説明

地下灌漑システム

【構成】 水位管理器10は、送水管14をおよびフロート26を備える。送水管14は軸固定具24により垂直方向に固定され、この送水管14に沿ってフロート26が水位に連動し上下動する。また、フロート26にリンク機構38を介して弁体40が連結され、フロート26の上下動に連動して弁体40は送水管14の給水口22を開閉する。
【効果】 水位変動に応じてフロート26がスムーズに上下動して、弁体40が適切なタイミングで給水口22を開閉し、また弁体40が給水口22を隙間なく塞ぐことにより、止水性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下灌漑システムに関し、特にたとえば、水槽内に収容される水位管理器を用いた、地下灌漑システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水位管理器の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1のフロートバルブでは、貯水タンクに給水管が接続され、給水管の先端にバルブ本体が装着されており、バルブ本体内の弁体と貯水タンク内に浮かぶフロートとが連動機構により接続されている。この連動機構により、貯水タンク内の水位変動に応じてフロートが上下動すると、上下動に連動して弁体が給水管を開閉している。
【特許文献1】特許第3026421号公報[F16K 31/24、E03B 11/00、F16H 21/10]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の従来技術では、フロートが水面に浮かんでいるだけだと、水面の波や水流などの影響をフロートが受け、フロートが傾くことにより、水位変動に応じたフロートの上下動が抑制されたり、弁体と弁座との間に隙間が生じたりして、的確なタイミングで隙間なく弁体が給水管を塞ぐ事ができないことがあり、止水性に問題がある。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、止水性を向上することができる水位管理器を用いて、過剰な用水が耕作地へ供給されることを防止する地下灌漑システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、耕作地に敷設され、耕作地に用水を供給する給水管、給水管の上流側の端部に形成され、その内部の水位が給水管を介して耕作地の地下水位に連動する縦管部、給水路からの用水を縦管部内に供給する給水口を有する送水管、縦管部内に収容され、耕作地の地下水位に連動した縦管部内の水位の変動に応じて給水口を弁体で開閉して当該給水口から縦管部内への給水を調整する水位管理器、および給水管の下流側の端部に設けられ、耕作地の地下水位が所定の地下水位設定値よりも高い場合に耕作地の地下水を排水管を介して排水路に排出する水位設定器を備える、地下灌漑システムである。
【0006】
請求項2の発明は、弁体が前記給水口を開閉する水位を前記地下水位設定値に基づいて設定した、請求項1記載の地下灌漑システムである。
【0007】
請求項3の発明は、耕作地の地下水位が地下水位設定値よりも低い場合に弁体が給水口を開いて当該給水口から縦管部内へ給水され、耕作地の地下水位が地下水位設定値よりも高い場合に弁体が給水口を閉じて当該給水口から縦管部内への給水が停止される、請求項2記載の地下灌漑システムである。
【0008】
請求項4の発明は、水位管理器は、送水管にガイドされて縦管部内の水位の変動に連動するフロートを含み、弁体は、フロートに連結され、かつフロートが上昇すると給水口を閉じ、フロートが下降すると給水口を開く、請求項3記載の地下灌漑システムである。
【0009】
請求項5の発明は、水位設定器は、垂直方向に配置され、下流側側面に前記排水管が接続される外管部、および外管部内に垂直方向に配置され、かつ両端が開口し、下端開口が給水管に接続される内管部を含み、内管部内の水位は、給水管を介して耕作地の地下水位に連動し、内管部の高さは、上端開口が地下水位設定値に位置するように設定される、請求項3または4記載の地下灌漑システムである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、送水管をガイドにしてフロートを上下動させることにより、止水性に優れるので、過剰な用水が耕作地へ供給されることを防止できる。
【0011】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施例の水位管理器を水槽に据え付けた状態を示す部分断面図である。
