説明

地域タクシー利用システム

【課題】 屋内屋外に限らず利用者が必要なときに迅速にかつ手ごろな値段で簡易にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムを提供する。
【解決手段】 単位地域Hの所定位置に居るタクシー利用者が、タクシーを利用するときは携帯電話端末10の入力スイッチ13をオンすることによりGPS端末12で得た自己の所在位置と自己のコードを特定したタクシー派遣依頼を制御部11を通して利用送受信部(I)16から管理センター20に送信する。管理センター20では、タクシー管理装置21により受信した送信内容からタクシー利用者及びその所在位置を確認し、所在位置の直近の空車タクシーを探して、タクシー通信部26によりタクシー利用者の所在位置を送信する。このタクシーは、GPS対応カーナビゲーション31によりこの信号を受けて、連絡されたタクシー利用者の所在位置を認識して直ちにそこに直行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市等の特定地域内を対象として、タクシー利用者がタクシーを簡易に利用することができるような地域タクシー利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の地域タクシー利用システムとしては、例えば非特許文献1に示すように、タクシー会社と契約した契約者の家や会社に専用の発信器を設置し、家等に不審者が侵入したり契約者の体調が急変したり等の緊急事態が起きたとき、契約者が発信器のボタンを押すことによりタクシー会社の配車センターに電話回線を通して異常事態が知らせられ、配送センターから契約者の家等の付近を走行するタクシーに連絡され、このタクシーが直ちに契約者の家等に派遣されるようにした会員制サービスが知られている。タクシーは、全地球測位システム(以下,GPSと記す)カーナビゲーションを搭載しており、配車センターから送られた契約者の家等の位置情報を把握してその所在位置に移動することができる。このような地域タクシー利用システムの採用により、老人等の一人暮し世帯での急な体調不良の発生したような場合の対応を迅速に行うことも可能になる。
【非特許文献1】中日新聞、平成16年12月1日夕刊
【0003】
しかし、この会員制サービスの場合、タクシーを呼び出すための発信器が家等の内部に設置されて電話回線を通して配車センターに連絡されるものであるため、タクシーの利用者が屋内に居る者に限られ、屋外でタクシーが必要とされる多くの場合に対応できない。そのため、タクシーの利用数が限られ、タクシーの効率的な利用が十分に図れない。その結果、このような会員制サービスの利用価格が高価になり、益々利用者の数が制限されるため、会員制サービスによって期待される上記種々の効果も十分に得られなくなり、サービスの維持が益々困難になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであり、屋内屋外に限らず利用者が必要なときに迅速にかつ手ごろな値段で簡易にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、特定地域内においてタクシーを利用するタクシー利用者が、多数のタクシーを保有すると共に多数のタクシーの運行位置をGPSによって特定された位置情報により把握しているタクシー管理者との契約に基づいて簡易にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムであって、契約によりタクシー管理者からタクシー利用者に対して、タクシー利用者からタクシー管理者にGPSにより特定されたタクシー利用者の所在位置を含めたタクシー派遣依頼を送信できる通信端末が有償又は無償で貸与され、タクシー利用者が通信端末により送信した自己の所在位置を特定したタクシー派遣依頼を受信したタクシー管理者が、タクシー利用者の所在位置の直近の空車タクシーを選択してタクシーに連絡して所在位置に派遣させ、タクシー管理者がタクシー利用者の送信に対して所定の利用料金をカウントするか又はタクシー利用者が所定の利用料金をタクシー運転者に直接支払うことにある。なお、ここでタクシーとは、流しながらあるいは駐車場で待っていて、タクシー利用者の依頼に応じて乗せる貸切又は乗り合いの自動車である。
【0006】
上記のように構成した本発明においては、特定地域内において、多数のタクシーを保有すると共にその運行位置を管理しているタクシー管理者と契約したタクシー利用者が、契約によりタクシー管理者からタクシー利用者に対して有償又は無償で貸与された通信端末によって、GPSにより特定された所在位置を含むタクシー派遣依頼をタクシー管理者に送信する。これに応じて、タクシー管理者が直近の空車タクシーに指令して、直ちにタクシー利用者の所在位置にタクシーを派遣することができる。また、通信端末は、GPSを利用して得た自己の所在位置を特定したタクシー派遣依頼をタクシー管理者に送信できるため、屋内屋外を訪わず使用することができる。さらに、タクシーの利用料金については、直接タクシー運転者に支払うこともできるし、通信端末からの送信によりタクシー管理者側で自動的にカウントすることもできる。特に、タクシー管理者側で自動的に利用料金がカウントされる場合には、例えば一定期間後にまとめて請求されることになり、利用ごとに利用料金を支払う必要がないため、タクシー利用者にとっては料金支払について煩雑さがない。
