地形画像を用いた地形変化の解析方法及びそのプログラム
【課題】本願発明の課題は、多時期の地形情報を基に地形の変化を把握する方法であって、地形表面には特徴ある計測基準点を必要とせず、広範囲にしかも面的にむらなく地形変化を把握し得る方法を提供することにある。
【解決手段】本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、多時期における地形の変化を解析する方法であり、計測点(平面座標及び高さ情報からなる空間情報を有する)の集合である点群データから計測時期ごとにDEMを作成し、このDEMを構成するメッシュを基にピクセルを作成し、DEM格子点の空間情報などに基づいて、ピクセルごとに地形量を演算し、これら地形量に基づいてピクセルごとに配色や明暗を付与して画像を作成し、この画像どうしを照合することで、異時期の地形の変化を判断する方法である。
【解決手段】本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、多時期における地形の変化を解析する方法であり、計測点(平面座標及び高さ情報からなる空間情報を有する)の集合である点群データから計測時期ごとにDEMを作成し、このDEMを構成するメッシュを基にピクセルを作成し、DEM格子点の空間情報などに基づいて、ピクセルごとに地形量を演算し、これら地形量に基づいてピクセルごとに配色や明暗を付与して画像を作成し、この画像どうしを照合することで、異時期の地形の変化を判断する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、比較的広範囲に及ぶ物体の変位・変形といった空間的変化を詳細に解析する方法であって、より具体的には地形の経時的変化を面的にむらなく把握し得る解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地表面を形成する地形は、地殻変動に伴い微小ながら刻々と変化している。その変化速度は通常極めて緩慢であるが、大地震などに伴って急速に地形が変化し、場合によっては大規模な土砂の移動を引き起こすこともある。また、豪雨や地震により地すべりが活動を始めるとこれに応じて地表面も変動し始め、最終的にはその地すべりによって大量の土塊が移動し周辺に甚大な被害を与えることもある。
【0003】
これまで、繰り返し自然災害により甚大な被害を被ってきたが、地形の変動を追跡把握することによって、このような災害を未然に防ぎ、あるいは被害を軽減させることができる場合もある。また、一旦災害が発生した際に、災害前と災害後の地形を比較することで、被害個所の特定や災害要因を推定し、二次災害の可能性を判断することが可能となり、ひいては応急対策や復旧にとっても非常に有効な手段となる。
【0004】
しかしながら、山地部などの地表面において測量の基準となる点の乏しい領域の変化を追跡することは、容易なことではない。
山地部の地表面を計測する手法として、レーザスキャナーによる計測方法が挙げられるが、この手法には大量の計測データを取得できるものの計画的に特定の計測基準点を計測することができないという問題がある。すなわち、図12(a)に示すようにレーザスキャナーによって計測される計測点10はランダムであり、図12(b)に示すように異なる時期で計測した計測点10とは必ずしも一致しないため、両者の計測点を直接比較して二時期の地形変化を把握することは妥当ではない。
【0005】
また、レーザーで計測した点群データからDEM(Digital Elevation Model)を作成し、二時期のDEMの格子点を比較することはできるが、DEMの格子点の高さ情報は実測値ではなく推定値であるためその信頼度は若干劣り、そのうえ誤った解釈をする場合もある。すなわち、図13に示すように、P1地点が地形の変化に伴いP2まで移動した場合を考えると、実際には図14に示すようにP1は水平方向に△L、鉛直方向に△Hだけ移動してP2に変位しているが、同一平面座標(x,y)で二時期を比較するとP1はHだけ上昇してP3に変位しているものと誤って判断されることになる。
この問題を解消するためには、他の地点とは識別できるような杭や標識といった計測基準点を設置し、その変化を追跡するということも考えられるが、計測基準点を設置する労力を考えると広範囲にわたる地形の変化の把握にはこの手法は適していない。
【0006】
特許文献1では、二時期で取得した地上位置情報に基づいて家屋異動の有無を判定する方法が提案されているが、これも前記説明したように航空写真画像中の計測基準点(建物など)に着目して、その点を追跡することによって判断するものであり、広範囲であって特徴なき地表面の変化を、面的にむらなく把握する方法にはなり得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−117245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の課題は、多時期の地形情報を基に地形の変化を把握する方法であって、地形表面に特徴ある計測基準点を必要とせず、広範囲にしかも面的にむらなく地形変化を把握し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、地形を表す空間情報を基に一旦画像を作成し、その画像をもって多時期の地形の特徴を表し、その対応する地形構成点の空間情報を比較することで地形変化を把握するという技術に着眼して開発されたものである。
【0010】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、多時期(二又は三以上の時期)における地形の変化を解析する方法において、多時期に計測された点(平面座標及び高さ情報からなる空間情報を有する)の集合である点群データからそれぞれ計測時期ごとにDEMを作成し、このDEMの空間情報又は/及び前記計測された空間情報に基づいて、DEMを構成するメッシュごとに地形量を演算し、前記メッシュ及びその地形量に基づいて画像作成のためのピクセルを作成し、地形量に基づいてピクセルごとに画像を作成し、任意の計測時期(第一時期)における画像と、これとは異なる計測時期(第二時期)の画像を照合することによって、異時期の地形の変化を判断する方法である。
【0011】
この場合、本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、DEMの単位メッシュを画像作成のためのピクセルとし、第一時期における画像を作成するピクセル群からピクセルセット(二以上のピクセルの組み合わせを一単位とするもの)を抽出し、第二時期の画像の中からこのピクセルセットの画像と照合する画像を検出し、この検出された画像に相当するピクセルセットを抽出することによって、異時期のDEMどうしを対応させ、これら対応するDEMの格子点の空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することもできる。
【0012】
