説明

垂直シャフトターボ機械

本発明は、少なくとも1つのタービンホイール(18、20)を担持する少なくとも1つのシャフト(12、22)を有するターボ機械(10)に関する。シャフト(12、22)は、ターボ機械(10)の通常利用状態で実質的に垂直に配向され、シャフト(12、22)は単一軸受(14、24)によって保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
通常は、ターボ機械は、少なくとも1つのタービンホイール(タービンホイールはフリータービンであっても連結タービンであってもよい)に接続される少なくとも1つのシャフトであって、水平に、すなわち、軸が重力の方向に対して実質的に垂直な方向に配向されたシャフトを備える。シャフトを適切に保持してシャフトの重量を支えるために、複数の軸受、一般的には、2つの軸受がシャフトに沿って配置される。したがって、上流側から下流側に向かって順に、圧縮機、燃焼室、およびタービンを備えるターボ機械では、1つの軸受は圧縮機から上流側に配置され、別の軸受は燃焼室から下流側に配置される。この配置には、複数の欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1の欠点は、シャフトは長くて重い場合が多く、それぞれの軸受により点支持がなされても、片持ち梁状態の長い部分が残り、この状態では、シャフトがシャフト自体の重量およびシャフトが担持するタービンホイールの重量により変形してしまう可能性があるということである。このような静的変形は、シャフトの真直度を変化させ、ターボ機械が動作中でシャフトが軸を中心として回転している時にアンバランスを引き起こす。
【0004】
第2の欠点は、複数の軸受の存在に関連し、そのためにターボ機械の重量を増加させ、ターボ機械の効率を低下させる。
【0005】
最後に、第3の欠点は、燃焼室から下流側に配置される軸受が、ターボ機械の特に高温の領域にあり、ここで軸受は高いレベルの熱応力を受けるということである。軸受が適切に動作できるように、また軸受のコーキングのリスクを避けるために、通常は、冷却油回路を使用する冷却システムを配設する必要がある。このような冷却システムは、設置や維持が複雑であり、ターボ機械の製造コストおよび維持コストを増大させると同時に、さらにターボ機械の重量を増加させる。
【0006】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1つを大幅に軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、少なくとも1つのタービンホイールを担持する少なくとも1つのシャフトを有するターボ機械であって、シャフトがターボ機械の通常利用状態で実質的に垂直に配向され、シャフトが単一軸受によって保持されているターボ機械によって達成される。
【0008】
前記タービンホイールは、ターボ機械の連結タービンまたはフリータービンのいずれにも属する場合があることは理解されたい。連結タービンは、ターボ機械の圧縮機に機械的に連結されているタービンであるが、フリータービンは、圧縮機から機械的に独立したタービンである。
【0009】
本明細書では、垂直方向は重力の方向に相当する。したがって、「垂直に」配向されるとは、「重力の方向に」配向されるという意味である。副詞「実質的に」は、シャフトが配向される方向が垂直方向から少しずれる可能性があることを意味するのに使用される。
【0010】
用語「ターボ機械の通常利用状態」は、ターボ機械が車両、特に、車両が(地上、水上、空中を)水平に移動する航空機(この場合、ターボ機械は、例えば、ターボジェットまたはターボシャフトエンジンで構成される)に搭載されている状態、またはターボ機械が工業生産現場に取り付けられている状態(この場合、ターボ機械は、例えば、地上ガスタービンで構成されてもよい)を意味するのに使用される。ターボ機械は、動作中でも停止中でもよい。したがって、特に、設置前の輸送またはターボ機械の修理を含む状態は、「通常利用状態」に相当しない。
【0011】
シャフトを垂直方向に位置決めすることによって、シャフトは、シャフト自体の重量により、またタービンホイールの重量により真直度を変化させる可能性のある静的変形を引き起こすような片持ち梁状態にはならないことが理解できる。したがって、先行技術のターボ機械とは違って、本発明のシャフトは、半径方向の静的力(すなわち、シャフトの軸に垂直な方向に作用する力および前記軸と交差する力)を受けない。当然、シャフトは軸方向の力(すなわち、シャフトの軸に沿って作用する力)をほとんどまたは全く受けないので、シャフトが座屈するリスクおよびシャフトの真直度が変化するリスクがない。シャフトおよびタービンホイールの重量は、シャフトにとって軸方向の無視できるほど小さな力である。このことで、シャフトは真っ直ぐな状態を維持することができる。