【0007】
その結果、本発明においては、タクシーの利用者が大幅に広げられるため、タクシーの回転率が高められ、タクシーの客待ち状態を解消すると共に、低価格で効率的な利用が可能になり、社会資源であるタクシーの有効活用が達せられる。また、タクシーの利用が便利でかつ安価になることにより、タクシー利用者にとって自分で車両を保持することによる高価な購入コスト及び維持コストを削減できる。そのため、生計費を他の必要な用途に支出することができるので、生計費の効率化が図られる。
【0008】
また、本発明によれば、地域タクシー利用システムの採用により、タクシーの効率的な利用が可能になるため、マイカーの使用が抑えられ、特に都市部における交通渋滞を緩和することができる。また、地域タクシー利用システムにより、路線バス等の代りに補助インフラとしての役割を担うことができ、行政コストを削減できると共に交通面での社会インフラの充実にも寄与できる。さらに、高齢者等が簡単にタクシーを利用できることにより、自身で車の運転を行う必要がなくなり、問題となっている高齢者ドライバーによる交通事故の発生を抑えることができる。また、1人暮しの老人等の一人暮し世帯での急な体調不良の発生したような場合の対応を迅速に行うことも可能になる。さらに、犯罪の発生に対して、屋内屋外を問わず通信端末によって緊急にタクシーを呼ぶことができるため、犯罪を抑止又は犯罪被害を軽減できる効果が得られる。また、地域タクシー利用システムで簡易にタクシーを利用できることにより、飲酒運転を減らすことができると共に、郊外の飲食店でのアルコールを解禁することができ、郊外の外食産業の活性化が可能になる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、特定地域内においてタクシーを利用するタクシー利用者が、多数のタクシーを保有すると共に多数のタクシーの運行位置をGPSによって特定された位置情報により把握しているタクシー管理者との契約に基づいて簡易にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムであって、契約によりタクシー管理者からタクシー利用者に対して、タクシー利用者からタクシーにGPSにより特定されたタクシー利用者の所在位置を含めたタクシー派遣依頼を送信できる通信端末が有償又は無償で貸与され、タクシー利用者が通信端末により送信した自己の所在位置を特定したタクシー派遣依頼を受信したタクシー利用者の所在位置の直近の空車タクシーが所在位置に移動すると共に、タクシー利用者から送信があったことをタクシー管理者に送信し、タクシー管理者がタクシー利用者のタクシー派遣依頼に対して所定の利用料金をカウントするか又はタクシー利用者が所定の利用料金をタクシー運転者に直接支払うことにある。
【0010】
本発明においては、タクシー利用者の通信端末による送信が、タクシー管理者ではなく、タクシー利用者の所在位置の直近を走行する空車タクシーによって受信され、そのタクシーが直ちに所定位置に移動できる。そのため、タクシーに利用までの時間がさらに短縮されるため、タクシー利用者の利益がされに高められ、とくに犯罪の発生や、急な病気等の緊急時の対応への効果がさらに高められる。その他、上記発明の効果と同様の効果が得られる。また、利用料金の精算については、直接タクシー運転者に支払うこともできるし、タクシーからの送信を受けたタクシー管理者がタクシー利用者の利用に対する所定の利用料金をカウントしてもよい。特に、タクシー管理者側で自動的に利用料金がカウントされる場合には、例えば一定期間後にまとめて請求されることになり、利用ごとに利用料金を支払う必要がないため、タクシー利用者にとっては料金支払について煩雑さがない。
【0011】
また、本発明において、特定地域内が、複数の単位地域に分割されており、各単位地域にはそれぞれ規定数のタクシーが配置されており、タクシー利用者からの派遣依頼に応じてタクシーが他の単位地域に移動したときは、タクシー管理者は、他の単位地域のタクシーを移動させて、各単位地域に配置されたタクシーの数を規定数になるように調整することができる。このように、特定地域が複数の単位地域に分割されて、各単位地域には単位地域に応じた規定数のタクシーが配置されていることにより、タクシー利用者は、特定地域内のどこに居ても、必要なときに常に迅速にタクシーを利用することができるので便利である。また、タクシー利用者からの派遣依頼に応じてタクシーが他の単位地域に移動しても、タクシー管理者により、各単位地域に配置されたタクシーの数が規定数になるように調整されるので、タクシーの分布が特定の単位地域に偏ることがなく、そのため、タクシー利用者が必要なときに常に迅速にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムの効果が確保される。