さらにこの場合、第一時期における地形量の配置と、第二時期の地形量の配置とが近似するように、第二時期の地形量を再演算し、第一時期における地形量と、前記再演算された第二時期の地形量とを、対応させることによって、第一時期のDEMと第二時期のDEMとを対応させ、これら対応するDEMの空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することもできる。
【0013】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、第一時期における地形量による画像と、第二時期における地形量による画像とを比較することによって、異時期の画像どうしを照合した際に発生するエラーをピクセル単位で検出し、このエラーとして検出されたピクセルを除外して又は/及び補間して、異時期の地形の変化を判断することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法には、次のような効果がある。
(1)画像の特徴を利用して多時期の地形を比較するので、地形表面に特徴ある計測基準点を必要とせず、すなわち計測基準点設置のための労力を必要とせず、その点で容易かつ低コストで地形変化を把握できる。
(2)地形面と地形面とを照らし合わせて地点の移動を判断するので、比較的正確に地点移動を追跡することが可能であり、しかも面的にむらなくこの追跡を可能とし、その結果、地形変化の再現性に優れる。
(3)ピクセルセット(二以上のピクセルの組み合わせ)で画像を照らし合わせることで、より正確な地点追跡を可能とし、解析時間も短縮できる。
(4)地形変化を把握する範囲は限定されず、広範囲の地形変化に対応し得る。
(5)特許文献1のように航空写真を必要とする方法では、例えば災害直後の地形を計測するといった一刻を争うような場合、計測が天候に左右される結果その方法自体が利用できないことも考えられるが、本願発明の方法はレーザー計測を利用することもできるため、天候にかかわらず安定して採用することができる。
(6)地形量を表す画像が作成され、この画像上に解析結果を表現することで地形変化を可視化できるので、状況を把握しやすく、また他者にも説明しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法の一連の流れを示すフロー図。
【図2】画像マッチング処理の詳細手順を示すフロー図。
【図3】航空レーザー計測による点群データの取得状況を示す説明図。
【図4】(a)はランダムに計測されたレーザー計測点の集合を示す説明図。 (b)は正方格子の上にレーザー計測点を配点し、格子点との関係を示す説明図。
【図5】地形量に基づいて描画した一例を示すラプラシアン図。
【図6】地形量に基づいて描画した一例を示す地上開度図。
【図7】地形量に基づいて描画した一例を示す地下開度図。
【図8】地形量に基づいて描画した一例を示す傾斜量図。
【図9】地形量に基づいて、標高を色彩で表し傾斜地を明暗で表した図。
【図10】(a)は点群データ1(2006年11月計測分)のピクセルの集合を示した図。 (b)は点群データ2(2008年2月計測分)のピクセルの集合を示した図。
【図11】(a)は地形変化前の地形表面を、面としてモデル化した説明図。 (b)は地形変化後の地形表面を、面としてモデル化した説明図。
【図12】(a)は、一時期のレーザーの計測点の分布を示す説明図。 (b)は、二時期のレーザーの計測点のそれぞれの分布を示す説明図。
【図13】地形が変動した場合のモデルを示す説明図。
【図14】地形が変動した場合の変位を示す図14の破線部分を拡大した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法の一実施形態を図1に基づいて説明する。ここでは便宜上、二時期の地形の変化について説明しているが、三時期以上の地形変化を把握する場合であっても、複数時期の中から二時期を選択して比較するものであるから、基本的な実施形態に差異がないのは言うまでもない。
【0017】
図1は、本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法の一連の流れを示すフロー図である。なお、フロー図中に示す「画像マッチング処理」(E)の詳細手順ついては、図2に示してある。
はじめに、図1のフロー図中のA1、A2に示すように、対象となる地形について異なる二時期の点群データを取得する。この点群データとは、平面座標と高さ情報(x,y,z)からなる三次元の空間情報を有する点データの集合である。本実施例では比較する二時期の点群データを、2006年11月の点群データ1(A1)と2008年2月の点群データ2(A2)としている。
【0018】
これらの点群データは、航空レーザー計測によって取得することができる。航空レーザー計測は、図3に示すように、計測したい地形1の上空を航空機2で飛行し、飛行中に地形1に対して照射したレーザー3の反射を受けて計測するものである。
なお、点群データは、広範囲に大量に点データが取得できる航空レーザー計測によって取得することが望ましいが、ステレオの航空写真や衛星写真を基に三次元の空間情報をもつ点群データを作成してもよいし、直接現地を測量して三次元の空間情報をもつ点群データを取得してもよい。また、航空レーザー計測によって取得する場合、立ち木などのデータを取り除くいわゆるフィルタリング処理を施して、より正確な地表面の点群データとすることが好適である。いずれにしろ、三次元の空間情報をもつ点群データであれば取得方法は限定されない。
【0019】
図1のフロー図中のB1、B2に示すように、二時期の点群データ(点群データ1と点群データ2)から、それぞれDEMを作成する。航空レーザー計測によって取得される点群データは、図4(a)に示すようにランダムに計測されたレーザー計測点4の集合であり、後続の工程を容易にするため、以下の手順でDEMを作成する。すなわち、図4(b)に示すように2m間隔に配置された複数のグリッド(軸)、すなわち横軸5と縦軸6が交差する正方格子の上にレーザー計測点4を配点し、これらレーザー計測点4の三次元の空間情報(x,y,z)に基づいて、横軸5と縦軸6が交差するそれぞれの格子点7の高さデータを算出する。本実施例では、DEMのメッシュを作成する格子点7のうちの一つをメッシュの代表点として説明しているが、メッシュ中心に設けたり、メッシュ内の任意の位置に設けたり、その他種々選択できることは言うまでもない。
【0020】
なお、この高さデータの算出方法は、レーザー計測点4から不整三角網より高さを求めるTIN(Triangulated Irregular Network)による補間法、最も近いレーザー計測点4を採用する最近隣法(Nearest Neibor)のほか、逆距離加重法(IWD)、Kriging法、平均法など従来の方法を採用することができる。
また、本実施例では直交する横軸5と縦軸6からなる正方格子の例でDEMの作成を説明したが、格子点7の平面座標(x、y)が特定できれば、横軸5と縦軸6が直交しないグリッドや、その他任意のグリッドを採用することができる。
【0021】
