圧電絶縁変圧器
動作周波数範囲に特徴を有し、動作周波数範囲内に少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造(21)を有する圧電絶縁変換器(20)。共振構造は、絶縁性基板(30)、第1の電気音響変換器(40)、及び、第2の電気音響変換器(50)を含む。基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の電気音響変換器は、第1の主表面上に機械的に結合される。第2の電気音響変換器は、第2の主表面上に機械的に結合される。変換器の一方は、動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーで共振構造に機械的振動を発生させる働きをする。他方の変換器は、その機械的振動を出力電力に変換する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景技術
圧電絶縁変圧器は、電気的素子間を絶縁する働きをする。従来の絶縁変圧器は、磁気結合を利用し、伝統的に線周波数で動作する。線周波数で動作する絶縁変圧器は、大きくて重く、絶縁変圧器が絶縁する対象の回路要素に一体化させることが難しい。比較的最近になって、線周波数よりも実質的に高い周波数で動作する絶縁変圧器が紹介された。こうした絶縁変圧器はサイズや重さが低減されているが、それでもまだ、絶縁変圧器が絶縁する対象の回路要素に一体化させることは依然として難しい。光結合器や微小電気機械システム(MEMS)デバイスによる低電力絶縁も可能である。しかしながら、これらのデバイスの送電能力は数ミリワットに制限される。
【0002】
したがって、絶縁能力を有し、数ミリワットよりも大きな電力を伝送することが可能な電力絶縁装置が必要とされている。用途によっては、絶縁する対象の電気回路に一体化させることが可能な電力絶縁装置が更に必要とされる場合がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
この要求は本発明によって満たされる。本発明の第1の実施形態において、圧電絶縁変圧器は、動作周波数範囲に特徴を有し、動作周波数範囲内において少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造を有する。共振構造は、絶縁構造、第1の電気音響変換器、及び、第2の電気音響変換器を含む。基板は、第1の主表面、及び、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の電気音響変換器は、第1の主表面に機械的に結合される。第2の電気音響変換器は、第2の主表面に機械的に結合される。一方の変換器は、動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーによって共振構造に機械的振動を発生させる。他方の変換器は、その機械的振動を出力電力に変換する。
【0004】
本発明の第2の実施形態において、DC−DCコンバータは、発振器、整流器、及び、圧電絶縁変圧器を含む。圧電絶縁変圧器は、発振器に電気的に接続された入力部と、整流器に電気的に接続された出力部とを有する。任意選択で、DC−DCコンバータは、更に別の圧電絶縁変圧器を利用するフィードバック型調整器を含む場合がある。それらの圧電絶縁変圧器は通常、同じ基板上に作成される。
【0005】
本発明の第3の実施形態として、製造方法を開示する。絶縁性基板を用意する。絶縁性基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面の反対側の第2の主表面を有する。基板の第1の主表面上に第1の電気音響変換器を形成し、基板の第2の主表面上に第2の電気音響変換器を形成する。
【0006】
本発明の他の態様及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面とともに、下記の説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
詳細な説明
次に、本発明の種々の実施形態を示す図面を参照し、本発明について説明する。図中、種々の構造又は部分のサイズは、例示のために強調され、他の構造又は部分に比べて同じ縮尺ではない場合があり、したがって、それらは本発明の一般的構造を示している。また、本発明の種々の態様は、他の構造又は部分、あるいはそれら両方の「上」又は「上方」に位置する構造又は部分を参照して説明される。例えば、「上」又は「上方」といった相対的用語及びフレーズは、本明細書では、図面に描かれているような他の構造又は部分に対する或る構造を、あるいは構造の関係を説明するために使用される。これらの相対的用語は、図面に描かれた向きだけでなく、装置の他の向きも含むものとして解釈される。例えば、図面上の装置が、反転され、若しくは、回転され、あるいはそれら両方がなされた場合、他の構造又は部分の「上」又は「上方」と記載された構造又は部分は、今度は、他の構造又は部分の「下」、「下方」、「左」、「右」、「正面」、又は、「背面」になる場合がある。他の構造又は部分の「上」又は「上方」にある構造又は部分と言った場合、それらの間には更に別の構造又は部分が介在する場合もあると解釈される。介在する構造又は部分がなく、他の構造又は部分の「上」又は「上方」に形成された構造又は部分を指す場合、本明細書では、他の構造又は他の部分の「上に直接」又は「上方に直接」形成されると記載する。本明細書全体を通じて、同じ要素には同じ参照符号が使用される。
【0008】
例示目的の図面に示されているように、本発明の実施形態は、動作周波数範囲に特徴を有する共振構造を備えた圧電絶縁変換器として例示される。共振構造は、動作周波数範囲内において少なくとも1つの機械的共振を有する。共振構造は、絶縁性基板、第1の電気音響変換器、及び、第2の電気音響変換器を含む。基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の電気音響変換器は第1の主表面に機械的に結合される。第2の電気音響変換器は第2の主表面に機械的に結合される。一方の電気音響変換器は、動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーによって共振構造に機械的共振を発生させる。他方の電気音響変換器は、その機械的共振を出力電力に変換する。
【0009】
第1の変換器及び第2の変換器は、電力から音響エネルギーへの変換、及び、音響エネルギーから電力への変換を行う圧電電気音響変換器のような電気音響変換器である。第1の電気音響変換器に印加された、共振構造の共振周波数の1つを有する、又は、その共振周波数に近い動作周波数を有する入力電力(交流(AC)電力、又は、パルス上の直流(DC)電力)は、第1の電気音響変換器によって音響エネルギーに変換される。この音響エネルギーは、共振構造に動作周波数の機械的振動を発生させる。入力電力を連続的に印加することで、共振周波数の音響エネルギーが共振構造に蓄積される。第2の電気音響変換器は、この共振器の機械的振動を出力電力に変換する。本明細書の開示において、ACという用語は、パルス状のDCも含むものと解釈される。
【0010】
本発明の圧電絶縁変換器の動作周波数は、数十メガヘルツ又は数百メガヘルツ程度であり、電力絶縁変換器において一般的に使用されている周波数よりもかなりに高い。動作周波数が高いため、圧電絶縁変換器は、従来のいずれの絶縁変換器よりも実質的に小型にすることができる。圧電絶縁変換器は、1平方ミリメートル未満の面積ダイにおいて実施することができる。このサイズは、既存のどの電気的アイソレータや変換装置よりも小さい。圧電絶縁変換器は小さいので、既知の従来の集積回路(IC)製造方法を使用して、数千もの圧電絶縁変換器を同時に製造することが可能である。その結果、本発明の圧電絶縁変換器は、従来のアイソレータや変換器に比べて、低コストで大量に製造することができる。
【0011】
本発明の圧電絶縁変換器は、そのサイズが小さく、その製造プロセスが既存のIC製造プロセスと互換性を有するため、圧電絶縁変換器によって絶縁する対象の他の回路と共に1つのチップ上に作成することができる。性能に関しては、本発明の圧電絶縁変換器は、DCから約1GHzの周波数範囲において良好な電気的絶縁が可能である。例えば、本発明の圧電絶縁変換器は、イーサネット(登録商標)ネットワークアダプタのような電気通信の用途に使用されるICチップにおいて有用である場合がある。
【0012】
また、本発明によれば、電気的アイソレータや変換器のコストが大幅に低減されるだけでなく、高速デジタル回路や高速アナログ回路のオンチップ絶縁のような、アイソレータや変換器の新たな用途も可能になる。また、こうした新たな用途には、例えば、生命維持システムにおける回路間の電力の絶縁が重要であることが判明している医療用途のような、比較的大電力な環境における電力絶縁も含まれる。
【0013】
図1Aは、本発明の一実施形態による圧電絶縁変換器20を示している。図1Aを参照すると、圧電絶縁変換器20は、動作周波数範囲内において少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造21として実施される。典型的な実施形態において、動作周波数範囲の中心周波数は、約20MHz〜約500MHzの範囲にある。本明細書に記載する例示的実施形態の動作周波数範囲の中心周波数は、約200MHzである。
【0014】
共振構造21は、絶縁構造20、第1の電気音響変換器40、及び、第2の電気音響変換器50から構成される。基板30は、第1の主表面32、及び、第1の主表面32とは反対側の第2の主表面34を有する。第1の電気音響変換器40は、基板30の第1の主表面32に機械的に結合される。第2の電気音響変換器50は、基板30の第2の主表面34に機械的に結合される。
【0015】
基板30の材料は、抵抗値の高いシリコン、アルミナ、ガラス、セラミック、サファイア、又は、1以上の任意数の電気的絶縁材料である。あるいは、基板は、その少なくとも一部が、導電性の材料、及び、少なくとも1つの絶縁層から構成される。絶縁性基板、又は、絶縁層は、第1の電気音響変換器40を第2の電気音響変換器50から電気的に絶縁するとともに、圧電絶縁変換器20を電気的に絶縁性にする。
【0016】
電気音響変換器40及び50は、例えば、薄膜電気音響変換器である。変換器40及び50はそれぞれ、入力AC電力を音響エネルギーに変換し、及び、音響エネルギーを出力AC電力に変換する働きをする。
【0017】
基板30、並びに、電気音響変換器40及び50を含む共振構造21は、動作周波数範囲内の少なくとも1つの共振周波数において機械的に共振する構造を有する。通常、共振構造21は、動作周波数範囲内において2以上の共振周波数を有する。
【0018】
図示の実施形態において、第1の電気音響変換器40は薄膜電気音響変換器であり、下側電極42、圧電層44、及び、上側電極46を有する。圧電層44を間に挟む電極42及び44は導電性材料から形成され、例えば、金(Au)やプラチナ(Pt)から形成される。電極42及び44は、圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に電気的に接続される。圧電層44の材料は任意の適当な圧電材料であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr、Ti)O3(PZT)が使用される。例えば厚み41のような第1の電気音響変換器40の寸法及び全体的質量は、動作周波数のようなファクタによって異なる場合がある。
【0019】
第2の電気音響変換器50は薄膜電気音響変換器であり、下側電極52、圧電層54、及び、上側電極56を有する。圧電層54を間に挟む電極52及び54は導電性材料から形成され、例えば、金(Au)又はプラチナ(Pt)から形成される。電極52及び54は、圧電絶縁変換器20のAC出力端子15に電気的に接続される。圧電層54の材料は任意の適当な圧電材料であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr、Ti)O3(PZT)が使用される。例えば厚さ41のような第1の電気音響変換器50の寸法及び全体的質量は、動作周波数のようなファクタによって異なる場合がある。
【0020】
第1及び第2の電気音響変換器40及び50は通常、公称で動作周波数に等しい周波数において機械的共振を有する。ただし、図4を参照して後で詳しく説明するように、電気音響変換器の機械的共振は、共振構造21の共振に比べて、実質的にQが小さい。具体的には、第1の電気音響変換器40の厚さ41はその電気音響変換器の音響波の波長の二分の一の整数倍であり、音響波は公称で動作周波数に等しい周波数を有する。圧電層44は、第1の電気音響変換器の厚さの大半を考慮するため、厚さ41は概ね次のようになる可能性がある:PZTの音速は、1秒あたり約4500メートル。動作周波数206MHzにおいて、第1の電気音響変換器の音響波の波長は、下記のように計算され、約22マイクロメートル(μm)である。
【0021】
(4.5×103メートル/秒)/(2.06×108)
公称で動作周波数に等しい周波数を有する電気音響変換器の音響波の波長の二分の一の整数倍の厚さを達成するために、第1の電気音響変換器40は、例えば22μmのような厚さ41を有するように製造される。通常、第1の電気音響変換器40の厚さ41は、例えば約10〜20μmである。第1の電気音響変換器40の水平方向の寸法43は、数百マイクロメートルから数千マイクロメートルの範囲であり、例えば300μm〜3000μmである。第2の電気音響変換器も、同様の構造を有する。
【0022】
動作周波数を有する入力AC電力IACが、AC入力端子13に印加される。第1の電気音響変換器40は、この入力AC電力IACを音響エネルギーに、すなわち、機械的振動に変換する。この音響エネルギーは、共振構造21に動作周波数の機械的振動を発生させる。入力AC電力IACの周波数は、共振構造21の共振周波数のうちの1つ、又はそれに近い周波数である。
【0023】
図2Aは、図1Aに示した入力AC電力IACの電圧波形の一例を示している。電圧波形13aは、例えば206MHzのような動作周波数で交番する2極方形波である。あるいは、図1Aに示す入力AC電力IACは、図2Bに示すような電圧波形13bを有するパルス状のDC電圧波形であり、動作周波数で交番する単極方形波であってもよい。本明細書では便宜上、ACという用語は、例えばAC電圧波形13aのような2極ACだけでなく、例えばパルス状電圧波形13bのような単極パルスDCも含むものとして解釈される。
【0024】
図1Aを再度参照すると、入力AC電力IACに応じて第1の電気音響変換器40によって生成される音響エネルギーは、共振構造21を動作周波数で共振させる。共振構造21の共振周波数は、基板30、第1の電気音響変換器40、及び、第2の電気音響変換器50の全てによって決まるが、それらの共振周波数は主に、基板30の厚さ、及び、基板材料中の音の速度によって決まる。したがって、共振構造21の共振周波数は主に、基板の厚さ及び材料によって決まる。動作周波数は、それらの共振周波数のうちの1つに等しくなるように選択される。例えば、基板30の厚さ31は、公称で動作周波数に等しい周波数を有する音響波の基板中での波長の二分の一の整数倍である。シリコン中での音の速度は1秒あたり約8500メートルである。206MHzの動作周波数において、公称でこの動作周波数に等しい周波数を有する音響波の基板30中での波長は、下記の式によって計算され、約41マイクロメートルである。
【0025】
(8.5×103メートル/秒)/(2.06×108)
したがって、基板30は、(41/2)マイクロメートルの整数倍、例えば164μm(半波長の8倍)の厚さ31を有する。通常、基板30は、100マイクロメートル程度の厚さ31を有する。
【0026】
