説明

地中函管理システム

【課題】地中函の蓋を開けることなく地中函の壁面に接続される地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報を、ユーザーが視覚的に認識することができること。
【解決手段】無線タグを地中函上部近傍の地表面等に設置して、タグに地中函の任意の壁面に接続されるすべての管路・ケーブルに関する情報および地中函本体に関する情報を保持させる。そして、この無線タグとの通信手段を具備した情報端末を用いて、地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報をユーザーに視覚的に認識させる。無線タグに保持させる情報は、地中函の壁面に接続される管路・ケーブル情報のみならず、壁面における当該管路の配置を認識できるものとし、地上から壁面のどの位置にどの管路が接続されているかを判別することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグをマンホール・ハンドホール(以下では地中函という)に取り付け、電磁波により地中函内に配線されている地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報について、読み取り・書き込みを可能とした地中函管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中函内のケーブルは、一般に図面や各ケーブルへの行先表示札の取付け等により管理されている。
【0003】
官公庁・電力会社等の大規模地中函では、管路・ケーブルの布設時に、管路・ケーブル種別、行先、設置時期および敷設業者等のメンテナンスに必要な情報が図面に記録され、ユーザーにより綿密な管理が行われている。これに対して、一般需要家構内の地中函等においては、前記のような図面や行先表示札によるケーブル管理が不十分である場合が多い。
【0004】
地中ケーブルの増設・撤去工事を行う際、ケーブル管理が十分に行われていない場合は各ケーブル管路の行先・用途等が容易に判別できず、工事の作業効率低下を招く場合もある。さらに工事終了後、工事内容に合わせて図面の修正等を行う必要もある。
【0005】
また、メンテナンスや災害復旧時にケーブル情報を確認したい場合には、実際に地中函の蓋を開け、図面や行先表示札等を再度確認する必要があり、非常に大きな手間を要する。このように地中ケーブル管理には多大な労力を要している。また、メンテナンスの目的で地中函本体の名称や内部浸水状況、有害ガスの滞留状況等を調査する場合でも、蓋を開けて確認する方法が一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この改善策として、無線タグを用いたケーブル管理方法が考案されている。この方法は、無線タグに書き込まれた地中函内に配線されているケーブル・配管に関する情報について、読み取りや情報修正後再書き込みを可能とし、地上からも効率的にケーブル管理が行えるものである。例えば特開平9−125433号に開示される「マンホール蓋」のように地中函の蓋に無線タグを設置し、地上から内部のケーブル情報を知ることができる手段が提案されている。しかし、地中函は一般的に立方体構造で、それぞれの壁面にケーブルが接続されており、この方式で地中函内のケーブルがどの方向から配線されているか現地で把握するのは難しい。加えて、無線タグは電磁波により交信を行うため、金属の影響を受けやすく、金属製の蓋に設置された無線タグとの交信には、通信上の技術的な困難も発生する。また、特開2003−153410号に開示される「地中箱および該地中箱に設置される標識付き管路口形成部材」は、地中函内に接続される管路口形成部材(ベルマウス)毎に無線タグを設置し、ケーブル毎の管理を行う手段である。しかし、地中函1つに接続されるケーブル管路は、少なくても5〜10本で大型の地中函においては、30本を超えるものもある。管理対象の地中函の数が多い場合は、無線タグが大量に必要となり、システム導入時に多大の費用がかかる恐れがある。また、地上から無線タグを読み取る場合、すべてのケーブル管路の情報が読み取れない可能性が高く、信頼性に問題がある。本発明の目的は、地中函の蓋を開けることなく地中函の壁面に接続される地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報を、ユーザーが視覚的に認識することを可能とすることにある。
【特許文献1】特開平9−125433号「マンホール蓋」
【特許文献2】特開2003−153410号「地中箱および該地中箱に設置される標識付き管路口形成部材」