図1のフロー図中のC1、C2に示すように、メッシュ単位で地形量を作成する。
この地形量は、そのメッシュの代表点である格子点7(以下、単に「メッシュの格子点7」という。)、あるいは他のメッシュの格子点7や周辺のレーザー計測点4が持つ三次元の空間情報に基づいて算出され、メッシュの格子点7に属性情報として付加される。
この地形量の算出は、地形を比較する対象となる範囲(以下、「対象範囲」という。)内のメッシュに対して行われ、点群データ1及び点群データ2のDEMに対してそれぞれ実施される。
【0022】
地形量としては、傾斜の変化率を表すラプラシアン図(図5)を描画するためのラプラシアン値が挙げられる。ラプラシアン図は、くぼんだ地形で正、突出した地形で負となり、一般的に地形の変化が大きいところで絶対値が大きくなるといった特徴がある。
他の地形量としては、開度図を描画するための開度値が挙げられる。開度図のうち地上開度図(図6)は、着目する地点から一定距離内で見える空の広さを表しているもので、一般に周囲から突出している地点ほど地上開度値は大きくなり、例えば、山頂や尾根で大きな地上開度値を示し、くぼ地や谷底では小さい地上開度値を示し、突出した山頂や尾根が強調されるといった特徴がある。一方、開度図のうち地下開度図(図7)は、地上開度図とは逆に、地表面から地下を見渡す時、一定距離内における地下の広さを表しており、一般に地下にくい込んでいる地点ほど地下開度値は大きい値を示し、例えば、くぼ地や谷底で大きな地下開度値を示し、山頂や尾根では小さい地下開度値を示し、くぼ地や谷地が強調されるといった特徴がある。
また他の地形量としては、傾斜量図を描画するための傾斜値が挙げられる。傾斜量図(図8)は、地形の傾斜の度合いを示すもので、傾斜が大きければ大きいほど大きな傾斜値を示し、逆に緩やかな傾斜であるほど小さな傾斜値を示す。
その他、標高と傾斜値を組み合わせた地形量も挙げられる。この場合、標高を色彩で表し、傾斜地を明暗で表現するといった手法で画像化することができる(図9)。
この地形量の演算は、全ピクセルに渡って繰り返し演算され、二時期ともに演算される。
【0023】
図1のフロー図中のD1、D2に示すように、メッシュ単位で演算された地形量に基づいて画像を作成していく。
画像を作成するためのピクセルを作成する。この場合、図4(b)に示す格子網の最小単位であるメッシュ8(2m×2m)のひとつを1ピクセル(2m×2m)とする。なお、このピクセルの大きさを変えたい場合は、DEMのメッシュの大きさ(すなわちグリッドの間隔)を調整すればよい。あるいは、四つのメッシュ8を1ピクセル(4m×4m)とするなど複数のメッシュ8を1ピクセルとすることもできる。
【0024】
地形量に基づいて描画するために、あらかじめ地形量のレンジに対応する配色を定めておく。例えば、地形量の大きい順に、赤、橙、黄、緑、青と定めておき、演算された地形量に基づいて各ピクセルに応じた色彩を配色する。
あるいは、地形量のレンジにあわせてグレースケールの明暗を定めておくこともできる。地形量が大きいほど明るく、小さいほど暗くするなどによって描画できる。また、配色と明暗を組み合わせてもよい。
この画像作成は、地形を比較する対象となる範囲に渡って行われ、点群データ1及び点群データ2のDEMに対してそれぞれ実施される。
【0025】
点群1及び点群2の画像表示を経て、画像マッチング処理(E)が行われる。本工程は図2に示すように、まずは点群データ1及び点群データ2の各ピクセル群に対して、それぞれウィンドウを設定する(F1、F2)。このウィンドウは、対象範囲のうちの部分的な範囲であり、複数のメッシュすなわち複数のピクセルから構成される。点群データ1で抽出されるウィンドウと同じ位置・大きさのウィンドウが点群データ2から抽出され、点群1のピクセルセットをもって、この点群2のウィンドウ及びその周辺領域を対象に照合される。ウィンドウを設定することで、全対象範囲を一括で解析する必要がなく、部分的、段階的に解析することができる。なお、ウィンドウの大きさ(範囲)は、地形や比較範囲によって適宜定めることができる。
【0026】
また、ウィンドウの設定では、照合対象となる点群2におけるウィンドウの周辺のどの領域まで検索領域とするかを設定する。この領域の大きさや形状は、地形や比較範囲によって適宜定めることができる。
【0027】
次に、点群データ1で作成したウィンドウを構成するピクセル群の中から、ピクセルセットを抽出する(G1)。このピクセルセットは二以上のピクセルを組み合わせてなるものであり、二時期の画像をマッチングさせるためのものである。ピクセル単独でマッチングさせるのではなく、ピクセルセットでマッチングさせる理由について、図10(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0028】
図10(a)は点群データ1のピクセルの集合を示した図であり、図10(b)は点群データ2(2008年2月計測分)のピクセルの集合を示した図である。図10(a)のうちの一つのピクセルA0に着目し、これに該当するピクセルを図10(b)の中から探すと、同じグレースケールのA1、A2、A3が照合される。すなわち、A0の地形変化は3パターンが考えられることになり、どれかひとつに特定することができない。一方、図10(a)のうちA0を含む四つのピクセルからなるピクセルセット(図中破線で囲った範囲)に着目して、これに該当する画像を図10(b)の中から探すと、図10(b)の破線で囲ったピクセルセットが特定できる。このように、ピクセルセットを利用すれば二時期の画像が照合しやすくなる。なお、このピクセルセットを構成するピクセル数は、必ずしも多いほど照合しやすくなるというわけでなく、地形にあわせて適切なピクセル数でピクセルセットを構成する必要がある。
【0029】
前記したとおり、点群データ1のピクセル群から抽出されたピクセルセットによって描かれる画像と同一か又は近似した画像を、点群データ2で抽出されたウィンドウ及びその周辺領域から検出し(H)、その検出した画像に対応するピクセルセットを抽出する(G2)。なお、画像における近似とは、色彩や明暗が同じでなく事前に定めた許容範囲内に収まれば照合とみなしたり、ピクセルセット中一定の割合以上でピクセルの画像が一致(例えば4ピクセル中3ピクセルが一致など)すれば照合と見なしたり、種々の判定方法を採用することができる。
ここでの工程を言いかえれば、図11(a)に示すように変化前の地表面の一部を面としてとらえ、この中から複数の面(図では4面)を抽出し、図11(b)に示すように変化後の地表面の一部から同様の面の組み合わせを探し出すという工程である。変化前後の二地表面においていわば面照合を行い、これによって点群データ1のピクセルセットと点群データ2のピクセルセットを照合させ、さらに点群データ1のピクセルと点群データ2のピクセル(すなわちメッシュ)とを対応させることができる。
【0030】
ピクセルセットの照合では、必ずしも全てが一致又は近似するとは限らない。
一致しないピクセルセットについては、これらピクセルセットを構成するピクセルにエラー(照合しない)として情報を付与し、後に説明するエラー判断(図1のM工程)などに利用する。
