型枠解体補助具
【課題】型枠をコンクリートから容易に引き剥がすことができるだけでなく、製造が容易で製造単価を低く抑えることが可能な型枠解体補助具を提供する。
【解決手段】コーンから突出する軸部が挿入される中空部12を有し、該コーン内に収納される平面視してドーナツ状のリング板11と、リング板11に連結され、型枠に穿設された軸部用の軸孔から外部に導出されるワイヤー15とを備え、型枠解体時に、ワイヤー15を引っ張ることによりリング板11を介して型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具10であって、中空部12を挟んでリング板11に設けられた一対の挿通孔14を1本のワイヤー15が挿通し、リング板11と一体に形成された突出片13を折り曲げてなる折り曲げ部によりワイヤー15の中間部15aが押圧保持されると共に、ワイヤー15の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブ16を介して結合されている。
【解決手段】コーンから突出する軸部が挿入される中空部12を有し、該コーン内に収納される平面視してドーナツ状のリング板11と、リング板11に連結され、型枠に穿設された軸部用の軸孔から外部に導出されるワイヤー15とを備え、型枠解体時に、ワイヤー15を引っ張ることによりリング板11を介して型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具10であって、中空部12を挟んでリング板11に設けられた一対の挿通孔14を1本のワイヤー15が挿通し、リング板11と一体に形成された突出片13を折り曲げてなる折り曲げ部によりワイヤー15の中間部15aが押圧保持されると共に、ワイヤー15の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブ16を介して結合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設後の型枠解体時に使用される型枠解体補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートからなる躯体は、一般に、鉄筋の組立(配筋)を行う鉄筋工事、配筋された鉄筋の周囲に型枠を建込む型枠工事、建込まれた型枠によって画成された空間に生コンクリートを流し込むコンクリート打設工事、硬化したコンクリート表面から型枠を取り外す型枠解体工事という手順で施工される。なかでも、型枠解体工事は、コンクリートと型枠の間にバール等を差し込んで型枠をコンクリートから引き剥がす作業となるため、型枠を構成するベニヤやコンクリート表面が解体作業に伴って損傷する場合があるだけでなく、狭い所や高所における型枠解体作業では、足下が不安定となるため危険を伴うことが多い。
【0003】
そこで、特許文献1では、軸部(セパレータ)に挿通される位置決め部材(コーン)と該位置決め部材が当接する型枠とに挟まれて使用され、ドーナツを潰した形状を有する円環部材と、位置決め部材の端部から露出したオスネジと共に前記型枠面に設けられた孔部に挿通されて、該型枠の外側に前記オスネジと共に露出されるように使用され、前記円環部材の外周の対向する位置に設けられた2つの溝部を介して該円環部材に巻き付けたワイヤーにより構成されるヒゲ部とを備えるヒゲ付き円環部材の発明が開示されている。
この発明では、型枠に設けられた孔部から外側に延出しているヒゲ部の先端同士を結んで輪を形成し、その輪の中にバール等を差し込んでヒゲ部を引っ張ることにより、円環部材を介して型枠の剥離を行う。そのため、容易に型枠を取り外すことができ、ベニヤやコンクリート表面が損傷することもない。
【0004】
また、特許文献2には、セパレータのカップ又はPコーンの内面と型枠軸との間の環状凹部中に収納する剥離用リング板において、Uターン状をしたU状線材の両端を前記剥離用リング板に連結した状態で、該U状線材を型枠の型枠軸挿通孔から外側に導き出しておき、型枠剥離の際に、型枠の外側からU状線材を引っ張ることにより、剥離用リング板を介して型枠をコンクリートから引き剥がす構造とした剥離用リング板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3918016号公報
【特許文献2】実用新案登録第3142154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のヒゲ付き円環部材では、円環部材の中空部分の中心部を避けるようにワイヤーが円環部材に巻き付けられているので、ワイヤーを引っ張った際、円環部材が不安定となって傾き易く、型枠面に円環部材の全面が均一に当接しない。このため、型枠を円滑に引き剥がすことが困難であると共に、円環部材の片寄った部位に引張力が集中するので、大きな引張力を要し、ワイヤーが切れ易いという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2の剥離用リング板では、U状線材に作用する引張力が剥離用リング板の中心軸上に作用するようにしているので、上記問題は発生しないが、U状線材の両端を剥離用リング板に溶接しなければならないため、製造に手間が掛かり製造単価が高くなるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、型枠をコンクリートから容易に引き剥がすことができるだけでなく、製造が容易で製造単価を低く抑えることが可能な型枠解体補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、前記中空部を挟んで前記リング板に設けられた一対の挿通孔を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明は、型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、前記中空部を挟んで前記リング板に設けられ該リング板の外周側又は内周側に開口する一対の溝部を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴としている。
【0011】
また、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、前記鍔付スリーブに替えて、鍔無しスリーブを使用してもよい。
【0012】
第1及び第2の発明では、リング板と一体に形成した突出片を折り曲げた折り曲げ部により1本の線材の中間部を押圧保持すると共に、該線材の両端部を鍔付スリーブ又は鍔無しスリーブを介して結合するようにしているので、部材の接合に溶接等を用いる必要がない。そのため、型枠解体補助具の製造に手間が掛からず、型枠解体補助具を容易に製造することができる。その結果、型枠解体補助具の製造単価を低く抑えることが可能となる。
なお、本発明では、前記線材の断面は任意の形状が可能であり、円形や方形、あるいは矩形等とすることができる。
【0013】
また、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、前記線材の両端部が挿入された前記鍔無しスリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔無しスリーブの軸方向断面が波状とされていてもよい。
また、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、前記線材の両端部が挿入された前記鍔付スリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔付スリーブの軸方向断面が波状とされていてもよい。
【0014】
当該構成では、線材の両端部の軸方向断面及びスリーブの軸方向断面が波状とされているので、型枠解体時に線材に大きな引張力を加えても、スリーブから線材が抜け出ることがない。特に、鍔付スリーブでは、スリーブの端部に鍔が設けられているので、スリーブ自体が破断することがない。
【0015】
また、第3の発明は、型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板と一体に形成され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、前記線材は、前記中空部を挟んで前記リング板の外周部から延出する一対の帯板材からなり、該線材の両端部同士が結合されていることを特徴としている。
【0016】
第3の発明では、リング板と線材が一体に形成されているので、型枠解体補助具の組立に手間が掛からない。また、線材が帯板状とされているので、リベットやカシメピンあるいはスポット溶接などを用いて端部同士を容易に結合することができる。
【発明の効果】
【0017】
第1〜第3の発明に係る型枠解体補助具は、コーン内に収納されるリング板と、リング板に連結又はリング板と一体に形成され、型枠に穿設された軸孔から外部に導出される線材とを備え、線材を引っ張ることにより、リング板を介して型枠を容易にコンクリートから引き剥がすことができる。
【0018】
特に、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、リング板と一体に形成した突出片を折り曲げた折り曲げ部により1本の線材の中間部を押圧保持すると共に、該線材の両端部を鍔付スリーブ又は鍔無しスリーブを介して結合するようにしているので、型枠解体補助具の製造が容易となり、型枠解体補助具の製造単価を低く抑えることができる。
【0019】
また、第3の発明に係る型枠解体補助具では、リング板と線材が一体に形成されているので、型枠解体補助具の組立に手間が掛からないだけでなく、線材が帯板状とされているので端部同士を容易に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る型枠解体補助具の使用方法を説明するための模式図である。
【図2】同型枠解体補助具の斜視図である。
【図3】同型枠解体補助具の分解斜視図である。
【図4】加圧変形した鍔付スリーブの軸方向断面の模式図である。
【図5】(A)〜(C)はそれぞれワイヤー中間部の変形例を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれリング板の変形例を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る型枠解体補助具の斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る型枠解体補助具の斜視図である。
【図9】同型枠解体補助具を構成するリング板の平面図である。
【図10】溝部の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る型枠解体補助具の斜視図である。
【図12】同型枠解体補助具の使用時の状態を示した模式図である。
【図13】リング板及び線材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書では、型枠を挟んでコーンが設置されている側、即ち生コンクリートが流し込まれる側を「内」側、その反対側を「外」側と想定している。また、リング板に関し、便宜上、ワイヤーの中間部が当接する面を「裏」面、その反対側の面を「表」面と呼ぶ。
【0022】
[第1の実施の形態]
コンクリート打設に先立つ型枠工事では、図1に示すように、対向する型枠24間(一方のみ図示)の間隔を保持する部材として、金属棒からなるセパレータ22が使用される。セパレータ22の両端部には、ねじ部が形成されており、合成樹脂製又は金属製のコーン21が装着されている。コーン21は円錐台状とされ、型枠24に当接する大径部側には、小径部側に向けて縮径する凹陥部21aが形成され、その中心部にはコーン21から突出する軸部23が装着されている。軸部23は、型枠24に穿設された軸孔24aに挿入され、型枠24から外部に突出した雄ねじ部には、一端部に雌ねじ部が形成された型枠締付け用金具25が装着される。
