説明

地耐力試験装置

【課題】ニューマチックケーソン工法において、ケーソン掘削機の作動先端に取付けて遠隔駆動される地耐力試験装置用の油圧系統をケーソン掘削機用の油圧系統と統合し、小型化、軽量化とコスト低減化を図った地耐力試験装置の提供。
【解決手段】ケーソン掘削機用の油圧系統の油タンクの内部に、地耐力試験装置用の油圧系統の油圧ポンプを、外部にこの油圧ポンプを駆動する電動機をそれぞれ設置して連結することにより、油タンクをケーソン掘削機と地耐力試験装置の各油圧系統に兼用させ、地耐力試験用の油タンクを不要とする。また、掘削機用油圧ユニットの冷却装置を利用した地耐力試験用の冷却機構を油圧系統から油タンクへの帰路に組み込み、油圧系統を簡素化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はニューマチックケーソン工法に用いる地耐力試験装置に関し、特に、ケーソン底部の高気圧作業室にあるケーソン掘削機の作動アームに取付けられ、大気圧側からケーソン掘削機を介して遠隔操作される地耐力試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地耐力試験装置は掘削地盤の地耐力試験を行うため油圧ジャッキを用いており、そのため油圧ポンプと、ポンプ駆動用の動力と、作動油を貯蔵する油タンクとよりなる油圧ユニットを備えることを必須とする。一方、地盤掘削用のケーソン掘削機も作動アーム駆動用の油圧ジャッキを用いるため同様の油圧ユニットを必要とするが、近年、高気圧作業室での地耐力試験装置の移動と設置に要する悪条件下での作業員の作業を低減する要請から、ケーソン掘削機の作動先端に地耐力試験装置を取付け、大気圧側操作室からのケーソン掘削機を介する地耐力試験装置の移動と設置を遠隔操作できるようにしている(特許文献1参照)。しかし、地耐力試験と試験結果計測は精密な油圧制御と電子回路操作を要するため、地耐力試験装置とケーソン掘削機のそれぞれの油圧ユニットを統合することは困難であった。従って現行のニューマチックケーソン工法では、地耐力試験装置の油圧系統をケーソン掘削機の油圧系統から分離し、地耐力試験装置専用の油圧ユニットを用意して高気圧作業室内の地盤上またはケーソン底部で高気圧作業室を仕切る作業室スラブの大気圧側床面に設置して用いることが主流となっている。しかし、大型で大重量の油圧ユニットを高気圧作業室に置くことは地盤掘削の進行に伴って必要となる移動と再設置に多大の時間と労力を要し、また、作業室スラブの大気圧側に置くことはケーソン掘削機用とは別の油圧系統配管や制御用電気設備配線を施す必要があり、いずれの場合も作業労力と材料コストの増大につながる。このような問題を解決するための提案はいまだ見られない。
【特許文献1】特開平9−221762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地耐力試験装置用とケーソン掘削機用のそれぞれの油圧系統、特に油圧系統の構成要素の中で形状と重量の大きい油圧ユニットをひとつに統合できればあらゆる点でコスト軽減につながるが、統合を効果のあるもの、有利性のあるものとするにはいずれの系統の油圧ユニットを活かすべきか、活かした油圧ユニットの設置場所はどこにすべきか、それぞれの系統に不可欠な要素を所定の機能を低下させることなくどのように再配列すべきか等の問題があり、これらの問題を2系統のままの場合よりも確実に小型化、軽量化した形で解決する必要がある。
【0004】
従って本発明は、ニューマチックケーソン工法においてケーソン掘削機の作動先端に取付けて遠隔駆動される地耐力試験装置用の油圧系統を、機能低下をきたすことなく、小型化と軽量化を達成しつつ、ケーソン掘削機用の油圧系統と統合し、コスト低減化を図り得る地耐力試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る本発明の地耐力試験装置は、油タンクと油圧ポンプと油圧ポンプを駆動する掘削用電動機とでなる油圧ユニットを含む掘削機用の油圧系統で駆動されるケーソン掘削機の作動先端に取付けられ、地耐力試験専用の油圧系統により地耐力試験のための載荷荷重を地盤に加えるニューマチックケーソン用地耐力試験装置において、地耐力試験専用の油圧系統が含む油圧ポンプを掘削機用の油タンクの内部に設置し、油圧ポンプを駆動する電動機を油タンク外部に設置し、油タンク内部の油圧ポンプと油タンク外部の電動機を軸継手で連結し、それによって油タンクを掘削と地耐力試験とに兼用するとともに、掘削機用の油圧ユニットの冷却装置による地耐力試験用の冷却機構を油圧系統から油タンクへ油を帰す油送経路に設けたことを特徴とする。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の地耐力試験装置において、油タンクの側板は油圧ポンプを通過自在に形成され、内面側に油圧ポンプを、外面側に電動機を取付けた継ぎ板を、油圧ポンプが側板を通過するようにして側板の外面に油密に、取外し可能に取付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
地耐力試験装置用とケーソン掘削機用の2つの油圧系統のうち、一方の油圧系統、望ましくは地耐力試験装置用の系統における油圧ユニットの油タンクを省略し、ケーソン掘削機用のものと比較して小型軽量の油圧ポンプならびにこの油圧ポンプ駆動用の電動機を、ケーソン掘削機用油圧系統における油圧ユニットの油タンクの内外に設置、連結して、同一の油タンクの油を2系統で共用するとともに、掘削機用の油圧ユニットの冷却装置を利用した地耐力試験用の冷却機構を油圧系統から油タンクへの帰路に組み込むようにしたから、全体の油圧系統が小型化され、軽量化されるとともに、一方の系統の油圧ユニットを不要としたので、その分の製造コストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明に係る地耐力試験装置のニューマチックケーソン工法における使用状態を概略的に示す。図において、ニューマチックケーソンAのケーソン躯体Bの下端を作業室スラブCで閉じ、その下方に周囲を刃口Eで包囲した高気圧の作業室Dが区画される。作業室スラブCの作業室D側の天井面には、ケーソン掘削機Fを懸架して移動させる走行レールGが設置される。ケーソン掘削機Fは、後述するように、そのブーム先端の掘削バケットを駆動する油圧系統の油圧ユニットHを担持するが、ここでは掘削バケットに代えて、ブーム先端つまり作動先端に地耐力試験装置Iが取付けられ、地耐力試験装置Iは、その油圧系統にケーソン掘削機F用の油圧ユニットHを組み込み、この油圧ユニットHを介して動作するケーソン掘削機Fと地耐力試験装置Iのそれぞれの油圧系統で駆動され、作業室Dの天井面と試験位置の地盤面Jとの間に伸張して垂直に固定される。
【0009】
図2において、油圧ユニットHは、本来のケーソン掘削機F用として油タンク1と、電動機2と、電動機2により駆動されて油タンク1からの油を加減圧して各油圧系統に送る油圧ポンプ3とでなり、油圧ポンプ3は掘削機先端のブームF1に取付けた掘削用油圧ジャッキF2を動作させてブーム先端のブラケットF3を駆動する。地盤掘削の際にはこのブラケットF3に掘削バケット(図示しない)を取付けるが、ここでは地耐力試験を行うために、地耐力試験装置IがブラケットF3に取付けられている。地耐力試験装置Iは、上部を伸縮型の支柱パイプI1とし、下部を載荷荷重用油圧ジャッキI2とその油圧ロッドI3の荷重を地盤Jに伝える載荷板I4とでなる載荷荷重手段とする。この載荷荷重用油圧ジャッキI2の作動油源として、ケーソン掘削機F用の油タンク1を利用し、従来必要であった地耐力試験装置用の別の油圧ユニットの油タンクを不要とする。
【0010】
一方、載荷荷重用油圧ジャッキI2は掘削用油圧ジャッキF2とは別系統で作動することを必要とするため、油圧ユニットHを構成する電動機2と油圧ポンプ3とは別に、地耐力試験装置Iの載荷荷重用油圧ジャッキI2用として電動機4とそれによって駆動される油圧ポンプ5を配置するが、それによって油圧ユニットHに顕著な寸法増加を来たさないように、油圧ポンプ5を油タンク1の内部に挿入してタンク側壁板内面に取付け、電動機4は油タンク1の外部に取付けてタンク側壁板を液密に通過する軸継手を介して油圧ポンプ5と連結する。望ましくは、図3について後述するように油圧ポンプ5の油タンク1への取付けは着脱容易な構成によるものとする。
【0011】
図3Aおよび3Bに、地耐力試験用油圧ポンプ5周りの油送経路の一例を示す。油圧ユニットHの油タンク1内において、油圧ポンプ5によりフィルター13を通過して油吸入管16から油圧ポンプ5に吸入された油は加圧されて油吐出管17に吐出され、配管18を介して油圧制御弁21に送られる。図示しない中央遠隔操作指令室の制御装置からの指令に応答して、油圧制御弁21は加圧された油を地耐力試験装置Iの載荷荷重用油圧ジャッキI2を稼動して地耐力試験を行わせる。油圧ジャッキI2から戻った油は油圧制御弁21から配管19を介して地耐力試験用オイルクーラー7に送られ、冷却される。オイルクーラー7は掘削用電動機2の後部側、つまり電動機2が駆動する掘削用油圧ポンプ3と反対側において電動機冷却用に設けた空冷ファン6の有効冷却域に、支持ブラケット8と接合板9によって取付けられ、地耐力試験装置Iの稼動時の油温上昇を防止する。冷却された油は配管14および15を通って油タンク1に帰される。この場合、地耐力試験に必要な油量は掘削機稼動に要する油量に対し比較的少量であるため、地耐力試験用の油の冷却に、比較的大型の掘削用電動機2の空冷ファン6の能力を有効に利用できる。
【0012】