【図2】図1の水位管理器を示す平面図である。
【図3】図1の水位管理器を示す平面図である。
【図4】図1の水位管理器を示す平面図である。
【図5】弁体、角度調節部および弁体リンク部を示す断面図である。
【図6】水位管理器、給水管および水位設定器を耕作地に配置した状態を示す図解図である。
【図7】耕作地の地下水位Wが水位設定値より低い場合の地下灌漑システムを用いた耕作地を示す断面図である。
【図8】耕作地の地下水位Wが水位設定値Sより高い場合の地下灌漑システムを用いた耕作地を示す断面図である。
【図9】この発明の別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【図10】この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【図11】この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【図12】(a)は、この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図であり、(b)は、この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【図13】この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【図14】この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【図15】この発明のさらに別の実施例の水位管理器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すこの発明の一実施例である水位管理器10は、水槽12内に収容され、水槽12内の水位に応じて用水の供給を調整するものである。
【0014】
水槽12は、人工の水槽、配管および井戸などの竪穴、ならびにため池など、貯水部である。
【0015】
図1〜4に示すように、水位管理器10は送水管14を備える。送水管14は、用水を
送水するための管であって、本体部16および先端部18を含む。本体部16は、給水本管(図示せず)などと先端部18とを繋ぐ管であり、たとえば、複数の直管または可撓管を繋いで形成されたり、1本の可撓管で形成されたりする。先端部18は、鉛直に設けられる直管であり、たとえばSUSなどの金属、または塩化ビニル樹脂などの合成樹脂により形成される。先端部18の長さは、適宜設定されるが、搬送、設置や経済性などの点から本体部16に比べて短く設定される。先端部18の一端部分は、本体部16と接続されるための接続部分であって、本体部16が抜けにくいようにその表面にタケノコ状の切り込みなどが設けられる。先端部18の他端は弁体を受ける弁座20として用いられ、他端開口は水槽12内に用水を供給する給水口22として利用される。また、先端部18の周囲に、たとえば2つの軸固定具24およびフロート26が配置される。
【0016】
軸固定具24は、送水管14に装着され、端部が水槽12の内面に沿って、送水管14、特に先端部18が傾くことを防止するものであって、たとえば平板で形成される。軸固定具24は、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂で形成され、挿通孔28を含む。挿通孔28は、送水管14が挿通される孔であって、軸固定具24の中央またはほぼ中央に配置される。そして、この挿通孔28に通された送水管14に軸固定具24がねじなどによって固定される。また、軸固定具24の端部が水槽12の内面に沿うように、端部は弧状などに形成され、軸固定具24の長さは水槽12の内径より少し小さく設定される。さらに、2つの軸固定具24はそれぞれ送水管14の上部および下部に取り付けられ、これらは互いに直角に交わるように配置される。この上側軸固定具24は長さ調整部30および開口部32を含む。長さ調整部30は、軸固定具24の長さを微調整するものであって、ボルトなどが用いられる。長さ調整部30は、開口部32から上側軸固定具24の側面に向かって取り付けられ、長さ調整部30を回転させて、軸固定具24の側面から突出する長さを変えることにより、軸固定具24の長さは調整される。
【0017】
フロート26は、給水口22の上方に配置されて、水槽12内の水面に浮かび、水槽12内の水位変動に応じて上下動する浮標であり、塩化ビニル、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂を用いて、中空成形などにより形成される。この合成樹脂は適宜選択される。また、フロート26は、たとえばリング状であって、その中心に貫通孔34を含む。フロート26が水槽12の内面に接触することを防止するために、フロート26の直径は水槽12の内径より小さく設定される。フロート26の高さはフロート26の必要な浮力、つまり弁体が給水口22を塞ぐ力に応じて設定される。
