も少なく集積化が容易な風力発電装置を提供すること。
【解決手段】屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材と、前記平板状の圧電素子部材の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板と、前記平板状の圧電素子部材の、前記受風板が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材と、を有する発電機構、並びに、前記受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、前記受風板を周期的に変位させる風力遮断機構と、を具備することを特徴とする風力発電装置。
【解決手段】屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材と、前記平板状の圧電素子部材の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板と、前記平板状の圧電素子部材の、前記受風板が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材と、を有する発電機構、並びに、前記受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、前記受風板を周期的に変位させる風力遮断機構と、を具備することを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用い、風力を利用して発電する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンな発電方法として風力発電が注目されるようになってきている。一般的な風力発電装置としては、プロペラを風力で回転させ、電磁誘導により発電するものが知られているが、これには、装置が大型であってコストが高いことや、設置場所が制限されること、また、所定の設置間隔を取らなければ発電効率が低下すること等の問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、圧電素子を用いた発電装置が提案されている。例えば、特許文献1には、空気の渦流を発生させて振動板を振動させ、その振動を圧電素子に加えて発電する方法が記載されている。しかしながら、この構造では圧電素子に加わる振動の変位は限られたものになり、大きな電力は得られない場合があった。
【0004】
また、特許文献2には、フレーム部材と、フレーム部材に支持された圧電振動板と、振動板の表面に取り付けられた受風部材とを備え、風を受けて振動板に屈曲運動を生じさせることにより発電する風力発電装置が記載されている。しかしながら、この構造では、振動板の振動がフレーム部材によって抑制され、発電量が十分に得られないという問題があった。一方、振動抑制を小さくするためにフレーム部材を大きくすると、設置面積が広くなってしまうという問題があった。
【0005】
更に、特許文献1と特許文献2に共通する問題点として、これらの装置は、風が脈動しているか、または定常流であっても羽根の後方でカルマン渦を形成する場合しか振動しないので、駆動効率が低いという問題もあった。
【0006】
風の脈動や羽根の後方での渦だけに依存しない装置として、特許文献3には、長尺状でその幅方向に所定角度で二つ折りされた形状を有し、その長手方向の一端が固定された状態で風力を受けた際に所定のねじれ振動を生ずるように、その幅が長手方向において変化している受風翼と、前記受風翼の振動によって発電する発電部とを具備する風力発電装置が記載されている。そして、発電部には、屈曲することによって発電する圧電素子が使用されている。しかしながら、この構造では、風自体を制御していないため、受風翼に取り付けられた圧電素子に効率的な振動を常に与えられない場合があった。
【0007】
また、特許文献4には、断面形状が略V字状等の受風翼を支持する支持棒をその軸芯回りに回転自在に保持する軸保持部材と、この軸保持手段が取り付けられる振動板と、風力によって振動板に発生する振動を利用して発電する発電機構を具備する風力発電装置が記載されている。そして、振動板には圧電素子は貼り付けられており、圧電素子が屈曲することによって発電できる構造が記載されている。しかしながら、この構造でも、風自体を制御していないため、振動板に貼り付けられた圧電素子に効率的な振動を常に与えられない場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−303726号公報
【特許文献2】特開2001−231273号公報
【特許文献3】特開2005−273644号公報
【特許文献1】特開2006−291842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、構造が比較的単純で、高い効率で発電が可能で、設置場所の制限も少なく集積化が容易な風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、圧電素子部材と風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板とを有する発電機構に対し、更に、かかる受風板にあたる風を周期的に遮断する風力遮断機構を具備させることによって、風力エネルギーを高い効率で電気エネルギーに変換することが可能であることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材と、
前記平板状の圧電素子部材の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板と、
前記平板状の圧電素子部材の、前記受風板が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材と、
を有する発電機構、並びに、
前記受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、前記受風板を周期的に変位させる風力遮断機構と、
を具備することを特徴とする風力発電装置を提供するものである。
【0012】
また本発明は、前記風力遮断機構が、
前記受風板にあたる風を遮断する風遮断板と、
前記風遮断板の一端を保持し、前記受風板にあたる風を周期的に遮断するように、前記風遮断板を公転させる回転保持部材と、
を有するものである上記風力発電装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、時間と共に風力がどのように変化しても、受風板を効率的に振動させることができ、また、かかる受風板の振動をダイレクトに圧電素子部材に伝達させることにより、高い発電効率を実現することができ、構造が比較的単純であって設置場所の制限も少なく集積化が容易な風力発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施の形態のみに限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
【0015】
図1は、本発明の風力発電装置の基本的な構成を示す概略図であり、発電機構1と風力遮断機構2が示されている。発電機構1は、少なくとも、
(a)屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材11
(b)前記平板状の圧電素子部材11の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材11を屈曲させる受風板12
(c)前記平板状の圧電素子部材11の、前記受風板12が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材13
によって構成されている。
【0016】
このうち、平板上の圧電素子部材11は、薄手の圧電素子を金属板等に貼り合わせたモノモルフ構造を有するものであっても、2枚の圧電素子を貼り合わせたバイモルフ構造を有するものであってもよいが、発電能力の点でバイモルフ構造が好ましい。また、1個の圧電素子部材11を構成する圧電素子111は複数個であってもよい。
【0017】
図2は、2枚の圧電素子111を用いた圧電素子部材11を示すものである。1つの圧電素子部材11は1枚の圧電素子111からなっていてもよいが、複数枚の圧電素子111からなっていてもよい。
【0018】
図1において、受風板12は、前記平板状の圧電素子部材11の一端に取り付けられており、風力を受けて変位する。すなわち、受風板12は、風を受けることによって風下側に変位し、風が遮断されると風上側に変位して元に戻るようになっている。この変位を前記圧電素子部材11に伝え、圧電素子部材11を屈曲させる。受風板12は、風を受けたときの圧電素子部材11の屈曲の量が大きくなるよう、圧電素子部材11に取り付けられている。
【0019】
受風板12の形状については、風力によって効率的に圧電素子部材11を屈曲させることができれば特に限定はなく、長方形板状や円形板状等何れでもよい。受風板12の面積についても特に限定はないが、圧電素子部材11と同等かそれ以上の面積を有していることが、弱い風によっても圧電素子部材11をより屈曲させることができるため好ましい。また、受風板12の面積は、風遮断板22の面積と同等又はそれ以下であることが好ましい。受風板12の材質も特に限定はなく、金属又は樹脂が好適に用いられる。
