地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法、装置及び電気防食管理方法、装置
【課題】地中埋設管の塗覆装損傷部周辺へのアクセスを不要とするとともに、交流腐食リスクの評価を可能とする。
【解決手段】地中埋設管1の塗覆装損傷部2の電流推定に際して、所定の深さdにある地中埋設管1の塗覆装損傷部2の直上地表面又は直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極14aと、該第1の照合電極14aから任意の距離gだけ離れた第2の照合電極14bの間の電位差を、直流及び交流電圧計13でそれぞれ測定し、該電位差から所定の式(7)(8)又は(7’)(8’)より直流電流IDC及び交流電流IACをそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積Sで除して前記塗覆装損傷部2の直流電流密度及び交流電流密度を導出する。
【解決手段】地中埋設管1の塗覆装損傷部2の電流推定に際して、所定の深さdにある地中埋設管1の塗覆装損傷部2の直上地表面又は直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極14aと、該第1の照合電極14aから任意の距離gだけ離れた第2の照合電極14bの間の電位差を、直流及び交流電圧計13でそれぞれ測定し、該電位差から所定の式(7)(8)又は(7’)(8’)より直流電流IDC及び交流電流IACをそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積Sで除して前記塗覆装損傷部2の直流電流密度及び交流電流密度を導出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法、装置及び電気防食管理方法、装置に係り、特に、地中埋設管の塗覆装損傷部周辺へのアクセスが不要で、且つ、交流腐食リスクを評価することが可能な地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法、装置及び、これを用いた電気防食管理方法、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中埋設管の電気防食効果を評価する方法として、特許文献1には、図1(特許文献1の第1図に対応)に示す如く、塗覆装鋼管1の塗覆装損傷部2の近接ターミナル(埋設管に結線される導線)5と、地中に差し込んだ2本の照合電極4a、4bの間の電位差(管対地電位)を、多チャンネルデジタル電圧計3でそれぞれ測定し、図2(特許文献1の第5図に対応)に示す直流電位の変化を示すグラフにプロットして、その傾きから、防食効果を評価するのに必要な直流電流密度(防食電流密度)iDCを算出する方法が記載されている。
【0003】
又、関連する技術として、特許文献2には、地中埋設管に特定周波数の交流電流を流したときに塗覆装損傷部の周辺に生ずる交流電位分布を、該塗覆装損傷部周辺の地中に差し込んだ複数の照合電極により検出し、解析することによって、地中埋設管の塗覆装損傷部面積を測定する技術が記載され、非特許文献1にも、電位分布解析による塗覆装損傷部付き埋設鋼管の腐食防食評価技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−95868号公報(第1図、第5図)
【特許文献2】特開平4−95867号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】足立他「電位分布解析による塗覆装欠陥付き埋設鋼管の陰極防食評価」腐食防食協会 材料と環境,第40巻,19-25頁(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来は、診断対象となる塗覆装損傷部の近くの埋設管金属部への接触又はターミナルが必要であり、塗覆装損傷部の近くにターミナルがない場合、準備に手間がかかるだけでなく、交流電流、即ち、交流腐食リスクの評価ができないという問題点を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、地中埋設管の塗覆装損傷(欠陥を含む)部周辺へのアクセスが不要で、且つ、交流腐食リスクを評価可能とすることを課題とする。
【0008】
なお、本発明を現場で実施するためには、地中埋設管の塗覆装損傷部の大体の位置が針電極法あるいはピアソン法などの従来技術によりわかっていること、塗覆装損傷部の面積及び深さ位置がわかっていること、ならびに大地(土壌)抵抗率がわかっていることが前提となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定に際して、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出するようにして、前記課題を解決したものである。
【0010】
ここで、前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数1】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積Sで除することで、直流電流密度、交流電流密度を推定できる。
【0011】
また、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出することができる。
【0012】
