説明

地盤貫入部材用の把持装置およびそれを用いた地盤貫入部材の施工方法並びに基礎構造

【課題】地盤貫入部材用の把持装置およびそれを用いた施工方法を提供すること。
【解決手段】縦向きに配置された縦板部分に掴み部2を有するホルダー本体3の下部に、横方向に間隔をおいて、複数の機械式クランプ金具6が設けられ、その機械式クランプ金具6は、間隔をおいた一対のアーム10を備えていると共に前記一対のアーム10間に側方および下方が開口された溝32を備え、前記アーム10には、把持用ボルト12が横向きに設けられている地盤貫入部材用の把持装置。前記装置を用いて、地盤貫入部材15の頭部を把持すると共に、地盤貫入部材用の把持装置1の縦向きの掴み部2をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置1を介して地盤貫入部材15に振動を与えながら、地盤貫入部材15を地中に貫入または地中から引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭あるいは鋼矢板等の地盤貫入部材の頭部を把持して、地盤貫入部材を地盤(または地中)に貫入するように打ち込んだり、地盤貫入部材を地中から引き抜いたりする場合に用いられる地盤貫入部材用の把持装置、およびその装置を用いた地盤貫入部材の施工方法並びに基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭あるいは鋼矢板等の地盤貫入部材の頭部を、突起を有する面状の油圧式チャックにより把持して、バイブロハンマにより地盤貫入部材に振動を与えて、地盤貫入部材を地中に貫入させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記のような場合には、例えば、図64に示すように、小径の鋼管杭等の地盤貫入部材15では、その上端部に、チャッキングプレート33を予め溶接により固定した地盤貫入部材15が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−299562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の場合には、油圧式チャックを使用するので、油圧駆動設備が必要になる。このため、油圧駆動設備を現場に搬送して駆動して、圧油により各チャックを駆動するようになるから、油圧駆動設備費用およびその搬送費用がかかるばかりでなく、油圧ホースの配設作業も必要になり、現場作業が煩雑になり施工コストも高くなる。
前記のように、地盤貫入部材の上部を油圧式チャックにより把持する場合には、図64に示すように、地盤貫入部材の内面にチャッキングプレート33の基端側を縦方向に溶接により固定する必要があるため、溶接される部分(地盤貫入部材側およびチャキングプレート側)には、溶接熱による熱影響部(硬化する部分)が生じることになる。
また、前記のように地盤貫入部材14の頭部にチャッキングプレート33を溶接により固定して、油圧式チャックにより把持するようにすると、現場において、チャッキングプレート33の基端側を溶接している部分を溶断し、地盤貫入部材15における溶断した部分をグラインダー等により平坦に調整する必要がある。
これは、図61〜図63に示すように、ずれ止め部材25を地盤貫入部材に配設し溶接により固定するために(鋼管杭の場合には、環状のずれ止め部材25を鋼管杭内面または外面に固定するために)、前記グラインダー等による切削仕上げを行わなかったり、あるいは、前記グラインダー等による切削仕上げが不十分で凹凸がある場合には、環状のずれ止め部材25と地盤貫入部材との間に隙間が発生し、溶接ができなかったり、溶接ができたとしても溶接欠陥を残置することになり、外力が作用したときに前記溶接欠陥部に応力集中などの悪影響を受けることがある。
また、前記のように、チャキングプレートの溶接による地盤貫入部材への固定、地盤貫入部材打設後のチャキングプレート溶接部の溶断、グラインダー仕上げ等コストが嵩むと共に施工工期を要した後に、基礎地盤を根切りし、その後、図61〜図63に示すように、ずれ止め部材25を溶接により地盤貫入部材15に取り付ける必要があるので、鋼管杭等の地盤貫入部材の工事コストが嵩むという問題がある。
具体的には、図61に示すように、地盤貫入部材15の内周面あるいは外周面に、帯状鋼板等のずれ止め部材25を溶接により固定して、これらを埋め込むようにコンクリート
29を打設してフーチングまたは頂版31と一体化したり、図62に示すように、地盤貫入部材15の内周面に、帯状鋼板等のずれ止め部材25を溶接により固定すると共に、地盤貫入部材15とフーチングまたは頂版31とに渡って連結用鉄筋籠26をコンクリート29内に埋め込み配置して、フーチングまたは頂版31との一体化したり、図63に示すように、地盤貫入部材15の内周面に、上下に間隔をおいて複数の帯状鋼板等のずれ止め部材25を溶接により固定すると共に、連結用鉄筋26を地盤貫入部材15の外周面に溶接により固定して、これらを埋め込むようにコンクリート29を打設してフーチングまたは頂版31との一体化するようになる。これらの作業は現場作業になるため、現場施工が煩雑であり、施工コストを高めることになるから、チャッキングプレートの設置作業あるいはその撤去作業のための溶断および平滑化作業を省略することができると、地盤貫入部材1本当たりの単価および施工コストを軽減することができ、多数の地盤貫入部材15を施工する基礎工事では、格段に施工コストを低減することができるばかりでなく、地盤貫入部材の上端にチャッキングプレートの溶接による固定または溶断あるいはグラインダー仕上げ等により品質が低下する恐れを排除することができるようになる。
【0005】
なお、バイブロハンマにより地盤貫入部材に振動を与えて、地盤貫入部材を地中に貫入させる工法では、地盤貫入部材が振動することで、地盤貫入部材と地盤との摩擦を低減して地中に貫入させる工法であるので、貫入力は、地盤貫入部材の自重とバイブロハンマの重量等である。油圧式チャックにより、地盤貫入部材を把持すると、把持力が大きいため、貫入抵抗が大きな施工条件下では、地盤貫入部材の頭部に亀裂を生じて損傷したりすることがある。また、所定の曲率を有する面状のプレートからなる油圧式チャックではあるが、地盤貫入部材の曲率との差異が大きいと、地盤貫入部材の頭部が変形することもある。
鋼管杭16等の地盤貫入部材15の上部が損傷した場合には、地盤貫入部材15の上部を切断して、再度チャッキングプレートを固定して、図61〜図63に示すような構造にするため、一層、現場施工が煩雑であり、施工コストを高めることになる。
前記のように、従来の場合には、地盤貫入部材15を把持する場合に、油圧式チャックにより把持する形態であるので、直径800mm程度以上の鋼管杭等地盤貫入部材15の内径寸法が大きい場合には、油圧式チャックの取付部空間を確保することも容易であるが、直径600mmあるいは直径400mm程度以下の小型の地盤貫入部材15を把持してバイブロハンマに接続できるような地盤貫入部材用の把持装置では、当然小型となるため、油圧式チャックでは、これを取り付ける余裕が少なくなる。
また、油圧式チャックを備えた把持装置では、前記のように、油圧駆動装置および高圧ホース等の油圧設備が必要になるため、特に、水域において鋼管杭等の地盤貫入部材を打設するには、現場施工が煩雑になり、施工コストが高くなるという問題がある。
本発明は、油圧式チャックを使用することなく、地盤貫入部材にチャキングプレートを設置する必要もないため、チャキングプレートの溶接による固定あるいはチャキングプレートの溶断等による前記従来の欠点を解消すると共に、バイブロハンマによる施工工法において用いられる鋼管杭あるいは鋼矢板等の地盤貫入部材の頭部を機械式に把持可能な簡単な構造の地盤貫入部材用の把持装置およびそれを用いた地盤貫入部材の施工方法並びに基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の地盤貫入部材用の把持装置においては、縦向きに配置された縦板部分に掴み部を有するホルダー本体の下部に、横方向に間隔をおいて、複数の機械式クランプ金具が設けられ、その機械式クランプ金具は、間隔をおいた一対のアームを備えていると共に前記一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記アームには、把持用ボルトが横向きに設けられていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジを一体に備え
ており、前記縦板部分が掴み部とされ、前記フランジが上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記フランジの下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする。
第3発明では、第2発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、短尺の横断面H形部材からなり、その短尺の横断面H形部材のウェブを縦板部分としていることを特徴とする。
第4発明では、第2発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、短尺の溝形鋼矢板からなり、その短尺の横断面溝形鋼矢板における傾斜したフランジ相互を接続しているウェブを縦板部分としていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする。