【0020】
圧電素子部材11と受風板12は一体となって、ある特定の固有振動数を有する。風力遮断機構2の説明において後述するように、風力遮断機構2中の風遮断板22によって受風板12にあたる風が周期的に遮断されるが、その遮断の周期の逆数である振動数が、「受風板が取り付けられた前記圧電素子部材」全体としての固有振動数に等しくなるようにすることが、圧電素子部材11の効率的な屈曲を実現し、延いては効率よく発電させるために好ましい。従って、圧電素子部材11と受風板12の質量や形態、すなわち材質、形状等は、それらが一体となったものが有する固有振動数も勘案して決められる。
【0021】
前記平板状の圧電素子部材11の、前記受風板12が取り付けられていない側は、固定保持部材13によって固定されている。固定保持部材13の形態は特に限定はなく、図1に示すような直方体であってもよいし、図3や図4に示すように、円盤状であっても、棒状であってもよい。また、材質も圧電素子部材11を保持することができる所定の硬さを有していれば特に限定されず、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス材料、これらの材料を含有する複合材料等を用いることができる。固定保持部材13は、圧電素子部材11が動かないように固定するものであり、圧電素子部材11の屈曲の力を逃がさないように弾性は高いことが好ましく、風力によって実質的に変位を受けずに静止していることが好ましい。
【0022】
受風板12が取り付けられた圧電素子部材11は、1個だけが固定保持部材13に固定されていてもよいが、装置の大きさと発電量の兼合いを考慮すると、2個以上が固定されていることが好ましい。図1に示すように、圧電素子部材11は、固定保持部材13の表面に略垂直に固定されていてもよいし、図4に示すように、円盤状の固定保持部材13の円周上に固定されていてもよいし、放射線状に伸びた棒状の固定保持部材13の先端に固定されていてもよい。
【0023】
図1における風力遮断機構2は、受風板12にあたる風を周期的に遮断することによって、受風板12を周期的に変位させ、その変位によって圧電素子部材11を周期的に振動させるようになっている。
【0024】
風力遮断機構2の構造は特に限定はなく、開閉するシャッターによって風を周期的に遮断してもよいし、風遮断板22を移動させることによって風を周期的に遮断してもよいし、図3や図4に示すような構造によって、風遮断板22を、ある点を中心に板面上平行に公転させることによって風を周期的に遮断してもよい。また、開閉、移動、公転等の風力遮断機構2の駆動は、外部電力等によって行ってもよいし、風力によって行ってもよい。風力遮断機構2の駆動に外部電力等を消費しても、風のエネルギーが加わることによって、外部電力等の消費エネルギーよりも大きい電気エネルギーが得られるが、より好ましくは、風力遮断機構2の駆動自体にも風力エネルギーを用いることである。
【0025】
以下、本発明の風力発電装置の好ましい形態を図3及び図4を用いて更に説明する。図4(b)は発電機構1と風力遮断機構2の最も好ましい形態の一例を示す斜視図である。発電機構1に関しては、3枚の「受風板12が取り付けられた圧電素子部材11」(以下、受風板12と圧電素子部材11が一体となったものを、「静翼10」ということがある)が、1枚の円盤状の固定保持部材13に、平面を共通にして固定されている。1枚の固定保持部材13に取り付けられる静翼10の数は、好ましくは1〜20枚、より好ましくは2〜10枚、特に好ましくは3〜5枚である。少なすぎると発電効率が悪くなる場合があり、多すぎると1枚の受風板12の面積が小さくなって、圧電素子部材11を十分に屈曲させられない場合がある。また、静翼10の数は、風遮断板22の数より1枚だけ多いことが、圧電素子出力の整流平滑化が可能である点で好ましい。
【0026】
図3及び図4に示すように、静翼10は静翼保持部材13に固定され、静翼保持部材13は静翼軸14に垂直に固定されている。そして、静翼10(受風板12と圧電素子部材11)と静翼保持部材13は、静翼軸14を保持する静翼軸保持柱15によって、風を受け易いように略垂直に立てられている。静翼10と静翼保持部材13が形成する平板の直径等の差渡し長さは大きいほど1つの静翼保持部材13に固定される受風板12の数を多くでき、従って圧電素子部材11の数も多くできるので大きな出力を得ることができる。
【0027】
一方、図4(b)において、風力遮断機構2に関しては、5枚の風遮断板22が回転保持部材21に固定されており、風遮断板22と回転保持部材21が一体となったもの(以下、これを「動翼20」ということがある)が動翼軸24に固定されている(図3参照)。そして、動翼軸24は、静翼軸14と軸を共通にして自由に回転できるようになっている。
【0028】
図5に示したように、動翼20は回転することによって、動翼20の先端に位置する風遮断板22が周期的に受風板12に当たる風を遮断する。なお、図5において、風は紙面の上部から紙面に向かって吹いている。風遮断板22が周期的に風を遮断するによって、受風板12が周期的に変位して、その変位が圧電素子部材11を周期的に特定の振動数で屈曲させる。動翼20の回転は外部エネルギーによって行ってもよいし、風力エネルギーによって行ってもよいが、風力エネルギーによって行うことが好ましい。すなわち、動翼20は風力によって回転する風車状のものであることが好ましい。また、特定の「遮断・非遮断の振動数」を得るために、動翼の回転数を制御できる仕組みを有することが好ましい。
【0029】
風力によって行うときは、風遮断板22の板面は、回転保持部材21の面と完全に同一平面上にはなく、一定の角度をもって回転保持部材21に固定されていることが好ましい。すなわち、それにより、風遮断板22自体がプロペラのようになっていて、風を受けて回転する力を生成するようになっていることが好ましい。また、円盤状等の平面状の回転保持部材21に、プロペラ状に切れ込みがあり、回転保持部材21が風を受けて回転する力を与えるようになっていることも好ましい。この場合は、風遮断板22自体はプロペラ状であっても、風方向に対して垂直方向に角度(後述のα=0°)を有していてもよい。1枚の風遮断板22の平面と、回転平面すなわち回転保持部材の平面(動翼が風車状のときは風車の平面)とがなす角度をαとすると、αは0°〜45°が好ましく、10°〜30°が特に好ましい。αを大きくすると動翼の回転数は低下するが、大きなトルクを生じて回転しやすくなり、弱風でも受風板12に周期的に変動した風があたり圧電素子111を発電させることができる。αが0°の場合は、風力のみでは風遮断板22によっては動翼に回転を与えられないので外部エネルギーによって回転を与える必要がある。
【0030】
1枚の回転保持部材21に取り付けられる風遮断板22の数は特に限定はないが、好ましくは1〜20枚、より好ましくは2〜10枚、特に好ましくは3〜5枚である。少なすぎると発電効率が悪くなる場合があり、多すぎると1枚の風遮断板22の面積と共に風遮断板22がない部分の面積も小さくなって、風の遮断、非遮断の区別が曖昧になって、受風板12を周期的に大きく変位させられなくなる場合がある。また、多すぎても少なすぎても、後述する静翼10の固有振動数に一致した「風の遮断と非遮断」ができなくなる場合がある。また、風遮断板22の数は、静翼10の数(受風板12の数)より1枚だけ少ないことが、圧電素子出力の整流平滑化が可能である点で好ましい。
【0031】
図4において、受風板12の大きさを表すAsとBs、及び、風遮断板22の大きさを表すArとBrの関係は、効率よく圧電素子部材11を屈曲させられれば特に限定はないが、受風板12の面積は風遮断板22の面積よりも狭小であることが、風力によって効率よく圧電素子部材11を屈曲させられる点で好ましい。また、回転保持部材21と風遮断板22が形成する動翼20の直径等の差渡し長さは大きいほど風遮断板22の数を多くでき、従ってそれに対応して静翼10の数も多くできるので大きな出力を得ることができる。また、出力が最大の効果を示すのは、図4(a)発電機構1の受風板12も含んだ全体の直径Sw等の差渡し長さが、風遮断機構2の動翼20の直径Dw等の差渡し長さのほぼ70%付近にある場合である。
【0032】
図4における回転保持部材21は円盤状であるが、一般に本発明においては中心から放射線状に伸びた棒状のものであってもよく、その先端に風遮断板22が固定されていてもよい。すなわち本発明において、風力遮断機構2は、一般に少なくとも以下の(A)及び(B)を有するものであることが好ましい。
(A)受風板12にあたる風を遮断する風遮断板22
(B)風遮断板22の一端を保持し、受風板12にあたる風を周期的に遮断するように、風遮断板22を公転させる回転保持部材21
【0033】
動翼20は、静翼10と静翼保持部材13に平行に位置していてもよいが、βだけの角度で斜めに位置していてもよい(図4(a)参照)。βとしては特に限定はないが、実質的に0°であることが好ましい。
【0034】
