説明

地盤改良用薬液注入管および地盤改良用薬液注入施工方法

【課題】地盤内の土砂が外管体内に流入するのを防止でき、内管体を外管体に抜き差しし易く、かつ、注入範囲が深くても薬液を地盤内に注入可能な地盤改良用薬液注入管を提供する。
【解決手段】薬液注入管の外管体32は、外周面にストレーナ孔40を覆う弾性材からなる弁部材42を設け、内管体30の先端部のモニター34の側面に、先後に間隔を置いて外管体32の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材44を設け、かつ、その間隔内位置に内管体30の内部から側面に連通する側方向きの側面吐出孔46を設け、薬液注入時に内管体30内に加圧された薬液を導入して、該薬液を前記側面吐出孔46から吐出してシール部材44,44間の外管体32内の内圧を上げ、ストレーナ孔40の前記弁部材42を開くことによって当該ストレーナ孔40から薬液を外管体32の外部の周囲の地盤内に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質等地盤改良工事に用いるのに適切な地盤改良用薬液注入管および地盤改良用薬液注入施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工事中に多量の湧水が発生すると、掘削不能に陥ったり土砂の流出を促進して地盤を崩壊させたりあるいは周辺地盤が沈下したりすることになる。また、地盤の強度が足りない場合には、土圧や水圧の発生で地盤が崩壊して工事ができなくなる。
【0003】
薬液注入工法は、上記の不具合を解消するため、地盤の「不透水化」や「強化」を行なう目的で利用されている。
【0004】
また、当該薬液注入工法は、生活環境の向上や自然災害の防止を図ると共に、インフラ整備工事を安全かつ経済的に行なうために、無くてはならない工法である。
【0005】
例えば、埋設物の多い市街地で地下を掘削する工事では、埋設物のため連続した土塁壁が設置できず、このため、土留めに欠損部が生じると法面を階段状、スロープ状に掘削するしかなく工事面積が広範囲になることから、市街地でインフラ工事や既設埋設物の維持管理も難しくなる。これに対して、小設備で汎用性に優れ施工容易な薬液注入工法であれば、補助工法として、地下工事容易化や施工期間短縮化を果たせる。
【0006】
従来、薬液注入の前提として、地盤の掘削には、ボーリングマシンが使用されている(特開2007−2555号:特許文献1)。このボーリングマシンにおいては、垂直下方に向けたボーリングロッドを回転させて掘削し、その際、上端のスイベルジョイントに連結した注入用ホースから掘削用水を送り込んで、削孔する。
【0007】
薬注入工法に関して、最も効果的とされている工法にダブルパッカー方式がある。このダブルパッカー方式においては、予め口径の大きな(外径100mm以上)ケーシングロッドにより削孔した孔内に軟弱に硬化するシールグラウトを充填する。その後、このシールグラウト中にストレーナ管を挿入埋設して、ケーシングロッドを引き抜くが、充填したシールグラウトが軟弱に硬化した時点でストレーナ管内にパッカ付き内管を挿入してストレーナ孔毎に清水を送りシールグラウトにクラックを発生させる(この工程をクラッキングと称する)。
その後にストレーナ管内にパッカー付きホース(ストレーナ孔の上下に高圧ガスで膨張収縮可能なダブルパッカーを設置したもの)を下端まで挿入して、下層の注入ステップでパッカーを利かせてシールを行なった後、ストレーナ孔から地盤中に注入グラウト(薬液)を吐出させながら、クラックを通して地盤に一次注入(粗詰注入)する。ステップ当りの注入終了後、パッカーを緩めて次のステップへ引き上げた後、前のステップと同様に、パッカー、注入、パッカー緩め、ステップアップを繰り返して最上段のステップまで注入を行なう。一次注入材が硬化した時点で、再度ダブルパッカー付き注入管をストレーナ管の先端第1ステップまで挿入し、二次注入(浸透注入)する。
このように、下層の注入ステップから上層の注入ステップまで注入管を順次段階的に引き上げながら、ステップ毎にパッカーを利かせてシールを行なって注入グラウト(薬液)を吐出させ、クラックを通して周辺地盤に注入する。
【0008】
しかしながら、上記のダブルパッカー方式では、予めボーリングによって注入孔を削孔してケーシングロッドを引き抜いた後に、ストレーナ管を立て込む作業に加えクラッキング、一次注入、二次注入するという手順が複雑である上、さらに塩ビ管のストレーナ管を抜き取ることができず、残置するため環境保全上問題がある。また、その設置に相当の労力と工費を要するという問題がある。
ダブルパッカー工法でもステップダウン方式の注入が可能としているが、実際には、注入管が剛性の弱いホースのため順次深部に挿入できず、その上、ダブルパッカーを開閉する毎に薬液が漏れるため注入作業が困難になる欠点を持っている。
【0009】
これに対して、ストレーナ管をケーシング削孔(ボーリング)の後に挿入設置する間接設置方法ではなく、ストレーナ管を直接ボーリングロッドとして使用し地中に設置し、そのまま注入管として使用するもので、設置後直ぐにシールグラウトを行い、続いて、上段から下降しながら、注入するステップダウン式注入の工法がある。
【0010】
特開平9−88056号(:特許文献2)で薬液注入工法を提案している。ただし、この特許文献2の工法においては、周囲の吐出孔に目詰まりの問題が起こり易いため出願人は、後述する新システムに工法を提案している。
【0011】
この特許文献2記載の工法で使用するストレーナ管は、周面吐出孔を内部から塞ぐように、内管外周にシール材を設ける等してストレーナ管内に内管をスライド自在に密に嵌合したものである。そして、内管、ストレーナ管の先端吐出孔を介して掘削水を吐出しながら掘削し、所定深度にストレーナ管を設置後、内管を引き上げながらシールグラウトを圧送して内管先端からストレーナ管先端および周面吐出孔から削孔間隙内に注入する。その注入後内管をストレーナ管の注入範囲の上部から下方に向かって段階的に下降させて注入グラウト(薬液)を圧送し、前記シールグラウトを破って周辺地盤にステップ注入するものである。
【0012】
この工法では、注入が完了するまで内管を上下動させるが、地盤内の外管(ストレーナ管)を上下動させないため、地盤と外管との間のシール効果は失われない。また、シール注入後上段から注入するため注入された地盤自体がパッカー効果を発揮するシステムであるため、上記ダブルパッカー方式よりも高い注入効果を得ることができる。すなわち薬液が水平に注入されて所定の場所に注入され易くなる。
【0013】
しかしながら、上記特許文献2の技術であっても注入管(内管)が単管のため注入範囲が深い場合に瞬結薬液が使用できない。すなわち、注入する薬液は主剤と硬化剤を施工現場にて混合して注入するが、硬化するまでの時間が長時間のものは注入に問題が生じないが、硬化が短時間で起こる瞬結薬液の場合に、注入管の深い部分に達する前に薬液が硬化を初めて、目的とする深度の地盤内に薬液を注入できない。
【0014】
また、特許文献2の技術では、内管の表面にシールゴムを焼き付けており、その内管が外管(ストレーナ管)内に緊密に嵌り込む嵌合式の構成のため、施工時に内管と外管内に微細砂が入り込んだ場合に、互いの摺接抵抗が大きくなるため、ボーリングによって地盤内に挿入状態の外管に対して内管を上下移動させるのが難しくなって、作業能率が低下する問題が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−2555号公報
【特許文献2】特開平9−88056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の問題点に鑑み、地盤内の土砂が外管体内に流入するのを防止でき、内管体を外管体に抜き差しし易く、かつ、注入範囲が深くても薬液を地盤内に注入可能な地盤改良用薬液注入管および地盤改良用薬液注入施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は地盤改良用薬液注入管および地盤改良用薬液注入施工方法に係るものである。
【0018】
本発明の地盤改良用薬液注入管は、周囲に複数の周面吐出孔を設けた外管体と、該外管体の内部に挿入した、先端部に少なくとも側方向きに側面吐出孔を設けた内管体とを有する地盤改良用薬液注入管において、
前記外管体は、一方の外管部材の端部を他方の外管部材の端部内に挿入して結合させた構成の外管部材の結合体であって、
結合状態の一方の外管部材の端部および他方の外管部材の端部には、対応箇所に外管体内部から外部に連通するストレーナ孔を形成し、かつ、一方および他方の外管部材の端部同士の間に通常時はストレーナ孔を閉じ、外管体の内圧が外圧より高いときにストレーナ孔を開く弁部材を装着し、
内管体の先端部の側面には、先後に間隔を置いて外管体の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材を設け、かつ、その間隔内位置に内管体の内部から外側面に連通する側方向きの側面吐出孔を設け、
薬液注入時に内管体内に加圧された薬液が導入されて、該薬液を前記側面吐出孔から吐出してシール部材間の外管体内の内圧を上げ、ストレーナ孔の前記弁部材を開くことによって当該ストレーナ孔から薬液が外管体の外部の周囲の地盤内に注入されるようにしたことを特徴とする地盤改良用薬液注入管である。
【0019】
本発明においては、外管体の先端部に、先方向きに開口する先端吐出孔と、ボーリングビットとを設け、
内管体の先端部に、先方向きに開口する第2の吐出孔と、当該第2の吐出孔を閉鎖可能な構造とを設けており、
外管体と内管体には削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造を設けたことが好適である。
【0020】
本発明においては、前記外管体は、一方の外管部材の端部の外周面に雄ネジが形成され、かつ、この外周面にストレーナ孔を覆う弾性材からなる弁部材を設け、他方の外管部材の端部の内周面に雌ネジが形成されており、
前記雄ネジを前記雌ネジに螺合させて一方および他方の外管部材同士を連結して、これら一方および他方の外管部材の端部同士によって弁部材を挟む位置関係にしたことが好適である。
【0021】
本発明においては、前記削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造は、外管体および内管体の削孔時に対応する位置に、一方に回転止め突起を形成し、他方に回転止め溝を形成したものであることが好適である。
【0022】
