説明

地盤浸透試験装置及び地盤浸透試験方法

【課題】浸透量の大小にかかわらず試験を行うことができる地盤浸透試験装置の提供。
【解決手段】水道設備1と、この水道設備1から供給される水を試験孔Hに供給する液体供給用流路2と、この液体供給用流路2に設けられ試験孔Hに供給される水の流量を測定する流量センサ312と、試験孔Hに供給される水のレベルを検出する変位検出センサ5と、この変位検出センサ5から出力される信号に基づいて試験孔Hに供給される水の流量を制御する流量制御弁313と、試験孔Hに供給される液体の変化を経過時間とともに記録するCPUボード321とを備える。水道設備1から断続的に水が試験孔Hに送られ、流量制御弁313で試験孔Hに供給される液体の量が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に設けられた穴部に供給される液体の変化に基づいて前記地盤の浸透を測定する地盤浸透試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木や建築分野において、地盤の浸透能力の評価を目的として現地浸透試験が行われる。この現地浸透試験を行う場合、試験方法として、ボアホール法や土研法の定水位法と、変位水位法とが用いられる。このうち、変位水位法は限定的に用いられているに過ぎず、ボアホール法や土研法の定水位法が一般的に用いられている。
定水位法は、まず、対象地盤に試験孔を掘削し、試験方法に応じて試験孔に処理を施し、その後、所定の水位になるまで試験孔に注水する。すると、ボアホール法では、孔壁と孔底とから水が浸透し、土研法では、孔底から水が浸透し、水位が低下する。いずれの方法でも、試験孔に注水される水の水位が低下するので、水位が一定となるように、随時、試験孔に注水する。試験孔に所定の水位まで注水された後に注水される水の量は対象地盤の水の浸透量と推定される。試験中は、経過時間毎に注水量を記録する。これらの作業を注水量が安定するまで継続して行う。
【0003】
変位水位法は、定水位法とは異なり、試験穴に規定の水位まで注水したら、その後は注水を止め、地盤に水が浸透することで低下する水位を経過時間毎に記録する。記録は、水位が試験穴の底に達するまで、あるいは、十分な試験結果が得られるまで続ける。
いずれの試験法でも、試験後、試験結果から得られるデータをもとに、地盤の浸透能力の指標として用いられる飽和透水係数を算定する。
【0004】
浸透量の少ない地盤での注水量を自動的に検出する方法として、気密水槽(マリオット容器)を用いて試験孔の水位を一定に保ちつつ、気密水槽の水位を水位計により読み取り、コンピュータにて水位量を算出し、記録する従来例(特許文献1)がある。
さらに、気密水槽を用いない自動検出方法として、水位計により試験孔の水位を検出し、バルブを制御して貯水タンクから試験孔に注水して水位を一定に保ちつつ、貯水タンクの水位を水位計により読み取り、コンピュータにて注水量を算出し記録する従来例(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−365201公報
【特許文献2】特開2002−21059公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2で示される従来例では、主に、フィルダムの盛立地盤等の浸透量の少ない地盤を評価するために行われる試験を実施するためのものであるため、気密水槽や貯水タンクの容量が小さい。
しかしながら、浸透量の小さな地盤だけでなく、浸透量の大きな地盤においても利用できる地盤浸透試験装置が望まれているが、前述の従来例では、気密水槽や貯水タンクの容量が小さいため、浸透量の大きな地盤の試験を行うことができない。
【0007】
本発明の目的は、浸透量の大小にかかわらず試験を行うことができる地盤浸透試験装置及び地盤浸透試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地盤浸透試験装置は、地盤に設けられた穴部に供給される液体の変化に基づいて前記地盤の浸透を測定する地盤浸透試験装置であって、液体供給源と、この液体供給源から供給される液体を前記穴部に供給する液体供給用流路と、この液体供給用流路に設けられ前記穴部に供給される液体の流量を測定する流量センサと、前記穴部に供給される液体のレベルを検出する変位検出センサと、この変位検出センサから出力される信号に基づいて前記穴部に供給される液体の流量を制御する流量制御弁と、前記穴部に供給される液体の変化を経過時間とともに記録する記録装置と、を備えたことを特徴とする。