βが0°のときの「静翼10と静翼保持部材13」と動翼20との好適な距離や、βが0°でないときの好適な上記平均距離、すなわち、受風板12と風遮断板22との好適な(平均)距離Sは、受風板12の大きさを表すAsやBs、風遮断板22の大きさを表すArやBr(図4参照)に依存し特に限定はないが、例えば、Brが20mm〜60mmの範囲の場合は、S/Brの値として0.2〜3の範囲で好適な発電電圧が得られる。
【0035】
動翼20が回転することによって風遮断板22が公転し、風遮断板22は受風板12にあたる風を周期的に遮断するが、その遮断・非遮断の振動数が、「受風板12が取り付けられた圧電素子部材11」(すなわち静翼10)の固有振動数に等しくなるように、動翼20の回転数や風遮断板22の枚数等を調整することが、効率的な屈曲を圧電素子部材11に与えることができ、延いては、常に大きな電圧や電力を得ることができる点で好ましい。
【0036】
すなわち、風速が強すぎて動翼20の回転数が大きくなりすぎた場合は、静翼10の固有振動数に一致するように、回転数調整手段によって動翼20の回転数を下げ、一定値に調整することも好ましい。また、本発明の風力発電装置が設置される地方の平均的な風速で最も効率的に電力を得るために、静翼10の大きさ(静翼10の固有振動数)、動翼20の回転数、風遮断板22の枚数等を調整することも好ましい。
【0037】
実施例1及び実施例2で後述するように、風速と得られる電圧の間にはよい相関が見られるので、風速を検知することができる。また、風速が変化すると動翼20の回転数が変化し、その結果、風遮断板22による受風板12にあたる風の遮断・非遮断の振動数が、静翼10の固有振動数からずれ、そのずれの大きさに応じて受風板12の変位や圧電素子部材11の屈曲の程度が小さくなり、発電量(電圧のピーク値、電圧時間積分等)が低下するので、その変化をモニターすることによって、そのときの風速を検知することもできる。
【0038】
図6は、圧電素子部材11a、11bからの集電を行う集電回路90の一例を示す説明図であり、かかる集電回路90は本発明の風力発電装置に好適に用いられる。集電回路90は、圧電素子部材11a、11bが発生した電気(交流)を整流する整流回路91と、整流回路91によって整流された電力の一部を貯蔵するとともに、貯蔵した電力を負荷92へ供給する充放電回路93とを有している。整流回路91は、ダイオード94で全波整流する構成を有する。また、充放電回路93は、電力を貯蔵/放出するコンデンサや二次電池等の電力貯蔵体95を備えている。
【0039】
このような集電回路90によれば、整流回路91により整流された電力のうち、負荷92へ必要な電力をリアルタイムに送ることができる。一方、負荷92で必要とされない余剰電力を電力貯蔵体95に貯蔵することができるために、例えば、受風板12に変位が生じない無風時等には、この電力貯蔵体95に貯蔵された電力を用いて負荷92を動作させることができる。なお、発電電力が大きい場合には、例えば、電力会社へ給電することもできる。
【0040】
本発明の風力発電装置は、電力が必要なあらゆる分野に用いられるが、前記特質を利用して風速測定用に用いることもできる。また、無線送信用の電力供給用に用いることも、無線通信で必要とされる電力供給が可能であればメンテナンスフリーを実現可能の点で好ましい。更には、無電源で風速を測定し、その結果を無線送信するための電力供給用に用いることも好ましい。また、強風警報装置、風速計測装置等にその特質を生かして用いられる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
図3及び図4に示した風力発電装置と、受風板12の数と風遮断板22の数が異なる以外は類似の風力発電装置において、7枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20を用い、動翼20の回転数を150回転/分(rpm)に固定し、1個の圧電素子部材11から得られる電圧E(V)を測定した。図7(a)に、この風力発電装置を用いて得られた、横軸が時間、縦軸が電圧E(V)の電圧曲線の1例を示す。また、図7(b)に、この風力発電装置を用いて得られた、横軸が時間、縦軸が電力(W)の電力曲線の1例を示す。
【0043】
なお、用いた風力発電装置の構造は以下の通りである。図4において、Dw=280mm、Dh=180mm、φ=80mm、As=Ar=50mm、Bs=Br=40mm、受風板12と風遮断板22との距離(S)が40mm、β=0°。
【0044】
図7(a)、(b)では、720msの間に2回だけ風遮断板22が受風板12を遮断している。風遮断板22が受風板12を1回遮断するごとに、ピークを発生させ次いで徐々に収束する電圧波形が1個発生することが分かった。図7(a)及び(b)から、本発明の風力発電装置によって、風力により良好に発電ができることが分かった。
【0045】
図7(c)に風速(m/s)を変化させたときの発生電力(W)を示す。風速(m/s)が大きくなると、発生電力(W)も大きくなることが分かった。このことから、本発明の風力発電装置は、電力の獲得以外に風速の測定にも応用できることが分かった。
【0046】
図7(d)に風速を変化させたときの、「1個の圧電素子部材11から発生する発電電圧」を示す。風速(m/s)が大きくなると、出力電圧のピーク値も発生電力(W)も、それに対応してほぼ直線的に大きくなることが分かった。
【0047】
実施例2
実施例1で用いたものと同様の風力発電装置を用い、風速を変化させ、「電圧曲線におけるプラス側及びマイナス側のピーク電圧(V)の平均値」、並びに、「1周期ごとの電圧プラス側だけの積分値及び1周期ごとの電圧マイナス側だけの積分値(以下、総称して「積分値」と略記する)からそれぞれ求めた平均電圧(V)」を求めた。
【0048】
ここで「積分値」とは、1個の波形発生時から収束時までの半波を積分して算出した平均値と定義される。すなわち、図11は、例えば図7のような電圧曲線の一部の拡大図であるが、以下の、Ea−Eb、Ta−Tbで囲まれる台形の面積を算出する。
【数1】
【0049】
上記台形の面積から、以下のように出力電圧を算出する。
【数2】
【0050】
出力電圧、負荷抵抗を用いて、電力Wを算出する。
W=(電圧)2/抵抗 (「抵抗」は電圧測定時の負荷抵抗)
で表されるので、Wは以下で表される。
【数3】
この値に、経過時間「Tb−Ta」をかけたものが、電力量(W・sec)(J)である。
【0051】
そして、プラス側だけ波形発生時から収束時までの総和をとった平均値を、電圧プラス側の積分値(W)と定義する。また、マイナス側だけの総和をとった平均値を、電圧マイナス側の積分値(W)と定義する。すなわち、「積分値」とは、半周期ごとの電圧出力の時間での積分値から求めた平均出力電圧をもとに得られるものであり、半波を積分して算出した平均値(W)である。実際には、出力をダイオードで全波整流し、コンデンサで平滑化された電圧を基に算出した。また、上記経過時間「Tb−Ta」を0.005秒(sec)に設定して算出した。
【0052】
図8に結果を示す。それぞれの測定値プロットは以下の通りである。
○:プラス側ピーク電圧の平均値(V)
●:マイナス側ピーク電圧の平均値(V)
△:プラス側電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
▲:マイナス側電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
ここで、「平均値」とは、半波10個の平均値である。
【0053】
図8において、横軸である任意単位の風速40は、実際の風速10m/sにほぼ該当している。また、圧電素子部材11が風力に押されて風下側に屈曲したときにプラスの電圧が発生し、マイナスの電圧はその逆のときに発生する。
【0054】
なお、実施例2では、データ取得の都合上、動翼20の回転数は、外部電力によってモーターを回して常に150回転/分(rpm)になるように調整したが、風力によっても動翼20を回転させることができ、それも好ましい。風力によって動翼20を回転させる場合は、静翼10の固有振動数にほぼ一致するように、回転数調整手段によって動翼20の回転数を調整することが、効率よく大きな出力を得るために好ましい。すなわち、風速が強すぎて動翼20の回転数が大きくなりすぎた場合等には、ブレーキ等の回転数調整手段によってその回転数を下げ、所定の回転数に調整することが特に好ましい。
【0055】
図8から、風速が強くなるに従って、ピーク電圧の平均値(V)も、電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)も大きくなることが分かった。また、プラス側もマイナス側も同様の傾向が見られた。更に、ある一定の風速(約10任意単位)を差し引くと、風速と「ピーク電圧の平均値(V)」、及び、風速と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」は、ほぼ比例関係にあることが分かった。このことから、本発明の風力発電装置は、電力の入手以外に風速の測定にも応用できることが分かった。
【0056】
実施例3
