説明

地中の気液混合流体観測装置

【課題】地震予知や温泉・地下水観測等のために、地下水及び地下ガスの継続的な監視を行うことを可能にする、地中の気液混合流体の観測装置を提供する。
【解決手段】掘削孔内より水とガスとの混合流体を汲み上げる揚水手段CPと、揚水手段CPにより汲み上げられた水とガスとを分離する気液分離手段CYと、気液分離手段CYにより分離された水の量を測定する水量測定手段FMと、水質を測定する水質測定手段WMと、気液分離手段CYにより分離されたガスの分析測定手段QMSと、水量測定手段FMと水質測定手段WMとガスの分析測定手段QMSによる測定データを記録する記録手段RC1,RC2,RC3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水及び地下ガスの状況を継続的に監視することを可能にする、地中の気液混合流体の観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地殻変動特に地震予知に関する研究は各方面において盛んに行われているが、地震予知の難しさは未だ克服されていないのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、これらの研究成果の一つとして、観測井から採取した各種のガス及びイオン(水素ガス,ヘリウムガス,一酸化炭素,二酸化炭素,水素イオン及び炭酸水素イオンなど)の観測値が震源の浅い地震に対して応答した場合、それらの発生量が地震性破壊に伴う破壊表面積および破壊に伴う間隙率の増加に関係あることが分っている。また、近年、温泉水等の化学組成及びガス組成の変動も地震との関連が明らかにされてきた。
【0004】
本発明は、この研究成果に基づいて、地震予知等のために、地下水及び地下ガスの継続的な監視を行うことを可能にする、地中の気液混合流体の観測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明による観測装置は、掘削孔内より水とガスとの混合流体を汲み上げる揚水手段と、該揚水手段により汲み上げられた水とガスとを分離する気液分離手段と、該気液分離手段により分離された水の量と水質を測定する水量・水質測定手段と、前記気液分離手段により分離されたガスの分析測定手段と、前記水量・水質測定手段と前記分析測定手段による測定データを記録する記録手段とを備えている。
【0006】
本発明によれば、前記揚水手段は、好ましくは、前記掘削孔内に挿入されたスリット管に接続されたチューブポンプである。
【0007】
また、本発明によれば、前記気液分離手段は、好ましくは、赤外線を利用したガス水分離筒を含んでいる。
【0008】
また、本発明によれば、前記分析測定手段は、好ましくは、四重極型質量分析計を含んでいる。
【0009】
また、本発明によれば、前記水量・水質測定手段は、好ましくは、前記気液分離手段に接続された水量測定手段と、該水量測定手段に接続された水質測定手段とを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、得られたデータを監視することにより、地震等の地殻変動を比較的高い確度で予知することができるばかりか、入浴用温泉としての適否等を適確に知ることのできる、地中の気液混合流体の観測装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図示した実施例に基づき説明する。
図1は本発明装置の全体構成を示す概略図、図2は気液分離手段としてのガス水分離筒の詳細図である。
【0012】
図1において、Hは地中約200mの深さまで掘削された掘削孔内に打ち込まれたスリット管、P1はスリット管H内に挿入されてチュービングポンプCPの吸入側に接続された水とガスとの混合流体を採取するための採取管、CYはチュービングポンプCPの吐出側に接続されたガス水分離筒、P2は流量測定手段としての流量計FMを介してガス水分離筒CYで分離された水を水質測定手段としての水質側定機WMへ輸送するための水輸送管、RC1は流量計FMの計測値を記録するためのパソコン等を含む記録装置、RC2は水質側定機WMの測定値を記録するためのパソコン等を含む記録装置、P3は差圧計PMD,電磁弁EV,コールドトラップCT及び圧力計PMを介してガス水分離筒CYで分離されたガスをガス分析測定手段としての四重極型質量分析計QMSへ輸送するためのガス輸送管、RC3は質量分析計QMSの計測値を記録するためのパソコン等を含む記録装置である。
【0013】
図2はガス水分離筒CYの詳細構造を示す。図中、Bはアクリル等の赤外光透過材料よりなる分離筒本体、Fは分離筒本体B内に封入された赤外光遮断材料よりなるフロート、Eは赤外光射出装置、Rは赤外光受光装置である。赤外光射出装置Eと赤外光受光装置Rとは、光スイッチを構成して電磁弁EVに接続されており、分離筒本体B内の水位が所定水位にあって赤外光射出装置Eからの赤外光がフロートFにより遮断されているときは電磁弁EVを閉弁させ、分離筒本体B内の水位が所定水位より下がってフロートFによる上記赤外光の遮断が解除されたとき電磁弁EVを閉弁させ得るように配置されている。