【0012】
また、本発明において、タクシー利用者からのタクシー派遣依頼の送信に応じて、タクシー管理者又は所在位置に派遣されるタクシーからタクシー利用者の通信端末に、タクシーの派遣状態が送信されるようにしてもよい。これにより、タクシー利用者は、タクシーが派遣されることを確認できると共に、待ち時間を確認することができるので非常に便利である。
【0013】
また、本発明において、通信端末の貸与が、所定の期間内でかつ一定の契約料金の支払により行われるものであってもよい。これにより、タクシーの利用契約が、タクシー管理者とタクシー利用者の双方の負担によって公平に行われるため、確実な契約の履行が確保される。
【0014】
また、本発明において、タクシーの1回の利用料金を一定額とすることができる。地域タクシー利用システムが特定地域内に限られるため、タクシーの1回の利用料金を一定額にすることができる。そのため、タクシー利用者にとって料金がわかり易く、またタクシー管理者側も料金の管理が容易になる。
【0015】
また、本発明において、通信端末を有するタクシー利用者以外の利用者でも、通信端末を有するタクシー利用者とは異なる料金体系でタクシーを利用することが可能であってもよい。これにより、タクシーの利用がさらに無駄なく行われ、社会資源であるタクシーの利用価値がさらに高められる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タクシー利用者は、契約によりタクシー管理者から貸与された通信端末により、GPSによって特定された自己の所在位置を含むタクシー派遣依頼をタクシー管理者あるいは直接空車タクシーに送信できるため、屋内屋外を訪わずタクシーを利用することができる。その結果、タクシーの利用者が大幅に広げられるため、タクシーの回転率が高められ、タクシーの客待ち状態を解消すると共に、低価格で効率的な利用が可能になり、社会資源であるタクシーの有効活用が達せられる。また、タクシーの利用が便利でかつ安価になることにより、タクシー利用者にとって高価な車両を購入し保持することによるコストを削減でき、他の必要な生計費を支出することができるので便利である。
【0017】
また、地域タクシー利用システムの採用により、タクシーの効率的な利用が可能になるため、マイカーの使用が抑えられ、特に都市部における交通渋滞を緩和することができる。また、地域タクシー利用システムにより、路線バス等の代りに補助インフラとしての役割を担うことができ、行政コストを削減できると共に交通面での社会インフラの充実にも寄与できる。さらに、高齢者等が簡単にタクシーを利用できることにより、自身で車の運転を行う必要がなくなり、問題となっている高齢者ドライバーによる交通事故の発生を抑えることができる。さらに、犯罪の発生に対して、緊急にタクシーを呼ぶことが可能であるため、犯罪を抑止又は犯罪被害を軽減できる効果が高められる。また、1人暮しの老人等の一人暮し世帯での急な体調不良の発生したような場合にも、迅速な対応が可能であり、民間活動で福祉の一端を担うこともできる。さらに、地域タクシー利用システムで簡易にタクシーを利用できることにより、飲酒運転を減らすことができると共に、郊外の飲食店でのアルコールを解禁することができ、郊外の外食産業の活性化が可能になる。なお、通信端末を有するタクシー利用者以外の利用者でも、通信端末を有するタクシー利用者とは異なる料金体系でタクシーを利用できるようにすることにより、社会資源であるタクシーの利用価値がさらに高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。図1は、実施例1に係る特定地域タクシー利用システムの概略構成をブロック図により示したものである。図2及び図3は、タクシー利用者が携帯する通信端末である携帯電話端末10を模式図及びブロック図により示したものである。図4は、管理センター20におけるタクシー管理装置21の構成をブロック図により示したものである。図5は、各タクシーに設けられたタクシー管理装置21と交信可能なGPS対応カーナビゲーション装置31の構成をブロック図により示したものである。図6は、特定地域タクシー利用システムの具体的な利用の態様を説明するための説明図である。
【0019】