ここで、前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、前記地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から一方の照合電極までの距離をG、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数2】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除することで、直流電流密度、交流電流密度を推定できる。
【0013】
又、前記地中埋設管と各照合電極との間の電位の差(電圧)を測定し、前記第1の照合電極と地中埋設管との間の電圧と、前記第2の照合電極と地中埋設管との間の電圧との差から、前記第1の照合電極と第2の照合電極の間の電位差(ΔV)を求めることもできる。
【0014】
本発明は、又、前記の方法で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理方法を提供するものである。
【0015】
又、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置を提供するものである。
【0016】
又、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置を提供するものである。
【0017】
ここで、前記照合電極を導電性車輪で構成し、該照合電極及び電圧計を走行可能な車両に搭載することができる。
【0018】
本発明は、又、前記の装置で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗覆装損傷部周辺の地中埋設管へのアクセスが不要な地表面電位差測定値から損傷部電流を推定できる。又、直流電流(防食電流)推定と併せ、交流地表面電位差を測定し、損傷部交流電流を推定することで交流腐食リスクを評価することもできる。
【0020】
特に、照合電極を導電性車輪で構成して、装置を走行可能な車両に搭載した場合は、現場への移動が極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1に記載された、従来の電気防食効果評価方法を実施する装置の概略構成を示す図
【図2】前記評価方法で用いる直流電位の変化を示すグラフ
【図3】本発明の第1実施形態を示す図
【図4】前記実施形態で電気防食の効果を推測するために用いる電気防食管理基準の一例を示す図
【図5】実施例における、プローブに直流・交流電流を印加したときの水槽実験回路を示す図
【図6】同じくプローブ直流電流の実測値と計算値を示す図
【図7】同じくプローブ交流電流の実測値と計算値を示す図
【図8】同じくプローブ直流電流密度の実測値と計算値を示す図
【図9】同じくプローブ交流電流密度の実測値と計算値を示す図
【図10】プローブ電流による電気防食管理基準の一例へプロットした例を示す図
【図11】本発明の第2実施形態を示す図
【図12】電位差測定の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態は、図3に示す塗覆装損傷探査装置10を用いて、所定の深さdにある地中埋設管(例えば鋼管)1の塗覆装損傷部2の直上地表面の第1の照合電極14aと、該第1の照合電極14aから任意の距離gだけ離れた第2の照合電極14bとの電位差を直流及び交流電圧計13でそれぞれ測定し、該電位差から、後出(7)式、(8)式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め従来技術により求めておいた塗覆装損傷部面積で除して損傷部直流電流密度及び交流電流密度を導出するようにしたものである。
【0024】
以下、本発明の原理を説明する。
【0025】
地表面からの塗覆装損傷部2までの深さがdのとき、地表面に現れる電位V(x,y)は、地表面のある一点を基準とし、管軸方向をx、水平方向で管軸方向と垂直な方向をy、深さ方向をz、塗覆装損傷部2に流れる電流をI、大地(土壌)抵抗率をρとすると、陽極(アノード)が陰極(カソード)から十分離れた位置に設置されている場合、無限遠を基準とする相対的なポテンシャルから次式で表される。
【数3】
【0026】
図3に示した塗覆装損傷探査装置10は、地中埋設管1と接地電極(14a、14b)との間に例えば商用周波数の交流信号電圧を印加する電源(図示省略)と、塗覆装損傷部2に流れる電流によって形成される電位差を電位差法を用いて計測する直流及び交流電圧計13を有する。
【0027】
前記塗覆装損傷探査装置10が第1実施形態のように地中埋設管1の直上にあるとき、y=0であるので(1)式は次式で与えられる。
【数4】
【0028】
ここで第1の照合電極14aが塗覆装損傷部2の直上に位置するとき、第1の照合電極14aが検出する地表面電位は次式で与えられる。
【数5】
【0029】
このときの第2の照合電極14bが検出する地表面電位は、照合電極間隔をgとすると次式で与えられる。
【数6】
【0030】
従って、第1と第2の照合電極14a、14bが検出する地表面電位の差ΔV(=V(0)−V(g))は次式で与えられる。
【数7】
【0031】
ΔVは、塗覆装損傷探査装置10で計測できることから、大地(土壌)抵抗率ρが分かれば、次式により塗覆装損傷部2に流れる電流Iを計算できる。
【数8】
【0032】
直流の地表面電位差測定値をΔVDCと表記すると、(6)式より、塗覆装損傷部2に流入する直流電流IDCは次式で表される。
【数9】
【0033】
一方、地中埋設管1に流出入する交流は、通常、商用周波数(50Hzや60Hz)である。そこで、商用周波数の地表面電位差測定値をΔVACと表記すると、(6)式より、塗覆装損傷部2に流出入する交流電流IACは次式で表される。