この構成の本発明では、液体供給源から断続的に供給される液体が液体供給用流路を通って地盤の穴部に送られる。穴部に送られる液体が所定位置となったら、流量センサや変位検出センサを用いて供給される液体の変化を検出し、この液体の変化を経過時間とともに記録する。これにより、試験結果から得られるデータをもとに、地盤の浸透能力を求めることができる。ここで、浸透量の大きな地盤で試験を行うには、流量制御弁によって液体供給用流路を流れる液体の量を大きくし、浸透量の小さな地盤で試験を行うには、流量制御弁によって液体供給用流路を流れる液体の量を小さくする。
従って、本発明では、液体供給源から断続的に液体が穴部に送られるとともに、流量制御弁で穴部に供給される液体の量を調整することで、浸透量の大きな地盤においても小さな地盤においても地盤浸透試験を実施することができる。
【0009】
本発明では、前記変位検出センサは、前記穴部に収納された液体に向けて超音波を発信する発信部及び前記液体から反射された音波を検出する検出部を有する超音波センサ部と、この超音波センサ部の少なくとも発信部及び検出部を囲うとともに前記液体に一部が浸かるようにされたカバー部とを備え、このカバー部には内外を連通する連通口が形成されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、超音波センサ部の発信部から超音波を穴部に収納された液体の液面に向けて発信し、液体の液面で反射された音波を検出部で検出することで、液体に対して非接触状態で、液面位置を正確に検出することができる。ここで、試験中に凹部に葉っぱ等の浮遊物が誤って入っても、カバー部の一部が凹部に収納された液体に浸かるようにされているので、浮遊物がカバー部によって区画された検出対象に入り込むことがないので、正確な液面の検出をすることができる。しかも、変位検出センサを凹部の内部にセットした後、石等の異物が凹部に落下して液体の液面が波立っても、カバー部が防波の役割を有するので、検査対象となる液面の領域が波立つことがなく、この点からも、正確な検出を行うことができる。そして、液面の一部の領域がカバー部で覆われることで、カバー部の内部に発生する負圧で液面が正確に変位しなくなる恐れがあるが、本発明では、カバー部には連通口が形成されることで、カバー部の内外に圧力差がなくなり、液面の変位が正確なものとなり、液面位置の検出を正確に行える。
【0010】
前記カバー部は、少なくとも一部が透明とされた構成が好ましい。
この構成の本発明では、カバー部の少なくとも一部が透明であるため、カバー部の内部に葉っぱ等の浮遊物が入っていることを外部から認識することができる。浮遊物がカバー部の内部に入り込んでいる場合には、それを取り除くことで、試験を正確に行うことができる。
【0011】
前記流量制御弁は、前記変位検出センサから出力される信号に基づいて前記穴部に供給される液体が一定のレベルとなるように流量を制御するものであり、前記記録装置は、前記流量センサで検出される液体の供給量を経過時間とともに記録する構成が好ましい。
この構成の本発明では、凹部に収納される液体の所定の位置になったら、その位置を変位検出センサで検出するとともに、この位置に液面が留まるように流量制御弁によって液体供給源から供給される液体の量を制御する。その場合の液体の供給量を流量センサで測定し、この測定値を経過時間とともに記録装置で記録しておき、この記録されたデータを元に定水位法による試験を行う。
そのため、本発明では、定水位法による浸透試験を浸透量の大小にかかわらず正確に行うことができる。
【0012】
前記液体供給源は水道設備である構成が好ましい。
この構成の本発明では、水道設備から供給される水は、貯水タンクに収納される水に比べて多くの水を供給できるので、浸透量のより大きな地盤の浸透試験に好適である。
【0013】
前記液体供給用流路の内部を流通する水の圧力を一定にする減圧弁を備えた構成が好ましい。
この構成の本発明では、水道設備から液体供給用流路に送られる水の圧力が高い場合には、減圧弁を操作することで、液体供給用流路の内部圧力を適正なものにできることから、適正な浸透試験を実施することができる。
【0014】
本発明の地盤浸透試験方法は、地盤に設けられた穴部に液体を一定のレベルを維持するように供給するとともに前記液体が供給される流量から前記地盤の浸透を測定する地盤浸透試験方法であって、液体供給源から液体供給用流路を通して前記穴部に前記液体を供給し、前記穴部に供給される液体のレベルを変位検出センサで検出し、この変位検出センサから出力される信号に基づいて前記穴部に供給される液体が一定のレベルとなるように流量制御弁で流量を制御し、前記液体供給用流路で流通される液体の供給量を流量センサで検出し、この液体の供給量を経過時間とともに規則装置で記録することを特徴とする。
