説明

地図データ生成装置及びその方法

【課題】 地図の縮尺変更を伴うスケーリング処理を滑らかに表示可能な地図データを生成する。
【解決手段】 この発明は、異なる縮尺の地図データ間における同じ対象物の形状データの節点をそれぞれ対応させ、これらの節点を線形補間して生成される節点を求め、その節点から形成される形状データにより縮尺可変地図データを生成するので、縮尺の変更を伴うスケーリング処理を鮮明で滑らかに表示可能な地図を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮尺の異なる地図データから中間縮尺地図を生成する地図データ生成装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションシステムをはじめとする表示縮尺が変更可能な地図データの表示装置では、地図の表示縮尺を切替えた際に、連続的に縮尺を変更して表示するズーミング操作が行われ、小さく表示されていた建物がズーミング操作によってだんだん大きく表示されるようになり、建物形状もより詳細なものへと変化していく。例えば、大まかに四角形で記述されていた建物が、凸型の形状に変化する等である。
上記のズーミング操作では、地図の表示範囲も変わるため、ズーミング操作中は建物の位置が変わることになる。例えば、市内全域を表示しているときは自分の乗っている車のすぐ側に表示されていた建物が、ズーミング操作をすると自分の乗っている車から離れた位置に大きく表示されるようになる。
このようにズーミング操作では建物の形状と位置が同時に変化し、地図の表示内容が大きく変化することになる。
地図切替え時に、表示内容が大きく変化すると、人間は前に表示されていた地図と、今表示されている地図の相関を瞬時に判断することが出来ず、注視していた建物がどこに表示されるか分からなくなってしまう。
地図の表示縮尺を切替えた際に、表示範囲や建物などの形状がより詳細なものへと変化して変わり、自分の乗っている車の位置や周辺情報を見失ってしまうのはこのためである。
このような表示縮尺切り替えによる視覚上の不整合を防ぐため、データベースに保持された縮尺の地図データを拡大もしくは縮小することで、現縮尺と次に切り替えようとしている表示縮尺との中間縮尺の地図(任意倍率地図)を生成し、連続的に縮尺を変更して表示するズーミング処理が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、指定した縮尺の値よりも大きな縮尺と小さな縮尺のふたつの画像を特定し、ふたつの画像を中間縮尺に拡大・縮小し、これらを合成する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−65430号公報
【特許文献2】特許第2726746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記特許文献1に示される中間地図生成方法では、データベースに保持された単一の縮尺地図データを拡大・縮小することで中間縮尺地図を生成しているため、ベースとなる地図データが切り替わる際に地図上の形状データが切り替わり中間縮尺地図間で不整合が生じる。形状データは、構造物や境界線等を記述するデータで、地図データは、地図データを構成する形状データの集合から構成される。例えば、高縮尺地図上で詳細に表現される形状データが、低縮尺地図において簡略化された形状データとなっている場合、拡大・縮小によって同一縮尺に変換した場合でも、形状データが異なるため表示の連続性が失われてしまう。
また、特許文献2に示される中間地図生成方法では、中間縮尺にスケーリングした2つの画像を画素単位でブレンドするものであり、中間縮尺地図画像がぼやけたものとなり不明瞭という問題がある。
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、基準となる2つの異なる縮尺地図間の形状データ対応情報を用いて、地図を構成する形状データを線形補間することで、連続的な形状変化が可能な中間縮尺地図を生成し、縮尺の変更を伴うスケーリング処理を滑らかに表示可能な地図データを生成するものである。
また基準となる2つの異なる縮尺地図間の線形補間では隣接する形状データが交差してしまう場合、形状データの交差部分に対してのみ交差回避可能な中間縮尺形状データを保持することで、形状データの交差しない自然な見栄えの中間縮尺地図データを生成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る地図データ生成装置は、