【0023】
本発明の第1の実施の形態に係る型枠解体補助具10は、コーン21から突出する軸部23が挿入される中空部12を有し、コーン21の凹陥部21aに収納される平面視してドーナツ状のリング板11と、リング板11に連結され、型枠24に穿設された軸孔24aから外部に導出されるワイヤー15(線材の一例)と、ワイヤー15の端部同士を結合する鍔付スリーブ16とから概略構成されている(図2、図3参照)。
【0024】
リング板11はステンレス製の板材からなり、外径20φ、内径12φ、厚さ1mm程度の大きさを有している。リング板11の中心を通る直線上には、中空部12を挟んで中心から等距離の位置に、ワイヤー15が挿通する1.5φの挿通孔14がそれぞれ形成されている。
また、図3に示すように、リング板11の内周側には、中空部12に突出する逆U字状の突出片13が、一対の挿通孔14から等距離の位置、即ち一対の挿通孔14を結ぶ線分の垂直二等分線上に設けられている。図2に示すように、リング板11と一体的に形成された突出片13は、リング板11の裏側に折り曲げた折り曲げ部とされ、ワイヤー15が動かないようにワイヤー15の中間部15aを押圧保持する。なお、突出片13の突出長さは、突出片13を折り曲げた際、突出片13の先端部がリング板11の外周から、はみ出さない長さとされている。
【0025】
ワイヤー15は、1本のステンレスワイヤー(直径1.2mm、長さ300mm程度)を折り曲げて門型に形成した後、門型ワイヤーの中間部を面外方向に折り曲げ、平面視して半円弧状の中間部15aとしたものである(図3参照)。なお、ワイヤー15の中間部15aは、ワイヤー15がリング板11の中空部12を通過しないように、平面視して半円弧状とされている。
【0026】
鍔付スリーブ16は、アルミニウム、ステンレス、又は鋼製とされ、ワイヤー15の両端部が挿入される円筒部16aと、円筒部16aの一方(ワイヤー15が挿入される側)の端部に形成された円環状の鍔部16bとから構成されている(図3参照)。鍔付スリーブ16はワイヤー15の両端部に外挿され、円筒部16aが偏平となるまで、円筒部16aの側面部を直径方向に加圧圧縮する。その際、図4に示すように、ワイヤー15の両端部の軸方向断面及び円筒部16aの軸方向断面が波状となるように加圧変形させてもよい。
【0027】
型枠解体補助具10の組立手順は以下のようになる。
(1)所定の形状に形成したリング板11、ワイヤー15、及び鍔付スリーブ16を準備する。
(2)ワイヤー15の両端部をリング板11に形成された一対の挿通孔14にそれぞれ挿入する。その際、リング板11の突出片13が存在する側に、ワイヤー15の中間部15aの凸側が来るようにする(図3参照)。
(3)リング板11の突出片13を裏側に折り曲げ、突出片13を折り曲げた折り曲げ部でワイヤー15の中間部15aを押圧保持する(図2参照)。
(4)ワイヤー15の両端部に鍔付スリーブ16を外挿して、円筒部16aの側面部を加圧圧縮する。その際、ワイヤー15が挿入される側に鍔部16bが来るようにする(図2参照)。
【0028】
型枠解体補助具10を使用する際は、リング板11の中空部12にコーン21の軸部23を挿通し、コーン21の凹陥部21aにリング板11を収納(嵌入)する(図1参照)。その際、リング板11の表面が、型枠24に面するようにしなければならない。そして、型枠24に穿設された軸部23用の軸孔24aからワイヤー15を外部に導出させ、型枠24から外部に突出する軸部23に型枠締付け用金具25を装着する。
型枠解体時には、軸部23から型枠締付け用金具25を取り外した後、型枠24から露出したワイヤー15によって形成された輪の中にバール等を差し込んでワイヤー15を引っ張ることで、リング板11を介して型枠24をコンクリートから引き剥がすことができる。
【0029】
図5はワイヤー15の中間部の変形例を示したものである。図5(A)は、ワイヤー15の中間部15bを台形状の折線で形成している。図5(B)は、ワイヤー15の中間部15cを切妻屋根状の折線で形成している。図5(C)は、ワイヤー15の中間部15dをV字状の折線で形成している。なお、ワイヤー15の中間部は、これらの形状に限定されるものではなく、ワイヤー15の中間部がリング板11の外周円の内側かつ内周円の外側に配置されればよい。
【0030】
また、図6はリング板の突出片の変形例を示したものである。図6(A)は、リング板11aの中空部12a側に突出する突出片13aの形状を滴状としている。図6(B)は、突出片13bを中空部12b側に形成せず、リング板11bの外周部から外方に突出する突出片13bとしたものである。
【0031】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る型枠解体補助具30では、鍔付スリーブ16に替えて、鍔無しスリーブ31が使用されている(図7参照)。鍔無しスリーブ31は、円筒スリーブやオーバルスリーブ等の鍔の無いスリーブである。鍔無しスリーブ31をワイヤー15の両端部に外挿し、鍔無しスリーブ31の軸直交断面が偏平となるまで、鍔無しスリーブ31の側面部を径方向に加圧圧縮する。なお、ワイヤー15の両端部の軸方向断面及び鍔無しスリーブ31の軸方向断面が波状となるように加圧変形させてもよい。
【0032】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る型枠解体補助具35では、一対の挿通孔に替えて、一対の溝部20をリング板17に設けている(図8参照)。図9に示すように、溝部20は、平面視して「く」字又は逆「く」字状とされ、中空部18側に突出する半円形状の突出片19を挟んで対称に配置されている。また、各溝部20は、リング板17の外周側に開口し、溝部20の底部は半円形状とされ、リング板17の中心を通る直線上に位置している。これにより、ワイヤー15を引っ張った際に引張力が偏心荷重とならず、リング板17が傾くことがない。
【0033】
