説明

地下タンクにおける側部ヒータ

【課題】低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周側にその周方向に間隔を置き、地下タンク周辺に形成される凍結線の位置を制御するために配置される側部ヒータに、地下タンク側壁からの凍結線の距離が深度方向に一定にならない場合にも、その特定の深度区間の凍結線の位置を制御することが可能な機能を持たせる。
【解決手段】ヒータ液が流入させられる内管2と、その外周に位置し、内管2内のヒータ液を循環させるための外管3を有する側部ヒータ1の外管3の外周に、ヒータ液の熱を地盤に伝導させるための液体5が充填される充填管4を配置する。
充填管4の一部に、充填管4内に充填されている液体5を排出するための気体を供給する供給管6と、液体5を排出する排出管7を接続し、充填管4を液体が充填された状態と排出された状態とが切り替え自在にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLNG、LPG等の低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周側にその周方向に間隔を置き、地下タンク周辺に形成される凍結線の位置を制御するために配置される側部ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周側の地盤中には、地盤の凍結厚さを示す凍結線が深度方向に形成されるが、凍結線の位置が地下タンクの全深度に亘り、側壁から一定範囲内に納まらなくなれば、地下タンクを取り囲む地盤が変状を来し、地下タンクの側壁に与える圧力が増大する可能性があるため、側壁を損傷させる可能性がある。
【0003】
そこで、図5−(a)に示すように凍結線の位置を制御する目的で、地下タンク8を取り囲む地盤中に、地下タンク側壁81の周方向に間隔を置いて側部ヒータを埋設することが行われる。例えば側部ヒータが図5−(b)に示すように地盤を加熱するためのヒータ液が流入させられる内管2と、その外周に位置し、内管2内のヒータ液を循環させるための外管3から二重管構造で構成される場合には、ヒータ液が内管2と外管3を通過し、再度、内管2に戻されることで内管2と外管3を循環する(特許文献1〜3参照)。
【0004】
この場合、内管2内と外管3内をヒータ液が循環することで、外管3の表面温度が全長に亘って一定に維持され、側部ヒータの全深度に亘って外管3の表面からヒータ液の熱が地盤に伝導する結果、外管3に近い領域の地盤の温度が一定に維持され、凍結線の位置が制御されることになる。
【0005】
地下タンク側壁81の周方向に配列する側部ヒータの側壁81からの距離、及び周方向の間隔と配列数、並びにヒータ液の温度は側壁81の厚さとその熱伝導率、及び側壁81の外周に存在する地盤の熱伝導率等を評価した上で決定されるが、地盤の熱伝導率は側壁81の深度方向、もしくは周方向に一定であるとは限らないため、凍結線の、側壁81外周面からの距離を均等に維持することが困難であることもある。
【0006】
このため、凍結線の側壁81からの距離が深度方向に一定にならず、図6−(a)に示すように深度方向の一部が側部ヒータ側へ寄る(突出する)こともあれば、図7−(a)に示すように側壁81側へ寄る(後退する)こともある。凍結線の深度方向の一部が側部ヒータ側へ寄る(突出する)ことは、その一部を含む深度の周辺温度が低いことを意味し、側壁81側へ寄る(後退する)ことは、その一部を含む深度の周辺温度が高いことを意味する。
【0007】
凍結線が側部ヒータ側へ寄ったときには側部ヒータの表面温度を上げるために温度を上昇させたヒータ液を循環させる必要があり、側壁81側へ寄ったときには側部ヒータの表面温度を下げるために温度を低下させたヒータ液を循環させるか、ヒータ液の循環を停止させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−161400号公報(請求項2、第2頁右上欄第17行〜左下欄第9行、第1図、第3図)
【特許文献2】特開平6−221028号公報(請求項1、段落0010〜0015、図1〜図4)
