説明

埋め込み可能な音響バイオセンシングシステムおよび方法

【課題】患者の体内の生理状態をモニタするためのバイオセンシングシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】患者の生理状態をモニタして任意に緩和するための埋め込み可能なバイオセンサシステムにおいて、(a)生理状態の少なくとも1つのパラメータを検知し、生理状態を示す電気的なセンサ信号を形成する少なくとも1つのセンサを備え、(b)少なくとも1つのセンサと直接的または間接的に接続された第1の音響可変トランスデューサを備え、第1の音響可変トランスデューサは、患者の体外から受けた音響呼びかけ信号を、プロセッサにエネルギーを供給するための電力に変換し、第1の音響可変トランスデューサは、更に、少なくとも1つのセンサの電気的なセンサ信号を体外で受信可能な音響信号に変換し、これによって、音響呼びかけ信号の形成時に、生理状態の少なくとも1つのパラメータに関する情報が体外に中継される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野および背景)
本発明は、患者の体内の生理状態をモニタするためのバイオセンシングシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、患者の体内に埋め込み可能であり且つ少なくとも1つのセンサと可変音響トランスデューサと小型プロセッサとを有するバイオセンサシステムに関する。センサは、患者の生理状態をモニタするとともに、小型プロセッサを介して生理状態に関する情報を可変音響トランスデューサに中継するために使用される。可変音響トランスデューサは、この情報を音響信号として体外に送信する。トランスデューサからの音響信号の送信は、体外で形成される音響呼びかけエネルギー信号によって引き起こされる。この音響呼びかけエネルギー信号は、体外で患者と密着して位置決めされた第2の音響トランスデューサによって形成される。小型の電気プロセッサは、センサ信号の調整やデジタル化や増幅といった必要な様々な機能のために使用される。本発明のバイオセンサは、シャントと、シャントの壁内に埋め込まれたモニタ装置とを有している。モニタ装置は、音響トランスデューサを介したシャントの非侵襲な動作テストや識別を許容する。
【0002】
多くの医学的な状態は、患者の体内の生理状態のモニタおよび測定を必要としている。例えば、患者の脳の血管や室内に異常な高圧で脳脊髄液が蓄積される脳の状態を示す水頭は、患者の頭蓋内の圧力のモニタを必要とする。
【0003】
患者の体内の生理状態をモニタするための埋め込み可能な装置は公知の技術である。そのような従来の装置の1つは、埋め込み可能な圧力センサを有している。この圧力センサは、患者の頭蓋を貫通する配線や接点からなる機構によって患者の体外に圧力信号を送信する(例えばUSP4、677、985参照)。このようなタイプの装置は、一般に、体外に延びる配線によって感染の危険性が増大したり患者に不快感を与えたりするため、十分であるとはいえない。
【0004】
患者の体内に完全に埋め込み可能なモニタ装置も公知の技術である。そのよううな従来の装置の1つは、USP4、471、786に開示されており、患者の生理状態を検知するセンサと、トランスミッタと、患者の体外にセンサ信号を送信するバッテリアセンブリとを有している。このようなタイプの装置もまた、バッテリが大きく、バッテリを周期的に交換しなければならないため、別個の手術が必要となり、医学的な状態の多くのタイプにとって十分とはいえない。
【0005】
バッテリを必要としない埋め込み可能なモニタ装置は提案されている。そのような装置(USP3、943、915、USP4、593、703参照)は、周波数同調L−C(Lumped−Constant)回路に接続されたセンサを使用している。センサは、L−C回路のリアクタンスを変化させるために、検知された生理状態の変化を、同調L−C回路の誘導子またはコンデンサに機械的に送る。リアクタンスのこの変化は回路の共振周波数を変化させ、これがその後に外部のレシーバによって検知されるとともに、モニタされた生理状態を示す信号に変換される。
【0006】
このようなL−Cタイプの埋め込み可能なモニタ装置は、幾つかの点でバッテリ動作の装置よりも優れているが、しかし、使用において幾つかの欠点を内在している。例えば、L−C回路は、一旦埋め込まれると、校正することが難しく、本質的に単一チャンネルであり、特定の測定領域しか感知し得ない。したがって、L−Cタイプのモニタ装置は、長い期間埋め込まれると、常時良好な精度を確保することができず、また、広い検知範囲をもつセンサとともに使用するには適していない。また、処理電力が供給されない。
【0007】
配線接続やバッテリ供給を使用しない他の埋め込み可能なモニタ装置は、体内でのデータ処理のために必要なエネルギーを供給するために、大きな電磁アンテナを使用している。このようなアンテナは、大きく、移植するには危険である。また、人体組織への電磁エネルギーの吸収率が高いため、皮下移植でのみ使用され、体内の深部へのエネルギー供給は配線接続によって達成される。僅かな量の電磁エネルギーだけが外部アンテナから体内深部のモニタ装置に直接に送られる。
【0008】
前述した従来の全ての埋め込み可能なモニタ装置の一般的な欠点は、これらが1つの生理状態だけを検知もしくはモニタするために動作可能であるという点である。したがって、医者が患者の脳室内の流体の圧力および温度をモニタしたい場合には、そのような装置を2つ移植しなければならない。
【0009】
また、このような従来の埋め込み可能なモニタ装置は、患者の1つの生理状態だけしかモニタできず、患者の体外に生理状態を示す信号を送信するだけであり、その信号の処理や変換を行なうことができない。
【0010】
また、その構成固有の限界から、これらの装置は、モニタされた生理状態の内在する原因を緩和するために使用することができない。例えば、水頭を患う患者に使用できるように構成された頭蓋内圧センサは、患者の脳内の流体圧レベルが高くなった場合にのみ検知し、患者の脳内に蓄積された脳脊髄液の量を減少させるように動作することはできない。したがって、患者の脳内圧が非常に高いことが前記従来の頭蓋内圧センサによって測定されると、その状態を緩和するために手術を行なわなければならない。
【0011】
頭蓋内圧のような体内の生理状態をモニタして緩和する改良された埋め込み可能なバイオセンサはUSP5、704、352に開示されている。ここに開示されたバイオセンサシステムは、患者の生理状態をモニタするための少なくとも1つのセンサと、受動無線周波数のトランスデューサとを有している。前記トランスデューサは、1または複数の前記センサからセンサ信号を受けるとともに、そのセンサ信号をデジタル信号に変換し、外部で形成された電磁呼びかけエネルギー信号を受けた時には、前記デジタル信号を患者の体外に送信する。また、ここに開示されたバイオセンサシステムはシャントを有しており、このシャントは、バイオセンサのセンサによってモニタされた頭蓋内圧を緩和するために使用される。
【0012】
このバイオセンサシステムは、前述した従来の装置およびシステムを超える利点を有しているが、しかし、使用される無線周波数トランスデューサに固有の欠点をもっている。このトランスデューサは信号を送受信するためのアンテナを使用する必要があるため、そのようなアンテナの方向性に起因する送受信能力に限りがある。また、人体組織への電磁エネルギーの吸収率が高いため、このシステムでは体内の深部にインプラントを埋め込むことができず、その結果、そのようなバイオセンサの体内での配置は、電磁信号を利用し易い皮膚の近傍領域に制限される。したがって、そのようなシステムの有効性には非常に限りがある。
【0013】
そのため、前述した欠点がない、頭蓋内圧のような体内の生理状態をモニタして緩和できるバイオセンサシステムは広く必要とされており、また、このようなシステムは非常に有益であると認められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
したがって、本発明の目的は、身体のパラメータを非侵襲でモニタするために使用できるバイオセンサを提供することである。
【0015】
また、本発明の他の目的は、配線や一体型の電源を必要としないバイオセンサを提供することである。
【0016】
また、本発明の更に他の目的は、従来の装置と比べて体外に配置されたものの影響を殆ど受けないバイオセンサを提供することである。
【0017】
また、本発明の他の目的は、体内の深部の任意の位置から有効に動作可能なバイオセンサを提供することである。
【0018】
これらの目的を達成するために、本発明のバイオセンサは、人体のような水分を含む体内で信頼できる伝達性を示す音響放射の利点を利用するとともに、音響可変圧電トランスデューサの利点も利用する。
【0019】
本発明の一態様においては、患者の生理状態をモニタして任意に緩和するための埋め込み可能なバイオセンサシステムが提供される。このシステムは、(a)生理状態の少なくとも1つのパラメータを検知するとともに、生理状態を示す電気的なセンサ信号を形成する少なくとも1つのセンサを備え、(b)前記少なくとも1つのセンサと直接的または間接的に接続された第1の音響可変トランスデューサを備え、前記第1の音響可変トランスデューサは、患者の体外から受けた音響呼びかけ信号を、前記プロセッサにエネルギーを供給するための電力に変換し、前記第1の音響可変トランスデューサは、更に、前記少なくとも1つのセンサの電気的な前記センサ信号を体外で受信可能な音響信号に変換し、これによって、音響呼びかけ信号の形成時に、生理状態の少なくとも1つのパラメータに関する情報が体外に中継されることを特徴とする。