図6に示すように、この特定地域タクシー利用システムにおいては、特定地域Σが、均等な面積の12の単位領域A〜Lに分けられており、各単位地域A〜Lには、例えばそれぞれ1台のタクシーVA〜VLが配置されている。特定地域Σには、多数のタクシーVA〜VLを保有するタクシー管理者の管理センター20が設けられている。また、各タクシーVA〜VLは、それぞれGPS対応カーナビゲーション装置31が搭載されており、管理センター20に設けたタクシー管理装置21との間で、GPSにより特定されたタクシーの位置情報等の交信が可能になっている。
【0020】
タクシー管理者は、特定地域内においてタクシーを利用する多数のタクシー利用者Mk(k=1〜n)と契約を結んでいる。契約は、タクシー利用者Mkが、タクシー管理者に例えば1ヶ月1万円の契約料金を支払うことにより、1個の通信端末であるGPS送信機能つきの専用携帯電話端末10−kが貸与されるもので、契約は1ヶ月単位で更新される。契約が成立したタクシー利用者については、専用携帯電話端末10の送信コードが、管理センター20に設けたタクシー管理装置21に登録されてタクシー利用者の利用口座が開設される。タクシー管理装置21は、上記契約料金と、タクシー利用者によるタクシー利用毎の利用料金を加算して利用口座に記録し、1ヶ月毎の料金の請求書をタクシー利用者に送付するようになっている。なお、タクシーの利用料金については、使用者の便宜を図ると共に管理センター20における料金管理の手間を省くために安価な均一料金として例えば300円程度にすることができる。
【0021】
携帯電話端末10は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなるマイクロコンピュータで構成される制御部11と、GPSからの信号に基づいて自己の所在位置を求めるGPS端末12と、タクシー派遣依頼を入力するための入力スイッチ13と、電話番号等の入力に用いられる操作部14と、入力内容を表示する表示部15と、タクシー利用者の送信コードとGPSによる所在位置を含むタクシー派遣依頼を送信すると共にタクシー管理装置21からのタクシーが派遣されていること及び待ち時間等のタクシー派遣状況を受信できる利用送受信部(I)16と、通常の携帯電話のおける送話及び受話のための通話部17と、利用送受信部(I)16及び通話部17の共通のアンテナ18と、各部に給電する電源19を備えている。
【0022】
タクシー管理装置21は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなるマイクロコンピュータで構成される制御部22と、契約者の口座等のデータを記憶する記憶部23と、送信内容等の情報を入力するためキーボード等からなる入力部24と、表示部25と、多数のタクシーとの間で送受信を行うタクシー通信部26と、タクシー利用者からの派遣依頼信号を受信すると共にタクシー利用者の携帯電話端末10にタクシー派遣状況を送信できる利用送受信部(II)27と、タクシー通信部26及び利用送受信部(II)27の共通のアンテナ28と、各部に給電する電源29とを備えている。
【0023】
タクシーに搭載されるカーナビゲーション装置31は、CPU,ROM,RAM,I/O等からなるマイクロコンピュータで構成される制御部32と、GPSからの信号に基づいて自己の所在位置を求めるGPS端末33と、タクシー管理装置21へ送信するデータ等を入力するための操作部34と、入力内容等を表示する表示部35と、タクシー管理装置21と交信する送受信部36と、アンテナ37と、各部に給電する電源38を備えている。
【0024】
つぎに、実施例1に係る地域タクシー利用システムの実行について図6により説明する。
単位地域Hの所定位置に居るタクシー利用者Mkが、タクシーを利用するときは携帯電話端末10(10−k)の入力スイッチ13をオンすることにより、制御部11においてGPS端末12で得た自己の所在位置と自己のコードを特定したタクシー派遣依頼を演算して利用送受信部(I)16から管理センター20に送信する。管理センター20では、タクシー管理装置21により受信した送信内容からタクシー利用者コード及びその所在位置を確認し、所在位置の直近の空車タクシーを探して、そのタクシーにタクシー通信部26によりタクシー利用者の所在位置を送信する。空車タクシーは、カーナビゲーション31の送受信部36によりにこの信号を受けて、表示部35の表示から連絡されたタクシー利用者の所在位置を認識して直ちにそこに直行する。そのため、タクシー利用者は、短い待ち時間でタクシーを利用することができる。このとき、タクシー管理装置21からのタクシー派遣状況を携帯電話端末10で受信できることにより、タクシー利用者にとってタクシーが派遣されていること及び待ち時間等を知ることができるので便利である。また、タクシー利用者の管理センター20への送信により、タクシー管理装置21により利用料金が記憶部23に記憶された利用者の利用口座に対して自動的にカウントされる。なお、利用料金の支払いについては、これに代えて、タクシー利用者がタクシーの運転手に対して直接利用料金を支払うこともできる。
【0025】
