説明

地盤改良体の強度推定方法

【課題】高圧噴射攪拌工法により形成された地盤改良体の強度を、施工後短期間のうちに、簡便かつ精度よく推定できる方法を提供する。
【解決手段】高圧噴射攪拌工法によって、地盤中の所定深度まで貫入させた注入ロッドの噴射ノズルから硬化材液を噴射させて攪拌混合することにより造成された地盤改良体の硬化材液が硬化する前に、地盤改良体から改良土を採取する改良土採取工程と、改良土採取工程により採取された改良土から強度測定用試料を作製する強度測定用試料作製工程と、強度測定用試料作製工程により作製された強度測定用試料を促進養生する促進養生工程と、促進養生工程後の強度測定用試料の強度を測定する強度測定工程と、硬度測定工程により得られた強度測定用試料の強度に基づいて地盤改良体の強度を推定する強度推定工程とを包含し、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能な地盤改良体の強度推定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良体の強度推定方法に関するものであり、詳しくは、高圧噴射攪拌工法によって、地盤中の所定深度まで貫入させた注入ロッドの噴射ノズルから硬化材液を噴射させて攪拌混合することにより造成される地盤改良体の強度推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤中に硬化材液を注入することによって、軟弱地盤を固結させて、せん断強さを増大させ、地盤を改良する工法として高圧噴射撹拌工法が知られている。高圧噴射撹拌工法は、注入ロッドを用いて地盤を所定の深度まで削孔した後、該注入ロッドを回転または揺動させながら引き上げつつ、注入ロッドの下端に装着されている噴射ノズルから、硬化材液を水平方向に超高圧で噴射することによって、既存の地盤を切削しつつ、硬化材液と、地盤を形成する軟弱土を撹拌混合し、円柱状または扇形柱状の地盤改良体を形成する工法である。
【0003】
高圧噴射撹拌工法による地盤改良において、地盤改良体の品質は、地盤改良体が硬化した後にチェックボーリングを行うことで確認するのが一般的である。具体的には、施工1〜2週間後にコアボーリングによってサンプリングされた供試体で連続性の確認が行われ、28日経過後に強度の確認が行われる。
【0004】
しかし、地盤改良体が硬化した後に確認する方法は、大掛かりな装置が必要であり、試料の採取に相当の時間を要するという問題があった。また、設計された強度を満足していないことが確認された場合には、追加施工や別種の補助工法を行うことが必要であった。
【0005】
そこで、高圧噴射撹拌工法による地盤改良体の施工直後に、地盤改良体から未硬化の改良土を試料として採取し、この試料土を型枠に充填して供試体を作製し、短期間の促進養生に供し、促進養生後の供試体の強度から地盤改良体の強度を推定する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、地盤改良工法により築造された築造直後の改良土(ソイルセメント体)を採取して供試体を作製し、この供試体に対して温水で1〜2日間促進養生を施し、促進養生後の供試体の強度を求め、予め求めておいた関係式を用いて促進養生後の供試体強度から、通常期間養生後の供試体強度を推定する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−346768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、地盤改良工法により築造された築造直後の未硬化改良土の採取には、特願平6−183294(特開平8−49490号公報)、実開平3−54891号公報に開示されている試料採取装置を使用できることが記載されている。また、バックホウ等により任意の深度の改良土を採取する方法でもよいことが記載されている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている試料採取装置を用いた場合、特定の位置の改良土以外は採取できないという問題があった。
【0008】
図8に示すように、高圧噴射攪拌工法では、注入ロッド71を所定の深度まで貫入し、回転または揺動させながら引き上げつつ、注入ロッド71の下端に装着されている噴射ノズルから、硬化材液を水平方向に超高圧で噴射することにより地盤改良体60が造成される。そして、特許文献1に記載されている試料採取装置は、注入ロッド71を引き上げた後、これに代えて取り付けられるものであるため、注入ロッド71が貫入された付近の改良土、つまり図8において斜線で示された範囲の改良土以外は採取することができなかった。