第1の電気音響変換器40からの音響エネルギーは、共振構造21に共振、すなわち機械的振動を発生させる。また、入力AC電力IACを第1の電気音響変換器40に継続的に印加し続けると、共振構造21の中に動作周波数の音響エネルギーが蓄積される。共振構造21の機械的振動は、第2の電気音響変換器50を刺激する。第2の電気音響変換器50は、その機械的振動を出力端子15に供給される出力AC電力OACに変換する。
【0027】
図3Aは、図2Aに示した2極入力AC電圧波形13aに応答して第2の電気音響変換器50によって生成される出力AC電力OACの電圧波形15aを示している。図3Bは、図2Bに示したパルス状DC電圧波形13bに応答して第2の電気音響変換器50によって生成される出力AC電力OACの電圧波形15bを示している。図3A及び図3Bの出力AC電圧波形15a及び15bは、図2A及び図2Bに示した入力AC電圧波形13a及び13bとそれぞれ同じ周波数を有する。
【0028】
圧電絶縁変換器20によって生成される出力AC電力OACは、共振機械構造21の共振周波数に対する入力AC電力IACの周波数のような種々のファクタによって異なる場合がある。その理由は、圧電絶縁変換器20は、その共振構造21の機械的共振によって、入力AC電力を出力AC電力に変換するからである。
【0029】
次に、図4及び図1Aを参照すると、曲線22は、圧電絶縁変換器20の典型的実施形態の計算上の前方透過率S21が、例示的な周波数範囲140MHz〜260MHzにわたって異なることを示している。圧電絶縁変換器20の前方透過率S21は、第2の電気音響変換器50により出力される出力AC電力OACと、第1の電気音響変換器40に印加される入力AC電力IACの比である。圧電絶縁変換器20の計算上の前方透過率を計算する際に、第1及び第2の電気音響変換器40及び50の前方透過率S21が、指定された周波数範囲にわたって一定であるものと仮定したため、曲線22は、共振機械構造21の共振の周波数依存性を示している。共振機械構造21の機械的共振が複数あることから、例えば206MHzのような特定の動作周波数において曲線22によって示される前方透過率は、215MHzのような他の動作周波数におけるものよりも大きい。前方透過率は、共振機械構造21の共振周波数においてピークを有する。なぜなら、曲線22によって示される前方透過率は複数の周波数においてピークを有し、圧電絶縁変換器20は複数モードの動作特性を有するものと考えられているからである。
【0030】
図4も曲線29を示している。この曲線は、第1の電気音響変換器の典型的実施形態の計算上の前方透過率が、周波数に応じてどのように変化するかを示している。第2の電気音響変換器50も、同様の前方透過率特性を有する。第1の電気音響変換器40の計算上の前方透過率は、第1の電気音響変換器40によって生成される音響エネルギーと、第1の電気音響変換器40に印加される入力AC電力IACの比である。第1の電気音響変換器の前方透過率特性は、共振機械構造21の共振のQよりも実質的に小さいQを有する共振デバイスに固有のものである。その結果、例えば206MHz〜215MHzのような周波数範囲にわたって動作周波数を変化させることができ、それにより、圧電絶縁変換器20の前方透過率を実質的に変化させることができる。ただし、電気音響変換器40及び50の前方透過率はあまり変化しない。
【0031】
図1A及び図1Bを再度参照すると、図1Bは、圧電絶縁変換器20の幾つかの実施形態の一部を形成するオプションの整流平滑回路64を示している。整流平滑回路64は、AC出力端子に接続され、第2の電気音響変換器50によって生成された出力AC電力OACを出力DC電力ODCに変換する。整流平滑回路64は、整流器60、及び、フィルタコンデンサ61から構成される。一実施形態において、整流器60は、半波整流を行う単一のダイオード整流器である。他の実施形態において、整流器60は、全波整流を行うブリッジ整流器である。ブリッジ整流器は4つのダイオードから構成される。整流平滑回路64は、出力DC電力ODCをDC出力端子17に伝送する。図1Bは、DC出力端子17に接続された負荷62を示している。負荷62は抵抗器であってもよいが、一般的には、圧電絶縁変換器20からDC電力を引き出す回路である。
【0032】
他の実施形態において、第2の電気音響変換器50は、図1Cに示すように2つの下位変換器50a及び50bに分割される場合がある。下位変換器50a及び50bは、基板30の第1の主表面32に、図1Aに示したものと同様にして機械的に結合される。下位変換器50a及び50bは、同じ圧電素子54を共用するが、個別の電極52a、56a及び52b、56bを有する。下位変換器50aと50bは、逆相の電圧を生成するように直列に接続される。その結果、図1Cに示す実施形態によれば、2つのダイオードを使用するだけで、全波整流が可能となる。この直列接続は、下位変換器50bの電極52bを下位変換器50aの電極56aに接続することによって形成される。電極52bと電極56aの間の接続は、AC出力端子15のうちの1つによってコンデンサ61の一方の側に接続される。下位変換器50aの電極52aと下位変換器50bの電極56bは、AC出力端子15によって互いに接続され、ダイオード63によってキャパシタ61の一方の側に接続される。
【0033】
図5は、種々の動作周波数における負荷62の抵抗値に対する、整流平滑回路64を有する圧電絶縁変換器20の一実施形態によって伝送される出力DC電圧の依存性を示すグラフである。図1A、図1B及び図5を参照すると、曲線23、24、25、26、27及び28は、動作周波数200MHz、202MHz、203MHz、205MHz、206MHz及び207MHzのそれぞれにおける、負荷62の抵抗値に対する出力DC電圧の依存性を示している。図示の例において、負荷62の抵抗値は、約2オームから約50オームまでの範囲にある。図5に示す例において、出力DC電圧は、動作周波数206MHzにおいて最大になっている。この動作周波数は、図4に示した206MHzの共振ピークに対応する。
【0034】
図6は、動作周波数と出力DC電圧の関係を種々の方法で示している。曲線102は、入力AC電力IACの電圧波形を示している。この電圧は、周波数200MHzで、+10Vのピークと−10Vのピークの間を正弦波のように交番している。周波数200MHzの入力AC電力のとき、出力DC電力ODCは約5VDCの電圧になっている。出力DC電力の電圧波形は曲線104で示されている。図6は、入力AC電力IACの電圧や負荷62の抵抗値を変化させずに、入力AC電力106の周波数を200MHzから206MHzまで変化させたときの影響を示している。入力AC電力の電圧波形は曲線106によって示されている。周波数206MHzの入力AC電力のとき、出力DC電力の電圧は約40Vになっている。出力DC電力の電圧波形は曲線108によって示されている。したがって、動作周波数が206MHzであるときに、圧電絶縁変換器20は、動作周波数が200MHzであるときに比べて、約8倍のDC電圧を伝送することができる。これは、図4及び図5に示したグラフにも符号する。
【0035】
図4、図5及び図6は、図1Aに示した圧電絶縁変換器の入力電力IACに対する出力DC電力ODCの比が、動作周波数、すなわち、入力AC電力IACの周波数と、圧電絶縁共振器20の共振構造21の共振周波数との間の関係に強く依存することを示している。
【0036】
図7は、本発明によるDC−DCコンバータの例示的実施形態110を示すブロック図である。DC−DCコンバータ110は、図1Aを参照して上で説明した圧電絶縁変換器20の一実施形態を含む。図1A、図1B及び図7を参照すると、DC−DCコンバータ110は、発振器12、圧電絶縁変換器20、及び、整流器60から構成される。発振器12は、圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に接続される。整流器60は、圧電絶縁変換器20のAC出力端子15に接続される。
【0037】
図7に示す例において、整流器60は、整流平滑回路64の一部になっている。発振器12は、DC入力端子11において受信された入力DC電力IDCを入力AC電力IACに変換し、それを圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に供給する。入力AC電力IACの周波数は、圧電絶縁変換器20の動作周波数範囲内の周波数である。圧電絶縁変換器20は、発振器12から受信した入力AC電力IACを上記のように出力AC電力OACに変換し、それをAC出力端子15に供給する。整流器60は、圧電絶縁変換器20の出力AC端子15から出力AC電力OACを受信し、その出力AC電力を整流し、生のDC電力を生成する。図示の例において、整流平滑回路64は、整流器60、及び、フィルタコンデンサ61から構成され、フィルタコンデンサ61は、その生のDC電力をフィルタリングし、出力DC電力ODCをDC出力端子17に供給する。図7は、DC出力端子17に接続された負荷62を示している。
【0038】
フィルタコンデンサ61のキャパシタンスは通常小さい。なぜなら、フィルタコンデンサ61のキャパシタンスのRC時定数、及び、負荷62の最小推定抵抗値は、約4ナノ秒(概ね、206MHzの1周期)よりも大きいだけで足りるからである。例えば、10Vの出力DC電圧を1Aの最大電流で伝送する実施形態では、最小負荷抵抗値は10Ωである。そのような実施形態では、コンデンサ61のキャパシタンスは、約1ナノファラッドである。この値は、比較的低い周波数で動作する電源に使用される数十マイクロファラッド、又は、数百マイクロファラッドに比べて遥かに小さい。フィルタコンデンサ61の値、及び、整流器60のダイオードのタイプは、実施形態や動作周波数に応じて様々なものであってよい。
【0039】
図8A及び図8Bは、出力DC電力ODCの例示的な電圧波形を示している。図8Aは、図3Aに示した出力AC電力OACの電圧波形15aに応じて全波整流を行う整流平滑回路64の一実施形態によって生成される出力DC電力ODCの電圧波形17aを示している。図8Bは、図3Bに示した出力AC電力OACの電圧波形15aに応答して半波整流を行う整流平滑回路64の一実施形態によって生成される出力DC電力ODCの電圧波形17bを示している。フィルタコンデンサ61は、図8A及び図8Bに示した例におけるものと同じキャパシタンスを有する。
【0040】
図4、図5及び図6に示し、上で説明したように、圧電絶縁変換器20によって伝送される出力DC電力ODCの電圧は、共振機械構造21の共振周波数や、負荷によって引き出される電流よりも、周波数制御される発振器12によって生成される入力AC電力IACの周波数の影響を受ける。DC−DCコンバータ110の実施形態によっては、発振器12は固定数の発振器であり、DC−DCコンバータは、DC出力端子17と負荷62の間に配置された従来のDC整流器(図示せず)を更に有する場合がある。このDC整流器は、温度変化等によって入力AC電力の周波数、共振機械構造21の共振周波数、及び、負荷電流のうちの1以上が変動しても、負荷62に一定の電流を供給する働きをする。
【0041】
図7に示した実施形態のDC−DCコンバータ110は、温度変化等によって入力AC電力の周波数、共振機械構造21の共振周波数、及び、負荷電流のうちの1以上が変動しても、DC−DCコンバータに一定電圧の出力DC電力ODCを伝送させるように入力AC電力の周波数を制御するためのフィードバック回路を有する。DC−DCコンバータ110において、発振器12は、周波数制御回路65を含む周波数制御型発振器である。周波数制御型発振器12がDC入力端子11において受信した入力DC電力IDCを圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に供給される入力AC電力IACに変換するときの周波数は、周波数制御電圧に使用される周波数制御信号FCSによって決定される。また、発振器12は、第1の変換器40に供給される入力AC電力IACの電圧と、第1の変換器40に流れ込む電流との間の位相関係をモニタリングし、動作周波数と、機械的共振システム21の機械的共振の間の相対的関係を判定するための回路を更に有する場合がある。
【0042】
上記のフィードバックループは、DC−DCコンバータ110のDC出力端子17と、周波数制御信号FCSを出力する周波数制御型発振器12の周波数制御入力65との間に接続される。このフィードバックループは、変調器64、フィードバック圧電絶縁変換器420、復調器66、及び、コンパレータ68を含む。
【0043】
フィードバック圧電絶縁変換器420と圧電絶縁変換器20は、同じ基板69上に作成される。フィードバック圧電絶縁変換器420は、圧電絶縁変換器20と同様の構造を有し、基板69の一部として構成される共振構造421、第1の電気音響変換器440、及び、第2の電気音響変換器450を有する。
【0044】
復調器64は、DC出力端子17に電気的に接続された変調入力、及び、圧電絶縁変換器20のAC出力端子15に電気的に接続されたキャリア入力を有する。変調器64は、フィードバック圧電絶縁変換器420の第1の電気音響変換器440に電気的に接続された出力を更に有する。出力AC電力OACのAC電圧波形は、変調器64のキャリア入力において圧電絶縁変換器20のAC出力端子15から受信され、キャリア信号として機能する。
【0045】
フィードバック圧電絶縁変換器420の第2の電気音響変換器450は、復調器66の復調信号入力に電気的に接続される。復調器66は、キャリア入力及び出力を更に有する。キャリア入力は、圧電絶縁変換器20の入力端子13に電気的に接続される。出力は、コンパレータ68の一方の入力に接続される。コンパレータ68は、基準入力及び出力を有する。基準入力は、基準電圧VREFを受信するように電気的に接続される。出力は、周波数制御型発振器12の周波数制御入力65に電気的に接続される。
【0046】
動作上、変調器64は、ミキサとして実施される場合もあり、圧電絶縁変換器20のAC出力端子から受信したキャリア信号を、DC出力端子17から受信した出力DC電力ODCによって変調する。この変調は、最終的に得られる変調キャリア信号MCSが、出力DC電力ODCの電圧を表わすものになるような方法で実施され、最終的に得られる変調キャリア信号MCSが、大きな精度のロスを生じることなくフィードバック圧電絶縁変換器420を通して伝送されるような方法で実施される。フィードバック圧電絶縁変換器420の前方伝達関数は、図4に曲線22で示すように、動作周波数と、フィードバック圧電絶縁変換器の一部を構成する共振機械構造の共振周波数の間の関係によって決まるため、振幅変調は、好ましい変調方法ではない。ただし、振幅変調が使用される場合もある。適当な代替の変調方法としては、周波数変調、位相変調、パルス変調、及び、デジタル符号化などがある。
【0047】
フィードバック圧電絶縁変換器420は、圧電絶縁変換器20と同様に動作する。つまり、フィードバック圧電絶縁変換器420は、その第1の電気音響変換器440において、変調器64によって生成された変調キャリア信号MCSを受信する。第1の電気音響変換器は、その変調キャリア信号を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーによって共振機械構造421に機械的振動を発生させる。変調キャリア信号は、出力AC電力OACと同じ周波数を有し、機械的共振構造421は、共振機械構造21と同様の共振周波数を有する。したがって、変調キャリア信号は、フィードバック圧電絶縁変換器420の動作周波数範囲内の周波数を有する。第2の電気音響変換器450は、共振構造421における機械的振動の一部を変調キャリア信号OMCに変換して出力する。
【0048】
復調器66は、そのキャリア入力において、AC入力端子13から受信した信号を使用して出力変調キャリア信号OMCを復調し、復調されたフィードバック信号DFSを生成する。この復調されたフィードバック信号は、DC−DCコンバータ110の出力端子17におけるDC電圧を表わすDCレベルである。コンパレータ68は、復調されたフィードバック信号DFSを基準電圧VREFと比較し、周波数制御信号FCSを生成する。コンパレータ68は、この周波数制御信号FCSを周波数制御型発振器12の周波数制御入力65に供給する。