【特許文献3】特開平7−207980号公報(請求項1、段落0012〜0016、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ヒータ液の温度を上昇、あるいは低下させることも、ヒータ液の循環を停止させることも、図6−(b)、図7−(b)に示すように本来、正常な位置にある凍結線の位置までを変動させることになるため、必ずしも有効な制御方法とは言えない。特にヒータ液の温度を上昇させることは、二重管の寿命(耐久性)に影響を与える可能性もある。
【0010】
本発明は上記背景より、凍結線の側壁からの距離が深度方向に一定にならない場合にも、その特定の深度区間の凍結線の位置を制御することが可能な側部ヒータを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の地下タンクにおける側部ヒータは、低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周側にその周方向に間隔を置き、前記地下タンク周辺に形成される凍結線の位置を制御するために配置され、ヒータ液が流入させられる内管と、その外周に位置し、前記内管内の前記ヒータ液を循環させるための外管を有する側部ヒータにおいて、
前記外管の外周に、前記ヒータ液の熱を地盤に伝導させるための液体が充填される充填管が配置され、この充填管の一部に、前記充填管内に充填されている液体を排出するための気体を供給する供給管と、前記液体を排出する排出管が接続され、前記充填管が、前記液体が充填された状態と排出された状態とが切り替え自在になっていることを構成要件とする。
【0012】
充填管は内管が一体化した外管の外周に、外管を包囲するように配置され、側部ヒータは充填管が配置されることで三重管構造になる。側部ヒータを構成する外管の外周に、内部に液体が充填された状態と排出された状態の切り替えが行われる充填管を配置することは、液体と、空気等の気体の熱伝導率の差を利用し、側部ヒータの外管内に流入しているヒータ液の熱が地盤に伝導し易い状態と伝導しにくい状態を切り替える目的で行われる。
【0013】
例えば液体としての水の熱伝導率λwはλw≒0.5kcal/mh°Cであるのに対し、気体としての空気の熱伝導率λaはλa≒0.02kcal/mh°Cで、水の熱伝導率λwの1/25程度であるから、外管の外周に例えば空気層が介在したときには、ヒータ液の熱が地盤に伝導しにくくなり、水等の液体が介在すれば、空気層が介在する状態よりヒータ液の熱が地盤に伝導し易くなる。
【0014】
従って充填管内に例えばヒータ液の温度に近い温度の液体が充填されている間は(平常時には)、充填管内から液体が排出されているときより充填管の表面温度が高く、ヒータ液の熱が充填管表面を通じて地盤へ伝導し易い状態にあるため、側部ヒータの表面に接触している地盤の温度低下が抑えられる。液体には水の他、ブライン液等、熱伝導率の高い材料が使用される。液体は充填管内を循環することで、液体自身を通じて外管内のヒータ液の熱を地盤に伝導させるから、液体の温度はヒータ液の温度に近い方がよい。
【0015】
一方、充填管内から液体が排出され、充填管内に例えば空気等が存在している間は、空気層等の形成によって充填管内に液体が充填されているときより充填管の表面温度が低く、ヒータ液の熱が充填管表面を通じて地盤へ伝導しにくい状態にあるため、側部ヒータの表面に接触している地盤の温度上昇が抑えられる。気体は必ずしも空気である必要はないが、空気の使用はコストを要しない利点がある。
【0016】
例えば図3−(a)に示すように凍結線が深度方向の一部において側壁側から側部ヒータ側へ突出した状態になったときには、充填管内に液体が充填されることで、ヒータ液の熱が充填管の表面から地盤へ伝導し易い状態になるため、(b)に示すようにヒータ液の熱によって凍結線が側壁側へ移動し、凍結線が深度方向に一定の範囲内に位置するように修正されることになる。
【0017】