【数10】
【0034】
(7)式で求めた直流電流IDCを従来技術で求めた塗覆装損傷部面積Sで除して、損傷部直流電流密度が求まる。同様に、(8)式と従来技術で求めた塗覆装損傷部面積Sにより損傷部交流電流密度が求まる。これらを図4に示す電気防食管理基準(細川裕二、梶山文夫、中村康朗「プローブ電流密度を指標とした土壌埋設パイプラインのカソード防食管理基準に関する検討」腐食防食協会 材料と環境、第51巻,第5号,221-226頁(2002)参照)にプロットすることで、電気防食の効果を推測できる。電気防食の効果は他にも、ドイツ工業規格DIN50 925:Nachweis der Wirksamkeit des kathodishen Korrosionsschutzes erdverlegter Anlagen.p.5 (1992) に示されるカソード防食管理基準の範囲内に、本技術で導出した損傷部直流電流密度及び損傷部交流電流密度評価があるかどうかで評価することができる。ただし、接触抵抗やポテンシャルの計算には理想的なモデルを想定しており、実際には得られた式と実測値の間の相関関係(以下に示す図6、図7、図8、図9など)を取り、補正を考慮する必要がある。水槽を用いた実験で得られた補正係数は1.1〜1.2であった。図示しないが様々な測定に対して補正係数は0.6〜1.8であった。
【0035】
以上のように、塗覆装損傷部深さd、照合電極間隔g、大地(土壌)抵抗率ρ、前後の照合電極14a、14bが検出する地表面電位差ΔVなどの、非掘削で得られる値から、塗覆装損傷部2に流入する電流密度を計算で求めることができる。
【0036】
以上の計算では、塗覆装損傷部2を半球(本来は円盤として仮定した方が実情と近いものの、半球の方が積分を考えやすい)として仮定しており、この場合、陽極の接触抵抗Rは次式のようになる。
【数11】
ここで、rは半球の半径である。
【0037】
この場合、電位差から算出される電流Iは、前出(6)式で表される。
【0038】
一方、損傷を円盤として仮定すると、陽極の接触抵抗Rは次式のようになる。
【数12】
ここで、r’は円盤の半径である。
【0039】
この場合、電位差ΔVから算出される電流Iは、次式で表される。
【数13】
【0040】
更に、陽極の接触抵抗Rは、該陽極の表面積をS’として次式で表すこともできる。
【数14】
【0041】
この場合、電位差ΔVから算出される電流Iは、次式で表される。
【数15】
【0042】
このため、塗覆装損傷部の接地抵抗の計算方法が変わっても、電流を計算することができる。
【0043】
[実施例]
地表面電位の測定による塗覆装損傷部面積と塗覆装損傷部電流密度の評価に、水槽を用いた模擬試験を行った。
【0044】
(1)直流・交流プローブ電流推定
図5に示す実験回路を用い、水槽20内に沈めたプローブ(SS400製)22に、直流電流、及び、発振器(OSC)25で発生させた交流電流を、発信器であるポテンショ・ガルバノスタット26を通じて印加したときの照合電極28a、28b間の直流・交流水面電位差ΔV(E)を直流及び交流電圧計29で測定して、(7)式と(8)式からプローブ直流電流IDC及びプローブ交流電流IACを算出した。図において、30は対極(SUS製)である。
【0045】
図6、図7に、プローブ直流電流IDCとプローブ交流電流IACの実測値に対する算出値をそれぞれ示す。
【0046】
(2)直流・交流プローブ電流密度推定
前項(1)で求めたプローブ直流・交流電流IDC、IACを、予め求めておいたプローブ面積Sで除してプローブ直流電流密度、プローブ交流電流密度を求めた。
【0047】
図8、図9に、プローブ直流、交流電流密度の実測値に対する算出値をそれぞれ示す。
【0048】
上記計算値を、図4に示したプローブ電流による電気防食管理基準にプロットしたものを図10に示す。本実験例では直流電流密度は防食領域内にあるが、交流電流密度が管理基準値より外れているプローブがあることを示している。
【0049】
なお、腐食で問題になるのは商用周波数であることが多いが、交流は商用周波数に限定されない。
【0050】
次に、図11を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
【0051】
本実施形態の塗覆装損傷探査装置20は、地上を自力で走行可能な二輪車で構成され、地中埋設管1と接地電極(前車輪電極24a、後車輪電極24b)との間に例えば商用周波数以外の交流信号電圧を印加する車載電源(図示省略)と、塗覆装損傷部2に流れる電流によって形成される電位差を電位差法を用いて計測する車載の直流及び交流電圧計(図示省略)を有する。この塗覆装損傷探査装置20で使用している車輪電極24a、24bは導電性ゴム製であり、前後車輪電極24a、24bの間の電位差を測定することができる。
【0052】
前記塗覆装損傷探査装置20が地中埋設管1の直上を走行しているときは第1実施形態と同様にy=0であるので、前出(1)式は前出(2)式で表わされる。
【0053】
ここで第1の照合電極である前車輪電極24aが塗覆装損傷部2の直上に位置するとき、前車輪電極24aが検出する地表面電位は、前出(3)式で与えられる。
【0054】
このときに第2の照合電極である後車輪電極24bが検出する地表面電位は、車輪電極間隔をgとすると、前出(4)式で与えられる。
【0055】
従って、前後車輪電極24a、24bの間の電位差ΔVは、前出(5)式で与えられる。
【0056】
ΔVは、塗覆装損傷探査装置20で計測できることから、大地(土壌)抵抗率ρが分かれば、前出(6)式により、塗覆装損傷部2に流れる電流Iを計算できる。