【0049】
したがって、DC出力端子17における出力DC電力ODCのDC電圧が変化した場合、対応する変化が、変調キャリア信号MCS、出力変調キャリア信号OMC、及び、復調フィードバック信号DFSに現れる。復調フィードバック信号を基準電圧を比較することにより、周波数制御型発振器12の周波数制御入力65における周波数制御信号FCSの変化が得られる。周波数制御型発振器12において、出力DC電力ODCの電圧の変化によって周波数制御入力65に生じる周波数制御信号FCSの変化は、出力DC電力ODCの電圧の変化を反転させるような仕方で、入力AC電力IACの周波数を変化させる。その結果、出力DC電力ODCの電圧は、その元の電位まで復元される。
【0050】
図9は、圧電絶縁変換器を製造するための本発明による方法を示すフロー図70である。ブロック72では、絶縁性基板を用意する。この絶縁性基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。ブロック74では、基板の第1の主表面上に第1の電気音響変換器を形成する。ブロック76では、第1の電気音響変換器とは反対側の基板の第2の主表面上に第2の電気音響変換器を形成する。
【0051】
図1Aに示す圧電絶縁変換器20の一実施形態を製造するための図9に示した方法の一実施形態では、ブロック72において、第1の主表面32、及び、第1の主表面32とは反対側の第2の主表面42を有する絶縁性基板30を用意する。ブロック74では、基板30の第1の主表面上に第1の電気音響変換器40を形成する。ブロック76では、第1の電気音響変換器40とは反対側の基板30の第2の主表面34上に、第2の電気音響変換器50を形成する。
【0052】
上記の方法は通常、数千もの圧電絶縁変換器を一度に1つのウェーハ上に作成する際に使用される。プロセスの最後に、ウェーハは個々の圧電絶縁変換器に分離される。その結果、各圧電絶縁変換器を製造するコストが低減される。以下では、個々の圧電絶縁変換器を製造するための別の方法についても説明する。この方法もまた、数千もの圧電絶縁変換器を一度に製造するためにウェーハ規模で一般に実施されるという理解に基づくものである。
【0053】
図9に示した圧電絶縁変換器を製造する方法は、図1Aに示した圧電絶縁変換器20とは構造の細部が異なる圧電絶縁変換器の製造にも使用することができる。例えば、図10は、本発明の他の実施形態による圧電絶縁変換器120を示している。図1Aの圧電絶縁変換器20の要素に対応する図10の圧電絶縁変換器120の要素には、同様の参照符号を付してある。図10を参照すると、圧電絶縁変換器120は、少なくとも一部が導電性の材料から形成されたベース層136を含む。電気音響変換器40と50を互いに電気的に絶縁するために、基板130は、電気音響変換器40及び50と、ベース層136との間にそれぞれ挿入された絶縁材料の層131を更に含む。あるいは、基板130は、電気音響変換器40及び50のうちの一方だけと、ベース層136との間に、絶縁材料の層131を更に有する場合がある。更に別の例(図示せず)において、絶縁材料の層は、少なくとも一部が導電性のベース材料の2つの層の間に挟まれ、電気音響変換器40及び50はそれぞれ、ベース層のうちの対応する一方の上に作成される場合がある。電気音響変換器40と50の間に少なくとも1つの絶縁材料の層131が存在することから、基板130は、その少なくとも一部に導電性材料を含む場合であっても、絶縁性と呼ばれる。他の実施形態において、基板130の材料は、抵抗値の高いシリコン、アルミナ、ガラス、セラミック、サファイア、又は、他の適当な導電性材料である場合がある。
【0054】
図11A、図11B及び図11Cは、本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態220を示している。図1Aに示した圧電絶縁変換器20に対応する図11A、図11B及び図11Cの圧電絶縁変換器220の要素には同じ参照符号を付し、ここで再度説明はしない。似ているが変更された部分には、同じ参照符号の後ろに「a」を付したものが使用される。
【0055】
図11A、図11B及び図11Cを参照すると、圧電絶縁変換器220は、第1の基板132及び第2の基板134から構成される。各基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。すなわち、第1の基板132は、第1の主表面32a、及び、第1の主表面32aとは反対側の第2の主表面33を有し、第2の基板134は、第1の主表面34a、及び、第1の主表面34aとは反対側の第2の主表面37を有する。第1の電気音響変換器40は、第1の基板134の第1の主表面34a上に配置される。第2の電気音響変換器50は、第2の基板134の第1の主表面34b上に配置される。第1の基板132と第2の基板134は互いに結合され、第2の主表面33が第2の主表面37に隣接し、第1の電気音響変換器40が第2の電気音響変換器50の反対側にくるようにして結合される。第1の基板132と第2の基板134は、あわせて絶縁性基板30aを構成する。
【0056】
圧電絶縁変換器220は次のようにして製造される:第1の基板132及び第2の基板134を用意する。各基板は、今述べたように第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の基板132の第1の主表面32a上に第1の電気音響変換器40を形成する。第2の基板134の第1の主表面34b上に第2の電気音響変換器50を形成する。各電気音響変換器は、第1の電極層、圧電層、及び、第2の電極層を以下で説明するものと同様に、順番に蒸着し、パターニングすることによって形成される。第1の基板132の第2の主表面33は第2の基板134の第2の主表面37に結合され、第1の電気音響変換器40が、第2の電気音響変換器50の反対側にくるようにして結合される。第1の基板132と第2の基板134の結合により、絶縁性基板30aが形成される。
【0057】
一実施形態では、第1の基板132と第2の基板134を結合する前に、それらが密接に接触するように、第1の基板132の第2の主表面33、及び、第2の基板134の第2の主表面37が互いに研削され、研磨され、又は他の処理が施される。基板132と基板134の接合には、従来の基板接合技術が使用される。
【0058】
図12は、本発明による圧電絶縁変換器の代替実施形態320を示す平面図である。図12は、集積回路ダイ上に作成されたように見えるような圧電絶縁変換器の平面図である。図12において、他の部分の影すなわち後ろに隠れている圧電絶縁変換器320の部分は一般に、図示されていない。ただし、圧電絶縁変換器320の特定の幾つかの部分は、圧電絶縁変換器320を説明する目的で、破線を使用して描かれている。図13A、図13B、図13C、及び、図13Dは、圧電絶縁変換器320の製造における種々の工程での圧電絶縁変換器320を示す断面図である。これらの断面図はすべて、図12のライン13D−13Dに沿って切断して見たときの図である。図12、及び、図13A〜図13Dでは、本発明の圧電絶縁変換器の構造及び製造方法の詳細を説明する。
【0059】
圧電絶縁変換器320は、図9を参照して上で説明したプロセスに従って、既知の半導体製造プロセス、例えば、蒸着、パターニング、及び、エッチングを使用して製造される。図1Aの圧電絶縁変換器20の要素に対応する図12及び図13A〜図13Dの圧電絶縁変換器320の要素には同じ参照符号を付し、ここで再度説明はしない。
【0060】
まず図12及び図13Dを参照すると、圧電絶縁変換器320は、第1の基板82及び第2の基板92から構成される。第1の電気音響変換器40及び第2の電気音響変換器50は、第1の基板82の互いに反対方向を向いた主表面85及び87にそれぞれ配置される。第2の基板にはキャビティ94が画定され、キャビティ94は、主表面95から第2の基板の中にまで延びている。第2の基板92は第1の基板82に接合され、主表面95が主表面85に隣接し、第1の電気音響変換器40がキャビティ94の中に配置されるようにして接合される。後で詳しく説明するように、基板82と基板92は、第2の電気音響変換器50を作成する前に互いに結合される。したがって、第2の電気音響変換器50の製造の際には、第1の電気音響変換器40は第2の基板92によって保護される。
【0061】
圧電絶縁変換器330は次のようにして製造される。第1の絶縁性基板82及び第2の絶縁性基板92を用意する。各基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の基板82の第1の主表面85上に第1の電気音響変換器40を形成する。第2の基板92の第1の主表面95から延びるキャビティ94を第2の基板に形成する。第1の変換器40が第2の基板92のキャビティ94の中に配置されるようにして、第1の絶縁性基板82の第1の主表面85と第2の基板92の第1の主表面95を互いに接合する。結合の後、第1の電気音響変換器40とは反対側の第1の絶縁性基板82の第2の主表面87上に、第2の変換器50を形成する。
【0062】
次に、図12及び図13A〜図13Dを更に詳しく参照し、圧電絶縁変換器320の製造について説明する。図13Aを参照すると、第1の主表面85、及び、第1の主表面85とは反対側の第2の主表面87を有する第1の基板82を用意する。第1の基板82は、例えばシリコンウェーハの一部である。他の実施形態において、第1の基板82の材料は、抵抗値の高いシリコン、アルミナ、ガラス、セラミック、サファイア、又は、他の適当な導電性材料である。第1の基板82は、圧電絶縁変換器320の絶縁性基板の少なくとも一部を構成する。
【0063】
第1の基板82を酸化させ、主表面85上に厚さ100nm〜10μの熱二酸化ケイ素の絶縁層84を形成する。あるいは、絶縁層84は、化学気相蒸着によって蒸着してもよい。更に絶縁層分離が必要な場合、絶縁層84は、追加又は代替として、スパッタリングによって蒸着された100nm〜10μm厚の酸化アルミニウム(AlOx)のような絶縁材料の層から構成される場合がある。絶縁層84の主表面は、第1の基板82の主表面85になる。
【0064】
次に、主表面85から第1の基板82の中にまで延びる接点バイア80a、80bを形成する。任意数の接点バイアを形成することができる。参照符号80は通常、接点バイアを指すのに使用されるが、80の後に文字「a」が続く参照符号は、特定の接点バイア、又は、接点バイアの特定のセットを指すために使用される。
【0065】
接点バイア80は、まず、従来のディープエッチングプロセスを使用して、絶縁層84を貫通するようにエッチングし、次いで、基板82を貫通する通路をエッチングすることによって形成される。バイア80の深さ81は、図1Aに示すように、絶縁性基板30の所望の最終的な厚さによって決まる。図示の例では、バイア80は、約100μmの深さ81を有し、その直径83は10μm未満である。第1の基板82が既に所望の最終的な厚さを有している実施形態では、接点バイア80は、第1の基板82の厚さ全体を貫通して延びる。接点バイア80には導電率の高い金属が充填され、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、又は、プラチナ(Pt)が充填される。必要であれば、CMP(化学機械研磨)やエッチバックプロセスを使用して、バイア80の上面を主表面85と同じ高さにしてもよい。
【0066】
第1の基板82上に第1の電気音響変換器40を形成する前に、第1の基板82の主表面85上に、例えばTiAlN(窒化アルミニウムチタン)の接着層86を蒸着する。接着層86は、第1の変換器40とd際1の基板82の接着を助ける働きをする。また、接着層86は、バイア80と第1の変換器40の下側電極40との間の導電性拡散障壁としても機能する。それによって、圧電層44を蒸着する際に、接点バイア80が損傷を受けることが防止される。接着層86には、対酸化性材料を使用することが好ましい。なぜなら、圧電層44は、酸化性雰囲気中で高温(例えば、550℃)で蒸着されるからである。TaSiN(窒化タンタルシリコン)、TiN(窒化チタン)、及び、TiAlのような他の材料を接着層86に使用することも可能である。接着層86は、数ナノメートル程度の厚さを有し、例えば、50nm〜100nmの厚さを有する。
【0067】
次に、第1の基板82の第1の主表面85上に、第1の電気音響変換器40を作成する。第1の変換器40は、複数の層を有し、各層が順番に蒸着され、次いでエッチングされる。ただし、図示の実施形態において、第1の電気音響変換器40の層42、44及び46は、順番に蒸着された後、上から下へ順番にエッチングされる。第1の変換器を作成するために、下側電極42を、例えば厚さ約100nmでスパッタ蒸着する。下側電極42の材料には、任意の適当な貴金属を使用することができ、例えば、プラチナ(Pt)やイリジウム(Ir)が使用される。直列抵抗を改善するために、下側電極は適当な高導電性材料の層を更に含み、例えば、厚さ約1μmでスパッタ蒸着された金(Au)の層を更に含む。上記の貴金属の層は、高導電性金属の層の上に蒸着される。下側電極42の張り出し部は、図12に示す接点バイア80bの上に配置され、接点バイア80bとの接点を形成する。
【0068】
圧電層44は、例えば、厚さ約1μm〜約20μmの範囲でスパッタ蒸着されたPZTの層である。他の蒸着方法を使用して圧電層44を形成してもよく、例えば、化学気相蒸着や有機金属化学気相蒸着が使用される。上側電極46は、例えば、約100nmの厚さでスパッタ蒸着されたプラチナ(Pt)や金(Au)である。Auを使用する場合、上側電極46は、圧電層44とAu層の間に、例えば、薄いクロムの接着層(図示せず)を含む場合がある。
【0069】
上側電極46はパターニングされ、適当なエッチング剤を使用してドライエッチングによりエッチングされる。圧電層44はパターニングされ、ウェットエッチング法またはドライエッチング法によりエッチングされる。下側電極42及び接着層86のエッチングは、絶縁層84、並びに、接点バイア80aに達したところで停止される。
【0070】
直列抵抗を改善するために、例えば、リフトオフ法を使用して、上側電極46の上にAu層を追加することができる。この層は、図面には描かれていない。一実施形態において、圧電層44の上の上側電極46の厚さは、圧電層44の下にある下側電極42の厚さと同じである。第1の変換器40の水平方向の寸法は、用途によって異なる場合がある。例示的実施形態において、第1の変換器40の水平方向の寸法は、約300μm〜約3mmの範囲内にある。
【0071】
SiO2の層のような誘電体層を蒸着及びエッチングし、階段状絶縁体47を画定する。階段状絶縁体47は、第1の電気音響変換器40の圧電層44及び下側電極42の一部を覆う。次に、金(Au)のような適当な導電性金属の層を、数マイクロメートルの一般的厚さ、例えば約1μm〜約3μmで蒸着する。この層をエッチングし、階段状絶縁体の上に、第1の変換器40の上側電極46から接点バイア80aまで延びる導電性トレース49を画定する。導電性トレース49と第1の変換器40の間の重なり合いを最小限に抑えることにより、第1の変換器40又は圧電絶縁変換器20、あるいはそれら両方の共振特性に対する、導電性トレース49の重なり部分の質量増加の影響を最小限に抑えることができる。
【0072】
次に図12及び図13Bを参照すると、第2の基板92が用意される。第2の基板92は、第1の主表面95、及び、第1の主表面95とは反対側の第2の主表面97を有する。通常、基板82及び92は、上記のようにシリコンウェーハの一部である。第2の基板92にキャビティ94を形成する。このキャビティは、第1の主表面95から第2の基板92の中にまで延びる。キャビティ94は、第1の電気音響変換器40及び対応する隙間(クリアランス)を収容するのに十分なだけの深さ91及び水平方向の寸法93を有する。約50μm〜100μmの範囲の隙間であれば、通常は十分である。
【0073】