実施例1、2で使用した風力発電装置(7枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20が使用されている)を用い、風速を30任意単位に固定し、動翼20の回転数を変化させて「ピーク電圧(V)」と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」を測定した。それぞれの測定値プロットは上記と同じである。結果を図9(a)に示す。
【0057】
また、実施例1、2で使用した風力発電装置において、「7枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20」に代えて、「4枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20」を用いた以外は、上記と同様にして、風速を30任意単位に固定し、動翼20の回転数を変化させて「ピーク電圧(V)」と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」とを測定した。結果を図9(b)に示す。
【0058】
図9(a)から、7枚の風遮断板22が使用されている場合は、動翼20の回転数が150rpmのときに、全ての測定値(プラスとマイナスの、「ピーク電圧(V)」と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」)で最大値が得られた。
[150(回転/分)/60(秒/分)]×7(回/回転)=17.5(回/秒)(Hz)
より、静翼10(受風板12と圧電素子部材11が一体となったもの)の固有振動数が、約17(Hz)であり、それに合うように風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断したとき、共振して全ての測定値で最大値等が得られたと考えられる。
【0059】
一方、図9(b)から、4枚の風遮断板22が使用されている場合は、動翼20の回転数が250rpmのときに、全ての測定値で最大値が得られた。
[250(回転/分)/60(秒/分)]×4(回/回転)=16.7(回/秒)(Hz)
より、静翼10の固有振動数約17(Hz)に合うように、風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断したとき、全ての測定値で最大値が得られたと考えられる。
【0060】
上記測定結果のうち、プラスとマイナスのピーク電圧(V)の値を、横軸に「風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断する周波数(回/秒)」(以下、「遮断周波数」ということがある)をとってプロットしたものが図10である。図10中、大きな○又は●は、7枚の風遮断板22が使用されている動翼20を用いた場合で、小さな○又は●は、4枚の風遮断板22が使用されている動翼20を用いた場合である。
【0061】
風遮断板22の数が7枚の場合、4枚の場合の何れの場合も、風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断するときの遮断周波数が、約17(回/秒)のときに最大値が得られた。このことは、静翼10(受風板12と圧電素子部材11が一体となったもの)の固有振動数が約17(Hz)であり、それに遮断周波数が一致したとき、ピーク電圧の最大値が得られたことを示している。
【0062】
以上から、本発明の風力発電装置を用いれば、単に自然に吹く風の強さや風の脈動にのみ依存するのではなく、風を人為的に及び/又は周期的に遮断できるので、より効果的に風力発電ができることが分かった。また、本発明の風力発電装置を用いれば、風遮断板22の数、動翼20の回転数(rpm)、静翼10の大きさ(すなわち静翼10の固有振動数)を調整し、静翼10の固有振動数と遮断周波数を一致させることによって、特に効率的に風力発電ができることが分かった。
【0063】
更に、風力によって動翼20を回転させ、風遮断板22が受風板12を遮断する振動数を静翼10の固有振動数にほぼ一致するように、公知の回転数調整手段によって動翼20の回転数を設定すれば、更に効率よく大きな出力を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の風力発電装置は、風速測定用、無線送信の電力供給用等に用いられるほか、本発明の風力発電装置は発電機構1と風力遮断機構2を有しており、発電効率に特に優れているため、電力を必要とするあらゆる分野に広く一般に利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の風力発電装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】本発明の風力発電装置に用いられる圧電素子部材11の概略図である。
【図3】本発明の風力発電装置の特に好ましい構造の一例を示す全体側面図である。
【図4】本発明の風力発電装置の基本部分の構造を示す説明図である。 (a)側面図 (b)斜視図
【図5】圧電素子部材11が振動する仕組みを示す概念図である。
【図6】本発明の風力発電装置からの集電を行う集電回路の一例を示す回路図である。
【図7】1個の圧電素子から得られる発電電圧の一例を示すグラフである(実施例1)。 (a)横軸を時間としたときの電圧曲線 (b)横軸を時間としたときの電力曲線 (c)風速を変化させたときの発生電力の変化を示すグラフ (d)風速を変化させたときのピーク電圧(V)の平均値と、電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)の変化を示すグラフ
【図8】風速に対して、ピーク電圧及び電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)をプロットしたグラフである(実施例2)。 ○:プラス側のピーク電圧の平均値(V) ●:マイナス側のピーク電圧の平均値(V) △:プラス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V) ▲:マイナス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
【図9】動翼の回転数に対して、ピーク電圧及び積分値をプロットしたグラフである(実施例3)。 (a)風遮断板22が7枚の場合 (b)風遮断板22が4枚の場合 ○:プラス側のピーク電圧の平均値(V) ●:マイナス側のピーク電圧の平均値(V) △:プラス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V) ▲:マイナス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
【図10】遮断周波数に対して、ピーク電圧をプロットしたグラフである(実施例3)。
【図11】「積分値」の定義の説明に用いられる電圧曲線の拡大図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・・発電機構
10・・・・静翼(圧電素子部材と受風板が一体となったもの)
11・・・・圧電素子部材
11a・・・圧電素子部材a
11b・・・圧電素子部材b
111・・・圧電素子
12・・・・受風板
13・・・・静翼保持部材
14・・・・静翼軸
15・・・・静翼軸保持柱
2・・・・・風遮断機構
20・・・・動翼(回転保持部材と風遮断板が一体となったもの)
21・・・・回転保持部材
22・・・・風遮断板
90・・・・集電回路
91・・・・整流回路
92・・・・負荷
93・・・・充放電回路
94・・・・ダイオード
95・・・・電力貯蔵体
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用い、風力を利用して発電する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンな発電方法として風力発電が注目されるようになってきている。一般的な風力発電装置としては、プロペラを風力で回転させ、電磁誘導により発電するものが知られているが、これには、装置が大型であってコストが高いことや、設置場所が制限されること、また、所定の設置間隔を取らなければ発電効率が低下すること等の問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、圧電素子を用いた発電装置が提案されている。例えば、特許文献1には、空気の渦流を発生させて振動板を振動させ、その振動を圧電素子に加えて発電する方法が記載されている。しかしながら、この構造では圧電素子に加わる振動の変位は限られたものになり、大きな電力は得られない場合があった。
【0004】
また、特許文献2には、フレーム部材と、フレーム部材に支持された圧電振動板と、振動板の表面に取り付けられた受風部材とを備え、風を受けて振動板に屈曲運動を生じさせることにより発電する風力発電装置が記載されている。しかしながら、この構造では、振動板の振動がフレーム部材によって抑制され、発電量が十分に得られないという問題があった。一方、振動抑制を小さくするためにフレーム部材を大きくすると、設置面積が広くなってしまうという問題があった。
【0005】