【0020】
好ましい実施形態の他の特徴によれば、バイオセンサシステムは、前記少なくとも1つのセンサと前記第1の音響可変トランスデューサとの間で接続されたプロセッサを更に備え、前記プロセッサは、電気的な前記センサ信号を、生理状態を示す変換電気信号に変換し、前記プロセッサは前記電力によって動作される。
【0021】
本発明の他の態様においては、患者の生理状態をモニタして緩和するための埋め込み可能なバイオセンサシステムが提供される。このシステムは、(a)流体通路を有し且つ患者の身体の部分から前記流体通路を通じて流体を排出するように動作可能なシャントを備え、(b)前記シャントに接続され、生理状態を非侵襲でモニタして前記シャントを操作するモニタ操作機構を備え、前記モニタ操作機構は少なくとも1つのセンサを有し、前記少なくとも1つのセンサは、生理状態の少なくとも1つのパラメータを検知するとともに、生理状態を示す電気的なセンサ信号を形成し、(c)前記少なくとも1つのセンサと直接的または間接的に接続された第1の音響可変トランスデューサを備え、前記第1の音響可変トランスデューサは、患者の体外から受けた音響呼びかけ信号を、前記少なくとも1つのセンサにエネルギーを供給してコマンド時に前記シャントを操作するための電力に変換し、前記第1の音響可変トランスデューサは、更に、電気的な前記センサ信号を体外で受信可能な音響信号に変換し、これによって、音響呼びかけ信号の形成時に、生理状態の少なくとも1つのパラメータに関する情報が体外に中継され、前記シャントがコマンド時に操作可能であることを特徴とする。
【0022】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記モニタ操作機構は、前記少なくとも1つのセンサに接続されるプロセッサを有し、前記プロセッサは、電気的な前記センサ信号を、生理状態を示す変換電気信号に変換する。
【0023】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記コマンドは、体外から供給される音響操作信号である。
【0024】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記シャントは、患者の脳から脳脊髄液を排出するための脳脊髄液シャントである。
【0025】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記少なくとも1つのセンサは、
前記流体通路に位置決めされた第1の圧力センサを有し、この第1の圧力センサは、患者の脳内の脳脊髄液の圧力を検知するとともに、この圧力を示す第1の圧力信号を形成する。
【0026】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記少なくとも1つの圧力センサは、前記第1の圧力センサから所定距離離間して位置決めされた第2の圧力センサを有し、この第2の圧力センサは、前記シャントを通じて流れる脳脊髄液の圧力を検知するとともに、この圧力を示す第2の圧力信号を形成する。
【0027】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記プロセッサは、第1および第2の圧力センサからの第1および第2の圧力信号を受けて、前記シャントを通じた脳脊髄液の流量を演算する。
【0028】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記第1の音響可変トランスデューサは、(i)孔を有するセル部材を備え、(ii)前記セル部材に取り付けられ且つ十分な可撓性をもつ圧電層を備え、前記圧電層は内面と外面とを有し、前記圧電層は音響呼びかけ信号を受けた際にその共振周波数で振動できるように寸法が設定され、(iii)前記外面に取り付けられた第1の電極と、前記内面に取り付けられた第2の電極とを備えている。
【0029】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記圧電層は、PVDFまたは圧電セラミックから成るグループから選択された材料によって形成される。
【0030】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記プロセッサは、調整器と、電気的な前記センサ信号を前記変換電気信号に変換するデジタイザとを有している。
【0031】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記変換電気信号がデジタル信号である。
【0032】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記プロセッサと、前記第1の音響可変トランスデューサと、前記少なくとも1つのセンサは、単一のバイオセンサ装置に互いに一体的に設けられている。
【0033】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、バイオセンサシステムは、(c)患者の身体に対して位置決め可能な体外ステーションを更に備え、前記体外ステーションは、前記音響呼びかけ信号を形成する呼びかけ信号ジェネレータを有し、前記呼びかけ信号ジェネレータは、前記第1の音響可変トランスデューサに前記呼びかけ信号を送信し且つ前記第1の音響可変トランスデューサから前記受信可能な音響信号を受信する少なくとも1つの第2のトランスデューサを有している。
【0034】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記プロセッサは、電気的な前記センサ信号を格納するメモリと、電気的な前記センサ信号を解析する解析機構とを備えている。
【0035】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記プロセッサはプログラム可能なマイクロプロセッサを有している。
【0036】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記少なくとも1つのセンサは、
圧力センサ、温度センサ、pHセンサ、血糖値センサ、血液酸素量センサを含むとともに、動作センサ、流量センサ、速度センサ、加速度センサ、力センサ、歪みセンサ、音響センサ、水分センサ、浸透圧センサ、光センサ、濁度センサ、放射線センサ、電磁場センサ、薬品センサ、イオンセンサ、酵素センサから成るグループから選択される。
【0037】
前記好ましい実施形態の他の特徴によれば、前記第1の音響可変トランスデューサは、トランスデューサを識別する識別コードを送信可能である。
【0038】
本発明の他の態様においては、患者の体内の生理状態を非侵襲でモニタするための方法が提供される。この方法は、(a)患者の体内に埋め込まれた少なくとも1つのセンサを介して生理状態に関連付けられた少なくとも1つのパラメータを検知し、これによって、生理状態に関する情報を電気出力として得るステップを有し、(b)音響トランスデューサを介して前記電気出力を音響信号に変換し、これによって、患者の体外に前記情報を音響で中継するステップを有し、(c)前記少なくとも1つのセンサを動作させるために、患者の体外から音響呼びかけ信号を中継するステップを有していることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の他の態様においては、患者の体内の生理状態を非侵襲でモニタし、軽減緩和するための方法が提供される。この方法は、(a)患者の体内に埋め込まれた少なくとも1つのセンサを介して生理状態に関連付けられた少なくとも1つのパラメータを検知し、これによって、生理状態に関する情報を電気出力として得るステップを有し、(b)音響トランスデューサを介して前記電気出力を音響信号に変換し、これによって、患者の体外に前記情報を音響で中継するステップを有し、(c)前記少なくとも1つのセンサを動作させるとともに前記シャントを動作させて生理状態を軽減緩和するために、患者の体外から音響呼びかけ信号を中継するステップを有していることを特徴とする。
【0040】
本発明は、身体のパラメータを非侵襲でモニタするために使用でき、配線や一体型の電源を必要とせず、体内の深部や任意の位置に有効に位置決めできるとともに、従来技術と比べて体外に配置されたものの影響を殆ど受けないバイオセンサを提供することによって、現在知られている構成の欠点を十分に解決している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は図2(a)〜図2(e)のA−A線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の長手方向断面図、(b)は図2(a)〜図2(e)のB−B線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の長手方向断面図である。
【図2】(a)は図1(a)のC−C線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の断面図、(b)は図1(a)のD−D線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の断面図、(c)は図1(a)のE−E線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の断面図、(d)は図1(a)のF−F線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の断面図、(e)は図1(a)のG−G線に沿う本発明に係るトランスデューサ要素の断面図である。
