説明

地中熱交換器兼用基礎杭、地中熱交換器の設置方法及び地中熱交換器

【課題】地中熱交換器を簡単に、かつ、確実に設置して、設置コストを大幅に削減することができる地中熱交換器兼用基礎杭を提供する
【解決手段】中心軸線Oに沿って延びる筒状をなす既製中空杭体10の中空部11に、熱交換用パイプ20が付設された地中熱交換器兼用基礎杭1であって、既製中空杭体10及び熱交換用パイプ20は、熱交換用パイプ20の浮上を防止する浮上防止手段を備え、既製中空杭体10の上端開口部及び下端開口部には、中空部11への異物の侵入を防ぐためのカバー部材26、27が装着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物を建設する際に、地中に打設されて使用される基礎杭であって、建造物の空調設備の熱源などに利用可能な地中熱交換器としての機能を備えた地中熱交換器兼用基礎杭、この地中熱交換器兼用基礎杭を用いた地中熱交換器の設置方法、及び、この地中熱交換器の設置方法により埋設された地中熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、軟弱地盤等に建築構造物を建造する場合には、地中に複数の基礎杭を打設し、この基礎杭上に建築構造物を構築して建築構造物の基礎の安定化を図っている。なお、この基礎杭は、一般に円筒状をなしている。
ところで、近年、前記のような基礎構造において、基礎杭の内部に熱交換用パイプを配設し、基礎杭に地中熱交換器の機能を備えさせた地中熱交換器兼用基礎杭が提供されている。この地中熱交換器兼用基礎杭は、建造物を構築後に、前記熱交換用パイプ内に熱媒体を循環させ、この熱媒体を介して、基礎杭の周縁部における地中温度と略同温となっている基礎杭の熱を回収し、この熱により冷暖房用、給湯用及び融雪用の各種冷熱機器等を作動させるものである。
【0003】
ここで、熱交換用パイプを基礎杭の内部に配設し、地中熱交換器を設置する方法として、つぎのようなものが提案されている。
特許文献1には、基礎杭を地中に打ち込んだ後に、水が注入された熱交換用パイプを挿入して、中空部に充填材を充填して前記熱交換パイプを固定する方法が提案されている。
また、特許文献2には、筒状の基礎杭の内周面に熱交換用パイプを予め付設しておき、この基礎杭を地中に打設する方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、基礎杭の内部に予め熱交換用パイプを埋設させておき、この基礎杭を地中に打設する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−233031号公報
【特許文献2】特開2003−148079号公報
【特許文献3】特開2005−69507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては、基礎杭を打設した後に熱交換用パイプを挿入、固定するので、工事現場における作業が多く、地中熱交換器の設置に多くの時間と労力を要する。また、熱交換用パイプが浮き上がらないように、熱交換用パイプの内部に水を注入しているので、この熱交換用パイプ内に熱媒体を注入する際に、エアロック状態となって空気抜きが困難となるといった問題があった。
【0005】
また、特許文献2においては、筒状の基礎杭を地中に打設しているので、基礎杭の下端開口部から中空部に土砂が入り込んできて、熱交換用パイプが損傷してしまうおそれがあった。また、中空部に入り込んだ土砂が障害となり、中空部に充填材を充填できなくなるといった問題があった。
【0006】
さらに、特許文献3においては、基礎杭が中実構造となっているので、大径、長尺の場合には重量が重くなり、基礎杭を打設する際に大型の重機を用いる必要があり、地中熱交換器の設置コストが増加してしまう。また、基礎杭の上端に熱交換用パイプの接続部が設けられているので、この基礎杭を地盤面よりも深く埋め込むことができない。したがって、基礎杭を打設する前に根切りを行う必要がある。この場合、大型の重機を根切りした部分に搬入するために根切り作業を広い範囲で行う必要があり、地中熱交換器の設置に多くの時間と労力を要することになる。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、地中熱交換器を簡単に、かつ、確実に設置することができる地中熱交換器兼用基礎杭、地中熱交換器の設置方法及び地中熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る地中熱交換器兼用基礎杭は、中心軸線に沿って延びる筒状をなす既製中空杭体の中空部に、熱交換用パイプが付設された地中熱交換器兼用基礎杭であって、前記既製中空杭体及び前記熱交換用パイプは、前記熱交換用パイプの浮上を防止する浮上防止手段を備え、前記既製中空杭体の上端開口部及び下端開口部には、前記中空部への異物の侵入を防ぐためのカバー部材が装着されていることを特徴としている。