【0009】
また、任意の深度の改良土を採取するためにバックホウ等の重機を用いることが開示されているが、作業が大掛かりとなり、容易に実施できないという問題があった。
【0010】
高圧噴射攪拌工法による施工直後の未硬化の地盤改良体から採取した改良土を試料として、促進養生により地盤改良体の強度を推定する場合、特定の地点から採取された試料のみから推定される強度は、その特定の地点の強度を推定することはできるが、地盤改良体の他の地点の強度の推定に適したものではない。地盤改良体の強度を高精度に推定するためには、複数の任意の地点から採取された改良土を試料とし、これらから得られる強度のデータを総合的に判断することが望まれる。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、高圧噴射攪拌工法により形成された地盤改良体の強度を、施工後短期間のうちに、簡便かつ精度よく推定できる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の地盤改良体の強度推定方法は、上記課題を解決するために、高圧噴射攪拌工法によって、地盤中の所定深度まで貫入させた注入ロッドの噴射ノズルから硬化材液を噴射させて攪拌混合することにより造成される地盤改良体の強度推定方法であって、硬化材液が硬化する前に地盤改良体から改良土を採取する改良土採取工程と、改良土採取工程により採取された改良土から強度測定用試料を作製する強度測定用試料作製工程と、強度測定用試料作製工程により作製された強度測定用試料を促進養生する促進養生工程と、促進養生工程後の強度測定用試料の強度を測定する強度測定工程と、硬度測定工程により得られた強度測定用試料の強度に基づいて地盤改良体の強度を推定する強度推定工程とを包含し、改良土採取工程は、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能であることを特徴としている。
【0013】
従来、未硬化の地盤改良体から改良土を採取する場合、注入ロッドが貫入された位置の周囲に存在する改良土(図8参照)を採取し得る採取装置が用いられていたため、採取した改良土を促進養生することにより地盤改良体の強度を推定する場合、注入ロッドが貫入された位置の周囲の強度を推定することは可能であった。しかしながら、注入ロッドが貫入された位置から離れた位置は、原地盤の土砂の種類や硬化材液と土砂との攪拌状態が異なるので、従来の方法では地盤改良体の全体にわたって高い精度で強度を推定することは困難であった。本発明によれば、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能であるため、地盤改良体の設計範囲内の複数の異なる位置から改良土を採取して強度測定用試料を作製し、これを促進養生して強度測定することにより、施工後短期間のうちに、地盤改良体の全体にわたって高い精度で強度を推定することが可能となる。その結果、仮に地盤改良体の設計範囲内において設計強度を満足しない箇所が見つかった場合には、直ちに再施工等の対策を講じることが可能であり、工期終了後に追加施工や別種の補助工法を行う事態が生じない。
【0014】
本発明の地盤改良体の強度推定方法は、上記課題を解決するために、改良土採取工程は、内部に改良土を収容可能なサンプリングロッドを用いて改良土を採取し、サンプリングロッドは、コーン形状の先端部を有することを特徴としている。
【0015】
高圧噴射攪拌工法による地盤改良体は、地盤表面から数メートル下に上端が位置するように造成されるのが一般的である。したがって、注入ロッドの貫入によって既に削孔されている部分を除いては、地盤表面から地盤改良体の上端までは通常の地盤が存在し、地盤改良体の上端に到達するためには、この通常の地盤を掘り進む必要がある(図8参照)。本発明によれば、改良土の採取に用いられるサンプリングロッドはコーン形状の先端部を有しているので、予め地盤表面から地盤改良体の上端までの通常の地盤部分を他の掘削器具を用いて削孔しておく必要がなく、地盤改良体の設計範囲内の任意の地盤表面の地点から任意の深度までサンプリングロッドを貫入することができる。また、サンプリングロッドの貫入は、例えば静的コーン貫入機等の装置を用いて行うことができるので、大掛かりな装置を必要とせず、簡便に作業できる。
【0016】
また、本発明によれば、コーン形状の先端を有するサンプリングロッドが地盤改良体に到達した後は、硬化材液が硬化する前の軟弱な泥状の地盤改良体中に貫入するので、鉛直性を保持した状態でサンプリングロッドを深部まで貫入することができる。それゆえ、目的の位置の改良土を確実に採取することができ、採取した改良土から強度測定用試料を作製し、これを促進養生して強度測定することにより、採取した位置における改良体の強度を高精度に推定することができる。