次に、第1の主表面85が第1の主表面95に接触し、第1の変換器40がキャビティ94の中に配置されるようにして、第1の基板82を第2の基板に接合する。基板82と基板92の接合には、標準的なシリコン接合プロセスが使用される。接合の結果は、図13Bに描かれている。2つの基板82と92の接合により、第1の変換器がキャビティ94の中に密閉される。その結果、第1の基板82の第2の主表面上にある第1の変換器40とは反対側の第2の電気音響変換器を製造する際に、第1の変換器40が保護される。
【0074】
次に、図12及び図13Cを参照すると、第1の基板82の第2の主表面87を研削及び研磨する。全面背面研削法を使用して、第1の基板82の第2の主表面87から材料を除去し、その新たな第2の主表面87をCMPプロセスによって研磨する。CMPプロセスによれば、研磨プロセスを接点バイア80に達した時点で停止させることができる。接点バイアの深さが約100μmである一実施形態において、これらの研削及び研磨プロセスの後、第1の基板82の通常の厚さは約100μmになる。したがって、この背面研削研磨プロセスの後、接点バイア80は、第1の基板82を貫通して延びる。したがって、接点バイア80は、背面研削研磨プロセスの停止インジケータとして働き、また、第2の電気音響変換器50を作成する際の位置決め目標としても機能する。接点バイア80は、キャビティ94の中に密閉された第1の電気音響変換器40の電極42及び46と、第1の基板82の第2の主表面87上に後で作成されることになる接点パッド48c及び48dとの間を電気的に接続する働きをする。
【0075】
背面研削研磨プロセスの後、第1の電気音響変換器40とは反対側の第1の基板82の第2の主表面87上に、第2の電気音響変換器50を作成する。第2の電気音響変換器50を作成するためのプロセスは、第1の電気音響変換器40を作成するためのプロセスと同様であるため、ここで再度詳しい説明はしない。
【0076】
次に、図12及び図13Dを参照すると、第2の電気音響変換器50の作成後、上側電極56の上に厚い導電性材料の層を追加し、直列抵抗を最小限に抑える。この導電性材料は、例えばリフトオフ法によって蒸着される例えば金(Au)である。図面では、この厚い導電性材料の層は、上側電極56の一部であるかのように描かれている。上側電極56と下側電極52は通常、全体的に同じ厚さを有する。第2の電気音響変換器の水平方向の寸法は、用途によって異なる場合がある。通常、第2の電気音響変換器50の水平方向の寸法は、第1の電気音響変換器40のものと同じである。
【0077】
SiO2のような誘電体材料の層を蒸着し、エッチングし、階段状絶縁体57を画定する。この階段状絶縁体57は、第2の電気音響変換器50の圧電層54及び下側電極52の一部を覆う。次に、金(Au)のような適当な導電性材料の層を、厚さ数マイクロメートルの通常の厚さ、例えば1μm〜3μmの厚さで蒸着する。この層をエッチングし、接点パッド48a、48b、及び、接点パッド59a、59bを画定する。接点パッド84a及び48bの一部は、接点バイア80a及び80bとの電気的接点をそれぞれ形成する。接点パッド48a及び48b、並びに、接点バイア80c及び80dによって、キャビティ94の中に収容された第1の電気音響変換器40の上側電極46及び下側電極42のそれぞれへの電気的接続が可能になる。接点パッド59aの一部は、階段状絶縁体57の上に延び、第2の変換器50の上側電極56に電気的に接触する。接点パッド59bは、第2の変換器50の下側電極52に対する電気的接続を形成する。接点パッド59aと第2の変換器50の重なり合い部分を最小限に抑えることにより、第2の変換器50又は圧電絶縁変換器20、あるいはそれら両方の共振特性に対する、接点パッド59aの重なり部分の質量増加の影響を最小限に抑えることができる。
【0078】
図1Aを更に参照すると、接点パッド48a及び48bは、第1の電気音響変換器40の電極46及び42にそれぞれ入力AC電力IACを供給するAC入力端子13として機能する。接点パッド59a及び59bは、第2の電気音響変換器50の電極56及び52からそれぞれ出力AC電力OACを受け取るためのAC出力端子15として機能する。
【0079】
本発明の幾つかの具体的実施形態について図示説明してきたが、本発明が、図示説明した特定の形態や部品構成に限定されることはない。例えば、別の構成、サイズ、又は、材料を使用することもでき、その場合でも、本発明の範囲に入るであろう。本発明は、特許請求の範囲により規定される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】本発明の一実施形態による圧電絶縁変換器を示す図である。
【図1B】図1Aの圧電絶縁変換器からの出力電力を整流及びフィルタリングするように構成された回路を示す図である。
【図1C】全波整流を行う圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図2A】図1Aの圧電絶縁変換器への例示的な入力電力の電圧波形を示す図である。
【図2B】図1Aの圧電絶縁変換器への例示的な入力電力の電圧波形を示す図である。
【図3A】図1Aの圧電絶縁変換器からの例示的な出力電力の電圧波形を示す図である。
【図3B】図1Aの圧電絶縁変換器からの例示的な出力電力の電圧波形を示す図である。
【図4】図1Aの圧電絶縁変換器の動作周波数と出力電圧の関係を示す図である。
【図5】図1Aの圧電絶縁変換器の動作周波数と出力電圧の関係を示す図である。
【図6】図1Aの圧電絶縁変換器の動作周波数と出力電圧の関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態によるDC−DCコンバータを示す図である。
【図8A】図3Aの回路からの例示的DC出力電力の電圧波形を示す図である。
【図8B】図3Bの回路からの例示的DC出力電力の電圧波形を示す図である。
【図9】本発明による圧電絶縁変換器を製造する方法を示すフロー図である。
【図10】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図11A】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図11B】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図11C】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図12】集積回路ダイ上に製造されるように見えるような本発明の圧電絶縁変換器の平面図である。
【図13A】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【図13B】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【図13C】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【図13D】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【背景技術】
【0001】
背景技術
圧電絶縁変圧器は、電気的素子間を絶縁する働きをする。従来の絶縁変圧器は、磁気結合を利用し、伝統的に線周波数で動作する。線周波数で動作する絶縁変圧器は、大きくて重く、絶縁変圧器が絶縁する対象の回路要素に一体化させることが難しい。比較的最近になって、線周波数よりも実質的に高い周波数で動作する絶縁変圧器が紹介された。こうした絶縁変圧器はサイズや重さが低減されているが、それでもまだ、絶縁変圧器が絶縁する対象の回路要素に一体化させることは依然として難しい。光結合器や微小電気機械システム(MEMS)デバイスによる低電力絶縁も可能である。しかしながら、これらのデバイスの送電能力は数ミリワットに制限される。
【0002】
したがって、絶縁能力を有し、数ミリワットよりも大きな電力を伝送することが可能な電力絶縁装置が必要とされている。用途によっては、絶縁する対象の電気回路に一体化させることが可能な電力絶縁装置が更に必要とされる場合がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
この要求は本発明によって満たされる。本発明の第1の実施形態において、圧電絶縁変圧器は、動作周波数範囲に特徴を有し、動作周波数範囲内において少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造を有する。共振構造は、絶縁構造、第1の電気音響変換器、及び、第2の電気音響変換器を含む。基板は、第1の主表面、及び、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の電気音響変換器は、第1の主表面に機械的に結合される。第2の電気音響変換器は、第2の主表面に機械的に結合される。一方の変換器は、動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーによって共振構造に機械的振動を発生させる。他方の変換器は、その機械的振動を出力電力に変換する。
【0004】
本発明の第2の実施形態において、DC−DCコンバータは、発振器、整流器、及び、圧電絶縁変圧器を含む。圧電絶縁変圧器は、発振器に電気的に接続された入力部と、整流器に電気的に接続された出力部とを有する。任意選択で、DC−DCコンバータは、更に別の圧電絶縁変圧器を利用するフィードバック型調整器を含む場合がある。それらの圧電絶縁変圧器は通常、同じ基板上に作成される。
【0005】
本発明の第3の実施形態として、製造方法を開示する。絶縁性基板を用意する。絶縁性基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面の反対側の第2の主表面を有する。基板の第1の主表面上に第1の電気音響変換器を形成し、基板の第2の主表面上に第2の電気音響変換器を形成する。
【0006】
本発明の他の態様及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面とともに、下記の説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
詳細な説明
次に、本発明の種々の実施形態を示す図面を参照し、本発明について説明する。図中、種々の構造又は部分のサイズは、例示のために強調され、他の構造又は部分に比べて同じ縮尺ではない場合があり、したがって、それらは本発明の一般的構造を示している。また、本発明の種々の態様は、他の構造又は部分、あるいはそれら両方の「上」又は「上方」に位置する構造又は部分を参照して説明される。例えば、「上」又は「上方」といった相対的用語及びフレーズは、本明細書では、図面に描かれているような他の構造又は部分に対する或る構造を、あるいは構造の関係を説明するために使用される。これらの相対的用語は、図面に描かれた向きだけでなく、装置の他の向きも含むものとして解釈される。例えば、図面上の装置が、反転され、若しくは、回転され、あるいはそれら両方がなされた場合、他の構造又は部分の「上」又は「上方」と記載された構造又は部分は、今度は、他の構造又は部分の「下」、「下方」、「左」、「右」、「正面」、又は、「背面」になる場合がある。他の構造又は部分の「上」又は「上方」にある構造又は部分と言った場合、それらの間には更に別の構造又は部分が介在する場合もあると解釈される。介在する構造又は部分がなく、他の構造又は部分の「上」又は「上方」に形成された構造又は部分を指す場合、本明細書では、他の構造又は他の部分の「上に直接」又は「上方に直接」形成されると記載する。本明細書全体を通じて、同じ要素には同じ参照符号が使用される。
【0008】
例示目的の図面に示されているように、本発明の実施形態は、動作周波数範囲に特徴を有する共振構造を備えた圧電絶縁変換器として例示される。共振構造は、動作周波数範囲内において少なくとも1つの機械的共振を有する。共振構造は、絶縁性基板、第1の電気音響変換器、及び、第2の電気音響変換器を含む。基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の電気音響変換器は第1の主表面に機械的に結合される。第2の電気音響変換器は第2の主表面に機械的に結合される。一方の電気音響変換器は、動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーによって共振構造に機械的共振を発生させる。他方の電気音響変換器は、その機械的共振を出力電力に変換する。
【0009】
第1の変換器及び第2の変換器は、電力から音響エネルギーへの変換、及び、音響エネルギーから電力への変換を行う圧電電気音響変換器のような電気音響変換器である。第1の電気音響変換器に印加された、共振構造の共振周波数の1つを有する、又は、その共振周波数に近い動作周波数を有する入力電力(交流(AC)電力、又は、パルス上の直流(DC)電力)は、第1の電気音響変換器によって音響エネルギーに変換される。この音響エネルギーは、共振構造に動作周波数の機械的振動を発生させる。入力電力を連続的に印加することで、共振周波数の音響エネルギーが共振構造に蓄積される。第2の電気音響変換器は、この共振器の機械的振動を出力電力に変換する。本明細書の開示において、ACという用語は、パルス状のDCも含むものと解釈される。
【0010】
本発明の圧電絶縁変換器の動作周波数は、数十メガヘルツ又は数百メガヘルツ程度であり、電力絶縁変換器において一般的に使用されている周波数よりもかなりに高い。動作周波数が高いため、圧電絶縁変換器は、従来のいずれの絶縁変換器よりも実質的に小型にすることができる。圧電絶縁変換器は、1平方ミリメートル未満の面積ダイにおいて実施することができる。このサイズは、既存のどの電気的アイソレータや変換装置よりも小さい。圧電絶縁変換器は小さいので、既知の従来の集積回路(IC)製造方法を使用して、数千もの圧電絶縁変換器を同時に製造することが可能である。その結果、本発明の圧電絶縁変換器は、従来のアイソレータや変換器に比べて、低コストで大量に製造することができる。
【0011】
本発明の圧電絶縁変換器は、そのサイズが小さく、その製造プロセスが既存のIC製造プロセスと互換性を有するため、圧電絶縁変換器によって絶縁する対象の他の回路と共に1つのチップ上に作成することができる。性能に関しては、本発明の圧電絶縁変換器は、DCから約1GHzの周波数範囲において良好な電気的絶縁が可能である。例えば、本発明の圧電絶縁変換器は、イーサネット(登録商標)ネットワークアダプタのような電気通信の用途に使用されるICチップにおいて有用である場合がある。
【0012】
また、本発明によれば、電気的アイソレータや変換器のコストが大幅に低減されるだけでなく、高速デジタル回路や高速アナログ回路のオンチップ絶縁のような、アイソレータや変換器の新たな用途も可能になる。また、こうした新たな用途には、例えば、生命維持システムにおける回路間の電力の絶縁が重要であることが判明している医療用途のような、比較的大電力な環境における電力絶縁も含まれる。
【0013】
図1Aは、本発明の一実施形態による圧電絶縁変換器20を示している。図1Aを参照すると、圧電絶縁変換器20は、動作周波数範囲内において少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造21として実施される。典型的な実施形態において、動作周波数範囲の中心周波数は、約20MHz〜約500MHzの範囲にある。本明細書に記載する例示的実施形態の動作周波数範囲の中心周波数は、約200MHzである。
【0014】
共振構造21は、絶縁構造20、第1の電気音響変換器40、及び、第2の電気音響変換器50から構成される。基板30は、第1の主表面32、及び、第1の主表面32とは反対側の第2の主表面34を有する。第1の電気音響変換器40は、基板30の第1の主表面32に機械的に結合される。第2の電気音響変換器50は、基板30の第2の主表面34に機械的に結合される。
【0015】