第6発明では、第2発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、上部ホルダー本体と下部ホルダー本体とを備え、前記上部ホルダー本体は、板状または横断面H形の上部ホルダー本体であり、その上部ホルダー本体の下部に、筒状の下部ホルダー本体が固定され、その筒状の下部ホルダー本体の下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする。
第7発明では、第4発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記フランジの下端部および前記縦板部分の下端部に、それぞれ機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする。
第8発明では、第1発明の地盤貫入部材用の把持装置において、ホルダー本体はその下部に横板を一体に備えており、前記横板に、機械式クランプ金具が上下方向および水平回りに位置調整可能に設けられていることを特徴とする。
第9発明では、第8発明の地盤貫入部材用の把持装置において、横板に機械式クランプ金具における上部縦雄ねじ軸部が挿通されて、上部縦雄ねじ軸部にねじ込まれると共に横板に圧着された雌ねじ部材により、機械式クランプ金具は、横板に位置調整可能に固定されてていることを特徴とする。
第10発明では、第8発明または第9発明の地盤貫入部材用の把持装置において、ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジを一体に備えており、前記縦板部分が掴み部とされ、前記フランジが上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記縦板部分および各フランジの下端部に横板が設けられていることを特徴とする。
第11発明では、第10発明の地盤貫入部材用の把持装置において、ホルダー本体は、短尺の横断面H形部材、短尺の溝形鋼矢板または短尺のハット形鋼矢板のいずれかの下端部に横板を備えていることを特徴とする。
第12発明では、第1発明〜第11発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置において、前記機械式クランプ金具は、逆U字状のクランプ金具本体を備え、そのクランプ金具本体における間隔を置いた一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記両方のアームには、先端に食い込み用突起部を有する把持用ボルトが設けられていることを特徴とする。
第13発明では、第1発明〜第11発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置において、前記機械式クランプ金具は、逆U字状のクランプ金具本体を備え、そのクランプ金具本体における間隔を置いた一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記一方のアームには、先端に食い込み用突起部を有する把持用ボルトが設けられ、他方のアーム内側には、先端に食い込み用突起部を有する把持片が設けられていることを特徴とする。
第14発明では、第1発明〜第13発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置において、前記機械式クランプ金具は、平面視で、対称または等角度間隔をおいて配置されていることを特徴とする。
第15発明の地盤貫入部材の施工方法では、第1発明〜第14発明のいずれかの地盤貫
入部材用の把持装置により、地盤貫入部材の頭部を把持すると共に、前記地盤貫入部材用の把持装置の縦向きの掴み部をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置を介して地盤貫入部材に振動を与えながら、地盤貫入部材を地中に貫入または地中から引き抜くことを特徴とする。
第16発明の基礎構造では、第1発明〜第14発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置により、地盤貫入部材の頭部を把持すると共に、前記地盤貫入部材用の把持装置の縦向きの掴み部をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置を介して地盤貫入部材に振動を与えながら、地中に地盤貫入部材を貫入し、その貫入された地盤貫入部材を基礎杭としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、縦向きに配置された縦板部分に掴み部を有するホルダー本体の下部に、横方向に間隔をおいて、複数の機械式クランプ金具が設けられ、その機械式クランプ金具は、間隔をおいた一対のアームを備えていると共に前記一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記アームには、把持用ボルトが横向きに設けられているので、簡単で安価な地盤貫入部材用の把持装置とすることができ、また、複数の機械式クランプ金具が設けられているので、地盤貫入部材の頭部を機械式把持装置により、簡単に機械式に把持したり、把持解除することができる等の効果が得られる。
また、本発明の地盤貫入部材用の把持装置を用いると、予め地盤貫入部材の頭部にチャッキングプレートを設置する必要がないので、地盤貫入部材が安価になり、従来のようにチャッキングプレートを現場において溶断撤去する現場作業がなくなり、現場作業が容易になる。従来のように、チャキングプレートを地盤貫入部材に溶接により固定したり、溶断する必要がないため、溶接熱による熱影響部が生じることはなく、また溶断により生じる凹凸部についてのグラインダー等による平坦化の切削仕上げすることはない等の効果がある。
第2発明によると、第1発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジを一体に備えており、前記縦板部分が掴み部とされ、前記フランジが上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記フランジの下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられているので、第1発明の効果に加えて、横方向に張り出すフランジの下端部に機械式クランプ金具に設けることができ、そのため、平面視で、地盤貫入部材が縦板部分から横方向にはみ出す形態であっても、そのような地盤貫入部材に地盤貫入部材用の把持装置を容易に取り付けることができる効果が得られる。
第3発明によると、第2発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、短尺の横断面H形部材からなり、その短尺の横断面H形部材のウェブを縦板部分としているので、前記第2発明の効果に加えて、さらに市販のH形鋼あるいは鋼板などを適宜加工(切断加工あるいは溶接組み立て加工)して、容易に短尺の横断面H形部材を構成することができ、これを用いて安価な地盤貫入部材用の把持装置とすることができる効果が得られる。
第4発明によると、第2発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、短尺の溝形鋼矢板からなり、その短尺の横断面溝形鋼矢板における傾斜したフランジ相互を接続しているウェブを縦板部分としているので、継手付きあるいは継手を備えていない溝形鋼矢板などを適宜加工(切断加工)して、容易に短尺の溝形鋼矢板を構成することができ、これを用いて安価な地盤貫入部材用の把持装置とすることができる効果が得られる。
第5発明によると、第1発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられているので、簡単な構造で安価な地盤貫入部材用の把持装置とすることができる等の効果が得ら
れる。
第6発明によると、第2発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記ホルダー本体は、上部ホルダー本体と下部ホルダー本体とを備え、前記上部ホルダー本体は、板状または横断面H形の上部ホルダー本体であり、その上部ホルダー本体の下部に、筒状の下部ホルダー本体が固定され、その筒状の下部ホルダー本体の下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられているので、地盤貫入部材用の把持装置の本体を構成する場合に、上部ホルダー本体と下部ホルダー本体とを適宜組み合わせることにより、地盤貫入部材の平面形態に容易に対応可能な地盤貫入部材用の把持装置の本体を構成することができ、また、その下部ホルダー本体の下端部に機械式把持装置を取り付けるだけで、各種の地盤貫入部材用の把持装置とすることができる効果が得られる。
第7発明によると、第4発明の地盤貫入部材用の把持装置において、前記フランジの下端部および前記縦板部分の下端部に、それぞれ機械式クランプ金具が設けられているので、前記フランジの下端部および前記縦板部分の下端部の両方に機械式クランプ金具を設けた地盤貫入部材用の把持装置とすることができ、そのような地盤貫入部材用の把持装置を用いて、地盤貫入部材の多数箇所を把持し安定した状態で地盤貫入部材を保持した状態で、バイブロハンマを用いて、地盤貫入部材を地盤に貫入したり、地盤から引き抜いたりすることができる効果が得られる。