【0017】
本発明の地盤改良体の強度推定方法は、上記課題を解決するために、サンプリングロッドは、内部に改良土を収容可能なサンプリングロッド本体と、該サンプリングロッド本体の先端に取り付けられる先端コーンと、該サンプリングロッド本体の内部に配置され、一端が該先端コーンに接続される先端コーン引抜バーと、を備え、サンプリングロッドが地盤改良体の設計範囲内の所定の位置に到達した後、先端コーン引抜バーを引き抜くことによりサンプリングロッドの先端部を開口させ、開口した先端部からサンプリングロッドの内部に改良土を採取することを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、サンプリングロッドが改良土を採取しようとする目的の位置に到達する前はサンプリングロッドに開口部がなく、目的の位置に到達した後、先端コーン引抜バーを引き抜くことによりサンプリングロッドの先端部が開口するので、目的の位置の改良土を確実に採取することができ、目的の位置以外の改良土が混入することがない。したがって、採取した改良土から強度測定用試料を作製し、これを促進養生して強度測定することにより、採取した位置における改良体の強度を高精度に推定することができる。
【0019】
本発明の地盤改良体の強度推定方法は、上記課題を解決するために、サンプリングロッドの内部または近傍に位置センサーが設けられ、位置センサーは、地盤中のサンプリングロッドの傾斜角および傾斜方位をそれぞれ検出するための傾斜計および方位計を備え、傾斜計および方位計から得られる傾斜角情報および傾斜方位情報により、地盤中のサンプリングロッドの位置を検出する位置検出工程を包含することを特徴としている。
【0020】
上述のように、本発明においては、硬化材液が硬化する前の軟弱な泥状の地盤改良体中にサンプリングロッドを貫入するので、鉛直性を保持した状態でサンプリングロッドを深部まで貫入することができる。しかし、地盤表面から地盤改良体の上端までの通常の地盤を通過する際に傾斜や方位のずれが生じる場合があり、この位置で生じたずれは地盤改良体に到達した後、深度が深くなるにつれて次第に大きなずれとなる。本発明によれば、サンプリングロッドの内部または近傍に位置センサーが設けられているので、地盤中のサンプリングロッドの位置を3次元的に検出することができる。そのため、サンプリングロッドの貫入方向が鉛直方向からずれた場合でも、どの方向にどれだけずれた位置で改良土を採取しているのか3次元的に把握することができ、目的の採取位置と実際の採取位置のずれに起因する精度の低下を防止し、高い精度を維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の地盤改良体の強度推定方法によれば、高圧噴射攪拌工法による施工直後に、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における未硬化の改良土を採取可能であるので、採取した改良土の促進養生後の強度から地盤改良体の強度を推定することにより、地盤改良体の全体にわたって、施工後短期間のうちに、簡便かつ精度よく強度を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の地盤改良体の強度推定方法について説明する。本発明は、高圧噴射攪拌工法によって造成される地盤改良体の強度を、地盤改良体の施工後短期間のうちに推定する方法であり、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能であることから、地盤改良体の全体にわたって高い精度で強度を推定可能な方法である。なお、「改良土」とは、地盤改良体の設計範囲内に存在する土砂、硬化材液および土砂と硬化材液との混合物を意図する。また、「地盤改良体の設計範囲内の任意の位置」とは、設計された地盤改良体が地盤中に存在する予定範囲内の地盤表面の任意の地点における任意の深度の地点を意図する。
【0023】
最初に、図1を用いて、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能なサンプリングロッドを地盤に貫入する方法について説明する。図1は、サンプリングロッドを地盤に貫入する方法の一例を示す説明図である。図1に示すように、サンプリングロッド1にはサンプリングロッド本体10とその先端に先端コーン12を備えている。そのため、直接地盤に貫入することが容易であり、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土の採取に好適に用いることができる。また、サンプリングロッド1の近傍には位置センサー21が設けられている。位置センサー21には位置情報を地上のコンピュータ25に伝送するための位置情報伝送ケーブル24が接続されている。