異なる縮尺の地図データ間における同じ対象物を構成する形状データの複数の節点をそれぞれ対応させる形状データ対応手段と、
前記形状データ対応手段によって対応付けられた節点間を補間して中間節点を求める中間節点取得手段と
前記中間節点取得手段で求められた複数の中間節点から形成される中間形状データによって縮尺可変地図データを生成する縮尺可変地図データ生成手段と、
を備えることを特徴とする地図データ生成装置。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、異なる縮尺の地図データ間における同じ対象物の形状データの節点をそれぞれ対応させ、これらの節点を線形補間して生成される節点を求め、その節点から形成される形状データにより縮尺可変地図データを生成するので、縮尺の変更を伴うスケーリング処理を鮮明で滑らかに表示可能な地図を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1を示す地図データ生成装置及びその方法の構成図。
【図2】実施の形態1における形状データの例。
【図3】実施の形態1における形状データ対応情報を示す例。
【図4】実施の形態1における中間縮尺地図データの生成動作説明図。
【図5】実施の形態1における中間形状データの交差について説明する図。
【図6】実施の形態1における中間形状データの交差について説明する図。
【図7】実施の形態1における中間形状データの交差について説明する図。
【図8】実施の形態1における中間縮尺による形状データの変化を説明する図。
【図9】実施の形態1における交差を回避可能な形状データを示す図。
【図10】実施の形態1における非交差中間形状データの変化例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1を示す地図データ生成装置1の構成図である。
地図データ生成装置1は、形状データ対応情報取得手段101と、形状データ対応情報取得手段101に接続された交差判定手段102と、交差判定手段102に接続された非交差中間形状データ生成手段103と、交差判定手段102に接続された縮尺可変地図データ生成手段104から構成される。
形状データ対応情報取得手段(形状データ対応手段)101は、異なる縮尺の地図データAと地図データBが入力されると地図データAと地図データB間における形状データの対応関係を取得し、交差判定手段102に形状データ対応情報を出力する。
形状データとは、構造物や境界線等を記述するデータであり、地図データは、地図データを構成する形状データの集合から構成される。
【0010】
交差判定手段102は、形状データ対応情報取得手段101から入力された異なる2つの縮尺地図の形状データを線形補間して作成する中間縮尺地図を生成し、その中間縮尺地図を構成する形状データについて、隣接する2つの形状データのそれぞれの節点もしくは位置の座標を線形補間した相互の直線に交差が発生するか否かを判定する。
非交差中間形状データ生成手段103は、交差判定手段102から入力された交差する形状データの節点を移動して形状を変更し、中間縮尺節点情報から成る非交差な中間形状データを生成し、交差判定手段102に出力する。
縮尺可変地図データ生成手段104は、非交差判定手段102から入力された縮尺可変地図を生成するための基準となる2つの異なる縮尺地図データ(地図データAと地図データB)と非交差中間形状データから縮尺可変地図データを生成する。
【0011】
図1において、地図データAは縮尺A1で記述された地図データであり、生成対象となる縮尺可変地図データの縮尺が上限値の時の地図データを表している。また地図データBは縮尺B1で記述された地図データであり、生成対象となる縮尺可変地図データの縮尺が下限値の時の地図を表している。
ここで縮尺可変地図データとは、縮尺A1と縮尺B1の間の任意の中間縮尺に対応可能な地図を生成する地図データである。
【0012】
次に動作について説明する。
地図データAと地図データBが、形状データ対応情報取得手段101に入力されると、形状データ対応情報取得手段101は、地図データAに含まれる形状データ群と、地図データBに含まれる形状データ群を取得する。
図2に地図データAの形状データの例を示す。図2の形状データは、構造物の位置座標を示す節点201と、節点202と、節点203と、節点204と、節点205と、節点206と、節点201と節点202を結ぶ接続関係207と、節点202と節点203を結ぶ接続関係208と、節点203と節点204を結ぶ接続関係209と、節点204と節点205を結ぶ接続関係210と、節点205と節点206を結ぶ接続関係211と、節点206と節点201を結ぶ接続関係212から構成される。