また、エラーとなったピクセルについては、解析上無視することもできるし、そのピクセル周辺の画像からどのピクセルと照合されるかを推定したうえで解析してもよい。
【0031】
点群データ1のピクセルと点群データ2のピクセル、すなわちメッシュどうしを対応させ(J)、対応付けられたメッシュ間でメッシュの格子点7どうしを対応させる(K)。それぞれのメッシュ格子点7が持つ三次元の空間情報(x,y,z)を比較させて(L)、次の工程(M)に進む。
【0032】
なお、図2のフロー図中のG1(G2)〜Lの工程は対象となる当該ウィンドウ範囲すべてを網羅するまで繰り返し行われ、F1(F2)〜Lの工程は対象となる当該ウィンドウ範囲すべてを網羅するまで繰り返し行われる。
【0033】
画像マッチング工程(M)を経て、エラー判定(M)を実施する。ここでは、エラーピクセルの抽出(図2のI)で抽出されたエラーによってどの次工程に進むかを判断するものである。
例えば、抽出されたエラーピクセル数や画像(色彩や明暗など)の相違の度合い、あるいはこれらの組み合わせによって判断できる。ここでは、エラーピクセルの数で説明する。
エラーピクセルの数が、事前に設定した上限閾値よりも大きい場合(矢印a)は、比較する地形が異なっていたなどのケースと考え、これ以上の解析を進めず解析を終了させる(N)。
エラーピクセルの数が、事前に設定した下限閾値よりも小さい場合(矢印b)は、この段階で十分両時期の地形比較ができるものと考え、両時期の地形変化を把握できたとする(O)。
【0034】
エラーピクセルの数が、上限閾値と下限閾値の間にある場合(矢印c)は、図1のQ工程に進む。この場合、対象範囲の大部分は照合するが、一部において照合しないため、両時期の地形変化を把握ができたとするのは妥当でないケースと考えられる。そこで、C2の工程で算出されたメッシュ単位の地形量に基づいて、点群データ2の地形量の再計算を行う。具体的には、点群データ1の地形をできるだけ再現できるように計算されるもので、一例を挙げれば、点群データ1のピクセルセットによる画像を可能な限り多く再現できるように、点群データ2の地形量を再計算する。これによって、再計算された地形量の平面座標はメッシュの格子点7から離れ(一致したままの場合もあるが)、新たな空間情報が付与される(以下、これを「再配置による構成点」という。)。この場合、その新たな空間情報は、メッシュのM格子点7やレーザー計測点4に基づいて付与され、その手法は、DEMで採用する補完方法をはじめ従来の手法を採用することができる。
このように再配置による構成点によって、点群データ2の地形量が再配置される(R)。さらに、再配置前の地形量が付与されたメッシュの格子点7と、再配置による構成点との対応を図ることによって、点群データ1のピクセルすなわちメッシュの構成点7と、再配置による構成点との対応が可能となり、両者の空間情報を比較することが可能となる(S)。
【0035】
以上の工程が終了すると、2006年11月から2008年2月までの間に地形がどのように変化したかを全体にわたって把握することができる(T)。
【0036】
本願発明は、二時期の画像を作成したうえで両者の地形を比較するものであり、電子計算機を使用して実施することもできる。
この場合、解析方法がいわゆるブラックボックス化され、結果の検証が容易でないことも考えられる。しかしながら、画像は目視できるので明らかな誤り(エラー)は容易に抽出することができる。あるいは画像情報を数値化して、電子計算機で(閾値を設けるなどにより)エラーを発見することもできる。このようなエラーは、ピクセル単位で抽出することが可能で、エラーとして検出されたピクセルについては、これを除外して全体の解析を進めてもよいし、このピクセルを周辺のピクセルから判断して補間して解析を進めることもできるし、補間できるピクセルは補間して、補間できないピクセルは除外するなど、種々選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、経年の地殻変動に伴う地表面変化を把握するとともに、断層活動の活動状況や地すべりの活動状況を把握することによって、自然災害を未然に防ぎ、あるいは自然災害による被害を軽減させるなど、種々応用することが可能であり、産業上利用できるとともに、社会的に大きな貢献を期待し得る方法である。
【符号の説明】
【0038】
1 地形
2 航空機
3 レーザー
4 レーザー計測点
5 横軸
6 縦軸
7 格子点
8 メッシュ
9 計測点
10 異なる時期の計測点
【技術分野】
【0001】
本願発明は、比較的広範囲に及ぶ物体の変位・変形といった空間的変化を詳細に解析する方法であって、より具体的には地形の経時的変化を面的にむらなく把握し得る解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地表面を形成する地形は、地殻変動に伴い微小ながら刻々と変化している。その変化速度は通常極めて緩慢であるが、大地震などに伴って急速に地形が変化し、場合によっては大規模な土砂の移動を引き起こすこともある。また、豪雨や地震により地すべりが活動を始めるとこれに応じて地表面も変動し始め、最終的にはその地すべりによって大量の土塊が移動し周辺に甚大な被害を与えることもある。
【0003】
これまで、繰り返し自然災害により甚大な被害を被ってきたが、地形の変動を追跡把握することによって、このような災害を未然に防ぎ、あるいは被害を軽減させることができる場合もある。また、一旦災害が発生した際に、災害前と災害後の地形を比較することで、被害個所の特定や災害要因を推定し、二次災害の可能性を判断することが可能となり、ひいては応急対策や復旧にとっても非常に有効な手段となる。
【0004】
しかしながら、山地部などの地表面において測量の基準となる点の乏しい領域の変化を追跡することは、容易なことではない。
山地部の地表面を計測する手法として、レーザスキャナーによる計測方法が挙げられるが、この手法には大量の計測データを取得できるものの計画的に特定の計測基準点を計測することができないという問題がある。すなわち、図12(a)に示すようにレーザスキャナーによって計測される計測点10はランダムであり、図12(b)に示すように異なる時期で計測した計測点10とは必ずしも一致しないため、両者の計測点を直接比較して二時期の地形変化を把握することは妥当ではない。
【0005】
また、レーザーで計測した点群データからDEM(Digital Elevation Model)を作成し、二時期のDEMの格子点を比較することはできるが、DEMの格子点の高さ情報は実測値ではなく推定値であるためその信頼度は若干劣り、そのうえ誤った解釈をする場合もある。すなわち、図13に示すように、P1地点が地形の変化に伴いP2まで移動した場合を考えると、実際には図14に示すようにP1は水平方向に△L、鉛直方向に△Hだけ移動してP2に変位しているが、同一平面座標(x,y)で二時期を比較するとP1はHだけ上昇してP3に変位しているものと誤って判断されることになる。