図4−(a)に示すように凍結線が深度方向の一部において側部ヒータ側から側壁側へ後退した状態になったときには、(b)に示すように充填管内から液体が排出され、充填管内に気体(空気)が充満することで、ヒータ液の熱が気体(空気)の層によって遮断され、地盤に伝導しにくい状態になるため、凍結線が側部ヒータ側へ移動し、凍結線が深度方向に一定の範囲内に位置するように修正されることになる。
【0018】
深度方向の一部の区間で凍結線が側部ヒータ側へ突出したか、側壁側へ後退したかは側部ヒータの外周面、もしくは地盤中に複数個の温度センサ、あるいは温度計を深度方向に間隔を置いて設置しておくことによって確認される。
【0019】
図3−(a)、図4−(a)に示すような凍結線の突出や後退が特定の深度において発生することが、側部ヒータの埋設時に地盤条件等から予測される場合には、側部ヒータの全深度の内、特定の深度を含む区間にのみ、充填管を配置すればよい。凍結線の変動が想定される深度にのみ充填管が配置されることで、側部ヒータの全深度に亘って充填管を配置することによる、必要でない区間に対する熱の伝導と熱の遮断を回避することが可能であり、正常な位置にある凍結線の位置を変動させずに済む。
【0020】
これに対し、側部ヒータの埋設時に凍結線の突出や後退の発生深度が予測できない場合には、あるいは凍結線の突出や後退が深度方向の一部の区間にのみ発生した場合に、凍結線の位置の制御を高い精度で行う上では、充填管を外管の軸方向に複数の充填管構成材に区分し、この区分された充填管構成材毎に供給管と排出管を接続しておくことが適切である(請求項2)。
【0021】
この場合、充填管が外管の軸方向に複数の充填管構成材に区分されていることで、各充填管構成材の機能が独立し、特定の充填管構成材においてのみ、液体を充填した状態と排出した状態を切り替えることができるため、凍結線の位置が特定の深度で変動(突出か後退)した場合にも、その特定の深度を含む区間において凍結線の位置を効果的に制御することが可能になる。
【0022】
図3−(a)に示すように深度方向に区分された複数の充填管構成材(区間)の内、いずれかの充填管構成材の区間で凍結線が側部ヒータ側へ突出したときには、その区間に位置する(その区間を含む)充填管構成材内に液体を充填し、その他の充填管構成材内から液体を排出させることで、その液体が充填されている充填管構成材の区間においてのみ、外管内を循環しているヒータ液の熱を側部ヒータの外周に存在する地盤に伝導させることができる。結果的に図3−(b)に示すように側部ヒータ側へ突出している凍結線が地下タンクの側壁側へ移動(後退)するため、全深度に亘って凍結線を一定の範囲内に位置させることができる。
【0023】
逆に図4−(a)に示すようにいずれかの充填管構成材の区間で凍結線が地下タンクの側壁側へ後退したときには、その区間に位置する(その区間を含む)充填管構成材内から液体を排出させ、その他の充填管構成材内に液体を充填することで、液体を排出させた充填管構成材の区間においてのみ、外管内を循環しているヒータ液の熱を遮断することができる。この結果、(b)に示すように側壁側へ後退している凍結線が側部ヒータ側へ移動(突出)するため、全深度に亘って凍結線を一定の範囲内に位置させることができる。
【発明の効果】
【0024】
二重管構造を構成する側部ヒータの外管の外周に、ヒータ液の熱を地盤に伝導させるための液体が充填される充填管を配置し、液体が充填管内に充填された状態と充填管から排出された状態とを切り替え自在にすることで、側部ヒータの外管内に流入しているヒータ液の熱が地盤に伝導し易い状態と伝導しにくい状態を切り替えるため、凍結線が地下タンクの側壁側から側部ヒータ側へ突出しているときにも、後退しているときにも、全深度に亘って凍結線を一定の範囲内に位置させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は外管の外周に充填管が配置され、三重管構造となった本発明の側部ヒータの構成例を示した縦断面図、(b)はその一部の区間(充填管構成材)を抜き出して示した斜視図である。