第8発明によると、第1発明の地盤貫入部材用の把持装置において、ホルダー本体はその下部に横板を一体に備えており、前記横板に、機械式クランプ金具が上下方向および水平回りに位置調整可能に設けられているので、機械式クランプ金具の位置を調整して、各種の地盤貫入部材を把持することが可能な、地盤貫入部材用の把持装置とすることができ、また、機械式クランプ金具を機械的に取り付けることができる。
第9発明によると、第8発明の地盤貫入部材用の把持装置において、横板に機械式クランプ金具における上部縦雄ねじ軸部が挿通されて、上部縦雄ねじ軸部にねじ込まれると共に横板に圧着された雌ねじ部材により、機械式クランプ金具は、横板に位置調整可能に固定されているので、機械式クランプ金具における上部縦雄ねじ軸部にねじ込まれた雌ねじ部材を緩めた状態で、機械式クランプ金具の上下方向および水平回りの位置を調整して、前記雌ねじ部材を回動して横板に圧着することで、機械式クランプ金具の位置を調整して各種の地盤貫入部材を把持することができる。
第10発明によると、第8発明または第9発明の地盤貫入部材用の把持装置において、ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジを一体に備えており、前記縦板部分が掴み部とされ、前記フランジが上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記縦板部分および各フランジの下端部に横板が設けられているので、曲げ剛性を高めたホルダー本体とすることができ、平面視で、地盤貫入部材が縦板部分から横方向にはみ出す形態であっても、横板に機械式クランプ金具を取り付けて、各種の地盤貫入部材に地盤貫入部材用の把持装置を容易に取り付けることができる効果が得られる。
第11発明によると、第10発明の地盤貫入部材用の把持装置において、ホルダー本体は、短尺の横断面H形部材、短尺の溝形鋼矢板または短尺のハット形鋼矢板のいずれかの下端部に横板を備えているので、市販の横断面H形部材または溝形鋼矢板鋼材あるいはハット形鋼矢板を短尺に切断しその下端部に横板を固定するだけで、曲げ剛性を高めたホルダー本体とすることができ、平面視で、地盤貫入部材が縦板部分から横方向にはみ出す形態であっても、横板に機械式クランプ金具を取り付けて、各種の地盤貫入部材に地盤貫入部材用の把持装置を容易に取り付けることができる。また、地盤貫入部材と同様な平面形態のホルダー本体とすることもでき、地盤貫入部材用の把持装置の縦中心軸線を地盤貫入部材の縦中心軸線に合致または近い位置で貫入させることができるため、安定した状態で、地盤貫入部材を地盤に貫入したり、引き抜いたりすることができる効果が得られる。
第12発明によると、第1発明〜第11発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置において、前記機械式クランプ金具は、逆U字状のクランプ金具本体を備え、そのクランプ金具本体における間隔を置いた一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、
前記両方のアームには、先端に食い込み用突起部を有する把持用ボルトが設けられているので、両方のアームに設けられた把持用ボルトにおける先端部により地盤貫入部材の頭部の表裏両面から確実に把持することができる効果が得られる。
第13発明によると、第1発明〜第11発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置において、前記機械式クランプ金具は、逆U字状のクランプ金具本体を備え、そのクランプ金具本体における間隔を置いた一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記一方のアームには、先端に食い込み用突起部を有する把持用ボルトが設けられ、他方のアーム内側には、先端に食い込み用突起部を有する把持片が設けられているので、把持用ボルトにおける先端部および先端に食い込み用突起部を有する把持片により地盤貫入部材の頭部の表裏両面から確実に把持することができる効果が得られる。
第14発明によると、第1発明〜第13発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置において、前記機械式クランプ金具は、平面視で、対称または等角度間隔をおいて配置されているので、地盤貫入部材用の把持装置は、その重心の位置が一定し安定した地盤貫入部材用の把持装置とすることができ、したがって、地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に安定性よく取り付けることができ、地盤貫入部材をバイブロハンマにより地盤に貫入または引く抜く場合に、地盤貫入部材を安定性よく、貫入したり、引き抜くことができるなどの効果が得られる。
第15発明の地盤貫入部材の施工方法によると、第1発明〜第14発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置により、地盤貫入部材の頭部を把持すると共に、前記地盤貫入部材用の把持装置の縦向きの掴み部をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置を介して地盤貫入部材に振動を与えながら、地盤貫入部材を地中に貫入または地中から引き抜くので、複数の機械式クランプ金具が設けられている簡単で安価な地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材の頭部に機械式に簡単に取り付けて、地盤貫入部材を地盤に貫入させたり、引き抜いたりすることができる。また、予め地盤貫入部材の頭部にチャッキングプレートを設置する必要がないので、現場作業が格段に向上するので、施工コストを低減することができる。
第16発明の基礎構造によると、第1発明〜第14発明のいずれかの地盤貫入部材用の把持装置により、地盤貫入部材の頭部を把持すると共に、前記地盤貫入部材用の把持装置の縦向きの掴み部をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置を介して地盤貫入部材に振動を与えながら、地盤貫入部材を地中に貫入し、その貫入された地盤貫入部材を基礎杭としたので、頭部にチャッキングプレートを設置する必要がない地盤貫入部材を用いた基礎杭とすることができ、地盤貫入部材の頭部の品質が向上し、施工コストの安価な基礎構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)は把持用ボルトの先端部を示す一部縦断側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置の斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示す斜視図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4の正面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は、先端に食い込み用突起部を有する把持片を備えたアーム部付近を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を他の地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図12】本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を他の地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は図11の正面図、(b)は平面図である。