本発明においては、前記第2の吐出孔を閉鎖可能な構造は、第2の吐出孔の内径よりも大径であって、下方に先方を向けた内管体内を自重で落ちていって第2の吐出孔に嵌り込む弁部材であることが好適である。
【0023】
本発明においては、内管体は、第1の内管体の外側に第2の内管体を設けた内外二重管構造であって、第1の内管体内の空間を第1の通路とし、該第1の内管体外周面と第2の内管体内周面との間の空間を第2の通路として、これら第1の通路および第2の通路にそれぞれ液体を送液可能とし、内管体の先端部には、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された液体を内部空間で合流させて混合するためのモニターを設け、このモニターに、先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材の間隔内位置にモニターの内部から外側面に連通する側方向きの側面吐出孔を設けた構造としたことが好適である。
【0024】
本発明においては、前記の第1の通路および第2の通路の一方に主剤を他方に硬化剤を送液するものとし、
内管体の先端部のモニターでは、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された主剤と硬化剤からなる薬液を内部空間で合流させて混合し、このモニター側面に設けられた複数のシール部材の間隔内位置の側方向きの吐出孔から外管体のストレーナ孔に向けて混合した薬液を吐出するようにしたことが好適である。
【0025】
本発明においては、外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター先端部に先方向きに第2の吐出孔を開口し、モニター内に先・後移動して第1の内管体の先端開口および第2の吐出孔を開閉可能な可動弁を設け、
当該可動弁は先面および後面が閉鎖された中空体であって先部側面および後部側面に中空内への連通孔が形成され、かつ周面にモニター内とのシール部材が設けられて、可動弁全体が弾性体によって後方向きに弾発されており、先端部で前記第2の吐出孔を開閉可能で、かつ、後端部で第1の内管体の先端開口を開閉可能に構成され、
外管体を回転させてボーリングビットによる削孔時には、可動弁が第1の通路を閉鎖した状態で、前記の第2の通路内に削孔水を流し、その削孔水を可動弁における後部側面の連通孔から中空内さらには先部側面の連通孔を通って、削孔水を流してボーリングビットに供給し、
一方、薬液の注入時には、前記を第1の通路と第2の通路とに薬液の主剤と硬化剤を加圧して流すことによって可動弁を駆動して第1の通路を開弁させかつ第2の吐出孔を閉鎖し、前記主剤と硬化剤をモニター内で混合し、側面向きの側面吐出孔から混合した薬液を外管のストレーナ孔を経由して地盤内に供給するようにしたことが好適である。
【0026】
本発明においては、前記外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター内には先後移動して第2の吐出孔を開閉可能な弁体と、該弁体を先方に付勢するスプリングとを設け、
モニター内周面に前記側方向きの側面吐出孔よりも先方位置に弁座を設け、前記弁体がモニター内で先方に位置するときにスプリングの付勢力によって前記弁体が弁座に密接して第2の吐出孔が閉鎖し、それと共に、外管体の先端部の逆止弁取り付け部の内側部に当接部を設け、前記弁体が当接部(クロス弁座)に当接して前記スプリングの付勢力に抗して前記弁体がモニター内で後方に移動したときに前記弁体が弁座から離れて前記密接が解除され、これによって、第2の吐出孔が開放する構造にし、
前記外管体の回転に連動してボーリングビットを回転させる削孔時には、前記内管体を先方に移動させて、前記外管体先端部内に前記モニターを位置させ、複数のシール部材と前記外管体の先端部の内周面との密接で前記モニターの側面吐出孔を閉鎖し、かつ、前記モニター内の弁体を前記当接部に当接させることによって前記弁体を弁座から後方に移動させて第2の吐出孔を開放した状態とし、前記内管体の第1の通路および第2の通路に削孔水を流し、その削孔水をモニター内の弁体と座面との間から第2の吐出孔に向けて流してボーリングビットに供給し、
一方、薬液の注入時には、前記内管体を外管体内で後方に移動させて前記モニターの側面吐出孔の先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材の間隔内位置にストレーナ孔が位置するようにし、かつ、モニター内でスプリングの付勢力で弁体が弁座に密接する状態として、第1の通路と第2の通路とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって前記主剤と硬化剤をモニター内で混合し、側方向きの側面吐出孔から混合した薬液を外管体のストレーナ孔を経由して地盤内に供給するようにしたことが好適である。
【0027】
本発明においては、外管体の先端の先端吐出孔にはボーリングビットによる削孔時に供給する削孔水の圧力で開弁し、外部から先端吐出孔への流入を遮断する逆止弁を設けたことが好適である。
【0028】
また、本発明の地盤改良用薬液注入施工方法は、周囲に複数の周面吐出孔を設けた外管体と、該外管体の内部に挿入した、先端部に少なくとも側方向きに側面吐出孔を設けた内管体とを有する地盤改良用薬液注入管において、
前記外管体は、一方の外管部材の端部を他方の外管部材の端部内に挿入して結合させた構成の外管部材の結合体であって、
結合状態の一方の外管部材の端部および他方の外管部材の端部には、対応箇所に外管体内部から外部に連通するストレーナ孔を形成し、かつ、一方および他方の外管部材の端部同士の間に通常時はストレーナ孔を閉じ、外管体の内圧が外圧より高いときにストレーナ孔を開く弁部材を装着し、
それと共に、前記外管体の先端部に、先方向きに開口する先端吐出孔と、ボーリングビットとを設け、
前記内管体の先端部の側面には、先後に間隔を置いて外管体の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材を設け、かつ、その間隔内位置に内管体の内部から外側面に連通する側方向きの側面吐出孔を設け、それと共に、内管体の先端部に、先方向きに開口する第2の吐出孔と、当該第2の吐出孔を閉鎖可能な構造とを設け、
前記外管体と前記内管体には削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造を設けたものであって、
前記内管体内を介して第2の吐出孔から削孔水をボーリングビットに圧送しながら、前記外管体および内管体を同時に回転させてボーリングビットにより地盤を削孔する工程と、
地盤の削孔深度が所定の深度に至るまで外管体および内管体を継ぎ足す工程と、
削孔深度が所定の深度に至った後に、前記外管体を削孔内に残置した状態で、薬液注入時に内管体内に加圧された薬液を導入して、該薬液を前記側面吐出孔から吐出してシール部材間の外管体内の内圧を上げ、ストレーナ孔の前記弁部材を開くことによって当該ストレーナ孔から薬液が外管体の外部の周囲の地盤内に注入する薬液工程とを有することを特徴とする地盤改良用薬液注入工法である。
【0029】
〔本発明の原理〕
本願発明の原理について説明する。
薬液注入工法においては、砂地盤中の土粒子の間隙や空洞等の固結材を注入することにより、土粒子同士を連結一体化して強化すると共に間隙をうめて地下水の流動を阻止して湧水を防止する。また、軟弱地盤に固結剤が楔を打ち込むように枝状に割って入って周辺地盤を圧密強化すると共に固結剤の強度発現による相乗効果で改善して地耐力を向上させるものである。
【0030】
しかしながら、従来の薬液注入工法は、その効果が地盤条件によって左右されることが多く、信頼性に乏しい工法であった。その要因は、固結剤が地盤中に放出されると人為的に制御することができないため「糸の切れた凧」と同様で改良対象外であっても抵抗の小さい場所から注入していき、均一にならないこともあった。また、この要因が明らかでありながら、長年欠点を改善することができなかった。
【0031】
注入する薬液の種類と特徴について説明する。
〔薬液の形態〕
薬液の形態として、砂質土のように比較的大きな間隙への注入に適した「溶液型」と、粘性土のように間隙がごく小さい土質に適した「懸濁型」がある。なお、間隙のさらに大きな礫層では「懸濁型」を先行注入してあら詰めした後「溶液型」を注入して止水性を高める複合注入的に使用することもある。
【0032】
〔ゲルタイム〕
薬液注入には主剤と硬化剤が混合されて時間の経過に伴って粘性を高めながら次第に流動性を失い(ドロドロ状)やがて固結する。この混合から流動性を失うまでの経過時間を「ゲルタイム」という。
【0033】
ゲルタイムは薬液が地盤の間隙内に広い範囲で浸透させるか、あるいは限定した範囲に止めるかによって経験的に選択するが、間隙の大きさによって浸透性が異なるため地盤の状況によって選択する。
瞬結薬液:60秒以内に流動性を失う(固結)。
中結薬液:10分以内に流動性を失う。
緩結薬液(長結):流動性を失うまでに10分以上かかる。
【0034】
発明者は、従来解消出来なかった下記の点を改善したものである。
(1)内管体のシール性の改善
前述の特許文献2記載の薬液注入工法では、シール注入後地盤上段から薬液を注入するため、注入した地盤自体がパッカー効果を発揮するシステムであり、高い注入効果を得ることができる。しかしながら、内管外面に焼き付けたシール材と外管(ストレーナ管)との内面が嵌合する装置にしたため、地下水圧で細粒土が管内に流入すると内管が抜き差ししにくい点が生じる。そこで、この点を解消するため本発明を開発したものである。
【0035】
(2)地盤改良にゲルタイム全域(瞬結から緩結材料)を使用可能にする。
発明者は、薬液注入工法は薬液の形態やゲルタイムが注入効果に及ぼす影響が大きいことを考慮して薬液を開発するとともに混合するまでは粘性が高まらない工法を可能にするべく、本発明の地盤改良用薬液注入管を創案したものである。すなわち、地盤条件に応じて、「溶液型薬液、懸濁薬液」の使用やゲルタイムも「瞬結〜緩結」までの全域の薬液を使用可能にする方法として内管体を従来の単管に加えて二重管を開発し、しかも、特許文献2記載の技術のように内管にシール材を焼き付けずに抜き差しを容易にしている。
【0036】
(3)外管体先端からの土砂の流入防止
ストレーナ管先端が開放状態であると内管の上下動や着脱の際に土砂が管内に流入して作業を困難にするが、本発明ではこれを防止するため特殊な逆止弁を設けることが好ましい。
【0037】
(4)内管体の抜け出し防止
ボーリングや注入時に外管体に嵌合している内管体が注入圧力で抜け出し現象が生じて作業に支障をきたすことがあるため、スイベルと内管体の間に抜け出し防止金具を装着したスイベルサブを設ける。
【0038】
(5)内管体の逆回転による外れ防止
外管体と内管体の嵌合状態のためボーリング中に微細砂が入り込むが、外管体の回転により内管体のネジが逆回転して抜ける現象が起きるのを防止する装置をスイベルサブの機能に加えることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の地盤改良用薬液注入管によれば、前記外管体を、一方の外管部材の端部を他方の外管部材の端部内に挿入して結合させた構成の外管部材の結合体とし、結合状態の一方の外管部材の端部および他方の外管部材の端部には、対応箇所に外管体内部から外部に連通するストレーナ孔を形成し、かつ、一方および他方の外管部材の端部同士の間に通常時はストレーナ孔を閉じ、外管体の内圧が外圧より高いときにストレーナ孔を開く弁部材を装着し、内管体の先端部の側面には、先後に間隔を置いて外管体の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材を設け、かつ、その間隔内位置に内管体の内部から側面に連通する側方向きの吐出孔を設け、薬液注入時に圧送ポンプ等から内管体内に加圧した薬液を導入することにより、該薬液を前記側面吐出孔から吐出してシール部材間の外管体内の内圧を上げ、ストレーナ孔の前記弁部材を開き、これによって、当該ストレーナ孔から薬液が外管体の外部の周囲の地盤内に注入されるようにしている。
【0040】
したがって、外管体および内管体に対して地盤をボウリングして挿入する際の圧力をあまりかけない削孔時や薬剤注入前の状態では前記弁部材が閉じた状態であり、外管体外の水圧が大きいほど弁機能が高まるので、地盤内の圧力で外管体内にストレーナ孔から土砂や泥水が入らず、内管を上下動させるのに障害にならない。
【0041】
また、内管体内に圧力を加えることによって、ストレーナ孔の弁部材が開いて地盤内にシールグラウトや薬液を十分に注入することができる。
【0042】
なお、外管体先端にボーリングビットを設けてその外管体の回転によって削孔するときに削孔水を送り込む場合、内管体の先端開口(第2の吐出孔)から主に削孔水が出て外管体のストレーナ孔の弁部材が開くことがなくストレーナ孔から削孔水が出ず、削孔に支障が起こらない。
【0043】
また、内管体先端の先方向きの第2の吐出孔を開口して、その第2の吐出孔を閉鎖可能な構造を設けて、削孔時には第2の吐出孔から削孔水を吐出してボーリングビットによってスムーズに削孔し、一方、薬液注入時は、第2の吐出孔を閉じて土砂の管内への流入を防ぐと共に確実に薬液を地盤に注入することができる。
また、前記削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造は、外管体および内管体の削孔時に対応する位置に、一方に回転止め突起を形成し、他方に回転止め溝を形成したものにできる。
【0044】
また、前記外管体は、一方の外管部材の端部の外周面に雄ネジが形成され、かつ、この外周面にストレーナ孔を覆う弾性材からなる弁部材を設け、他方の外管部材の端部の内周面に雌ネジが形成されたものとして、前記雄ネジを前記雌ネジに螺合させて一方および他方の外管部材同士を連結して、これら一方および他方の外管部材の端部同士によって弁部材を挟む位置関係にしたことによって、弁部材を外管部材の端部同士の間に挟んで保護することができ、所定深度に位置した地盤内の土砂と弁部材の間に摩擦が働かないため破損を防止できる。また、外管部材同士を外せば弁部材を露出させて簡単に取り替えることができるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0045】
また、前記第2の吐出孔を閉鎖可能な構造は、第2の吐出孔の内径よりも大径であって、下方に先方を向けた内管体内を自重で落ちていって第2の吐出孔に嵌り込む弁部材であるものにして、簡単な構造にできる。
【0046】
また、本発明においては、内管体は、第1の内管体の外側に第2の内管体を設けた内外二重管構造であって、第1の内管体内の空間を第1の通路とし、該第1の内管体外周面と第2の内管体内周面との間の空間を第2の通路として、これら第1の通路および第2の通路にそれぞれ液体を送液可能とし、内管体の先端部には、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された液体を内部空間で合流させて混合するためのモニターを設け、このモニターに、先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材の間隔内位置にモニターの内部から側面に連通する側方向きの吐出孔を設けた構造にして、モニターにて薬液を混合できるようにしてゲルタイムによらずに薬液を選択でき、適切な薬液注入ができる。
【0047】
前記の第1の通路および第2の通路の一方に主剤を他方に硬化剤を送液するものとし、内管体の先端部のモニターでは、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された主剤と硬化剤からなる薬液を内部空間で合流させて混合し、このモニター側面に設けられた複数のシール部材の間隔内位置の側方向きの吐出孔から外管体のストレーナ孔に向けて混合した薬液を吐出するようにできる。
【0048】
また、外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター先端部に先方向きに第2の吐出孔を開口し、モニター内に先後動して第2の吐出孔を閉鎖可能な可動弁を設け、当該可動弁は先面および後面が閉鎖された中空体であって先部側面および後部側面に中空内への連通孔が形成され、かつ周面にモニター内とのシール部材が設けられて、可動弁全体が弾性体によって後方向きに弾発されており、先端部で前記第2の吐出孔を閉鎖可能で、かつ、後端部で第1の内管体の先端開口を閉鎖可能に構成されていることによって、第2の吐出孔の閉鎖構造を内管への液体の注入圧力によって駆動制御ができ、別途に弁部材を装着しなくても良いため、使い勝手が良い。
【0049】
本発明において、前記外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター先端部に先方向きに第2の吐出孔を開口し、モニター内に先・後移動して第1の内管体の先端開口および第2の吐出孔を開閉可能な可動弁を設け、当該可動弁は先面および後面が閉鎖された中空体であって先部側面および後部側面に中空内への連通孔が形成され、かつ周面にモニター内とのシール部材が設けられて、可動弁全体が弾性体によって後方向きに弾発されており、先端部で前記第2の吐出孔を開閉可能で、かつ、後端部で第1の内管体の先端開口を開閉可能に構成され、外管体を回転させてボーリングビットによる削孔時には、可動弁が第1の通路を閉鎖した状態で、前記の第2の通路内に削孔水を流し、その削孔水を可動弁における後部側面の連通孔から中空内さらには先部側面の連通孔を通って、削孔水を流してボーリングに供給し、一方、薬液の注入時には、前記の第1の通路と第2の通路とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって可動弁を駆動して第1の通路を開弁させかつ第2の吐出孔を閉鎖し、前記主剤と硬化剤をモニター内で混合し、側面向きの吐出孔から混合した薬液を外管体のストレーナ孔を経由して地盤内に供給するようにでき、薬液の注入を複雑な制御装置を要することなく適切に施工することができる。
【0050】
本発明において、前記外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター内には先後移動して第2の吐出孔を開閉可能な弁体と、該弁体を先方に付勢するスプリングとを設け、モニター内周面に前記側方向きの側面吐出孔よりも先方位置に弁座を設け、前記弁体がモニター内で先方に位置するときにスプリングの付勢力によって前記弁体が弁座に密接して第2の吐出孔が閉鎖し、それと共に、外管体の先端部の逆止弁取り付け部の内側部に当接部(クロス弁座)を設け、前記弁体が当接部に当接して前記スプリングの付勢力に抗して前記弁体がモニター内で後方に移動したときに前記弁体が弁座から離れて前記密接が解除され、これによって、第2の吐出孔が開放する構造にできる。それと共に、前記外管体の回転に連動してボーリングビットを回転させる削孔時には、前記内管体を先方に移動させて、前記外管体先端部内に前記モニターを位置させ、複数のシール部材と前記外管体の先端部の内周面との密接で前記モニターの側面吐出孔を閉鎖し、かつ、前記モニター内の弁体を前記当接部に当接させることによって前記弁体を弁座から後方に移動させて第2の吐出孔を開放した状態とし、前記内管体の第1の通路および第2の通路に削孔水を流し、その削孔水をモニター内の弁体と座面との間から第2の吐出孔に向けて流してボーリングビットに供給し、一方、薬液の注入時には、前記内管体を外管体内で後方に移動させて前記モニターの側面吐出孔の先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材の間隔内位置にストレーナ孔が位置するようにし、かつ、モニター内でスプリングの付勢力で弁体が弁座に密接する状態として、第1の通路と第2の通路とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって前記主剤と硬化剤をモニター内で混合し、側方向きの側面吐出孔から混合した薬液を外管体のストレーナ孔を経由して地盤内に供給するようにできる。
この構成によって、内管体を下降・上昇させれば(先方に向けて進めれば)弁体の開閉を確実に行なうことができること等から、削孔・注入時の操作性や誤動作が改善され、メンテナンスも容易であり、モニター制作費のコストダウンに役立てることができる。
また、注入完了後は、内管体を押し下げるだけで削孔時の状態に復帰し、いつでも削孔、シール注入、硬化剤注入を合理的に繰り返し実行することが可能になる。
また、注入工事でのこの繰り返し作業を可能にすることが重要要素である。
【0051】
また、本発明においては、外管体の先端の先端吐出孔にはボーリングビットによる削孔時に供給する削孔水の圧力で開弁し、外部から先端吐出孔への流入を遮断する逆止弁を設けて土砂がボーリングビットから外管体内に流入することを防止して作業性低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管を用いた注入プラント設備の全体構成図である。
【図2】(a)は第1の実施形態に係る(第1の施工形態に適用する)地盤改良用薬液注入管の組み立て図、(b)は(a)のA−A線に沿う横断面図である。
【図3】同地盤改良用薬液注入管の分解説明図である。
【図4】同地盤改良用薬液注入管における外管体を構成する外管部材の説明図である。
【図5】図2(b)のB−B線に沿う拡大断面図であって、同地盤改良用薬液注入管における外管体の端部同士の接続構造の説明図である。
【図6】同地盤改良用薬液注入管の吊下げ支持用のスイベルおよびスイベルサブの説明図であって、(a)が縦断説明図、(b)が(a)のA方向視拡大説明図、(c)が(a)のB方向に沿う横断面図である。
【図7】同地盤改良用薬液注入管を用いた削孔手順の説明図である。
【図8】同地盤改良用薬液注入管を用いたシール手順(シールグラウト注入)の説明図である。
【図9】図8のシール手順時のモニターおよびボーリングビット周辺への状態説明図である。
【図10】同地盤改良用薬液注入管を用いた薬液注入手順の説明図である。
【図11】(a)〜(e)は、同地盤改良用薬液注入管の削孔時の内管体および外管体の継ぎ足し手順の各説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る(第2の施工形態に適用する)地盤改良用薬液注入管の説明図であり、(a)が組み立て図、(b)が外管体の分解図、(c)が内管体の分解図である。
【図13】同地盤改良用薬液注入管の削孔時の説明図であり、(a)が削孔手順の説明図、(b)削孔水の流通順路の説明図である。
【図14】同地盤改良用薬液注入管のシール手順と主剤・硬化剤の流通順路の説明図である。
【図15】同地盤改良用薬液注入管による地盤改良用薬液の注入手順の説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る(第3の施工形態に適用する)地盤改良用薬液注入管の組み立て図であって同地盤改良用薬液注入管を用いた削孔手順の説明図である。
【図17】図16の地盤改良用薬液注入管を用いたシール手順(シール注入・硬化剤注入)の説明図である。
【図18】図16の地盤改良用薬液注入管を構成するモニターの組立図である。
【図19】同モニターの分解図である。
【図20】同モニターを収容して外管体の先端部にボーリングビットを取り付けるためのモニター外管であり、(a)が縦断面図、(b)が(a)のA−A’線断面図である。
【図21】逆止弁およびボーリングビットの縦断した説明図であり、(a)が削孔中、(b)が注入中の逆止弁作動状態を示し、(c)がボーリングビットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0054】
図1は実施形態に係る地盤改良用薬液注入管を用いた注入プラント設備の説明図である。図1に示すように、搬送車10上に注入設備を1セット設けている。
【0055】
注入設備には、発電して電源を供給する電源機能(動力発電機12、配電盤14)と、使用材料や配合水をミキサーに送り混合して一次貯留沈殿を防止する薬液調合機能(ミキサー・貯液・貯水タンク16・送水ポンプ18・ギヤポンプ)と、ボーリング時の掘削水や注入時の主剤・硬化剤を圧送し、これを切り換える送液機能(注入ポンプ20・分流器・サクション・デリバリホース)と、注入量と注入圧力を時々刻々デジタル表示すると共にグラフとしてチャート紙に記録する管理機能を備えた流量計22とを設けたものである。水は水道または給水車24から、材料は運搬車26を用いて搬送する。なお、この給水車24は水道水や河川水が使用できない場合に使用する。
【0056】
また、ボーリング機能としては、ボーリング機28に後述するスイベル58・注入管(内管体30、外管体32からなる)・モニター34・ボーリングビット(メタルクラウン)36を装着し、それに注入ポンプで送水しながら油圧で所定の深度まで削孔、設置する。注入時は、所定の薬液を圧入後、内管体30、外管体32、ボーリングビット36を油圧でステップアップあるいはステップダウンさせることができる。
【0057】
〔主要設備機器の役割〕
・ミキサー:薬液は「主剤」と「硬化剤」が必要でそれぞれ個別のミキサーで清水と混合し、沈殿しないで液状状態に保持するために使用する。主剤と硬化剤の配合量を変えることで固結時間(ゲルタイム)を変化させることができる。固結時間は、地盤の浸透性の違いによって変える。
【0058】
・注入ポンプ20:地盤をボーリングする際に清水(掘削水)を圧送し、薬液を注入する際には「主剤」と「硬化剤」を送り出すために使用する。
主剤と硬化剤は別々に送り、モニター34内で混合されて地中で固結する。
【0059】
・ボーリング機28:注入管・モニター34・メタルクラウン(ボーリングビット36)などの器具を装着した後、注入ポンプで静水を送りながらロッドに回転を与えつつ地盤に貫入圧(給圧)を掛けながらメタルクラウンの先端ビットによる回転掘削により地盤を「ボーリング」する機械である。
【0060】
・スイベル(ウォータスイベル)58:回転するロッドと注入ホースの間に装着し、ロッドが回転してもホースが捩れないようにするため、ロータリジョイントを用いて通液している。
【0061】
ロッド:ロッドに下記する二重管構造(内管体30と外管体32)の注入管を用いる。ロッドは、ボーリング時に清水(削孔水)を先端モニター34まで圧送し吐出させるパイプであり、所定の深度に設置する。続いて硬化剤を圧送して地盤中に吐出させるために使用する。すなわち、削孔と注入に兼用する。
【0062】
モニター34:二重管から送られてきた「削孔水」や「シール薬液」および「主剤」と「硬化剤」の流路を切り替えたり「主剤」と「硬化剤」を配合して均一に混合して反応させた後地盤中に吐出させるために使用する。
削孔水:ボーリング時にズリを地上に排出してロッドの冷却と摩耗防止を行なう。
【0063】
以下に、実施形態に係る地盤改良用薬液注入管の構成を説明する。
【0064】
本発明の第1の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管の説明図を図2〜図11に示し、第2の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管の説明図を図12〜図15に示す。
【0065】
図1に示すように、第1の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管は、周囲に複数の周面吐出孔(ストレーナ孔40…)を設けた外管体32と、該外管体32の内部に挿入した、先端部に少なくとも側方向きに側面吐出孔46を設けた内管体30とを有するものである。
【0066】
前記地盤改良用薬液注入管においては、前記外管体32は、一方の外管部材38の端部38aを他方の外管部材38の端部38a内に挿入して結合させた構成の外管部材38,38の結合体であって、結合状態の一方の外管部材38の端部38aおよび他方の外管部材38の端部38aには、対応箇所に外管体32内部から外部に連通するストレーナ孔40を形成し、かつ、一方および他方の外管部材38の端部同士の間に通常時はストレーナ孔40を閉じ、外管体32の内圧が外圧より高いときにストレーナ孔40を開く弁部材42を装着している。
【0067】
したがって、外管体32および内管体30をボーリングによって地盤中に挿入していて内管体30の圧力をあまりかけない削孔時や薬剤注入前の状態では前記弁部材42が閉じた状態であるので、地盤内の圧力が高くても外管体32内にストレーナ孔40から土砂や泥水が入らず、内管体30を上下動させるのに障害にならない。
【0068】
また、内管体30内に圧力を加えることによって、ストレーナ孔40の弁部材42が開いて地盤内にシールグラウトや薬液を十分に注入することができる。
【0069】
内管体30の先端部にモニター34を設けている。モニター34の側面には、先後に間隔を置いて外管体32の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材44を設け、かつ、その間隔内位置に内管体30の内部から側面に連通する側方向きの側面吐出孔46を設けている。
【0070】
薬液注入時に内管体30内に加圧された薬液が導入されて、該薬液を前記側面吐出孔46から吐出してシール部材(例えばOリング)44,44間の外管体32内の内圧を上げ、ストレーナ孔40の前記弁部材42を開くことによって当該ストレーナ孔40から薬液が外管体32の外部の周囲の地盤内に注入されるようにしている。
【0071】
なお、外管体32先端にボーリングビット36を設けてその外管体32の回転によって削孔するときに削孔水を送込む場合、内管体30の先端開口(第2の吐出孔50)から逆止弁74が開いて外管体32の吐出孔48から主に削孔水が出るものであって、ストレーナ孔40についてはその弁部材42が開かずに当該ストレーナ孔40から削孔水が出ない。したがって、削孔水がボーリングビット36に集中してスムーズな削孔ができかつ削孔水に無駄が生じない。
【0072】
各部を説明する。
外管体32の先端部に、先方向きに開口する先端吐出孔48と、先端が削孔刃先となるボーリングビット36を設け、内部に削孔水を通す流路の機能を設けている。
【0073】
また、内管体30の先端部のモニター34に、先方向きに開口する第2の吐出孔50と、当該第2の吐出孔50を閉鎖可能な構造の弁体(例えばスチールボール)52とを設けている。
【0074】
外管体32と内管体30には削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造54をスイベルサブ56に設けている。
【0075】
詳細には、図2〜図5に示すように、前記外管体32は、一方の外管部材38の端部38a外周がアンダーカット形状を呈してその外周面に雄ネジ38bが形成されいて、かつ、この外周面にストレーナ孔40を覆う弾性材からなる弁部材42を設けている。弁部材42としては外管部材38端部38aを取り囲んでストレーナ孔40を覆うバンド状・帯状弾性材の弁部材を巻き付けて用いてもよい。前記外管体32は、同じものを複数継ぎ足し、削孔距離応じた長さにして使用する。図4では、繋がれる外管体32の一つを示し、図5には、繋ぐ部分の詳細を示しいる。
【0076】
当該端部38aの細径になった外周面の段部近くに外ネジ構造で雄ネジ38bが形成され、そのさらに端面側(先方)ストレーナ孔40が穿設されていて、そのストレーナ孔40を外側から包むようにバンド状弾性材(ゴムやエラストマーで構成)の弁部材42で開閉可能に塞いでいる。
【0077】
また、他方の外管部材38の端部38a内周が段状に拡径されている段部付近にストレーナ孔40が穿設され、かつ、その端面側(後方)の内周面に内ネジで雌ネジ38cが形成されている(図4参照)。
【0078】