なお、油タンク1内に設置する地耐力試験用油圧ポンプ5とその電動機4の保守点検を容易とする取付け構成について述べれば、先ず地耐力試験装置Iを使用しないとき、地耐力試験用の電動機4を油圧ポンプ5から取外し可能とし、取外した後のポンプ側開口を封止蓋で覆い、電動機4の保守、点検ないし保管を行えるようにする。なお、ケーソン掘削機Fの油圧系統は別であるため、この電動機4の取外し状態でもケーソン掘削機Fは稼動可能である。つまり、掘削機用の電動機2で駆動される掘削用の油圧ポンプ3は、図示しない配管により掘削機用空冷オイルクーラー12を含んで油タンク1と油圧制御弁21の間に形成した油送経路内に配置されている。また、図3A、3Bに見られるように、油タンク1の側板10は地耐力試験用の油圧ポンプ5を通過自在に形成され、一方の面に油圧ポンプ5を取付け、他方の面に電動機4を取付けて油圧ポンプ5と連結させた継ぎ板11を、その油圧ポンプ5を油タンク1内に挿入して側板10に油密に、かつ取外し可能に取付ける。従って地耐力試験用の電動機4と油圧ポンプ5は連結したまま継ぎ板11と共に油タンク1から取外し可能であるため、保守管理が容易となる。
【0013】
図4Aおよび4Bは地耐力試験用の油圧ポンプ5が含まれる油送経路の他の例を示し、油圧ポンプ5から油吐出管17に吐出された油が油圧制御弁21を介して地耐力試験装置Iの載荷荷重用油圧ジャッキI2に送られるまでは、図3A、3Bの例と同じであるが、油圧ジャッキI2から油圧制御弁21に戻った油は、地耐力試験用のオイルクーラー7に代えて、ケーソン掘削機用に設けた空冷オイルクーラー12に送られ、冷却された油は配管20と15により油タンク1に帰される。つまり、この場合、地耐力試験用の油送経路に地耐力試験専用のオイルクーラーを設けず、地耐力試験用のものより比較的大型のオイルクーラー12を利用することによって、地耐力試験装置の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る地耐力試験装置の、概略断面図で示すニューマチックケーソン工法における設置図。
【図2】本発明に係る実施例の地耐力試験装置用の油圧ユニットの、ケーソン掘削機用の油圧ユニットとの関係における配置図。
【図3A】図2の実施例における地耐力試験装置用油圧ユニットの油送経路の一例を正面図で示す構成図。
【図3B】図3Aの油圧ユニットの油送経路の一部を側面図で示す構成図。
【図4A】図2の実施例における地耐力試験装置用油圧ユニットの油送経路の他例を正面図で示す構成図。
【図4B】図4Aの油圧ユニットの油送経路の一部を側面図で示す構成図。
【符号の説明】
【0015】
A ニューマチックケーソン
D 高気圧作業室
F ケーソン掘削機
H 油圧ユニット
I 地耐力試験装置
F1 ブーム
F2 掘削用油圧ジャッキ
I2 載荷荷重用油圧ジャッキ
I4 載荷板
1 油タンク
2 掘削用電動機
3 掘削用油圧ポンプ
4 地耐力試験用電動機
5 地耐力試験用油圧ポンプ
6 空冷ファン
7 地耐力試験用オイルクーラー
12 掘削機用空冷オイルクーラー
14、15 配管
16 油吸入管
17 油吐出管
18〜20 配管
21 油圧制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油タンク(1)と油圧ポンプ(3)と油圧ポンプを駆動する掘削用電動機(2)とでなる油圧ユニットを含む掘削機用の油圧系統で駆動されるケーソン掘削機(F)の作動先端に取付けられ、地耐力試験専用の油圧系統により地耐力試験のための載荷荷重を地盤に加えるニューマチックケーソン用地耐力試験装置(I)において、
地耐力試験専用の油圧系統が含む油圧ポンプ(5)を掘削機用の油タンク(1)の内部に設置し、油圧ポンプ(5)を駆動する電動機(4)を油タンク外部に設置し、油タンク内部の油圧ポンプ(5)と油タンク外部の電動機(4)を軸継手で連結し、それによって油タンク(1)を掘削と地耐力試験とに兼用するとともに、掘削機用の油圧ユニットの冷却装置による地耐力試験用の冷却機構を油圧系統から油タンク(1)へ油を帰す油送経路に設けたことを特徴とする地耐力試験装置。
【請求項2】
油タンク(1)の側板(10)は油圧ポンプ(5)を通過自在に形成され、内面側に油圧ポンプ(5)を、外面側に電動機(4)を取付けた継ぎ板(11)を、油圧ポンプ(5)が側板(10)を通過するようにして側板(10)の外面に油密に、取外し可能に取付けることを特徴とする、請求項1記載の地耐力試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2010−133082(P2010−133082A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307086(P2008−307086)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】