図10は溝部の変形例を示したものである。本変形例では、平面視して「く」字又は逆「く」字状とされた溝部20aは、リング板17aの内周側に開口し、中空部18a側に突出する半円形状の突出片19aを挟んで対称に配置されている。また、溝部20aの底部は半円形状とされ、リング板17aの中心を通る直線上に位置している。
【0034】
なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様、鍔付スリーブ16に替えて、鍔無しスリーブ31を使用することができる。その際、鍔無しスリーブ31の側面部を径方向に加圧圧縮しただけのものを使用してもよいし、あるいはワイヤー15の両端部の軸方向断面及び鍔無しスリーブ31の軸方向断面が波状となるように加圧変形させたものを使用してもよい。
【0035】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態に係る型枠解体補助具40は、第1〜第3の実施の形態と異なり、リング板41と一対の線材43が一体に形成されている(図11参照)。即ち、図13に示すように、リング板41と一対の線材43が1枚の板材(厚さ1〜2mm程度)から形成されている。中空部42を挟んでリング板41の外周部から延出する一対の線材43は帯板状とされ、リング板41の中心を通る直線に沿って配置されている。
【0036】
上記板材には、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板(アルミニウムと亜鉛の合金を鋼板にメッキしたもの)などを使用することができ、リング板41の外径は20φ、内径は14φ程度である。また、帯板状とされた線材43は、幅2mm、長さ150mm程度とされ、その端部44は拡幅され、幅6mm、長さ20mm程度とされている。また、端部44の中心部には、直径2mm程度の小孔44aが形成されている。
型枠解体補助具40を製造する際は、リング板41と一対の線材43とからなる薄板を板材から切り抜いた後、一対の線材43をリング板41と線材43の境目で折り曲げ、線材43の端部44同士を重ね合わせる。そして、一対の線材43の端部44に形成された小孔44aにカシメピン45を挿通し、カシメピン45の端部をかしめることにより端部44同士を結合する(図11参照)。
なお、一対の線材43の端部44同士を結合する際、カシメピン45ではなく、リベットや、電気抵抗溶接の一種であるスポット溶接を用いてもよい。
【0037】
図12は、型枠解体補助具40の使用時の状態を示したものである。リング板41の中空部42にコーン21の軸部23を挿通し、コーン21の凹陥部21aにリング板41を収納(嵌入)する。その際、軸部23が拡径した基端部23aまでリング板41の中空部42に挿通し、リング板41を凹陥部21aの底部に載置する。こうすることで、型枠24に穿設された軸孔24aからリング板41までの距離が確保され、一対の線材43を軸孔24aから外部にスムーズに導出させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、第1〜第3の実施の形態では、線材として単線ワイヤーを使用したが、撚り線からなるワイヤーロープや針金等を線材として使用することもできる。なお、コーンの形状は円錐台状に限るものではなく、お椀状など他の形状でもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10:型枠解体補助具、11、11a、11b:リング板、12、12a、12b:中空部、13、13a、13b:突出片、14:挿通孔、15:ワイヤー(線材)、15a、15b、15c、15d:中間部、16:鍔付スリーブ、16a:円筒部、16b:鍔部、17、17a:リング板、18、18a:中空部、19、19a:突出片、20、20a:溝部、21:コーン、21a:凹陥部、22:セパレータ、23:軸部、23a:基端部、24:型枠、24a:軸孔、25:型枠締付け用金具、30:型枠解体補助具、31:鍔無しスリーブ、35、40:型枠解体補助具、41:リング板、42:中空部、43:線材、44:端部、44a:小孔、45:カシメピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設後の型枠解体時に使用される型枠解体補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートからなる躯体は、一般に、鉄筋の組立(配筋)を行う鉄筋工事、配筋された鉄筋の周囲に型枠を建込む型枠工事、建込まれた型枠によって画成された空間に生コンクリートを流し込むコンクリート打設工事、硬化したコンクリート表面から型枠を取り外す型枠解体工事という手順で施工される。なかでも、型枠解体工事は、コンクリートと型枠の間にバール等を差し込んで型枠をコンクリートから引き剥がす作業となるため、型枠を構成するベニヤやコンクリート表面が解体作業に伴って損傷する場合があるだけでなく、狭い所や高所における型枠解体作業では、足下が不安定となるため危険を伴うことが多い。
【0003】
そこで、特許文献1では、軸部(セパレータ)に挿通される位置決め部材(コーン)と該位置決め部材が当接する型枠とに挟まれて使用され、ドーナツを潰した形状を有する円環部材と、位置決め部材の端部から露出したオスネジと共に前記型枠面に設けられた孔部に挿通されて、該型枠の外側に前記オスネジと共に露出されるように使用され、前記円環部材の外周の対向する位置に設けられた2つの溝部を介して該円環部材に巻き付けたワイヤーにより構成されるヒゲ部とを備えるヒゲ付き円環部材の発明が開示されている。
この発明では、型枠に設けられた孔部から外側に延出しているヒゲ部の先端同士を結んで輪を形成し、その輪の中にバール等を差し込んでヒゲ部を引っ張ることにより、円環部材を介して型枠の剥離を行う。そのため、容易に型枠を取り外すことができ、ベニヤやコンクリート表面が損傷することもない。
【0004】