この問題を解消するためには、他の地点とは識別できるような杭や標識といった計測基準点を設置し、その変化を追跡するということも考えられるが、計測基準点を設置する労力を考えると広範囲にわたる地形の変化の把握にはこの手法は適していない。
【0006】
特許文献1では、二時期で取得した地上位置情報に基づいて家屋異動の有無を判定する方法が提案されているが、これも前記説明したように航空写真画像中の計測基準点(建物など)に着目して、その点を追跡することによって判断するものであり、広範囲であって特徴なき地表面の変化を、面的にむらなく把握する方法にはなり得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−117245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の課題は、多時期の地形情報を基に地形の変化を把握する方法であって、地形表面に特徴ある計測基準点を必要とせず、広範囲にしかも面的にむらなく地形変化を把握し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、地形を表す空間情報を基に一旦画像を作成し、その画像をもって多時期の地形の特徴を表し、その対応する地形構成点の空間情報を比較することで地形変化を把握するという技術に着眼して開発されたものである。
【0010】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、多時期(二又は三以上の時期)における地形の変化を解析する方法において、多時期に計測された点(平面座標及び高さ情報からなる空間情報を有する)の集合である点群データからそれぞれ計測時期ごとにDEMを作成し、このDEMの空間情報又は/及び前記計測された空間情報に基づいて、DEMを構成するメッシュごとに地形量を演算し、前記メッシュ及びその地形量に基づいて画像作成のためのピクセルを作成し、地形量に基づいてピクセルごとに画像を作成し、任意の計測時期(第一時期)における画像と、これとは異なる計測時期(第二時期)の画像を照合することによって、異時期の地形の変化を判断する方法である。
【0011】
この場合、本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、DEMの単位メッシュを画像作成のためのピクセルとし、第一時期における画像を作成するピクセル群からピクセルセット(二以上のピクセルの組み合わせを一単位とするもの)を抽出し、第二時期の画像の中からこのピクセルセットの画像と照合する画像を検出し、この検出された画像に相当するピクセルセットを抽出することによって、異時期のDEMどうしを対応させ、これら対応するDEMの格子点の空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することもできる。
【0012】
さらにこの場合、第一時期における地形量の配置と、第二時期の地形量の配置とが近似するように、第二時期の地形量を再演算し、第一時期における地形量と、前記再演算された第二時期の地形量とを、対応させることによって、第一時期のDEMと第二時期のDEMとを対応させ、これら対応するDEMの空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することもできる。
【0013】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、第一時期における地形量による画像と、第二時期における地形量による画像とを比較することによって、異時期の画像どうしを照合した際に発生するエラーをピクセル単位で検出し、このエラーとして検出されたピクセルを除外して又は/及び補間して、異時期の地形の変化を判断することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法には、次のような効果がある。
(1)画像の特徴を利用して多時期の地形を比較するので、地形表面に特徴ある計測基準点を必要とせず、すなわち計測基準点設置のための労力を必要とせず、その点で容易かつ低コストで地形変化を把握できる。
(2)地形面と地形面とを照らし合わせて地点の移動を判断するので、比較的正確に地点移動を追跡することが可能であり、しかも面的にむらなくこの追跡を可能とし、その結果、地形変化の再現性に優れる。
(3)ピクセルセット(二以上のピクセルの組み合わせ)で画像を照らし合わせることで、より正確な地点追跡を可能とし、解析時間も短縮できる。
(4)地形変化を把握する範囲は限定されず、広範囲の地形変化に対応し得る。
(5)特許文献1のように航空写真を必要とする方法では、例えば災害直後の地形を計測するといった一刻を争うような場合、計測が天候に左右される結果その方法自体が利用できないことも考えられるが、本願発明の方法はレーザー計測を利用することもできるため、天候にかかわらず安定して採用することができる。
(6)地形量を表す画像が作成され、この画像上に解析結果を表現することで地形変化を可視化できるので、状況を把握しやすく、また他者にも説明しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法の一連の流れを示すフロー図。
【図2】画像マッチング処理の詳細手順を示すフロー図。
【図3】航空レーザー計測による点群データの取得状況を示す説明図。
【図4】(a)はランダムに計測されたレーザー計測点の集合を示す説明図。 (b)は正方格子の上にレーザー計測点を配点し、格子点との関係を示す説明図。
【図5】地形量に基づいて描画した一例を示すラプラシアン図。
【図6】地形量に基づいて描画した一例を示す地上開度図。
【図7】地形量に基づいて描画した一例を示す地下開度図。
【図8】地形量に基づいて描画した一例を示す傾斜量図。
【図9】地形量に基づいて、標高を色彩で表し傾斜地を明暗で表した図。
【図10】(a)は点群データ1(2006年11月計測分)のピクセルの集合を示した図。 (b)は点群データ2(2008年2月計測分)のピクセルの集合を示した図。
【図11】(a)は地形変化前の地形表面を、面としてモデル化した説明図。 (b)は地形変化後の地形表面を、面としてモデル化した説明図。
【図12】(a)は、一時期のレーザーの計測点の分布を示す説明図。 (b)は、二時期のレーザーの計測点のそれぞれの分布を示す説明図。
【図13】地形が変動した場合のモデルを示す説明図。
【図14】地形が変動した場合の変位を示す図14の破線部分を拡大した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法の一実施形態を図1に基づいて説明する。ここでは便宜上、二時期の地形の変化について説明しているが、三時期以上の地形変化を把握する場合であっても、複数時期の中から二時期を選択して比較するものであるから、基本的な実施形態に差異がないのは言うまでもない。
【0017】