地図データは、このような節点と接続情報から構成される形状データを組み合わせて、構造物や、道路、境界線等の地図構成物形状を保持している。
【0013】
図3を例として形状データ対応情報について説明する。
図3aに示した形状データ301は、地図データAの形状データであり、節点302と、節点303と、節点304と、節点305と、節点306と、節点302と節点303の接続関係307と、節点303と節点304の接続関係308と、節点304と節点306の接続関係309と、節点306と節点305の接続関係310と、節点305と節点302の接続関係311から構成される。
また、図3bに示した形状データ321は、地図データBの形状データであり、地図データAの形状データ301と同一の構造物を形状データ301とは異なる縮尺の地図上で表現したもので、節点322、節点323、節点324と、節点325と、節点322と節点323の接続関係327と、節点323と節点324の接続関係328と、節点324と節点325の接続関係329と、節点325と節点322の接続関係331から構成される。
【0014】
ここで、形状データ301と形状データ321のように異なる縮尺で記述された形状データでは、異なる座標系における位置座標が記述されている場合がある。本実施の形態では、両者を同一の座標系に変換したもの、もしくは初めから同一の座標系上で記述されたものとして使用する。同一座標系への変換は、例えば地図縮尺に応じた係数を位置座標に乗ずることによって容易に取得可能である。
形状データ301と形状データ321は同じ構成物を示しているが、形状データ301は5つの節点で構成されているのに対し、形状データ321は4つの節点から構成されており、形状データ321は形状データ301に比べ簡略化されている。このように、同じ構造物でも縮尺の異なる地図上では異なる形状として記述されていることがあり、形状データ対応情報はこうした2つの異なる縮尺地図における形状データ301と形状データ321の対応関係を示す。
【0015】
形状データ対応情報は、例えば節点302と節点322が対応関係にあるとみなす場合、「節点302と節点312が対応」と記述できる。
節点が対応関係にあると見なす方法としては、座標が近傍にあることや、同様の属性情報を備えることや、同一の構造物に含まれることや、同様の接続関係を備えることや、これら複数の情報を組み合わせること等が考えられる。例えば、異なる縮尺地図の2つの節点が属性情報として同じ交差点名称を持つ場合は、2つの節点を同一とみなして形状データ対応情報を記述できる。
節点302と節点322と同様に、節点303と節点323を対応関係にあるとみなす場合は「節点303と節点323が対応」との形状データ対応情報を記述し、節点304と節点324が対応関係にあるとみなす場合は「節点304と節点324が対応」との形状データ対応情報を記述し、節点305と節点325が対応関係にあるとみなす場合は「節点305と節点325が対応」との形状データ対応情報を記述できる。
【0016】
ここで形状データ301の節点に対し、形状データ321に対応する節点が存在しないと見なした場合、接続関係から形状データ301と形状データ321の対応位置を導出し、形状データ対応情報を記述することも出来る。
例えば節点306に対応する形状データ321の形状データ対応情報を導出する場合、節点306は節点304との接続関係である接続309と、節点305との接続関係である接続310を持つことから、節点304に対応する節点324と、節点305に対応する節点325の接続関係である接続329上に節点306の対応位置が存在すると考えることが出来る。
【0017】
この時、接続329上において節点306に対応する位置として位置326を定め、「節点306と位置326が対応」との形状データ対応情報を記述することが出来る。
ここで位置326を定める方法として、節点306に最も近い接続329上の位置を位置326とすることや、接続309と接続310の長さの比と同一の比を持つ接続329上の位置を求め、位置326とすることが考えられる。
【0018】
ここで、形状データ対応情報取得手段101について述べる。
形状データ対応情報取得手段101は、地図データAに含まれる節点と、地図データBに含まれる節点間の同じ位置座標にある対応関係を導出し、形状データ対応情報として出力する。
ここで節点間の対応関係とは、地図データAに含まれる節点が地図データBにおいてどの節点に対応するか、また地図データBに含まれる節点が地図データAにおいてどの節点に対応するかを示すものである。