また、特許文献2には、セパレータのカップ又はPコーンの内面と型枠軸との間の環状凹部中に収納する剥離用リング板において、Uターン状をしたU状線材の両端を前記剥離用リング板に連結した状態で、該U状線材を型枠の型枠軸挿通孔から外側に導き出しておき、型枠剥離の際に、型枠の外側からU状線材を引っ張ることにより、剥離用リング板を介して型枠をコンクリートから引き剥がす構造とした剥離用リング板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3918016号公報
【特許文献2】実用新案登録第3142154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のヒゲ付き円環部材では、円環部材の中空部分の中心部を避けるようにワイヤーが円環部材に巻き付けられているので、ワイヤーを引っ張った際、円環部材が不安定となって傾き易く、型枠面に円環部材の全面が均一に当接しない。このため、型枠を円滑に引き剥がすことが困難であると共に、円環部材の片寄った部位に引張力が集中するので、大きな引張力を要し、ワイヤーが切れ易いという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2の剥離用リング板では、U状線材に作用する引張力が剥離用リング板の中心軸上に作用するようにしているので、上記問題は発生しないが、U状線材の両端を剥離用リング板に溶接しなければならないため、製造に手間が掛かり製造単価が高くなるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、型枠をコンクリートから容易に引き剥がすことができるだけでなく、製造が容易で製造単価を低く抑えることが可能な型枠解体補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、前記中空部を挟んで前記リング板に設けられた一対の挿通孔を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明は、型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、前記中空部を挟んで前記リング板に設けられ該リング板の外周側又は内周側に開口する一対の溝部を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴としている。
【0011】
また、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、前記鍔付スリーブに替えて、鍔無しスリーブを使用してもよい。
【0012】
第1及び第2の発明では、リング板と一体に形成した突出片を折り曲げた折り曲げ部により1本の線材の中間部を押圧保持すると共に、該線材の両端部を鍔付スリーブ又は鍔無しスリーブを介して結合するようにしているので、部材の接合に溶接等を用いる必要がない。そのため、型枠解体補助具の製造に手間が掛からず、型枠解体補助具を容易に製造することができる。その結果、型枠解体補助具の製造単価を低く抑えることが可能となる。
なお、本発明では、前記線材の断面は任意の形状が可能であり、円形や方形、あるいは矩形等とすることができる。
【0013】
また、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、前記線材の両端部が挿入された前記鍔無しスリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔無しスリーブの軸方向断面が波状とされていてもよい。
また、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、前記線材の両端部が挿入された前記鍔付スリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔付スリーブの軸方向断面が波状とされていてもよい。
【0014】
当該構成では、線材の両端部の軸方向断面及びスリーブの軸方向断面が波状とされているので、型枠解体時に線材に大きな引張力を加えても、スリーブから線材が抜け出ることがない。特に、鍔付スリーブでは、スリーブの端部に鍔が設けられているので、スリーブ自体が破断することがない。
【0015】
また、第3の発明は、型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板と一体に形成され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、前記線材は、前記中空部を挟んで前記リング板の外周部から延出する一対の帯板材からなり、該線材の両端部同士が結合されていることを特徴としている。
【0016】
第3の発明では、リング板と線材が一体に形成されているので、型枠解体補助具の組立に手間が掛からない。また、線材が帯板状とされているので、リベットやカシメピンあるいはスポット溶接などを用いて端部同士を容易に結合することができる。
【発明の効果】
【0017】
第1〜第3の発明に係る型枠解体補助具は、コーン内に収納されるリング板と、リング板に連結又はリング板と一体に形成され、型枠に穿設された軸孔から外部に導出される線材とを備え、線材を引っ張ることにより、リング板を介して型枠を容易にコンクリートから引き剥がすことができる。
【0018】
特に、第1及び第2の発明に係る型枠解体補助具では、リング板と一体に形成した突出片を折り曲げた折り曲げ部により1本の線材の中間部を押圧保持すると共に、該線材の両端部を鍔付スリーブ又は鍔無しスリーブを介して結合するようにしているので、型枠解体補助具の製造が容易となり、型枠解体補助具の製造単価を低く抑えることができる。
【0019】
また、第3の発明に係る型枠解体補助具では、リング板と線材が一体に形成されているので、型枠解体補助具の組立に手間が掛からないだけでなく、線材が帯板状とされているので端部同士を容易に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る型枠解体補助具の使用方法を説明するための模式図である。