また、タクシー利用者からの派遣依頼に応じて単位地域Hからタクシーが他の単位地域に移動するが、タクシー管理装置21において道路の通行状態、時間、天候等に応じて予め規定された手順に従って処理が行われ、各単位地域に配置されたタクシーの数が1台づつになるように調整される。タクシー管理装置21において調整された結果が、タクシー通信部26から各タクシーの送受信部36に送信され、それに基づいてタクシーが適正に移動することにより、各単位地域にタクシーが1台づつ配置されるようになる。
【0026】
このように、実施例1においては、タクシー利用者は、携帯電話端末10でタクシー管理者にGPS端末12で得た自己の所在位置を特定したタクシー派遣依頼を送信できるため、屋内屋外を問わず簡単かつ短時間にタクシーを利用することができる。また、タクシーの利用料金については、携帯電話端末10からの送信によりタクシー管理者側で自動的にカウントされるので、例えば一定期間後にまとめて請求され、利用ごとに利用料金を支払う必要がないので料金支払について煩雑さがなく、またタクシーの運転手も料金徴収の手間が省けて便利であると共に料金盗難のおそれもない。その結果、実施例1によれば、タクシーの利用者が大幅に広げられるため、タクシーの回転率が高められ、タクシーの客待ち状態を解消すると共に、低価格で効率的な利用が可能になり、社会資源であるタクシーの有効活用が達せられる。また、タクシーの利用が便利でかつ安価になることにより、タクシー利用者にとって自分で車両を保持することによる高価な購入コスト及び維持コストを削減できる。そのため、生計費を他の必要な用途に支出することができるので、生計費の効率化が図られる。
【0027】
また、実施例1によれば、地域タクシー利用システムの採用により、タクシーの効率的な利用が可能になるため、マイカーの使用が抑えられ、特に都市部における交通渋滞を緩和することができる。さらに、地域タクシー利用システムにより、路線バス等の代りに補助インフラとしての役割を担うことができ、行政コストを削減できると共に交通面での社会インフラの充実にも寄与できる。また、高齢者等が簡単にタクシーを利用できることにより、自身で車の運転を行う必要がなくなり、問題となっている高齢者ドライバーによる交通事故の発生を抑えることができる。さらに、犯罪の発生に対して、屋内屋外を問わず通信端末によって緊急にタクシーを呼ぶことができるため、犯罪を抑止又は犯罪被害を軽減できる可能性もある。また、1人暮しの老人等の一人暮し世帯での急な体調不良の発生したような場合の対応を迅速に行うことも可能になる。また、実施例1によれば、地域タクシー利用システムで簡易にタクシーを利用できることにより、飲酒運転を減らすことができると共に、郊外の飲食店でのアルコールを解禁することができ、郊外の外食産業の活性化が可能になる。
【0028】
また、実施例1においては、特定地域Σが複数の単位地域A〜Lに分割されて、各単位地域には常に各1台のタクシーが配置されるようになっていることにより、タクシー利用者は、特定地域内のどこに居ても、必要なときに常に迅速にタクシーを利用することができるので便利である。また、タクシー利用者からの派遣依頼に応じてタクシーが他の単位地域に移動しても、タクシー管理装置21により、各単位地域に配置されたタクシーの数が規定の1台づつになるように調整されるので、タクシーの分布が特定の単位地域に偏ることがなく、そのため、タクシー利用者が必要なときに常に迅速にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムの効果が確保される。
【0029】
次に、実施例2について説明する。図7は実施例2に係る特定地域タクシー利用システムの概略構成をブロック図により示したものである。実施例2においては、タクシー利用者の携帯電話端末10による送信が、管理センター20のタクシー管理装置21に対してではなく、タクシーに対して行われるようになっている。この送信がタクシー利用者の所在位置の直近を走行する空車タクシーによって受信され、そのタクシーが直ちに所定位置に移動できるというものである。従って、タクシーに搭載されるカーナビゲーション装置31には、図5に点線で示すように、利用送受信部(III)39が追加される。利用送信部(III)39は、タクシー利用者の携帯電話端末10からの派遣依頼を受信すると共に、タクシー派遣状況を携帯電話端末10に送信できるものである。
【0030】
つぎに、実施例2の地域タクシー利用システムの実行について図8により説明する。
単位地域Hの所定位置に居るタクシー利用者が、タクシーを利用するときは携帯電話端末10の入力スイッチ13をオンすることにより、GPS端末12で得た自己の所在位置と自己のコードを特定したタクシー派遣依頼を制御部11で演算して利用送受信部(I)16から所在地の直近を走行する空車タクシーのカーナビゲーション装置31の利用送受信部(III)39に送信する。利用送受信部(III)39では、連絡されたタクシー利用者の所在位置を表示部35の表示によって認識して直ちに所在位置に直行する。また、利用送信部(III)39からは、タクシー派遣状況が携帯電話端末10に送信される。さらに、タクシーの送受信部36からは、タクシー利用者から受信した派遣依頼が、管理センター20のタクシー管理装置21に送信される。