【図2】(a)は図1−(b)に示す充填管構成材内に液体が充填されているときの、液体を通じたヒータ液の熱伝導の様子を示した縦断面図、(b)は(a)における充填管構成材の供給管から気体(空気)を注入し、排出管からの液体の排出を開始したときの様子を示した縦断面図、(c)は充填管構成材内から完全に液体を排出させたときのヒータ液の熱伝導の様子を示した縦断面図である。
【図3】(a)は側部ヒータの深度方向の一部の区間で凍結線が側部ヒータ側へ突出したときの様子を示した縦断面図、(b)は(a)のときに凍結線の突出区間の充填管構成材にのみ液体を充填し、凍結線の突出を抑制したときの様子を示した縦断面図である。
【図4】(a)は側部ヒータの深度方向の一部の区間で凍結線が側壁側へ後退したときの様子を示した縦断面図、(b)は(a)のときに凍結線の後退区間の充填管構成材からのみ液体を排出させ、凍結線の後退を抑制したときの様子を示した縦断面図である。
【図5】(a)は地下タンク外周における凍結線の位置と従来の側部ヒータの関係を示した縦断面図、(b)は(a)に示す側部ヒータの詳細を示した縦断面図である。
【図6】(a)は図5−(a)に示す地下タンクと従来の側部ヒータとの間に位置する凍結線が深度方向の一部の区間で側部ヒータ側へ突出したときの様子を示した縦断面図、(b)は(a)のときに従来の側部ヒータを循環するヒータ液の熱によって凍結線の突出状態を解消しようとしたときの様子を示した縦断面図である。
【図7】(a)は図5−(a)に示す地下タンクと従来の側部ヒータとの間に位置する凍結線が深度方向の一部の区間で側壁側へ後退したときの様子を示した縦断面図、(b)は(a)のときに従来の側部ヒータを停止させて凍結線の後退状態を解消しようとしたときの様子を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
図1−(a)は低温液化ガスを貯蔵する地下タンク8の外周側にその周方向に間隔を置き、地下タンク8の側壁81周辺に形成される凍結線の位置を制御するために配置される側部ヒータ1の構成例を示す。側部ヒータ1はヒータ液が流入させられる内管2と、その外周に位置し、内管2内のヒータ液を循環させるための外管3を有し、外管3の外周にヒータ液の熱を側部ヒータ1の表面、すなわち地盤に伝導させるための液体5が充填される充填管4が配置される。
【0028】
充填管4の一部には、充填管4内に充填されている液体5を排出するための空気(圧縮空気)等の気体を供給する供給管6が接続され、充填管4の他の一部に液体5を排出する排出管7が接続され、充填管4は液体5が充填された状態と排出された状態とが切り替え自在になっている。
【0029】
供給管6と排出管7の上端は地上に露出し、供給管6には送風機等、気体を加圧した状態で供給する圧送機が接続される。排出管7には充填管4から排出された液体5を一時的に貯留させるための貯留槽に接続される。充填管4から排出された液体5は気体の供給の停止によって貯留槽から排出管7を逆流し、充填管4に充填された状態に復帰する。
【0030】
ヒータ液は図5−(b)に示す従来の側部ヒータと同じく、内管2内にその上端部から常時、一定範囲の温度に加熱された状態で流入させられ、内管2の下端を経由して外管3内を通過し、外管3の上端部から排出されることにより内管2と外管3を循環する。ヒータ液は内管2と外管3を通過する間に熱を奪われるため、外管3から排出された後には、加熱槽に還流させられ、熱を与えられた後に内管2内に流入させられる。
【0031】
平常時、充填管4内には供給管6、もしくは排出管7、あるいは専用の注入管を通じて液体5が充填された状態にあり、ヒータ液の熱の、地盤への伝導を遮断するときに空気(圧縮空気)等、気体の供給(注入)によって液体5が排出される。液体5は充填管4内に充填されることで、ヒータ液の熱を地盤に伝導させる働きをするため、液体5には前記した水、ブライン液の他、グリース、液体金属等、熱伝導率の高い材料が使用される。気体は常温からヒータ液の温度(数°C〜数10°C)までの範囲で、単体で安定した状態を維持できればよいため、気体には窒素ガス、ヘリウムガス等も使用可能である。
【0032】