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明においては無線タグを地中函上部近傍の地表面等に設置して、タグに地中函の任意の壁面に接続されるすべての管路・ケーブルに関する種別、行先、設置時期および敷設業者等の情報並びに地中函本体の名称、内部浸水状況、有害ガスの滞留状況等の情報を保持させる。この無線タグとの通信手段を具備し、地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報をユーザーに視覚的に認識させる通知手段を有する情報端末を用いて、現地において当該地中函に関する前記情報の確認・更新を可能とし、地中函に関する情報を総合的に管理できることが本発明の特徴である。
【0008】
また、単一の無線タグに地中函の任意の壁面に関する当該壁面の地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報のすべてを保持させ、この無線タグとの通信のみによる管理を行うと、通信の簡素化が図れ、地上からデータを読み取る場合でも情報の欠落等が防止できるため信頼性の向上につながる。
【0009】
さらに、無線タグに保持させる情報は、地中函の壁面に接続される管路・ケーブル情報のみならず、壁面における当該管路の配置を認識できるものとし、地上から壁面のどの位置にどの管路が接続されているかを判別することも可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地中函壁面の管路・ケーブル情報を集約し、これを少数の無線タグに保持して信頼性の高い通信を行い、地中函内のすべての管路・ケーブル情報を正確に管理できる。併せて、地中函本体の名称、内部浸水状況、有害ガスの滞留状況等の情報を扱うことで、地中函の総合的な管理が可能である。少数の無線タグで管理するため低コスト化も図れる。また、壁面における管路の配置に関する情報を扱うため、蓋を開けずに配線経路が容易に特定でき、ケーブル増設・撤去工事、メンテナンスおよび災害復旧時等にケーブル情報を確認したい場合には特に有用である。さらに、無線タグとの通信データを情報端末に記憶させることにより、現地へ行かずに当該地中函の管路・ケーブル情報を把握することができ、これらの情報を利用したホストコンピュータによる管理への応用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面にしたがって本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1に本発明の実施形態に係る地中函管理システムの概要を示す。図1において、1は地中函であり、地中函1には1本以上の管路およびケーブルが接続されている。地中函1の上部地表面に無線タグ2を設置する。無線タグ2には、管路・ケーブル種別、行先、設置時期および敷設業者等の情報並びに地中函本体の名称、内部浸水状況、有害ガスの滞留状況等の情報を書き込むが、詳細については後述する。3は無線タグ2に対する電波の送受信を行うアンテナ、4はアンテナ3からの信号を電気信号に変換するリーダ/ライタで、3、4により無線タグの情報の読み取り・書き込みを行う。5はリーダ/ライタ4からの信号を受け、管路・ケーブル情報を表示する情報端末である。情報端末5は、情報の読み書きを特定のユーザーにのみ可能とするID登録・パスワード認証等のセキュリティ対策を施す。また形式としては、例えばPDAのような携帯できる機器が好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0013】
図2は、地中函1の4辺のうち管理対象の管路・ケーブルが接続されている任意の1辺(壁面6とする)の拡大図、図3は図2における無線タグ2の情報を読み取り、情報端末5に表示される画面例である。以下、これらの図を用いて無線タグ2へ書き込む情報について詳述する。
【0014】
無線タグ2へ書き込む情報は、壁面6へ接続されているすべての管路・ケーブルに関する情報であり、各管路・ケーブル種別、行先、設置時期、および敷設業者等の情報と併せて各管路・ケーブルの壁面6における位置情報を付加する。このような情報記憶方式を採用することで、無線タグ2の情報から、図3のように実際の壁面6の壁面管路分布状況と類似した配置で、管路・ケーブル情報を情報端末5に画面表示することが可能となる。また、図3において任意の管路・ケーブルを選択すれば、当該管路・ケーブル情報が得られる。これにより、ユーザーが蓋を開けずに地中函内の壁面管路分布状況およびケーブル回線情報を視覚的に認識することが可能となる。さらに、管路に個別に無線タグを設置する従来の方式と比較して単一の無線タグで管理するため、タグとの通信の簡単化が図れ、地上からの読み取りの信頼性向上と共に、設置費用の省コスト化および管理の省力化にもつながる。加えて、地中函本体の名称、内部浸水状況、有害ガスの滞留状況等の情報を無線タグ2へ書き込んでおけば、管路・ケーブル情報と併せて地中函に関する総合的な管理が行える。前記の地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報を、情報端末に記憶させることにより現地へ行かずに当該地中函の情報を把握することができ、またホストコンピュータによる管理への応用も可能である。