形状データ対応情報取得手段101は、このような異なる縮尺の地図間における形状データの対応関係を求め、形状データ対応情報として出力する。また、形状データ対応情報が予め生成されている場合には、これを取得して出力することも可能である。
【0019】
次に、交差判定手段102の動作について述べる。
地図データAと、地図データBと、形状データ対応情報と、中間節点位置情報が交差判定手段102に入力されると、交差判定手段102は、地図データAの縮尺と、地図データBの縮尺の間の縮尺をもつ中間縮尺地図データを生成し、形状データの交差が発生するか否かを判定する。
ここで中間節点位置情報とは、特定の中間縮尺における節点の位置を記したもので、特定縮尺における形状データ情報である。
【0020】
ここで図4を用いて中間縮尺地図データの生成動作について説明を行う。
図4において、地図データAに含まれる形状データを形状データ401、地図データBに含まれる形状データを形状データ421とする。
ここで形状データ401は、節点402と、節点403と、節点404と、節点405と、節点406と、節点402と節点403の接続関係407と、節点403と節点404の接続関係408と、節点404と節点406の接続関係409と、節点405と節点406の接続関係410と、節点405と節点402の接続関係411から構成される。
【0021】
また形状データ421は、形状データ401と異なる縮尺で記述された形状データ401と同一の構造物を表しており、節点422と、節点423と、節点424と、節点425と、節点422と節点423の接続関係427と、節点423と節点424の接続関係428と、節点424と節点425の接続関係429と、節点445と節点422の接続関係431から構成される。
ここで交差判定手段102に入力された形状データ対応情報を、「節点402と節点422が対応」、「節点403と節点423が対応」、「節点404と節点424が対応」、「節点406と位置425が対応」、「節点405と節点425が対応」とする。
ここで位置426は、節点406に対応する地図データB上の位置であり、節点424と節点425の接続線上に定められる。
【0022】
交差判定手段102は、形状データ401と、形状データ421と、形状データ対応情報が入力されると、形状データ対応情報に記述された対応する節点もしくは位置の座標を線形補間することで、中間縮尺時の節点である中間節点を生成する(中間節点取得手段であり、交差判定手段102に含まれる)。
また生成対象となる中間節点に対する中間縮尺節点情報が存在する場合は、中間縮尺節点情報に記述された縮尺と節点位置を、節点位置の線形補間における端点として使用する。
中間縮尺節点情報とは、隣接する形状データ間の衝突を回避可能な中間節点位置と、対応する中間縮尺値を合わせて中間縮尺節点情報と呼び、非交差中間形状データ生成手段103で生成される。
【0023】
ここで生成対象となる中間節点に対して、中間縮尺節点情報が存在しない場合の中間節点導出について示す。
地図データAの縮尺をSa1、地図データBの縮尺をSb1、生成対象となる中間縮尺をSc1とすると、Sa1<Sc1<Sb1の関係が成り立つとする。線形補間係数tはt=(Sb1―Sc1)÷(Sb1−Sa1)として求められる。
図4において、地図データA上の節点406のxy座標を(ax、ay)とし、節点406に対応する地図データB上の位置412の座標を(bx、by)とする。節点406と位置426を線形補間して生成される中間縮尺地図上の節点を中間節点446とし、中間節点446のxy座標を(cx、cy)とすると、中間節点446は線形補間係数tを用いて以下の式で求められる。
cx=t×ax+(1−t)×bx
cy=t×ay+(1−t)×by
【0024】
同様に、対応する節点402と節点422の中間節点を442、対応する節点403と節点423の中間節点を443、対応する節点404と節点424の中間節点を444、対応する節点405と節点425の中間節点を445とする。
図4において、節点402と節点422は同一座標であり、中間節点442は節点402、節点422と同一の座標に存在する。同様に中間節点443は節点403、節点423と同一の座標であり、中間節点444は節点404、節点424と同一の座標であり、中間節点445は節点405、節点425と同一の座標に存在するものとする。
【0025】
これら中間節点から構成される形状データが中間形状データ441であり、形状データ401と形状データ421から生成される中間形状データ441は、中間節点442と、中間節点443と、中間節点444と、中間節点446と、中間節点445と、中間節点442と中間節点443の接続関係447と、中間節点443と中間節点444の接続関係448と、中間節点444と中間節点446の接続関係449と、中間節点446と中間節点445の接続関係450と、中間節点445と中間節点442の接続関係451から構成される。
【0026】
次に生成対象となる中間節点に対して、中間縮尺節点情報が存在する場合の中間節点導出について示す。ここで、地図データAの縮尺をSa2とし対応する節点座標を(ax2、ay2)とする。また地図データBの縮尺をSb2、対応する節点座標を(bx2、by2)とする。
また生成対象となる中間縮尺をSc2とし、生成された中間節点座標を(cx2、cy2)とする。また中間縮尺節点情報に含まれる縮尺をSd2とし、記述された中間縮尺節点座標を(dx、dy)とする。
中間縮尺節点座標は、形状データ間の衝突を回避可能な中間節点位置であり、後述する非交差中間形状データ生成手段103の説明でも述べるように、重心座標系における座標値の線形補間によって導く方法や操作者がインタラクティブに指定することで与えられる。
【0027】
縮尺において、Sa2<Sc2<Sd2<Sb2の関係が成り立つ場合、中間縮尺Sc2における節点位置は、Sa2とSd2間で線形補間動作を行い導出する。このとき線形補間係数tはt=(Sd2―Sc2)÷(Sd2−Sa2)として求められ、中間節点は線形補間係数tを用いて以下の式で求められる。
cx2=t×ax2+(1−t)×dx2
cy2=t×ay2+(1−t)×dy2
【0028】
またSa2≦Sd2<Sc2≦Sb2の関係が成り立つ場合、中間縮尺Sc2における節点位置は、Sd2とSb2間で線形補間動作を行い導出する。このとき線形補間係数tはt=(Sb2―Sc2)÷(Sb2−Sd2)として求められ、中間節点は線形補間係数tを用いて以下の式で求められる。
cx2=t×dx2+(1−t)×bx2
cy2=t×dy2+(1−t)×by2
【0029】
交差判定手段102は、このような形状データ対応情報に記述された対応情報に基づく線形補間処理を形状データ内の各節点、位置に対して行うことで中間節点を求め、中間節点から構成される中間形状データ(図4の形状データ441)を生成する。また地図データA、地図データB内に含まれる全ての形状データから中間形状データを生成し、生成した全ての中間形状データから構成される中間縮尺地図データを生成する。
【0030】
中間縮尺縮図データの生成後、交差判定手段102は隣接する中間形状データ間の交差判定を実施する。
図5、図6、図7を用いて中間形状データの交差について説明する。
図5と図6は異なる縮尺を持つ地図上の同一箇所を表しており、図5に地図データAの形状データ501と形状データ502、図6に地図データBの形状データ601と形状データ602が示されている。
図5に示す形状データ501と図6に示す形状データ601が同一の構造物であり、同様に図5に示す形状データ502と図6に示す形状データ602が同一の構造物であるとする。 ここで形状データ501と形状データ601は同一の構造物であるとすることから「節点503が節点603に対応」し、「節点504が節点604に対応」し、形状データ502と形状データ602は同一の構造物であることから「節点505が節点605に対応」し、「節点506が節点606に対応」するとの形状データ対応情報を持つものとする。
【0031】
図5に示した形状データ501、502と、図6に示した形状データ601、602から生成される中間縮尺地図の例を図7に示す。
図7は、中間形状データ701と中間形状データ702から構成される。中間形状データ701は、形状データ501と形状データ601における対応する節点から得られる中間節点によって記述される中間形状データであり、中間形状データ702は、形状データ502と形状データ602における対応する節点から得られる中間節点によって記述される中間形状である。
ここで図5に示した形状データの縮尺をS0、図6に示した形状データの縮尺値をS1、図7に示した中間形状データの縮尺値を中間縮尺値S2とする。
【0032】
図7において、中間節点703は、対応する節点503と節点603を線形補間することにより得られた座標値を持つため、中間縮尺値S2がS0からS1に向かって連続的に変化すると、中間節点703は節点503の座標から節点603の座標へと線形に移動する。
同様に中間縮尺値S2がS0からS1に向かって変化すると、節点704は節点504の座標から節点604の座標へと線形に移動し、節点705は節点505の座標から節点605の座標へと線形に移動し、節点706は節点506の座標から節点606の座標へと線形に移動する。
【0033】
中間縮尺値による形状データの変化を、図8a、図8b、図8cを用いて説明する。
図8aは、地図Aの形状データ、図8cは地図Bの形状データ、図8bは地図Aと地図Bの中間縮尺地図の形状データを示し、ここでは図8aの縮尺値をSa3、図8bの中間縮尺値をSb3、図8cの縮尺値をSc3とし、Sa3<Sb3<Sc3として形状データの変化を示している。
ここで図8bに示した中間縮尺地図では、中間縮尺地図を構成する形状データ801と形状データ802の交差が発生しており、独立した構造物の形状としては不適切なものとなっている。
交差判定手段102は、このような中間縮尺地図における形状データ間の交差状況を検出する。
【0034】
交差判定手段102は、生成した中間縮尺地図上の中間形状データの接続関係を比較し、中間形状データ間の交差を検出する。
このとき、交差が発生している場合は、地図データA、地図データB、中間縮尺節点情報と、交差が発生した縮尺値である交差発生中間縮尺値を非交差中間形状データ生成手段103へ出力する。
また、中間縮尺地図に交差が発生しない場合は、線形補間による縮尺値の変更が可能な地図データとして、入力された地図データA、地図データBを縮尺可変地図データ生成手段104へ出力する。
【0035】
次に非交差中間形状データ生成手段103の動作について説明する。
非交差中間形状データ生成手段103に、地図データA、地図データB、交差発生中間縮尺値が入力されると、非交差中間形状データ生成手段103は交差発生中間縮尺における形状データの節点位置を移動することで交差を回避可能な形状データを生成する。
図9は、交差を回避可能な形状データを示す図である。
図9は、図8bと同一縮尺の中間縮尺地図であるが、図8bに示した中間節点801を図9では中間節点903へ移動し、図8bに示した中間節点802を図9では中間節点904へ移動している。
【0036】
この中間節点903、中間節点904を経由した形状データの変化例を図10a、図10b、図10cに示す。
図10aは、地図Aの形状データ、図10cは、地図Bの形状データを示し、図10aの縮尺値をSa4、図10bの中間縮尺値をSb4、図10cの縮尺値をSc4とし、Sa4<Sb4<Sc4として形状データの変化を示している。
図9、図10a、図10b、図10cに示すように、対応する頂点間の線形補間によって衝突が発生した場合でも、中間縮尺における節点を形状データ間の衝突が回避可能な位置に移動することで、交差の無い中間縮尺地図に変換することが可能である。
【0037】
このような交差を回避可能な節点位置(中間縮尺節点座標)は、重心座標系における座標値の線形補間によって導く方法がある。その方法を以下に述べる。
交差しない節点を求めるために、地図データA、地図データBを構成する形状データ内の各点を線で接続された周りの節点との2点を結ぶ線分で表現する。ここで、節点piのまわりの点の集合をn(pi)とすると、節点pはn(p)との2点を結ぶ線分として、下記の式(1)で表現できる。pjはn(p)内の点の位置を表しλijは点piに対するpjの2点を結ぶ線分における係数である。
【0038】
【数1】

【0039】
形状データ内の各点と節点との2点を結ぶ線分で表現したときの係数を形状データ内の全ての点において並べると下記の式(2)に示すような行列Mで表現することができる。
【0040】
【数2】

【0041】
交差を回避可能な節点位置を求めるために、地図データA、地図データBそれぞれの行列MA, MBに対して、線形補間により、中間縮尺地図の係数Mtを下記の式(3)に示すような式で求める。
【0042】
【数3】

求められた係数から、中間縮尺地図の各点の位置を求めることができる。線形補間のときに与えるパラメータtは、地図データAのときにはt=0、地図データBのときにはt=1となる。(もしくは、その逆になる)。例えば、t=0.5を設定した場合に、中間の地図を求めることができる。
【0043】
縮尺が変更される際には、このtの値を0から1までの間でH/Wの性能に合わせた分解能で順番に設定することにより交差回避可能な節点位置(中間縮尺節点座標)を求めることができる。
また、交差回避可能な節点位置(中間縮尺節点座標)を操作者がインタラクティブに指定することも可能である。
このように形状データ間の衝突を回避可能な中間節点位置と、対応する中間縮尺値を併せて中間縮尺節点情報と呼び、非交差中間形状データ生成手段103は中間縮尺節点情報を生成する。