【0012】
さらに、シャフトは垂直に配置されるので、先行技術にあるように、シャフトの重量を支持するために、シャフトの長さに沿って配置される複数の軸受を使用してシャフトを保持する必要がない。シャフトは、単一軸受によって一か所で保持されることで正確に保持されることが可能である。当然、単一軸受は、シャフトとタービンホイールとで構成されるアセンブリの重量を軸方向に支持するのに適したものでなければならない。
【0013】
さらに、通常利用状態では、ターボ機械は動作中であるが、シャフトは、ジャイロ作用により、その元の軸方向位置(すなわち、停止している時の軸方向位置)の周囲で固定される。ジャイロ作用とは、軸を中心として急速回転している任意の物体がその回転軸方向を変えようとする任意の力に対抗しようとする性質のことである。したがって、シャフトの軸方向位置は、まず第1に、(ターボ機械が停止した時に、シャフトをターボ機械内の元の位置で保持し、シャフトの重量を支持する)軸受により、第二に、(ターボ機械が動作中に、シャフトをターボ機械内の元の位置の周囲で固定する)ジャイロ作用により、ターボ機械のどんな通常利用状態であってもターボ機械内の同じ位置で維持される。
【0014】
また、ターボ機械は単一軸受を有するので、複数の軸受を有する先行技術のターボ機械に比べて重量を抑えることができる。したがって、本発明のターボ機械は、先行技術のターボ機械に比べて、軽量であり、ひいては、効率が改善される。
【0015】
また、単一軸受により、ターボ機械内のスペースを節約することもできる。本発明のターボ機械の単一軸受は、先行技術のターボ機械の複数の軸受に比べて、占めるスペースが小さい。このスペースの節約により、特に、本発明のターボ機械を、例えば、シャフトを短くすることで先行技術のターボ機械よりもコンパクトにすることができる。
【0016】
用語「単一軸受」は、シャフトを支持する単一リングを備えるアセンブリ、またはシャフトを支持し隣接して配置される複数のリングを備えるアセンブリ(これらの隣接配置される支持リングがシャフトの長さの10%未満に配置される場合に限る)を指すのに使用されることに留意されたい。
【0017】
有利には、ターボ機械には高温領域があり、単一軸受は高温領域の外側に配置される。
【0018】
通常は、ターボ機械において、高温領域は、燃焼室の近くの燃焼室からすぐ下流側の領域であり、高温ガスによって駆動される(フリーおよび/または連結)タービンはこの領域に配置される。
【0019】
したがって、軸受は、高温領域の外側のシャフトに沿った任意の領域に配置されてもよいことが理解できる。特に、軸受は、燃焼室から上流側に配置されてもよいし、または燃焼室からすぐ下流側の領域を越えて配置されてもよい。
【0020】
一実施形態では、特に、ターボ機械がターボジェットまたはヘリコプタのタービンエンジンである場合、軸受は、ターボ機械の低温領域、すなわち、温度が200℃(セ氏200℃)を越えない領域に配置される。
【0021】
別の実施形態では、軸受は、ターボ機械の高温領域に配置される。このような状況では、単一軸受を高温から保護するために、単一軸受は冷却される領域および/またはヒートスクリーンで保護された領域に閉じ込められる。
【0022】
本明細書において、用語「上流側」または「下流側」は、ターボ機械内を流れるガスの正常な流れ方向を指すことに留意されたい。
【0023】
ターボ機械は燃焼室を有し、単一軸受は前記燃焼室から下流側に配置されるのが好ましい。
【0024】
燃焼室から上流側のガスの温度は、燃焼室から下流側のガスの温度より低い。したがって、燃焼室から上流側に軸受を配置することにより、確実に、軸受は、燃焼室から下流側に配置された場合に受ける熱応力よりも小さい熱応力を受ける環境に配置されることになる。この燃焼室から上流側の熱応力は、軸受を損傷させない程度に小さいので、軸受のために冷却装置は必要でない。
【0025】
ターボ機械は圧縮機を有し、単一軸受は圧縮機から上流側に配置されるのが好ましい。
【0026】
有利には、ターボ機械は、圧縮機、第1のタービン、および第2のタービンを有し、前記シャフトは、第1のタービンおよび第2のタービンから選択された要素のうちの1つに属する少なくとも1つのタービンホイールを担持する第1のシャフトを構成し、前記単一軸受は第1の単一軸受を構成する。
【0027】
例えば、変形形態では、第1のタービンは連結タービンであり、第2のタービンはフリータービンである。別の変形形態では、第1のタービンは高圧スプールに連結されたタービンであり、第2のタービンは低圧スプールに連結されたタービンである。
【0028】