充填管4は軸に直交する断面上、中心部に、内管2と一体化した外管3(内管2付き外管3)が挿通可能な孔(開口)4aを有する筒形の形状をし、この孔(開口)4a内を内管2が一体化した外管3が挿通した状態で外管3に一体化する。図1−(b)では充填管4が円筒形状をしている様子を示しているが、充填管4の形態は問われず、多角柱状をしていることもある。図1−(b)では孔4aも円形状をしているが、孔4aの形状も任意であり、内管2付き外管3の断面形状(外形)によって決められる。
【0033】
図1−(a)は充填管4が外管3の軸方向に複数本の充填管構成材41に区分され、この区分された充填管構成材41毎に供給管6と排出管7が接続されている場合を示しているが、充填管4は必ずしも複数本の充填管構成材41に区分されている必要はない。充填管4は側部ヒータ1の全長に相当する長さを有する場合もあれば、側部ヒータ1の長さ方向の一部の区間に相当する長さ、例えば1本の充填管構成材41に相当する長さを有する場合もある。
【0034】
図1−(a)は充填管4を5本の充填管構成材41に区分(分割)した場合を示しているが、充填管4の区分数は任意である。図1−(b)は(a)の破線円部分の1本の充填管構成材41を抜き出した様子を示している。図1−(a)では供給管6と排出管7を1本の実線で示している。
【0035】
図1−(a)、(b)では充填管4、あるいは充填管構成材41(以下、充填管4等)内に充填されている液体5の排出時に液体5を完全に排出しきる必要から、排出管7を充填管4等の下端部に接続している。また気体は充填管4等内に充填されている液体5の排出時に圧力を与える一方、液体5の充填管4等内への復帰時に充填管4等内から排出される必要があるから、供給管6は充填管4等の上端部に接続される。
【0036】
このように気体は液体5の排出時に供給管6を通じて充填管4等内へ供給されると共に、液体5の充填管4等内への復帰時に供給管6を通じて充填管4等内から排出されるから、供給管6は気体の排出管を兼ねる。同様に液体5は排出時に排出管7を通じて充填管4等内から排出されると共に、充填管4等内への復帰時に排出管7を通じて供給(充填)されるから、排出管7は液体5の供給管を兼ねる。
【0037】
充填管4を複数本の充填管構成材41に区分した場合には、充填管構成材41毎に供給管6と排出管7が接続されることで、液体5の充填と排出も図3、図4に示すように充填管構成材41単位で行われる。
【0038】
図1に示すように充填管4を外管3の軸方向に複数本の充填管構成材41に区分した場合には、1本の充填管構成材41の長さは図3−(a)、図4−(a)に示すように深度方向に部分的に発生する凍結線の突出、もしくは後退の区間に対応した長さであることが合理的である。一方、凍結線に生じる突出や後退の最小長さは1〜数mであるから、効果的に突出や後退を解消させる上では、1本の充填管構成材41の長さは1〜数m、特に2〜5m程度が妥当である。
【0039】
充填管4が複数の充填管構成材41に区分された場合、内管2と外管3内を循環しているヒータ液の熱を遮断することの、充填管4の機能は充填管構成材41毎に独立するため、特定の深度で発生した、一箇所、もしくは複数箇所の凍結線の突出や後退を個別に修正し、凍結線の側壁81からの距離を全深度に亘って一定範囲内に納めることができる。
【0040】
複数の充填管構成材41は側部ヒータ1の軸方向には互いに直接螺合するか、ボルト接合等の手段によって連結された状態で、または連結されることなく、単に接触した状態で、あるいは互いに非接触状態を維持するようにスペーサ等を介し、間隔を置いて配列する。いずれの場合も、地盤中で充填管構成材41、41が互いに分離しない程度に一体性を保持する。また各充填管構成材41の供給管6と排出管7が交わることがないよう、側部ヒータ1の軸の回りに各充填管構成材41が相対的に回転しない程度に側部ヒータ1との一体性も保持する。
【0041】