【図3】層の全面にわたって均一な圧力を印加した際におけるトランスデューサの圧電層を横切る電荷密度の分布を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は本発明に係るトランスデューサの電力レスポンスの好ましい最適化の結果を示す図である。
【図5】本発明に係るトランスデューサの電力レスポンスを最大にする好ましい電極形状を示す図である。
【図6】トランスミッタとして機能し得る本発明に係るトランスデューサ要素の他の実施形態を示す長手方向断面図である。
【図7】(a)〜(c)は圧電層の機械インピーダンスを制御可能に変化させるための並列および非並列接続を有する本発明に係るトランスミッタの可能な構成を示す概略図である。
【図8】(d)〜(f)は圧電層の機械インピーダンスを制御可能に変化させるための並列および非並列接続を有する本発明に係るトランスミッタの可能な構成を示す概略図である。
【図9】非並列接続を有する本発明に係るトランスミッタ要素の長手方向断面図である。
【図10】本発明に係るトランスミッタ要素の他の実施形態を示す長手方向断面図である。
【図11】本発明に係るバイオセンサシステムの体内および体外要素を示すブロック図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るバイオセンサシステムの構成要素を示す概略図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る音響トランスデューサおよび圧力センサを有するシャントシステムの長手方向断面図である。
【図14】シャントから分離された図13のトランスデューサおよび圧力センサを示す概略図である。
【図15】ヘルメット内に埋め込まれた本発明にかかる体外ステーション構成要素を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、患者の体内の生理学的な状態をモニタして緩和するために使用できる体内バイオセンシングシステムおよび方法に関する。特に、本発明のバイオセンサシステムおよび方法は可変音響トランスデューサを組み込んでおり、このトランスデューサは、センサと通信を行ない、また、例えば水頭症患者の頭蓋内圧をモニタして緩和するために患者の体内に埋め込まれるシャント(shunt)と任意に通信を行なう。
【0043】
本発明に係る埋め込み可能なバイオセンサシステムおよび方法の原理・動作は図面および以下の記述を参照すれば容易に理解できる。
【0044】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明がその適用において以下の説明に述べられ或いは図面に示された構成要素の構成および配置に限定されないことは言うまでもない。本発明は、他の実施形態をとることもでき、あるいは、様々な方法で実施或いは成し遂げることが可能である。また、以下で使用される専門用語や専門的な表現は、説明のためのものであって、限定的に解釈されるべきではない。本発明に係るシステムおよび方法をより理解するためには、図11〜図15に示されるように、米国特許出願第09/000、553号に記載されたトランスデューサの構成および動作をまず参照されたい。
【0045】
図1(a)、1(b)、2(a)〜2(e)はトランスデューサ要素1として参照される本発明に係るトランスデューサ要素の好ましい実施形態を示している。本実施形態のトランスデューサ要素1は、受けた音響信号を電力に変換するとともに、この電力を送信音響信号に変換する。図示のように、トランスデューサ要素1は、孔4を有する少なくとも1つのセル部材3を備えている。孔4は、基板にエッチング形成されるとともに、十分な可撓性をもつ圧電層2によって覆われている。圧電層2には上部電極8と下部電極6とが取り付けられ、各電極は電気回路に接続される。
【0046】
基板は好ましくは電気絶縁層12上に配置された導電層11から成り、この導電層11の厚さを貫くように孔4がエッチングされている。
【0047】
導電層11は好ましくは銅から成り、絶縁層12は好ましくはポリイミドのようなポリマーから成る。KAPTONTMシートのような従来の銅板ポリマー積層体は、トランスデューサ要素1の製造のために使用できる。NOVACLADTMのような市販の積層体を使用することもできる。また、基板は、シリコン層や他の適切な任意の材料を含有していても良い。また、層11がPYRALINTMのような非導電材料から成っていても良い。
【0048】
好ましくは、孔4は、従来のプリント回路のフォトリソグラフィ法を使用して、基板にエッチング形成される。また、VLSI/ミクロ機械加工技術や他の適当な任意の技術を使用して、孔4を基板にエッチング形成しても良い。
【0049】
圧電層2はPVDFまたはその共重合体から成っていても良い。また、圧電層2は十分な可撓性をもつ圧電セラミックから成っていても良い。好ましくは、圧電層2は、厚さが約9〜28μmの極PVDFシート(poled−PVDF sheet)から成る。圧電層2の厚さおよび半径は、孔4内の圧力と同様、所定の共振周波数が得られるように厳選されることが望ましい。図1(a)、1(b)の実施形態を使用する場合には、層2の半径は孔4の半径によって決定される。
【0050】
十分な可撓性をもつ圧電層2を使用すれば、米国特許出願第09/000、553号に記載された発明は、音波の波長がトランスデューサの限界を大きく超えるような共振周波数をもつ小型のトランスデューサ要素を提供することができる。これによって、トランスデューサは共振時であっても無指向性となることができ、周囲の媒体によって大きく減衰することがない比較的低い周波数の音響信号を使用できるようになる。
【0051】
しかし、小型のトランスデューサの従来の構成は、厚さモードで常時動作する硬質の圧電セラミックに依存している。そのような場合、共振周波数は、要素の寸法および圧電セラミック内での音速に関係付けられ、これらの大きさの程度によって大きくなる。
【0052】
米国特許出願第09/000、553号に記載された発明は、無指向性のトランスデューサ、すなわち、入射する音響放射線の方向に対して感度がないトランスデューサを提供しており、これによって、他の共振装置に対するトランスデューサの動作を簡単にしている。したがって、そのようなトランスデューサ要素は、トランスデューサ要素の方向を予め突きとめることができない狭い場所や隠れた場所で用いるのに適している。
【0053】
特定の実施形態において、孔4は、円形状もしくは六角形状を成して、半径が約200μmに設定されていることを特徴としている。導電層11は約15μmの厚さを有していることが望ましい。セル部材3は導電層11の厚さを完全に貫通するようにエッチングされることが望ましい。電気絶縁層12は約50μmの厚さを有していることが望ましい。米国特許出願第09/000、553号に記載された発明に係るトランスデューサ要素の様々な要素の正確な寸法は、特定の出願の要求にしたがって具体的に記載されてはいない。
【0054】
孔4は空気のようなガスを有していることが望ましい。孔4内のガスの圧力は、層2の共振周波数と同様、トランスデューサの所定の感度や耐久性が得られるように、厳選される。
【0055】
図2(b)に示されるように、基板には、好ましくは導電層11の厚さを貫くように、絶縁室18がエッチング形成されており、これにより、トランスデューサ要素は、基板にエッチング形成された他のトランスデューサ要素のような他の電気部品を含む基板の他の部分から絶縁される。特定の実施形態において、絶縁室18の幅は約100μmである。図示のように、絶縁室18は、孔4を取り囲む所定の厚さの壁10を形成し且つ壁10と一体を成す導電ライン17を形成するように、基板にエッチング形成されている。この場合、導電ライン17は、好ましくは同一の基板にエッチング形成される他の電気部品もしくは外部の電気回路に対してトランスデューサ要素を接続する。
【0056】
図1(a)および図1(b)に示されるように、圧電層2には上部電極8と下部電極6とが取り付けられている。図2(c)および図2(e)に示されるように、上部電極8と下部電極6は、圧電層2の所定の領域を覆うように正確に成形されていることが好ましい。電極6、8は、真空蒸着、マスクエッチング、塗装等の様々な方法を使用することによって、圧電層2の上面と下面とにそれぞれ堆積されている。
【0057】
図1(a)に示されるように、下部電極6は、導電層11上に堆積された十分に薄い導電層14と一体の部分として形成されていることが好ましい。導電層14は、ニッケル銅合金によって形成され且つシール接続部16を介して導電層11に取り付けられていることが望ましい。シール接続部16はインジウムによって形成されていても良い。好ましい構成において、シール接続部16は、孔4の壁10の全体の高さが約20〜25μmとなるように、約10μmの厚さを有していることを特徴としている。
【0058】
図2(c)に示されるように、導電層14は、壁10や導電ライン17を含む導電層11の様々な部分を覆っている。後述するが、導電ライン17を覆う導電層14の部分は、電気部品への接続部となっている。
【0059】
好ましい実施形態において、電極6、8は、エネルギーを最も多く生成する圧電層2の領域を含むように、特定の形状を成しており、これにより、電極領域すなわちセルのキャパシタンスを最大限に利用しながらトランスデューサの応答性を最大にでき、したがって、トランスデューサ要素の電圧感度、電流感度、電力感度といった選択されたパラメータを最大にすることができる。
【0060】
角振動数での単色励振(monochromatic excitation)によって生じる圧電層2の垂直変位Ψは、薄板のための標準的な方程式を使用することによって表わされる。