有利には、ターボ機械はさらに、ターボ機械の通常利用状態で実質的に垂直に配向された第2のシャフトを含み、前記第2のシャフトは第1のタービンおよび第2のタービンから選択された他方の要素に属する少なくとも1つのタービンホイールを担持し、前記第2のシャフトは第2の単一軸受によって保持される。
【0029】
有利には、第1のシャフトと第2のシャフトとは同軸である。さらに、第1のシャフトは、第2のシャフトの内側を通るのが好ましい。さらに、第1および第2の単一軸受は、圧縮機から上流側に配置されるのが好ましい。
【0030】
一実施形態では、本発明のターボ機械は、航空機のターボジェットまたはターボシャフトエンジンである(すなわち、構成する)。好ましくは、本発明のターボ機械は、ヘリコプタのターボシャフトエンジンである(すなわち、構成する)。
【0031】
本発明および本発明の利点は、非限定的な例として挙げられた本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解できるであろう。以下の説明は、添付図面を参照して行う。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ターボ機械の第1の実施例を示す長手方向断面図である。
【図2】ターボ機械の第2の実施例を示す長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、ターボ機械10の第1の実施例を示し、ターボ機械10の軸Xの長手方向断面図である。ターボ機械10の軸Xは、垂直に配向され、すなわち、太字矢印で示されるように重力Gの方向に平行に配向される。破線矢印は、ターボ機械内を流れるガスの流れ方向を示している。
【0034】
ターボ機械10は、垂直に配向され単一軸受14によって保持されるシャフト12を含み、この場合、ターボ機械は通常利用状態で示されている。ターボ機械10は、圧縮機16、連結タービン18、およびフリータービン20を備え、シャフト12はフリータービン20の一部を形成するタービンホイールを担持する第1のシャフトを構成し、単一軸受14は第1の単一軸受を構成する。
【0035】
図示されている例では、フリータービン18および連結タービン20は、ぞれぞれ1つのタービンホイールのみを有する。当然、変形形態では、連結タービンおよび/またはフリータービンが複数のタービンホイールを有することも可能である。
【0036】
ターボ機械10はさらに、同様に垂直に配向された第2のシャフト22を有し、第2のシャフト22は連結タービン18に属するタービンホイールを担持し、第2のシャフト22は第2の単一軸受24によって保持される。
【0037】
第1のシャフト12は、第2のシャフト22と同軸であり、第2のシャフト22の内側を通る。
【0038】
第1および第2の単一軸受14、24は、圧縮機16から上流側に配置される。
【0039】
フリータービン20を担持する第1のシャフト12は、ターボ機械10によって発生された駆動エネルギーを利用するために力伝達装置(図示せず)に機械的に接続される。
【0040】
さらに、ターボ機械10は軸Xを中心とした環状の燃焼室26を有し、第1および第2の軸受14、24は燃焼室26から上流側に配置される。この例では、圧縮機16および連結タービン18は共に第2のシャフト22によって担持されるが、フリータービン20は第1のシャフト12によって担持されることに留意されたい。燃焼室26は、固定されており、ターボ機械10のケーシングによって担持される。さらに、フリータービン20は、連結タービン18から下流側に配置される。
【0041】
周囲温度のガスが、ガス受入口28を通ってターボ機械10に入り込む。その後、ガスは圧縮機16によって圧縮される。その後、ガスは、燃料が噴射されて燃焼される燃焼室26に入る。この燃焼がガスを加熱する。その後、高温ガスは、タービン18および20を通過する時に膨張されて冷却される。連結タービン18は、圧縮機16を駆動し、フリータービン20は、このように回収された機械エネルギーを力伝達装置(図示せず)に伝達する第1のシャフト12を駆動する。最後に、ガスは、排気口30を介してターボ機械10から排気される。燃焼室26からフリータービン20まで、より一般的には、ガス排気口30までのガスの温度は低下することは理解できる。
【0042】
したがって、燃焼室26の上流端とフリータービン20の下流端との間の領域ZCは、ターボ機械10の高温領域となる。連結タービン18およびフリータービン20は、燃焼室26からすぐ下流側の領域に配置されることに留意されたい。
【0043】