基板30の材料は、抵抗値の高いシリコン、アルミナ、ガラス、セラミック、サファイア、又は、1以上の任意数の電気的絶縁材料である。あるいは、基板は、その少なくとも一部が、導電性の材料、及び、少なくとも1つの絶縁層から構成される。絶縁性基板、又は、絶縁層は、第1の電気音響変換器40を第2の電気音響変換器50から電気的に絶縁するとともに、圧電絶縁変換器20を電気的に絶縁性にする。
【0016】
電気音響変換器40及び50は、例えば、薄膜電気音響変換器である。変換器40及び50はそれぞれ、入力AC電力を音響エネルギーに変換し、及び、音響エネルギーを出力AC電力に変換する働きをする。
【0017】
基板30、並びに、電気音響変換器40及び50を含む共振構造21は、動作周波数範囲内の少なくとも1つの共振周波数において機械的に共振する構造を有する。通常、共振構造21は、動作周波数範囲内において2以上の共振周波数を有する。
【0018】
図示の実施形態において、第1の電気音響変換器40は薄膜電気音響変換器であり、下側電極42、圧電層44、及び、上側電極46を有する。圧電層44を間に挟む電極42及び44は導電性材料から形成され、例えば、金(Au)やプラチナ(Pt)から形成される。電極42及び44は、圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に電気的に接続される。圧電層44の材料は任意の適当な圧電材料であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr、Ti)O3(PZT)が使用される。例えば厚み41のような第1の電気音響変換器40の寸法及び全体的質量は、動作周波数のようなファクタによって異なる場合がある。
【0019】
第2の電気音響変換器50は薄膜電気音響変換器であり、下側電極52、圧電層54、及び、上側電極56を有する。圧電層54を間に挟む電極52及び54は導電性材料から形成され、例えば、金(Au)又はプラチナ(Pt)から形成される。電極52及び54は、圧電絶縁変換器20のAC出力端子15に電気的に接続される。圧電層54の材料は任意の適当な圧電材料であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr、Ti)O3(PZT)が使用される。例えば厚さ41のような第1の電気音響変換器50の寸法及び全体的質量は、動作周波数のようなファクタによって異なる場合がある。
【0020】
第1及び第2の電気音響変換器40及び50は通常、公称で動作周波数に等しい周波数において機械的共振を有する。ただし、図4を参照して後で詳しく説明するように、電気音響変換器の機械的共振は、共振構造21の共振に比べて、実質的にQが小さい。具体的には、第1の電気音響変換器40の厚さ41はその電気音響変換器の音響波の波長の二分の一の整数倍であり、音響波は公称で動作周波数に等しい周波数を有する。圧電層44は、第1の電気音響変換器の厚さの大半を考慮するため、厚さ41は概ね次のようになる可能性がある:PZTの音速は、1秒あたり約4500メートル。動作周波数206MHzにおいて、第1の電気音響変換器の音響波の波長は、下記のように計算され、約22マイクロメートル(μm)である。
【0021】
(4.5×103メートル/秒)/(2.06×108)
公称で動作周波数に等しい周波数を有する電気音響変換器の音響波の波長の二分の一の整数倍の厚さを達成するために、第1の電気音響変換器40は、例えば22μmのような厚さ41を有するように製造される。通常、第1の電気音響変換器40の厚さ41は、例えば約10〜20μmである。第1の電気音響変換器40の水平方向の寸法43は、数百マイクロメートルから数千マイクロメートルの範囲であり、例えば300μm〜3000μmである。第2の電気音響変換器も、同様の構造を有する。
【0022】
動作周波数を有する入力AC電力IACが、AC入力端子13に印加される。第1の電気音響変換器40は、この入力AC電力IACを音響エネルギーに、すなわち、機械的振動に変換する。この音響エネルギーは、共振構造21に動作周波数の機械的振動を発生させる。入力AC電力IACの周波数は、共振構造21の共振周波数のうちの1つ、又はそれに近い周波数である。
【0023】
図2Aは、図1Aに示した入力AC電力IACの電圧波形の一例を示している。電圧波形13aは、例えば206MHzのような動作周波数で交番する2極方形波である。あるいは、図1Aに示す入力AC電力IACは、図2Bに示すような電圧波形13bを有するパルス状のDC電圧波形であり、動作周波数で交番する単極方形波であってもよい。本明細書では便宜上、ACという用語は、例えばAC電圧波形13aのような2極ACだけでなく、例えばパルス状電圧波形13bのような単極パルスDCも含むものとして解釈される。
【0024】
図1Aを再度参照すると、入力AC電力IACに応じて第1の電気音響変換器40によって生成される音響エネルギーは、共振構造21を動作周波数で共振させる。共振構造21の共振周波数は、基板30、第1の電気音響変換器40、及び、第2の電気音響変換器50の全てによって決まるが、それらの共振周波数は主に、基板30の厚さ、及び、基板材料中の音の速度によって決まる。したがって、共振構造21の共振周波数は主に、基板の厚さ及び材料によって決まる。動作周波数は、それらの共振周波数のうちの1つに等しくなるように選択される。例えば、基板30の厚さ31は、公称で動作周波数に等しい周波数を有する音響波の基板中での波長の二分の一の整数倍である。シリコン中での音の速度は1秒あたり約8500メートルである。206MHzの動作周波数において、公称でこの動作周波数に等しい周波数を有する音響波の基板30中での波長は、下記の式によって計算され、約41マイクロメートルである。
【0025】
(8.5×103メートル/秒)/(2.06×108)
したがって、基板30は、(41/2)マイクロメートルの整数倍、例えば164μm(半波長の8倍)の厚さ31を有する。通常、基板30は、100マイクロメートル程度の厚さ31を有する。
【0026】
第1の電気音響変換器40からの音響エネルギーは、共振構造21に共振、すなわち機械的振動を発生させる。また、入力AC電力IACを第1の電気音響変換器40に継続的に印加し続けると、共振構造21の中に動作周波数の音響エネルギーが蓄積される。共振構造21の機械的振動は、第2の電気音響変換器50を刺激する。第2の電気音響変換器50は、その機械的振動を出力端子15に供給される出力AC電力OACに変換する。
【0027】
図3Aは、図2Aに示した2極入力AC電圧波形13aに応答して第2の電気音響変換器50によって生成される出力AC電力OACの電圧波形15aを示している。図3Bは、図2Bに示したパルス状DC電圧波形13bに応答して第2の電気音響変換器50によって生成される出力AC電力OACの電圧波形15bを示している。図3A及び図3Bの出力AC電圧波形15a及び15bは、図2A及び図2Bに示した入力AC電圧波形13a及び13bとそれぞれ同じ周波数を有する。
【0028】
圧電絶縁変換器20によって生成される出力AC電力OACは、共振機械構造21の共振周波数に対する入力AC電力IACの周波数のような種々のファクタによって異なる場合がある。その理由は、圧電絶縁変換器20は、その共振構造21の機械的共振によって、入力AC電力を出力AC電力に変換するからである。
【0029】
次に、図4及び図1Aを参照すると、曲線22は、圧電絶縁変換器20の典型的実施形態の計算上の前方透過率S21が、例示的な周波数範囲140MHz〜260MHzにわたって異なることを示している。圧電絶縁変換器20の前方透過率S21は、第2の電気音響変換器50により出力される出力AC電力OACと、第1の電気音響変換器40に印加される入力AC電力IACの比である。圧電絶縁変換器20の計算上の前方透過率を計算する際に、第1及び第2の電気音響変換器40及び50の前方透過率S21が、指定された周波数範囲にわたって一定であるものと仮定したため、曲線22は、共振機械構造21の共振の周波数依存性を示している。共振機械構造21の機械的共振が複数あることから、例えば206MHzのような特定の動作周波数において曲線22によって示される前方透過率は、215MHzのような他の動作周波数におけるものよりも大きい。前方透過率は、共振機械構造21の共振周波数においてピークを有する。なぜなら、曲線22によって示される前方透過率は複数の周波数においてピークを有し、圧電絶縁変換器20は複数モードの動作特性を有するものと考えられているからである。
【0030】
図4も曲線29を示している。この曲線は、第1の電気音響変換器の典型的実施形態の計算上の前方透過率が、周波数に応じてどのように変化するかを示している。第2の電気音響変換器50も、同様の前方透過率特性を有する。第1の電気音響変換器40の計算上の前方透過率は、第1の電気音響変換器40によって生成される音響エネルギーと、第1の電気音響変換器40に印加される入力AC電力IACの比である。第1の電気音響変換器の前方透過率特性は、共振機械構造21の共振のQよりも実質的に小さいQを有する共振デバイスに固有のものである。その結果、例えば206MHz〜215MHzのような周波数範囲にわたって動作周波数を変化させることができ、それにより、圧電絶縁変換器20の前方透過率を実質的に変化させることができる。ただし、電気音響変換器40及び50の前方透過率はあまり変化しない。
【0031】
図1A及び図1Bを再度参照すると、図1Bは、圧電絶縁変換器20の幾つかの実施形態の一部を形成するオプションの整流平滑回路64を示している。整流平滑回路64は、AC出力端子に接続され、第2の電気音響変換器50によって生成された出力AC電力OACを出力DC電力ODCに変換する。整流平滑回路64は、整流器60、及び、フィルタコンデンサ61から構成される。一実施形態において、整流器60は、半波整流を行う単一のダイオード整流器である。他の実施形態において、整流器60は、全波整流を行うブリッジ整流器である。ブリッジ整流器は4つのダイオードから構成される。整流平滑回路64は、出力DC電力ODCをDC出力端子17に伝送する。図1Bは、DC出力端子17に接続された負荷62を示している。負荷62は抵抗器であってもよいが、一般的には、圧電絶縁変換器20からDC電力を引き出す回路である。
【0032】
他の実施形態において、第2の電気音響変換器50は、図1Cに示すように2つの下位変換器50a及び50bに分割される場合がある。下位変換器50a及び50bは、基板30の第1の主表面32に、図1Aに示したものと同様にして機械的に結合される。下位変換器50a及び50bは、同じ圧電素子54を共用するが、個別の電極52a、56a及び52b、56bを有する。下位変換器50aと50bは、逆相の電圧を生成するように直列に接続される。その結果、図1Cに示す実施形態によれば、2つのダイオードを使用するだけで、全波整流が可能となる。この直列接続は、下位変換器50bの電極52bを下位変換器50aの電極56aに接続することによって形成される。電極52bと電極56aの間の接続は、AC出力端子15のうちの1つによってコンデンサ61の一方の側に接続される。下位変換器50aの電極52aと下位変換器50bの電極56bは、AC出力端子15によって互いに接続され、ダイオード63によってキャパシタ61の一方の側に接続される。
【0033】
図5は、種々の動作周波数における負荷62の抵抗値に対する、整流平滑回路64を有する圧電絶縁変換器20の一実施形態によって伝送される出力DC電圧の依存性を示すグラフである。図1A、図1B及び図5を参照すると、曲線23、24、25、26、27及び28は、動作周波数200MHz、202MHz、203MHz、205MHz、206MHz及び207MHzのそれぞれにおける、負荷62の抵抗値に対する出力DC電圧の依存性を示している。図示の例において、負荷62の抵抗値は、約2オームから約50オームまでの範囲にある。図5に示す例において、出力DC電圧は、動作周波数206MHzにおいて最大になっている。この動作周波数は、図4に示した206MHzの共振ピークに対応する。
【0034】
図6は、動作周波数と出力DC電圧の関係を種々の方法で示している。曲線102は、入力AC電力IACの電圧波形を示している。この電圧は、周波数200MHzで、+10Vのピークと−10Vのピークの間を正弦波のように交番している。周波数200MHzの入力AC電力のとき、出力DC電力ODCは約5VDCの電圧になっている。出力DC電力の電圧波形は曲線104で示されている。図6は、入力AC電力IACの電圧や負荷62の抵抗値を変化させずに、入力AC電力106の周波数を200MHzから206MHzまで変化させたときの影響を示している。入力AC電力の電圧波形は曲線106によって示されている。周波数206MHzの入力AC電力のとき、出力DC電力の電圧は約40Vになっている。出力DC電力の電圧波形は曲線108によって示されている。したがって、動作周波数が206MHzであるときに、圧電絶縁変換器20は、動作周波数が200MHzであるときに比べて、約8倍のDC電圧を伝送することができる。これは、図4及び図5に示したグラフにも符号する。
【0035】
図4、図5及び図6は、図1Aに示した圧電絶縁変換器の入力電力IACに対する出力DC電力ODCの比が、動作周波数、すなわち、入力AC電力IACの周波数と、圧電絶縁共振器20の共振構造21の共振周波数との間の関係に強く依存することを示している。
【0036】
図7は、本発明によるDC−DCコンバータの例示的実施形態110を示すブロック図である。DC−DCコンバータ110は、図1Aを参照して上で説明した圧電絶縁変換器20の一実施形態を含む。図1A、図1B及び図7を参照すると、DC−DCコンバータ110は、発振器12、圧電絶縁変換器20、及び、整流器60から構成される。発振器12は、圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に接続される。整流器60は、圧電絶縁変換器20のAC出力端子15に接続される。
【0037】
図7に示す例において、整流器60は、整流平滑回路64の一部になっている。発振器12は、DC入力端子11において受信された入力DC電力IDCを入力AC電力IACに変換し、それを圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に供給する。入力AC電力IACの周波数は、圧電絶縁変換器20の動作周波数範囲内の周波数である。圧電絶縁変換器20は、発振器12から受信した入力AC電力IACを上記のように出力AC電力OACに変換し、それをAC出力端子15に供給する。整流器60は、圧電絶縁変換器20の出力AC端子15から出力AC電力OACを受信し、その出力AC電力を整流し、生のDC電力を生成する。図示の例において、整流平滑回路64は、整流器60、及び、フィルタコンデンサ61から構成され、フィルタコンデンサ61は、その生のDC電力をフィルタリングし、出力DC電力ODCをDC出力端子17に供給する。図7は、DC出力端子17に接続された負荷62を示している。
【0038】
フィルタコンデンサ61のキャパシタンスは通常小さい。なぜなら、フィルタコンデンサ61のキャパシタンスのRC時定数、及び、負荷62の最小推定抵抗値は、約4ナノ秒(概ね、206MHzの1周期)よりも大きいだけで足りるからである。例えば、10Vの出力DC電圧を1Aの最大電流で伝送する実施形態では、最小負荷抵抗値は10Ωである。そのような実施形態では、コンデンサ61のキャパシタンスは、約1ナノファラッドである。この値は、比較的低い周波数で動作する電源に使用される数十マイクロファラッド、又は、数百マイクロファラッドに比べて遥かに小さい。フィルタコンデンサ61の値、及び、整流器60のダイオードのタイプは、実施形態や動作周波数に応じて様々なものであってよい。
【0039】
図8A及び図8Bは、出力DC電力ODCの例示的な電圧波形を示している。図8Aは、図3Aに示した出力AC電力OACの電圧波形15aに応じて全波整流を行う整流平滑回路64の一実施形態によって生成される出力DC電力ODCの電圧波形17aを示している。図8Bは、図3Bに示した出力AC電力OACの電圧波形15aに応答して半波整流を行う整流平滑回路64の一実施形態によって生成される出力DC電力ODCの電圧波形17bを示している。フィルタコンデンサ61は、図8A及び図8Bに示した例におけるものと同じキャパシタンスを有する。