【0061】
この場合、Qは層2の弾性を示すヤング率、hは層2の厚さの1/2、vは層2のポアソン比、γは

【0062】
によって与えられる層内の有効波数であり、また、ρは層2の比重(密度)、ωは印加される圧力(印加される圧力は、音圧、層2を横切る静圧差、トランスデューサが受ける他の任意の圧力を含む)の角振動数であり、Zは孔4の内側および外側の媒体にそれぞれ層2を連結することによって生じる機械インピーダンスである。なお、孔4の内側の媒体は好ましくは空気であり、孔4の外側の媒体は好ましくは流体である。また、Pは層2に加えられる音圧、

【0063】
は層2の垂直変位の平均値を示している。
【0064】
孔4が円形である場合、所定の半径aを有する円形の層2の動的変位を示す解(1つの振動数成分ωのために与えられる)を極座標で示すと、

【0065】
この場合、

【0066】
は、時間に依存しており、円形の層2上に位置する選択された点の変位を示している。その特定の位置は半径rおよび角度

【0067】
によって与えられる。また、JとIはそれぞれ第1種の正規のベッセル関数および第1種の修正されたベッセル関数を示している。また、PA、HAはそれぞれ孔4内の空気圧および孔4の高さを示している。また、ρWは孔4の外側の流体の比重を示している。
【0068】
インピーダンスZの第1項は、孔4内の空気の圧縮によって生じる剛性に関係している。また、Zの第2項は流体境界層によって加えられる質量に関係している。放射性音響エネルギーに関係するインピーダンスZの他の項はここでは無視できる。
【0069】
電極6、8間で単位面積当たりに集められる電荷は、変位によって生じる層2内の歪みを求めることによって、また、圧電歪み係数テンソルの対角線でない要素e31、e32を掛けることによって以下のように得られる。

【0070】
この場合、

【0071】
は円形の層2上に位置する選択された点の電荷密度を示している。その特定の位置は半径rおよび角度

【0072】
によって与えられる。また、xは圧電層2の伸長方向であり、yは層2の横方向(伸長方向に対して垂直な方向)である。また、e31、e32は、圧電歪み係数テンソルの対角線でない要素であり、層2上の選択された点に蓄積された電荷を示している。これは、与えられたx方向に沿う歪みおよびy方向に沿う歪みに依存しており、これらの係数はPVDF層を使用した場合には実質的に異なる。Ψは、層2の変位であり、周波数fで与えられる音圧Pによる変位と孔4の内側と外側との間の圧力差によって生じる変位との合計として与えられる。これらの変位は先に与えられた方程式から得られる。
【0073】
電極6、8間に蓄積される全電荷は、電荷の全面積Sにわたって

【0074】
を積分することによって得られる。すなわち、

【0075】
圧電層2のキャパシタンスCは

【0076】
によって与えられる。ここで、εは圧電層2の誘電率であり、2hは圧電層2の厚さである。
【0077】
したがって、圧電層2の電圧レスポンス、電流レスポンス、電力レスポンスは、以下のようにして求められる。

【0078】
一般にDC電流は漏れ出てくるため、通常、QのDC成分は演算する前に除去される。先に与えられたQの値は、QのAC成分のピーク値を示しており、したがって、RMS値のような他の必要な値を得るために修正される。
【0079】
このように、トランスデューサの電気出力は、QのAC成分および電極の形状Sに依存する電圧レスポンス、電流レスポンス、電力レスポンスに関して表わされる。また、先の方程式から分かるように、トランスデユーサの電圧レスポンスは、電極の面積を最小にすることによって最大となる。しかし、電流レスポンスは、電極の面積を最大にすることによって最大となる。
【0080】
図3は、円形の圧電層2の全面積にわたって均一に圧力(音響圧および静水圧)を加えることによって得られる層2上の電荷密度の分布を示している。ここでは、層2の伸長方向(x方向)および横方向(y方向)を含むデカルト座標を使用することによって、層2上の特定の位置が決定されている。図から分かるように、層2上の異なった位置は、電荷密度に異なって寄与している。層2の外周70および中央72では、変形が最小であるため、電荷密度が消失してしまっている。中央72の両側に対称に位置している2つのコア74a、74bでは、最大の歪み(伸長方向での歪み)が生じるため、電荷密度が最大となっている。
【0081】
トランスデューサの電気レスポンスを最適化するための好ましい方法は、最大の電荷密度の少なくとも1つの選択されたパーセンテージの閾値を与える領域を選択して電極を形成することである。この場合、閾値は最適化されるパラメータである。0%の閾値は層2の全領域を覆う電極に関係している。
【0082】
図4は、所定の面積の層2を有するトランスデューサの電力レスポンスのために行なわれた最適化の結果を示している。図示のように、最適な電力レスポンスを提供する閾値は30%である(グラフ(b))。したがって、最大の電荷密度の少なくとも30%を与える層2の部分だけを覆う電極が最大の電力レスポンスを生じる。そのような電極によって得られる適切な電圧レスポンスは、層2を完全に覆う電極よりも2のファクター分だけ高い(グラフ(a))。そのような電極によって得られる適切な電流レスポンスは、層2を完全に覆う電極よりも僅かに低い(グラフ(c))。また、図示のように、層2の共振周波数で音響信号を加えると、層2の撓みが最大となる(グラフ(d))。
【0083】
トランスデューサの電力レスポンスを最大にするための好ましい電極形状が図5に示されている。この場合、電極は、層2の最大電荷密度部分を実質的に覆う2つの電極部80a、80bを有している。これらの電極部は、最小の面積を有する接続部82によって互いに接続されている。電極部80a、80bは、好ましくは、最大電荷密度の少なくとも選択された閾値(例えば30%)を生じる層2の部分を覆っている。
【0084】
本発明においては、電極6、8の形状を決定するために、他の任意のパラメータを最適化しても良い。米国特許出願第09/000、553号に記載された発明のさらなる特徴によれば、トランスデューサに関して最大の電気レスポンスが提供されるように、たった1つの電極(上部電極8または下部電極6)が形成される。この場合、他の電極が層2の全領域を覆っている。上部電極8と下部電極6との間で受けられる層2の部分でのみ電荷が集められるため、このような構成は、同一の形状を有する2つの定型電極を有する構成と作用的に等価である。
【0085】
図6に示される他の実施形態において、トランスデューサ要素1の室(孔)4は十分に低い圧力のガスを収容しており、これによって、平衡状態で圧電層2が実質的に凹形状を成している。このような構成によれば、層2の所定の変位によって得られる全電荷が増加し、トランスデューサの電気レスポンスを向上させることができる。このような実施形態における全変位は、Ψ=P0ΨDC+PΨACcosωtによって与えられる。この場合、P0は孔4の内側と外側との間の静圧差であり、ΨDCはP0によって生じる変位であり、Pは音圧の振幅であり、ΨACはPによって生じる変位である。
【0086】
したがって、x方向に沿う歪みは、以下のように3つの項を有する。