【0044】
非交差中間形状データ生成手段103は、中間縮尺における交差を回避可能な節点位置を導出した後、交差を回避可能な中間節点座標と対応する中間縮尺値を中間縮尺節点情報に追加し、地図データA、地図データBと共に交差判定手段102へ出力する。
交差判定手段102は、非交差中間形状データ生成手段103から出力された地図データA、地図データB、中間縮尺節点情報を元に中間形状データ間の交差判定を実施し、交差が発生している場合は、地図データA、地図データB、中間縮尺節点情報と、交差が発生した縮尺値である交差発生中間縮尺値を非交差中間形状データ生成手段103へ出力する。
また、中間縮尺地図に交差が発生しない場合は線形補間による縮尺の変更が可能な地図データとして、入力された地図データA、地図データBを縮尺可変地図データ生成手段104へ出力する。
【0045】
このように交差判定手段102における中間縮尺地図の交差判定と、非交差中間形状データ生成手段103による非交差データへの変換作業を複数回繰り返すことで、最終的に地図データA〜地図データB間の任意の中間縮尺に対応可能であり、非交差な中間縮尺地図を生成可能な中間縮尺節点情報が縮尺可変地図データ生成手段104に出力される。
縮尺可変地図データ生成手段104は、入力された地図データA、地図データBと、生成された中間縮尺節点情報から縮尺可変地図データを生成し、記憶装置に出力する。
また中間縮尺節点情報のみを縮尺可変地図データとして記憶装置に出力し、地図データA、地図データBは共通のデータベースから取得する実施の形態も考えられる。
【0046】
以上のように本実施の形態1によれば、基準となる2つの異なる縮尺地図間の形状データ対応情報を用いて地図を構成する形状データを線形補間することで、連続的な形状変化が可能な中間縮尺地図を生成し、縮尺の変更を伴うスケーリング処理を滑らかに表示可能な地図を生成する。
また、基準となる2つの異なる縮尺地図間の線形補間では隣接する形状データが交差してしまう場合、形状データの交差部分に対してのみ交差回避可能な中間縮尺形状データを保持することで、形状データの交差しない自然な見栄えの中間縮尺地図を記述できる。
また、中間形状データに交差が生じて、節点位置の移動、変更が必要な箇所だけに中間縮尺節点情報を追加するため、少ないデータ量で任意の中間縮尺地図を記述できる。
また本実施の形態1により出力される縮尺可変地図データは、中間縮尺地図を節点の線形補間処理によって生成できるため、高速に中間縮尺地図を生成できる。
【符号の説明】
【0047】
101 形状データ対応情報取得手段、102 交差判定手段、103 非交差中間形状データ生成手段、104 縮尺可変地図データ生成手段、201〜206 形状データの節点、207〜212 節点を結ぶ接続関係、301 形状データ、302〜306 形状データの節点、307〜311 節点を結ぶ接続関係、321 形状データ、322〜325 形状データの節点、326 節点306に対応する位置、327〜329 節点を結ぶ接続関係、331 節点を結ぶ接続関係、401 形状データ、402〜406 形状データの節点、407〜411 節点を結ぶ接続関係、421 形状データ、422〜425 形状データの節点、426 節点406に対応する位置、427〜429 節点を結ぶ接続関係、431 節点を結ぶ接続関係、441 形状データ、442〜446 中間節点、447〜451 節点を結ぶ接続関係、501 形状データ、502 形状データ、503〜506 節点、601 形状データ、602 形状データ、603〜606節点、701 形状データ、702 形状データ、703〜706中間節点、801 中間節点、802 中間節点、901 中間形状データ、902 中間形状データ、903 中間節点、904 中間節点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる縮尺の地図データ間における同じ対象物を構成する形状データの複数の節点をそれぞれ対応させる形状データ対応手段と、
前記形状データ対応手段によって対応付けられた節点間を補間して中間節点を求める中間節点取得手段と
前記中間節点取得手段で求められた複数の中間節点から形成される中間形状データによって縮尺可変地図データを生成する縮尺可変地図データ生成手段と、
を備えることを特徴とする地図データ生成装置。
【請求項2】
前記中間節点取得手段によって求められた第1の中間形状データの第1の中間節点と隣り合う第2の中間節点とを接続した第1の中間線分と、第2の中間形状データの第3の中間節点と隣り合う第4の中間節点とを接続した第2の中間線分とが交差するか否かを判定する交差判定手段と、