更に、特許文献1と特許文献2に共通する問題点として、これらの装置は、風が脈動しているか、または定常流であっても羽根の後方でカルマン渦を形成する場合しか振動しないので、駆動効率が低いという問題もあった。
【0006】
風の脈動や羽根の後方での渦だけに依存しない装置として、特許文献3には、長尺状でその幅方向に所定角度で二つ折りされた形状を有し、その長手方向の一端が固定された状態で風力を受けた際に所定のねじれ振動を生ずるように、その幅が長手方向において変化している受風翼と、前記受風翼の振動によって発電する発電部とを具備する風力発電装置が記載されている。そして、発電部には、屈曲することによって発電する圧電素子が使用されている。しかしながら、この構造では、風自体を制御していないため、受風翼に取り付けられた圧電素子に効率的な振動を常に与えられない場合があった。
【0007】
また、特許文献4には、断面形状が略V字状等の受風翼を支持する支持棒をその軸芯回りに回転自在に保持する軸保持部材と、この軸保持手段が取り付けられる振動板と、風力によって振動板に発生する振動を利用して発電する発電機構を具備する風力発電装置が記載されている。そして、振動板には圧電素子は貼り付けられており、圧電素子が屈曲することによって発電できる構造が記載されている。しかしながら、この構造でも、風自体を制御していないため、振動板に貼り付けられた圧電素子に効率的な振動を常に与えられない場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−303726号公報
【特許文献2】特開2001−231273号公報
【特許文献3】特開2005−273644号公報
【特許文献1】特開2006−291842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、構造が比較的単純で、高い効率で発電が可能で、設置場所の制限も少なく集積化が容易な風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、圧電素子部材と風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板とを有する発電機構に対し、更に、かかる受風板にあたる風を周期的に遮断する風力遮断機構を具備させることによって、風力エネルギーを高い効率で電気エネルギーに変換することが可能であることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材と、
前記平板状の圧電素子部材の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板と、
前記平板状の圧電素子部材の、前記受風板が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材と、
を有する発電機構、並びに、
前記受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、前記受風板を周期的に変位させる風力遮断機構と、
を具備することを特徴とする風力発電装置を提供するものである。
【0012】
また本発明は、前記風力遮断機構が、
前記受風板にあたる風を遮断する風遮断板と、
前記風遮断板の一端を保持し、前記受風板にあたる風を周期的に遮断するように、前記風遮断板を公転させる回転保持部材と、
を有するものである上記風力発電装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、時間と共に風力がどのように変化しても、受風板を効率的に振動させることができ、また、かかる受風板の振動をダイレクトに圧電素子部材に伝達させることにより、高い発電効率を実現することができ、構造が比較的単純であって設置場所の制限も少なく集積化が容易な風力発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施の形態のみに限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
【0015】
図1は、本発明の風力発電装置の基本的な構成を示す概略図であり、発電機構1と風力遮断機構2が示されている。発電機構1は、少なくとも、
(a)屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材11
(b)前記平板状の圧電素子部材11の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材11を屈曲させる受風板12
(c)前記平板状の圧電素子部材11の、前記受風板12が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材13
によって構成されている。
【0016】
このうち、平板上の圧電素子部材11は、薄手の圧電素子を金属板等に貼り合わせたモノモルフ構造を有するものであっても、2枚の圧電素子を貼り合わせたバイモルフ構造を有するものであってもよいが、発電能力の点でバイモルフ構造が好ましい。また、1個の圧電素子部材11を構成する圧電素子111は複数個であってもよい。
【0017】
図2は、2枚の圧電素子111を用いた圧電素子部材11を示すものである。1つの圧電素子部材11は1枚の圧電素子111からなっていてもよいが、複数枚の圧電素子111からなっていてもよい。
【0018】
図1において、受風板12は、前記平板状の圧電素子部材11の一端に取り付けられており、風力を受けて変位する。すなわち、受風板12は、風を受けることによって風下側に変位し、風が遮断されると風上側に変位して元に戻るようになっている。この変位を前記圧電素子部材11に伝え、圧電素子部材11を屈曲させる。受風板12は、風を受けたときの圧電素子部材11の屈曲の量が大きくなるよう、圧電素子部材11に取り付けられている。
【0019】
受風板12の形状については、風力によって効率的に圧電素子部材11を屈曲させることができれば特に限定はなく、長方形板状や円形板状等何れでもよい。受風板12の面積についても特に限定はないが、圧電素子部材11と同等かそれ以上の面積を有していることが、弱い風によっても圧電素子部材11をより屈曲させることができるため好ましい。また、受風板12の面積は、風遮断板22の面積と同等又はそれ以下であることが好ましい。受風板12の材質も特に限定はなく、金属又は樹脂が好適に用いられる。
【0020】
圧電素子部材11と受風板12は一体となって、ある特定の固有振動数を有する。風力遮断機構2の説明において後述するように、風力遮断機構2中の風遮断板22によって受風板12にあたる風が周期的に遮断されるが、その遮断の周期の逆数である振動数が、「受風板が取り付けられた前記圧電素子部材」全体としての固有振動数に等しくなるようにすることが、圧電素子部材11の効率的な屈曲を実現し、延いては効率よく発電させるために好ましい。従って、圧電素子部材11と受風板12の質量や形態、すなわち材質、形状等は、それらが一体となったものが有する固有振動数も勘案して決められる。
【0021】
前記平板状の圧電素子部材11の、前記受風板12が取り付けられていない側は、固定保持部材13によって固定されている。固定保持部材13の形態は特に限定はなく、図1に示すような直方体であってもよいし、図3や図4に示すように、円盤状であっても、棒状であってもよい。また、材質も圧電素子部材11を保持することができる所定の硬さを有していれば特に限定されず、例えば、金属材料、樹脂材料、セラミックス材料、これらの材料を含有する複合材料等を用いることができる。固定保持部材13は、圧電素子部材11が動かないように固定するものであり、圧電素子部材11の屈曲の力を逃がさないように弾性は高いことが好ましく、風力によって実質的に変位を受けずに静止していることが好ましい。
【0022】
受風板12が取り付けられた圧電素子部材11は、1個だけが固定保持部材13に固定されていてもよいが、装置の大きさと発電量の兼合いを考慮すると、2個以上が固定されていることが好ましい。図1に示すように、圧電素子部材11は、固定保持部材13の表面に略垂直に固定されていてもよいし、図4に示すように、円盤状の固定保持部材13の円周上に固定されていてもよいし、放射線状に伸びた棒状の固定保持部材13の先端に固定されていてもよい。
【0023】
図1における風力遮断機構2は、受風板12にあたる風を周期的に遮断することによって、受風板12を周期的に変位させ、その変位によって圧電素子部材11を周期的に振動させるようになっている。
【0024】
風力遮断機構2の構造は特に限定はなく、開閉するシャッターによって風を周期的に遮断してもよいし、風遮断板22を移動させることによって風を周期的に遮断してもよいし、図3や図4に示すような構造によって、風遮断板22を、ある点を中心に板面上平行に公転させることによって風を周期的に遮断してもよい。また、開閉、移動、公転等の風力遮断機構2の駆動は、外部電力等によって行ってもよいし、風力によって行ってもよい。風力遮断機構2の駆動に外部電力等を消費しても、風のエネルギーが加わることによって、外部電力等の消費エネルギーよりも大きい電気エネルギーが得られるが、より好ましくは、風力遮断機構2の駆動自体にも風力エネルギーを用いることである。