【図13】本発明の第3実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図15】本発明の第4実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図16】本発明の第4実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図17】本発明の第5実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図18】本発明の第5実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図19】本発明の第6実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図20】本発明の第6実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図21】本発明の第7実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図22】本発明の第7実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図23】本発明の第7実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図24】本発明の第7実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図25】本発明の第8実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図26】本発明の第8実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図27】本発明の第8実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図28】本発明の第8実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図29】本発明の第9実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図30】本発明の第9実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図31】本発明の第9実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図32】本発明の第9実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図33】本発明の第10実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図34】本発明の第10実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図35】本発明の第10実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図36】本発明の第10実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図37】本発明の第11実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図38】本発明の第11実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図39】本発明の第11実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図40】本発明の第11実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図41】本発明の第12実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図42】本発明の第12実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図43】本発明の第12実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図44】本発明の第12実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図45】本発明の第13実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図46】本発明の第13実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図47】本発明の第13実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図48】本発明の第13実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図49】本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図50】本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図51】本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図52】本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図53】本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図54】本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図55】本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図56】本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を示すものであって、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図57】本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図58】本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図59】本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図60】本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置を地盤貫入部材に装着した状態を示すものであって、(a)は側面図、(b)および(c)は斜視図である。
【図61】従来の地盤貫入部材と上部構造物との連結構造の第1例を示す一部縦断正面図である。
【図62】従来の地盤貫入部材と上部構造物との連結構造の第2例を示す一部縦断正面図である。
【図63】従来の地盤貫入部材と上部構造物との連結構造の第3例を示す一部縦断正面図である。
【図64】鋼管杭からなる地盤貫入部材の上端部にチャッキングプレートを固定した地盤貫入部材を示す一部縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1を示すものであって、縦向きの掴み部2を有するホルダー本体3の下部に、横方向に間隔をおいて、複数の機械式クランプ金具6が等角度間隔をおいて複数(図示の場合は90°の間隔をおいて4つ)設けられている。前記の地盤貫入部材用の把持装置1は鋼製材料により製作されている。
【0011】
この第1実施形態では、ホルダー本体3は、ウェブ7の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジ8を一体に備えており、前記ウェブ7の上部が掴み部2とされ、前記ウェブ7およびフランジ8が上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記各フランジ8の巾方向中間部でその下端部に、下面側および側方に開口する切り欠きが設けられ、その切り欠きに機械式クランプ金具6の本体部分が嵌合配置されて溶接Wによりフランジ8に固定されて、前記フランジ8に機械式クランプ金具6が設けられている。
前記の各機械式クランプ金具6は、その中心軸線が、平面視で、地盤貫入部材用の把持装置1の重心を通るように配置され、また、前後の各機械式クランプ金具6は左右方向の中心軸線を中心にして対称に配置され、左右の各の各機械式クランプ金具6は前後方向の中心軸線を中心にして対称に配置されている。
ホルダー本体3に機械式クランプ金具6を設ける場合に、機械式クランプ金具6は、複数設けられ、機械式クランプ金具6の中心軸線が、平面視で、地盤貫入部材用の把持装置1の重心を通るように、かつ機械式クランプ金具6が点対称または線対称に配置されている形態とされている。
【0012】
この第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1における前記機械式クランプ金具6は
、正面ほぼ逆U字状のクランプ金具本体9を備え、そのクランプ金具本体9における間隔を置いた一対の下向きに突出するアーム10間に側方および下方が開口された溝32を備え、前記各アーム10には、貫通する横向きの雌ねじ孔が設けられ、その雌ねじ孔に、先端に食い込み用突起部11を有する把持用ボルト12が横向きにそれぞれねじ込まれ、前記把持用ボルト12には、ロックナット13がねじ込まれている。
また、前記各フランジ8の外面には、吊り上げ用および握り兼用の金具14が上下方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0013】
なお、前記第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1の本体部分は、H形鋼が用いられ、H形鋼におけるフランジの巾方向の両端部の上部が台形状に切り欠かれて、台形状の切り欠き部を下側に反転配置してフランジ下部側端に溶接により固定して、フランジ8の下端部の幅を広げ、その広げられたフランジ8に機械式クランプ金具6の本体を固定するようにした形態である。
【0014】
図4〜図6には、前記第1実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1を鋼管杭16の上部に装着して把持した状態が示されている。