【0009】
この構成の地中熱交換器兼用基礎杭においては、既製中空杭体の中空部に熱交換器用パイプが付設されているので、この基礎杭を地中に打設することで地中熱交換器を埋設することができる。また、中空部を有しているので、その重量が必要以上に重くなく、打設する際に大型の重機を使用する必要がない。したがって、地中熱交換器の設置コストを大幅に削減することができる。
【0010】
また、熱交換器用パイプの浮上防止手段を備えているので、中空部に充填材を注入する際に熱交換用パイプが浮き上がることがない。したがって、熱交換器用パイプの内部に水を注入する必要がなく、熱交換用パイプの内部に熱媒体を注入する際のエア抜きを容易に行うことができる。
【0011】
また、筒状の既製中空杭体の下端開口部にカバー部材が装着されているので、この基礎杭を打設した際に、中空部に土砂が入り込むことがなく、中空部に付設された熱交換用パイプを保護することができる。さらに、中空部に充填材をスムーズに充填することができる。
さらに、既製中空杭体の上端開口部にもカバー部材が装着されているので、この基礎杭を地盤面の下側まで打設しても中空部に土砂等が入り込むことがない。したがって、通常の杭と同様に打設作業を行うことができ、地中熱交換器の設置コストをさらに削減することができる。
【0012】
ここで、前記既製中空杭体の前記上端開口部を、前記カバー部材を着脱可能な構成とし、前記既製中空杭体の前記下端開口部を、前記カバー部材を取り付け可能な構成としてもよい。
この場合、例えば、杭体を製造する工場において中空部に熱交換用パイプを配設しておき、上端開口部及び下端開口部にカバー部材を装着した状態で工事現場へと搬入して打設してもよい。また、下端開口部にのみカバー部材を装着した状態で工事現場へと搬入し、工事現場において上端開口部にカバー部材を装着して打設することもできる。さらには、上端開口部及び下端開口部の両方にカバー部材を装着しない状態で工事現場に搬入し、工事現場において上端開口部及び下端開口部にそれぞれカバー部材を装着して打設することもできる。
【0013】
また、前記既製中空杭体を、既製コンクリート杭体としてもよい。この場合、遠心力成形された高強度コンクリート杭(PHC杭)等を利用して地中熱交換器兼用基礎杭を構成することができる。また、上端開口部、下端開口部へのカバー部材の着脱が容易である。
【0014】
また、前記熱交換用パイプを、熱媒体が上方から下方へと流通する下降流路と前記熱媒体が下方から上方へと流通する上昇流路とを有するものとし、前記下降流路と前記上昇流路とを、前記中心軸線に直交する断面において、前記中心軸線を挟んで互いに対向するように間隔をあけて配置してもよい。
この場合、上昇流路を流通する熱媒体と下降流路を流通する熱媒体との間での熱交換を防止でき、効率良く地中熱を回収することができる。
【0015】
ここで、前記熱交換用パイプに、前記下降流路と前記上昇流路との間隔を確保するためのスペーサを配設してもよい。この場合、前記中空部に充填材を充填しても下降流路と上昇流路との間隔を維持できる。
【0016】
また、本発明に係る地中熱交換器の設置方法は、地中熱交換器兼用基礎杭を用いた地中熱交換器の設置方法であって、前記カバー部材を装着した状態の前記地中熱交換器兼用基礎杭を地盤面よりも深い位置まで打設した後、根切りを行って前記地中熱交換器兼用基礎杭の上端部分を露出させ、前記上端開口部に設けられたカバー部材を取り外し、前記熱交換用パイプの開口端に配管を接続してその内部に熱媒体を注入するとともに、前記中空部に充填材を充填して前記熱交換用パイプを固定することを特徴としている。
【0017】
この構成の地中熱交換器の設置方法によれば、基礎杭を地盤面よりも深い位置まで打設した後に根切りを行うので、根切り作業を必要最低限に抑えることができる。したがって、地中熱交換器の設置コストを大幅に削減することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る地中熱交換器は、前述の地中熱交換器の設置方法によって、地中に埋設されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地中熱交換器を簡単に、かつ、確実に設置することができる地中熱交換器兼用基礎杭、地中熱交換器の設置方法及び地中熱交換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の第1の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1から図3に本発明の第1の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭を示す。
本実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭1は、概略円筒状をなす既製コンクリート杭体10と、既製コンクリート杭体10の内部に配置される熱交換用パイプ20とを備えている。
【0021】
既製コンクリート杭体10は、遠心力成形された高強度コンクリート杭(PHC杭)である。外形が中心軸線Oに沿って延びる円筒状をなしており、上端側及び下端側に向けて開口した中空部11を備えている。
既製コンクリート杭体10の下端開口部には、既製コンクリート杭体10の直径方向に延びるように、鉄製の固定用バー12(鉄筋)が溶接されている。
【0022】
熱交換用パイプ20は、熱媒体を既製コンクリート杭体10の上端側から下端側に向けて流入させる下降流路21と、熱媒体を既製コンクリート杭体10の下端側から上端側に向けて流出させる上昇流路22と、これら下降流路21と上昇流路22とを連設する連結流路23とを備えている。本実施形態では、下降流路21及び上昇流路22は互いに平行に配置され、連結流路23はこれら下降流路21及び上昇流路22と直交するように配置されており、熱交換用パイプ20全体として概略U字状をなしている。また、下降流路21と上昇流路22との間には、互いに平行な状態で支持するためのスペーサ金具24が、これら下降流路21と上昇流路22の長手方向に複数(本実施形態では、図1に示すように3つ)設けられている。
【0023】
このような熱交換用パイプ20が、既製コンクリート杭体10の下端開口部から中空部11に挿入され、下降流路21及び上昇流路22が、それぞれ既製コンクリート杭体10の中心軸線Oと平行に延びるように、かつ、中心軸線Oを挟んで互いに対向するように間隔をあけて配置される。これにより、これら下降流路21と上昇流路22は、既製コンクリート杭体10の内周面に沿うように配置される。
【0024】
また、この熱交換用パイプ20の浮上を防止するために、連結流路23が針金等によって前記固定用バー12に縛り付けられている。さらに、下降流路21及び上昇流路22のそれぞれの開口端は、既製コンクリート杭体10の上端開口部に向くように配置され、これらの開口端にはキャップ25が被着されている。
【0025】
そして、既製コンクリート杭体10の下端開口部には、中空部11への異物の侵入を防ぐためのカバー部材として、円板状をなす鉄製の底蓋26が設けられている。底蓋26には、複数の取り付けボルト28が挿通されていて、これらの取り付けボルト28が既製コンクリート杭体10の下端面に形成されたボルト孔に螺着されることで固定されている。
また、既製コンクリート杭体10の上端開口部には、中空部11への異物の侵入を防ぐためのカバー部材として、円板状をなす鉄製の天蓋27が設けられている。天蓋27には、複数の取り付けボルト28が挿通されていて、これらの取り付けボルト28が、既製コンクリート杭体10の上端面に形成された杭頭補強用筋接続用のボルト孔に螺着されることで固定されている。
【0026】
このような構成とされた地中熱交換器兼用基礎杭1は、次のようにして地中に打設されて地中熱交換器が埋設される。
既製コンクリート杭体10の下端側から地中に向けて打設する。ここで、通常のPHC杭と同様に、既製コンクリート杭体10を地盤面よりも深い位置まで打設して地中に完全に埋め込む。その後、根切り作業を行い、既製コンクリート杭体10の上端部分を露出させ、天蓋27を取り外す。そして、熱交換用パイプ20の下降流路21及び上昇流路22の開口端に被着されたキャップ25を取り外して接続配管(図示なし)に接続し、熱交換用パイプ20の内部に熱媒体を注入する。そして、中空部11に例えばモルタル等の充填材を充填して、熱交換用パイプ20を完全に固定する。
なお、前記天蓋27を取り外した後の前記ボルト孔には、杭頭補強用筋が接続される。
【0027】
本実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭1によれば、既製コンクリート杭体10の中空部11に熱交換用パイプ20が挿入されているので、この既製コンクリート杭体10を打設することで地中熱交換器を埋設することができる。また、既製コンクリート杭体10が中空部11を有するPHC杭であるので、大型の重機を使用することなく打設することができる。したがって、地中熱交換器の設置コストを大幅に削減することができる。
【0028】
また、熱交換用パイプ20は、既製コンクリート杭体10の下端に設けられた固定用バー12に針金等によって縛り付けられ、浮上防止手段が施されているので、中空部11にモルタル等の充填材を充填する際に熱交換用パイプ20が浮き上がることがない。したがって、熱交換用パイプ20に水を注入しておく必要がなく、熱交換用パイプ20に熱媒体を注入する際のエア抜きを容易に行うことができる。
【0029】
また、既製コンクリート杭体10の下端開口部に底蓋26が取り付けられているので、地中熱交換器兼用基礎杭1を打設した際に、中空部11に土砂が入り込むことがなく、中空部11に挿入された熱交換用パイプ20を保護することができるとともに、中空部11に充填材をスムーズに充填することができる。
さらに、既製コンクリート杭体10の上端開口部に天蓋27が取り付けられているので、地中熱交換器兼用基礎杭1を地盤面の下側まで打設しても中空部11に土砂等が入り込むことがない。したがって、通常のPHC杭と同様に打設作業を行うことができ、地中熱交換器の設置コストを削減することができる。
【0030】
また、熱交換用パイプ20の下降流路21と上昇流路22とが、中心軸線Oと互いに平行に、かつ、中心軸線Oを挟んで互いに対向するように間隔をあけて配置されているので、上昇流路22を流通する熱媒体と下降流路21を流通する熱媒体との間での熱交換を防止でき、効率良く地中熱を回収することができる。
さらに、本実施形態では、スペーサ金具24が複数設けられているので、中空部11に充填材を充填しても下降流路21と上昇流路22との間隔を維持できる。
【0031】
さらに、本実施形態では、既製コンクリート杭体10(PHC杭)を製造する工場において、熱交換用パイプ20を中空部11に挿入して圧力検査を行い、底蓋26及び天蓋27を取り付けた状態で出荷することができ、工事現場においては通常のPHC杭と同様に打設作業を行うのみでよい。したがって、熱交換用パイプ20の気密性を確保することができ、地中熱交換器の品質を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。図4に、本発明の第2の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭1を示す。
本実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭1は、第1の実施形態と同様に概略円筒状をなす既製コンクリート杭体10と、既製コンクリート杭体10の内部に配置される熱交換用パイプ20とを備えている。
【0033】
本実施形態においては、熱交換用パイプ20の配置が第1の実施形態と異なっている。すなわち、図4に示すように、熱交換用パイプ20の下降流路21及び上昇流路22は、それぞれ既製コンクリート杭体10の内周面に沿って螺旋状に配置されている。ここで、下降流路21及び上昇流路22は、中心軸線Oに直交する断面において、中心軸線Oを挟んで互いに対向する位置に配置されている。
さらに、既製コンクリート杭体10の上端部分には、既製コンクリート杭体10の直径方向に延びる第2固定用バー13(鉄筋)が配設されており、下降流路21及び上昇流路22は、針金等によって第2固定用バー13に縛り付けられている。
【0034】
この構成の地中熱交換器兼用基礎杭1によれば、下降流路21及び上昇流路22は、それぞれ既製コンクリート杭体10の内周面に沿って螺旋状に配置されているので、地中での表面積が大きくなり、地中熱を効率的に回収することができる。また、下降流路21及び上昇流路22は、中心軸線Oに直交する断面において、中心軸線Oを挟んで互いに対向する位置に配置されているので、上昇流路22を流通する熱媒体と下降流路21を流通する熱媒体との間での熱交換を防止できる。なお、下降流路21及び上昇流路22が、針金等によって既製コンクリート杭体10の上端部分に設けられた第2固定用バー13に縛り付けられているので、らせん状に配置された下降流路21及び上昇流路22が、そのねじれが解消されるように変形することを防止できる。
【0035】
次に、本発明の第3の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。なお、第1、第2の実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。図5及び図6に、本発明の第3の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭1を示す。
本実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭1は、第1、第2の実施形態と同様に概略円筒状をなす既製コンクリート杭体10と、既製コンクリート杭体10の内部に配置される熱交換用パイプ20とを備えている。
【0036】
本実施形態においては、熱交換用パイプ20の配置が第1、第2の実施形態と異なっている。すなわち、図5及び図6に示すように、熱交換用パイプ20は、第1下降流路21A、第1上昇流路22A及びこれらを接続する第1連結流路23Aと、第2下降流路21B、第2上昇流路22B及びこれらを接続する第2連結流路23Bとを備えている。第1上昇流路22Aと第2下降流路21Bとは接続配管29によって連設されている。そして、第1下降流路21Aの開口端及び第2上昇流路22Bの開口端が、既製コンクリート杭体10の上端開口部に向けられてキャップ25が被着されている。
【0037】
