説明

地下埋設物防護具

【課題】従来の高強度の合金類やセラミクッスの防護板による埋設物防護では、ダイヤモンドコーキングされた舗装切断カッター刃に対して切断速度を低下させるが、舗装切断カッターで切断され完全に保護できない。セラミクッスは高価であり保護面積が広い場合は経済的に劣る。また、浅く埋設された管路等には掘削機械などからの衝撃対策として別に鋼板を併用する必要があった。
【解決手段】この発明は、外装が剛性体からなる中空平板状の箱体1内に、この箱体1の内底面に敷き詰める形状の高強度繊維シート2をスペーサ部材5により箱体1の底面から浮かせて配置させ、高強度繊維シート2上に載置される弾性体7が箱体1の天井との間で箱体1に収納された部材を一時的に押圧保持するように収める。また、スペーサ部材5と高強度繊維シート2の間に鋼板9を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下に埋設されたケーブル・ガス・水道などの管路等が、道路工事の際に用いられる舗装切断カッター等からの損傷を防ぐものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地下埋設物の保護には、舗装切断カッターによる切断に抵抗する高強度の合金類(例えば特許文献1参照)やセラミクッス(例えば特許文献2参照)を防護板として防護対象埋設物の上部に敷設するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4351077号公報
【特許文献2】特開2007−37240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように従来の埋設物防護方式では、合金類はダイヤモンドコーキングされた舗装切断カッター刃に対して切断速度を低下させるが、舗装切断カッターで切断されて防護対象埋設物の損傷を防止できない。セラミクッスのものは高価であり防護対象埋設物の保護面積が広い場合は経済的に劣る。また、浅い深さに埋設された管路等には掘削機械、コンクリートブレーカなどからの衝撃対策として、別に鋼板を併用しなければならないという課題があった。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するものであり、本発明の地下埋設物防護具では回転する舗装切断カッター刃を停止させ防護対象埋設物の損傷を阻止。そして、掘削機械、コンクリートブレーカの衝撃に対して、地下埋設物防護具自体に衝撃緩和機能を兼ね備えさせて別途の鋼板の併用を不用とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の地中埋設物防護具は、外装が剛性体からなる中空平板状の箱体と、箱体の内底面に敷き詰める形状の高強度繊維シートと、高強度繊維シートを箱体の底面から浮かせて配置させるスペーサ部材と、高強度繊維シート上に載置される弾性体が箱体の天井との間で箱体に収納された部材を一時的に押圧保持するように収めたものである。
【0007】
そして、外装が剛性体からなる中空平板状の箱体と、箱体の内底面に敷き詰める形状の高強度繊維シートと、この高強度繊維シートを水密に包む密封フィルムと、密封フィルムに包まれた高強度繊維シートを上記箱体の内底面から浮かせて配置させるスペーサ部材と、密封フィルムが作る内圧の脹らみを含む弾性体とかさなり、この弾性体が箱体の天井との間で収納された部材を一時的に押圧保持するように収めたものである。
【0008】
また、スペーサ部材は弾力性を有する素材にして、スペーサ部材と高強度繊維シートとの間に箱体の内底面に敷き詰める形状の鋼板を介在させたものである。
【0009】
そしてまた、高強度繊維シートをアラミド繊維、アラミド繊維を混入した合成繊維としたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の実施例1の地中埋設物防護具は、外装が剛性体で平板状の箱体内の中図面では中層となるので層に高強度繊維シートが配置されている。従って舗装切断カッター刃が該防護具に切り込まれた場合に、該防護具全体が切断される前にカッター刃の溝に高強度繊維シートが絡まり、カッター刃が箱体に作った切溝に次々と高強度繊維シートと供に食い込み、カッター刃の回転に抵抗する。これにより舗装切断カッターの過負荷保護装置が働きカッター刃の回転を止めることで下方に埋設された防護対象埋設物の損傷を防ぐ。
【0011】
そして、高強度繊維シートの上に載置される弾性体は、該防護具を敷設するまでの持ち運び時に箱体内の収容物が動くのを防ぐ。また、弾性体が作っていた空間はカッター刃が高強度繊維シートに絡まったとき、高強度繊維シートが暴れる空間となり、絡まり度が深くなりカッター刃への回転抵抗を大きくする。
【0012】