【0087】
ここで、DC成分は一般に漏れ出る。
【0088】
このように、孔4の内側の媒体(好ましくは、空気)の圧力を外側の媒体(好ましくは、流体)の圧力よりも低くすることにより、P0の値が増大し、これによって、先の方程式の3番目の項の値が増大する。
【0089】
このような実施形態によれば、層2を変位させることによって、層2の電荷出力を増大させることができ、これによって、音圧Pを増大させることなくトランスデューサの電圧、電流、電力レスポンスを向上させることができる。また、このような実施形態によれば、より小さな音響撓みで同一の電気レスポンスが得られるため、トランスデューサを小型化できる。また、このような実施形態は、図1(a)、1(b)の実施形態よりも機械的に強固であり耐性が向上する。トランスデューサをさらに小型化できるため、図1(a)、1(b)の実施形態よりも高い共振周波数を使用できる。
【0090】
米国特許出願第09/000、553号に記載された発明に係るトランスデューサ要素1は、好ましくは、マイクロエレクトロニクス産業で広く使用されている技術を用いて組立てられる。これにより、従来の他の電子部品との集積化が可能となる。なお、これについては後述する。トランスデューサ要素が銅−ポリマー積層体もしくはシリコンのような基板を有している場合には、様々な従来の電子部品を同じ基板上に組立てても良い。
【0091】
好ましい実施形態においては、複数の孔4が1つの基板12にエッチング形成されるとともに1つの圧電層2によって覆われる。これによって、変換セル部材(transducing cell member)3のマトリクスを有するトランスデューサを提供でき、個々の変換セル部材3の小型化という利益を保持しつつ、大きなエネルギーを収集する所定の大きさの領域を提供することができる。このような構成を使用すれば、トランスデューサの電流レスポンスおよび電圧レスポンスを仕立てることができるように、複数の変換セル部材3同士を電気的に互いに並列に或いは直列に或いはこれらの組み合わせで接続することができる。並列接続は、好ましくは、電流出力を増大するために使用され、直列接続は、好ましくは、トランスデューサの電圧出力を増大するために使用される。
【0092】
また、各変換セル部材3に所定の極性を与えるために、圧電層2は、完全に消極され(極性がなくされ)、その後、特定の領域で再分極されても良い。このような構成によれば、セル部材3間の相互接続の複雑さを低減することができる。
【0093】
また、米国特許出願第09/000、553号に記載された発明に係るトランスデューサ要素は、トランスミッタとして使用され、離れて位置するトランスミッタから受ける外部インピンジング音波を変調して反射させることにより、離れて位置するレシーバに情報を伝えることができる。
【0094】
図6に示されたトランスデューサ要素は、孔4の内外間の圧力差によって生じる正および負の一時的な音圧に対して圧電層2が非対称に変動するため、トランスミッタ要素として機能する。
【0095】
本発明に係るトランスミッタ要素は、好ましくは、これに接続された切換え要素によって、外部から受ける音波の反射を変調させる。前記切換え要素は、センサ出力等の伝えられる情報を符号化し、これによって、反射される音波の周波数を変調させる。
【0096】
このような構成によれば、受けられる音波が外部で形成されるため、送信モジュールそれ自身のエネルギー消費を非常に小さくすることができ、送信に必要な唯一のエネルギーが変調のためのエネルギーとなる。
【0097】
具体的には、センサのような他の電気部品から受けたメッセージ電気信号の周波数に応じて切換え要素を切換えることにより、反射された音響信号が変調され、メッセージ信号の周波数に応じて層2の機械インピーダンスが制御可能に変化される。
【0098】
好ましくは、層2の機械インピーダンスを制御するために、単一のセル部材もしくは複数のセル部材に接続される複数の電極の特定の配列が使用される。
【0099】
図7(a)〜7(c)及び図8(d)〜8(f)は、トランスミッタ要素の層2の機械インピーダンスを制御可能に変化させるための可能な構成を示している。図7(a)に示されるように、米国特許出願第09/000、553号に記載された発明に係るトランスミッタ要素は、電極の第1の対と電極の第2の対とを有している。第1の対は上部電極40aと下部電極38aとを有している。第2の対は上部電極40bと下部電極38bとを有している。電極38a、38b、40a、40bは、導電ライン36a、36b、34a、34bをそれぞれ介して、電気回路に電気的に接続されている。導電ライン36a、36b、34a、34bの電気的な接続を交互に変化させるために、前記電気回路には切換え要素(図示せず)が設けられている。
【0100】
好ましくは、切換え要素は、電極の接続状態を並列接続と非並列接続との間で切換える。並列接続は層2の機械インピーダンスを減少させる。また、非並列接続は層2の機械インピーダンスを増大させる。非並列接続は、ライン34a、36b同士を接続し且つライン34b、36a同士を接続することによって得られる。並列接続は、ライン34a、34b同士を接続し且つライン36a、36b同士を接続することによって得られる。後述するように、切換え周波数は、好ましくは、センサのような電気部品から受けるメッセージ信号の周波数に等しい。
【0101】
図7(b)に示される他の実施形態において、上部電極40aは導電ライン28を介して下部電極38bに接続され、電極38a、40bは接続ライン27、29をそれぞれ介して電気回路に接続されている。この場合、前記電気回路は切換え要素を有している。このような構成では、電極の非並列接続が形成され、切換え要素がON/OFFスイッチとして機能する。これにより、層2の機械インピーダンスが交互に増大する。
【0102】
電気的な接続の複雑さを低減するため、層2は、消極された後に、その特定の領域で再分極されても良い。図7(c)に示されるように、電極40a、38a間で受けられる層2の部分の極性は、電極40b、38b間で受けられる層2の部分の極性と逆である。このように、非並列接続は、導電ライン28によって電極38a、38b同士を接続し且つ導電ライン27、29をそれぞれ電極40a、40bに接続することによって達成される。この場合、導電ライン27、29は電気回路に接続され、電気回路は切換え要素を有している。
【0103】
他の実施形態においては、トランスミッタ要素が複数の変換セル部材を有し、該セル部材同士を適当に相互接続することによって層2の機械インピーダンスが制御可能に変化される。
【0104】
図8(d)に示されるように、第1の変換セル部材3aは層2aと孔4aとを有しており、第2の変換セル部材3bは層2bと孔4bとを有している。そして、これらのセル部材3a、3bは、好ましくは、同一の基板内に収容されている。また、層2a、2bは好ましくは一体に形成されている。電極6a、8aを有す
る電極の第1の対が層2aに取り付けられ、電極6b、8bを有する電極の第2の対が層2bに取り付けられている。電極6a、8a、6b、8bは、導電ライン37a、35a、37b、35bをそれぞれ介して、電気回路に電気的に接続されている。また、図7(a)において説明したように、導電ライン37a、35a、37b、35bの電気的な接続を交互に切換えて並列接続と非並列接続とを交互に形成するために、前記電気回路には切換え要素が設けられている。これにより、層2a、2bの機械インピーダンスを交互に増減することができる。
【0105】
図8(e)は他の実施形態を示している。この実施形態では、第1および第2の変換セル部材が非並列接続によって互いに接続されている。図示のように、セル部材3a、3b間の電気的接続の複雑さを低減するために、層2aの極性は層2bの極性と逆である。したがって、電極6aは導電ライン21によって電極6bに接続され、電極8a、8bには導電ライン20、22がそれぞれ設けられ、各導電ライン20、22は切換え要素を有する電気回路にそれぞれ接続される。層2a、2bの機械インピーダンスを交互に増大させるため、前記切換え要素は、好ましくは、ON/OFFスイッチとして機能する。
【0106】