図2−(a)は図1−(b)に示す1本の充填管構成材41の内部に液体5が充填されているときの状況を示す。このときには、液体5が自らの熱伝導率に応じてヒータ液の熱を地盤に伝導させ、周辺地盤を加熱している状態にある。この状態は図3−(b)の状態に該当し、深度方向の一部の区間において側部ヒータ1側へ突出している凍結線を側壁81側へ押し戻し、凍結線は全深度に亘って直線に近くなるように修正される。図2−(b)は(a)の状態で供給管6から圧縮空気等、加圧された気体を注入し、排出管7から液体5を排出させ始めたときの状況を示している。
【0042】
図2−(c)は図2−(b)を経て1本の充填管構成材41の内部から液体5が完全に排出されたときの状況を示す。このときには、液体5がそれより熱伝導率の低い空気等の気体に置換されることで、ヒータ液の熱が空気層によって遮断される結果、地盤への熱の伝導量が低下し、周辺地盤の熱を下げている状態にある。この状態は図4−(b)の状態に該当し、深度方向の一部の区間において側壁81側へ後退している凍結線を側部ヒータ1側へ引き寄せ、凍結線は全深度に亘って直線に近くなるように修正される。
【0043】
深度方向の特定の深度において凍結線が側部ヒータ1側へ突出したか、側壁側へ後退したかの情報は例えば側部ヒータ1の表面と側壁81の表面のいずれか一方、もしくは双方に、深度方向に一定間隔で設置された温度センサ(温度計)から得ることができる。
【0044】
例えば側壁81と側部ヒータ1の中間に位置する地盤中の温度計のグループ、あるいは側壁81の温度計のグループの深度方向の温度を対比し、その数値が小さければ(温度が低ければ)、その部分(深度)の凍結線が側部ヒータ1側へ突出(接近)していることを意味するから、その対比結果に基づいて充填管4、もしくは充填管構成材41に液体5を充填するか、充填されている液体5を排出するかが決定される。
【0045】
側部ヒータ1側に凍結線が突出していれば、図2−(a)に示すように充填管4(充填管構成材41)内に液体5を充填することが行われ、側壁81側に凍結線が後退していれば、図2−(c)に示すように充填管4(充填管構成材41)内から液体5を排出することが行われる。
【0046】
側壁81と側部ヒータ1間における凍結線の位置は側壁81の周方向に一定でないこともあるから、側壁81の周方向に配列している複数の側部ヒータ1に対する、液体5の排出と充填(復帰)操作は原則としてそれぞれ独立し、個別に行われるが、全側部ヒータ1に対する操作が同時に行われることもある。
【符号の説明】
【0047】
1……側部ヒータ、
2……内管、3……外管、
4……充填管、4a……孔(開口)、41……充填管構成材、
5……液体、
6……供給管(気体供給兼排出管)、7……排出管(液体排出兼供給管)、
8……地下タンク、81……側壁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯蔵する地下タンクの外周側にその周方向に間隔を置き、前記地下タンク周辺に形成される凍結線の位置を制御するために配置され、ヒータ液が流入させられる内管と、その外周に位置し、前記内管内の前記ヒータ液を循環させるための外管を有する側部ヒータであり、
前記外管の外周に、前記ヒータ液の熱を地盤に伝導させるための液体が充填される充填管が配置され、この充填管の一部に、前記充填管内に充填されている液体を排出するための気体を供給する供給管と、前記液体を排出する排出管が接続され、前記充填管は前記液体が充填された状態と排出された状態とが切り替え自在になっていることを特徴とする地下タンクにおける側部ヒータ。
【請求項2】
前記充填管は前記外管の軸方向に複数の充填管構成材に区分され、この区分された充填管構成材毎に前記供給管と排出管が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の地下タンクにおける側部ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−47504(P2011−47504A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198599(P2009−198599)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】