【0018】
貫通孔34は、送水管14、特に先端部18が通る部分であり、フロート26を軸方向に貫通する。貫通孔34の直径は、送水管14に沿ってフロート26が移動可能なように、送水管14の外径より少し大きく設定される。
【0019】
また、フロート26は、2つのフロートリンク部36をさらに含む。フロートリンク部36は、塩化ビニル、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂の板状体で形成される。2つのフロートリンク部36は、それらの間に貫通孔34を挟んで、フロート26の下面に溶接などにより接合される。そして、このフロートリンク部36にリンク機構38が接合され、フロート26はリンク機構38を介して弁体40と連結される。
【0020】
図1〜図5に示すように、弁体40は、給水口22の下方に配置されて、弁座20に当接して、給水口22を塞ぐものであり、フロート26が上昇すると給水口22を閉じ、かつフロート26が下降すると給水口22を開くことにより給水口22から供給される用水の量を調整するために用いられる。この弁体40は、当接部42、座部44、角度調節部50および弁体リンク部46を有する。当接部42は、円盤状であって、その表面に当接面48を含む。当接部42は、当接面48が弁座20に隙間なく接触するように、エチレンプロピレンゴムなどの弾性材、または合成樹脂などで形成される。当接面48は、弁座
20に当接し、給水口22を塞ぐ平らな面であって、給水口22に向かい合い、かつ弁座20に対して平行に配置される。座部44は、当接部42を支持する部分であり、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂、またはSUSなどの金属を用いて円盤状に形成され、当接部42の裏面に当接部42と重ねて配置される。当接部42および座部44の直径は、弁座20に当たる大きさであり、弁座20の直径、つまり送水管14の先端の外径より大きく設定される。また、弁体40は、角度調節部50を介して弁体リンク部46に接続される。
【0021】
角度調節部50は、当接部42および座部44を支持すると共に、弾性変形などにより当接面48の角度を調節するものとして、座部44と弁体リンク部46との間に配置され、当接部42および座部44と共に弁体リンク部46にボルトなどで固定される。角度調節部50は、エチレンプロピレンゴムなどの弾性材、または合成樹脂などを用いて、円盤状または円筒形状に形成される。そして、角度調節部50の直径は、当接部42および座部44が傾くために、当接部42および座部44の直径より小さく設定される。角度調節部50の硬度は、小さ過ぎると、角度調節部50が当接部42および座部44を支持する力が弱くなり、当接面48が弁座20に隙間なく当接することができなくなり、一方、大き過ぎると、角度調節部50が変形しにくくなるため、弾性変形して当接面48の角度を適切に調節することができなくなることにより、支持力および弾性を考慮して適宜設定される。
【0022】
弁体リンク部46は、当接部42、座部44および角度調節部50を支持しながら、これらをリンク機構38に連結するものであり、SUSなどの金属または合成樹脂などを用いてU字状に形成される。弁体リンク部46の両端はリンク機構38に接続され、弁体リンク部46の中央に当接部42、座部44および角度調節部50が取り付けられる。
【0023】
リンク機構38は、フロート26の動きを弁体40に伝え、フロート26の上下動と弁体40が給水口22を開閉する動きとを連動させるものであって、第1節54、第2節56および第3節58を有す。リンク機構38は、2本の第1アーム60、2本の第2アーム62および2本の第3アーム64を含む。第1アーム60、第2アーム62および第3アーム64は、それぞれSUSなどの金属または合成樹脂などを用いて平棒などで形成される。第1アーム60に第1節54が設けられ、第2アーム62に第2節56が設けられ、第3アーム64に第3節58が設けられる。第1節54と第2節56との間の長さは、第2節56と第3節58との間の長さより長く設定される。また、2本の第1アーム60はそれぞれの上端部でピン接合され、各第1アーム60の下端部は第2アーム62の上端部とピン接合され、2本の第2アーム62は互いに交差して、各第2アーム62の下端部は第3アーム64の上端部とピン接合され、さらに、2本の第3アーム64の下端部はピン接合される。これにより、2つの菱形部分66、68が設けられ、上側の菱形部分66は下側の菱形部分68より大きく形成される。また、各接合部はピン接合されることにより、各アーム54、56、58は回転可能に接合されるため、各菱形部分66、68は変形可能であって、図2および図4に示すように、各菱形部分66、68の対角線の長さが伸縮する。