【0040】
図4、図5及び図6に示し、上で説明したように、圧電絶縁変換器20によって伝送される出力DC電力ODCの電圧は、共振機械構造21の共振周波数や、負荷によって引き出される電流よりも、周波数制御される発振器12によって生成される入力AC電力IACの周波数の影響を受ける。DC−DCコンバータ110の実施形態によっては、発振器12は固定数の発振器であり、DC−DCコンバータは、DC出力端子17と負荷62の間に配置された従来のDC整流器(図示せず)を更に有する場合がある。このDC整流器は、温度変化等によって入力AC電力の周波数、共振機械構造21の共振周波数、及び、負荷電流のうちの1以上が変動しても、負荷62に一定の電流を供給する働きをする。
【0041】
図7に示した実施形態のDC−DCコンバータ110は、温度変化等によって入力AC電力の周波数、共振機械構造21の共振周波数、及び、負荷電流のうちの1以上が変動しても、DC−DCコンバータに一定電圧の出力DC電力ODCを伝送させるように入力AC電力の周波数を制御するためのフィードバック回路を有する。DC−DCコンバータ110において、発振器12は、周波数制御回路65を含む周波数制御型発振器である。周波数制御型発振器12がDC入力端子11において受信した入力DC電力IDCを圧電絶縁変換器20のAC入力端子13に供給される入力AC電力IACに変換するときの周波数は、周波数制御電圧に使用される周波数制御信号FCSによって決定される。また、発振器12は、第1の変換器40に供給される入力AC電力IACの電圧と、第1の変換器40に流れ込む電流との間の位相関係をモニタリングし、動作周波数と、機械的共振システム21の機械的共振の間の相対的関係を判定するための回路を更に有する場合がある。
【0042】
上記のフィードバックループは、DC−DCコンバータ110のDC出力端子17と、周波数制御信号FCSを出力する周波数制御型発振器12の周波数制御入力65との間に接続される。このフィードバックループは、変調器64、フィードバック圧電絶縁変換器420、復調器66、及び、コンパレータ68を含む。
【0043】
フィードバック圧電絶縁変換器420と圧電絶縁変換器20は、同じ基板69上に作成される。フィードバック圧電絶縁変換器420は、圧電絶縁変換器20と同様の構造を有し、基板69の一部として構成される共振構造421、第1の電気音響変換器440、及び、第2の電気音響変換器450を有する。
【0044】
復調器64は、DC出力端子17に電気的に接続された変調入力、及び、圧電絶縁変換器20のAC出力端子15に電気的に接続されたキャリア入力を有する。変調器64は、フィードバック圧電絶縁変換器420の第1の電気音響変換器440に電気的に接続された出力を更に有する。出力AC電力OACのAC電圧波形は、変調器64のキャリア入力において圧電絶縁変換器20のAC出力端子15から受信され、キャリア信号として機能する。
【0045】
フィードバック圧電絶縁変換器420の第2の電気音響変換器450は、復調器66の復調信号入力に電気的に接続される。復調器66は、キャリア入力及び出力を更に有する。キャリア入力は、圧電絶縁変換器20の入力端子13に電気的に接続される。出力は、コンパレータ68の一方の入力に接続される。コンパレータ68は、基準入力及び出力を有する。基準入力は、基準電圧VREFを受信するように電気的に接続される。出力は、周波数制御型発振器12の周波数制御入力65に電気的に接続される。
【0046】
動作上、変調器64は、ミキサとして実施される場合もあり、圧電絶縁変換器20のAC出力端子から受信したキャリア信号を、DC出力端子17から受信した出力DC電力ODCによって変調する。この変調は、最終的に得られる変調キャリア信号MCSが、出力DC電力ODCの電圧を表わすものになるような方法で実施され、最終的に得られる変調キャリア信号MCSが、大きな精度のロスを生じることなくフィードバック圧電絶縁変換器420を通して伝送されるような方法で実施される。フィードバック圧電絶縁変換器420の前方伝達関数は、図4に曲線22で示すように、動作周波数と、フィードバック圧電絶縁変換器の一部を構成する共振機械構造の共振周波数の間の関係によって決まるため、振幅変調は、好ましい変調方法ではない。ただし、振幅変調が使用される場合もある。適当な代替の変調方法としては、周波数変調、位相変調、パルス変調、及び、デジタル符号化などがある。
【0047】
フィードバック圧電絶縁変換器420は、圧電絶縁変換器20と同様に動作する。つまり、フィードバック圧電絶縁変換器420は、その第1の電気音響変換器440において、変調器64によって生成された変調キャリア信号MCSを受信する。第1の電気音響変換器は、その変調キャリア信号を音響エネルギーに変換し、その音響エネルギーによって共振機械構造421に機械的振動を発生させる。変調キャリア信号は、出力AC電力OACと同じ周波数を有し、機械的共振構造421は、共振機械構造21と同様の共振周波数を有する。したがって、変調キャリア信号は、フィードバック圧電絶縁変換器420の動作周波数範囲内の周波数を有する。第2の電気音響変換器450は、共振構造421における機械的振動の一部を変調キャリア信号OMCに変換して出力する。
【0048】
復調器66は、そのキャリア入力において、AC入力端子13から受信した信号を使用して出力変調キャリア信号OMCを復調し、復調されたフィードバック信号DFSを生成する。この復調されたフィードバック信号は、DC−DCコンバータ110の出力端子17におけるDC電圧を表わすDCレベルである。コンパレータ68は、復調されたフィードバック信号DFSを基準電圧VREFと比較し、周波数制御信号FCSを生成する。コンパレータ68は、この周波数制御信号FCSを周波数制御型発振器12の周波数制御入力65に供給する。
【0049】
したがって、DC出力端子17における出力DC電力ODCのDC電圧が変化した場合、対応する変化が、変調キャリア信号MCS、出力変調キャリア信号OMC、及び、復調フィードバック信号DFSに現れる。復調フィードバック信号を基準電圧を比較することにより、周波数制御型発振器12の周波数制御入力65における周波数制御信号FCSの変化が得られる。周波数制御型発振器12において、出力DC電力ODCの電圧の変化によって周波数制御入力65に生じる周波数制御信号FCSの変化は、出力DC電力ODCの電圧の変化を反転させるような仕方で、入力AC電力IACの周波数を変化させる。その結果、出力DC電力ODCの電圧は、その元の電位まで復元される。
【0050】
図9は、圧電絶縁変換器を製造するための本発明による方法を示すフロー図70である。ブロック72では、絶縁性基板を用意する。この絶縁性基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。ブロック74では、基板の第1の主表面上に第1の電気音響変換器を形成する。ブロック76では、第1の電気音響変換器とは反対側の基板の第2の主表面上に第2の電気音響変換器を形成する。
【0051】
図1Aに示す圧電絶縁変換器20の一実施形態を製造するための図9に示した方法の一実施形態では、ブロック72において、第1の主表面32、及び、第1の主表面32とは反対側の第2の主表面42を有する絶縁性基板30を用意する。ブロック74では、基板30の第1の主表面上に第1の電気音響変換器40を形成する。ブロック76では、第1の電気音響変換器40とは反対側の基板30の第2の主表面34上に、第2の電気音響変換器50を形成する。
【0052】
上記の方法は通常、数千もの圧電絶縁変換器を一度に1つのウェーハ上に作成する際に使用される。プロセスの最後に、ウェーハは個々の圧電絶縁変換器に分離される。その結果、各圧電絶縁変換器を製造するコストが低減される。以下では、個々の圧電絶縁変換器を製造するための別の方法についても説明する。この方法もまた、数千もの圧電絶縁変換器を一度に製造するためにウェーハ規模で一般に実施されるという理解に基づくものである。
【0053】
図9に示した圧電絶縁変換器を製造する方法は、図1Aに示した圧電絶縁変換器20とは構造の細部が異なる圧電絶縁変換器の製造にも使用することができる。例えば、図10は、本発明の他の実施形態による圧電絶縁変換器120を示している。図1Aの圧電絶縁変換器20の要素に対応する図10の圧電絶縁変換器120の要素には、同様の参照符号を付してある。図10を参照すると、圧電絶縁変換器120は、少なくとも一部が導電性の材料から形成されたベース層136を含む。電気音響変換器40と50を互いに電気的に絶縁するために、基板130は、電気音響変換器40及び50と、ベース層136との間にそれぞれ挿入された絶縁材料の層131を更に含む。あるいは、基板130は、電気音響変換器40及び50のうちの一方だけと、ベース層136との間に、絶縁材料の層131を更に有する場合がある。更に別の例(図示せず)において、絶縁材料の層は、少なくとも一部が導電性のベース材料の2つの層の間に挟まれ、電気音響変換器40及び50はそれぞれ、ベース層のうちの対応する一方の上に作成される場合がある。電気音響変換器40と50の間に少なくとも1つの絶縁材料の層131が存在することから、基板130は、その少なくとも一部に導電性材料を含む場合であっても、絶縁性と呼ばれる。他の実施形態において、基板130の材料は、抵抗値の高いシリコン、アルミナ、ガラス、セラミック、サファイア、又は、他の適当な導電性材料である場合がある。
【0054】
図11A、図11B及び図11Cは、本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態220を示している。図1Aに示した圧電絶縁変換器20に対応する図11A、図11B及び図11Cの圧電絶縁変換器220の要素には同じ参照符号を付し、ここで再度説明はしない。似ているが変更された部分には、同じ参照符号の後ろに「a」を付したものが使用される。
【0055】
図11A、図11B及び図11Cを参照すると、圧電絶縁変換器220は、第1の基板132及び第2の基板134から構成される。各基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。すなわち、第1の基板132は、第1の主表面32a、及び、第1の主表面32aとは反対側の第2の主表面33を有し、第2の基板134は、第1の主表面34a、及び、第1の主表面34aとは反対側の第2の主表面37を有する。第1の電気音響変換器40は、第1の基板134の第1の主表面34a上に配置される。第2の電気音響変換器50は、第2の基板134の第1の主表面34b上に配置される。第1の基板132と第2の基板134は互いに結合され、第2の主表面33が第2の主表面37に隣接し、第1の電気音響変換器40が第2の電気音響変換器50の反対側にくるようにして結合される。第1の基板132と第2の基板134は、あわせて絶縁性基板30aを構成する。
【0056】
圧電絶縁変換器220は次のようにして製造される:第1の基板132及び第2の基板134を用意する。各基板は、今述べたように第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の基板132の第1の主表面32a上に第1の電気音響変換器40を形成する。第2の基板134の第1の主表面34b上に第2の電気音響変換器50を形成する。各電気音響変換器は、第1の電極層、圧電層、及び、第2の電極層を以下で説明するものと同様に、順番に蒸着し、パターニングすることによって形成される。第1の基板132の第2の主表面33は第2の基板134の第2の主表面37に結合され、第1の電気音響変換器40が、第2の電気音響変換器50の反対側にくるようにして結合される。第1の基板132と第2の基板134の結合により、絶縁性基板30aが形成される。
【0057】
一実施形態では、第1の基板132と第2の基板134を結合する前に、それらが密接に接触するように、第1の基板132の第2の主表面33、及び、第2の基板134の第2の主表面37が互いに研削され、研磨され、又は他の処理が施される。基板132と基板134の接合には、従来の基板接合技術が使用される。
【0058】
図12は、本発明による圧電絶縁変換器の代替実施形態320を示す平面図である。図12は、集積回路ダイ上に作成されたように見えるような圧電絶縁変換器の平面図である。図12において、他の部分の影すなわち後ろに隠れている圧電絶縁変換器320の部分は一般に、図示されていない。ただし、圧電絶縁変換器320の特定の幾つかの部分は、圧電絶縁変換器320を説明する目的で、破線を使用して描かれている。図13A、図13B、図13C、及び、図13Dは、圧電絶縁変換器320の製造における種々の工程での圧電絶縁変換器320を示す断面図である。これらの断面図はすべて、図12のライン13D−13Dに沿って切断して見たときの図である。図12、及び、図13A〜図13Dでは、本発明の圧電絶縁変換器の構造及び製造方法の詳細を説明する。
【0059】
圧電絶縁変換器320は、図9を参照して上で説明したプロセスに従って、既知の半導体製造プロセス、例えば、蒸着、パターニング、及び、エッチングを使用して製造される。図1Aの圧電絶縁変換器20の要素に対応する図12及び図13A〜図13Dの圧電絶縁変換器320の要素には同じ参照符号を付し、ここで再度説明はしない。
【0060】
まず図12及び図13Dを参照すると、圧電絶縁変換器320は、第1の基板82及び第2の基板92から構成される。第1の電気音響変換器40及び第2の電気音響変換器50は、第1の基板82の互いに反対方向を向いた主表面85及び87にそれぞれ配置される。第2の基板にはキャビティ94が画定され、キャビティ94は、主表面95から第2の基板の中にまで延びている。第2の基板92は第1の基板82に接合され、主表面95が主表面85に隣接し、第1の電気音響変換器40がキャビティ94の中に配置されるようにして接合される。後で詳しく説明するように、基板82と基板92は、第2の電気音響変換器50を作成する前に互いに結合される。したがって、第2の電気音響変換器50の製造の際には、第1の電気音響変換器40は第2の基板92によって保護される。
【0061】
圧電絶縁変換器330は次のようにして製造される。第1の絶縁性基板82及び第2の絶縁性基板92を用意する。各基板は、第1の主表面、及び、第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する。第1の基板82の第1の主表面85上に第1の電気音響変換器40を形成する。第2の基板92の第1の主表面95から延びるキャビティ94を第2の基板に形成する。第1の変換器40が第2の基板92のキャビティ94の中に配置されるようにして、第1の絶縁性基板82の第1の主表面85と第2の基板92の第1の主表面95を互いに接合する。結合の後、第1の電気音響変換器40とは反対側の第1の絶縁性基板82の第2の主表面87上に、第2の変換器50を形成する。
【0062】
次に、図12及び図13A〜図13Dを更に詳しく参照し、圧電絶縁変換器320の製造について説明する。図13Aを参照すると、第1の主表面85、及び、第1の主表面85とは反対側の第2の主表面87を有する第1の基板82を用意する。第1の基板82は、例えばシリコンウェーハの一部である。他の実施形態において、第1の基板82の材料は、抵抗値の高いシリコン、アルミナ、ガラス、セラミック、サファイア、又は、他の適当な導電性材料である。第1の基板82は、圧電絶縁変換器320の絶縁性基板の少なくとも一部を構成する。
【0063】
第1の基板82を酸化させ、主表面85上に厚さ100nm〜10μの熱二酸化ケイ素の絶縁層84を形成する。あるいは、絶縁層84は、化学気相蒸着によって蒸着してもよい。更に絶縁層分離が必要な場合、絶縁層84は、追加又は代替として、スパッタリングによって蒸着された100nm〜10μm厚の酸化アルミニウム(AlOx)のような絶縁材料の層から構成される場合がある。絶縁層84の主表面は、第1の基板82の主表面85になる。