【図2】同型枠解体補助具の斜視図である。
【図3】同型枠解体補助具の分解斜視図である。
【図4】加圧変形した鍔付スリーブの軸方向断面の模式図である。
【図5】(A)〜(C)はそれぞれワイヤー中間部の変形例を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれリング板の変形例を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る型枠解体補助具の斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る型枠解体補助具の斜視図である。
【図9】同型枠解体補助具を構成するリング板の平面図である。
【図10】溝部の変形例を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る型枠解体補助具の斜視図である。
【図12】同型枠解体補助具の使用時の状態を示した模式図である。
【図13】リング板及び線材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書では、型枠を挟んでコーンが設置されている側、即ち生コンクリートが流し込まれる側を「内」側、その反対側を「外」側と想定している。また、リング板に関し、便宜上、ワイヤーの中間部が当接する面を「裏」面、その反対側の面を「表」面と呼ぶ。
【0022】
[第1の実施の形態]
コンクリート打設に先立つ型枠工事では、図1に示すように、対向する型枠24間(一方のみ図示)の間隔を保持する部材として、金属棒からなるセパレータ22が使用される。セパレータ22の両端部には、ねじ部が形成されており、合成樹脂製又は金属製のコーン21が装着されている。コーン21は円錐台状とされ、型枠24に当接する大径部側には、小径部側に向けて縮径する凹陥部21aが形成され、その中心部にはコーン21から突出する軸部23が装着されている。軸部23は、型枠24に穿設された軸孔24aに挿入され、型枠24から外部に突出した雄ねじ部には、一端部に雌ねじ部が形成された型枠締付け用金具25が装着される。
【0023】
本発明の第1の実施の形態に係る型枠解体補助具10は、コーン21から突出する軸部23が挿入される中空部12を有し、コーン21の凹陥部21aに収納される平面視してドーナツ状のリング板11と、リング板11に連結され、型枠24に穿設された軸孔24aから外部に導出されるワイヤー15(線材の一例)と、ワイヤー15の端部同士を結合する鍔付スリーブ16とから概略構成されている(図2、図3参照)。
【0024】
リング板11はステンレス製の板材からなり、外径20φ、内径12φ、厚さ1mm程度の大きさを有している。リング板11の中心を通る直線上には、中空部12を挟んで中心から等距離の位置に、ワイヤー15が挿通する1.5φの挿通孔14がそれぞれ形成されている。
また、図3に示すように、リング板11の内周側には、中空部12に突出する逆U字状の突出片13が、一対の挿通孔14から等距離の位置、即ち一対の挿通孔14を結ぶ線分の垂直二等分線上に設けられている。図2に示すように、リング板11と一体的に形成された突出片13は、リング板11の裏側に折り曲げた折り曲げ部とされ、ワイヤー15が動かないようにワイヤー15の中間部15aを押圧保持する。なお、突出片13の突出長さは、突出片13を折り曲げた際、突出片13の先端部がリング板11の外周から、はみ出さない長さとされている。
【0025】
ワイヤー15は、1本のステンレスワイヤー(直径1.2mm、長さ300mm程度)を折り曲げて門型に形成した後、門型ワイヤーの中間部を面外方向に折り曲げ、平面視して半円弧状の中間部15aとしたものである(図3参照)。なお、ワイヤー15の中間部15aは、ワイヤー15がリング板11の中空部12を通過しないように、平面視して半円弧状とされている。
【0026】
鍔付スリーブ16は、アルミニウム、ステンレス、又は鋼製とされ、ワイヤー15の両端部が挿入される円筒部16aと、円筒部16aの一方(ワイヤー15が挿入される側)の端部に形成された円環状の鍔部16bとから構成されている(図3参照)。鍔付スリーブ16はワイヤー15の両端部に外挿され、円筒部16aが偏平となるまで、円筒部16aの側面部を直径方向に加圧圧縮する。その際、図4に示すように、ワイヤー15の両端部の軸方向断面及び円筒部16aの軸方向断面が波状となるように加圧変形させてもよい。
【0027】
型枠解体補助具10の組立手順は以下のようになる。
(1)所定の形状に形成したリング板11、ワイヤー15、及び鍔付スリーブ16を準備する。
(2)ワイヤー15の両端部をリング板11に形成された一対の挿通孔14にそれぞれ挿入する。その際、リング板11の突出片13が存在する側に、ワイヤー15の中間部15aの凸側が来るようにする(図3参照)。
(3)リング板11の突出片13を裏側に折り曲げ、突出片13を折り曲げた折り曲げ部でワイヤー15の中間部15aを押圧保持する(図2参照)。
(4)ワイヤー15の両端部に鍔付スリーブ16を外挿して、円筒部16aの側面部を加圧圧縮する。その際、ワイヤー15が挿入される側に鍔部16bが来るようにする(図2参照)。
【0028】
型枠解体補助具10を使用する際は、リング板11の中空部12にコーン21の軸部23を挿通し、コーン21の凹陥部21aにリング板11を収納(嵌入)する(図1参照)。その際、リング板11の表面が、型枠24に面するようにしなければならない。そして、型枠24に穿設された軸部23用の軸孔24aからワイヤー15を外部に導出させ、型枠24から外部に突出する軸部23に型枠締付け用金具25を装着する。
型枠解体時には、軸部23から型枠締付け用金具25を取り外した後、型枠24から露出したワイヤー15によって形成された輪の中にバール等を差し込んでワイヤー15を引っ張ることで、リング板11を介して型枠24をコンクリートから引き剥がすことができる。
【0029】