【0024】
サンプリングロッド1を地盤に貫入するに際し、サンプリングロッド1の貫入位置に静的コーン貫入機100が設置される。貫入位置は、地盤改良体60の存在が予定される設計範囲内の地盤表面の任意の地点に設定される。サンプリングロッド1は静的コーン貫入機100の昇降装置101に装着され、昇降装置101の作動により地盤中に貫入される。サンプリングロッド1を通常の地盤の下に造成された地盤改良体60の目的の位置(深度)まで貫入させるために、サンプリングロッド1には接続用ロッド70が順次継ぎ足される。そのため、予め目的の位置(深度)まで貫入するために必要な数の接続用ロッド70を準備し、位置情報伝送ケーブル24を各接続用ロッド70の内部に通しておく。各ロッド間は螺着可能になっている。
【0025】
次に、図2および図3を用いて、サンプリングロッド1について説明する。図2(a)は、サンプリングロッドの側面図であり、(b)は、(a)のX−X断面図である。図3は、サンプリングロッドの分解図である。
【0026】
図2(a)、(b)および図3に示すように、サンプリングロッド1は、円筒形のサンプリングロッド本体10の内部に、円筒形のサンプル収容ケース16が収容されている。サンプル収容ケース16の先端側(貫入時下側)の端部にはサンプル落下防止弁17が設けられ、これが逆止弁として機能することにより採取した改良土の落下を防止することができる。サンプリングロッド本体10の先端(貫入時下側)には、円柱状の中空部分を有する円錐台形の先端ジョイント11が螺着されている。この先端ジョイント11の中空部分から円錐形の先端が突出するように先端コーン12が嵌挿されている。先端コーン12の後端側に先端コーン引抜バー13が螺着される。先端コーン引抜バー13はサンプル落下防止弁17を通り、サンプル収容ケース16の内部を貫通して、サンプリングロッド本体10の後端で後端ジョイント15の円柱状の穴に嵌挿される。後端ジョイント15はサンプリングコーン本体10の後端に螺着される。後端ジョイント15がサンプリングコーン本体10の後端に螺着された状態で、先端コーン引抜バー13の後端が後端ジョイント15の穴の内部に位置するように、先端コーン引抜バー13の長さが設計されている。先端コーン固定バー14は後端ジョイント15に螺着され、先端コーン固定バー14の先端が先端コーン引抜バー13の後端に接合する状態となる。この状態で、先端コーン12はサンプリングロッド本体10の先端に固定されており、サンプリングロッド1は地盤中に容易に貫入し得る状態となる。
【0027】
サンプル落下防止弁17は、上述のように逆止弁となっており、例えば可撓性の合成樹脂製が好適に用いられる。サンプル収容ケース16は、内部に未硬化の改良土を収容できるものであれば材質は特に限定されない。例えば合成樹脂製を好適に用いることができる。サンプル収容ケース16およびサンプル落下防止弁17以外の部品は、鉄やアルミなどの金属製である。
【0028】
次に、図4を用いて位置センサー21について説明する。図4は、サンプリングロッドの近傍に位置センサーが設けられた一例を示す説明図である。
【0029】
図4に示すように、サンプリングロッド1の上部(貫入時上側)に位置センサーロッド本体20が接続され、その内部に位置センサー21が収容される。サンプリングロッド1の先端コーン引抜バー13が位置センサーロッド本体20の内部を通る。位置センサー21は、傾斜計22および方位計23から構成される。位置センサー21には位置情報伝送ケーブル24が接続され、傾斜計22および方位計23により検出された傾斜角および傾斜方位の情報が地上のコンピュータ25(図4略)に伝送される。コンピュータ25では、伝送されてきた傾斜角および傾斜方位の情報を必要に応じて演算処理し、ディスプレイに表示する。
【0030】
位置センサー21を構成する傾斜計22および方位計23の種類は特に限定されないが、好適な傾斜計22として、例えば静電容量型傾斜計を挙げることができる。また、好適な方位計23として、例えば光ジャイロを挙げることができる。静電容量型傾斜計および光ジャイロは、いずれも衝撃や振動に強く、サンプリングロッド1の近傍に設けられた位置センサー21に用いる計器として好適である。
【0031】