【0031】
その結果、実施例2においては、タクシー利用者から直接タクシーに対して派遣依頼が送られるため、タクシーの待ち時間がさらに短縮されるので、タクシー利用者にとって便利である。また、タクシーの送受信部36から管理センター20にタクシー利用者からの派遣依頼が送信されることにより、タクシー管理装置21により利用料金が記憶部23に記憶された利用者の利用口座に対して自動的にカウントされる。そのため、タクシー利用者は、利用毎に料金を支払う必要がなく、またタクシーの運転手も料金徴収の手間が省けて便利であると共に料金盗難のおそれもない。なお、利用料金の支払いについては、これに代えて、タクシー利用者がタクシーの運転手に対して直接利用料金を支払うこともできる。さらに、実施例2においては、タクシー利用者から直接タクシーにタクシー派遣依頼が送信されることにより、タクシー派遣依頼からタクシーを利用できるまでの時間がさらに短縮されるため、タクシー利用者の利益がされに高められ、特に犯罪の発生や、急な病気等の緊急時の対応への効果がさらに高められる。
【0032】
なお、上記実施例2においては、単位地域内に1台配置されているが、例えば単位地域内に複数のタクシーが配置されている場合には、携帯電話端末10の制御部11の制御により、最寄のタクシーのみにタクシー派遣依頼を送信するか、あるいは携帯電話端末10に最初にタクシー派遣依頼に応じた送信があった時点で、派遣依頼に応じたタクシー以外のタクシーに対してタクシー派遣依頼の送信を停止するか、の何れかによって対応される。
【0033】
なお、上記実施例1,2においては、タクシー利用者に対する携帯電話端末10の貸与が、1ヶ月単位で1万円の契約料金の支払によって行われるが、これに代えて契約料金を無くすこともできる。また、利用料金についても、特定地域Σ内であれば一律300円にされているが、これに限らず、運行距離等によって利用料金を変えることも可能である。さらに、利用料金の支払において、タクシーに搭載した精算機器により料金を精算する場合には、タクシー利用者が予め専用のプリペードカードを購入しておいて、プリペードカードから利用料金を引き落とすようにするとさらに便利である。また、上記実施例1,2においては、タクシー利用者が派遣依頼を送信するのに携帯電話端末が採用されているが、これに代えて、本発明の地域タクシー利用システムを利用するための専用の携帯通信端末を採用することもできる。
【0034】
また、上記実施例1,2においては、地域タクシー利用システムの利用は、タクシー管理者と契約をおこなって携帯電話端末を所有するタクシー利用者に限られるが、これに代って、携帯端末を所有していない利用者でもタクシーを利用できるようにしてもよい。これにより、タクシーの利用がさらに無駄なく行われ、タクシーの利用がさらに有効に行われる。さらに、上記実施例1,2においては、特定地域の単位領域にタクシーが1台ずつ配置されているが、単位領域によって例えば都市の中心部と周辺部によって配置されるタクシーの規定数を異ならせることができる。その他、上記実施例1,2に示した地域タクシー利用システムについては、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、特定地域内の所定位置に居るタクシー利用者が、タクシーを利用するときは携帯電話端末の入力スイッチをオンすることによりGPS端末で得た自己の所在位置と自己のコードを特定したタクシー派遣依頼を利用送信部から管理センターのタクシー管理装置にあるいは直接タクシーに送信することにより、最小の待ち時間でタクシーを利用することができるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1に係る特定地域タクシー利用システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】タクシー利用者が携帯する携帯電話端末を概略的に示す模式図である。
【図3】携帯電話端末の回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】管理センターに設けられたタクシー管理装置21の回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】タクシーに設けられたカーナビゲーション装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】実施例1の特定地域タクシー利用システムの適用例を説明するための説明図である。