【0014】
なお、上記のガス水分離筒CYを除くその他の機器は、全て公知のものを使用しているので、それらの構成及び作用の詳細な説明は省略する。
【0015】
次に、上記観測装置の作用を説明する。
装置の作動開始により、採取管P1を介してチュービングポンプCPにより汲み上げられたスリット管H内の水とガスの混合流体は、ガス水分離筒CY内でガスと水とに分離されながら水位は上昇し、その水位が所定水位に達して電磁弁EVが閉弁される。そして、水は水輸送管P2により流量計FMを経て水質側定機WMへ、ガスはガス水分離筒CYの上部と電磁弁EVに至るまでのガス輸送管P3内に溜まって行く。かくして分離筒上部のガス圧が上昇し、その差圧が差圧計PDMで計測され、予め設定されている所定圧に達すると、差圧計PDMから信号が出力され、その出力信号に基づいて電磁弁EVが開弁せしめられる。従って、分離筒上部に貯留されていたガスは、ガス輸送管P3によりコールドトラップCTを経て質量分析計QMSへ送られ、周知の方法で組成が分析されて、その結果は記録装置RC3に記録される。また、流量計FMで計測された水量は記録装置RC1に、水質側定機WMにより測定された値は周知の方法で記録装置RC2にそれぞれ記録される。
【0016】
上記のようにして電磁弁EVが開弁せしめられると、分離筒上部のガス圧は徐々に減少するから、ガス水分離筒CY内の水位は徐々に上昇し、これと共に上昇するフロートFにより赤外光射出装置Eから赤外光受光装置Rへ達していた赤外光が遮断され、これにより電磁弁EVは閉弁せしめられる。
このようにして作動の一サイクルが終了し、再び上記の作動が開始されて、このサイクルが繰り返される。
【0017】
本発明装置は、以上説明したように作動するから、長期に亘る地下ガス成分及び地下水の水質の監視が可能となり、得られた記録データから、研究成果を参照しながら、地震等の地殻変動を予知したり、温泉の変化等を適確に把握したりすることができる。
【0018】
以上実施例では、光スイッチに赤外光を用いたり、記録装置を各計測手段毎に設けたりしたが、これに限定されるものではなく、赤外光以外の光を用いたり、各記録装置をユニットとして集約させたりすることも可能であり、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形及び修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】気液分離手段としてのガス水分離筒の一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0020】
H スリット管
P1 採取管
CP チュービングポンプ
CY ガス水分離筒
FM 流量計
RC1,RC2,RC3 記録装置
P2 水輸送管
WM 水質測定機
PDM 差圧計
EV 電磁弁
P3 ガス輸送管
CT コールドフラップ
PM 圧力計
QMS 質量分析計
B ガス水分離筒の本体
E 赤外光射出装置
F フロート
R 赤外光受光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔内より水とガスとの混合流体を汲み上げる揚水手段と、該揚水手段により汲み上げられた水とガスとを分離する気液分離手段と、該気液分離手段により分離された水の量と水質を測定する水量・水質測定手段と、前記気液分離手段により分離されたガスの分析測定手段と、前記水量・水質測定手段と前記分析測定手段による測定データを記録する記録手段とを備えた、地中の気液混合流体観測装置。
【請求項2】
前記揚水手段は、前記掘削孔内に挿入されたスリット管に接続されたチューブポンプである、請求項1に記載の気液混合流体観測装置。
【請求項3】
前記気液分離手段は、赤外線を利用したガス水分離筒を含んでいる、請求項1または2に記載の気液混合流体観測装置。
【請求項4】
前記分析測定手段は、四重極型質量分析計を含んでいる、請求項1乃至3の何れかに記載の気液混合流体観測装置。
【請求項5】
前記水量・水質測定手段は、前記気液分離手段に接続された水量測定手段と、該水量測定手段に接続された水質測定手段とを含んでいる、請求項1乃至5の何れかに記載の気液混合流体観測装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−183160(P2007−183160A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1295(P2006−1295)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(593024782)住鉱コンサルタント株式会社 (4)
【Fターム(参考)】