図4には、位置センサー21を収容した位置センサーロッド本体20がサンプリングロッド1に接続された形態を示したが、これに限定されるものではなく、位置センサー21はサンプリングロッド1の内部または近傍に設けられていればよい。なお、位置センサー21に対する磁気の影響を排除するため、位置センサー21の周囲には磁気を帯びない素材が使用される。磁気を帯びない素材としてはアルミ、ステンレス等が挙げられる。
【0032】
位置センサー21をサンプリングロッド1の内部または近傍に設けることにより、サンプリングロッド1の貫入方向が鉛直方向からずれた場合でも、どの方向にどれだけずれた位置で改良土を採取しているのか3次元的に把握することができるので、目的の採取位置と実際の採取位置のずれに起因する精度の低下を防止し、高い精度で改良体の強度を推定することができる。
【0033】
続いて、図5を用いて、本発明の地盤改良体の強度推定方法の手順を説明する。図5は、本発明の地盤改良体の強度推定方法の手順を示すフローチャートである。
【0034】
〔高圧噴射攪拌工法により地盤改良体を造成〕
高圧噴射撹拌工法は、注入ロッドを用いて地盤を所定の深度まで削孔した後、該注入ロッドを回転または揺動させながら引き上げつつ、注入ロッドの下端に装着されている噴射ノズルから、硬化材液を水平方向に超高圧で噴射することによって、既存の地盤を切削しつつ、硬化材液と、地盤を形成する軟弱土を撹拌混合し、円柱状または扇柱状の地盤改良体を形成する工法である。本発明においては、用いられる高圧噴射攪拌工法の種類は限定されず、公知の高圧噴射撹拌工法から適宜好適な方法を選択し、地盤改良体を造成すればよい。
【0035】
〔改良土採取工程〕
高圧噴射攪拌工法による地盤改良体の施工後、硬化材液が硬化する前に地盤改良体から改良土を採取する。
【0036】
ここで、図6および図7を用いて、改良土採取工程において、地盤改良体の設計範囲内の任意の位置に設定された目的の位置から、サンプリングロッド1により改良土を採取する方法について説明する。図6(a)は、サンプリングロッドを地盤表面の所定の位置にセットした状態を示す説明図であり、(b)は、サンプリングロッドの先端が地盤改良体の目的の位置に到達した状態を示す説明図であり、(c)は、サンプリングロッドにより地盤改良体の目的の位置で改良土を採取している状態を示す説明図であり、(d)は、改良土の採取終了後サンプリングロッドを地上に引き抜いた状態を示す説明図である。図7(a)は、改良土の採取を開始するときのサンプリングロッドの状態を示す説明図であり、(b)は改良土を採取中のサンプリングロッドの状態を示す説明図であり、(c)は、改良土の採取中を終了したサンプリングロッドの状態を示す説明図である。
【0037】
図6(a)に示すように、まず、地盤表面の所定の位置にサンプリングロッド1をセットする。なお、図6(a)〜(d)では、説明の便宜上サンプリングロッド1の貫入に用いられる静的コーン貫入機100の図示を省略している。地盤表面の所定の位置は、地盤改良体60の存在が予定される設計範囲内の地盤表面の任意の地点である。このときのサンプリングロッド1の状態は、図2(a)に示される状態になっている。すなわち、先端コーン12は後端ジョイント15(図6(a)略)に螺着された先端コーン固定バー14(図6(a)略)によりサンプリングロッド1の先端に固定され、サンプリングロッド1は地盤中に容易に貫入し得る状態となっている。
【0038】
図6(b)に示すように、サンプリングロッド1は、地盤中に貫入され、通常の地盤を通過して地盤改良体60の目的の深度の位置に到達する。サンプリングロッド1の先端が目的の深度に到達するまで、順次接続ロッド70が注ぎ足される。このときのサンプリングロッド1の状態は、未だ図2(a)に示される状態であるが、ここで図7(a)に示すように、先端コーン引抜バー13の後端に当接することによって先端コーンを固定する先端コーン固定バー14を後端ジョイント15から取り外す。これにより、先端コーン12の固定が解除される。
【0039】
図6(c)に示すように、先端コーン12の固定が解除されたサンプリングロッド1をさらに貫入すると、先端コーン12は改良土によりサンプル落下防止弁17を通過してサンプル収容ケース16内に押し込まれ、同時にサンプル収容ケース16内に目的の位置の改良土が入り込む。このときのサンプリングロッド1の状態を図7(b)に示す。さらに、サンプリングロッド1を貫入すると、図7(c)に示すように、先端コーン12が後端ジョイント15に当接し、サンプル収容ケース16内に採取可能な量の上限となる。この時点でサンプリングロッド1の貫入を停止する。
【0040】