図8(f)は他の実施形態を示している。この実施形態において、第1および第2の変換セル部材が並列接続によって互いに接続されている。図示のように、電極6a、6bは導電ライン24によって互いに接続され、電極8a、8bは導電ライン23によって互いに接続され、電極6b、8bには導電ライン26、25がそれぞれ設けられ、各導電ライン26、25は切換え要素を有する電気回路にそれぞれ接続される。層2a、2bの機械インピーダンスを交互に増減するため、前記切換え要素は、好ましくは、ON/OFFスイッチとして機能する。
【0107】
図9は、同一の基板にエッチング形成され且つ非並列接続によって互いに接続される2つの変換セル部材の可能な構成を示している。図示のように、変換セル部材は共通の圧電層2によって覆われている。この場合、電極6a、8a間で受けられる層2の部分の極性は、電極6b、8b間で受けられる層2の部分の極性と逆である。電極8a、8bは導電ライン9によって接着され、電極6a、6bには電気回路への接続のための導電ライン16が設けられている。
【0108】
本発明に係るトランスミッタ要素の他の実施形態が図10に示されている。このトランスミッタ要素は孔4を有する1つの変換セル部材を備えており、孔4は好ましくは極性が互いに逆の第1および第2の圧電層50a、50bによって覆われている。層50a、50bは好ましくは絶縁層52によって互いに接続されている。層50aには上部電極44aと下部電極42aとが取り付けられ、また、層50bには上部電極44bと下部電極42bとが取り付けられている。電極44a、42a、44b、42bには電気回路への接続のための導電ライン54、55、56、57がそれぞれ設けられている。
【0109】
前述した内容は単なる実施形態として示されているものであり、米国特許出願第09/000、553号に記載された発明の範囲および精神の範囲内で他の多くの実施形態が可能であることは言うまでもない。
【0110】
後述するように、好ましい実施形態において、本発明は、前述したトランスデューサおよび米国特許出願第09/000、553号に記載されたトランスデューサの利点を利用している。
【0111】
したがって、本発明においては、埋め込み可能なバイオセンサシステムが設けられる。このシステムは、以下では、バイオセンサ100として示されている。
【0112】
バイオセンサ100は、患者の生体内の生理学的な状態をモニタするために生体内に埋め込み可能である。バイオセンサ100は、その動作中、埋め込まれた1または複数のセンサによって検知されると、生理状態に関連付けられた1または複数のパラメータに関する音響信号の態様を成す情報をコマンド時に中継する。また、本発明に係るバイオセンサ100は、外部の音響呼びかけ信号によってエネルギー(電圧)が加えられるように構成されている。
【0113】
また、バイオセンサ100は配線または独立した一体型電源である。また、人体は実際に水分を含む身体であり、また、音響放射はあらゆる方向で水分を含む体内に容易に伝搬可能であるため、本発明のバイオセンサ100は、生体内の深部に効果的に埋め込み可能である点で、また、呼びかけ信号の位置決め効果の点で、従来技術に優る利点を提供する。
【0114】
また、後述するように、本発明の好ましい実施形態において、バイオセンサシステム100は、モニタされた生理状態を緩和するためのシャントを組み込んでいる。
【0115】
図11に示されるように、本発明の1つの実施形態において、本発明のバイオセンサ100は、モニタされて処置される体内領域に埋め込まれると、患者の生理状態に関する1または複数のパラメータを検知またはモニタするとともに、この生理状態または前記パラメータを示す音響信号を患者の体外に送信するために使用される。
【0116】
本発明のこの実施形態において、バイオセンサ100は、患者の生理状態に関する1または複数のパラメータを検知し、モニタし、あるいは測定するための1または複数のセンサ112を有している。
【0117】
また、バイオセンサ100は音響の可変トランスデューサ114を有している。トランスデューサ114は、センサ112から電気信号を受けるとともに、この電気信号を音響信号に変換する。また、トランスデューサ114は、外部で形成された音響呼びかけ信号を受けるとともに、この音響エネルギーを電力に変換する。この変換された電力は、センサ112にエネルギー(電圧)を加えるために使用されるとともに、バイオセンサ100の配線または独立した一体型電源のために使用される。
【0118】
図11に示されるように、トランスデューサ114は受信アセンブリ117と送信アセンブリ118とを有しており、これらの両者は単一のトランシーバアセンブリとして一体形成されていることが望ましい。
【0119】
本発明の好ましい実施形態において、受信アセンブリ117と送信アセンブリ118は、トランスデューサ要素1から組立てられる。なお、トランスデューサ要素1の構成は図1(a)、1(b)、図2(a)〜2(e)において詳しく説明されている。また、本発明のバイオセンサ100の受信アセンブリ117および送信アセンブリ118を形成するために、複数のトランスデューサ要素1を様々な態様で(前述した図7(b)、7(c)、図8(d)〜8(f)、図9、図10のように)使用することも可能である。
【0120】
バイオセンシング装置に必要とされる小型化を大きく促進させるために、1つのトランスデューサ要素1を1つのトランシーバに組み込むことが望ましいが、別個のトランスデューサ要素1のユニットからトランスデューサ114の構成要素を形成することもできる。
【0121】
本発明の好ましい実施形態において、バイオセンサ100によって送受信される信号はプロセッサ113によって処理される。センサ112によって形成される電気信号は、プロセッサ113により処理されて、その処理された態様で或いは変換された態様でトランスデューサ114へと送られる。また、トランスデューサ114によって受信された音響信号は、電気信号(電力)に変換された後、好ましくは更にプロセッサ113により処理される。
【0122】
この目的のため、プロセッサ113は、好ましくは、調整器116を有し、また、必要な場合には、センサ112および/またはトランスデューサ114から受ける電気信号を処理するためのデジタイザ119を有している。
【0123】
音響呼びかけ信号は体外ステーション130によって形成される。図11に示されるように、体外ステーション130は、呼びかけ器115を有しており、その動作および構成については後述する。
【0124】
センサ112は、患者の脳の脳室または腔内の脳脊髄液の圧力および/または温度といった患者の体内の1または複数の生理学的状態をモニタもしくは検知するために動作可能である。また、センサ112は、これらの測定された生理学的なパラメータを示す検知信号を形成する。この検知信号は、一般に電気的なアナログ信号であるが、使用されるセンサのタイプに応じてデジタル信号であっても良い。A/D変換器が内蔵されたセンサは技術分野で良く知られている。
【0125】
センサ112は、好ましくは、構成において従来と同様であり、例えば、圧力センサ、温度センサ、pHセンサ、血糖値センサ、血液酸素量センサを含むとともに、例えば、動作、流れ、速度、加速度、力、歪み、音響、水分、浸透圧、光、濁度、放射線、電磁場、薬品、イオン、酵素といったものの量や変化、電気的なインピーダンスなどに反応する他の任意のタイプの生理学的検知(モニタ、測定)装置も含む。
【0126】
本発明において有用なこれらのセンサおよび他のセンサ装置の例は、ここに参照して組み入れられるJacob Fradenの「AIP Handbook of Modern Sensors」に詳細に記載されている。
【0127】
好ましい実施形態において、センサ112は、ここに参照して組み入れられる米国特許出願第09/161、658号に記載されたPVDFセンサのような圧力センサトランスデューサ、または、Motorolaによって販売されたMPX2000シリーズの圧力センサである。
【0128】
前述したように、本発明の好ましい実施形態において、トランスデューサ114はプロセッサ113を介してセンサ112と電気的に接続されている。プロセッサ113は、調整器116を介してセンサ信号を調整するとともに、デジタイザ119を介してセンサ信号をデジタル信号に変換して(必要な場合)、その処理された信号或いは変換された信号をトランスデューサ114に供給する。トランスデューサ114は、コマンド時に、処理された電気信号を対応する音響信号に変換する。この音響信号は、ステーション130から音響呼びかけ信号を受けると、それに付随して患者の体外に送信される。