地盤貫入部材用の把持装置1に地盤貫入部材用の把持装置1を装着する場合に、地盤貫入部材用の把持装置1は、その本体部分が地盤貫入部材15に対して、載置されていても、浮き上がった状態でもよく、各機械式クランプ金具6により地盤貫入部材15が確実に把持されていればよい。
【0015】
前記の地盤貫入部材用の把持装置1を鋼管杭16等の地盤貫入部材15に装着する場合には、地盤貫入部材用の把持装置1の機械式クランプ金具6における各把持用ボルト12を後退させた状態で、地盤貫入部材用の把持装置1の上部の掴み部2を、杭施工機におけるバイブロハンマにおけるクランプ装置により把持し、その状態で鋼管杭16等の地盤貫入部材15上に吊り上げ配置し降下させて、各アーム10間に鋼管杭16上端部の周側板17を配置する。その状態で、前記把持用ボルト12を回動工具(図示を省略)により前進するように回動して地盤貫入部材15の表裏両面を把持用ボルト12先端が食い込むように把持すると共にロックナット13を前進するように回動してアーム10に圧着することで、把持用ボルト12の緩み止を図る。この形態では、地盤貫入部材15が鋼管杭16であるために、機械式クランプ金具6における把持用ボルト12を鋼管杭16の法線方向から確実に噛み込むようにして把持するようにした形態である。
前記の状態で、電動式バイブロハンマによる振動および地盤中に貫入に必要な圧入荷重を掛けて、地盤貫入部材15を地盤18(図61等参照)に貫入させたり、地盤中から引き抜きに必要な引き抜き力を作用させて、地盤貫入部材15を地盤18から引き抜くようにされる。前記の地盤貫入部材15から地盤貫入部材用の把持装置1を取り外す場合には、ロックナット13を後退するように緩めた状態で、把持用ボルト12を後退移動し、地盤貫入部材用の把持装置1をバイブロハンマにおけるクランプ装置(図示を省略した)と共に引き上げればよい。
【0016】
また、適宜簡易クレーンおよび複数の地盤貫入部材用の把持装置1を使用し、地盤貫入部材15を地盤18に貫入または引き抜きが終了した地盤貫入部材15から地盤貫入部材用の把持装置1の取り外し作業と、地盤貫入部材用の把持装置1を地盤貫入部材15の上端部に取り付けた状態での地盤貫入部材15の貫入または引き抜き作業とを、交互に施工する施工法でもよい。または、前記各作業を、バイブロハンマを備えた複数の施工機を用いて同時に施工する施工法も可能になり、施工効率が格段に向上する。
【0017】
以下の実施形態では、ホルダー本体3の形状と、これに設けられる機械式クランプ金具6の配置状態が前記実施形態と相違しているので、同様な部分には、同様な符号を付し、相違する部分を主に説明する。なお、吊り上げ用および握り兼用の金具14は省略されて
おり、適宜ホルダー本体3に設けられる。
【0018】
図7〜図8には、本発明の第2実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第2実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、溝形鋼矢板を短尺に切断すると共に機械式クランプ金具6を嵌合配置するための切り欠きを、傾斜したフランジ8およびこれら傾斜したフランジ8相互を接続しているウェブ7下端に対称に設け、前記切り欠きに機械式クランプ金具本体9を嵌合配置すると共に、溶接により固定している。この形態では、短尺鋼矢板におけるウェブ7を掴み部2としている。
また、この形態では、ウェブ7および傾斜したフランジ8に、平面視で対称に、機械式クランプ金具6を設置するようにしている。
【0019】
前記実施形態においては、機械式クランプ金具6は、逆U字状のクランプ金具本体9を備え、そのクランプ金具本体9における間隔を置いた一対のアーム10間に側方および下方が開口された溝32を備え、両方のアーム10に把持用ボルト12の先端部相互が対向するように設けられている形態を示したが、本発明を実施する場合、前記一方のアーム10には、先端に食い込み用突起部11を有する把持用ボルト12を設け、他方のアーム10内側には、先端に食い込み用突起部を有する把持片34(図7(c)参照)を設ける形態としている。
他方のアーム10の内側に設ける先端に食い込み用突起部を有する把持片34としては、例えば、他方アーム10に把持用ボルト(六角頭部を備えていないボルト)を他方のアーム10にねじ込み、その把持用ボルト12の先端が他方のアーム10から突出した状態で溶接により固定することで、先端に食い込み用突起部を有する把持片としてもよい。あるいは、他方のアーム10の内側に、先端に食い込み用突起部を有する把持片34の基端側を、溶接により固定する形態でもよい。このような形態では、他方のアーム10の把持片が横方向に移動しないので、一方のアーム10の把持用ボルト12を前進移動または後退移動して、地盤貫入部材15を把持(または離反)するようになる。なお、前記実施形態のように、両方のアーム10にそれぞれ把持用ボルト12を前進移動または後退移動可能に設ける方が、地盤貫入部材の頭部の形態が多少変形していても、容易に対応して、確実に把持用ボルト12の先端の食い込みよう突起部11を食い込ませるようにして把持することができる。
この第2実施形態では、図9および図10に示すように、地盤に打設して貫入しようとする地盤貫入部材15としての溝形鋼矢板19の上端部のウェブおよびフランジを把持するように取り付けたり、または図11および図12に示すように、溝形鋼矢板19の部分を備えていると共に前記溝形鋼矢板19のウェブ中間部に交差する方向の接続用矢板20を備えている異形鋼矢板21(地盤貫入部材15)における前記溝形鋼矢板19の部分の上端部にこれを把持するように取り付けることで、地盤貫入部材15としての溝形鋼矢板19あるいは接続用矢板20部分を備えた異形鋼矢板21を、クランプ部を備えたバイブロハンマにより、地盤に貫入したり、引き抜いたりすることができる。
この形態では、ホルダー本体3と把持しようとする地盤貫入部材15における溝形鋼矢板19が、平面視でかさなるように配置可能な形態であるために、把持用ボルト12を地盤貫入部材15におけるウェブに対して直角に配置可能で、確実に把持用ボルト12の先端の食い込みよう突起部11を食い込ませるようにして把持することができる。
【0020】
図13および図14には、本発明の第3実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第3実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、上部ホルダー本体4と下部ホルダー本体5とを備え、前記上部ホルダー本体4は、横断面H形部材の上部ホルダー本体4であり、その下部ホルダー本体5の上部に、断面H形部材のフランジを嵌合可能な切り欠きが設けられ、その切り欠きに断面H形部材の上部ホルダー本体4の下部が嵌合されて溶接により下部ホルダー本体5に固定され、前記の筒状の下部ホルダー本体5の下端部に、等角度間隔をおいて複数(図示の場合は、90°間隔
をおいて4つ)の切り欠きが設けられ、その切り欠きに機械式クランプ金具6の本体部分が嵌合されて溶接Wにより固定されて、ホルダー本体3に機械式クランプ金具6が設けられている。この形態では、下部ホルダー本体5を、地盤貫入部材15としての鋼管杭16の一部を切断して短尺とすると、下部ホルダー本体5と鋼管杭16とが同じ外径および内径となり、そのような下部ホルダー本体5に機械式クランプ金具6が等角度間隔をおいて設けられている。
【0021】
図15および図16には、本発明の第4実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第4実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、前記の形態と同様であり、機械式クランプ金具が相違している。この形態は、機械式クランプ金具6におけるアーム10に、一つまたは上下方向に間隔をおいて複数の把持用ボルト12を設けてもよいことを示す代表形態である。図示の形態では、90°間隔をおいて、各アーム10に一つ把持用ボルトを備えた機械式クランプ金具6と、各アーム10に上下方向に間隔をおいて二つ把持用ボルト12を備えた機械式クランプ金具6とを交互に配置することにより、平面視で、機械式クランプ金具6を対称に配置するようにしている。
このように、アーム10に上下方向に間隔をおいて二つ把持用ボルト12を備えた機械式クランプ金具6を設けると、鋼管杭16等の地盤貫入部材15を把持する場合に、上下に分散して把持することができ、把持する場合の応力集中を緩和することができ、また、上下にレベル差を設けて把持することで、確実に把持することができる。
【0022】
図17および図18には、本発明の第5実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第5実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、上部ホルダー本体4として、厚鋼板からなる矩形状鋼板22が用いられ、これを縦向きに筒状の下部ホルダー本体5の内側に配置して、溶接により固定した形態で、矩形状鋼板22は、その重心が、中心地盤貫入部材用の把持装置1における重心と合致するように配置されている。したがって、機械式クランプ金具6は、平面視で、下部ホルダー本体5および上部ホルダー本体4に対して対称に配置されている。前記の矩形状鋼板22の上端部を掴み部2としている。