【0025】
以下、本発明の風力発電装置の好ましい形態を図3及び図4を用いて更に説明する。図4(b)は発電機構1と風力遮断機構2の最も好ましい形態の一例を示す斜視図である。発電機構1に関しては、3枚の「受風板12が取り付けられた圧電素子部材11」(以下、受風板12と圧電素子部材11が一体となったものを、「静翼10」ということがある)が、1枚の円盤状の固定保持部材13に、平面を共通にして固定されている。1枚の固定保持部材13に取り付けられる静翼10の数は、好ましくは1〜20枚、より好ましくは2〜10枚、特に好ましくは3〜5枚である。少なすぎると発電効率が悪くなる場合があり、多すぎると1枚の受風板12の面積が小さくなって、圧電素子部材11を十分に屈曲させられない場合がある。また、静翼10の数は、風遮断板22の数より1枚だけ多いことが、圧電素子出力の整流平滑化が可能である点で好ましい。
【0026】
図3及び図4に示すように、静翼10は静翼保持部材13に固定され、静翼保持部材13は静翼軸14に垂直に固定されている。そして、静翼10(受風板12と圧電素子部材11)と静翼保持部材13は、静翼軸14を保持する静翼軸保持柱15によって、風を受け易いように略垂直に立てられている。静翼10と静翼保持部材13が形成する平板の直径等の差渡し長さは大きいほど1つの静翼保持部材13に固定される受風板12の数を多くでき、従って圧電素子部材11の数も多くできるので大きな出力を得ることができる。
【0027】
一方、図4(b)において、風力遮断機構2に関しては、5枚の風遮断板22が回転保持部材21に固定されており、風遮断板22と回転保持部材21が一体となったもの(以下、これを「動翼20」ということがある)が動翼軸24に固定されている(図3参照)。そして、動翼軸24は、静翼軸14と軸を共通にして自由に回転できるようになっている。
【0028】
図5に示したように、動翼20は回転することによって、動翼20の先端に位置する風遮断板22が周期的に受風板12に当たる風を遮断する。なお、図5において、風は紙面の上部から紙面に向かって吹いている。風遮断板22が周期的に風を遮断するによって、受風板12が周期的に変位して、その変位が圧電素子部材11を周期的に特定の振動数で屈曲させる。動翼20の回転は外部エネルギーによって行ってもよいし、風力エネルギーによって行ってもよいが、風力エネルギーによって行うことが好ましい。すなわち、動翼20は風力によって回転する風車状のものであることが好ましい。また、特定の「遮断・非遮断の振動数」を得るために、動翼の回転数を制御できる仕組みを有することが好ましい。
【0029】
風力によって行うときは、風遮断板22の板面は、回転保持部材21の面と完全に同一平面上にはなく、一定の角度をもって回転保持部材21に固定されていることが好ましい。すなわち、それにより、風遮断板22自体がプロペラのようになっていて、風を受けて回転する力を生成するようになっていることが好ましい。また、円盤状等の平面状の回転保持部材21に、プロペラ状に切れ込みがあり、回転保持部材21が風を受けて回転する力を与えるようになっていることも好ましい。この場合は、風遮断板22自体はプロペラ状であっても、風方向に対して垂直方向に角度(後述のα=0°)を有していてもよい。1枚の風遮断板22の平面と、回転平面すなわち回転保持部材の平面(動翼が風車状のときは風車の平面)とがなす角度をαとすると、αは0°〜45°が好ましく、10°〜30°が特に好ましい。αを大きくすると動翼の回転数は低下するが、大きなトルクを生じて回転しやすくなり、弱風でも受風板12に周期的に変動した風があたり圧電素子111を発電させることができる。αが0°の場合は、風力のみでは風遮断板22によっては動翼に回転を与えられないので外部エネルギーによって回転を与える必要がある。
【0030】
1枚の回転保持部材21に取り付けられる風遮断板22の数は特に限定はないが、好ましくは1〜20枚、より好ましくは2〜10枚、特に好ましくは3〜5枚である。少なすぎると発電効率が悪くなる場合があり、多すぎると1枚の風遮断板22の面積と共に風遮断板22がない部分の面積も小さくなって、風の遮断、非遮断の区別が曖昧になって、受風板12を周期的に大きく変位させられなくなる場合がある。また、多すぎても少なすぎても、後述する静翼10の固有振動数に一致した「風の遮断と非遮断」ができなくなる場合がある。また、風遮断板22の数は、静翼10の数(受風板12の数)より1枚だけ少ないことが、圧電素子出力の整流平滑化が可能である点で好ましい。
【0031】
図4において、受風板12の大きさを表すAsとBs、及び、風遮断板22の大きさを表すArとBrの関係は、効率よく圧電素子部材11を屈曲させられれば特に限定はないが、受風板12の面積は風遮断板22の面積よりも狭小であることが、風力によって効率よく圧電素子部材11を屈曲させられる点で好ましい。また、回転保持部材21と風遮断板22が形成する動翼20の直径等の差渡し長さは大きいほど風遮断板22の数を多くでき、従ってそれに対応して静翼10の数も多くできるので大きな出力を得ることができる。また、出力が最大の効果を示すのは、図4(a)発電機構1の受風板12も含んだ全体の直径Sw等の差渡し長さが、風遮断機構2の動翼20の直径Dw等の差渡し長さのほぼ70%付近にある場合である。
【0032】
図4における回転保持部材21は円盤状であるが、一般に本発明においては中心から放射線状に伸びた棒状のものであってもよく、その先端に風遮断板22が固定されていてもよい。すなわち本発明において、風力遮断機構2は、一般に少なくとも以下の(A)及び(B)を有するものであることが好ましい。
(A)受風板12にあたる風を遮断する風遮断板22
(B)風遮断板22の一端を保持し、受風板12にあたる風を周期的に遮断するように、風遮断板22を公転させる回転保持部材21
【0033】
動翼20は、静翼10と静翼保持部材13に平行に位置していてもよいが、βだけの角度で斜めに位置していてもよい(図4(a)参照)。βとしては特に限定はないが、実質的に0°であることが好ましい。
【0034】
βが0°のときの「静翼10と静翼保持部材13」と動翼20との好適な距離や、βが0°でないときの好適な上記平均距離、すなわち、受風板12と風遮断板22との好適な(平均)距離Sは、受風板12の大きさを表すAsやBs、風遮断板22の大きさを表すArやBr(図4参照)に依存し特に限定はないが、例えば、Brが20mm〜60mmの範囲の場合は、S/Brの値として0.2〜3の範囲で好適な発電電圧が得られる。
【0035】
動翼20が回転することによって風遮断板22が公転し、風遮断板22は受風板12にあたる風を周期的に遮断するが、その遮断・非遮断の振動数が、「受風板12が取り付けられた圧電素子部材11」(すなわち静翼10)の固有振動数に等しくなるように、動翼20の回転数や風遮断板22の枚数等を調整することが、効率的な屈曲を圧電素子部材11に与えることができ、延いては、常に大きな電圧や電力を得ることができる点で好ましい。
【0036】
すなわち、風速が強すぎて動翼20の回転数が大きくなりすぎた場合は、静翼10の固有振動数に一致するように、回転数調整手段によって動翼20の回転数を下げ、一定値に調整することも好ましい。また、本発明の風力発電装置が設置される地方の平均的な風速で最も効率的に電力を得るために、静翼10の大きさ(静翼10の固有振動数)、動翼20の回転数、風遮断板22の枚数等を調整することも好ましい。
【0037】
実施例1及び実施例2で後述するように、風速と得られる電圧の間にはよい相関が見られるので、風速を検知することができる。また、風速が変化すると動翼20の回転数が変化し、その結果、風遮断板22による受風板12にあたる風の遮断・非遮断の振動数が、静翼10の固有振動数からずれ、そのずれの大きさに応じて受風板12の変位や圧電素子部材11の屈曲の程度が小さくなり、発電量(電圧のピーク値、電圧時間積分等)が低下するので、その変化をモニターすることによって、そのときの風速を検知することもできる。
【0038】
図6は、圧電素子部材11a、11bからの集電を行う集電回路90の一例を示す説明図であり、かかる集電回路90は本発明の風力発電装置に好適に用いられる。集電回路90は、圧電素子部材11a、11bが発生した電気(交流)を整流する整流回路91と、整流回路91によって整流された電力の一部を貯蔵するとともに、貯蔵した電力を負荷92へ供給する充放電回路93とを有している。整流回路91は、ダイオード94で全波整流する構成を有する。また、充放電回路93は、電力を貯蔵/放出するコンデンサや二次電池等の電力貯蔵体95を備えている。
【0039】
このような集電回路90によれば、整流回路91により整流された電力のうち、負荷92へ必要な電力をリアルタイムに送ることができる。一方、負荷92で必要とされない余剰電力を電力貯蔵体95に貯蔵することができるために、例えば、受風板12に変位が生じない無風時等には、この電力貯蔵体95に貯蔵された電力を用いて負荷92を動作させることができる。なお、発電電力が大きい場合には、例えば、電力会社へ給電することもできる。
【0040】