【0057】
ここで前出(3)式は、前車輪電極24aが塗覆装損傷部2の直上に位置する時を想定しているが、照合電極が塗覆装損傷部2の直上でなくても、塗覆装損傷部2の直上との距離が分かっていれば電流を計算することができる。即ち、前車輪電極24aが塗覆装損傷部2からGだけ離れている場合、(3)式は次式のようになる。
【数16】
【0058】
このときの後車輪電極24bが検出する地表面電位は、車輪電極間隔をgとすると次式のようになる。
【数17】
【0059】
従って、前後車輪電極24a、24bの間の電位差ΔVは次式で与えられる。
【数18】
【0060】
ΔVは、塗覆装損傷探査装置20で計測できることから、次式により塗覆装損傷部2に流れる電流Iを計算できる。
【数19】
【0061】
この電流と電位の関係は直流でも交流でも成り立つから、次式を用いて、直流電流IDCは直流電位差ΔVDC、交流電流IACは交流電位差ΔACより推定することができる。
【数20】
【0062】
本実施形態においては、塗覆装損傷探査装置20が二輪車と一体化され、自走可能とされているので、現場への移動が極めて容易である。なお、二輪車でなく、三輪車や四輪車と一体化したり、走行手段とは別体の可搬型や据置型とすることも可能である。
【0063】
また、図12のように、配管との電気的接続を行うことができるターミナル30が近くにある場合には、地中埋設管1と照合電極24a、24bとの間の電位の差(電圧)を測定し、第1の照合電極24aと地中埋設管1との間の電圧と、第2の照合電極24bと地中埋設管1との間の電圧との差から、第1の照合電極24aと第2の照合電極24bの電位差を求めることもできる。
【0064】
なお前記実施形態においては、いずれも、本発明が鋼管に適用されていたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、金属管一般に適用できる。又、損傷は欠陥によるものも含む。
【符号の説明】
【0065】
1…地中埋設管
2…塗覆装損傷部
10、20…塗覆装損傷探査装置
13…直流及び交流電圧計
14a、14b…照合電極
24a…前車輪電極(第1の照合電極)
24b…後車輪電極(第2の照合電極)
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法、装置及び電気防食管理方法、装置に係り、特に、地中埋設管の塗覆装損傷部周辺へのアクセスが不要で、且つ、交流腐食リスクを評価することが可能な地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法、装置及び、これを用いた電気防食管理方法、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中埋設管の電気防食効果を評価する方法として、特許文献1には、図1(特許文献1の第1図に対応)に示す如く、塗覆装鋼管1の塗覆装損傷部2の近接ターミナル(埋設管に結線される導線)5と、地中に差し込んだ2本の照合電極4a、4bの間の電位差(管対地電位)を、多チャンネルデジタル電圧計3でそれぞれ測定し、図2(特許文献1の第5図に対応)に示す直流電位の変化を示すグラフにプロットして、その傾きから、防食効果を評価するのに必要な直流電流密度(防食電流密度)iDCを算出する方法が記載されている。
【0003】
又、関連する技術として、特許文献2には、地中埋設管に特定周波数の交流電流を流したときに塗覆装損傷部の周辺に生ずる交流電位分布を、該塗覆装損傷部周辺の地中に差し込んだ複数の照合電極により検出し、解析することによって、地中埋設管の塗覆装損傷部面積を測定する技術が記載され、非特許文献1にも、電位分布解析による塗覆装損傷部付き埋設鋼管の腐食防食評価技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−95868号公報(第1図、第5図)
【特許文献2】特開平4−95867号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】足立他「電位分布解析による塗覆装欠陥付き埋設鋼管の陰極防食評価」腐食防食協会 材料と環境,第40巻,19-25頁(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来は、診断対象となる塗覆装損傷部の近くの埋設管金属部への接触又はターミナルが必要であり、塗覆装損傷部の近くにターミナルがない場合、準備に手間がかかるだけでなく、交流電流、即ち、交流腐食リスクの評価ができないという問題点を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、地中埋設管の塗覆装損傷(欠陥を含む)部周辺へのアクセスが不要で、且つ、交流腐食リスクを評価可能とすることを課題とする。
【0008】
なお、本発明を現場で実施するためには、地中埋設管の塗覆装損傷部の大体の位置が針電極法あるいはピアソン法などの従来技術によりわかっていること、塗覆装損傷部の面積及び深さ位置がわかっていること、ならびに大地(土壌)抵抗率がわかっていることが前提となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定に際して、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出するようにして、前記課題を解決したものである。
【0010】