【0023】
図19および図20には、本発明の第6実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第6実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3に設けられる一つ置きの機械式クランプ金具6のアームを長くして、上下方向に間隔を置いて複数の横向きの把持用ボルト12を備えている形態とされ、ことは、図15に示す形態の場合と同様である。
【0024】
図21および図22には、本発明の第7実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第7実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、継手付きの短尺の溝形鋼矢板に代えて、継手を備えていない短尺の溝形鋼矢板が用いられている。また、継手を備えていない短尺の溝形鋼矢板における縦部分としてのウェブ7に設けられている機械式クランプ金具6と、傾斜したフランジ8に設けられている機械式クランプ金具6におけるアーム10の長さを異なる長さとし、ウェブ7に設けられている機械式クランプ金具6のアーム10を下向きに長いアーム10とし、傾斜したフランジ8に設けられている機械式クランプ金具6におけるアーム10を短いアーム10とし、横向きの把持用ボルト12に上下のレベル差を設けて干渉しないように、また、地盤貫入部材15に対してレベル差を設けて把持するようにした形態である。
このようにレベル差を設けることにより、地盤貫入部材15に対して同レベルで、多数箇所把持すると、同レベルにおける地盤貫入部材15の引張力の負担が大きくなるが、レベル差を設けることによりさせる低減することができる。
なお、前記のような継手を備えていない短尺の溝形鋼矢板であると、鋼板を冷間曲げ加
工により短尺の溝形鋼矢板を製造でき、地盤貫入部材用の把持装置1が安価になる。なお、この形態では、短尺の溝形部材を用いて、継手を備えていない短尺の溝形鋼矢板19としている。
【0025】
図23および図24には、図21および図22に示す第7実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1を異形鋼矢板21の上端部に取り付けた状態が示され、このようにホルダー本体3を、異形鋼矢板21における溝形鋼矢板19の継手部23(図11c参照)を除く本体部分と同様な寸法に設定することにより、容易に異形鋼矢板21に取り付けて、バイブロハンマを利用して、異形鋼矢板21を地盤に貫入したり引き抜いたりすることができる。
【0026】
図25および図26には、本発明の第8実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この形態は、地盤貫入部材15側の屈折ウェブに対して把持用ボルト12先端を直角に食い込ませるための代表的な形態である。この第8実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、短尺の溝形鋼矢板とされ、その短尺の溝形鋼矢板におけるウェブ7の下部に、ウェブ7に対して交差するように、かつ、ウェブ7と傾斜したフランジ8間側に形成されている溝側において、隣り合う機械式クランプ金具6が離反するように、さらに溝と反対側のウェブ7外側において、隣り合う機械式クランプ金具6が接近するように一対の機械式クランプ金具6が平面視で傾斜して配置されて、一対の機械式クランプ金具6の本体が溶接により固定されている。したがって、この形態では、各ウェブ7に対して切り欠きが、溝側において離反するように、溝と反対側において接近するように傾斜して設けられている。
このような形態の地盤貫入部材用の把持装置1であると、図27および図28に示すように、溝形鋼矢板19におけるウェブ7部分が溝側において凸となるように屈折された屈折ウェブ24付きの異形溝形鋼矢板19であっても、屈折ウェブ24を各機械式クランプ金具6により把持して、異形溝形鋼矢板19に容易に取り付けることができる。そのため、地盤貫入部材用の把持装置1を介して異形溝形鋼矢板19を容易に地盤に貫入したり、地盤から引き抜いたりすることができる。
【0027】
図29および図30には、本発明の第9実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第9実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、縦向きに配置された矩形状鋼板22からなり、その矩形状鋼板22の下端部に、矩形状鋼板22に対して交差するように、かつ矩形状鋼板22の片面側において、隣り合う機械式クランプ金具6が離反するように、さらに反対面側において、隣り合う機械式クランプ金具6が接近するように傾斜して配置されると共に一対の機械式クランプ金具6が嵌合配置されて、一対の機械式クランプ金具6の本体が溶接により矩形状鋼板22に固定されている。したがって、この形態では、一枚の矩形状鋼板22の下端部に、矩形状鋼板22に対して間隔をおいた一対の切り欠きが、傾斜して設けられている。
このような地盤貫入部材用の把持装置1であると、矩形状鋼板22に機械式クランプ金具6を対称配置して固定すればよいので、地盤貫入部材用の把持装置1の構造が簡単であると共に製作が容易で安価である。
【0028】
図31および図32には、図29および図30に示す地盤貫入部材用の把持装置1を屈折ウェブ24付きの異形溝形鋼矢板19における屈折ウェブ24に取り付けた形態が示されている。前記のような地盤貫入部材用の把持装置1であると、屈折ウェブ24を有する異形溝形鋼矢板19であっても、把持用ボルト12先端を屈折ウェブ24における鋼板部分に直角に噛み込むように把持して、容易に屈折ウェブ24に取り付けることができる。
【0029】
図33および図34には、本発明の第10実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第10実施形態では、図25および図26に示す第8実施形態における
機械式クランプ金具6の配置状態が異なるが、その他の形態は前記第8実施形態と同様である。この形態のように、ウェブ7に対して傾斜角を緩くした状態で切り欠きを設けて機械式クランプ金具6を嵌合し溶接により固定すると、図35および図36に示すように、屈折ウェブ24付きの異形溝形鋼矢板19における屈折ウェブ24の屈折角が大きくても、容易に対応して、屈折ウェブ24の部分を、地盤貫入部材用の把持装置1における機械式クランプ金具6により把持して、地盤貫入部材用の把持装置1を屈折ウェブ付き異形溝形鋼矢板19に取り付けることができる。
したがって、図示のような屈折ウェブ付き異形溝形鋼矢板19であっても、地盤貫入部材用の把持装置1を容易に取り付けることが可能で、バイブロハンマを利用して、地盤に貫入したり、引き抜いたりすることができる。
【0030】
図37および図38には、本発明の第11実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第11実施形態では、図29および図30に示す第9実施形態における機械式クランプ金具6の配置状態が異なるが、その他の形態は前記第9実施形態と同様である。この形態のように、矩形状鋼板22に対して傾斜角を緩くした状態で切り欠きを設けて機械式クランプ金具6を嵌合し溶接により固定すると、図39および図40に示すように、屈折ウェブ24付きの異形溝形鋼矢板19における屈折ウェブ24の屈折角が大きくても、容易に対応して、屈折ウェブ24の部分を、地盤貫入部材用の把持装置1における機械式クランプ金具6により把持して、地盤貫入部材用の把持装置1を屈折ウェブ付き異形溝形鋼矢板19に取り付けることができる。
【0031】
図41および図42には、本発明の第12実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第12実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、短尺の溝形鋼矢板19とされ、その短尺の溝形鋼矢板19におけるウェブ7の下部に、ウェブ7に対して交差するように、かつ、ウェブ7と傾斜した各フランジ8とにより形成されている溝側において、隣り合う機械式クランプ金具6が接近するように、さらに溝と反対側のウェブ7外側において、隣り合う機械式クランプ金具6が離反するように一対の機械式クランプ金具6が平面視で傾斜して配置されて、一対の機械式クランプ金具6の本体が溶接により固定されている。したがって、この形態では、各ウェブ7に対して切り欠きが、ウェブ7と傾斜した各フランジ8とにより形成されている溝側において接近するように、前記溝と反対側において離反するように傾斜して設けられている。
このような形態の地盤貫入部材用の把持装置1であると、図43および図44に示すように、溝形鋼矢板19におけるウェブ7部分が溝と反対側において凸となるように屈折された屈折ウェブ24付きの異形溝形鋼矢板19であっても、屈折ウェブ24を各機械式クランプ金具6により把持して、異形溝形鋼矢板19に容易に取り付けることができる。そのため、地盤貫入部材用の把持装置1を介して異形溝形鋼矢板19を容易に地盤に貫入したり、地盤から引き抜いたりすることができる。
【0032】