【0024】
第1節54はフロートリンク部36を介してフロート26がピン接合される、フロート26との連結節である。第2節56は弁体リンク部46を介して当接部42などがピン接合される、弁体40との連結節である。第3節58は軸固定具24と共に送水管14がピン接合される、送水管14との連結節である。
【0025】
これにより、2つのリンク機構38はそれぞれ送水管14および弁体40などを間に挟んで配置され、フロート26、送水管14および弁体40に連結される。そして、図4に示すように、送水管14に沿ってフロート26が下がれば、それに伴い弁体40も下がり、弁体40が給水口22を開く。反対に、図2に示すように、送水管14に沿ってフロー
ト26が上がれば、それに伴い弁体40も上がり、弁体40が給水口22を閉じる。
【0026】
そして、このようなリンク機構38において、図2および図4に示すように、フロート26の移動距離(F−F0)と弁体40の移動距離Vとの比は、リンク機構38の上側菱形部分66の対角線(U−U0)と下側菱形部分68の対角線Dとの比に比例する。このため、対角線の長さを調整することにより、弁体40の移動距離を変化させることができ、U/Dの値を大きくすれば、弁体40が弁座20に押し付けられる力が強くなり、給水口22が弁体40に強い力で閉められる。
【0027】
また、図1および図3に示すように、水位管理器10は指挟み防止カバー70を備え、指挟み防止カバー70がリンク機構38の前面に取り付けられる。指挟み防止カバー70は、菱形部分66、68の中に指が入り、リンク機構38が伸縮した際に、指がリンク機構38で挟まれることを防止するカバーである。指挟み防止カバー70はエチレンプロピレンゴムなどで形成され、その大きさは、リンク機構38、特に菱形部分66、68を覆う大きさに設定される。
【0028】
このような水位管理器10を用いる場合、まず、先端部18に本体部16を接続して、水位管理器10を水槽12に入れ、弁体40が弁座20に当接した状態、つまりフロート26が上がった状態でフロート26が所定の水位設定値に位置するように水位管理器10の高さを調整する。それから、長さ調整部30を調整して上側軸固定具24を長くし、上側軸固定具24を水槽12の内面に突っ張らせることにより、送水管14を水槽12に固定する。これで、先端部18が鉛直方向に配置されれば、水位管理器10の据付は終了し、用水を送水管14に送水すると、用水は給水口22から水槽12内に供給される。この用水にフロート26が浮いて、水位変動に連動して送水管14をガイドとしてフロート26が上下動する。
【0029】
そして、フロート26が上昇すると、弁体40が給水口22を閉じて、給水を止め、一方、フロート26が下降すると、弁体40が給水口22を開いて、給水を行う。
【0030】
このように、フロート26が送水管14をガイドとすれば、フロート26は水面の波や水流などの影響を受けて、フロート26が傾いたり、水槽12の内面に接触したりしにくく、水位変動に応じてスムーズに上下動するため、的確なタイミングで弁体40が給水口22を開閉することができ、止水性に優れる。
【0031】
しかも、軸固定具24により送水管14が傾きにくいため、送水管14をガイドとするフロート26、およびフロート26に連動する弁体40も傾きにくくなり、弁体40が隙間なく給水口22を塞ぐことができ、さらに止水性が向上する。
【0032】
特に、フロート26が送水管14に沿って上下動し、かつ弁体40がフロート26に連結されていると、給水口22や弁座20と弁体40との相対位置が変わらず、弁座20に対して弁体40が傾かないことにより、弁体40が弁座20に隙間なく当接するため、給水口22が確実に塞がれ、さらに止水性が向上する。
【0033】
また、フロート26と連結する第1節54を力点とし、弁体40と連結する第2節56を作用点とし、送水管14と連結する第3節58を支点とすれば、てこの原理でフロート26の上下動が弁体40に働き、フロート26が上昇する力を大きく弁体40に伝えることができるため、弁体40は強い力で上方に向かい、給水口22を隙間なく塞ぐ事ができる。
【0034】
さらに、仮に当接面48が弁座20に対して傾いていても、角度調節部50により当接