ここで、前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数1】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積Sで除することで、直流電流密度、交流電流密度を推定できる。
【0011】
また、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出することができる。
【0012】
ここで、前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、前記地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から一方の照合電極までの距離をG、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数2】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除することで、直流電流密度、交流電流密度を推定できる。
【0013】
又、前記地中埋設管と各照合電極との間の電位の差(電圧)を測定し、前記第1の照合電極と地中埋設管との間の電圧と、前記第2の照合電極と地中埋設管との間の電圧との差から、前記第1の照合電極と第2の照合電極の間の電位差(ΔV)を求めることもできる。
【0014】
本発明は、又、前記の方法で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理方法を提供するものである。
【0015】
又、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置を提供するものである。
【0016】
又、所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置を提供するものである。
【0017】
ここで、前記照合電極を導電性車輪で構成し、該照合電極及び電圧計を走行可能な車両に搭載することができる。
【0018】
本発明は、又、前記の装置で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗覆装損傷部周辺の地中埋設管へのアクセスが不要な地表面電位差測定値から損傷部電流を推定できる。又、直流電流(防食電流)推定と併せ、交流地表面電位差を測定し、損傷部交流電流を推定することで交流腐食リスクを評価することもできる。
【0020】
特に、照合電極を導電性車輪で構成して、装置を走行可能な車両に搭載した場合は、現場への移動が極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1に記載された、従来の電気防食効果評価方法を実施する装置の概略構成を示す図
【図2】前記評価方法で用いる直流電位の変化を示すグラフ
【図3】本発明の第1実施形態を示す図
【図4】前記実施形態で電気防食の効果を推測するために用いる電気防食管理基準の一例を示す図
【図5】実施例における、プローブに直流・交流電流を印加したときの水槽実験回路を示す図
【図6】同じくプローブ直流電流の実測値と計算値を示す図
【図7】同じくプローブ交流電流の実測値と計算値を示す図
【図8】同じくプローブ直流電流密度の実測値と計算値を示す図
【図9】同じくプローブ交流電流密度の実測値と計算値を示す図
【図10】プローブ電流による電気防食管理基準の一例へプロットした例を示す図
【図11】本発明の第2実施形態を示す図
【図12】電位差測定の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態は、図3に示す塗覆装損傷探査装置10を用いて、所定の深さdにある地中埋設管(例えば鋼管)1の塗覆装損傷部2の直上地表面の第1の照合電極14aと、該第1の照合電極14aから任意の距離gだけ離れた第2の照合電極14bとの電位差を直流及び交流電圧計13でそれぞれ測定し、該電位差から、後出(7)式、(8)式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め従来技術により求めておいた塗覆装損傷部面積で除して損傷部直流電流密度及び交流電流密度を導出するようにしたものである。
【0024】
以下、本発明の原理を説明する。
【0025】
地表面からの塗覆装損傷部2までの深さがdのとき、地表面に現れる電位V(x,y)は、地表面のある一点を基準とし、管軸方向をx、水平方向で管軸方向と垂直な方向をy、深さ方向をz、塗覆装損傷部2に流れる電流をI、大地(土壌)抵抗率をρとすると、陽極(アノード)が陰極(カソード)から十分離れた位置に設置されている場合、無限遠を基準とする相対的なポテンシャルから次式で表される。
【数3】
【0026】
図3に示した塗覆装損傷探査装置10は、地中埋設管1と接地電極(14a、14b)との間に例えば商用周波数の交流信号電圧を印加する電源(図示省略)と、塗覆装損傷部2に流れる電流によって形成される電位差を電位差法を用いて計測する直流及び交流電圧計13を有する。
【0027】
前記塗覆装損傷探査装置10が第1実施形態のように地中埋設管1の直上にあるとき、y=0であるので(1)式は次式で与えられる。
【数4】
【0028】
ここで第1の照合電極14aが塗覆装損傷部2の直上に位置するとき、第1の照合電極14aが検出する地表面電位は次式で与えられる。
【数5】
【0029】
このときの第2の照合電極14bが検出する地表面電位は、照合電極間隔をgとすると次式で与えられる。
【数6】
【0030】
従って、第1と第2の照合電極14a、14bが検出する地表面電位の差ΔV(=V(0)−V(g))は次式で与えられる。
【数7】