この構成の地中熱交換器兼用基礎杭1によれば、2つの下降流路21A、21Bと2つの上昇流路22A、22Bとを備えているので、地中での表面積が大きくなり、地中熱を効率的に回収することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、既製中空杭体として円筒状をなす既製コンクリート杭体を適用したものとして説明したが、これに限定されることはなく、鋼管等の他の材質で構成されていてもよいし、断面楕円形状や矩形状をなす筒体であってもよい。
【0039】
また、既製コンクリート杭体の下端開口部に固定用バーを設けて、これに熱交換用パイプを針金等で縛り付けることで、熱交換用パイプの浮き上がりを防止する構成としたもので説明したが、これに限定されることはなく、例えば、取付金具等で既製コンクリート杭体の内周面に熱交換用パイプを固定する等の他の浮上防止手段を講じていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭の側面断面図である。
【図2】図1におけるX方向矢視図である。
【図3】図1におけるY方向矢視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭の側面断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態である地中熱交換器兼用基礎杭の側面断面図である。
【図6】図5に示す地中熱交換器兼用基礎杭の中空部を上方から見た図である。
【符号の説明】
【0041】
1 地中熱交換器兼用基礎杭
10 既製コンクリート杭体(既製中空杭体)
11 中空部
12 固定用バー
20 熱交換用パイプ
21 下降流路
22 上昇流路
24 スペーサ金具(スペーサ)
26 底蓋(カバー部材)
27 天蓋(カバー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線に沿って延びる筒状をなす既製中空杭体の中空部に、熱交換用パイプが付設された地中熱交換器兼用基礎杭であって、
前記既製中空杭体及び前記熱交換用パイプは、前記熱交換用パイプの浮上を防止する浮上防止手段を備え、
前記既製中空杭体の上端開口部及び下端開口部には、前記中空部への異物の侵入を防ぐためのカバー部材が装着されていることを特徴とする地中熱交換器兼用基礎杭。
【請求項2】
前記既製中空杭体の前記上端開口部は、前記カバー部材を着脱可能な構成とされており、前記既製中空杭体の前記下端開口部は、前記カバー部材を取り付け可能な構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の地中熱交換器兼用基礎杭。
【請求項3】
前記既製中空杭体は、既製コンクリート杭体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地中熱交換器兼用基礎杭。
【請求項4】
前記熱交換用パイプは、熱媒体が上方から下方へと流通する下降流路と前記熱媒体が下方から上方へと流通する上昇流路とを有し、
前記下降流路と前記上昇流路とは、前記中心軸線に直交する断面において、前記中心軸線を挟んで互いに対向するように間隔をあけて配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の地中熱交換器兼用基礎杭。
【請求項5】
前記熱交換用パイプには、前記下降流路と前記上昇流路との間隔を確保するためのスペーサが配設されていることを特徴とする請求項4に記載の地中熱交換器兼用基礎杭。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の地中熱交換器兼用基礎杭を用いた地中熱交換器の設置方法であって、
前記カバー部材を装着した状態の前記地中熱交換器兼用基礎杭を地盤面よりも深い位置まで打設した後、根切りを行って前記地中熱交換器兼用基礎杭の上端部分を露出させ、前記上端開口部に設けられたカバー部材を取り外し、前記熱交換用パイプの開口端に配管を接続してその内部に熱媒体を注入するとともに、前記中空部に充填材を充填して前記熱交換用パイプを固定することを特徴とする地中熱交換器の設置方法。
【請求項7】
請求項6に記載の地中熱交換器の設置方法によって、地中に埋設されたことを特徴とする地中熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−96063(P2008−96063A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280315(P2006−280315)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(592032544)北菱産業株式会社 (2)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】