図1は、本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法の一連の流れを示すフロー図である。なお、フロー図中に示す「画像マッチング処理」(E)の詳細手順ついては、図2に示してある。
はじめに、図1のフロー図中のA1、A2に示すように、対象となる地形について異なる二時期の点群データを取得する。この点群データとは、平面座標と高さ情報(x,y,z)からなる三次元の空間情報を有する点データの集合である。本実施例では比較する二時期の点群データを、2006年11月の点群データ1(A1)と2008年2月の点群データ2(A2)としている。
【0018】
これらの点群データは、航空レーザー計測によって取得することができる。航空レーザー計測は、図3に示すように、計測したい地形1の上空を航空機2で飛行し、飛行中に地形1に対して照射したレーザー3の反射を受けて計測するものである。
なお、点群データは、広範囲に大量に点データが取得できる航空レーザー計測によって取得することが望ましいが、ステレオの航空写真や衛星写真を基に三次元の空間情報をもつ点群データを作成してもよいし、直接現地を測量して三次元の空間情報をもつ点群データを取得してもよい。また、航空レーザー計測によって取得する場合、立ち木などのデータを取り除くいわゆるフィルタリング処理を施して、より正確な地表面の点群データとすることが好適である。いずれにしろ、三次元の空間情報をもつ点群データであれば取得方法は限定されない。
【0019】
図1のフロー図中のB1、B2に示すように、二時期の点群データ(点群データ1と点群データ2)から、それぞれDEMを作成する。航空レーザー計測によって取得される点群データは、図4(a)に示すようにランダムに計測されたレーザー計測点4の集合であり、後続の工程を容易にするため、以下の手順でDEMを作成する。すなわち、図4(b)に示すように2m間隔に配置された複数のグリッド(軸)、すなわち横軸5と縦軸6が交差する正方格子の上にレーザー計測点4を配点し、これらレーザー計測点4の三次元の空間情報(x,y,z)に基づいて、横軸5と縦軸6が交差するそれぞれの格子点7の高さデータを算出する。本実施例では、DEMのメッシュを作成する格子点7のうちの一つをメッシュの代表点として説明しているが、メッシュ中心に設けたり、メッシュ内の任意の位置に設けたり、その他種々選択できることは言うまでもない。
【0020】
なお、この高さデータの算出方法は、レーザー計測点4から不整三角網より高さを求めるTIN(Triangulated Irregular Network)による補間法、最も近いレーザー計測点4を採用する最近隣法(Nearest Neibor)のほか、逆距離加重法(IWD)、Kriging法、平均法など従来の方法を採用することができる。
また、本実施例では直交する横軸5と縦軸6からなる正方格子の例でDEMの作成を説明したが、格子点7の平面座標(x、y)が特定できれば、横軸5と縦軸6が直交しないグリッドや、その他任意のグリッドを採用することができる。
【0021】
図1のフロー図中のC1、C2に示すように、メッシュ単位で地形量を作成する。
この地形量は、そのメッシュの代表点である格子点7(以下、単に「メッシュの格子点7」という。)、あるいは他のメッシュの格子点7や周辺のレーザー計測点4が持つ三次元の空間情報に基づいて算出され、メッシュの格子点7に属性情報として付加される。
この地形量の算出は、地形を比較する対象となる範囲(以下、「対象範囲」という。)内のメッシュに対して行われ、点群データ1及び点群データ2のDEMに対してそれぞれ実施される。
【0022】
地形量としては、傾斜の変化率を表すラプラシアン図(図5)を描画するためのラプラシアン値が挙げられる。ラプラシアン図は、くぼんだ地形で正、突出した地形で負となり、一般的に地形の変化が大きいところで絶対値が大きくなるといった特徴がある。
他の地形量としては、開度図を描画するための開度値が挙げられる。開度図のうち地上開度図(図6)は、着目する地点から一定距離内で見える空の広さを表しているもので、一般に周囲から突出している地点ほど地上開度値は大きくなり、例えば、山頂や尾根で大きな地上開度値を示し、くぼ地や谷底では小さい地上開度値を示し、突出した山頂や尾根が強調されるといった特徴がある。一方、開度図のうち地下開度図(図7)は、地上開度図とは逆に、地表面から地下を見渡す時、一定距離内における地下の広さを表しており、一般に地下にくい込んでいる地点ほど地下開度値は大きい値を示し、例えば、くぼ地や谷底で大きな地下開度値を示し、山頂や尾根では小さい地下開度値を示し、くぼ地や谷地が強調されるといった特徴がある。
また他の地形量としては、傾斜量図を描画するための傾斜値が挙げられる。傾斜量図(図8)は、地形の傾斜の度合いを示すもので、傾斜が大きければ大きいほど大きな傾斜値を示し、逆に緩やかな傾斜であるほど小さな傾斜値を示す。
その他、標高と傾斜値を組み合わせた地形量も挙げられる。この場合、標高を色彩で表し、傾斜地を明暗で表現するといった手法で画像化することができる(図9)。
この地形量の演算は、全ピクセルに渡って繰り返し演算され、二時期ともに演算される。
【0023】
図1のフロー図中のD1、D2に示すように、メッシュ単位で演算された地形量に基づいて画像を作成していく。
画像を作成するためのピクセルを作成する。この場合、図4(b)に示す格子網の最小単位であるメッシュ8(2m×2m)のひとつを1ピクセル(2m×2m)とする。なお、このピクセルの大きさを変えたい場合は、DEMのメッシュの大きさ(すなわちグリッドの間隔)を調整すればよい。あるいは、四つのメッシュ8を1ピクセル(4m×4m)とするなど複数のメッシュ8を1ピクセルとすることもできる。
【0024】
地形量に基づいて描画するために、あらかじめ地形量のレンジに対応する配色を定めておく。例えば、地形量の大きい順に、赤、橙、黄、緑、青と定めておき、演算された地形量に基づいて各ピクセルに応じた色彩を配色する。
あるいは、地形量のレンジにあわせてグレースケールの明暗を定めておくこともできる。地形量が大きいほど明るく、小さいほど暗くするなどによって描画できる。また、配色と明暗を組み合わせてもよい。
この画像作成は、地形を比較する対象となる範囲に渡って行われ、点群データ1及び点群データ2のDEMに対してそれぞれ実施される。
【0025】
点群1及び点群2の画像表示を経て、画像マッチング処理(E)が行われる。本工程は図2に示すように、まずは点群データ1及び点群データ2の各ピクセル群に対して、それぞれウィンドウを設定する(F1、F2)。このウィンドウは、対象範囲のうちの部分的な範囲であり、複数のメッシュすなわち複数のピクセルから構成される。点群データ1で抽出されるウィンドウと同じ位置・大きさのウィンドウが点群データ2から抽出され、点群1のピクセルセットをもって、この点群2のウィンドウ及びその周辺領域を対象に照合される。ウィンドウを設定することで、全対象範囲を一括で解析する必要がなく、部分的、段階的に解析することができる。なお、ウィンドウの大きさ(範囲)は、地形や比較範囲によって適宜定めることができる。