【0031】
ΔVは、塗覆装損傷探査装置10で計測できることから、大地(土壌)抵抗率ρが分かれば、次式により塗覆装損傷部2に流れる電流Iを計算できる。
【数8】
【0032】
直流の地表面電位差測定値をΔVDCと表記すると、(6)式より、塗覆装損傷部2に流入する直流電流IDCは次式で表される。
【数9】
【0033】
一方、地中埋設管1に流出入する交流は、通常、商用周波数(50Hzや60Hz)である。そこで、商用周波数の地表面電位差測定値をΔVACと表記すると、(6)式より、塗覆装損傷部2に流出入する交流電流IACは次式で表される。
【数10】
【0034】
(7)式で求めた直流電流IDCを従来技術で求めた塗覆装損傷部面積Sで除して、損傷部直流電流密度が求まる。同様に、(8)式と従来技術で求めた塗覆装損傷部面積Sにより損傷部交流電流密度が求まる。これらを図4に示す電気防食管理基準(細川裕二、梶山文夫、中村康朗「プローブ電流密度を指標とした土壌埋設パイプラインのカソード防食管理基準に関する検討」腐食防食協会 材料と環境、第51巻,第5号,221-226頁(2002)参照)にプロットすることで、電気防食の効果を推測できる。電気防食の効果は他にも、ドイツ工業規格DIN50 925:Nachweis der Wirksamkeit des kathodishen Korrosionsschutzes erdverlegter Anlagen.p.5 (1992) に示されるカソード防食管理基準の範囲内に、本技術で導出した損傷部直流電流密度及び損傷部交流電流密度評価があるかどうかで評価することができる。ただし、接触抵抗やポテンシャルの計算には理想的なモデルを想定しており、実際には得られた式と実測値の間の相関関係(以下に示す図6、図7、図8、図9など)を取り、補正を考慮する必要がある。水槽を用いた実験で得られた補正係数は1.1〜1.2であった。図示しないが様々な測定に対して補正係数は0.6〜1.8であった。
【0035】
以上のように、塗覆装損傷部深さd、照合電極間隔g、大地(土壌)抵抗率ρ、前後の照合電極14a、14bが検出する地表面電位差ΔVなどの、非掘削で得られる値から、塗覆装損傷部2に流入する電流密度を計算で求めることができる。
【0036】
以上の計算では、塗覆装損傷部2を半球(本来は円盤として仮定した方が実情と近いものの、半球の方が積分を考えやすい)として仮定しており、この場合、陽極の接触抵抗Rは次式のようになる。
【数11】
ここで、rは半球の半径である。
【0037】
この場合、電位差から算出される電流Iは、前出(6)式で表される。
【0038】
一方、損傷を円盤として仮定すると、陽極の接触抵抗Rは次式のようになる。
【数12】
ここで、r’は円盤の半径である。
【0039】
この場合、電位差ΔVから算出される電流Iは、次式で表される。
【数13】
【0040】
更に、陽極の接触抵抗Rは、該陽極の表面積をS’として次式で表すこともできる。
【数14】
【0041】
この場合、電位差ΔVから算出される電流Iは、次式で表される。
【数15】
【0042】
このため、塗覆装損傷部の接地抵抗の計算方法が変わっても、電流を計算することができる。
【0043】
[実施例]
地表面電位の測定による塗覆装損傷部面積と塗覆装損傷部電流密度の評価に、水槽を用いた模擬試験を行った。
【0044】
(1)直流・交流プローブ電流推定
図5に示す実験回路を用い、水槽20内に沈めたプローブ(SS400製)22に、直流電流、及び、発振器(OSC)25で発生させた交流電流を、発信器であるポテンショ・ガルバノスタット26を通じて印加したときの照合電極28a、28b間の直流・交流水面電位差ΔV(E)を直流及び交流電圧計29で測定して、(7)式と(8)式からプローブ直流電流IDC及びプローブ交流電流IACを算出した。図において、30は対極(SUS製)である。
【0045】
図6、図7に、プローブ直流電流IDCとプローブ交流電流IACの実測値に対する算出値をそれぞれ示す。
【0046】
(2)直流・交流プローブ電流密度推定
前項(1)で求めたプローブ直流・交流電流IDC、IACを、予め求めておいたプローブ面積Sで除してプローブ直流電流密度、プローブ交流電流密度を求めた。
【0047】
図8、図9に、プローブ直流、交流電流密度の実測値に対する算出値をそれぞれ示す。
【0048】
上記計算値を、図4に示したプローブ電流による電気防食管理基準にプロットしたものを図10に示す。本実験例では直流電流密度は防食領域内にあるが、交流電流密度が管理基準値より外れているプローブがあることを示している。
【0049】
なお、腐食で問題になるのは商用周波数であることが多いが、交流は商用周波数に限定されない。
【0050】
次に、図11を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
【0051】
本実施形態の塗覆装損傷探査装置20は、地上を自力で走行可能な二輪車で構成され、地中埋設管1と接地電極(前車輪電極24a、後車輪電極24b)との間に例えば商用周波数以外の交流信号電圧を印加する車載電源(図示省略)と、塗覆装損傷部2に流れる電流によって形成される電位差を電位差法を用いて計測する車載の直流及び交流電圧計(図示省略)を有する。この塗覆装損傷探査装置20で使用している車輪電極24a、24bは導電性ゴム製であり、前後車輪電極24a、24bの間の電位差を測定することができる。
【0052】
前記塗覆装損傷探査装置20が地中埋設管1の直上を走行しているときは第1実施形態と同様にy=0であるので、前出(1)式は前出(2)式で表わされる。
【0053】