【0064】
次に、主表面85から第1の基板82の中にまで延びる接点バイア80a、80bを形成する。任意数の接点バイアを形成することができる。参照符号80は通常、接点バイアを指すのに使用されるが、80の後に文字「a」が続く参照符号は、特定の接点バイア、又は、接点バイアの特定のセットを指すために使用される。
【0065】
接点バイア80は、まず、従来のディープエッチングプロセスを使用して、絶縁層84を貫通するようにエッチングし、次いで、基板82を貫通する通路をエッチングすることによって形成される。バイア80の深さ81は、図1Aに示すように、絶縁性基板30の所望の最終的な厚さによって決まる。図示の例では、バイア80は、約100μmの深さ81を有し、その直径83は10μm未満である。第1の基板82が既に所望の最終的な厚さを有している実施形態では、接点バイア80は、第1の基板82の厚さ全体を貫通して延びる。接点バイア80には導電率の高い金属が充填され、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、又は、プラチナ(Pt)が充填される。必要であれば、CMP(化学機械研磨)やエッチバックプロセスを使用して、バイア80の上面を主表面85と同じ高さにしてもよい。
【0066】
第1の基板82上に第1の電気音響変換器40を形成する前に、第1の基板82の主表面85上に、例えばTiAlN(窒化アルミニウムチタン)の接着層86を蒸着する。接着層86は、第1の変換器40とd際1の基板82の接着を助ける働きをする。また、接着層86は、バイア80と第1の変換器40の下側電極40との間の導電性拡散障壁としても機能する。それによって、圧電層44を蒸着する際に、接点バイア80が損傷を受けることが防止される。接着層86には、対酸化性材料を使用することが好ましい。なぜなら、圧電層44は、酸化性雰囲気中で高温(例えば、550℃)で蒸着されるからである。TaSiN(窒化タンタルシリコン)、TiN(窒化チタン)、及び、TiAlのような他の材料を接着層86に使用することも可能である。接着層86は、数ナノメートル程度の厚さを有し、例えば、50nm〜100nmの厚さを有する。
【0067】
次に、第1の基板82の第1の主表面85上に、第1の電気音響変換器40を作成する。第1の変換器40は、複数の層を有し、各層が順番に蒸着され、次いでエッチングされる。ただし、図示の実施形態において、第1の電気音響変換器40の層42、44及び46は、順番に蒸着された後、上から下へ順番にエッチングされる。第1の変換器を作成するために、下側電極42を、例えば厚さ約100nmでスパッタ蒸着する。下側電極42の材料には、任意の適当な貴金属を使用することができ、例えば、プラチナ(Pt)やイリジウム(Ir)が使用される。直列抵抗を改善するために、下側電極は適当な高導電性材料の層を更に含み、例えば、厚さ約1μmでスパッタ蒸着された金(Au)の層を更に含む。上記の貴金属の層は、高導電性金属の層の上に蒸着される。下側電極42の張り出し部は、図12に示す接点バイア80bの上に配置され、接点バイア80bとの接点を形成する。
【0068】
圧電層44は、例えば、厚さ約1μm〜約20μmの範囲でスパッタ蒸着されたPZTの層である。他の蒸着方法を使用して圧電層44を形成してもよく、例えば、化学気相蒸着や有機金属化学気相蒸着が使用される。上側電極46は、例えば、約100nmの厚さでスパッタ蒸着されたプラチナ(Pt)や金(Au)である。Auを使用する場合、上側電極46は、圧電層44とAu層の間に、例えば、薄いクロムの接着層(図示せず)を含む場合がある。
【0069】
上側電極46はパターニングされ、適当なエッチング剤を使用してドライエッチングによりエッチングされる。圧電層44はパターニングされ、ウェットエッチング法またはドライエッチング法によりエッチングされる。下側電極42及び接着層86のエッチングは、絶縁層84、並びに、接点バイア80aに達したところで停止される。
【0070】
直列抵抗を改善するために、例えば、リフトオフ法を使用して、上側電極46の上にAu層を追加することができる。この層は、図面には描かれていない。一実施形態において、圧電層44の上の上側電極46の厚さは、圧電層44の下にある下側電極42の厚さと同じである。第1の変換器40の水平方向の寸法は、用途によって異なる場合がある。例示的実施形態において、第1の変換器40の水平方向の寸法は、約300μm〜約3mmの範囲内にある。
【0071】
SiO2の層のような誘電体層を蒸着及びエッチングし、階段状絶縁体47を画定する。階段状絶縁体47は、第1の電気音響変換器40の圧電層44及び下側電極42の一部を覆う。次に、金(Au)のような適当な導電性金属の層を、数マイクロメートルの一般的厚さ、例えば約1μm〜約3μmで蒸着する。この層をエッチングし、階段状絶縁体の上に、第1の変換器40の上側電極46から接点バイア80aまで延びる導電性トレース49を画定する。導電性トレース49と第1の変換器40の間の重なり合いを最小限に抑えることにより、第1の変換器40又は圧電絶縁変換器20、あるいはそれら両方の共振特性に対する、導電性トレース49の重なり部分の質量増加の影響を最小限に抑えることができる。
【0072】
次に図12及び図13Bを参照すると、第2の基板92が用意される。第2の基板92は、第1の主表面95、及び、第1の主表面95とは反対側の第2の主表面97を有する。通常、基板82及び92は、上記のようにシリコンウェーハの一部である。第2の基板92にキャビティ94を形成する。このキャビティは、第1の主表面95から第2の基板92の中にまで延びる。キャビティ94は、第1の電気音響変換器40及び対応する隙間(クリアランス)を収容するのに十分なだけの深さ91及び水平方向の寸法93を有する。約50μm〜100μmの範囲の隙間であれば、通常は十分である。
【0073】
次に、第1の主表面85が第1の主表面95に接触し、第1の変換器40がキャビティ94の中に配置されるようにして、第1の基板82を第2の基板に接合する。基板82と基板92の接合には、標準的なシリコン接合プロセスが使用される。接合の結果は、図13Bに描かれている。2つの基板82と92の接合により、第1の変換器がキャビティ94の中に密閉される。その結果、第1の基板82の第2の主表面上にある第1の変換器40とは反対側の第2の電気音響変換器を製造する際に、第1の変換器40が保護される。
【0074】
次に、図12及び図13Cを参照すると、第1の基板82の第2の主表面87を研削及び研磨する。全面背面研削法を使用して、第1の基板82の第2の主表面87から材料を除去し、その新たな第2の主表面87をCMPプロセスによって研磨する。CMPプロセスによれば、研磨プロセスを接点バイア80に達した時点で停止させることができる。接点バイアの深さが約100μmである一実施形態において、これらの研削及び研磨プロセスの後、第1の基板82の通常の厚さは約100μmになる。したがって、この背面研削研磨プロセスの後、接点バイア80は、第1の基板82を貫通して延びる。したがって、接点バイア80は、背面研削研磨プロセスの停止インジケータとして働き、また、第2の電気音響変換器50を作成する際の位置決め目標としても機能する。接点バイア80は、キャビティ94の中に密閉された第1の電気音響変換器40の電極42及び46と、第1の基板82の第2の主表面87上に後で作成されることになる接点パッド48c及び48dとの間を電気的に接続する働きをする。
【0075】
背面研削研磨プロセスの後、第1の電気音響変換器40とは反対側の第1の基板82の第2の主表面87上に、第2の電気音響変換器50を作成する。第2の電気音響変換器50を作成するためのプロセスは、第1の電気音響変換器40を作成するためのプロセスと同様であるため、ここで再度詳しい説明はしない。
【0076】
次に、図12及び図13Dを参照すると、第2の電気音響変換器50の作成後、上側電極56の上に厚い導電性材料の層を追加し、直列抵抗を最小限に抑える。この導電性材料は、例えばリフトオフ法によって蒸着される例えば金(Au)である。図面では、この厚い導電性材料の層は、上側電極56の一部であるかのように描かれている。上側電極56と下側電極52は通常、全体的に同じ厚さを有する。第2の電気音響変換器の水平方向の寸法は、用途によって異なる場合がある。通常、第2の電気音響変換器50の水平方向の寸法は、第1の電気音響変換器40のものと同じである。
【0077】
SiO2のような誘電体材料の層を蒸着し、エッチングし、階段状絶縁体57を画定する。この階段状絶縁体57は、第2の電気音響変換器50の圧電層54及び下側電極52の一部を覆う。次に、金(Au)のような適当な導電性材料の層を、厚さ数マイクロメートルの通常の厚さ、例えば1μm〜3μmの厚さで蒸着する。この層をエッチングし、接点パッド48a、48b、及び、接点パッド59a、59bを画定する。接点パッド84a及び48bの一部は、接点バイア80a及び80bとの電気的接点をそれぞれ形成する。接点パッド48a及び48b、並びに、接点バイア80c及び80dによって、キャビティ94の中に収容された第1の電気音響変換器40の上側電極46及び下側電極42のそれぞれへの電気的接続が可能になる。接点パッド59aの一部は、階段状絶縁体57の上に延び、第2の変換器50の上側電極56に電気的に接触する。接点パッド59bは、第2の変換器50の下側電極52に対する電気的接続を形成する。接点パッド59aと第2の変換器50の重なり合い部分を最小限に抑えることにより、第2の変換器50又は圧電絶縁変換器20、あるいはそれら両方の共振特性に対する、接点パッド59aの重なり部分の質量増加の影響を最小限に抑えることができる。
【0078】
図1Aを更に参照すると、接点パッド48a及び48bは、第1の電気音響変換器40の電極46及び42にそれぞれ入力AC電力IACを供給するAC入力端子13として機能する。接点パッド59a及び59bは、第2の電気音響変換器50の電極56及び52からそれぞれ出力AC電力OACを受け取るためのAC出力端子15として機能する。
【0079】
本発明の幾つかの具体的実施形態について図示説明してきたが、本発明が、図示説明した特定の形態や部品構成に限定されることはない。例えば、別の構成、サイズ、又は、材料を使用することもでき、その場合でも、本発明の範囲に入るであろう。本発明は、特許請求の範囲により規定される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】本発明の一実施形態による圧電絶縁変換器を示す図である。
【図1B】図1Aの圧電絶縁変換器からの出力電力を整流及びフィルタリングするように構成された回路を示す図である。
【図1C】全波整流を行う圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図2A】図1Aの圧電絶縁変換器への例示的な入力電力の電圧波形を示す図である。
【図2B】図1Aの圧電絶縁変換器への例示的な入力電力の電圧波形を示す図である。
【図3A】図1Aの圧電絶縁変換器からの例示的な出力電力の電圧波形を示す図である。
【図3B】図1Aの圧電絶縁変換器からの例示的な出力電力の電圧波形を示す図である。
【図4】図1Aの圧電絶縁変換器の動作周波数と出力電圧の関係を示す図である。
【図5】図1Aの圧電絶縁変換器の動作周波数と出力電圧の関係を示す図である。
【図6】図1Aの圧電絶縁変換器の動作周波数と出力電圧の関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態によるDC−DCコンバータを示す図である。
【図8A】図3Aの回路からの例示的DC出力電力の電圧波形を示す図である。
【図8B】図3Bの回路からの例示的DC出力電力の電圧波形を示す図である。
【図9】本発明による圧電絶縁変換器を製造する方法を示すフロー図である。
【図10】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図11A】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図11B】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図11C】本発明による圧電絶縁変換器の他の実施形態を示す図である。
【図12】集積回路ダイ上に製造されるように見えるような本発明の圧電絶縁変換器の平面図である。
【図13A】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【図13B】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【図13C】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【図13D】図12の圧電絶縁変換器を図12の切断線13D−13Dに沿って切断して見たときの断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作周波数範囲に特徴を有する圧電絶縁変換器(20、120、220、320)であって、前記動作周波数範囲内に少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造(21)を含むものにおいて、前記共振構造が、
第1の主表面(32、32a、85)、及び、前記第1の主表面とは反対側の第2の主表面(34、33、87)を有する絶縁性基板(30、30a、82)と、
前記基板の前記第1の主表面及び前記第2の主表面にそれぞれ機械的に結合された第1の電気音響変換器(40)及び第2の電気音響変換器(50)であって、前記電気音響変換器のうちの一方が、前記動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、該音響エネルギーによって前記共振構造に機械的振動を発生させ、他方の前記電気音響変換器が、前記機械的振動を出力電力に変換するように構成される、第1の電気音響変換器(40)及び第2の電気音響変換器(50)と
を含む、圧電絶縁変換器。
【請求項2】
前記第1の電気音響変換器は、下側電極(42)、上側電極(46)、及び、それらの電極間に配置された圧電層(44)を含む、請求項1に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項3】
前記絶縁層は、第1の基板(132)及び第2の基板(134)を含み、
前記第1の電気音響変換器は、前記第1の基板上に配置され、
前記第2の電気音響変換器は、前記第2の基板上に配置され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の電気音響変換器が前記第2の電気音響変換器の変換器の反対側にくるようにして互いに接合される、
請求項1に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項4】
前記圧電絶縁変換器は、前記絶縁性基板(82)に接合された別の基板(92)を更に含み、該別の基板にキャビティ(94)が画定され、
前記第1の電気音響変換器は、前記キャビティの中に配置される、請求項1に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項5】
前記圧電絶縁変換器は、前記絶縁性基板を貫通して延び、前記第1の電気音響変換器に電気的に接続されたバイア(80)を更に含む、請求項5に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項6】
前記出力電力及び前記入力電力は、対応する電圧の比が、前記入力電力の周波数と前記少なくとも1つの共振周波数との間の関係によって決まることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項7】
発振器(12)と、
整流器(60)と、
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の圧電絶縁変換器(20、120、220、320)であって、前記発振器から前記入力電力を受け取るために前記発振器に電気的に接続され、前記出力電力を前記整流器に供給するために前記整流器に電気的に接続された圧電絶縁変換器と