【0129】
また、プロセッサ113はセンサ112に電気的に接続されており、これらの両者は、VLSI(Very Large Scale Integration)産業において慣例となっているように、共通の小型基板を共有している。プロセッサ113は直接可能な限り短い配線でセンサ112を受ける。
【0130】
プロセッサ113は複数の機能をもっている。前述したように、プロセッサ113は、センサ112から受けた信号を調整器116を介して調整する。このような調整は、センサ112の小型化およびセンサ112のキャパシタンスを小さくする上で必要である。この場合、調整器116は、適当な振幅やフィルタ効果を与えるだけでなく、インピーダンスを低減し、ノイズの混信を抑えてバイオセンサ100の信号対雑音比(SN比)を向上させる。
【0131】
また、デジタイザ119はプロセッサ113内で、アナログ信号をデジタル信号に変換するとともに、トランスデューサ114によって患者の体外に音響信号を送信するため、前記デジタル信号をバイナリ(2進数)・データストリームとしてフォーマットする。前記音響信号は、体外ステーション130によって受信されて読み取られる。
【0132】
プロセッサ113は、特定のトランスデューサ114および/またはセンサ112を示すために使用されるセンサ信号とともに送信される固有の装置識別番号を符号化してフォーマットする。
【0133】
好ましくは、プロセッサ113は、患者の体外に信号を送信する前にモニタされた信号を解析するようにプログラムされている。この目的のため、プロセッサ113には、メモリ装置とプログラム制御できる(プログラム化できる)マイクロプロセッサが設けられている。例えば複数のセンサ112から得られる情報を関連付けることによって読み取ったデータを演算するといったように、本発明のバイオセンサシステム100に適用可能な多くの作業がプロセッサ113によって提供される。
【0134】
例えば、患者の脳内の脳脊髄液の圧力と温度とを測定するための圧力センサおよび温度センサがバイオセンサ100に設けられている場合、プロセッサ113は、患者の体外に送信される圧力信号を調整して温度センサによって検知される高温または低温の読み取り値を補償するようにプログラムされる。また、この逆も然りである。これによって、より正確なデータの読み取りを行なうことができる。
【0135】
しかしながら、単一の或いは別個の/補助的な処理が体外ステーション130に設けられたプロセッサによって行なわれても良いということは従来技術で認められる。
【0136】
好ましくは、トランスデューサ114の送信アセンブリ118は、送信される音響信号を変調するために、変調法もしくは他の方法を使用する。このような変調法は、この技術分野において良く知られており、また、ここに参照して組み入れられる例えばUSP5、619、997に詳細に記載されている。
【0137】
体外ステーション130は、患者の体外に配置されており、患者の体内に埋め込まれたバイオセンサ100のトランスデューサ114に動力またはエネルギー(電圧)を供給し且つセンサの音響信号を受けるように構成されている。
【0138】
図11〜図12に示される本発明の一実施形態を以下に詳細に説明すると、ステーション130のトランスデューサ321はヘルメット310内に装着されている。トランスデューサ321は、配線を介して、信号ジェネレータ126と、電力増幅器128と、変調器132と、復調器133と、信号調整器134と、記録解析装置138とに接続されている。
【0139】
表面から患者の体内に送信され且つ体内の音響トランスデューサ114にエネルギーを供給する音響信号を形成するために、信号ジェネレータ126と電力増幅器128は体外のトランスデューサ321にエネルギー(電圧)を供給する。信号ジェネレータ126と電力増幅器128は、知られた任意のタイプのもので良く、ここに参照して組み入れられる「Data Transmission from an Implantable Biotelemeter by Load−Shift Keying Using Circuit Configuration Modulator」 by Zhengnian Tang、Brian Smith、John H.Schild、and P.Hunter Peckham、IEEE Transactions on Biomedical Engineering、Vol.42、No.5、May、1995、pp.524−528に基づいて構成された装置を有している。
【0140】
前述したように、トランスデューサ321は、好ましくは、トランスデューサ要素1と機能的に同様のタイプのものであり、その構成は図1(a)、1(b)、図2(a)〜2(e)、図7(b)、7(c)、図8(d)〜8(f)、図9、図10に記載されている。各トランスデューサ321は、トランスミッタ、レシーバあるいはトランシーバとして働くことができ、好ましくは、1992年に公開された超音波医療診断の基準NCRP113に適合するように構成されている。NCRP113は、そのパートI、IIで、パワートランスミッタとして働くトランスデューサ321がバイオセンサ100にエネルギーを供給するための音響信号の態様で十分なエネルギーを送信することができることを規定している。好ましいトランスデューサ321は市販のピストンタイプのトランスデューサを有している。
【0141】
トランスデューサ321は、電力増幅器128に電気的に接続され、トランスデューサ114と音響通信を行なう。また、トランスデューサ321は、ジェネレータ126および電力増幅器128によって形成されたエネルギーを変化させて患者の身体を通じてトランスデューサ114に送信する。この場合、患者の身体は水分を含んだ身体として働く。
【0142】
復調器133は、トランスデューサ321に操作可能に接続されており、トランスデューサ114から受けたデジタルデータを抽出するために設けられている。体外ステーション130の呼びかけ器115に使用可能な復調器133の例は、Motorolaによって販売されているMC1496またはMC1596タイプの復調器である。
【0143】
信号調整器134は、復調器133に接続されており、復調されたデータを外部装置で読み取りもしくは格納できるフォーマットに変換する。本発明のステーション130に使用可能な信号調整器134の例は、Analog Devicesによって販売されているADM202タイプの調整器である。信号調整器134は、バイオセンサ100によって送信された信号を記録したり供給したり解析したりするために、コンピュータやプリンタやディスプレイといったように従来の記録および/または解析装置に接続されている。
【0144】
このように、本発明のこの実施形態において、バイオセンサ100は、患者の生理状態に関連付けられた1または複数のパラメータを感知したりモニタしたり検知したりするために、患者の体内に埋め込まれる。患者の身体から情報を集めることが望まれる場合、制御コンソール124は、信号ジェネレータ126からエネルギー信号が出力されるように呼びかけ器115に命令を送る。その後、エネルギー信号は、バイオセンサ100のプロセッサ113およびマルチプレクサ−デマルチプレクサ381を制御する制御コンソール124から送られる他のコマンドによって変調される。変調された信号は、電力増幅器128で増幅された後、トランスデューサ321に送られる。これにより、バイオセンサ100にエネルギーが供給され、トランスデューサ114によりバイオセンサ100が動作可能となる。このように、患者の身体を通じて供給されるエネルギーは、センサ112によって集められた情報に関する音響信号を形成するためのエネルギーをトランスデューサ114に供給するために使用される。この目的のため、ステーション130のトランスデューサ321は、好ましくはバイオセンサ100が埋め込まれる患者の身体の部分と物理的に密着するように配置される。バイオセンサ100に電力を供給し且つトランスデューサ114によって形成される音響信号としてのセンサ112の信号をトランスデューサ114を介して検索するために、ステーション130はトランスデューサ321を介して音響呼びかけ信号を形成する。その後、呼びかけ器115は、センサ112の信号を復調し、その信号を記録解析装置138に送る。