図6(d)に示すように、改良土の採取が終了した後サンプリングロッド1は地上まで引き抜かれる。サンプリングロッド1には先端部以外に開口部がないので、引き抜き時に目的の位置以外の改良土が混入することはない。また、サンプル落下防止弁17が設けられているので、サンプル収容ケース16内の改良土は落下しない。
【0041】
以上のように、サンプリングロッド1を用いると、高圧噴射攪拌工法によって造成される地盤改良体60の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能であり、目的の位置の改良土を簡便かつ確実に採取することができる。
【0042】
〔強度測定用試料作製工程)〕
前段の改良土採取工程で採取した改良土を型枠に充填して強度測定用試料を作製する。型枠の大きさや形状は特に限定されないが、後段の強度測定工程において規格に基づいた強度測定用試料が必要である場合は、規格に従って強度測定用試料を作製する。例えば、後段の強度測定工程において一軸圧縮試験を行う場合には、直径5cm×高さ10cm、直径4cm×高さ8cm、直径3.5cm×高さ7cmの強度測定用試料(供試体)を作製し得る型枠が好適に用いられる。型枠種類としては、鋳鉄製2つ割りモールド、エポキシ樹脂モールド、金属製や紙製の有底円筒缶、塩化ビニル缶などが挙げられる。強度測定用試料の作製は、地盤工学会基準「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法(JGS
T 821)」を参照して行うことができる。
【0043】
〔促進養生工程〕
前段の強度測定用試料作製工程で作製した強度測定用試料を促進養生する。促進養生は、例えば、強度測定用試料を型枠のまま電気乾燥炉(電気恒温機)や温水養生装置(恒温水槽)に収容し、温度を加えることにより行うことができる。強度測定用試料の乾燥を防止するために、強度測定用試料を樹脂フィルムで密封したり、強度測定用試料を密封容器に入れてから加温することが好ましい。加える温度は、コンクリート試験体の標準養生温度(20±3℃)を超える温度であればよい。好ましくは30℃〜80℃、より好ましくは40℃〜60℃である。養生時間は加える温度により適宜選択される。具体的には、例えば55℃に設定した温水養生装置で20〜24時間養生する方法が挙げられる。
【0044】
〔強度測定工程〕
前段の促進養生工程後の強度測定用試料の強度を測定する。促進養生後の強度測定用試料を室温に戻し、型枠を取り外して強度測定を行う。強度測定試験としては、例えば一軸圧縮試験、超音波試験、割裂試験、動的変形試験などを挙げることができる。一軸圧縮試験はJIS A1216「土の一軸圧縮試験方法」またはJIS A1108「コンクリートの圧縮試験方法」に準じて行うことができる。超音波試験はP波、S波を測定する試験であり、JGS 2110−1998「パルス透過法による超音波速度測定方法」を参照して行うことができる。割裂試験は引張強度を測定する試験でありJGS 2551−2002「圧裂による岩石の引張り強さ試験方法」を参照して行うことができる。動的変形試験は動的な性質(剛性低下・減衰など)を測定する試験であり、JGS 0542−2000「地盤材料の変形特性を求めるための繰返し三軸試験方法」を参照して行うことができる。
【0045】
〔強度推定工程〕
前段の硬度測定工程において得られた供試体の強度に基づいて地盤改良体の強度を推定する。地盤改良体の強度推定は、過去の蓄積データに基づいて得られる式を用いて行うのが一般的である。地盤改良体の強度推定に用いられる式は、通常期間(例えば20℃で28日)養生後の供試体強度と、促進養生後の供試体強度との関係から求められる(特許文献1参照)。前段の硬度測定工程において得られた供試体の強度を、上述の関係式に適用することで、地盤改良体の強度を推定することができる。
【0046】
以上のように、本発明によれば、高圧噴射攪拌工法によって造成される地盤改良体60の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能であり、目的の位置の改良土を簡便かつ確実に採取することができるので、地盤改良体60の設計範囲内の複数の異なる位置から改良土を採取して強度測定用試料を作製し、これを促進養生して強度測定することにより、施工後短期間のうちに、地盤改良体60の全体にわたって高い精度で強度を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】サンプリングロッドを地盤に貫入する方法の一例を示す説明図である。
【図2】(a)は、サンプリングロッドの側面図であり、(b)は、(a)のX−X断面図である。
【図3】サンプリングロッドの分解図である。