この構成の本発明では、定水位法による浸透試験を浸透量の大小にかかわらず正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る地盤浸透試験装置の概略を示す斜視図。
【図2】前記地盤浸透試験装置の概略を示すブロック図。
【図3】試験画面を表示する概略図。
【図4】変位検出センサの一部を破断した側面図。
【図5】変位検出センサの平面図。
【図6】水の供給量の調整方法を説明するためのグラフ。
【図7】マリオットサイフォンの従来例、水道メータの従来例及び実施例での注水時間と注水量との関係を示すグラフ。
【図8】マリオットサイフォンの従来例、水道メータの従来例及び実施例での注水時間と湛水深との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は本実施形態に係る地盤浸透試験装置の概略を示すもので、図1は斜視図であり、図2はブロック図である。
図1及び図2において、本実施形態の地盤浸透試験装置は、地盤Gに掘削した穴部としての試験孔Hに供給される水の変化に基づいて地盤Gの浸透を測定するものであって、液体供給源である水道設備1と、この水道設備1から供給される水を試験孔Hに供給する液体供給用流路2と、この液体供給用流路2の一部が内部に配置された装置本体3と、この装置本体3にシリアルケーブル40を介して接続可能なパソコン4と、試験孔Hに供給される水のレベルを検出する変位検出センサ5とを備えて構成されている。なお、図1及び図2では、1つの試験孔Hに対して1台の地盤浸透試験装置を用いた例が示されているが、本実施形態では、複数箇所の試験孔Hに対してそれぞれ地盤浸透試験装置を用いる測定を実施する場合にも適用することができる。
【0017】
試験孔Hは試験する地盤Gにスコップ等の工具や掘削機械等の適宜な方法により形成されるもので、その半径は、例えば、10〜15cmであり、深さは、例えば、50cm〜150cmである。なお、浸透試験の種類によっては、必要に応じて、試験孔Hの内部に筒(図示せず)が配置される。
水道設備1は、狭義の水道施設のみならず、ローリタンク等の大容量の水を継続的に供給できる設備を含むものであり、蛇口1Aから水が排出される。
液体供給用流路2は、蛇口1Aと装置本体3とを接続する受入管21と、この受入管21と一端部が接続されるとともに装置本体3の内部に配置される内部流通管22と、この内部流通管22の他端部に一端部が接続され他端部が試験孔Hに開口される注水管23とを備えている。内部流通管22は第1流通管221と第2流通管222とを有する。
【0018】
装置本体3は、筐体30と、この筐体30の内部にそれぞれ配置された機構部31及び制御部32とを備えている。
筐体30の正面には、受入管21の端部に接続される給水口301と、注水管23の端部と接続され排水口302と、機構部31及び制御部32を操作するための操作パネル(図示せず)とが設けられている。
筐体30の上面には図示しない取手が設けられている。
【0019】
機構部31は、内部流通管22にそれぞれ設けられる減圧弁311、流量センサ312及び流量制御弁313と、を備えている。つまり、減圧弁311と流量センサ312とは第1流通管221で接続され、流量センサ312と流量制御弁313とは第2流通管222で接続されている。
減圧弁311は水道設備1から供給される水の圧力が高い場合に減圧して内部流通管22の内部に流通する水圧を一定とするものである。
流量センサ312は減圧弁311の下流に配置され内部流通管22の内部を流通する水の流量、つまり、液体供給用流路2から排出される水の流量を測定するものであり、その測定結果は制御部32に出力される。
【0020】
本実施形態では、流量センサ312は、コリオリの力を利用した流量計であり、内部流通管22に連通されるU型の配管(図示せず)を備え、この配管のねじれを検出することで、内部を流通する水の流量を測定するものである。コリオリ式の流量センサ312はレンジアビリティの大きな流量計であり、例えば、最大流量の1/100まで測定可能である。
流量制御弁313は流量センサ312の下流に配置され内部流通管22の内部を流通する水の流量を制御するものであり、制御部32からの信号に基づいて開度が制御される。開度が大きいと水の供給量が大きくなり、開度が小さいと水の供給量が小さくなる。
【0021】