【0026】
また、ウィンドウの設定では、照合対象となる点群2におけるウィンドウの周辺のどの領域まで検索領域とするかを設定する。この領域の大きさや形状は、地形や比較範囲によって適宜定めることができる。
【0027】
次に、点群データ1で作成したウィンドウを構成するピクセル群の中から、ピクセルセットを抽出する(G1)。このピクセルセットは二以上のピクセルを組み合わせてなるものであり、二時期の画像をマッチングさせるためのものである。ピクセル単独でマッチングさせるのではなく、ピクセルセットでマッチングさせる理由について、図10(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0028】
図10(a)は点群データ1のピクセルの集合を示した図であり、図10(b)は点群データ2(2008年2月計測分)のピクセルの集合を示した図である。図10(a)のうちの一つのピクセルA0に着目し、これに該当するピクセルを図10(b)の中から探すと、同じグレースケールのA1、A2、A3が照合される。すなわち、A0の地形変化は3パターンが考えられることになり、どれかひとつに特定することができない。一方、図10(a)のうちA0を含む四つのピクセルからなるピクセルセット(図中破線で囲った範囲)に着目して、これに該当する画像を図10(b)の中から探すと、図10(b)の破線で囲ったピクセルセットが特定できる。このように、ピクセルセットを利用すれば二時期の画像が照合しやすくなる。なお、このピクセルセットを構成するピクセル数は、必ずしも多いほど照合しやすくなるというわけでなく、地形にあわせて適切なピクセル数でピクセルセットを構成する必要がある。
【0029】
前記したとおり、点群データ1のピクセル群から抽出されたピクセルセットによって描かれる画像と同一か又は近似した画像を、点群データ2で抽出されたウィンドウ及びその周辺領域から検出し(H)、その検出した画像に対応するピクセルセットを抽出する(G2)。なお、画像における近似とは、色彩や明暗が同じでなく事前に定めた許容範囲内に収まれば照合とみなしたり、ピクセルセット中一定の割合以上でピクセルの画像が一致(例えば4ピクセル中3ピクセルが一致など)すれば照合と見なしたり、種々の判定方法を採用することができる。
ここでの工程を言いかえれば、図11(a)に示すように変化前の地表面の一部を面としてとらえ、この中から複数の面(図では4面)を抽出し、図11(b)に示すように変化後の地表面の一部から同様の面の組み合わせを探し出すという工程である。変化前後の二地表面においていわば面照合を行い、これによって点群データ1のピクセルセットと点群データ2のピクセルセットを照合させ、さらに点群データ1のピクセルと点群データ2のピクセル(すなわちメッシュ)とを対応させることができる。
【0030】
ピクセルセットの照合では、必ずしも全てが一致又は近似するとは限らない。
一致しないピクセルセットについては、これらピクセルセットを構成するピクセルにエラー(照合しない)として情報を付与し、後に説明するエラー判断(図1のM工程)などに利用する。
また、エラーとなったピクセルについては、解析上無視することもできるし、そのピクセル周辺の画像からどのピクセルと照合されるかを推定したうえで解析してもよい。
【0031】
点群データ1のピクセルと点群データ2のピクセル、すなわちメッシュどうしを対応させ(J)、対応付けられたメッシュ間でメッシュの格子点7どうしを対応させる(K)。それぞれのメッシュ格子点7が持つ三次元の空間情報(x,y,z)を比較させて(L)、次の工程(M)に進む。
【0032】
なお、図2のフロー図中のG1(G2)〜Lの工程は対象となる当該ウィンドウ範囲すべてを網羅するまで繰り返し行われ、F1(F2)〜Lの工程は対象となる当該ウィンドウ範囲すべてを網羅するまで繰り返し行われる。
【0033】
画像マッチング工程(M)を経て、エラー判定(M)を実施する。ここでは、エラーピクセルの抽出(図2のI)で抽出されたエラーによってどの次工程に進むかを判断するものである。
例えば、抽出されたエラーピクセル数や画像(色彩や明暗など)の相違の度合い、あるいはこれらの組み合わせによって判断できる。ここでは、エラーピクセルの数で説明する。
エラーピクセルの数が、事前に設定した上限閾値よりも大きい場合(矢印a)は、比較する地形が異なっていたなどのケースと考え、これ以上の解析を進めず解析を終了させる(N)。
エラーピクセルの数が、事前に設定した下限閾値よりも小さい場合(矢印b)は、この段階で十分両時期の地形比較ができるものと考え、両時期の地形変化を把握できたとする(O)。
【0034】
エラーピクセルの数が、上限閾値と下限閾値の間にある場合(矢印c)は、図1のQ工程に進む。この場合、対象範囲の大部分は照合するが、一部において照合しないため、両時期の地形変化を把握ができたとするのは妥当でないケースと考えられる。そこで、C2の工程で算出されたメッシュ単位の地形量に基づいて、点群データ2の地形量の再計算を行う。具体的には、点群データ1の地形をできるだけ再現できるように計算されるもので、一例を挙げれば、点群データ1のピクセルセットによる画像を可能な限り多く再現できるように、点群データ2の地形量を再計算する。これによって、再計算された地形量の平面座標はメッシュの格子点7から離れ(一致したままの場合もあるが)、新たな空間情報が付与される(以下、これを「再配置による構成点」という。)。この場合、その新たな空間情報は、メッシュのM格子点7やレーザー計測点4に基づいて付与され、その手法は、DEMで採用する補完方法をはじめ従来の手法を採用することができる。
このように再配置による構成点によって、点群データ2の地形量が再配置される(R)。さらに、再配置前の地形量が付与されたメッシュの格子点7と、再配置による構成点との対応を図ることによって、点群データ1のピクセルすなわちメッシュの構成点7と、再配置による構成点との対応が可能となり、両者の空間情報を比較することが可能となる(S)。
【0035】
以上の工程が終了すると、2006年11月から2008年2月までの間に地形がどのように変化したかを全体にわたって把握することができる(T)。
【0036】
本願発明は、二時期の画像を作成したうえで両者の地形を比較するものであり、電子計算機を使用して実施することもできる。
この場合、解析方法がいわゆるブラックボックス化され、結果の検証が容易でないことも考えられる。しかしながら、画像は目視できるので明らかな誤り(エラー)は容易に抽出することができる。あるいは画像情報を数値化して、電子計算機で(閾値を設けるなどにより)エラーを発見することもできる。このようなエラーは、ピクセル単位で抽出することが可能で、エラーとして検出されたピクセルについては、これを除外して全体の解析を進めてもよいし、このピクセルを周辺のピクセルから判断して補間して解析を進めることもできるし、補間できるピクセルは補間して、補間できないピクセルは除外するなど、種々選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明の地形画像を用いた地形変化の解析方法は、経年の地殻変動に伴う地表面変化を把握するとともに、断層活動の活動状況や地すべりの活動状況を把握することによって、自然災害を未然に防ぎ、あるいは自然災害による被害を軽減させるなど、種々応用することが可能であり、産業上利用できるとともに、社会的に大きな貢献を期待し得る方法である。