【図4】近傍に位置センサーが設けられたサンプリングロッドの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の地盤改良体の強度推定方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、サンプリングロッドを地盤表面の所定の位置にセットした状態を示す説明図であり、(b)は、サンプリングロッドの先端が地盤改良体の目的の位置に到達した状態を示す説明図であり、(c)は、サンプリングロッドにより地盤改良体の目的の位置で改良土を採取している状態を示す説明図であり、(d)は、改良土の採取終了後サンプリングロッドを地上に引き抜いた状態を示す説明図である。
【図7】(a)は、改良土の採取を開始するときのサンプリングロッドの状態を示す説明図であり、(b)は改良土を採取中のサンプリングロッドの状態を示す説明図であり、(c)は、改良土の採取中を終了したサンプリングロッドの状態を示す説明図である。
【図8】促進養生により地盤改良体の強度を推定する従来の方法において改良土の採取可能範囲を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 サンプリングロッド
10 サンプリングロッド本体
11 先端ジョイント
12 先端コーン
13 先端コーン引抜バー
14 先端コーン固定バー
15 後端ジョイント
16 サンプル収容ケース
17 サンプル落下防止弁
20 位置センサーロッド本体
21 位置センサー
22 傾斜計
23 方位計
24 位置情報伝送ケーブル
25 コンピュータ
60 地盤改良体
70 接続用ロッド
100 静的コーン貫入機
101 昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧噴射攪拌工法によって、地盤中の所定深度まで貫入させた注入ロッドの噴射ノズルから硬化材液を噴射させて攪拌混合することにより造成される地盤改良体の強度推定方法であって、
前記硬化材液が硬化する前に前記地盤改良体から改良土を採取する改良土採取工程と、
前記改良土採取工程により採取された改良土から強度測定用試料を作製する強度測定用試料作製工程と、
前記強度測定用試料作製工程により作製された強度測定用試料を促進養生する促進養生工程と、
前記促進養生工程後の強度測定用試料の強度を測定する強度測定工程と、
前記硬度測定工程により得られた強度測定用試料の強度に基づいて前記地盤改良体の強度を推定する強度推定工程と
を包含し、
前記改良土採取工程は、前記地盤改良体の設計範囲内の任意の位置における改良土を採取可能であることを特徴とする地盤改良体の強度推定方法。
【請求項2】
前記改良土採取工程は、改良土を採取するサンプリングロッドを用い、
前記サンプリングロッドの先端は、コーン形状であることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良体の強度推定方法。
【請求項3】
前記サンプリングロッドは、
内部に改良土を収容可能なサンプリングロッド本体と、
該サンプリングロッド本体の先端に取り付けられる先端コーンと、
該サンプリングロッド本体の内部を通り、一端が該先端コーンに接続される先端コーン引抜バーと、を備え、
前記サンプリングロッドが前記地盤改良体の設計範囲内の所定の位置に到達した後、前記先端コーン引抜バーを引き抜くことにより前記サンプリングロッドの先端部を開口させ、開口した先端部から前記サンプリングロッドの内部に改良土を採取することを特徴とする請求項2に記載の地盤改良体の強度推定方法。
【請求項4】
前記サンプリングロッドの内部または近傍に位置センサーが設けられ、
該位置センサーは、地盤中の前記サンプリングロッドの傾斜角および傾斜方位をそれぞれ検出するための傾斜計および方位計を備え、
前記傾斜計および前記方位計から得られる傾斜角情報および傾斜方位情報により、地盤中の前記サンプリングロッドの位置を検出する位置検出工程を包含することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤改良体の強度推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−102897(P2009−102897A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276260(P2007−276260)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(599070260)有限会社ニューテック研究▲しゃ▼ (14)
【Fターム(参考)】