制御部32は、流量センサ312からの信号を受けるCPUボード321と、このCPUボード321からの電気信号により流量制御弁313の開度を制御するコントローラ322と、変位検出センサ5から出力される測定信号を増幅してCPUボード321に送るアンプ323とを備えている。これらのCPUボード321、コントローラ322及びアンプ323は基板300に搭載され、この基板300は筐体30の上部側に配置されている。この基板300の下方には機構部31を構成する減圧弁311、流量センサ312及び流量制御弁313が配置されている。
CPUボード321はCPU3211と記憶媒体3212とを有するもので、試験孔Hに供給される水の供給量を経過時間とともに記録する記録装置として機能する。
CPU3211は記憶媒体3212に格納されているプログラムを呼び出して変位検出センサ5によって計測された試験孔Hの水位データを元に流量制御弁313の適切な開度を割り出し、さらに、流量センサ312により計測された水の供給量のデータを経過時間毎に記憶媒体3212に記憶させる処理を実施する。
【0022】
パソコン4は、CPU41と記憶媒体42とを有するもので、CPU41は記憶媒体42に記録されたデータ読込用ソフトウェアを起動させ、CPUボード321の記憶媒体3212から水の供給量と経過時間とに関するデータを読み出し、そのデータを記憶媒体42に記憶させ処理するものである。
パソコン4は表示画面4Aを備え、この表示画面4Aには図3で示される試験画面が表示される。
図3において、試験画面Dは、調査情報D1と、調査結果D2とが表示されるものであり、調査情報D1は、表形式に表示される調査名D11、調査場所D12、調査点D13、調査年月日D14、及び調査開始時間D15が含まれる。これらの調査名D11から調査点D13はパソコン4や装置本体3の操作パネル等から予め入力される。
調査結果D2はCPUボード3211から送られる水の供給量と経過時間との関係が示されるものであり、表形式の表示部D21とグラフ形式の表示部D22とが含まれる。
【0023】
図1において、変位検出センサ5は、試験孔Hに供給される液体のレベルを検出するものであり、ケーブル50を介してアンプ323に接続される超音波センサ部51と、この超音波センサ部51に設けられるとともに試験孔Hに収納された水に一部が浸るようにされたカバー部52とを備え、このカバー部52がチェーン61を介して三脚62で支持される。
変位検出センサ5の具体的な構造が図4及び図5に示されている。
図4は変位検出センサ5の一部を破断した側面図であり、図5は変位検出センサ5の平面図である。
【0024】
図4及び図5において、超音波センサ部51は、円柱状の本体511と、この本体511の下端部に設けられ試験孔Hに収納された水に向けて超音波を発信する発信部512と、本体511の下端部に設けられ水から反射された音波を検出する検出部513とを有するものである。この検出部513で検出された水位の検出信号はアンプ323を介してCPUボード321に送られる(図2参照)。本実施形態では、水位の検出信号が所定寸法以上、例えば、200mm以上である場合には、センサの感知範囲外であり、この範囲外に水位があることを所定時間検知した場合には、CPUボード321から流量センサ312に水の供給を中止させる信号を送るようにされている。
【0025】
カバー部52は、下端が開口された箱状部材であり、金具521と、この金具521に設けられたカバー本体522とを有する。
金具521は、平面矩形状の天板部521Aと、この天板部521Aの一端縁から折り曲げ形成された側板部521Bと、この側板部521Bの両側からそれぞれ折り曲げ形成された取付片部521Cとを備えて構成されている。取付片部521Cは、その平面形状が天板部521Aに沿った直線部と側板部521Bに沿った直線部とから逆L字状に形成される。
【0026】
天板部521Aの中央部分には本体511が貫通して設けられており、この本体511の取付部分を挟んだ2箇所にはチェーン61の先端に係止されるフック523が取り付けられている。
カバー本体522は透明の合成樹脂から断面コ字状に形成されており、その開口が金具521の側板部521Bで覆われている。これにより、カバー部52の水平断面が口状とされ、その内部空間が閉塞される。
カバー本体522の高さ寸法は側板部521Bの高さ寸法と同じである。カバー本体522は、その開口端側が金具521の取付片部521Cにビスで取り付けられており、側板部521Bと対向する板部分とこの板部分に直交する板部分との角部分が透明とされる。