からなるDC−DCコンバータ(110)。
【請求項8】
前記整流器はブリッジ整流器からなる、請求項7に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項9】
前記発振器は、周波数制御入力(65)を有し、
前記DC−DCコンバータは、前記整流器と前記発振器の前記周波数制御入力との間に接続されたフィードバックループ(64、420、66、68)を更に含み、該フィードバックループが、別の圧電絶縁変換器(420)を更に含む、請求項7に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項10】
前記別の圧電絶縁変換器は、入力及び出力を有し、
前記フィードバックループは、
前記整流器からDC信号を受信するように電気的に接続され、前記圧電絶縁変換器の前記出力からACキャリア信号を受信するように電気的に接続された変調器(64)であって、前記別の圧電絶縁変換器の前記出力に電気的に接続された出力を有する変調器(64)と、
前記別の圧電絶縁変換器の前記出力に電気的に接続された復調器(66)であって、出力を有する復調器(66)と、
基準及び前記復調器の前記出力に接続された入力を有し、前記発振器の前記周波数制御入力に接続された出力を更に有するコンパレータ(68)と
を含む、請求項9に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項11】
前記別の圧電絶縁変換器(420)は、前記ACキャリア信号の周波数に応じて決まる前方透過率を有し、
前記変調器は、前記DC信号に応答して前記ACキャリア信号を変調し、前記別の圧電絶縁変換器の前記前方透過率とは無関係の変調特性を有する変調されたキャリア信号を生成する、請求項10に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項12】
前記圧電絶縁変換器及び前記別の圧電絶縁変換器に共通に接続された基板(69)を更に含む、請求項9に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項13】
前記圧電絶縁変換器は、第1の主表面及び該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する電気的に絶縁性の基板(30)、並びに、前記基板の前記第1の主表面及び前記第2の主表面にそれぞれ機械的に結合された第1の電気音響変換器(40)及び第2の電気音響変換器(50)を含み、
前記第2の電気音響変換器は、逆層の電圧を出力するように電気的に直列に接続された第1の下位変換器及び第2の下位変換器を含む、請求項7に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項14】
圧電絶縁変換器を製造する方法であって、
第1の主表面、及び、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する絶縁性基板を用意するステップと、
前記基板の前記第1の主表面上に第1の電気音響変換器を形成するステップと、
前記第1の電気音響変換器とは反対側の前記基板の前記第2の主表面上に第2の電気音響変換器を形成するステップと
からなる方法。
【請求項15】
前記絶縁性基板は、
少なくとも一部が導電性の基板(136)と、
前記第1の変換器と前記第2の変換器の間に配置された絶縁材料の層(131)と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、各基板が第1の主表面及び該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する第1の基板(132)及び第2の基板(134)を用意するステップを更に含み、
前記第1の電気音響変換器を形成するステップは、前記第1の電気音響変換器を前記第1の基板の前記第1の主表面上に形成することからなり、
前記第2の電気音響変換器を形成するステップは、前記第2の電気音響変換器を前記第2の基板の前記第1の主表面上に形成することからなり、
前記絶縁性基板を用意するステップは、前記第1の電気音響変換器が前記第2の電気音響変換器の反対側になるようにして、前記第1の基板の前記第2の主表面を前記第2の基板の前記第2の主表面に接合することからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、
第1の主表面及び該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する別の基板(92)を用意するステップと、
前記別の基板の前記第1の主表面から前記別の基板の中にまで延びるキャビティ(94)を前記別の基板に形成するステップと、
前記第1の変換器が前記キャビティの中に配置されるようにして、前記絶縁性基板(82)の前記第1の主表面と前記別の基板の前記第1の主表面を接合するステップと
を更に含み、前記第2の電気音響変換器を形成するステップは、前記接合後に、前記第2の電気音響変換器を前記第1の電気音響変換器とは反対側の前記絶縁性基板の前記第2の主表面上に形成することからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、
前記絶縁性基板の前記第1の主表面から延びる接点バイア(80a)を前記絶縁性基板(82)に形成するステップと、
前記接点バイアに接触する接点パッド(48a)を形成するステップと
を更に含み、前記第1の電気音響変換器を形成するステップは、前記第1の電気音響変換器を前記接点バイアに電気的に接続された前記絶縁性基板の前記第1の主表面上に形成することからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁性基板の前記第2の主表面から基板材料を除去し、前記絶縁性基板の前記第2の主表面にある前記接点バイアを露出させるステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
動作周波数範囲に特徴を有する圧電絶縁変換器(20、120、220、320)であって、前記動作周波数範囲内に少なくとも1つの機械的共振を有する共振構造(21)を含むものにおいて、前記共振構造が、
第1の主表面(32、32a、85)、及び、前記第1の主表面とは反対側の第2の主表面(34、33、87)を有する絶縁性基板(30、30a、82)と、
前記基板の前記第1の主表面及び前記第2の主表面にそれぞれ機械的に結合された第1の電気音響変換器(40)及び第2の電気音響変換器(50)であって、前記電気音響変換器のうちの一方が、前記動作周波数範囲内の入力電力を音響エネルギーに変換し、該音響エネルギーによって前記共振構造に機械的振動を発生させ、他方の前記電気音響変換器が、前記機械的振動を出力電力に変換するように構成される、第1の電気音響変換器(40)及び第2の電気音響変換器(50)と
を含む、圧電絶縁変換器。
【請求項2】
前記第1の電気音響変換器は、下側電極(42)、上側電極(46)、及び、それらの電極間に配置された圧電層(44)を含む、請求項1に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項3】
前記絶縁層は、第1の基板(132)及び第2の基板(134)を含み、
前記第1の電気音響変換器は、前記第1の基板上に配置され、
前記第2の電気音響変換器は、前記第2の基板上に配置され、
前記第1の基板と前記第2の基板は、前記第1の電気音響変換器が前記第2の電気音響変換器の変換器の反対側にくるようにして互いに接合される、
請求項1に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項4】
前記圧電絶縁変換器は、前記絶縁性基板(82)に接合された別の基板(92)を更に含み、該別の基板にキャビティ(94)が画定され、
前記第1の電気音響変換器は、前記キャビティの中に配置される、請求項1に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項5】
前記圧電絶縁変換器は、前記絶縁性基板を貫通して延び、前記第1の電気音響変換器に電気的に接続されたバイア(80)を更に含む、請求項5に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項6】
前記出力電力及び前記入力電力は、対応する電圧の比が、前記入力電力の周波数と前記少なくとも1つの共振周波数との間の関係によって決まることを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の圧電絶縁変換器。
【請求項7】
発振器(12)と、
整流器(60)と、
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の圧電絶縁変換器(20、120、220、320)であって、前記発振器から前記入力電力を受け取るために前記発振器に電気的に接続され、前記出力電力を前記整流器に供給するために前記整流器に電気的に接続された圧電絶縁変換器と
からなるDC−DCコンバータ(110)。
【請求項8】
前記整流器はブリッジ整流器からなる、請求項7に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項9】
前記発振器は、周波数制御入力(65)を有し、
前記DC−DCコンバータは、前記整流器と前記発振器の前記周波数制御入力との間に接続されたフィードバックループ(64、420、66、68)を更に含み、該フィードバックループが、別の圧電絶縁変換器(420)を更に含む、請求項7に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項10】
前記別の圧電絶縁変換器は、入力及び出力を有し、
前記フィードバックループは、
前記整流器からDC信号を受信するように電気的に接続され、前記圧電絶縁変換器の前記出力からACキャリア信号を受信するように電気的に接続された変調器(64)であって、前記別の圧電絶縁変換器の前記出力に電気的に接続された出力を有する変調器(64)と、
前記別の圧電絶縁変換器の前記出力に電気的に接続された復調器(66)であって、出力を有する復調器(66)と、
基準及び前記復調器の前記出力に接続された入力を有し、前記発振器の前記周波数制御入力に接続された出力を更に有するコンパレータ(68)と
を含む、請求項9に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項11】
前記別の圧電絶縁変換器(420)は、前記ACキャリア信号の周波数に応じて決まる前方透過率を有し、
前記変調器は、前記DC信号に応答して前記ACキャリア信号を変調し、前記別の圧電絶縁変換器の前記前方透過率とは無関係の変調特性を有する変調されたキャリア信号を生成する、請求項10に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項12】
前記圧電絶縁変換器及び前記別の圧電絶縁変換器に共通に接続された基板(69)を更に含む、請求項9に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項13】
前記圧電絶縁変換器は、第1の主表面及び該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する電気的に絶縁性の基板(30)、並びに、前記基板の前記第1の主表面及び前記第2の主表面にそれぞれ機械的に結合された第1の電気音響変換器(40)及び第2の電気音響変換器(50)を含み、
前記第2の電気音響変換器は、逆層の電圧を出力するように電気的に直列に接続された第1の下位変換器及び第2の下位変換器を含む、請求項7に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項14】
圧電絶縁変換器を製造する方法であって、
第1の主表面、及び、該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する絶縁性基板を用意するステップと、
前記基板の前記第1の主表面上に第1の電気音響変換器を形成するステップと、
前記第1の電気音響変換器とは反対側の前記基板の前記第2の主表面上に第2の電気音響変換器を形成するステップと
からなる方法。
【請求項15】
前記絶縁性基板は、
少なくとも一部が導電性の基板(136)と、
前記第1の変換器と前記第2の変換器の間に配置された絶縁材料の層(131)と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、各基板が第1の主表面及び該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する第1の基板(132)及び第2の基板(134)を用意するステップを更に含み、
前記第1の電気音響変換器を形成するステップは、前記第1の電気音響変換器を前記第1の基板の前記第1の主表面上に形成することからなり、
前記第2の電気音響変換器を形成するステップは、前記第2の電気音響変換器を前記第2の基板の前記第1の主表面上に形成することからなり、
前記絶縁性基板を用意するステップは、前記第1の電気音響変換器が前記第2の電気音響変換器の反対側になるようにして、前記第1の基板の前記第2の主表面を前記第2の基板の前記第2の主表面に接合することからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、
第1の主表面及び該第1の主表面とは反対側の第2の主表面を有する別の基板(92)を用意するステップと、
前記別の基板の前記第1の主表面から前記別の基板の中にまで延びるキャビティ(94)を前記別の基板に形成するステップと、
前記第1の変換器が前記キャビティの中に配置されるようにして、前記絶縁性基板(82)の前記第1の主表面と前記別の基板の前記第1の主表面を接合するステップと
を更に含み、前記第2の電気音響変換器を形成するステップは、前記接合後に、前記第2の電気音響変換器を前記第1の電気音響変換器とは反対側の前記絶縁性基板の前記第2の主表面上に形成することからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、
前記絶縁性基板の前記第1の主表面から延びる接点バイア(80a)を前記絶縁性基板(82)に形成するステップと、
前記接点バイアに接触する接点パッド(48a)を形成するステップと
を更に含み、前記第1の電気音響変換器を形成するステップは、前記第1の電気音響変換器を前記接点バイアに電気的に接続された前記絶縁性基板の前記第1の主表面上に形成することからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁性基板の前記第2の主表面から基板材料を除去し、前記絶縁性基板の前記第2の主表面にある前記接点バイアを露出させるステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【公表番号】特表2008−518441(P2008−518441A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537904(P2007−537904)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/034875
【国際公開番号】WO2006/047042
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/034875
【国際公開番号】WO2006/047042
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】
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