図5に示すように、外管体32の構造において、複数の外管部材38、38同士をネジ結合は、一の外管部材38の端部38aの前記雄ネジ38bを他の外管部材38の端部38aの前記雌ネジ38cに螺合させて一方および他方の外管部材38,38同士を連結して、これら一方および他方の外管部材38,38のストレーナ孔40の形成された端部38a,38a同士によって弁部材42を挟む位置関係にしている。一方および他方の外管部材38,38の端部同士によって弁部材42を挟む位置関係にしたことによって、弁部材42を外管部材38,38の端部38a,38a同士の間に挟んで保護することができ、所定深度に位置した地盤内の土砂が弁部材42に掛からず破損を防止できる。また、外管部材38,38同士を外せば弁部材42を露出させて簡単に取り替えることができるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0079】
また、図6に示すように、作業時に外管体32および内管体30を組み立て、上下方向に向けて立てて下端を地盤に向けた状態にし、上端にスイベル58を設けて吊下げる。
前記削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造54は、外管体32および内管体30の上端部における削孔時に対応する位置に、一方の外管体32内側に回転止め溝54aを形成し、他方に内管体30外側に回転止め突起54bを形成したものである。回転止めの係止構造54は、上記の他、外管体32の内側に突起を内管体30外側に溝を形成するなどでも良い。
【0080】
また、スイベルサブ56は、外管体32に上端部に固定されていて、スイベル58に係合している。スイベル58は、内管体30の上端に液密に取り付けられていて、注入ポンプ18からのホースが接続されている。内管体30内に削孔時に静水を、シール時にシール材を、薬液注入時に主剤・硬化剤を圧送できるようになっている。
【0081】
具体的には、スイベルサブ56には、外管体32の上端の外管部材38Aの内面に回転止め溝54aが形成されている部分に対応するように、外面に吊り金具56aが溶接等によって固定されている。また、内管体30の上端はスイベル58に接続しているが、そのスイベル58の下側に設けた内管体30の外面には、受け棒60を水平方向に突出させて棒体部であって、吊り金具56aの切り欠き56bに係合させる。切り欠き56bは、図6(b)に示すように、上方から見て左回転方向に開いており、外管体32を内管体30に対して(上面視で)ほぼ20度左回転させれば、受け棒60が切り欠き56bに嵌り込み、逆に外管体32を内管体30に対して(上面視で)ほぼ20度以上右回転させれば、受け棒60が切り欠き56bから離脱させて内管体30を外管体32から外すことができる。
【0082】
受け棒60と吊り金具56aは、外管体32を吊下げて作業性を向上させるとともに次の機能を兼ね備えている。
受け棒60と吊り金具56aが無い場合の継ぎ足し作業は、内管体30,外管体32が別々に動くためワンタッチの作業ができないことから着脱時ともに外管体32を支える手間がかかり作業能率を低下させる。
この状況を改善する方法として、既にボーリング機28に装着されている内管体30に繋ぐ側の内管体30を載せて右回転させるが、この際、繋ぐ側の外管体32は吊り金具56aと一体になっており吊り棒60を右回転させるができ、内管体30も一体になっているため同方向に回転してボーリング機28側の内管体30にワンタッチでねじ込むことが可能になる。
続いて、受け棒60から吊り金具56aを20°左回転させて受け棒60から外してボーリング機28側の外管体32に接続することが早くすることができる。
注入が完了して内管体30,外管体32を取り外す際は、外管体32を外して受け棒60に吊下げた状態で内管体30を容易に外すことができる。
【0083】
〔内管体30の二重管構造〕
ここで、図2〜図3に示すように、実施形態に係る薬液注入管の内管体30は、第1の内管体62の外側に第2の内管体64を設けた内外二重管構造である。内管体30では、第1の内管体62内の空間を第1の通路66とし、該第1の内管体62外周面と第2の内管体64内周面との間の空間を第2の通路68としており、これら第1の通路66および第2の通路68にそれぞれ液体をスイベル58から個別に送液可能としている。後述のように、スイベル58には、別のホースを介して主剤と硬化剤が流入するようになっている。なお、本発明においては、内管体30には削孔時や長いゲルタイムの薬液注入(単相注入)時には単管を用いて、異なるゲルタイムの薬液を使用する(複相注入)薬液注入時に二重管を用いても良い。また内管体30は、二重管の他、三重以上の多重管でも良い。
【0084】
〔モニター34〕
内管体30の先端部には、前記第1の通路66および第2の通路68を通して送液された液体を内部空間で合流させて混合するためのモニター34を設け、このモニター34に、先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材(間隔を置いた一対のOリング)44、44の間隔内位置にモニター34の内部から側面に連通する側方向きの側面吐出孔46を設けた構造としている。
【0085】
前記の第1の通路66および第2の通路68の一方に主剤を他方に硬化剤を送液するものとし、内管体30の先端部のモニター34では、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された主剤と硬化剤からなる薬液を内部空間で合流させて混合し、このモニター34側面に設けられた複数のシール部材44、44の間隔内位置の側方向きの側面吐出孔46から外管体32のストレーナ孔40に向けて混合した薬液を吐出するようにしたものである。
【0086】
このモニター34に、先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材44、44の間隔内位置にモニター34の内部から側面に連通する側方向きの側面吐出孔46を設けた構造にしているので、モニター34にて薬液を注入管の先端部に送込んだ後に混合できるようにしているので、従来のように注入する内管体30に入る前に混合する方式のようにゲルタイムの問題が生じることがない。よって、薬液混合時のゲルタイムを考慮することなく薬液を選択でき、地盤に最も適切な薬液を選択して注入できる。
【0087】
〔第2の吐出孔50の弁体52〕
前記モニター34において、第2の吐出孔50を閉鎖可能な構造は、第1の実施形態(第1の施工形態)では、第2の吐出孔50の内径よりも大径であって、下方に先方を向けた内管体30内を自重で落ちていって第2の吐出孔50に嵌り込む弁体52具体的にはスチールボールである。弁体52の装着時には、スイベル58を内管体30の後端から外し、上方に開口した後端から内管体30内に弁体52を落とし込んで簡単な手順で第2の吐出孔50を塞ぐことができる(図9の状態参照)。
【0088】
このように内管体30先端の先方向きの第2の吐出孔50を開口して、その第2の吐出孔50を閉鎖可能な簡単な構造の弁体52を設けているので、削孔時には第2の吐出孔50から削孔水を吐出してボーリングビット36によってスムーズに削孔し、一方、薬液注入時は、第2の吐出孔50を弁体52で閉じて確実に薬液を地盤に注入することができる。また、弁体52は、下方に先方を向けた内管体30内を自重で落ちていって第2の吐出孔50に嵌り込むものであるので、簡単な構造で、経済性が高い。スチールボールであるので堅牢で再使用可能なメンテナンスフリー化できる。
【0089】
〔外管体32の逆止弁74〕
また、外管体32の先端吐出孔48には逆止弁74を設けている(図2、図9参照)。外管体32を内管体30と共に回転させて地盤に突き立てたボーリングビット(メタルクラウン)36を回転させる削孔時(ボーリング時)に削孔水を供給する。この際、逆止弁74は、上記の削孔水の圧力で先端吐出孔48を開弁してボーリングビット36に削孔水を供給し、一方、削孔水を圧送していないときに、地盤内の浸透水がその圧力によって先端吐出孔48から外管体32や内管体30内に流入するのを遮断する機能を有している。
【0090】
具体的には、逆止弁74は、先端吐出孔48に対して先方から後方向きに、樹脂または金属製の弁体74aがスプリング部材74bによって付勢されて先端吐出孔48押圧されている。逆止弁74のスプリング部材74bの付勢力は、削孔時に削孔水の送水圧力によって開弁するように設定されている。
【0091】
したがって、外管体32の先端の先端吐出孔48にはボーリングビット36による削孔時に供給する削孔水の圧力で開弁し、外部から先端吐出孔への流入を遮断する逆止弁74を設けているので、土砂がボーリングビット36から外管体32内に流入することを防止して作業性低下を防止することができる。
【0092】
第1の実施形態(第1の施工形態)に係る地盤改良用薬液注入管による地盤改良施工方法の手順を説明する
〔削孔〕
図7に示すように、外管体32の下端に外管モニター(外管部材38の接続用下端部)とボーリングビット(メタルクラウン)36を取り付け、内管体30の下端にモニター34を取り付けた当該内管体30を外管体32内に挿入する。
【0093】
図2に示すように、内管体30および外管体32をボーリング機28に取り付けて、それらの上端に取り付けたスイベル58を介して注入ポンプ20で削孔水を送水する。
【0094】
削孔水は、図7に示すように、スイベル58から内管体30、内管体30下端のモニター34に入り、削孔水の圧力で逆止弁74を開弁して、その逆止弁74からボーリングビット36を通って地中に吐出する。同時に、ボーリング機28は、外管体32を回転させてボーリングビット36を回転駆動するので、地盤を削孔する。図7に示すように、削孔水は外管体32と地盤孔の間を通ってズリと共に地盤面76に出てくる。
【0095】
この場合、削孔深度に応じて、内管体30および外管体32を継ぎ足して所定の深度まで削孔する。
【0096】
内管体30と外管体32のボーリング手順を図11によって説明する。
【0097】
図11(a)に示すように、削孔準備・削孔開始時には、ボーリング機28を据え付け、モニター34、内管体30、外管体32、スイベル58を取り付けて、ボーリングを開始する。
【0098】
当初設置した内管体30、外管体32の長さからこれ以上削孔ができなくなったら、ボーリング機28を停止して、スイベル58を取り外し、図11(b)に示すように、スイベル58にスイベルサブ56を継ぎ足して(吊り金具56aを切り欠き56bに係合して吊る)、スイベルサブ56に内管体30の接続部を継ぎ足す。そして、図11(c)に示すように、スイベルサブ56に外管体32を継ぎ足す。外管体32は、外管部材38を継ぎ足して延ばす。
【0099】
そして、図11(d)に示すように、スイベル58に継ぎ足した内管体30をボーリング機28側の内管体30に接続する。