カバー本体522の上端縁と、天板部521Aの側板部521Bが設けられた端縁とは反対側の端縁との間にはカバー部52の内外を連通する連通口52Aが形成されている。つまり、連通口52Aはカバー本体522の上部角部に平面矩形状に形成されている。
なお、図4では、チェーン61とフック523の図示が省略されている。
【0027】
次に、本実施形態にかかる地盤浸透試験方法を説明する。
まず、現地浸透試験を実施する地盤Gに試験孔Hを掘削し、この試験孔Hの内部において、変位検出センサ5を目標とする水位より100mm上に設置する。また、注水管23を試験孔Hの内部に挿入する。
その後、試験員が地盤浸透試験装置の操作パネルにある電源をオンし、試験を開始する。
水道設備1から供給される水は液体供給用流路2の内部を通り、液体供給用流路2を構成する注水管23から試験孔Hに注入される。水道設備1から供給される水の圧力が高い場合には液体供給用流路2に設けられた減圧弁311で所定の圧力まで減圧される。
【0028】
試験孔Hの水位が所定値になったら、水の供給量の測定を開始する。この開始は試験孔Hの内部に所定位置まで水が溜まったことを確認した検査員がスタートボタンを押すことで行われるものでもよく、あるいは、変位検出センサ5で水面の位置が所定位置に達したことが検出されたら自動的に行われるものでもよい。
試験孔Hへ供給される水の量、つまり、液体供給用流路2を通る水の供給量は流量センサ312で検出され、この検出量の情報はCPUボード321に送られる。CPUボード321では、水の供給量が経過時間、例えば、1秒間隔で記録される。
測定開始後は水位が所定の水位となるように地盤浸透試験装置が自動で水の供給量の調節を行う。
つまり、変位検出センサ5で検出される水位情報がアンプ323を介してCPUボード321に送られる。このCPUボード321の記憶媒体3212は試験孔Hの水位を所定時間、例えば、1秒間隔で読み込む。
【0029】
以上の操作に伴って流量制御弁313を制御する方法を図6に基づいて説明する。図6は水の供給量の調整方法を説明するためのグラフである。
図6において、現在の水位が所定の水位h1よりも低い場合には、流量制御弁313の開度を徐々に大きくし、水位が低いほど一度に開く幅を大きくする。これにより、ほとんど水が溜まっていない試験孔Hにも効率よく水を注入することができる。水位がh1よりやや低いh2に到達した時点で、一旦、流量制御弁313の開度を0にし、再度、流量制御弁313の開度を徐々に大きくする。一旦、開度を0にするのは、それまでの制御により注水量が多すぎる場合でもh1を大きく超えることを防ぐためである。
【0030】
変位検出センサ5で検出される水位がh1に到達したら、現在の開度r1を一時的に記憶して開度を0にする。記憶した開度r1は次の水位がh1よりも低くなった時の流量制御弁313の最初の開度を決める基準値となる。また、流量制御弁313は開度を0にする時、開度の変化量に応じて多少の時間がかかるため、水位がh1をわずかに上回る。そのため、地盤Gの浸透により水位がh1よりも低くなるまで若干時間がかかる。この時間をt1とする。開度r1による水の供給量が地盤Gの浸透量に対して大きい場合は時間t1が長くなるため、時間t1により開度r1が適当かどうか判断できる。よって、次に、最初の開度をr1にして、水位がh1になるまで徐々に開度を大きくする。時間t1が長いと判断される場合は、r1ではなく1割程度小さい開度を最初の開度とする。この操作を繰り返すことで、地盤Gの浸透量に適した流量制御弁313の開度が得られ、試験孔Hの水位が一定になるように水の供給量が調整される。
【0031】
所定時間が経過して試験員が試験停止操作をするか、予め、記憶媒体3212に記憶された規定時間が終了すると、試験孔Hへの注水が停止し、水の供給量の測定も終了する。試験後、装置本体3とパソコン4とをシリアルケーブル40で接続し、CPU41でデータ読込用ソフトウェアを操作して水の供給量と経過時間との記録を呼び込み、記憶媒体42に記憶させる。さらに、この情報を必要に応じて表示画面4Aに表示させる。記憶媒体42で記憶されたデータは飽和透水係数の算出に用いられる。なお、本実施形態では、試験後、装置本体3とパソコン4とをシリアルケーブル40で接続する以外に、無線により装置本体3とパソコン4との間での情報のやりとりをしてもよく、さらに、試験後のみではなく、試験中にも、装置本体3とパソコン4とをシリアルケーブル40で接続するものでもよい。
【0032】