図45および図46には、本発明の第13実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第13実施形態では、地盤貫入部材用の把持装置1におけるホルダー本体3は、縦向きに配置された矩形状鋼板22からなり、その矩形状鋼板22の下端部に、平面視で、矩形状鋼板22に対して交差するように、かつ矩形状鋼板22の片面側において、隣り合う機械式クランプ金具6が接近するように、さらに反対面側において、隣り合う機械式クランプ金具6が離反するように傾斜して配置すると共に一対の機械式クランプ金具6が嵌合配置されて、一対の機械式クランプ金具6の本体が溶接により矩形状鋼板22に固定されている。したがって、この形態では、一枚の矩形状鋼板22の下端部に、矩形状鋼板22に対して間隔をおいた一対の切り欠きが、傾斜して設けられている。
この形態では、図29に示す第9実施形態を反転した形態であり、かつ一対の機械式クランプ金具6の傾斜配置は、図29に示す第9実施形態の場合よりも緩傾斜とされている。
このような地盤貫入部材用の把持装置1であると、矩形状鋼板22に機械式クランプ金具6を対称配置して固定すればよいので、地盤貫入部材用の把持装置1の構造が簡単であると共に製作が容易で安価である。
このような形態の地盤貫入部材用の把持装置1であると、前記実施形態と同様に、図45および図46に示すように、溝形鋼矢板19におけるウェブ7部分が溝と反対側において凸となるように屈折された屈折ウェブ24付きの異形溝形鋼矢板19であっても、屈折ウェブ24を各機械式クランプ金具6により把持して、異形溝形鋼矢板19に容易に取り付けることができる。そのため、地盤貫入部材用の把持装置1を介して異形溝形鋼矢板19を容易に地盤に貫入したり、地盤から引き抜いたりすることができる。
【0033】
前記各実施形態の場合には、機械式クランプ金具6をホルダー本体3に溶接により固定する形態を示したが、前記の機械式クランプ金具6は、ホルダー本体3に対して、上下方向あるいは水平回りに位置調整可能に設けられている形態でもよいので、次にこのような形態について説明する。
【0034】
図49および図50には、本発明の第14実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この形態は、地盤貫入部材用の把持装置1において、前記の機械式クランプ金具6は、ホルダー本体3に対して、上下方向あるいは縦向きに配置された上部雄ねじ軸部35の水平回りに位置調整可能に設けてもよいことを示すための代表形態である。
この第14実施形態では、横断面H形の鋼材からなるホルダー本体3は、その下端部に鋼板からなる水平な横板36を溶接により固定して一体に備えており、前記横板36には、平面視で前後方向の中心軸線および左右方向の中心軸線に対して対称に、上下方向に貫通する縦孔37が設けられ、その縦孔37に機械式クランプ金具6の上部雄ねじ軸部35が下側から挿入配置され、前記上部雄ねじ軸部35にねじ込まれた下側の雌ねじ部材38および上側の雌ねじ部材39の2つの雌ねじ部材38,39を前記横板36の上下両面から圧着することで、前記機械式クランプ金具6は、水平な横板36に固定されている。
【0035】
前記の機械式クランプ金具6の正面ほぼ逆U字状のクランプ金具本体9の基端部には、鉛直な上部雄ねじ軸部25をクランプ金具本体9にねじ込んで固定するか、溶接を併用して固定されている。
【0036】
このような形態では、上下の雌ねじ部材38,39を上下方向に位置調整して圧着固定することより、機械式クランプ金具6を、水平な横板36に対して、上下方向に位置調整してセットすることができる。また、上下の雌ねじ部材38,39のいずれか一方を緩めた状態で、上部雄ねじ軸部35を含めてクランプ金具本体9を所定の角度水平回動し、雌ねじ部材38,39を締め込んで固定することにより、機械式クランプ金具6を水平な横板36に対する水平回りの姿勢を調整して取り付けることができる。
このような形態の地盤貫入部材用の把持装置1であると、前記実施形態と同様に、地盤貫入部材15が、図51および図52に示すような溝側に凸の屈折ウェブ24を有する異形溝形鋼矢板19(異形鋼矢板21)、あるいは図53または図54に示すような溝側に凹の屈折ウェブ24を有する異形溝形鋼矢板19(異形鋼矢板21)であっても、機械式クランプ金具6の位置および水平回りの姿勢を調整して固定し、その状態で、屈折ウェブ24を各機械式クランプ金具6により把持して、異形溝形鋼矢板19(異形鋼矢板21)に容易に取り付けることができる。そのため、バイブロハンマを利用して地盤貫入部材用の把持装置1を介して異形溝形鋼矢板19を容易に地盤に貫入したり、地盤から引き抜いたりすることができる。
このような形態では、機械式クランプ金具6をその上部雄ねじ軸部35を中心とした水平周りの位置を調整するだけで、各種横断面形態の地盤貫入部材15に対応してその頭部を把持することができる。
【0037】
図示の実施形態では、雌ねじ部材38,39を、水平な横板36の上下両面に配置しているが、横板36の上側に2つの雌ねじ部材を圧着するように配置して緩み止を図るようにしてもよい。
【0038】
図55および図56には、本発明の第15実施形態の地盤貫入部材用の把持装置1が示されている。この第15実施形態では、機械式クランプ金具6におけるアーム10を長尺のアームとして、アーム10に上下方向に間隔をおいて複数の把持用ボルト12を設けた形態である。
図57および図58には、溝側に凸の屈折ウェブ24を有する異形溝形鋼矢板19(異形鋼矢板21)に取り付けた状態が示され、図59または図60には、溝側に凹の屈折ウェブ24を有する異形溝形鋼矢板19(異形鋼矢板21)に取り付けた形態が示されている。
機械式クランプ金具6を取り付ける水平な横板36を固定するホルダー本体3としては、横断面H形部材または溝形鋼矢板あるいはハット形鋼矢板をその軸方向に短尺に切断し、短尺の横断面H形部材、短尺の溝形鋼矢板または短尺のハット形鋼矢板のいずれかの下端部に水平な横板36を設けると、市販の横断面H形部材または溝形鋼矢板鋼材あるいはハット形鋼矢板を短尺に切断しその下端部に水平な横板を固定するだけで、曲げ剛性を高めたホルダー本体とすることができ、平面視で、地盤貫入部材15が縦板部分2から横方向にはみ出す形態であっても、水平な横板36に機械式クランプ金具6を取り付けて、各種の地盤貫入部材15に地盤貫入部材用の把持装置1を容易に取り付けることができる。また、地盤貫入部材15と同様な平面形態のホルダー本体とすることもでき、地盤貫入部材用の把持装置1の縦中心軸線を地盤貫入部材15の縦中心軸線に合致または近い位置で貫入させることができるため、安定した状態で、地盤貫入部材15を地盤に貫入したり、引き抜いたりすることができる。
【0039】
このような形態の地盤貫入部材用の把持装置1であると、異形溝形鋼矢板19であっても、屈折ウェブ24を各機械式クランプ金具6により把持して、異形溝形鋼矢板19に容易に取り付けることができる。そのため、地盤貫入部材用の把持装置1を介して異形溝形鋼矢板19を容易に地盤に貫入したり、地盤から引き抜いたりすることができる。
【0040】
次に、本発明の地盤貫入部材の施工方法について説明する。
【0041】
地盤貫入部材15の形態に応じて、地盤貫入部材15を確実に把持可能な地盤貫入部材用の把持装置1を適宜選択して用いて、地盤貫入部材15の頭部を把持し(例えば、図4等参照)、前記地盤貫入部材用の把持装置1の縦向きの掴み部2を電動式バイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態(図示を省略)で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置1を介して地盤貫入部材15に振動を与えながら、地盤貫入部材15を地中に貫入または地中から引き抜くようにすればよい。
【0042】
前記のように地盤貫入部材用の把持装置1を介して地盤貫入部材15に振動を与えながら、地盤貫入部材15を地中に貫入した場合には、その後、地盤貫入部材用の把持装置1を取り外し、地盤貫入部材15の周囲の地盤を根切りした後、地盤貫入部材15の上端部を切断することなく、図61〜図63に示す構造と同様に、地盤貫入部材15の上部にずれ止め部材25を溶接により固定し、その後、地盤貫入部材15におけるずれ止め部材25あるいは連結用鉄筋26を溶接により取り付けるか、あるいは連結用鉄筋籠26を配置し、鋼管杭16からなる地盤貫入部材15では、連結用鉄筋籠26を配置する前において、盲板等の底部型枠30を適宜地盤貫入部材15の上端部に係止した吊り金具を介して前記地盤貫入部材15に設置し、地盤貫入部材15の周りに、前後方向および左右方向の上部鉄筋27あるいは下部鉄筋28等を格子状に配筋して、コンクリート29を打設してフーチング31等の布基礎あるいは頂版31を構築する。
【0043】
次に、本発明の地盤貫入部材を用いた基礎構造について説明する。
【0044】
地盤貫入部材15の形態に応じて、地盤貫入部材15を確実に把持可能な地盤貫入部材用の把持装置1を適宜選択して用いて、地盤貫入部材15の頭部を把持し(例えば、図4等参照)、前記地盤貫入部材用の把持装置1の縦向きの掴み部2を電動式バイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態(図示を省略)で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置1を介して地盤貫入部材15に振動を与えながら、地盤貫入部材15を地中に貫入する。