ここで第1の照合電極である前車輪電極24aが塗覆装損傷部2の直上に位置するとき、前車輪電極24aが検出する地表面電位は、前出(3)式で与えられる。
【0054】
このときに第2の照合電極である後車輪電極24bが検出する地表面電位は、車輪電極間隔をgとすると、前出(4)式で与えられる。
【0055】
従って、前後車輪電極24a、24bの間の電位差ΔVは、前出(5)式で与えられる。
【0056】
ΔVは、塗覆装損傷探査装置20で計測できることから、大地(土壌)抵抗率ρが分かれば、前出(6)式により、塗覆装損傷部2に流れる電流Iを計算できる。
【0057】
ここで前出(3)式は、前車輪電極24aが塗覆装損傷部2の直上に位置する時を想定しているが、照合電極が塗覆装損傷部2の直上でなくても、塗覆装損傷部2の直上との距離が分かっていれば電流を計算することができる。即ち、前車輪電極24aが塗覆装損傷部2からGだけ離れている場合、(3)式は次式のようになる。
【数16】
【0058】
このときの後車輪電極24bが検出する地表面電位は、車輪電極間隔をgとすると次式のようになる。
【数17】
【0059】
従って、前後車輪電極24a、24bの間の電位差ΔVは次式で与えられる。
【数18】
【0060】
ΔVは、塗覆装損傷探査装置20で計測できることから、次式により塗覆装損傷部2に流れる電流Iを計算できる。
【数19】
【0061】
この電流と電位の関係は直流でも交流でも成り立つから、次式を用いて、直流電流IDCは直流電位差ΔVDC、交流電流IACは交流電位差ΔACより推定することができる。
【数20】
【0062】
本実施形態においては、塗覆装損傷探査装置20が二輪車と一体化され、自走可能とされているので、現場への移動が極めて容易である。なお、二輪車でなく、三輪車や四輪車と一体化したり、走行手段とは別体の可搬型や据置型とすることも可能である。
【0063】
また、図12のように、配管との電気的接続を行うことができるターミナル30が近くにある場合には、地中埋設管1と照合電極24a、24bとの間の電位の差(電圧)を測定し、第1の照合電極24aと地中埋設管1との間の電圧と、第2の照合電極24bと地中埋設管1との間の電圧との差から、第1の照合電極24aと第2の照合電極24bの電位差を求めることもできる。
【0064】
なお前記実施形態においては、いずれも、本発明が鋼管に適用されていたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、金属管一般に適用できる。又、損傷は欠陥によるものも含む。
【符号の説明】
【0065】
1…地中埋設管
2…塗覆装損傷部
10、20…塗覆装損傷探査装置
13…直流及び交流電圧計
14a、14b…照合電極
24a…前車輪電極(第1の照合電極)
24b…後車輪電極(第2の照合電極)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、
予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出することを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項2】
前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数1】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除するようにした請求項1に記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項3】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、
予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出することを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項4】
前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、前記地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から一方の照合電極までの距離をG、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数2】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除するようにした請求項3に記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項5】
前記地中埋設管と各照合電極との間の電位の差(電圧)を測定し、前記第1の照合電極と地中埋設管との間の電圧と、前記第2の照合電極と地中埋設管との間の電圧との差から、前記第1の照合電極と第2の照合電極の間の電位差(ΔV)を求めるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理方法。
【請求項7】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、
該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、
前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、
を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置。