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)水道設備1と、この水道設備1から供給される水を試験孔Hに供給する液体供給用流路2と、この液体供給用流路2に設けられ試験孔Hに供給される水の流量を測定する流量センサ312と、試験孔Hに供給される水のレベルを検出する変位検出センサ5と、この変位検出センサ5から出力される信号に基づいて試験孔Hに供給される水の流量を制御する流量制御弁313と、試験孔Hに供給される液体の変化を経過時間とともに記録するCPUボード321とを備えて地盤浸透試験装置を構成したから、水道設備1から断続的に水が試験孔Hに送られるとともに、流量制御弁313で試験孔Hに供給される水の量を調整することで、地盤Gの浸透量が小さく、水の供給量が小さくてすむ場合だけでなく、地盤Gの浸透量が大きく、水の供給量が大きくなる場合でも、地盤浸透試験を実施することができる。そして、水の供給量のデータを経過時間とともにCPUボード321に記憶させることで、計測から透水係数の算出までを迅速に行うことができる。
【0033】
(2)流量制御弁313は、変位検出センサ5から出力される信号に基づいて試験孔Hに供給される水の水位が一定のレベルとなるように流量を制御するものであり、CPUボード321は、流量センサ312で検出される水の供給量を経過時間とともに記録する構成である。試験孔Hに収納される水が所定の位置になったら、その位置を変位検出センサ5で検出するとともに、この位置に水面が留まるように流量制御弁313によって水の供給量を制御し、その際の水の供給量を流量センサ312で測定し、この測定値を経過時間とともにCPUボード321で記録する。つまり、本実施形態では、浸透試験を浸透量の大小にかかわらず定水位法による試験で正確に行うことができる。
【0034】
(3)変位検出センサ5は、試験孔Hに収納された水に向けて超音波を発信する発信部512と水面から反射された音波を検出する検出部513とを含む超音波センサ部51と、この超音波センサ部51の発信部512及び検出部513を囲うとともに水に一部が浸かるようにされたカバー部52とを備えて構成された。つまり、超音波センサ部51によって非接触状態で水面位置を正確に検出することができる。葉っぱ等の浮遊物がカバー部52によって区画された検出対象に入り込むことがなく、石等の異物により水面が波立っても、カバー部52により検査対象となる液面の領域が波立つことがないので、正確な水面位置の検出を行うことができる。
【0035】
(4)カバー部52には内外を連通する連通口52Aが形成されているから、水面の一部の領域がカバー部52で覆われても、カバー部52の内外で圧力差がなくなり、水面の変位が正確なものとなり、水面位置の検出を正確に行える。
【0036】
(5)カバー部52は、透明の合成樹脂から形成されたカバー本体522を備えているため、カバー部52の内部空間に葉っぱ等の浮遊物が入っても、それを外部から認識することができる。その際、浮遊物をカバー部52の内部から排出することで、試験を正確に行うことができる。
【0037】
(6)カバー本体522は断面コ字状とされ、このカバー本体522の上端面と開口端部とが金具521に取り付けられているので、カバー部52の透明性を確保するとともに構造を強固なものにできる。
【0038】
(7)金具521は、平面矩形状の天板部521Aと、この天板部521Aの一端縁から折り曲げ形成された側板部521Bと、この側板部521Bの両側からそれぞれ折り曲げ形成された取付片部521Cとを備えて構成されているから、この金具521を1枚の金属板から折曲成形等によって、容易に製造することができる。
【0039】
(8)液体供給源を水道設備1とした。水道設備1から供給される水は、貯水タンクに収納される水に比べて多量の水を連続的に供給できるので、浸透量のより大きな地盤の浸透試験に好適である。特に、狭義の水道施設、つまり、水源から配管を通じて蛇口1Aから給水される水道施設を用いれば、ローリ等の給水車を用いる場合に比べて、既存の設備を利用することで、試験を容易に行うことができる。
【0040】
(9)液体供給用流路2の内部を流通する水の圧力を一定にする減圧弁311を備えたから、水道設備1から液体供給用流路2に送られる水の圧力が高い場合には、液体供給用流路2の内部圧力を適正なものにすることができ、適正な浸透試験を実施することができる。
【0041】
(10)流量センサ312はレンジアビリティの大きな流量計であるため、水道設備1で供給される水の流量の変化が大きい場合であっても、正確な測定を実施することができる。特に、流量センサ312として、コリオリの力を利用した流量計を用いれば、構造が簡易で、最大流量の1/100まで測定可能な広範囲なレンジアビリティを確保することができる。
【0042】
(11)本実施形態では、地盤浸透試験装置を複数台用いることで、多量に浸透する井戸水調査や玉石等の混じる堤防浸透調査の水の供給量を高精度に計測し、正確な試験を実施することができる。
【0043】
(12)変位検出センサ5で検出する水位の検出信号が所定寸法以上である場合には、センサの感知範囲外として、検出信号をCPUボード321に送り、このCPUボード321から流量センサ312に水の供給を中止させる信号を送るようにしたから、試験中に生じた不具合によって、試験孔Hから水が急に漏出した緊急時には、試験を中止することができる。
【0044】
次に、本実施形態の効果を確認するための実施例を説明する。
本実施形態に対応する実施例と従来例とで実験を行った結果を図7及び図8に基づいて説明する。従来例として、マリオットサイフォン(容器)を用いた例と、水道メータを用いた例とを例示する。マリオットサイフォンを用いた従来例は、透水係数が10−11m/s〜10−10m/sの粘性土から10−10m/s〜10−7m/sの微細砂、シルト、砂・シルト・粘土の混合土に適した試験方法である。水道メータの従来例は、水道の蛇口から水を試験孔に供給し、試験孔の水位を一定にした際の水道メータの目盛から注水量を見る試験方法であり、透水係数が10−6m/s〜10−5m/sの微細砂、シルト、砂・シルト・粘土の混合土から透水係数が10−5m/s〜10−2m/sの砂及び礫に適した試験方法である。
【0045】
図7は、低透水性地盤(粘性土)に利用されるマリオットサイフォン(容器)の従来例と本実施例との注水時間と注水量との関係、並びに、高透水性地盤(砂質土)に利用されるマリオットサイフォン(容器)の従来例と本実施例との注水時間と注水量との関係が示されるグラフである。
図8は低透水性地盤(粘性土)に利用されるマリオットサイフォン(容器)の従来例、水道メータの従来例及び本実施例の注水時間と湛水深との関係が示されるグラフである。
図7において、低透水性地盤(粘性土)での試験をマリオットサイフォンの従来例で行った結果を符号R1で示し、本実施例で行った結果を符号E1で示す。高透水性地盤(砂質土)での試験を水道メータで行った結果を符号R2で示し、本実施例で行った結果を符号E2で示す。
図8は、低透水性地盤(粘性土)においてマリオットサイフォンの従来例で行った結果を符号R3で示し、水道メータの従来例で行った結果を符号R4で示し、実施例で行った結果を符号E3で示す。
【0046】
図7及び図8によると、低透水性地盤(粘性土)で利用されるマリオットサイフォンの従来例R1,R3と本実施例E1,E3とでは、注水量と湛水深ともに同程度の結果が得られた。但し、従来例R1では、試験開始70分後に気密水槽用貯水がなくなり、試験を停止したが、実施例E1では、120分を目安として連続計測を行えた。なお、110分までは安定した出力結果が得られた。
高透水性地盤(砂質土)に利用される水道メータの従来例R2と実施例E2とを比較すると、水道メータの従来例R2では注水量のバラツキが確認され安定注水領域が判定しにくく、かつ、水位も一定ではない。この従来例R2に対して、実施例E2では、安定注水領域が判断しやすく、水位はほぼ一定に保つことができた。
つまり、本実施例では、超音波を利用した変位検出センサ5を用いた水位観測並びに注水量制御によって、粘性土から土砂土までの幅広い領域において、マリオットサイフォンと同等の計測精度で長時間計測することが可能であることがわかる。
【0047】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態では、定水位法で浸透試験を実施したが、本発明では、変位水位法でも実施することができる。つまり、変位検出センサ5によって、水位が所定位置になるまで注水したら注水を中止し、その後に変位検出センサ5で、地盤への浸透に伴って低下する水位を経過時間とともに検出してもよい。
また、本発明では、流量センサ312はレンジアビリティの大きな流量計であればよく、前記実施形態のようなコリオリ式の流量センサ312に限定されるものではない。
【0048】
本発明では、液体供給源は水道設備に限定されるものではなく、水道に代えて排水、その他の液体を用いてもよい。
さらに、変位検出センサ5は超音波センサに限定されるものではなく、光を利用したセンサであってもよい。
そして、変位検出センサ5のカバー部52には必ずしも連通口52Aを設けることを要せず、設けるとしても、その位置が角部に限定されるものではない。
また、本発明では、必ずしも減圧弁311を設けることを要しない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、地盤に設けられた穴部に供給される液体の変化に基づいて地盤の浸透を試験する装置及び方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…水道設備(流体供給源)、2…液体供給用流路、3…装置本体、30…筐体、300…基板、311…減圧弁、312…流量センサ、313…流量制御弁、321…CPUボード(記録装置)、3211…CPU、3212…記憶媒体、4…パソコン、5…変位検出センサ、51…超音波センサ部、512…発信部、513…検出部、52…カバー部、52A…連通口、521…金具、521A…天板部、521B…側板部、522…カバー本体、H…試験孔(凹部)、G…地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けられた穴部に供給される液体の変化に基づいて前記地盤の浸透を測定する地盤浸透試験装置であって、
液体供給源と、この液体供給源から供給される液体を前記穴部に供給する液体供給用流路と、この液体供給用流路に設けられ前記穴部に供給される液体の流量を測定する流量センサと、前記穴部に供給される液体のレベルを検出する変位検出センサと、この変位検出センサから出力される信号に基づいて前記穴部に供給される液体の流量を制御する流量制御弁と、前記穴部に供給される液体の変化を経過時間とともに記録する記録装置と、を備えた
ことを特徴とする地盤浸透試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載された地盤浸透試験装置において、
前記変位検出センサは、前記穴部に収納された液体に向けて超音波を発信する発信部及び前記液体から反射された音波を検出する検出部を有する超音波センサ部と、この超音波センサ部の少なくとも発信部及び検出部を囲うとともに前記液体に一部が浸かるようにされたカバー部とを備え、このカバー部には内外を連通する連通口が形成されている
ことを特徴とする地盤浸透試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載された地盤浸透試験装置において、
前記カバー部は、少なくとも一部が透明とされた
ことを特徴とする地盤浸透試験装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された地盤浸透試験装置において、
前記流量制御弁は、前記変位検出センサから出力される信号に基づいて前記穴部に供給される液体が一定のレベルとなるように流量を制御するものであり、
前記記録装置は、前記流量センサで検出される液体の供給量を経過時間とともに記録する
ことを特徴とする地盤浸透試験装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された地盤浸透試験装置において、
前記液体供給源は水道設備である
ことを特徴とする地盤浸透試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載された地盤浸透試験装置において、
前記液体供給用流路の内部を流通する水の圧力を一定にする減圧弁を備えた
ことを特徴とする地盤浸透試験装置。
【請求項7】
地盤に設けられた穴部に液体を一定のレベルを維持するように供給するとともに前記液体が供給される流量から前記地盤の浸透を測定する地盤浸透試験方法であって、
液体供給源から液体供給用流路を通して前記穴部に前記液体を供給し、前記穴部に供給される液体のレベルを変位検出センサで検出し、この変位検出センサから出力される信号に基づいて前記穴部に供給される液体が一定のレベルとなるように流量制御弁で流量を制御し、前記液体供給用流路で流通される液体の供給量を流量センサで検出し、この液体の供給量を経過時間とともに規則装置で記録する
ことを特徴とする地盤浸透試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7725(P2013−7725A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142344(P2011−142344)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 公益社団法人地盤工学会が平成23年6月20日に発行した「第46回地盤工学研究発表会 平成23年度発表講演集(DVD)」
【出願人】(000150707)長野計器株式会社 (62)
【出願人】(509072803)株式会社土木管理総合試験所 (2)
【Fターム(参考)】