前記交差判定手段によって、前記第1の形状データの第1の中間線分と前記第2の中間形状データの第2の中間線分とが交差すると判定されたとき、交差した第1または第2の中間線分の一端である中間節点の位置を移動し、非交差な中間形状データを生成する非交差中間形状データ生成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の地図データ生成装置。
【請求項3】
前記縮尺可変地図データ生成手段は、
前記交差判定手段によって前記第1の中間形状データの第1の中間線分と前記第2の中間形状データの第2の中間線分とが交差すると判断されたとき、
前記非交差中間形状データ生成手段により生成された非交差な中間形状データによって縮尺可変地図データを生成すること
を特徴とする請求項2記載の地図データ生成装置。
【請求項4】
前記縮尺可変地図データ生成手段は、
前記交差判定手段によって前記第1の中間形状データの第1の中間線分と前記第2の中間形状データの第2の中間線分とが交差しないと判断されたとき、
前記中間節点取得手段で求められた複数の中間節点から形成される中間形状データによって縮尺可変地図データを生成すること
を特徴とする請求項2又は請求項3記載の地図データ生成装置。
【請求項5】
前記交差中間形状データ生成手段は、
前記第1の中間形状データの第1の中間線分、又は前記第2の中間形状データの第2の中間線分の一端の中間節点を、重心座標系の座標を線形補間して求めた中間縮尺節点に移動し、非交差な中間形状データを生成すること
を特徴とする請求項2又は請求項3記載の地図データ生成装置。
【請求項6】
異なる縮尺の地図データ間における同じ対象物を構成する形状データの複数の節点をそれぞれ対応させる形状データ対応ステップと、
前記形状データ対応ステップによって対応付けられた節点間を補間して中間節点を求める中間節点取得ステップと
前記中間節点取得ステップで求められた複数の中間節点から形成される中間形状データによって縮尺可変地図データを生成する縮尺可変地図データ生成ステップと、
を備えることを特徴とする地図データ生成方法。
【請求項7】
前記中間節点取得ステップによって求められた前記第1の中間形状データの第1の中間節点と隣り合う第2の中間節点とを接続した第1の中間線分と、前記第2の中間形状データの第3の中間節点と第4の中間節点とを接続した第2の中間線分とが交差するか否かを判定する交差判定ステップと、
前記交差判定ステップによって、前記第1の形状データの第1の中間線分と前記第2の中間形状データの第2の中間線分とが交差すると判定されたとき、交差した第1または第2の中間線分の一端である中間節点の位置を移動し、非交差な中間形状データを生成する非交差中間形状データ生成ステップと、
を備えることを特徴とする請求項6記載の地図データ生成方法。
【請求項8】
前記縮尺可変地図データ生成ステップは、
前記交差判定ステップによって前記第1の中間形状データの第1の中間線分と前記第2の中間形状データの第2の中間線分とが交差すると判断されたとき、
前記非交差中間形状データ生成ステップにより生成された非交差な中間形状データによって縮尺可変地図データを生成すること
を特徴とする請求項7記載の地図データ生成方法。
【請求項9】
前記縮尺可変地図データ生成ステップは、
前記交差判定ステップによって前記第1の中間形状データの第1の中間線分と前記第2の中間形状データの第2の中間線分とが交差しないと判断されたとき、
前記中間節点取得ステップで求められた複数の中間節点から形成される中間形状データによって縮尺可変地図データを生成すること
を特徴とする請求項7又は請求項8記載の地図データ生成方法。
【請求項10】
前記交差中間形状データ生成ステップは、
前記第1の中間形状データの第1の中間線分、又は前記第2の中間形状データの第2の中間線分の一端の中間節点を、重心座標系の座標を線形補間して求めた中間縮尺節点に移動し、非交差な中間形状データを生成すること
を特徴とする請求項7又は請求項8記載の地図データ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−22197(P2011−22197A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164626(P2009−164626)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】