本発明の風力発電装置は、電力が必要なあらゆる分野に用いられるが、前記特質を利用して風速測定用に用いることもできる。また、無線送信用の電力供給用に用いることも、無線通信で必要とされる電力供給が可能であればメンテナンスフリーを実現可能の点で好ましい。更には、無電源で風速を測定し、その結果を無線送信するための電力供給用に用いることも好ましい。また、強風警報装置、風速計測装置等にその特質を生かして用いられる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
図3及び図4に示した風力発電装置と、受風板12の数と風遮断板22の数が異なる以外は類似の風力発電装置において、7枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20を用い、動翼20の回転数を150回転/分(rpm)に固定し、1個の圧電素子部材11から得られる電圧E(V)を測定した。図7(a)に、この風力発電装置を用いて得られた、横軸が時間、縦軸が電圧E(V)の電圧曲線の1例を示す。また、図7(b)に、この風力発電装置を用いて得られた、横軸が時間、縦軸が電力(W)の電力曲線の1例を示す。
【0043】
なお、用いた風力発電装置の構造は以下の通りである。図4において、Dw=280mm、Dh=180mm、φ=80mm、As=Ar=50mm、Bs=Br=40mm、受風板12と風遮断板22との距離(S)が40mm、β=0°。
【0044】
図7(a)、(b)では、720msの間に2回だけ風遮断板22が受風板12を遮断している。風遮断板22が受風板12を1回遮断するごとに、ピークを発生させ次いで徐々に収束する電圧波形が1個発生することが分かった。図7(a)及び(b)から、本発明の風力発電装置によって、風力により良好に発電ができることが分かった。
【0045】
図7(c)に風速(m/s)を変化させたときの発生電力(W)を示す。風速(m/s)が大きくなると、発生電力(W)も大きくなることが分かった。このことから、本発明の風力発電装置は、電力の獲得以外に風速の測定にも応用できることが分かった。
【0046】
図7(d)に風速を変化させたときの、「1個の圧電素子部材11から発生する発電電圧」を示す。風速(m/s)が大きくなると、出力電圧のピーク値も発生電力(W)も、それに対応してほぼ直線的に大きくなることが分かった。
【0047】
実施例2
実施例1で用いたものと同様の風力発電装置を用い、風速を変化させ、「電圧曲線におけるプラス側及びマイナス側のピーク電圧(V)の平均値」、並びに、「1周期ごとの電圧プラス側だけの積分値及び1周期ごとの電圧マイナス側だけの積分値(以下、総称して「積分値」と略記する)からそれぞれ求めた平均電圧(V)」を求めた。
【0048】
ここで「積分値」とは、1個の波形発生時から収束時までの半波を積分して算出した平均値と定義される。すなわち、図11は、例えば図7のような電圧曲線の一部の拡大図であるが、以下の、Ea−Eb、Ta−Tbで囲まれる台形の面積を算出する。
【数1】
【0049】
上記台形の面積から、以下のように出力電圧を算出する。
【数2】
【0050】
出力電圧、負荷抵抗を用いて、電力Wを算出する。
W=(電圧)2/抵抗 (「抵抗」は電圧測定時の負荷抵抗)
で表されるので、Wは以下で表される。
【数3】
この値に、経過時間「Tb−Ta」をかけたものが、電力量(W・sec)(J)である。
【0051】
そして、プラス側だけ波形発生時から収束時までの総和をとった平均値を、電圧プラス側の積分値(W)と定義する。また、マイナス側だけの総和をとった平均値を、電圧マイナス側の積分値(W)と定義する。すなわち、「積分値」とは、半周期ごとの電圧出力の時間での積分値から求めた平均出力電圧をもとに得られるものであり、半波を積分して算出した平均値(W)である。実際には、出力をダイオードで全波整流し、コンデンサで平滑化された電圧を基に算出した。また、上記経過時間「Tb−Ta」を0.005秒(sec)に設定して算出した。
【0052】
図8に結果を示す。それぞれの測定値プロットは以下の通りである。
○:プラス側ピーク電圧の平均値(V)
●:マイナス側ピーク電圧の平均値(V)
△:プラス側電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
▲:マイナス側電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
ここで、「平均値」とは、半波10個の平均値である。
【0053】
図8において、横軸である任意単位の風速40は、実際の風速10m/sにほぼ該当している。また、圧電素子部材11が風力に押されて風下側に屈曲したときにプラスの電圧が発生し、マイナスの電圧はその逆のときに発生する。
【0054】
なお、実施例2では、データ取得の都合上、動翼20の回転数は、外部電力によってモーターを回して常に150回転/分(rpm)になるように調整したが、風力によっても動翼20を回転させることができ、それも好ましい。風力によって動翼20を回転させる場合は、静翼10の固有振動数にほぼ一致するように、回転数調整手段によって動翼20の回転数を調整することが、効率よく大きな出力を得るために好ましい。すなわち、風速が強すぎて動翼20の回転数が大きくなりすぎた場合等には、ブレーキ等の回転数調整手段によってその回転数を下げ、所定の回転数に調整することが特に好ましい。
【0055】
図8から、風速が強くなるに従って、ピーク電圧の平均値(V)も、電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)も大きくなることが分かった。また、プラス側もマイナス側も同様の傾向が見られた。更に、ある一定の風速(約10任意単位)を差し引くと、風速と「ピーク電圧の平均値(V)」、及び、風速と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」は、ほぼ比例関係にあることが分かった。このことから、本発明の風力発電装置は、電力の入手以外に風速の測定にも応用できることが分かった。
【0056】
実施例3
実施例1、2で使用した風力発電装置(7枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20が使用されている)を用い、風速を30任意単位に固定し、動翼20の回転数を変化させて「ピーク電圧(V)」と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」を測定した。それぞれの測定値プロットは上記と同じである。結果を図9(a)に示す。
【0057】
また、実施例1、2で使用した風力発電装置において、「7枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20」に代えて、「4枚の風遮断板22が回転保持部材21に取り付けられた動翼20」を用いた以外は、上記と同様にして、風速を30任意単位に固定し、動翼20の回転数を変化させて「ピーク電圧(V)」と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」とを測定した。結果を図9(b)に示す。
【0058】
図9(a)から、7枚の風遮断板22が使用されている場合は、動翼20の回転数が150rpmのときに、全ての測定値(プラスとマイナスの、「ピーク電圧(V)」と「電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)」)で最大値が得られた。
[150(回転/分)/60(秒/分)]×7(回/回転)=17.5(回/秒)(Hz)
より、静翼10(受風板12と圧電素子部材11が一体となったもの)の固有振動数が、約17(Hz)であり、それに合うように風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断したとき、共振して全ての測定値で最大値等が得られたと考えられる。
【0059】
一方、図9(b)から、4枚の風遮断板22が使用されている場合は、動翼20の回転数が250rpmのときに、全ての測定値で最大値が得られた。
[250(回転/分)/60(秒/分)]×4(回/回転)=16.7(回/秒)(Hz)
より、静翼10の固有振動数約17(Hz)に合うように、風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断したとき、全ての測定値で最大値が得られたと考えられる。
【0060】
上記測定結果のうち、プラスとマイナスのピーク電圧(V)の値を、横軸に「風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断する周波数(回/秒)」(以下、「遮断周波数」ということがある)をとってプロットしたものが図10である。図10中、大きな○又は●は、7枚の風遮断板22が使用されている動翼20を用いた場合で、小さな○又は●は、4枚の風遮断板22が使用されている動翼20を用いた場合である。
【0061】
風遮断板22の数が7枚の場合、4枚の場合の何れの場合も、風遮断板22が受風板12に当たる風を遮断するときの遮断周波数が、約17(回/秒)のときに最大値が得られた。このことは、静翼10(受風板12と圧電素子部材11が一体となったもの)の固有振動数が約17(Hz)であり、それに遮断周波数が一致したとき、ピーク電圧の最大値が得られたことを示している。