【符号の説明】
【0038】
1 地形
2 航空機
3 レーザー
4 レーザー計測点
5 横軸
6 縦軸
7 格子点
8 メッシュ
9 計測点
10 異なる時期の計測点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二以上の時期における地形の変化を解析する方法において、
前記二以上の時期に計測された、平面座標及び高さ情報からなる空間情報を有する点の集合である点群データから、それぞれ計測時期ごとにDEMを作成し、
前記DEMの空間情報又は/及び前記計測された空間情報に基づいて、前記DEMを構成するメッシュごとに地形量を演算し、
前記メッシュ及びその地形量に基づいて画像作成のためのピクセルを作成し、
前記地形量に基づいて、前記ピクセルごとに画像を作成し、
前記計測時期から選択される第一時期における前記画像と、この計測時期とは異なる第二時期の前記画像とを照合することによって、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項2】
請求項1記載の地形画像を用いた地形変化の解析方法において、
DEMの単位メッシュを画像作成のためのピクセルとし、
第一時期の画像を作成するピクセル群から、二以上のピクセルの組み合わせを一単位とするピクセルセットを抽出し、
第二時期の画像の中から、前記第一時期におけるピクセルセットの画像と照合する画像を検出し、この検出された画像に相当するピクセルセットを抽出することによって、第一時期のDEMと第二時期のDEMとを対応させ、
これら対応するDEMの空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項3】
請求項2記載の地形画像を用いた地形変化の解析方法において、
第一時期における地形量の配置と、第二時期の地形量の配置とが近似するように、第二時期の地形量を再演算して空間情報を付与し、
第一時期における地形量と、前記再演算された第二時期の地形量とを対応させ、これら対応する地形量に付与された空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の地形画像を用いた地形変化の解析方法において、
第一時期における地形量による画像と、第二時期における地形量による画像とを、比較することによって、異時期の画像どうしの照合におけるエラーをピクセル単位で検出し、このエラーとして検出されたピクセルを除外して又は/及び補間して、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項1】
二以上の時期における地形の変化を解析する方法において、
前記二以上の時期に計測された、平面座標及び高さ情報からなる空間情報を有する点の集合である点群データから、それぞれ計測時期ごとにDEMを作成し、
前記DEMの空間情報又は/及び前記計測された空間情報に基づいて、前記DEMを構成するメッシュごとに地形量を演算し、
前記メッシュ及びその地形量に基づいて画像作成のためのピクセルを作成し、
前記地形量に基づいて、前記ピクセルごとに画像を作成し、
前記計測時期から選択される第一時期における前記画像と、この計測時期とは異なる第二時期の前記画像とを照合することによって、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項2】
請求項1記載の地形画像を用いた地形変化の解析方法において、
DEMの単位メッシュを画像作成のためのピクセルとし、
第一時期の画像を作成するピクセル群から、二以上のピクセルの組み合わせを一単位とするピクセルセットを抽出し、
第二時期の画像の中から、前記第一時期におけるピクセルセットの画像と照合する画像を検出し、この検出された画像に相当するピクセルセットを抽出することによって、第一時期のDEMと第二時期のDEMとを対応させ、
これら対応するDEMの空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項3】
請求項2記載の地形画像を用いた地形変化の解析方法において、
第一時期における地形量の配置と、第二時期の地形量の配置とが近似するように、第二時期の地形量を再演算して空間情報を付与し、
第一時期における地形量と、前記再演算された第二時期の地形量とを対応させ、これら対応する地形量に付与された空間座標どうしを比較することによって、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の地形画像を用いた地形変化の解析方法において、
第一時期における地形量による画像と、第二時期における地形量による画像とを、比較することによって、異時期の画像どうしの照合におけるエラーをピクセル単位で検出し、このエラーとして検出されたピクセルを除外して又は/及び補間して、異時期の地形の変化を判断することを特徴とする地形画像を用いた地形変化の解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−266419(P2010−266419A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120428(P2009−120428)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【特許番号】特許第4545219号(P4545219)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人土木学会第10回地震災害マネジメントセミナー 地震災害におけるリモートセンシング・テクノロジーの活用 〔刊行物等〕 一般社団法人日本地球惑星科学連合のホームページ 〔刊行物等〕 日本地球惑星科学連合2009年大会 予稿集
【出願人】(390023249)国際航業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【特許番号】特許第4545219号(P4545219)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人土木学会第10回地震災害マネジメントセミナー 地震災害におけるリモートセンシング・テクノロジーの活用 〔刊行物等〕 一般社団法人日本地球惑星科学連合のホームページ 〔刊行物等〕 日本地球惑星科学連合2009年大会 予稿集
【出願人】(390023249)国際航業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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