【図7】実施例2に係る特定地域タクシー利用システムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】実施例2の特定地域タクシー利用システムの適用例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10…携帯電話端末、11…制御部、12…GPS端末、13…入力スイッチ、16…利用送受信部I、20…管理センター、21…タクシー管理装置、22…制御部、26…タクシー通信部、27…利用送受信部II、31…GPS対応カーナビゲーション装置、32…制御部、33…GPS端末、36…送受信部、39…利用送受信部III。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定地域内においてタクシーを利用するタクシー利用者が、多数のタクシーを保有すると共に該多数のタクシーの運行位置をGPSによって特定された位置情報により把握しているタクシー管理者との契約に基づいて簡易にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムであって、
前記契約により前記タクシー管理者から前記タクシー利用者に対して、該タクシー利用者から該タクシー管理者にGPSにより特定された該タクシー利用者の所在位置を含めたタクシー派遣依頼を送信できる通信端末が有償又は無償で貸与され、
該タクシー利用者が該通信端末により送信した自己の所在位置を特定したタクシー派遣依頼を受信した該タクシー管理者が、該タクシー利用者の所在位置の直近の空車タクシーを選択して該タクシーに連絡して該所在位置に派遣させ、
該タクシー管理者が該タクシー利用者の送信に対して所定の利用料金をカウントするか又は該タクシー利用者が所定の利用料金をタクシー運転者に直接支払う
ことを特徴とする地域タクシー利用システム。
【請求項2】
特定地域内においてタクシーを利用するタクシー利用者が、多数のタクシーを保有すると共に該多数のタクシーの運行位置をGPSによって特定された位置情報により把握しているタクシー管理者との契約に基づいて簡易にタクシーを利用することができる地域タクシー利用システムであって、
前記契約により前記タクシー管理者から前記タクシー利用者に対して、該タクシー利用者からタクシーにGPSにより特定された該タクシー利用者の所在位置を含めたタクシー派遣依頼を送信できる通信端末が有償又は無償で貸与され、
該タクシー利用者が該通信端末により送信した自己の所在位置を特定したタクシー派遣依頼を受信した該タクシー利用者の所在位置の直近の空車タクシーが該所在位置に移動すると共に、該タクシー利用者から送信があったことをタクシー管理者に送信し、
該タクシー管理者が該タクシー利用者のタクシー派遣依頼に対して所定の利用料金をカウントするか又は該タクシー利用者が所定の利用料金をタクシー運転者に直接支払う
ことを特徴とする地域タクシー利用システム。
【請求項3】
前記特定地域内が、複数の単位地域に分割されており、各単位地域にはそれぞれ規定数のタクシーが配置されており、前記タクシー利用者からの派遣依頼に応じてタクシーが他の単位地域に移動したときは、前記タクシー管理者は、他の単位地域のタクシーを移動させて、各単位地域に配置されたタクシーの数を前記規定数になるように調整することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の地域タクシー利用システム。
【請求項4】
前記タクシー利用者からのタクシー派遣依頼の送信に応じて、前記タクシー管理者又は前記所在位置に派遣されるタクシーから該タクシー利用者の前記通信端末に、タクシーの派遣状態が送信されることを特徴とする前記請求項1から3のいずれか1項に記載の地域タクシー利用システム。
【請求項5】
前記通信端末の貸与が、所定の期間内でかつ一定の契約料金の支払により行われることを特徴とする前記請求項1から4のいずれか1項に記載の地域タクシー利用システム。
【請求項6】
前記タクシーの1回の利用料金が一定額であることを特徴とする前記請求項1から5のいずれか1項に記載の地域タクシー利用システム。
【請求項7】
前記通信端末を有する前記タクシー利用者以外の利用者でも、該通信端末を有する該タクシー利用者とは異なる料金体系でタクシーを利用することが可能であることを特徴とする前記請求項1から3のいずれか1項に記載の地域タクシー利用システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−184934(P2006−184934A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374468(P2004−374468)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(504474345)有限会社イディア (3)
【Fターム(参考)】