第1の単一軸受14および第2の単一軸受24を圧縮機16から上流側に配置することにより、ガス受入口28の近くで、第1単一軸受14および第2の単一軸受24は高温領域ZCの外側に配置される。変形形態では、第1の軸受および/または第2の軸受は、フリータービン20から下流側の高温領域ZCの外側に配置される。しかしながら、単一軸受14、24が耐えることができても、この位置の周囲温度は、高温領域ZCから上流側より高くなる。すなわち、軸受14および24が熱応力をほとんど受けないのは、燃焼室26から上流側、特に、ガス受入口28の近くである。
【0044】
この例では、単一軸受14は1つのシャフト支持リング14aを有し、単一軸受24は2つのシャフト支持リング24a、24bを有する。例として、これらの支持リング14a、24a、および24bは、玉軸受、ころ軸受などである。
【0045】
さらに、軸受14および24は、ターボ機械10の底部に垂直方向(ターボ機械10の軸X方向と一致する)に配置される。より一般的には、図1および図2では、ターボ機械10の底部は図の下方に対応し、上部は図の上方に対応する。すなわち、底部は重力Gが向けられた部分であり、上部はその反対側部分である。
【0046】
図1では、軸受14、24は、シャフト12、22をその底端部で保持する。したがって、軸受14、24は、シャフト12、22を下から支持する。すなわち、ターボ機械10の構造は、軸受14、24上に「立っている」構造であると考えられる。この例では、ガスはターボ機械10の底部を通って下方からターボ機械10に取り込まれ、ターボ機械10の上部を通って上方から吐出される。
【0047】
図2は、ターボ機械10の第1の実施例と同様のターボ機械110の第2の実施例を示す図である。同じ部品については、改めて説明せず、100を加えた符号で示す。
【0048】
ターボ機械10とターボ機械110との主な違いは、これらが上下逆であり、ターボ機械10の底部の要素がターボ機械110の上部にあり、その逆も同様であるということである。したがって、第1および第2の単一軸受114、124は、ターボ機械110の上部に位置し、第1および第2のシャフト112、122を上端部で上方から保持している。すなわち、ターボ機械110の構造は、軸受114、124から「吊り下げられている」構造であると考えられる。この例では、ガスはターボ機械110の上部を通って上方からターボ機械110に取り込まれ、ターボ機械110の底部を通って下方から吐出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(16)、第1のシャフト(12)、第2のシャフト(22)、第1のタービン(18、20)、および第2のタービン(18、20)を有するターボ機械(10)にして、第1のシャフト(12)は第1および第2のタービン(18、20)から選択された要素のうちの1つに属する少なくとも1つのタービンホイールを担持し、第2のシャフト(22)は第1および第2のタービン(18、20)から選択された他方の要素に属する少なくとも1つのタービンホイールを担持するターボ機械であって、第1および第2のシャフト(12)はターボ機械(10)の通常利用状態で実質的に垂直に配向され、第1のシャフト(12、22)は第1の単一軸受(14)によって保持され、第2のシャフト(22)は第2の単一軸受(24)によって保持される、ターボ機械。
【請求項2】
第1のシャフト(12)と第2のシャフト(22)とが同軸である、請求項1に記載のターボ機械。
【請求項3】
第1のシャフト(12)が、第2のシャフト(22)の内側を通る、請求項2に記載のターボ機械。
【請求項4】
高温領域(ZC)を有し、第1および第2の単一軸受(14、24)は、前記高温領域(ZC)の外側に配置される、請求項3に記載のターボ機械。
【請求項5】
燃焼室(26)を有し、第1および第2の単一軸受(14、24)は、前記燃焼室(26)から上流側に配置される、請求項3または4に記載のターボ機械。
【請求項6】
第1および第2の単一軸受(14、24)が、圧縮機(16)から上流側に配置される、請求項3から5のいずれか一項に記載のターボ機械。
【請求項7】
航空機のターボジェットまたはターボシャフトエンジンを構成する、請求項1から6のいずれか一項に記載のターボ機械。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520608(P2013−520608A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554398(P2012−554398)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050372
【国際公開番号】WO2011/104477
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(501107994)ターボメカ (44)
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA