説明

垂直壁組立装置及び垂直壁構築方法

【課題】 シールドトンネル1内におけるコンクリートの打設によって上部垂直壁21を構築することを不要とする。
【解決手段】 台車27にトンネル内周方向に沿って延びた固定ガイド55を備えた支持フレーム45が設けられ、固定ガイド55にトンネル内周方向に沿って移動可能なスライダ57が設けられ、スライダ57に上部垂直壁21の被把持部を把持するクランパ83が設けられ、クランパ83は、スライダ57の移動によって右方側に傾斜しかつトンネルの垂直中心線に対して離隔した傾斜姿勢から、略垂直でかつ垂直中心線に対して接近した垂直姿勢に徐々に変化するように構成されたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の空間を左右に仕切る垂直壁を構築するために用いられる垂直壁組立装置、及び前記水平床版と前記トンネルの天井部との間に前記垂直壁を構築する垂直壁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル内に電力ケーブル、水道管、ガス管、電話線等を配設するために、特許文献1に示すように、前記トンネル内の空間を上下、左右に仕切ることがよく行われている。
【0003】
即ち、前記トンネルの底部には、前記トンネル内の下部空間を左右に仕切る多数の下部垂直壁が前記トンネル長さ方向に亘って連続して構築されている。また、前記トンネルの左壁面と右壁面との間には、前記トンネル内の空間を上下に仕切る多数の水平床版が前記トンネル長さ方向に亘って連続して構築されている。更に、前記水平床版と前記トンネルの天井部との間には、前記トンネル内の上部空間を左右に仕切る多数の上部垂直壁を連続して構築されている。
【特許文献1】特開平11−44186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記トンネルの天井部と前記水平床版との間の作業スペースは狭く、前記水平床版において上部垂直壁を起立させることが極めて困難である。そのため、前記トンネル内におけるコンクリートの打設によって前記上部垂直壁を構築しなければならず、多数の前記上部垂直壁を前記トンネル長さ方向に亘って連続して構築するのために必要な工期が長くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴は、トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の空間を左右に仕切る垂直壁を構築するために用いられる垂直壁組立装置であって、
前記水平床版の左右方向の一方側部分において前記トンネルのトンネル長さ方向へ移動可能な台車と;
前記台車に設けられ、前記トンネルのトンネル内周方向に沿って延びた固定ガイドを備えた支持フレームと;
前記支持フレームにおける前記固定ガイドに設けられ、前記トンネル内周方向に沿って移動可能であって、前記垂直壁を保持(把持を含む)するスライダと;
を具備したことである。
【0006】
ここで、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別の部材を介して間接的に設けられたことも含む意である。
【0007】
本発明の第1の特徴によると、前記垂直壁が左右方向の一方側に傾きかつ前記垂直壁の下端が左右方向の中央部付近に位置するように、吊り上げ装置によって前記垂直壁を吊り上げる。そして、前記台車を前記トンネル長さ方向へ移動させることにより、前記垂直壁と前記水平床版との間の所定の位置に前記スライダを位置させる。更に、前記スライダによって前記垂直壁を保持することにより、前記吊り上げ装置から前記垂直壁を受け取ることができる。
【0008】
前記垂直壁を受け取った後に、前記スライダを前記トンネル周方向に沿って移動させることにより、前記トンネルの天井部と前記水平床版との間の作業スペースが狭くても、前記水平床版において前記垂直壁を略垂直に起立させることができる。そして、前記垂直壁の下端部を前記水平床版に一体的に取付けると共に、前記垂直壁の上端部を前記トンネルの天井部に一体的に取付ける。
【0009】
前述の動作により、前記水平床版と前記トンネルの天井部との間に前記垂直壁を構築することができる。なお、前述の動作を繰り返すことにより、前記水平床版と前記トンネルの天井部との間に多数の前記垂直壁を前記トンネル長さ方向に亘って連続して構築することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、請求項2に記載の垂直壁組立装置を用い、トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の上部空間を左右に仕切る垂直壁を構築する垂直壁構築方法であって、
前記垂直壁が左右方向の一方側に傾きかつ前記垂直壁の下端が左右方向の中央部付近に位置するように、吊り上げ装置によって前記垂直壁を吊り上げる吊り上げ工程と;
前記吊り上げ工程が終了した後に、前記台車を前記トンネル長さ方向へ移動させることにより、前記垂直壁と前記水平床版との間の所定の位置に前記クランパを位置させて、更に、前記傾斜姿勢の前記クランパによって前記垂直壁の前記被把持部を把持することにより、前記吊り上げ装置から前記垂直壁を受け取る受け取り工程と;
前記受け取り工程が終了した後に、前記スライダを前記トンネル内周方向に沿って移動させて、前記クランパを前記傾斜姿勢から前記垂直姿勢に徐々に変化させることにより、前記水平床版において前記垂直壁を略垂直に起立させる起立工程と;
前記起立工程が終了した後に、前記垂直壁の下端部を前記水平床版に一体的に取付けると共に、前記垂直壁の上端部を前記トンネルの天井部に一体的に取付ける取付工程と:
を具備したことである。
【0011】
本発明の第3の特徴は、請求項2に記載の垂直壁組立装置を用い、トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の上部空間を左右に仕切る垂直壁を構築する垂直壁構築方法であって、
前記垂直壁が左右方向の一方側に傾きかつ前記垂直壁の下端が左右方向の中央部付近に位置するように、吊り上げ装置によって前記垂直壁を吊り上げる吊り上げ工程と;
前記吊り上げ工程が終了した後に、前記台車を前記トンネル長さ方向へ移動させることにより、前記垂直壁と前記水平床版との間の所定の位置に前記クランパを位置させて、更に、前記傾斜姿勢の前記クランパによって前記垂直壁の前記被把持部を把持することにより、前記吊り上げ装置から前記垂直壁を受け取る受け取り工程と;
前記受け取り工程が終了した後に、前記水平床版における左右方向の中央部に予め形成した挿入溝内に前記垂直壁の下端側の一部が入った状態の下で、前記スライダを前記トンネル内周方向に沿って移動させて、前記クランパを前記傾斜姿勢から前記垂直姿勢に徐々に変化させることにより、前記水平床版における前記挿入溝において前記垂直壁を略垂直に起立させる起立工程と;
前記起立工程が終了した後に、前記垂直壁の下端部を前記水平床版に一体的に取付けると共に、前記垂直壁の上端部を前記トンネルの天井部に一体的に取付ける取付工程と:
前記取付工程が終了した後に、前記水平床版における前記挿入溝内の間隙にモルタル或いはコンクリートを充填する充填工程と;
を具備したことである。
【発明の効果】
【0012】
以上の如き、本発明によれば、前記吊り上げ装置から前記垂直壁を受け取った後に、前記スライダを前記トンネル内周方向に沿って移動させることにより、前記トンネルの天井部と前記水平床版との間の作業スペースが狭くても、前記水平床版において前記垂直壁を略垂直に起立させることができる。よって、前記トンネルにおけるコンクリートの打設によって前記垂直壁を構築することを不要とし、多数の前記垂直壁を前記トンネル長さ方向に亘って連続して構築するのために必要な工期を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係わるシールドトンネルの内部構造、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置、本発明の実施形態に係わる吊り上げ装置、及び本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法について、図面を参照して順次説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向を指し、「FR」は、後方向を指し、「L」は、左方向を指し、「R」は、右方向を指す。
【0014】
まず、本発明に実施形態に係わるシールドトンネルの内部構造について図6を参照して説明する。ここで、図6は、本発明の実施形態に係わるシールドトンネルの内部構造を示す図である。
【0015】
図6に示すように、本発明の実施形態に係わるシールドトンネル1の底部には、コンクリートインバート3が打設されており、このコンクリートインバート3の中央部には、トンネル長さ方向(換言すればZ軸方向又は前後方向)へ延びた挿入溝5が形成されている。また、挿入溝5には、シールドトンネル1内の下部空間を左右に仕切るプレキャスト型の多数の下部垂直壁7がZ軸方向に亘って連続して構築されており、挿入溝5内の間隙には、モルタル9が充填されている。
【0016】
シールドトンネル1の左壁部と右壁部との間には、シールドトンネル1内の空間を上下に仕切る多数の水平床版11がZ軸方向に亘って連続して構築されており、水平床版11は、シールドトンネル1の左壁部と下部垂直壁7の上端部との間に構築されたプレキャスト型の第1水平床版13と、下部垂直壁7の上端部とシールドトンネル1の右壁部との間に構築されたプレキャスト型の第2水平床版15とからなる。また、水平床版11の中央部(換言すれば、第1水平床版13の右部)には、Z軸方向へ延びた挿入溝17が形成されており、第1水平床版13の中央部及び第2水平床版15の中央部には、Z軸方向に延びた排水溝19L,19Rがそれぞれ形成されている。なお、第1水平床版13の上面は、排水溝19Lに向かって水が流れるような勾配になっており、同様に、第2水平床版15の上面は、排水溝19Rに向かって水が流れるような勾配になっている。
【0017】
水平床版11における挿入溝17の底部とシールドトンネル1の天井部との間には、シールドトンネル1内の上部空間を左右に仕切るプレキャスト型の多数の上部垂直壁21が連続して構築されており、挿入溝17内の間隙には、モルタル23(又はコンクリート)が充填されている。
【0018】
次に、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置について図1から図5を参照して説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置の正面図であって、図2は、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置の平面図であって、図3は、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置の左側面図であって、図4は、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置におけるスライダ及びリニアスライダの周辺を示す図であって、図5は、図4を左から見た図である。
【0019】
図1から図3に示すように、本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置25は、水平床版11の右側部分(換言すれば、第2水平床版15)においてZ軸方向へ移動可能な台車27を具備しており、この台車27は、4つの車輪(2つの前輪と2つの後輪)29と、2つの車輪(例えば後輪)29を回転駆動させる自走モータ31と、排水溝19RにZ軸方向へ移動可能に案内支持されるガイドローラ33とを備えている。
【0020】
台車27の上面には、Z軸方向(前後方向)へ延びた一対のZ軸ガイドレール35が設けられており、一対のZ軸ガイドレール35には、Z軸方向へ移動可能なZ軸可動台37が設けられている。そして、Z軸可動台37をZ軸方向へ移動させるため、台車27の後部には、Z軸方向へ移動可能なピストンロッド39を備えたZ軸可動台移動用ジャッキ41の基部(ジャッキ本体)がブラケットを介して設けられており、ピストンロッド39の先端部がZ軸可動台37の適宜位置に連結部材を介して連結されている。
【0021】
Z軸可動台37の上面には、左右方向(換言すればY軸方向)へ延びた一対のY軸ガイドレール43が設けられており、一対のY軸ガイドレール43には、Y軸方向へ移動可能な支持フレーム45が設けられている。そして、支持フレーム45をY軸方向へ移動させるため、Z軸可動台37の右部には、Y軸方向へ移動可能なピストンロッド47を備えた支持フレーム移動用ジャッキ49の基部(ジャッキ本体)がブラケットを介して設けられており、ピストンロッド47の先端部が支持フレーム45の適宜位置に連結部材を介して連結されている。
【0022】
また、支持フレーム45は、一対のY軸ガイドレール43にY軸方向へ移動可能に設けられた四角形状のY軸可動台51と、このY軸可動台51に立設されかつ前後に対向した一対の支持ブロック53と、一対の支持ブロック53にそれぞれ設けられかつシールドトンネル1のトンネル周方向に沿って延びた固定ガイド55とを備えている。なお、固定ガイド55の下端は、Y軸可動台51の上面及びZ軸可動台37の上面よりも下側に位置してあるが、固定ガイド55は、Y軸可動台51及びZ軸可動台37と干渉しないように構成されている。
【0023】
支持フレーム45における固定ガイド55には、前記トンネル周方向に沿って移動可能なスライダ57が設けられており、このスライダ57は、固定ガイド55によって案内支持されるカーブ可動ガイド59を備えている。そして、スライダ57を前記トンネル周方向に沿って移動させるため、Y軸可動台51の右部には、左右方向へ移動可能なピストンロッド61を備えたスライダ移動用ジャッキ63の基部(ジャッキ本体)がブラケットを介して上下方向へ回転自在に設けられており、ピストンロッド61の先端部がスライダ57の適宜位置に連結部材を介して回転自在に連結されている。なお、スライダ57の下端は、Y軸可動台51及びZ軸可動台37よりも下側に位置することがあるが、スライダ57は、Y軸可動台51及びZ軸可動台37と干渉しないように構成されている。
【0024】
図1、図4、及び図5に示すように、スライダ57には、前記トンネル径方向に対して直交する方向に沿って移動可能なリニアスライダ65が4本のガイドロッド67を介して設けられている。そして、リニアスライダ65を前記直交する方向に沿って移動させるため、一対の支持ブロック53には、前記直交する方向に沿って移動可能なピストンロッド69を備えたリニアスライダ移動用ジャッキ71の基部(ジャッキ本体)がブラケットを介してそれぞれ設けられており、各ピストンロッド69の先端部がリニアスライダ65の適宜位置に連結部材を介して連結されている。また、リニアスライダ65は、前記トンネル径方向に対して直交する方向に沿って延びた四角形状の支持枠73を備えている。
【0025】
リニアスライダ65における支持枠73には、前記直交する方向に沿って移動可能なホルダ75が設けられている。そして、ホルダ75を前記直交する方向に沿って移動させるため、支持枠73の前後両側には、前記直交する方向に沿って移動可能なピストンロッド77を備えたホルダ移動用ジャッキ79がブラケットを介してそれぞれ設けられており、各ピストンロッド77の先端部がホルダ75の適宜位置に連結部材及び長穴を介して連結されている。
【0026】
ホルダ75には、上部垂直壁21における被把持ピン(被把持部)81を把持するクランパ83が設けられており、このクランパ83は、把持用ジャッキ85の作動によってクランプ・アンクランプ方向へ移動可能な一対の把持爪87を備えている。ここで、クランパ83は、スライダ57の移動によって、右方側に傾斜しかつシールドトンネル1の垂直中心線Sに対して離隔した傾斜姿勢(図11参照)から、略垂直でかつシールドトンネル1の垂直中心線Sに対して接近した垂直姿勢(図15参照)に徐々に変化するように構成されている。なお、被把持ピン81は、上部垂直壁21に螺合してあって、上部垂直壁21の構築が終了した後においては上部垂直壁21から取り外される。
【0027】
また、ホルダ75には、上部垂直壁21の左側面を支持する複数のサポート部材89がそれぞれ設けられており、各サポート部材89は、サポート用ジャッキ91の作動によっては前記直交する方向に沿って移動するものである。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係わる吊り上げ装置について図7を参照して説明する。ここで、図7は、本発明の実施形態に係わる吊り上げ装置の正面図である。
【0029】
図7に示すように、本発明の実施形態に係わる吊り上げ装置93は、水平床版11の左側部分(換言すれば、第1水平床版13)においてZ軸方向へ移動可能な台車95を具備しており、この台車95は、4つの車輪(2つの前輪と2つの後輪)97と、2つの車輪(例えば後輪)97を回転駆動させる自走モータ99と、排水溝19LにZ軸方向へ移動可能に案内支持されるガイドローラ101とを備えている。
【0030】
台車95には、支持フレーム103が立設されており、この支持フレーム103の上部には、Y軸方向へ延びたガイド部材105が設けられている。また、ガイド部材105には、一対のチェーンブロック107がY軸方向へ移動可能に設けられており、各チェーンブロック107は、独自の移動モータ(図示省略)の駆動によりそれぞれY軸方向へ移動するものである。そして、各チェーンブロック107は、送り出し・巻き取り可能なチェーン109と、このチェーン109の先端部に設けられかつ上部垂直壁21に掛け回したワイヤ111の所定の箇所に係止可能なフック113とをそれぞれ備えている。
【0031】
次に、本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法について図8から図15を参照して説明する。
【0032】
ここで、図8から図17は、本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【0033】
本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法は、垂直壁組立装置25を用い、シールドトンネル1内に既に構築された水平床版11とシールドトンネル1の天井部との間に上部垂直壁21を構築する方法であって、(i)吊り上工程と、(ii)受け取り工程と、(iii)起立工程と、(iv)位置決め工程と、(v)取付工程と、(vi)充填工程とを具備している。
【0034】
(i) 吊り上げ工程
台車95を前記トンネル長さ方向へ移動させて、一方のチェーンブロック107を予め水平床版11に水平に載置した上部垂直壁21の真上に位置させる。次に、一方のチェーンブロック107におけるチェーン109を送り出して、一方のチェーンブロック107におけるフック113によって上部垂直壁21に掛け回したワイヤ111の所定の箇所を係止する。そして、一方のチェーンブロック107におけるチェーン109を巻き上げる。これにより、図8に示すように、吊り上げ装置93によって上部垂直壁21をほぼ水平状態で吊り上げることができる。
【0035】
上部垂直壁21をほぼ水平状態で吊り上げた後に、台車95をZ軸方向へ移動させて、Z軸方向の所定の位置に位置させる。次に、一方のチェーンブロック107におけるチェーン109を送り出して、上部垂直壁21を水平床版11に水平に一旦載置させる。そして、一対のチェーンブロック107におけるフック113によって上部垂直壁21に掛け回したワイヤ111の2つの所定の箇所をそれぞれ係止する。そして、一対のチェーンブロック107におけるチェーン109をそれぞれ巻き上げる。これにより、図9に示すように、上部垂直壁21が右方側に傾きかつ上部垂直壁21の下端がY軸方向(左右方向)の中央部付近に位置するように、吊り上げ装置93によって上部垂直壁21を吊り上げることができる。
【0036】
(ii) 受け取り工程
前記吊り上げ工程が終了した後に、台車95をZ軸方向へ移動させることにより、上部垂直壁21と水平床版11との間の所定の位置にクランパ83を位置させる。そして、一対の把持用ジャッキ85の作動によって一対の把持爪87をクランプ方向へ移動させて、前記傾斜姿勢のクランパ83によって上部垂直壁21の被把持ピン81を把持する。更に、複数のサポート用ジャッキ91の作動によってはサポート部材89を前記直交する方向に沿って移動させて、複数のサポート部材89によって上部垂直壁21の左側面を保持する。これにより、図10に示すように、吊り上げ装置93から上部垂直壁21を受け取ることができる。
【0037】
(iii) 起立工程
前記受け取り工程が終了した後に、一対のリニアスライダ移動用ジャッキ71の作動によりリニアスライダ65を前記直交する方向に沿って移動させて、スライダ57に接近させることにより、上部垂直壁21の下端側の一部(一方の下側コーナ部)が挿入溝17に入るようにする。そして、挿入溝17内に上部垂直壁21の一方の下側コーナ部が入った状態の下で、スライダ移動用ジャッキ63の作動によりスライダ57を前記トンネル内周方向に沿って移動させて、クランパ83を前記傾斜姿勢から徐々に変化させる。これにより、図12に示すように、水平床版11における挿入溝17において上部垂直壁21を所定の起こし角度だけ起こすことができる。
【0038】
上部垂直壁21を所定の起こし角度だけ起こした後に、支持フレーム移動用ジャッキ49の作動により支持フレーム45を僅かに右方向へ移動させて、図13に示すように、上部垂直壁21の一方の下側コーナ部がシールドトンネル1のトンネル垂直線Sに一致するように 上部垂直壁21をY軸方向(左右方向)へ位置決めする。次に、ホルダ移動用ジャッキ79の作動によりホルダ75を前記トンネル径方向に沿って僅かに移動させて、図14に示すように、上部垂直壁21の一方の下側コーナ部を挿入溝17の底面に着地させる。そして、挿入溝17内に上部垂直壁21の一方の下側コーナ部が入った状態の下で、スライダ移動用ジャッキ63の作動によりスライダ57を前記トンネル周方向に沿って移動させて、クランパ83を前記垂直姿勢に徐々に変化させる。これにより、シールドトンネル1の天井部と水平床版11との間の作業スペースが狭くても、図15に示すように、水平床版11における挿入溝17において上部垂直壁21を略垂直に起立させることができる。
【0039】
(iv) 位置決め工程
前記(v)起立工程が終了した後に、支持フレーム移動用ジャッキ49の作動により支持フレーム45を僅かに右方向へ移動させることより、図16に示すように、上部垂直壁21の中心線がシールドトンネル1の垂直中心線Sに略一致するように、水平床版11において上部垂直壁21を左右方向へ位置決めすることができる。
【0040】
(v) 取付工程
前記(iv)位置決め工程が終了した後に、上部垂直壁21の下端部を水平床版11にボルト等によって一体的に取付けると共に、上部垂直壁21の上端部をシールドトンネル1の天井部にボルト等によって一体的に取付ける。
【0041】
(vi) 充填工程
前記(v)取付工程が終了した後に、図17に示すように、水平床版11における挿入溝17内の間隙にモルタル23(或いはコンクリート)を充填する。
【0042】
前述の動作により、水平床版11とシールドトンネル1の天井部との間にプレキャスト型の上部垂直壁21を構築することができる。なお、上述の動作を繰り返すことにより、水平床版11とシールドトンネル1の天井部との間にプレキャスト型の多数の上部垂直壁21をZ軸方向に亘って連続して構築することができる。
【0043】
以上の如き、本発明によれば、吊り上げ装置93からプレキャスト型の上部垂直壁21を受け取った後に、スライダ57を前記トンネル内周方向に沿って移動させて、クランパ83を前記傾斜姿勢から前記垂直姿勢に徐々に変化させることにより、シールドトンネル1の天井部と水平床版11との間の作業スペースが狭くても、水平床版11においてプレキャスト型の上部垂直壁21を略垂直に起立させることができる。よって、シールドトンネル1内におけるコンクリートの打設によって上部垂直壁21を構築することを不要とし、多数の上部垂直壁21をZ軸方向に亘って連続して構築するのために必要な工期を短縮することができる。
【0044】
なお、本発明は、前述の発明の実施形態の説明に限るものではなく、例えば、下部垂直壁7を用いることなく、コンクリートインバート3に水平床版11を構築する等、種々の態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置の正面図であって、支持ブロックを省略している。
【図2】本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置の左側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係わる垂直壁組立装置におけるスライダ及びリニアスライダの周辺を示す図である。
【図5】図4を左から見た図である。
【図6】本発明の実施形態に係わるシールドトンネルの内部構造を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係わる吊り上げ装置の正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図14】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図15】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図16】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【図17】本発明の実施形態に係わる垂直壁構築方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
1 シールドトンネル
11 水平床版
17 挿入溝
21 上部垂直壁
23 モルタル
25 垂直壁組立装置
27 台車
45 支持フレーム
55 固定ガイド
57 スライダ
65 リニアスライダ
75 ホルダ
81 被把持ピン
83 クランパ
93 吊り上げ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の空間を左右に仕切る垂直壁を構築するために用いられる垂直壁組立装置であって、
前記水平床版の左右方向の一方側部分において前記トンネルのトンネル長さ方向へ移動可能な台車と;
前記台車に設けられ、前記トンネルのトンネル内周方向に沿って延びた固定ガイドを備えた支持フレームと;
前記支持フレームにおける前記固定ガイドに設けられ、前記トンネル内周方向に沿って移動可能であって、前記垂直壁を保持するスライダと;
を具備したことを特徴とする垂直壁組立装置。
【請求項2】
前記スライダに設けられ、前記スライダの移動によって、左右方向の一方側に傾斜しかつ前記トンネルの垂直中心線に対して離隔した傾斜姿勢から、略垂直でかつ前記トンネルの垂直中心線に対して接近した垂直姿勢に徐々に変化するように構成され、前記垂直壁の被把持部を把持するクランパと;
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の垂直壁組立装置。
【請求項3】
前記支持フレームは、前記台車に対して左右方向へ移動可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の垂直壁組立装置。
【請求項4】
前記スライダに設けられ、前記トンネルのトンネル径方向に沿って移動可能なホルダと;
を具備してあって、
前記クランパは、前記ホルダを介して前記スライダに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の垂直壁組立装置。
【請求項5】
前記スライダに設けられ、前記トンネルのトンネル径方向に沿って移動可能なリニアスライダと;
前記リニアスライダに設けられ、前記トンネル径方向に沿って移動可能なホルダと;
を具備してあって、
前記クランパは、前記リニアスライダ及び前記ホルダを介して前記スライダに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の垂直壁組立装置。
【請求項6】
請求項2に記載の垂直壁組立装置を用い、トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の上部空間を左右に仕切る垂直壁を構築する垂直壁構築方法であって、
前記垂直壁が左右方向の一方側に傾きかつ前記垂直壁の下端が左右方向の中央部付近に位置するように、吊り上げ装置によって前記垂直壁を吊り上げる吊り上げ工程と;
前記吊り上げ工程が終了した後に、前記台車を前記トンネル長さ方向へ移動させることにより、前記垂直壁と前記水平床版との間の所定の位置に前記クランパを位置させて、更に、前記傾斜姿勢の前記クランパによって前記垂直壁の前記被把持部を把持することにより、前記吊り上げ装置から前記垂直壁を受け取る受け取り工程と;
前記受け取り工程が終了した後に、前記スライダを前記トンネル内周方向に沿って移動させて、前記クランパを前記傾斜姿勢から前記垂直姿勢に徐々に変化させることにより、前記水平床版において前記垂直壁を略垂直に起立させる起立工程と;
前記起立工程が終了した後に、前記垂直壁の下端部を前記水平床版に一体的に取付けると共に、前記垂直壁の上端部を前記トンネルの天井部に一体的に取付ける取付工程と:
を具備したことを特徴とする垂直壁構築方法。
【請求項7】
請求項2に記載の垂直壁組立装置を用い、トンネル内に既に構築された水平床版と前記トンネルの天井部との間に、前記トンネル内の上部空間を左右に仕切る垂直壁を構築する垂直壁構築方法であって、
前記垂直壁が左右方向の一方側に傾きかつ前記垂直壁の下端が左右方向の中央部付近に位置するように、吊り上げ装置によって前記垂直壁を吊り上げる吊り上げ工程と;
前記吊り上げ工程が終了した後に、前記台車を前記トンネル長さ方向へ移動させることにより、前記垂直壁と前記水平床版との間の所定の位置に前記クランパを位置させて、更に、前記傾斜姿勢の前記クランパによって前記垂直壁の前記被把持部を把持することにより、前記吊り上げ装置から前記垂直壁を受け取る受け取り工程と;
前記受け取り工程が終了した後に、前記水平床版における左右方向の中央部に予め形成した挿入溝内に前記垂直壁の下端側の一部が入った状態の下で、前記スライダを前記トンネル内周方向に沿って移動させて、前記クランパを前記傾斜姿勢から前記垂直姿勢に徐々に変化させることにより、前記水平床版における前記挿入溝において前記垂直壁を略垂直に起立させる起立工程と;
前記起立工程が終了した後に、前記垂直壁の下端部を前記水平床版に一体的に取付けると共に、前記垂直壁の上端部を前記トンネルの天井部に一体的に取付ける取付工程と:
前記取付工程が終了した後に、前記水平床版における前記挿入溝内の間隙にモルタル或いはコンクリートを充填する充填工程と;
を具備したことを特徴とする垂直壁構築方法。
【請求項8】
前記起立工程と前記取付工程の間に、前記支持フレームを左右方向へ移動させることにより、前記垂直壁の中心線が前記トンネルの垂直中心線に略一致するように、前記水平床版において前記垂直壁を左右方向へ位置決めする位置決め工程と;
を具備したことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の垂直壁構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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