説明

地盤補強構造体

【課題】軽量であり且つ十分な厚みを有した地盤補強構造体を提供する。
【解決手段】地盤補強構造体1は、第1の樹脂ネット3Aと第2の樹脂ネット3Bとを重ね合わせて編み組みしてなる編組体2と、該編組体2の樹脂ネット3A,3B間に充填された破砕ゴム片4とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を補強するために該地盤中に埋設される地盤補強構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に樹脂ネットや土嚢を埋設して地盤を補強する工法が広く行われている。
【0003】
特開2001−329540号公報には、この地盤補強用樹脂ネットとして、ネットの樹脂部分にスパイク状の凸部及び凹部が設けられたものが記載されている。同号公報の樹脂ネットにあっては、この凸部及び凹部の楔効果によってネットの土への喰い付き力が向上し、より強固に地盤を補強することが可能となる。
【0004】
土嚢は、その優れた機能性(制振性、施工の容易さ、コストの低さ等)により、近年、地中(根切り部等)に充填される捨てコンクリート等に代わる地盤補強構造体として注目されている。
【特許文献1】特開2001−329540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂ネットは、比較的軽量であり、運搬時や設置時の取り扱い性に優れているが、厚みが小さいため、地中に充填される地盤補強構造体としては不向きである。
【0006】
一方、土嚢は比較的厚みが大きく、地中に充填される地盤補強構造体として好適であるが、重量があるため、運搬時等の取り扱い性に劣る。
【0007】
本発明は、軽量であり且つ十分な厚みを有した地盤補強構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地盤補強構造体は、第1の樹脂ネットと第2の樹脂ネットとを重ね合わせて編み組みしてなる編組体と、該編組体の樹脂ネット間に充填された破砕ゴム片とを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地盤補強構造体にあっては、編組体の第1の樹脂ネットと第2の樹脂ネットとの間に破砕ゴム片が充填されているため、厚みがあり、根切り部等の地中に充填される地盤補強構造体として好適である。また、この地盤補強構造体は主として樹脂とゴムから構成されているため、比較的軽量であり、運搬や据付け等の作業を楽に行うことができる。
【0010】
さらに、本発明の地盤補強構造体は、編組体に充填された破砕ゴム片の弾力性により、振動吸収性に優れている。しかも、各樹脂ネットの網目開口と破砕ゴム片相互の間隙とを通して透水性も確保される。
【0011】
請求項2の地盤補強構造体にあっては、樹脂ネットの樹脂部の引張強度が向上し、丈夫な編組体が構成される。
【0012】
請求項3の地盤補強構造体にあっては、樹脂ネットに設けられた凸部が地盤に食い込み、地盤補強構造体がしっかりと固定される。
【0013】
請求項4の地盤補強構造体にあっては、第1の樹脂ネットと第2の樹脂ネットとをきわめて簡単に編み組みすることができる。
【0014】
この樹脂ネットは、超高分子量ポリエチレン樹脂シートよりなることが好ましい(請求項5)。
【0015】
この場合、該超高分子量ポリエチレンの分子量は1000〜1000万であることが好ましい(請求項6)。
【0016】
破砕ゴム片として廃タイヤの破砕ゴム片を用いること(請求項7)により、廃タイヤを有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る地盤補強構造体の斜視図であり、第2図は第1図のII−II線に沿う断面図である。
【0018】
この地盤補強構造体1は、第1の樹脂ネット3Aと第2の樹脂ネット3Bとを重ね合わせて編み組みしてなる編組体2と、該編組体2の樹脂ネット3A,3B間に充填された破砕ゴム片4とからなる。
【0019】
この実施の形態では、第1の樹脂ネット3Aと第2の樹脂ネット3Bとは同一の樹脂ネットよりなる。該樹脂ネット3A,3Bは、この実施の形態では、以下の手順により製作される。
【0020】
まず、長尺帯状の樹脂シートに、プレス(打ち抜き)加工等により、その長手方向及び幅方向に規則的に配列された多数の穴部(開口)3aを形成する。また、この実施の形態では、この穴あき樹脂シートの幅方向に延在する各樹脂部(幅方向樹脂部)3bに、該プレス加工等により、スパイク状の凸部3cを形成する。
【0021】
次に、この樹脂シートを延伸可能な温度まで加温する。次いで、この樹脂シートをピンチローラ等で長手方向に引っ張り、該長手方向に延在する各樹脂部(長手方向樹脂部)3dを延伸させる。
【0022】
その後、この樹脂シートを必要に応じ所定長さ及び所定幅に裁断し、2枚の樹脂ネット3A,3Bを形成する。
【0023】
この樹脂シートは、超高分子量ポリエチレン樹脂シートであることが好ましい。この場合、該超高分子量ポリエチレンの分子量は、1000〜1000万、とりわけ10万〜40万であることが好ましい。また、この超高分子量ポリエチレンは、密度が0.9以上であることが好ましく、さらに、1分子当たり0.3個のブチル基の側鎖を有したものであることが好ましい。
【0024】