面48の角度が調整されれば、当接面48が弁座20に当接した際に、当接面48が弁座20に対して平行になるように当接面48の角度が調整されるため、当接面48が隙間なく弁座20に当たり、給水口22を完全に塞ぐことができる。
【0035】
また、人が水槽内に入らずに水位管理器10を据え付けることができ、水槽の断面積が水位管理器10の挿入可能な大きさであれば設置することができる。
【0036】
図6〜図8は、この水位管理器10を耕作地に送水管から用水を供給する地下灌漑システム74に用いた場合の実施例である。この地下灌漑システム74では、耕作地72の一方側部に給水路76が敷設され、他方側部に排水路78が敷設される。
【0037】
給水路76は耕作地72に用水を供給するための管路であって、送水管14に接続される。この給水路76の傍に給水管86の立ち上げられた部分、つまり縦管部85が水槽として設けられ、縦管部85の中に水位管理器10が配置される。一方、排水路78は耕作地72の過剰な地下水を排出するための水路であって、排水管80および排水溝82などが用いられ、排水路78は排水管80を介して水位設定器84に接続される。そして、縦管部85と水位設定器84との間に複数の給水管86が接続され、各給水管86は耕作地72に敷設される。これにより、給水管86を介して縦管部85の水位および水位設定器84の水位は耕作地72の地下水位Wに連動する。
【0038】
水位設定器84は、耕作地72の地下水位Wを設定するものであり、外管部88および内管部90を備える。外管部88は、垂直方向に配置され、その下端に底を有し、その上端は開口して、上端開口に蓋92が開閉可能に装着される。上端開口は蓋92を開けることにより、地下灌漑システム74の点検口として用いられる。外管部88の下流側側面に排水管80が接続され、外管部88の中に内管部90が配置される。
【0039】
内管部90は、垂直方向に配置され、両端は開口し、下端開口は継手などを介して給水管86に接続される。内管部90の高さは、その上端が耕作地72の地下水位設定値Sに位置するように設定される。
【0040】
図7に示すように、耕作地72の地下水位Wが地下水位設定値Sより低い場合、縦管部85の水位は地下水位Wと同じ高さになり、フロート26は地下水位設定値Sより下がり、それに伴いリンク機構38が縮んで弁体40が下降して、給水口22が開く。この給水口22から用水が縦管部85に供給されて、用水は給水管86を通り、給水管86の多数の細孔から耕作地72に供給される。
【0041】
一方、図8に示すように、耕作地72の地下水位Wが地下水位設定値Sと同じまたはそれより高い場合、縦管部85の水位が地下水位Wと連動して地下水位設定値Sと同じまたはそれより高くなり、それに伴ってフロート26も地下水位設定値Sと同じまたはそれより上がる。フロート26が上昇すると、リンク機構38が伸びて弁体40が上がり、弁体40が弁座20に当たって、給水口22を塞ぎ、用水の供給が停止される。
【0042】
また、耕作地72の地下水位Wが地下水位設定値Sより高いと、耕作地72の地下水は給水管86に流入し、給水管86を通って内管部90へ流れ、内管部90の上端開口から外管部88へ溢れ出して、外管部88から排水管80を介して排水路78へ排出される。
【0043】
このように、弁体40が給水口22を的確なタイミングで隙間なく開閉することにより、過剰な用水を耕作地72へ供給することを防止できる。
【0044】
なお、リンク機構は図1の形状に限定されず、たとえば、図9に示すリンク機構94を
用いることができる。このリンク機構94は、図1のリンク機構38とほぼ同様であるが、リンク機構38の形状が異なり、1本の第1アーム60、1本の第2アーム62および1本の第3アーム64を含む。この場合も、図1のリンク機構38と同様の作用及び効果を示す。
【0045】
これと別のリンク機構として、図10に示すリンク機構96を用いることもできる。このリンク機構96は4本の第4アーム98および2本の第5アーム100を含む。4本の第4アーム98は、それぞれの両端部がピン接合されて、菱形状に組み合わされ、また、4本の内の2本の第4アーム98および2本の第5アーム100で菱形状になるように、第5アーム100の上端部が第5アーム100の上端部にピン接合され、下端部が第4アーム98にピン接合される。
【0046】
また、リンク機構38は第1節102、第2節104および第3節106を含み、第1節102は、第4アーム98の上端部の接合部に設けられ、フロートリンク部36を介してフロート26にピン接合される。第2節104は、第5アーム100の上端部の接合部に設けられ、座体40にピン接合される。第3節106は、第4アーム98の下端部の接合部に設けられ、軸固定具24と共に送水管14にピン接合される。この場合も、図1のリンク機構38と同様の作用及び効果を示す。