【0100】
次いで、図11(e)に示すように、スイベルサブ56の吊り金具56aを切り欠き56bから外して、スイベルサブ56に接続した外管部材38を外管体32に接続する。この接続の際、ストレーナ孔40を合わせる。係止構造54(回転止め突起54b、回転止め溝54a)を係合させて、ボーリング機28によって、内管体30および外管体32を同回転方向に回転させる際に両者を同時に回転させてボーリングするようにしている。
【0101】
〔シール剤注入〕
シール注入開始は、削孔完了状態のまま注入ポンプ20を削孔水からシール薬液に切り替えて開始することができ、シール状況に応じてストレーナ孔40から注入することができる。
そして、図9に示すように、弁体52を落とし込んで第2の吐出孔50を塞いだ状態とし、内管体30内の第1の通路66および第2の通路68からシール薬液の主剤と硬化剤を注入して(同一液で良い場合は通路66と68に同じ液を注入する)、シール部材44、44間の側面吐出孔46から外管体32内に吐出する。
この際、第2の吐出孔50から外管体32先端の逆止弁74に圧力が微小にしか加わらないため塞がっており、前記側面吐出孔46から外管体32内に吐出するシール剤の圧力が強いので前記外管体32のストレーナ孔40の弁部材42が開弁して、地盤内にシール薬液の注入ができる。内管体30の側面吐出孔46の位置を下方から順次ストレーナ孔40に合わせて内管体30を引き抜いていき、順次、各ストレーナ孔40の弁部材42を開いて、地盤中にシール剤を注入する。
シール注入は最下端から開始し、内管体30を改良範囲上端まで引き抜きながら注入し、外管体32の外側の間隔を充填する。
【0102】
また、外管体32を構成する外管部材38…は実施形態では外径が40.5mmで、それぞれ50cmの長さで形成されている。したがって、ストレーナ孔40の間隔は、(端部38aの長さが重なる)50cm間隔になっており、シール剤の地盤中への注入は50cm間隔になる。外管体32の長さは一例であり、施工に応じて長さを設定できる。
【0103】
注入範囲は図8に破線で示す範囲になる。
〔薬液注入手順〕
図10に示すように、弁体52を落とし込んで第2の吐出孔50を塞いだ状態で、内管体30内の第1の通路66および第2の通路68のそれぞれに地盤改良剤薬液の主剤と硬化剤を注入して(同一液で良い場合は通路66と68に同じ液を注入する)、モニター34内で混合して、シール部材44、44間の側面吐出孔46から外管体32内に吐出する。
【0104】
この際、第2の吐出孔50から外管体32先端の逆止弁74に圧力が微小にしか加わらないため塞がっており、前記側面吐出孔46から外管体32内に吐出する改良材薬液の圧力が強いので前記外管体32のストレーナ孔40の弁部材42が開弁して、地盤内に地盤改良剤の薬液の注入ができる。
【0105】
内管体30を地盤面76に近い、改良範囲の最上段から側面吐出孔46の位置を順次ストレーナ孔40に合わせて内管体30を段階的に下げていき、順次、最下段までの各ストレーナ孔40の弁部材42を開いて、地盤中に地盤改良材の薬液を注入する。
【0106】
また、外管体32を構成する外管部材38…は実施形態ではそれぞれ50cm長さで形成されている。したがって、ストレーナ孔40の間隔はほぼ50cm間隔になっており、地盤改良剤薬液の地盤中への注入は50cm間隔になる。
【0107】
次に第2の実施形態(第2の施工形態)に係る薬液注入管を説明する。
【0108】
この薬液注入管は、図12に示すように、外管体32の先端部にボーリングビット36を設け、前記モニター34先端部に先方向きに第2の吐出孔50を開口している点は第1の実施形態と同様であるが、モニター34内には、弁体52ではなく、先・後移動して第1の内管体62のモニター34内への先端開口およびモニター34の第2の吐出孔50を開閉可能な可動弁78を設けたものである。(a)は削孔状態の可動弁78が後退した組み立て図、(c)では注入状態の可動弁78が前進した分解図を示している。
【0109】
当該可動弁78は先面および後面が閉鎖された中空体であって先部側面および後部側面に中空内への連通孔78aが形成され、かつ周面にモニター34内に摺接するシール部材78bが設けられて、可動弁全体がスプリング等の弾性体(図示省略)によって後方向きに弾発されている。また、可動弁78は、その先端部で前記第2の吐出孔50を開閉可能で、かつ、後端部で第1の内管体62の先端開口に当接・離脱して第1の通路66を閉鎖・開放可能に構成されている。
【0110】
第1の実施形態と同様に、前記内管体30は第1の内管体62および第2の内管体64からなる二重管構造である。また、モニター34は、第2の内管体64の先端に取り付けられていて、側面吐出孔46が開いていて、その側面吐出孔46の前後にシール部材44が設けられている。
また、可動弁78の側面のシール部材78b〜78bは、後方部、中央部、先端部の3箇所設けられており、後部の連通孔78aに近接する前方位置に後方部のシール部材78bが設けられ、前部の連通孔78aの前後に間隔を置いて、中央部のシール部材78bと先端部のシール部材78bが設けられている。後方部、中央部のシール部材78b、78b外周がモニター34内面とのシールをし、先端部のシール部材78bが第2の吐出孔50をシールできる外径に形成されている。
【0111】
図13に示すように、モニター34は、外管体32を回転させてボーリングビット36による削孔時には、図示しない、弾発体で可動弁78が後方向きに付勢されることによって内管体62内の第1の通路66を閉鎖した状態となる。このように、可動弁78によって第1の通路66は閉鎖された状態で、内管体30中の前記の第2の通路68内に削孔水を所定圧力で流す。第2の通路68に液圧が加わるが、第1の通路66に液圧が加わらないので、つまり、可動弁78には前方向きの圧力が加わらず、第1の通路66を閉鎖した状態を維持する。このように可動弁78を初期位置のままになる。
このとき、前記可動弁78側面のシール部材78b〜78bの後方部、中央部のものは、第2の通路68と側面吐出孔46との間に位置してそれら間の連通を遮断する。シール部材78bの後方から第2の通路68が、後部の連通孔78aに連通し、可動弁78の内部中空を介して前部の連通孔78aから削孔液が先端部のシール部材78bの外周とモニター34内面との間を通って、前記第2の吐出孔50からボーリングビット36に向けて供給するようになっている。ボーリングビット36周囲の削孔水は外管体32と地盤孔の間を通って地盤面76に排出される。
【0112】
図14に示すように、シール剤の注入時には、前記第1の通路66と第2の通路68とにシール薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって弾発体の弾発力に抗して可動弁78が駆動して押し下がる。これによって、第1の通路66を開弁させかつ第2の吐出孔50を閉鎖する。第1の通路66と第2の通路68が可動弁78の後方で連通するので、前記主剤と硬化剤がモニター34内で混合される(この際、可動弁78の中空及び連通孔78aはモニター34内でシール部材78bによって閉鎖状態になっている)。側面向きの側面吐出孔46から混合されたシール薬液が外管体32のストレーナ孔40を経由して孔壁と外管体32外周との間隙内および地盤内の空洞等に供給される。下方から順次段階的に内管体30を引き上げて各ステップで地盤内の空洞等にシール剤を注入する。
【0113】
シール剤注入後は、図15に示すように、地盤改良用薬液の注入をする。前記第1の通路66と第2の通路68とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって可動弁78を駆動して第1の通路66を開弁させかつ第2の吐出孔50を閉鎖し、前記主剤と硬化剤をモニター34内で混合し、側面向きの側面吐出孔46から混合した薬液を外管体32のストレーナ孔40を経由して地盤内に供給する。上部から順次内管体30をステップ的に下降させてステップ毎に注入を行なう。
【0114】
この第2の実施形態によれば、可動弁78全体が弾性体によって後方向きに弾発されており、先端部で前記第2の吐出孔50を閉鎖可能で、かつ、後端部で第1の内管体62の先端開口を閉鎖可能に構成されていることによって、第2の吐出孔50の閉鎖構造を内管への液体の注入圧力によって駆動制御ができ、別途に弁部材を装着しなくても良いため、使い勝手が良い。また、薬液の注入を複雑な制御装置を要することなく適切に施工することができる。
【0115】
次に、本発明の第3の実施形態(第3の施工形態)について説明する。
図16が該第3の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管の組み立て図であって同地盤改良用薬液注入管を用いた削孔手順の説明図である。また、図17は、その地盤改良用薬液注入管を用いたシール手順(シール注入・硬化剤注入)の説明図である。また、図18は地盤改良用薬液注入管を構成するモニターの組立図である。図19は同モニターの分解図である。また、図20は、モニター外管の説明図であり、(a)が縦断面図、(b)が(a)のA−A’線断面図である。また、図21は、逆止弁およびボーリングビットの縦断した説明図であり、(a)が削孔中、(b)が注入中の逆止弁作動状態を示し、(c)がボーリングビットの説明図である。
【0116】
図16に示すように、第3の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管は、外管体32の先端部にボーリングビット36を設け、前記モニター34内には先後移動して第2の吐出孔を開閉可能な弁体52と、該弁体52を先方に付勢するスプリング84とを設けている。
【0117】
モニター34の構造を説明する。
図18に示すように、モニター34は注入管の内管体30の先端に接続されるモニター内管34bと外管体32の先端に接続されるモニター外管34aとを有して構成される。このモニター外管34aの先端部(下端部)にクロス弁座34eを内蔵しており、内管34bは、モニター内部外管34cおよびモニター内部内管34dの他、モニター内部内管34d内に弁体52とこの弁体52を上下動させるスプリング84を装填して構成されている。
【0118】
モニター内部外管34cの外面に、シール剤や硬化剤を外管体32のストレーナ孔40へ誘導すると共に、削孔水シール剤および硬化剤を外管体32と内管体30との間隙に漏れる事態を防止するO(オー)リングからなるシール部材44が側面吐出孔46の上下に二段装着されている。
【0119】