【0015】
図4に無線タグ2の設置例を示す。無線タグ2は、情報を保持するメモリーとロジック回路を持つICチップと小さなアンテナで構成される。種類として、電池付きのアクティブ・タグ、電池不要のパッシブ・タグがあり、いずれのタグを用いてもよいが、長距離の通信距離を必要とする場合は前者を使用し、電池交換を行わずメンテナンスフリーが要求される場合は後者を選択するのが望ましい。無線タグ2の加工は使用用途に合わせて施す必要があり、屋外設置の場合は防水性・耐久性・耐塵性にすぐれた構造とし、併せて車両などの重量物に耐えうるように図る。図4に示すように地中函の上部に直接設置する以外に、地中函のコンクリートを研削し埋め込む方式も可能である。また、無線タグ2に耐金属の加工を施すことで地中函蓋に設置することも可能である。
【0016】
無線タグ2の設置位置は、地中函4辺のうち管理対象のケーブル・配管が接続されている1辺の上部に設置するのが望ましい。これにより、ユーザーが無線タグ2を現地で読み込んだ際、地中函のどの面のケーブル・配管情報を閲覧しているかが容易に判断できる。また、他の設置例としては複数辺に対して一つ設置するなど様々な設置形態が考えられる。地表面に設置の場合は、地中函の蓋を開ける必要がなく無線タグ設置作業の効率が向上する。
【0017】
図5に無線タグ2の第2の設置例を示す。設置環境が悪いなどの理由により、図4に示すように無線タグ2を地表面付近に設置が困難な場合は、地中函内部に設置することもできる。地表面と比較して、重量物の影響がなくなるので無線タグ2を重量物に耐えうる構造とする必要がなくなる。
【0018】
図6に無線タグ2の第3の設置例を示す。地中函上部・内部に構造上設置が困難な場合は、地中函付近の地面へ設置する。以上のように、本発明の無線タグ2は加工を施すことにより、地中函付近の任意の場所に設置が可能であるが、管理運営上最適な場所に設置することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の地中函管理システムを用いた情報読み取りの状況を示す説明図。
【図2】地中函に無線タグを設置した実施例を示す斜視図
【図3】情報端末で管路・ケーブル情報を表示した図
【図4】無線タグの第1の設置例を示す断面図
【図5】無線タグの第2の設置例を示す断面図
【図6】無線タグの第3の設置例を示す断面図
【符号の説明】
【0020】
1 地中函
2 無線タグ
3 アンテナ
4 リーダ/ライタ
5 情報端末
6 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中函上部近傍の地表面等に設置され、地中函の任意の壁面に接続されるすべての管路・ケーブルに関する種別、行先、設置時期および敷設業者等の情報並びに地中函本体の名称、内部浸水状況、有害ガスの滞留状況等の情報を保持する無線タグと、
前記無線タグとの通信手段を具備し、地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報をユーザーに視覚的に認識させる通知手段を有する情報端末から構成され、現地における当該地中函に関する前記情報の確認・更新を可能とし、地中函に関する情報を総合的に管理することを特徴とした地中函管理システム。
【請求項2】
地中函壁面の地中管路・ケーブルおよび地中函本体に関する情報を単一の無線タグに保持することを特徴とした請求項1の地中函管理システム。
【請求項3】
地上から、地中函の壁面に接続される管路・ケーブル情報のみならず、壁面における当該管路の配置を認識可能としたデータ処理構造を有することを特徴とする請求項1の地中函管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−345640(P2006−345640A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169267(P2005−169267)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】