【0047】
また、上記全ての実施例では、角度調節部50に弾性材を用いたが、座部44を支持しながら当接面48の角度を調節できるものであれば、これに限定されない。たとえば、図11に示すバネ108や図12(a)に示す曲面体110を角度調節部に用いることもできる。
【0048】
この図12(a)の角度調節部50の場合、曲面体110は、球および楕円体を含み、金属や合成樹脂などの高剛性の材料で形成され、座部44などと共にボルトなどで弁体リンク部46に固定される。そして、座部44に受部112を形成することもできる。受部112は曲面で形成された窪みであって、曲面の曲率は曲面体110の曲率より小さく設定される。この受部112が曲面体110に沿って座部44は傾くため、曲面体110は、当接部42および座部44を支持しながら、当接面48の角度を調節できる。
【0049】
そして、別の曲面体113aとして、図12(b)に示す曲面体113aを用いることもできる。この曲面体113aはボルト113bの頭部であって、座部115aおよび抜け止め部115bで覆われる。座部115aは、その内部に曲面体113aの曲面に沿う曲面、および曲面体113aを納める空間を有し、また、その表面に当接部42を有する。そして、ボルト113bの脚部は弁体リンク部46にナット113cで固定され、座部115aと弁体リンク部46との間に配置される。これにより、ボルト113bは、当接部42および座部115aを支持すると共に、曲面体113aで当接面48の角度を調節し、角度調節部として機能する。
【0050】
さらに、上記全ての実施例では、先端部18の端が弁座20として用いられたが、先端部18に口金114を取り付けることもできる。口金114は金属や合成樹脂などを用いて円筒形状に形成され、送水管14の端部にねじ接合や溶接などで取り付けられる。この場合、口金114の端部は弁座20として弁体40を受け、かつ口金114の端部開口が給水口22となる。
【0051】
図14に示すこの発明の他の実施例である水位管理器10は図1に示す水位管理器10とほぼ同じであるが、送水管14の端部に弁本体116が取り付けられる。これ以外の部分に関しては図1実施例の示す水位管理器10と同様であるため、共通する部分については同じ番号を付して、説明は省略する。
【0052】
弁本体116は、金属や合成樹脂などで形成され、上面、下面および円筒形状の側面を有する。上面に送水管取り付け口118および通孔120が設けられ、下面に給水口22を含む弁座122が設けられる。送水管取り付け口118は、送水管14の先端にねじ接合や溶接などで接続される接続部であり、通孔120は、弁体リンク部46を通すための孔である。弁座122は上を向く。弁体リンク部46は、その一端がリンク機構38にピン接合され、通孔120をとおり、その他端は弁本体116の中に挿入される。弁体40の当接面48は弁本体116の中に収容され、給水口22に向かい合って配置される。また、弁体リンク部46に蓋部124が装着される。蓋部124は、弁体40が下がった際に、通孔120を塞ぐものであって、弾性材などで形成され、弁体40の外側に配置される。これにより、弁体40が下がり、給水口22から用水が給水され弁本体116内が用水で満たされても、蓋部124が通孔120を塞ぐため、通孔120から用水が漏れ出さない。
【0053】
また、このリンク機構38において、第1節54にフロート26がフロートリンク部36を介してピン接合され、第3節58に当接部42などが弁体リンク部46を介してピン接合され、第2節56に送水管14が軸固定具24を介してピン接合される。
【0054】
これによれば、送水管14により送水される用水は給水口22から縦管部85に供給される。そして、供給された用水の水位が上昇すると、それに伴いフロート26が上昇し、それに応じて弁体40が下降して弁座122に当接して、給水口22を塞ぐ。これにより、用水が弁座122に向かって流れるのに対して、弁体40は送水管14側から弁座122に向かって移動するため、用水の水圧の向きと弁体40の弁座122を塞ぐ向きとが一致し、弁体40が弁座122を押し付ける力が水圧により増して、弁体40が弁座122に強く押し付けられることにより、弁体40が弁座122を隙間なく塞ぐ事ができ、止水性に優れる。
【0055】
また、給水口22に配管を接続し、任意の場所まで敷設することで、給水場所を任意に設定することができる。
【0056】