さらに、モニター内部外管34cの内面には、スプリング84の後端を受けるスプリング受け80が前記側方向きの側面吐出孔46よりも後方に配置固定し、スプリング受け80に受けられたスプリング84が弁体52を先方に付勢する。また、モニター内部外管34cの内面側面吐出孔46より先方に位置してリング弁座82を配設固定し、リング弁座82の後面に漏れシールをするためのO(オー)リングからなるシール体44aを装着して、弁体52がモニター内部外管34c内で先方に位置するときにスプリング84の付勢力によってリング弁座82に密接して第2の吐出孔50を閉鎖するように構成されている。
また、モニター外管34aは、図18、図20に示すように、その後部に雌ネジ部にストレーナ孔40が形成され、外管体32先端部の雄ネジに螺合してストレーナ孔40同士を一致させるようになっている。モニター外管34aは外管体32に固定され、モニター外管34aの先端部でクロス弁座34eより先方内部に雌ネジが形成されている。クロス弁座34eは、モニター外管34a内壁から互いに間隔を置いた複数の腕部が軸中央に延びた受け用の弁座であり、弁体52が当たっても弁体52から弁座34e間を通って液の流通ができるようになっている。
【0120】
逆止弁74は、図21に示すように、外周本体の後部が段状に細径になった部分内に弁体74a、スプリング部材74bを設け、外周面に雄ネジを形成して、その雄ネジを前記モニター外管34aの先端の雌ネジに螺合して固定するようになっている。逆止弁74の外周本体の先端内周の雌ネジにボーリングビット36の後部の雄ネジを螺合して固定するようになっている。
【0121】
なお、弁体52は、図19(c)に示すように、弁棒52cを挟んで天板52aと下板52bとが先後に設けられ、天板52aの先面(下面)がリング弁座82に密接して水密が保てるようになっている。スプリング84は、同(b)に示すように、螺旋金属スプリングが好適である。また、モニター内管34bの内部外管34cがモニターの内管体30の外側の第2の内管体64先端に螺合や溶接等で固定される。また、モニター内管34bの内部内管34dは、内管体30の内側の第1の内管体62先端に接続されてモニター34内への液の流通と液同士の混合を確実にさせるものであるが、無くてもよい。
【0122】
上記のように、モニター内部外管34cの内周面に前記側方向きの側面吐出孔46よりも先方位置にリング弁座82を設け、前記弁体52がモニター34内で先方に位置するときにスプリング84の付勢力によって前記弁体52がリング弁座82に密接して第2の吐出孔50が閉鎖し、それと共に、外管体32の先端部のボーリングビット取り付け部(モニター外管34aおよび逆止弁74の本体)の内側部にクロス弁座(当接部)34eを設け、前記弁体52がクロス弁座34eに当接して前記スプリング84の付勢力に抗して前記弁体52がモニター34内で後方に移動したときに前記弁体52がリング弁座82から離れて前記密接が解除され、これによって、第2の吐出孔50が開放する構造にしている。
【0123】
第3の実施形態に係る地盤改良用薬液注入管を用いた作業時には、モニター34(モニター外管34a、モニター内管34b)の上流側に図16に示すように、外管体32と内管体30を接続し、その先には、図6に示したスイベル58やスイベルサブ56および図1の注入設備を接続し、さらに、モニター34下部に逆止弁74とボーリングビット36とを装着して削孔可能な状態に構成する。
【0124】
(1)動作について説明する。
削孔からシール注入時については図16〜17によって説明する。
【0125】
〔a〕削孔時
削孔時には、図16に示すように、前記内管体30を先方(下方)に移動させて、前記外管体32先端部に設けたモニター外管34a内にモニター内管34bを位置させる。複数のシール部材44と前記モニター外管34aの内周面との密接で前記側面吐出孔46を閉鎖し、かつ、前記モニター34内の弁体52を前記クロス弁座(当接部)34eに当接させる。これによって前記弁体52を押し上げてリング弁座82から後方に移動させて第2の吐出孔50を開放した状態とする。
前記内管体30の第1の通路66および第2の通路68に削孔水を圧送する。該通路66、68を流下したきた削孔水は、モニター34の第2の吐出孔50やクロス弁座34eに到達することができる。さらに、削孔水の圧力が高まると、逆止弁74を押し下げて、ボーリングビット36内を流下して地中に放出できる状態にある。すなわち、削孔可能状態にある。
この際、側面吐出孔46の先は、モニター外管34aの内壁とシール部材44,44で閉塞しているので、削孔水はストレーナ孔40方向に漏れることのない状態になっている。
【0126】
〔b〕シール注入状態
削孔完了状態は、削孔完了と同時に引き続いてボーリングビット36先端からシール注入可能状態である。
シール注入を任意のストレーナ孔40から注入する必要が生じた場合は、図17に示すように、内管体30を引き上げてモニター34の側面吐出孔46をストレーナ孔40に合わせて、引き続きシール注入を続行可能な状態になる。この場合、モニター34内でスプリング84の付勢力で弁体52がリング弁座82に密接する状態として、内管体30の第1の通路66と第2の通路68とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって前記主剤と硬化剤をモニター34内で混合し、側方向きの側面吐出孔46から混合した薬液を外管体32のストレーナ孔40を経由して地盤内に供給可能にする。
【0127】
上記の動作が可能なため、削孔・注入時の操作性や誤動作が改善され、メンテナンスも容易であり、モニター制作費のコストダウンに役立てることができる。
また、注入完了後は、内管体30を押し下げるだけで削孔時の状態に復帰し、いつでも削孔、シール注入、硬化剤注入を合理的に繰り返し実行することが可能になる。
また、注入工事でのこの繰り返し作業を可能にすることが重要要素である。
【0128】
(2)削孔液注入手順〔A〕〜〔D〕を説明する。
【0129】
〔A〕削孔
図16の削孔時の状態でボーリング機28に薬液注入管をセットし、図1の注入設備までの配管を完了させ、注入ポンプ20を稼働させる。
この際、弁体52は押し下げられた状態のため、注入ポンプ20から押し出された削孔水が逆止弁74まで流下し、さらに削孔水を送水して水圧を上昇させると逆止弁74が開き、ボーリングビット36の先端まで送水してボーリング機28のスピンドルの回転と給圧をかけてボーリングを開始する。
さらに、削孔水を送水しながら、ボーリングを続行し、ストレーナ管(外管体32、必要に応じて内管体30)を順次接続しながら所定の深度まで削孔する。
【0130】
〔B〕シール注入(削孔完了状態)
シール注入は、削孔完了状態で削孔水をシール剤に切換えて注入を開始する。
必要に応じて任意の外管体32のストレーナ孔40からシール注入する場合には、内管体30とモニター34を引き上げて、モニター34の側面吐出孔46をストレーナ孔40の位置に合わせながら連続してシール注入を行なう。
シール剤が地表に流出してボーリング孔内がシール剤に充填されたことを確認して完了する。
【0131】
〔C〕硬化剤注入
モニター34の側面吐出孔46を注入範囲の上端のストレーナ孔40に合っているか確認した後に、注入ポンプ20をシール剤から硬化剤に切換えて注入を開始する。
ステップ毎の注入を完了させる毎に直下のストレーナ孔40にモニター34の側面吐出孔46をステップダウンさせて連続して注入を繰り返し、最下段の注入範囲の注入を完了させる。
【0132】
〔D〕ストレーナ管(外管体32および内管体30)の引き抜きと穴埋め注入
最下段の注入が完了した後、内管体30を押し下げてモニター34をクロス弁座34eに押しつけて削孔時の状態に復帰させる。
【0133】
続いて、注入ポンプ20を硬化剤から穴埋め剤に切り替えてボーリングビット36の先端から穴埋め充填注入しながらす外管体32・内管体30を引き抜いて1注入孔当りの全行程を完了させる。
【0134】
上記第3の実施形態の地盤改良用薬液注入管によれば、注入管完了後、モニター34をクロス弁座34eの上面に押し込んで弁体52を押し上げて削孔時の状態に復帰(図16参照)させた後、連続して穴埋め充填注入を行いながら、ストレーナ管である外管体32を次第に引き抜き完了させて、ボーリング開始前の状態に戻ることが可能になった。
【0135】
なお、前述した従来のモニターは、弁体が残っているため、穴埋め材料を連続して下端のボーリングビット方向に吐出できないことから効率が悪く、事後に改めて充填注入していた。本発明はこのような問題を解消している。
すなわち、本発明では、ボーリング完了時からシール注入への切り替えが容易になったことに加えて、注入完了から穴埋め充填注入への切り替えが容易で時間短縮のメリットが大きい。
【0136】
また、従来は1孔当りの注入完了毎にモニターの掃除を要していたが、穴埋め注入後にポンプ20から清水を送液するだけで、掃除を要しなくなり時間ロスも排除された。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の地盤改良用薬液注入管は、平坦地、丘陵地、湿潤地等の各種地盤改良に利用することができる。
また、垂直下方向だけでなく360°いずれの方向のボーリング、薬液注入についても実施できる。
【符号の説明】
【0138】
28 ボーリング機
30 内管体
32 外管体
34 モニター
34a モニター外管(第3の施工形態に適用)
34b モニター内管(第3の施工形態に適用)
34c モニター内部外管(第3の施工形態に適用)
34d モニター内部内管(第3の施工形態に適用)
34e クロス弁座(第3の施工形態に適用)
36 ボーリングビット
38 外管部材
38a 外管部材の上・下端部
38b 外管部材の雄ネジ
38c 雌ネジ
38A 外管部材(スイベルサブの外管)
40 ストレーナ孔
42 弁部材
44 シール部材(モニター側面に配設)
44a シール体
46 側面吐出孔(モニター側壁に形成)
48 外管体先端の吐出孔
50 第2の吐出孔(モニター先端)
52 弁体(モニター先端閉鎖用:第1の施工形態に適用)
52a 弁体の天板(第3の施工形態に適用)
52b 弁体の弁棒(第3の施工形態に適用)
52c 弁体の下板(第3の施工形態に適用)
54 係止構造
54a 係止構造の溝
54b 係止構造の突起
56 スイベルサブ
56a 吊り金具
56b 切り欠き
58 スイベル
60 受け棒
62 第1の内管体(内側)
64 第2の内管体(外側)
66 第1の通路
68 第2の通路
74 逆止弁
74a 逆止弁の弁体
74b 逆止弁のスプリング部材
76 地盤面
78 可動弁(第2の施工形態に適用)
78a 可動弁の連通孔(第2の施工形態に適用)
78b 可動弁のシール部材(第2の施工形態に適用)