この発明の実施例2の地中埋設物防護具は、外装が剛性体の平板状箱体の中層に密封フィルムで気密に包まれた高強度繊維シートが配置されている。高強度繊維シートは吸湿するとカッター刃での切断性がよくなり、カッター刃への絡まり性が小さくなり、カッター刃への回転抵抗が鈍る。該防護具は箱体の継ぎ目は防水シールをしてあるが、長期間にわたり地中に埋設されて使用されるものであり、腐食等により水分が箱体内に侵入しても密封フィルムが高強度繊維シートの吸湿を防ぎ、カッター刃の回転抵抗力の所期の効果を持続させる。
【0013】
また、高強度繊維シートを密封フィルムで包む際に、内圧を高くして弾性を有する空気袋状にすることで、該防護具を持ち運び時の箱体内の収容物の動きを防ぐ。そして、カッター刃が侵入したときは、密封フィルムは簡単に破れ高強度繊維シートが暴れる空間を形成する。カッター刃の回転を止める作用は上記と同様であり説明を割愛する。
【0014】
この発明の実施例3の地中埋設物防護具は、スペーサ部材は弾力性を有する素材にして、高強度繊維シートとの間に内箱の内底面をカバーする形状の鋼板を介在させている。このような構成は、該防護具が非常に浅く埋設された場合に、掘削機械・コンクリートブレーカの打撃で道路舗装を壊すとき、掘削機械等の打壊刃が箱体上面を貫いても鋼板が受け止める。また、弾力性のスペーサ部材は鋼板への打撃力を吸収するだけでなく、打壊刃の局部的な力を分散し、鋼板の損傷・変形を緩和して、打壊刃の該防護具の貫通を阻止する。従って、別途に鋼板を併用しなくても舗装切断カッター刃および掘削機械等の打刃の両方から防護対象埋設物の損傷を防ぐことができる。
【0015】
そしてまた、高強度繊維シートをポリアミド系で最も強靭なアラミド繊維、アラミド繊維を混入した合成繊維としたので、高強度繊維シートを薄くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1の地中埋設物防護具の分解斜視図
【図2】本発明の実施例2の地中埋設物防護具の分解斜視図
【図3】本発明の実施例3の地中埋設物防護具の断面図
【図4】本発明の地中埋設物防護具の動きを説明する図
【図5】本発明の地中埋設物防護具を用いた事例を説明する図
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1の地中埋設物防護具の分解斜視図を示す。箱体1は抗張力鋼板、合金鋼板などの剛性の高い素材からなる内箱3に上蓋4を被せて中空平板状箱体に形成される。内箱3の中にスペーサ部材5、敷板6、高強度繊維シート2を順次重ね、高強度繊維シート2と箱体1の天井面との間に空隙が残る高さに積層する。そして弾性体7が天井面を突っ張るように上蓋4を被せ、内箱3と上蓋4の隙間に防水シールを施して実施例1の地中埋設物防護具が作られる。
【0018】
地中埋設物防護具は図4及び図5に示すように、防護対象埋設物15と舗装路面12の間の地中に埋設され、路面工事時の舗装切断カッター刃11による防護対象埋設物15の損傷を防ぐのが目的であり、カッター刃11の回転を止める主役の高強度繊維シート2はスペーサ部材5によりカッター刃11が早く当たる上方に配置させ、また、カッター刃11がいかなる方向から入っても高強度繊維シート2に当たるよう高強度繊維シート2は内箱3の底全面積をカバーする形状にしている。
【0019】
発明人らの実験によると、高強度繊維シートは拘束・固着された場合はカッター刃による切断性がよくなり、カッター刃への絡まり性が小さくなり、カッター刃への回転抵抗が鈍り素早く回転が止められない。高強度繊維シート2とスペーサ部材5の摩擦が大きいときは拘束と同様、カッター刃での切断性がよくなるので、高強度繊維シート2とスペーサ部材5の間に高強度繊維シートと摩擦の小さい敷板6を介在させると高強度繊維シート2の動きがよくなり、カッター刃11への絡まり性がよくなる。敷板6としては、塩化ビニール、アクリルなどの合成樹脂薄板が適している。また、スペーサ部材5が高強度繊維シート2と摩擦の小さい場合は敷板6を省略してもよい。
【0020】
上述のように高強度繊維シート2は拘束しない方が良いのであるが、地中埋設物防護具の埋設場所までの運搬・持ち運び中に箱体1内の積層が崩れることがある。これを防ぐため、運搬・持ち運び中は箱体1内の積層物を箱体1の内底面と天井の間に弾性体7で一時的に押圧保持しておき、弾性体7はカッター刃11が侵入した際は高強度繊維シート2が自由に暴れる空間ができるものが望ましい。弾性体7はサイコロ状のゴム片、スポンジ片数個を用いてもよいが、塩化ビニール、ポリエチレンのような通気性のない合成樹脂シートで作った空気袋は都合が良い。一つの空気袋で全面が押圧保持でき、カッター刃11が侵入したときは間単に破れ、その空き体積の殆どは高強度繊維シート2が暴れる空間になる。
【実施例2】
【0021】
本発明の実施例2を図2にて説明する。図において符号1〜6は前述実施例1のものと同様である。高強度繊維シート2は密封フィルム8で気密に包まれており、密封フィルム8内の内圧を少し高くして弾性体として兼用してもよい。また、常圧の場合はサイコロ状のゴム片、スポンジ片または指先大の空気袋数個を内包したものでもかまわない。