この超高分子量ポリエチレン樹脂シートの長手方向樹脂部3dの延伸量は、延伸前の5倍以上であることが好ましい。この延伸量が5倍以下であると、該長手方向樹脂部3dの引張強度が不足する。
【0025】
第1樹脂ネット3Aと第2樹脂ネット3Bとは、第2図に示すように、まず、凸部3cが設けられていない側の面を向かい合わせにして重ね合わされ、次いで、該第1の樹脂ネット3Aの長手方向樹脂部3dの途中部が第2の樹脂ネット3Bの穴部3aを通して該第2の樹脂ネット3Bの表側へ押し込まれ、その後、この押し込まれた第1の樹脂ネット3Aの長手方向樹脂部3dと第2の樹脂ネット3Bの長手方向樹脂部3dとの間に結束用線状体5が挿通されることにより、編み組みされている。
【0026】
なお、この実施の形態では、第1の樹脂ネット3Aと第2の樹脂ネット3Bとは所定の間隔をおいて複数箇所にてそれぞれ該線状体5によって結束されている。これにより、編組体2の内部は、図示の通り複数の室に区画されており、各室にそれぞれ破砕ゴム片4が充填されている。
【0027】
この結束用線状体5は、金属や樹脂等の種々の材質より構成される。
【0028】
この実施の形態では、破砕ゴム片4は、廃タイヤの破砕ゴム片である。この廃タイヤ破砕ゴム片は、廃タイヤを機械的な処理により破砕したものである。
【0029】
かかる構成の地盤補強構造体1にあっては、編組体2の第1の樹脂ネット3Aと第2の樹脂ネット3Bとの間に破砕ゴム片4が充填されているため、厚みがあり、根切り部等の地中に充填される地盤補強構造体として好適である。また、この地盤補強構造体1は主として樹脂とゴムとから構成されているため、比較的軽量であり、運搬や据付け等の作業を楽に行うことができる。
【0030】
さらに、この地盤補強構造体は、編組体2に充填された破砕ゴム片4の弾力性により、振動吸収性に優れている。しかも、各樹脂ネット3A,3Bの網目開口と、破砕ゴム片4同士の間隙とを通して透水性も確保される。
【0031】
この実施の形態では、破砕ゴム片4として廃タイヤの破砕ゴム片を用いているので、廃タイヤを有効利用することができる。
【0032】
上記の実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、この実施の形態では、長手方向樹脂部3dのみを延伸させてなる樹脂ネット3A,3Bを用いているが、幅方向樹脂部も延伸させた樹脂ネットを用いてもよい。
【0034】
この実施の形態では結束用線状体5を用いて第1の樹脂ネット3Aと第2の樹脂ネット3Bとを編み組みしているが、両者の樹脂部同士を接着や溶着等により結合して編組体としてもよい。
【0035】
編組体2内に充填される破砕ゴム片4として廃タイヤ以外の破砕ゴム片を用いてもよい。破砕ゴム片4は、単なる集合体として編組体2に充填されてもよく、予め相互に結合されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係る地盤補強構造体の斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 地盤補強構造体
2 編組体
3A 第1の樹脂ネット
3B 第2の樹脂ネット
3a 穴部
3b,3d 樹脂部
3c 凸部
4 破砕ゴム片
5 結束用線状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂ネットと第2の樹脂ネットとを重ね合わせて編み組みしてなる編組体と、
該編組体の樹脂ネット間に充填された破砕ゴム片と
を備えてなる地盤補強構造体。
【請求項2】
請求項1において、該樹脂ネットは、長尺の樹脂シートに、長手方向及び幅方向に規則的に配列された多数の穴部を形成し、該樹脂シートの長手方向樹脂部を該長手方向に延伸し、該穴部を該長手方向に延在する長穴状としてなるものであることを特徴とする地盤補強構造体。
【請求項3】
請求項2において、該樹脂シートの幅方向樹脂部に凸部が設けられていることを特徴とする地盤補強構造体。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記第2の樹脂ネットの一方の側に配置された第1の樹脂ネットの長手方向樹脂部の一部を第2の樹脂ネットの穴部を通して第2の樹脂ネットの反対側に押し込み、この押し込まれた第1の樹脂ネットの長手方向樹脂部と、第2の樹脂ネットの長手方向樹脂部との間に結束用線状体を挿通することにより、第1の樹脂ネットと第2の樹脂ネットとが編み組みされていることを特徴とする地盤補強構造体。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記樹脂シートは超高分子量ポリエチレン樹脂シートであることを特徴とする地盤補強構造体。
【請求項6】
請求項5において、該超高分子量ポリエチレンの分子量は1000〜1000万であることを特徴とする地盤補強構造体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記破砕ゴム片は廃タイヤの破砕ゴム片であることを特徴とする地盤補強構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−90077(P2006−90077A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279694(P2004−279694)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】