さらに、上で挙げた角度や寸法の具体的数値はいずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【0057】
また、上記全ての実施例において、フロート26の上下動と当接面48が給水口22を開閉する動きとを連動させるものとして、リンク機構38、94、96を用いたが、これに限定されない。たとえば、図15に示すアーム部126を用いることもできる。このアーム部126はたとえばSUSなどの金属または合成樹脂などを用いてU字状に形成される。アーム部126の両端がフロートリンク部36に接続され、アーム部126の中央が当接部42、座部44および角度調節部50に接続される。これにより、フロート26が上昇するに伴い、アーム部126が当接部42などを引き上げることにより、当接面48が給水口22を塞ぐ。一方、フロート26が下降すれば、アーム部126が当接部42などを引き下げて、当接面48が給水口22を開く。
【0058】
さらに、上記全ての実施例において、弁体40を、当接部42、座部44、角度調節部50および弁体リンク部46で形成したが、これらのいずれかがなくてもよい。
【0059】
また、上記全ての実施例において、指挟み防止カバー70を用いたが、これを用いなくてもよい。
【0060】
さらに、図2、図4および図7〜図10において、リンク機構38などがわかりやすい
ように、便宜上指挟み防止カバー70を表していない。
【符号の説明】
【0061】
10…水位管理器
12…水槽
14…送水管
20、122…弁座
22…給水口
24…軸固定具
26…フロート
38、94、96…リンク機構
40・・・弁体
48…当接面
50…角度調節部
54、102…第1節
56、104…第2節
58、106…第3節
70…指挟み防止カバー
72…耕作地
74…地下灌漑システム
86…給水管
108…バネ
110、113a…曲面体
113b…ボルト
116…弁本体
118…送水管取り付け口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕作地に敷設され、前記耕作地に用水を供給する給水管、
前記給水管の上流側の端部に形成され、その内部の水位が前記給水管を介して前記耕作地の地下水位に連動する縦管部、
給水路からの用水を前記縦管部内に供給する給水口を有する送水管、
前記縦管部内に収容され、前記耕作地の地下水位に連動した前記縦管部内の水位の変動に応じて前記給水口を弁体で開閉して当該給水口から前記縦管部内への給水を調整する水位管理器、および
前記給水管の下流側の端部に設けられ、前記耕作地の地下水位が所定の地下水位設定値よりも高い場合に前記耕作地の地下水を排水管を介して排水路に排出する水位設定器を備える、地下灌漑システム。
【請求項2】
前記弁体が前記給水口を開閉する水位を前記地下水位設定値に基づいて設定した、請求項1記載の地下灌漑システム。
【請求項3】
前記耕作地の地下水位が前記地下水位設定値よりも低い場合に前記弁体が前記給水口を開いて当該給水口から前記縦管部内へ給水され、前記耕作地の地下水位が前記地下水位設定値よりも高い場合に前記弁体が前記給水口を閉じて当該給水口から前記縦管部内への給水が停止される、請求項2記載の地下灌漑システム。
【請求項4】
前記水位管理器は、前記送水管にガイドされて前記縦管部内の水位の変動に連動するフロートを含み、
前記弁体は、前記フロートに連結され、かつ前記フロートが上昇すると前記給水口を閉じ、前記フロートが下降すると前記給水口を開く、請求項3記載の地下灌漑システム。
【請求項5】
前記水位設定器は、
垂直方向に配置され、下流側側面に前記排水管が接続される外管部、および
前記外管部内に垂直方向に配置され、かつ両端が開口し、下端開口が前記給水管に接続される内管部を含み、
前記内管部内の水位は、前記給水管を介して前記耕作地の地下水位に連動し、前記内管部の高さは、上端開口が前記地下水位設定値に位置するように設定される、請求項3または4記載の地下灌漑システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−7471(P2012−7471A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216160(P2011−216160)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2007−83825(P2007−83825)の分割
【原出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)
【Fターム(参考)】