図5はワイヤー15の中間部の変形例を示したものである。図5(A)は、ワイヤー15の中間部15bを台形状の折線で形成している。図5(B)は、ワイヤー15の中間部15cを切妻屋根状の折線で形成している。図5(C)は、ワイヤー15の中間部15dをV字状の折線で形成している。なお、ワイヤー15の中間部は、これらの形状に限定されるものではなく、ワイヤー15の中間部がリング板11の外周円の内側かつ内周円の外側に配置されればよい。
【0030】
また、図6はリング板の突出片の変形例を示したものである。図6(A)は、リング板11aの中空部12a側に突出する突出片13aの形状を滴状としている。図6(B)は、突出片13bを中空部12b側に形成せず、リング板11bの外周部から外方に突出する突出片13bとしたものである。
【0031】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る型枠解体補助具30では、鍔付スリーブ16に替えて、鍔無しスリーブ31が使用されている(図7参照)。鍔無しスリーブ31は、円筒スリーブやオーバルスリーブ等の鍔の無いスリーブである。鍔無しスリーブ31をワイヤー15の両端部に外挿し、鍔無しスリーブ31の軸直交断面が偏平となるまで、鍔無しスリーブ31の側面部を径方向に加圧圧縮する。なお、ワイヤー15の両端部の軸方向断面及び鍔無しスリーブ31の軸方向断面が波状となるように加圧変形させてもよい。
【0032】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る型枠解体補助具35では、一対の挿通孔に替えて、一対の溝部20をリング板17に設けている(図8参照)。図9に示すように、溝部20は、平面視して「く」字又は逆「く」字状とされ、中空部18側に突出する半円形状の突出片19を挟んで対称に配置されている。また、各溝部20は、リング板17の外周側に開口し、溝部20の底部は半円形状とされ、リング板17の中心を通る直線上に位置している。これにより、ワイヤー15を引っ張った際に引張力が偏心荷重とならず、リング板17が傾くことがない。
【0033】
図10は溝部の変形例を示したものである。本変形例では、平面視して「く」字又は逆「く」字状とされた溝部20aは、リング板17aの内周側に開口し、中空部18a側に突出する半円形状の突出片19aを挟んで対称に配置されている。また、溝部20aの底部は半円形状とされ、リング板17aの中心を通る直線上に位置している。
【0034】
なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様、鍔付スリーブ16に替えて、鍔無しスリーブ31を使用することができる。その際、鍔無しスリーブ31の側面部を径方向に加圧圧縮しただけのものを使用してもよいし、あるいはワイヤー15の両端部の軸方向断面及び鍔無しスリーブ31の軸方向断面が波状となるように加圧変形させたものを使用してもよい。
【0035】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態に係る型枠解体補助具40は、第1〜第3の実施の形態と異なり、リング板41と一対の線材43が一体に形成されている(図11参照)。即ち、図13に示すように、リング板41と一対の線材43が1枚の板材(厚さ1〜2mm程度)から形成されている。中空部42を挟んでリング板41の外周部から延出する一対の線材43は帯板状とされ、リング板41の中心を通る直線に沿って配置されている。
【0036】
上記板材には、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板(アルミニウムと亜鉛の合金を鋼板にメッキしたもの)などを使用することができ、リング板41の外径は20φ、内径は14φ程度である。また、帯板状とされた線材43は、幅2mm、長さ150mm程度とされ、その端部44は拡幅され、幅6mm、長さ20mm程度とされている。また、端部44の中心部には、直径2mm程度の小孔44aが形成されている。
型枠解体補助具40を製造する際は、リング板41と一対の線材43とからなる薄板を板材から切り抜いた後、一対の線材43をリング板41と線材43の境目で折り曲げ、線材43の端部44同士を重ね合わせる。そして、一対の線材43の端部44に形成された小孔44aにカシメピン45を挿通し、カシメピン45の端部をかしめることにより端部44同士を結合する(図11参照)。
なお、一対の線材43の端部44同士を結合する際、カシメピン45ではなく、リベットや、電気抵抗溶接の一種であるスポット溶接を用いてもよい。
【0037】
図12は、型枠解体補助具40の使用時の状態を示したものである。リング板41の中空部42にコーン21の軸部23を挿通し、コーン21の凹陥部21aにリング板41を収納(嵌入)する。その際、軸部23が拡径した基端部23aまでリング板41の中空部42に挿通し、リング板41を凹陥部21aの底部に載置する。こうすることで、型枠24に穿設された軸孔24aからリング板41までの距離が確保され、一対の線材43を軸孔24aから外部にスムーズに導出させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、第1〜第3の実施の形態では、線材として単線ワイヤーを使用したが、撚り線からなるワイヤーロープや針金等を線材として使用することもできる。なお、コーンの形状は円錐台状に限るものではなく、お椀状など他の形状でもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10:型枠解体補助具、11、11a、11b:リング板、12、12a、12b:中空部、13、13a、13b:突出片、14:挿通孔、15:ワイヤー(線材)、15a、15b、15c、15d:中間部、16:鍔付スリーブ、16a:円筒部、16b:鍔部、17、17a:リング板、18、18a:中空部、19、19a:突出片、20、20a:溝部、21:コーン、21a:凹陥部、22:セパレータ、23:軸部、23a:基端部、24:型枠、24a:軸孔、25:型枠締付け用金具、30:型枠解体補助具、31:鍔無しスリーブ、35、40:型枠解体補助具、41:リング板、42:中空部、43:線材、44:端部、44a:小孔、45:カシメピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、