【0062】
以上から、本発明の風力発電装置を用いれば、単に自然に吹く風の強さや風の脈動にのみ依存するのではなく、風を人為的に及び/又は周期的に遮断できるので、より効果的に風力発電ができることが分かった。また、本発明の風力発電装置を用いれば、風遮断板22の数、動翼20の回転数(rpm)、静翼10の大きさ(すなわち静翼10の固有振動数)を調整し、静翼10の固有振動数と遮断周波数を一致させることによって、特に効率的に風力発電ができることが分かった。
【0063】
更に、風力によって動翼20を回転させ、風遮断板22が受風板12を遮断する振動数を静翼10の固有振動数にほぼ一致するように、公知の回転数調整手段によって動翼20の回転数を設定すれば、更に効率よく大きな出力を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の風力発電装置は、風速測定用、無線送信の電力供給用等に用いられるほか、本発明の風力発電装置は発電機構1と風力遮断機構2を有しており、発電効率に特に優れているため、電力を必要とするあらゆる分野に広く一般に利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の風力発電装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】本発明の風力発電装置に用いられる圧電素子部材11の概略図である。
【図3】本発明の風力発電装置の特に好ましい構造の一例を示す全体側面図である。
【図4】本発明の風力発電装置の基本部分の構造を示す説明図である。 (a)側面図 (b)斜視図
【図5】圧電素子部材11が振動する仕組みを示す概念図である。
【図6】本発明の風力発電装置からの集電を行う集電回路の一例を示す回路図である。
【図7】1個の圧電素子から得られる発電電圧の一例を示すグラフである(実施例1)。 (a)横軸を時間としたときの電圧曲線 (b)横軸を時間としたときの電力曲線 (c)風速を変化させたときの発生電力の変化を示すグラフ (d)風速を変化させたときのピーク電圧(V)の平均値と、電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)の変化を示すグラフ
【図8】風速に対して、ピーク電圧及び電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)をプロットしたグラフである(実施例2)。 ○:プラス側のピーク電圧の平均値(V) ●:マイナス側のピーク電圧の平均値(V) △:プラス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V) ▲:マイナス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
【図9】動翼の回転数に対して、ピーク電圧及び積分値をプロットしたグラフである(実施例3)。 (a)風遮断板22が7枚の場合 (b)風遮断板22が4枚の場合 ○:プラス側のピーク電圧の平均値(V) ●:マイナス側のピーク電圧の平均値(V) △:プラス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V) ▲:マイナス側の電力出力の積分値から求めた平均電圧(V)
【図10】遮断周波数に対して、ピーク電圧をプロットしたグラフである(実施例3)。
【図11】「積分値」の定義の説明に用いられる電圧曲線の拡大図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・・発電機構
10・・・・静翼(圧電素子部材と受風板が一体となったもの)
11・・・・圧電素子部材
11a・・・圧電素子部材a
11b・・・圧電素子部材b
111・・・圧電素子
12・・・・受風板
13・・・・静翼保持部材
14・・・・静翼軸
15・・・・静翼軸保持柱
2・・・・・風遮断機構
20・・・・動翼(回転保持部材と風遮断板が一体となったもの)
21・・・・回転保持部材
22・・・・風遮断板
90・・・・集電回路
91・・・・整流回路
92・・・・負荷
93・・・・充放電回路
94・・・・ダイオード
95・・・・電力貯蔵体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材と、
前記平板状の圧電素子部材の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板と、
前記平板状の圧電素子部材の、前記受風板が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材と、
を有する発電機構、並びに、
前記受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、前記受風板を周期的に変位させる風力遮断機構と、
を具備することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記風力遮断機構が、
前記受風板にあたる風を遮断する風遮断板と、
前記風遮断板の一端を保持し、前記受風板にあたる風を周期的に遮断するように、前記風遮断板を公転させる回転保持部材と、
を有するものである請求項1記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記風遮断板とそれを保持する前記回転保持部材が一体となって、風力によって回転する風車状のものである請求項1又は請求項2記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記風遮断板が前記受風板にあたる風を周期的に遮断する振動数が、前記受風板が取り付けられた前記圧電素子部材の固有振動数に等しくなるように、前記風遮断板を公転させる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の風力発電装置。
【請求項5】
風速測定用である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の風力発電装置。
【請求項6】
無線送信用の電力供給用である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項記載の風力発電装置。
【請求項1】
屈曲することによって発電する平板上の圧電素子部材と、
前記平板状の圧電素子部材の一端に取り付けられており、風力を受けて変位して前記圧電素子部材を屈曲させる受風板と、
前記平板状の圧電素子部材の、前記受風板が取り付けられていない側の一端を保持する固定保持部材と、
を有する発電機構、並びに、
前記受風板にあたる風を周期的に遮断することによって、前記受風板を周期的に変位させる風力遮断機構と、
を具備することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記風力遮断機構が、
前記受風板にあたる風を遮断する風遮断板と、
前記風遮断板の一端を保持し、前記受風板にあたる風を周期的に遮断するように、前記風遮断板を公転させる回転保持部材と、
を有するものである請求項1記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記風遮断板とそれを保持する前記回転保持部材が一体となって、風力によって回転する風車状のものである請求項1又は請求項2記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記風遮断板が前記受風板にあたる風を周期的に遮断する振動数が、前記受風板が取り付けられた前記圧電素子部材の固有振動数に等しくなるように、前記風遮断板を公転させる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の風力発電装置。
【請求項5】
風速測定用である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の風力発電装置。
【請求項6】
無線送信用の電力供給用である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項記載の風力発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【公開番号】特開2008−180118(P2008−180118A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13107(P2007−13107)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人科学技術振興機構、革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人科学技術振興機構、革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】
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