【請求項8】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、
該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、
前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、
を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置。
【請求項9】
前記照合電極が導電性車輪でなり、該照合電極及び電圧計が走行可能な車両に搭載されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の装置で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理装置。
【請求項1】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、
予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出することを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項2】
前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数1】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除するようにした請求項1に記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項3】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極の間の電位差を、直流及び交流電圧計でそれぞれ測定し、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、
予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出することを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項4】
前記地中埋設管の深さをd、前記照合電極の間隔をg、前記地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から一方の照合電極までの距離をG、大地(土壌)抵抗率をρ、直流の地表面電位差測定値をΔVDC、目的とする交流の地表面電位の地表面電位差測定値をΔVACとして、次式
【数2】
により、塗覆装損傷部に流入する直流電流IDCと交流電流IACを導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除するようにした請求項3に記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項5】
前記地中埋設管と各照合電極との間の電位の差(電圧)を測定し、前記第1の照合電極と地中埋設管との間の電圧と、前記第2の照合電極と地中埋設管との間の電圧との差から、前記第1の照合電極と第2の照合電極の間の電位差(ΔV)を求めるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理方法。
【請求項7】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上地表面の第1の照合電極と、
該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、
前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、
を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置。
【請求項8】
所定の深さにある地中埋設管の塗覆装損傷部の直上から任意の距離にある地表面の第1の照合電極と、
該第1の照合電極から任意の距離だけ離れた第2の照合電極と、
前記照合電極の間の電位差を、直流及び交流でそれぞれ測定する電圧計と、
該電位差から所定の式より直流電流及び交流電流をそれぞれ導出し、予め求めておいた塗覆装損傷部面積で除して前記塗覆装損傷部の直流電流密度及び交流電流密度を導出する手段と、
を備えたことを特徴とする地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置。
【請求項9】
前記照合電極が導電性車輪でなり、該照合電極及び電圧計が走行可能な車両に搭載されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の地中埋設管の塗覆装損傷部の電流密度推定装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の装置で推定された電流密度を用いて塗覆装損傷部の電気防食状態を評価することを特徴とする電気防食管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−191288(P2011−191288A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271880(P2010−271880)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
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