前記中空部を挟んで前記リング板に設けられた一対の挿通孔を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項2】
型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、
前記中空部を挟んで前記リング板に設けられ該リング板の外周側又は内周側に開口する一対の溝部を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の型枠解体補助具において、前記鍔付スリーブに替えて、鍔無しスリーブが使用されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項4】
請求項3記載の型枠解体補助具において、前記線材の両端部が挿入された前記鍔無しスリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔無しスリーブの軸方向断面が波状とされていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項5】
請求項1又は2記載の型枠解体補助具において、前記線材の両端部が挿入された前記鍔付スリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔付スリーブの軸方向断面が波状とされていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項6】
型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板と一体に形成され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、
前記線材は、前記中空部を挟んで前記リング板の外周部から延出する一対の帯板材からなり、該線材の両端部同士が結合されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項1】
型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、
前記中空部を挟んで前記リング板に設けられた一対の挿通孔を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項2】
型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板に連結され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、
前記中空部を挟んで前記リング板に設けられ該リング板の外周側又は内周側に開口する一対の溝部を1本の前記線材が挿通し、前記リング板と一体に形成された突出片を折り曲げてなる折り曲げ部により前記線材の中間部が押圧保持されると共に、前記線材の両端部が、該両端部に外挿された鍔付スリーブを介して結合されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の型枠解体補助具において、前記鍔付スリーブに替えて、鍔無しスリーブが使用されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項4】
請求項3記載の型枠解体補助具において、前記線材の両端部が挿入された前記鍔無しスリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔無しスリーブの軸方向断面が波状とされていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項5】
請求項1又は2記載の型枠解体補助具において、前記線材の両端部が挿入された前記鍔付スリーブを外部から加圧して、前記線材の両端部の軸方向断面及び前記鍔付スリーブの軸方向断面が波状とされていることを特徴とする型枠解体補助具。
【請求項6】
型枠工事に使用されるコーンから突出する軸部が挿入される中空部を有し、該コーン内に収納されるリング板と、前記リング板と一体に形成され、型枠に穿設された前記軸部用の軸孔から外部に導出される線材とを備え、型枠解体時に、前記線材を引っ張ることにより前記リング板を介して前記型枠をコンクリートから引き剥がす型枠解体補助具であって、
前記線材は、前記中空部を挟んで前記リング板の外周部から延出する一対の帯板材からなり、該線材の両端部同士が結合されていることを特徴とする型枠解体補助具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−2057(P2012−2057A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111646(P2011−111646)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第4828661号(P4828661)
【特許公報発行日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(300033393)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第4828661号(P4828661)
【特許公報発行日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(300033393)
【Fターム(参考)】
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