【0022】
高強度繊維シート2は吸湿するとカッター刃11での切断性がよくなり、カッター刃11への絡まり性が小さくなり、カッター刃11への回転抵抗が鈍る。箱体1の内箱3と上蓋4の合わせ部は防水シールを施してあるが長期間にわたり地中に埋設されて使用されるものであり、腐食等により水分が箱体1内に侵入しても密封フィルム8が高強度繊維シート2の吸湿を防ぎ、カッター刃11への回転抵抗力は所期の効果を持続させる。カッター刃11の回転を止める作用は上記実施例1と同様であり説明を割愛する。なお、スペーサ部材5の上表面が滑らか又は、密封フィルム8自身が高強度繊維シート2と滑り易い材質の場合は敷板6を省略することが出来る。
【実施例3】
【0023】
本発明の実施例3を図3にて説明する。図において符号1〜5は前述実施例1のものと同様である。スペーサ部材5は硬いスポンジなどの弾力性を有する素材にしてあり、スペーサ部材5と高強度繊維シート2或いは密封フィルム8の間に鋼板9を介在させる。この鋼板9は内箱3の底全面積をカバーする形状にしている。この発明の地中埋設物防護具は、平面寸法は30cm四方で厚さ4cmであり、この中に厚さ9mm〜16mmの鋼板9が収納される。
【0024】
実施例3のものは、防護対象埋設物15が交差して埋設されるなどで、該防護具が非常に浅く埋設されている状況において、掘削機械・コンクリートブレーカの打撃で道路舗装12を壊すとき、掘削機械等の打壊刃が箱体1上面を貫いても鋼板9が受け止める。また、弾力性のスペーサ部材5は鋼板9への打撃力を吸収するだけでなく、打壊刃の局部的な力を分散し、鋼板9の損傷・変形を緩和して、打壊刃の該防護具の貫通を阻止する。従って、別途に鋼板を併用しなくても舗装切断カッター刃11および掘削機械等の打壊刃の両方から防護対象埋設物の損傷を防ぐ。
【0025】
また、高強度繊維シート2をポリアミド系で最も強靭なアラミド繊維またはアラミド繊維を混入したものにすることで、高強度繊維シート2を薄くでき、該防護具の厚さを小さくできる。
【0026】
この発明の地中埋設物防護具は、防護対象埋設物15の保護面積に合わせてタイルのように必要枚数が整然と敷設される。上記では平面形状が正方形のものを説明したが、これが六角形あるいは矩形であっても良い。形状が四辺形のものは偶然にカッター刃11が地中埋設物防護具の隣接辺に沿って入刃したとき、高強度繊維シート2に接しないで切り進み保護できない場合がある。これに対し六角形のものはカッター刃11がいかなる方向から入刃しても必ず高強度繊維シート2に引っ掛かる。
【符号の説明】
【0027】
1 箱体
2 高強度繊維シート
3 内箱
4 上蓋
5 スペーサ部材
6 敷板
7 弾性体
8 封密フィルム
9 鋼板
11 舗装切断カッター刃
12 舗装
13 路盤砕石
14 埋設物周辺コンクリート
15 防護対象埋設物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装が剛性体からなる中空平板状の箱体と、この箱体の内底面に敷き詰める形状の高強度繊維シートと、この高強度繊維シートを上記箱体の内底面から浮かせて配置させるスペーサ部材と、上記高強度繊維シートの上に載置された弾性体とからなり、この弾性体が上記箱体の内天井との間でこの箱体に収納された部材を一時的に押圧保持するように収めたことを特徴とする地中埋設物防護具。
【請求項2】
外装が剛性体からなる中空平板状の箱体と、この箱体の内底面に敷き詰める形状の高強度繊維シートと、この高強度繊維シートを気密に包む密封フィルムと、密封フィルムに包まれた高強度繊維シートを上記箱体の内底面から浮かせて配置させるスペーサ部材と上記密封フィルムが作る内圧の脹らみを含む弾性体とからなり、この弾性体が上記箱体の内天井との間でこの箱体に収納された部材を一時的に押圧保持するように収めたことを特徴とする地中埋設物防護具。
【請求項3】
スペーサ部材は弾力性を有する素材にして、上記スペーサ部材と高強度繊維シートとの間に箱体の内底面に敷き詰める形状の鋼板を介在させたことを特徴とする請求項1及び請求項2記載の地中埋設物防護器材。
【請求項4】
高強度繊維シートをアラミド繊維、アラミド繊維を混入した合成繊維としたことを特徴とする請求項1〜請求項3記載の地中埋設物防護器材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211883(P2011−211883A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91749(P2010−91749)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306025411)株式会社ケーシーエル (2)
【Fターム(参考)】