82 リング弁座(第3の施工形態に適用)
84 スプリング(第3の施工形態に適用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に複数の周面吐出孔を設けた外管体と、該外管体の内部に挿入した、先端部に少なくとも側方向きに側面吐出孔を設けた内管体とを有する地盤改良用薬液注入管において、
前記外管体は、一方の外管部材の端部を他方の外管部材の端部内に挿入して結合させた構成の外管部材の結合体であって、
結合状態の一方の外管部材の端部および他方の外管部材の端部には、対応箇所に外管体内部から外部に連通するストレーナ孔を形成し、かつ、一方および他方の外管部材の端部同士の間に通常時はストレーナ孔を閉じ、外管体の内圧が外圧より高いときにストレーナ孔を開く弁部材を装着し、
内管体の先端部の側面には、先後に間隔を置いて外管体の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材を設け、かつ、その間隔内位置に内管体の内部から外側面に連通する側方向きの側面吐出孔を設け、
薬液注入時に内管体内に加圧された薬液が導入されて、該薬液を前記側面吐出孔から吐出してシール部材間の外管体内の内圧を上げ、ストレーナ孔の前記弁部材を開くことによって当該ストレーナ孔から薬液が外管体の外部の周囲の地盤内に注入されるようにしたことを特徴とする地盤改良用薬液注入管。
【請求項2】
外管体の先端部に、先方向きに開口する先端吐出孔と、ボーリングビットとを設け、
内管体の先端部に、先方向きに開口する第2の吐出孔と、当該第2の吐出孔を閉鎖可能な構造とを設けており、
外管体と内管体には削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造を設けたことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項3】
前記外管体は、一方の外管部材の端部の外周面に雄ネジが形成され、かつ、この外周面にストレーナ孔を覆う弾性材からなる弁部材を設け、他方の外管部材の端部の内周面に雌ネジが形成されており、
前記雄ネジを前記雌ネジに螺合させて一方および他方の外管部材同士を連結して、これら一方および他方の外管部材の端部同士によって弁部材を挟む位置関係にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項4】
前記削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造は、外管体および内管体の削孔時に対応する位置に、一方に回転止め突起を形成し、他方に回転止め溝を形成したものであることを特徴とする請求項2に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項5】
前記第2の吐出孔を閉鎖可能な構造は、第2の吐出孔の内径よりも大径であって、下方に先方を向けた内管体内を自重で落ちていって第2の吐出孔に嵌り込む弁体であることを特徴とする請求項2または4に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項6】
内管体は、第1の内管体の外側に第2の内管体を設けた内外二重管構造であって、第1の内管体内の空間を第1の通路とし、該第1の内管体外周面と第2の内管体内周面との間の空間を第2の通路として、これら第1の通路および第2の通路にそれぞれ液体を送液可能とし、
内管体の先端部には、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された液体を内部空間で合流させて混合するためのモニターを設け、このモニターに、先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材の間隔内位置にモニターの内部から外側面に連通する側方向きの側面吐出孔を設けた構造としたことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項7】
前記の第1の通路および第2の通路の一方に主剤を他方に硬化剤を送液するものとし、
内管体の先端部のモニターでは、前記第1の通路および第2の通路を通して送液された主剤と硬化剤からなる薬液を内部空間で合流させて混合し、このモニター側面に設けられた複数のシール部材の間隔内位置の側方向きの側面吐出孔から外管体のストレーナ孔に向けて混合した薬液を吐出するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項8】
前記外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター先端部に先方向きに第2の吐出孔を開口し、モニター内に先・後移動して第1の内管体の先端開口および第2の吐出孔を開閉可能な可動弁を設け、
当該可動弁は先面および後面が閉鎖された中空体であって先部側面および後部側面に中空内への連通孔が形成され、かつ周面にモニター内とのシール部材が設けられて、可動弁全体が弾性体によって後方向きに弾発されており、先端部で前記第2の吐出孔を開閉可能で、かつ、後端部で第1の内管体の先端開口を開閉可能に構成され、
外管体を回転させてボーリングビットによる削孔時には、可動弁が第1の通路を閉鎖した状態で、前記の第2の通路内に削孔水を流し、その削孔水を可動弁における後部側面の連通孔から中空内さらには先部側面の連通孔を通って、削孔水を流してボーリングビットに供給し、
一方、薬液の注入時には、前記を第1の通路と第2の通路とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって可動弁を駆動して第1の通路を開弁させかつ第2の吐出孔を閉鎖し、前記主剤と硬化剤をモニター内で混合し、側面向きの側面吐出孔から混合した薬液を外管体のストレーナ孔を経由して地盤内に供給するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項9】
前記外管体の先端部にボーリングビットを設け、前記モニター内には先後移動して第2の吐出孔を開閉可能な弁体と、該弁体を先方に付勢するスプリングとを設け、
モニター内周面に前記側方向きの側面吐出孔よりも先方位置に弁座を設け、前記弁体がモニター内で先方に位置するときにスプリングの付勢力によって前記弁体が弁座に密接して第2の吐出孔が閉鎖し、それと共に、外管体の先端部のボーリングビット取り付け部の内側部に当接部を設け、前記弁体が当接部に当接して前記スプリングの付勢力に抗して前記弁体がモニター内で後方に移動したときに前記弁体が弁座から離れて前記密接が解除され、これによって、第2の吐出孔が開放する構造にし、
前記外管体の回転に連動してボーリングビットを回転させる削孔時には、前記内管体を先方に移動させて、前記外管体先端部内に前記モニターを位置させ、複数のシール部材と前記外管体の先端部の内周面との密接で前記モニターの側面吐出孔を閉鎖し、かつ、前記モニター内の弁体を前記当接部に当接させることによって前記弁体を弁座から後方に移動させて第2の吐出孔を開放した状態とし、前記内管体の第1の通路および第2の通路に削孔水を流し、その削孔水をモニター内の弁体と座面との間から第2の吐出孔に向けて流してボーリングビットに供給し、
一方、薬液の注入時には、前記内管体を外管体内で後方に移動させて前記モニターの側面吐出孔の先後に間隔を置いて設けられた複数のシール部材の間隔内位置にストレーナ孔が位置するようにし、かつ、モニター内でスプリングの付勢力で弁体が弁座に密接する状態として、第1の通路と第2の通路とに薬液の主剤と硬化剤を圧力を加えて流すことによって前記主剤と硬化剤をモニター内で混合し、側方向きの側面吐出孔から混合した薬液を外管体のストレーナ孔を経由して地盤内に供給するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項10】
外管体の先端の先端吐出孔にはボーリングビットによる削孔時に供給する削孔水の圧力で開弁し、外部から先端吐出孔への流入を遮断する逆止弁を設けたことを特徴とする請求項2から9のうちのいずれか1項に記載の地盤改良用薬液注入管。
【請求項11】
周囲に複数の周面吐出孔を設けた外管体と、該外管体の内部に挿入した、先端部に少なくとも側方向きに側面吐出孔を設けた内管体とを有する地盤改良用薬液注入管において、
前記外管体は、一方の外管部材の端部を他方の外管部材の端部内に挿入して結合させた構成の外管部材の結合体であって、
結合状態の一方の外管部材の端部および他方の外管部材の端部には、対応箇所に外管体内部から外部に連通するストレーナ孔を形成し、かつ、一方および他方の外管部材の端部同士の間に通常時はストレーナ孔を閉じ、外管体の内圧が外圧より高いときにストレーナ孔を開く弁部材を装着し、
それと共に、前記外管体の先端部に、先方向きに開口する先端吐出孔と、ボーリングビットとを設け、
前記内管体の先端部の側面には、先後に間隔を置いて外管体の内面に摺動可能に密接する複数のシール部材を設け、かつ、その間隔内位置に内管体の内部から外側面に連通する側方向きの側面吐出孔を設け、それと共に、内管体の先端部に、先方向きに開口する第2の吐出孔と、当該第2の吐出孔を閉鎖可能な構造とを設け、
前記外管体と前記内管体には削孔時に相対的に回転方向に固定する係止構造を設けたものであって、
前記内管体内を介して第2の吐出孔から削孔水をボーリングビットに圧送しながら、前記外管体および内管体を同時に回転させてボーリングビットにより地盤を削孔する工程と、
地盤の削孔深度が所定の深度に至るまで外管体および内管体を継ぎ足す工程と、
削孔深度が所定の深度に至った後に、前記外管体を削孔内に残置した状態で、薬液注入時に内管体内に加圧された薬液を導入して、該薬液を前記側面吐出孔から吐出してシール部材間の外管体内の内圧を上げ、ストレーナ孔の前記弁部材を開くことによって当該ストレーナ孔から薬液が外管体の外部の周囲の地盤内に注入する薬液工程とを有することを特徴とする地盤改良用薬液注入工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−202119(P2012−202119A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67980(P2011−67980)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(595114698)水研グラウト株式会社 (2)
【出願人】(592118077)産機商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】