【0045】
前記のように地盤貫入部材用の把持装置1を介して地盤貫入部材15に振動を与えながら、地盤貫入部材15を地中に貫入して、地盤貫入部材用の把持装置1を取り外し、地盤貫入部材15を用いた基礎構造とする。そしてそのような基礎構造を多数構築した後、地盤貫入部材15の周囲の地盤を根切りした後、地盤貫入部材15の上端部を切断することなく、図61〜図63に示す構造と同様に、地盤貫入部材15の上部にずれ止め部材25を溶接により固定し、その後、地盤貫入部材15におけるずれ止め部材25あるいは連結用籠鉄筋26を溶接により取り付け、鋼管杭16からなる地盤貫入部材15では、適宜、盲板等の底部型枠30を適宜地盤貫入部材15の上端部に係止した吊り金具を介して前記地盤貫入部材15に設置し、地盤貫入部材15の周りに、前後方向および左右方向の上部鉄筋27あるいは下部鉄筋28等を格子状に配筋して、コンクリート29を打設してフーチング31等の布基礎あるいは頂版31を構築する。
【0046】
前記実施形態においては、機械式クランプ金具6を、ホルダー本体3の下端部に90°あるいは180°間隔をおいて設ける形態を示したが、図示を省略するが、120°の等角度間隔をおいて設ける形態でもよい。
把持用ボルト12のボルトの緩み止め手段として、ロックナット以外の手段(ダブルナット等)を用いるようにしてもよい。
前記実施形態では、ホルダー本体3としては、短尺の鋼管、短尺の溝形矢板、短尺の異形矢板、短尺の異形溝形矢板等の場合を示したが、前記以外にも、公知のハット形鋼矢板を短尺に切断した短尺のハット形鋼矢板を用いても良く、そのような短尺のハット形鋼矢板におけるウェブあるいはその両側の傾斜したフランジあるいはそれらの傾斜したフランジ外側のアーム部にクランプ金具6を設けるようにし地盤貫入部材用の把持装置1としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 地盤貫入部材用の把持装置
2 掴み部
3 ホルダー本体
4 上部ホルダー本体
5 下部ホルダー本体
6 機械式クランプ金具
7 ウェブ
8 フランジ
9 クランプ金具本体
10 アーム
11 食い込み用突起部
12 把持用ボルト
13 ロックナット
14 吊り上げ用および握り兼用の金具
15 地盤貫入部材
16 鋼管杭
17 周側板
18 地盤
19 溝形鋼矢板
20 接続用矢板
21 異形鋼矢板
22 矩形状鋼板
23 継手部
24 屈折ウェブ
25 ずれ止め部材
26 連結用籠鉄筋または連結用鉄筋
27 上部鉄筋
28 下部鉄筋
29 コンクリート
30 底部型枠
31 フーチングまたは頂版
32 溝
33 チャッキングプレート
34 先端に食い込み用突起部を有する把持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きに配置された縦板部分に掴み部を有するホルダー本体の下部に、横方向に間隔をおいて、複数の機械式クランプ金具が設けられ、その機械式クランプ金具は、間隔をおいた一対のアームを備えていると共に前記一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記アームには、把持用ボルトが横向きに設けられていることを特徴とする地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項2】
前記ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジを一体に備えており、前記縦板部分が掴み部とされ、前記フランジが上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記フランジの下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項3】
前記ホルダー本体は、短尺の横断面H形部材からなり、その短尺の横断面H形部材のウェブを縦板部分としていることを特徴とする請求項1または2に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項4】
前記ホルダー本体は、短尺の溝形鋼矢板または短尺のハット形鋼矢板からなり、その短尺の横断面溝形鋼矢板または短尺のハット形鋼矢板における傾斜したフランジ相互を接続しているウェブを縦板部分としていることを特徴とする請求項1または2に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項5】
前記ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分を備えその下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項6】
前記ホルダー本体は、上部ホルダー本体と下部ホルダー本体とを備え、前記上部ホルダー本体は、板状または横断面H形の上部ホルダー本体であり、その上部ホルダー本体の下部に、筒状の下部ホルダー本体が固定され、その筒状の下部ホルダー本体の下端部に、前記機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項7】
前記フランジの下端部および前記縦板部分の下端部に、それぞれ機械式クランプ金具が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項8】
ホルダー本体はその下部に横板を一体に備えており、前記横板に、機械式クランプ金具が上下方向および水平回りに位置調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項9】
横板に機械式クランプ金具における上部縦雄ねじ軸部が挿通されて、上部縦雄ねじ軸部にねじ込まれると共に横板に圧着された雌ねじ部材により、機械式クランプ金具は、横板に位置調整可能に固定されてていることを特徴とする請求項8に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項10】
ホルダー本体は、縦向きに配置された縦板部分の両端部にそれぞれ横方向に張り出すフランジを一体に備えており、前記縦板部分が掴み部とされ、前記フランジが上下方向に延長するように縦向きに配置され、前記縦板部分および各フランジの下端部に横板が設けられていることを特徴とする請求項8または9に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項11】
ホルダー本体は、短尺の横断面H形部材、短尺の溝形鋼矢板または短尺のハット形鋼矢
板のいずれかの下端部に横板を備えていることを特徴とする請求項10に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項12】
前記機械式クランプ金具は、逆U字状のクランプ金具本体を備え、そのクランプ金具本体における間隔を置いた一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記両方のアームには、先端に食い込み用突起部を有する把持用ボルトが設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項13】
前記機械式クランプ金具は、逆U字状のクランプ金具本体を備え、そのクランプ金具本体における間隔を置いた一対のアーム間に側方および下方が開口された溝を備え、前記一方のアームには、先端に食い込み用突起部を有する把持用ボルトが設けられ、他方のアーム内側には、先端に食い込み用突起部を有する把持片が設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項14】
前記機械式クランプ金具は、平面視で、対称または等角度間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の地盤貫入部材用の把持装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の地盤貫入部材用の把持装置により、地盤貫入部材の頭部を把持すると共に、前記地盤貫入部材用の把持装置の縦向きの掴み部をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置を介して地盤貫入部材に振動を与えながら、地盤貫入部材を地中に貫入または地中から引き抜くことを特徴とする地盤貫入部材の施工方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の地盤貫入部材用の把持装置により、地盤貫入部材の頭部を把持すると共に、前記地盤貫入部材用の把持装置の縦向きの掴み部をバイブロハンマにおけるクランプ装置によりクランプした状態で、バイブロハンマを起動して、地盤貫入部材用の把持装置を介して地盤貫入部材に振動を与えながら、地中に地盤貫入部材を貫入し、その貫入された地盤貫入部材を基礎杭としたことを特徴とする基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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