【0145】
各センサ112が特定のパラメータに関する情報を提供する場合、各センサ112からの特定の情報がステーション130によって利用され、各センサのための固有の識別コードが音響呼びかけ信号に与えられる。このようなコードは、複数あるセンサ112のうちの任意の特定のセンサからの情報の検索を命令するために、プロセッサ113によって解読される。
【0146】
図12〜図14に示されるように、本発明の好ましい他の実施形態において、
バイオセンサ100は、特に図13に示されるように、患者の身体の部分から流体を排出させるためのシャント(shunt)202と、図14を用いて後述するモニタ装置204とを有している。好ましい実施形態において、モニタ装置204は、シャント202の動作を非侵襲でモニタするために、シャント202の壁内に埋設されている。
【0147】
より詳細には、本発明の実施形態に係るシャント202は、脳脊髄液シャントであり、必要な場合には脳脊髄液を患者の脳から排出するために使用される。脳脊髄液シャント202は、好ましくは、医療レベルの合成樹脂材料から成り、両側に室側端部206と末端部208とを有している。室側端部206と末端部208は、弁105を有する流体通路205によって接続されている。シャント202が患者の体内に埋め込まれる場合には、患者の脳から流体を排出するために、室側端部206が患者の脳の脳室腔内に位置されるとともに、末端部208が脳室腔から離れた器官または体腔内に位置される。
【0148】
図12に示されるように、脳から脳脊髄液を排出するための適当な場所としては腹腔を挙げることができる。また、シャントチューブを可能な限り短くして外科的な埋め込みを非常に簡単にするために、排液の適当な場所として弁105の直ぐ後ろの部分を選択することもできる。このような排液は、シャント202から患者の腹腔へと延びるチューブ214によって行なわれる。患者の脳から脳脊髄液を排出するための他の適当な場所は、脊椎に近い患者の頭蓋骨である。この場合、排液チューブがさらに短くなり、埋め込み手術が簡単になるとともに、患者へのリスクが低減される。いずれのケースの場合にも、シャントの一部を成す弁105によって操作可能であり、バイオセンサ100は、好ましくは、頭蓋内圧をシャント202を介して緩和するために使用される。
【0149】
図13に詳しく示されているように、モニタ装置204は、好ましくは、シャント202の側壁内に形成され或いは埋設されている。
【0150】
図14に示されるように、モニタ装置204は、好ましくは、1または複数の圧力センサ212と、センサ212と電気的に接続されたトランスデューサ214とを有している。センサ112と同様に、センサ212は、例えば、温度センサ、pHセンサ、血糖値センサ、血液酸素量センサを含むとともに、例えば、動作、流れ、速度、加速度、力、歪み、音響、水分、浸透圧、光、濁度、放射線、電気、電磁場、薬品、イオン、酵素といったものの量や変化などに反応する他の任意のタイプの生理学的検知(モニタ、測定)装置も含んでいる。
【0151】
本発明の好ましい実施形態において、センサ212は、シャントの通路205内の脳脊髄液の圧力を検知するために設けられており、通路205内の異なる点で圧力を検知するために互いに所定距離だけ離間して位置されていることが望ましい。センサ212は、シャント202内の任意の場所に配置されていても良く、また、圧電もしくは圧抵抗(piezo−resistive)トランスデューサ、シリコン容量性(silicon capacitive)圧力トランスデューサ、導電インクの可変抵抗積層体(laminates)、可変コンダクタンスエラストマ装置、歪みゲージや類似のタイプの圧力検知装置を含んでいても良い。
【0152】
また、トランスデューサ214は、好ましくは、シャント202の側壁内に形成され或いは埋設されており、センサ212から電気的な圧力信号を直接的または間接的(プロセッサを介して)に受けるためにセンサ212に接続されている。
【0153】
本発明のこの実施形態において、モニタ装置204を有するバイオセンサ100は、患者の脳から脳脊髄液を排出もしくは除去して水頭を処置するため、図12に示すように患者内に埋め込まれる。好ましくはシャント202の側壁内に形成されるモニタ装置204は、シャント202内の脳脊髄液の圧力を検知もしくは感知して、その圧力信号をトランスデューサ214に送る。おそらく、そのようなモニタは、センサ212によって周期的に行なわれる。そのような周期的な読み取りは、後のアクセスのために、プロセッサ内のメモリーに格納されて処理されることができる。
【0154】
センサ212から情報を集めることが必要となる場合、ステーション130(すなわち、その少なくともトランスデューサ321は、バイオセンサ100が埋め込まれる患者の身体の部分に隣接して配置される。前述したように、トランスデューサ114に関して述べたと同様の態様で、バイオセンサ100に電力を供給し且つバイオセンサからのデータをトランスデューサ214を介して検索するために、ステーション130はトランスデューサ321を通じて伝えられる呼びかけ信号を形成する。集められたデータが異常な頭蓋内圧を示した場合には、シャント202の弁105が開かれてそこから脳脊髄液が排出される。この目的のため、ステーション130は、弁105を開くための電力を供給するように命令される。この動作は、手動もしくは予めプログラムされたプロセッサによって制御される。
【0155】
図12および図15に示されるように、本発明の他の好ましい実施形態では、
ステーション130の一部を成す変換アセンブリ351が設けられる。1つの構成において、図12に詳しく示されるように、アセンブリ351はヘルメット310内に組み込まれる。ヘルメット310は複数のトランスデューサ321を有しており、各トランスデューサ321は、トランスミッタやレシーバやトランシーバとして役立ち、脳容積の送受信空間範囲を全てカバーするように様々な位置に位置決めされる。
【0156】
図12に示されるように、ケーブル束350は、コンピュータ制御されるマルチプレクサ/デマルチプレクサ381に対してアセンブリ351を物理的に接続している。マルチプレクサ/デマルチプレクサ381は、(i)送信信号を電力増幅器128からトランスデューサ321に供給し、(ii)センサ112またはセンサ212の信号を身体から信号調整器134に送信し、(iii)トランスミッタとして使用される場合には、コンピュータ制御される多重化をトランスデューサ321のために提供し、(iv)レシーバとして使用される場合には、多重化をトランスデューサ321のために提供および/または、(v)増幅器128からの高電力の送信信号と体内に配置された送信アセンブリ118から受ける低振幅の信号との間のデカップリングを信号調整器134に供給する、といった複数の機能を有している。マルチプレクサ/デマルチプレクサ381が送受信信号を分離し且つその経路を定めることは無論である。
【0157】
本発明の好ましい実施形態において、ヘルメット310内に設けられたアセンブリ351の動作は、ヘルメット上のトランスデューサの必要とされる位置の予備校正の後に行なわれる。前記予備校正は、好ましくは、位置決めモデルに基づく方法を適用することによって成される。
【0158】
このような位置決めモデルによって、体外トランスデューサを正確に配置することができるようになり、脳容積の音響インソニファイング(acoustic insonifying)を略均一なレベルで完全に与えることができるようになる。
【0159】
また、そのような均一性を達成するために、頭蓋骨または脳の3次元音響送信モデルを適用することもできる。
【0160】
広いビームの低周波数超音波トランスデューサを使用すると、経済的なカバレージを提供できるといった利点がある。
【0161】
また、体外のトランスデューサの音響ビームを体内のトランスデューサに集中させることも有益である。なぜなら、そのような場合、狭いビームの低周波数超音波トランスデューサを有効に使用することができるからである。
【0162】
したがって、そのような体外のトランスデューサを適当に位置決めするために、位置決めモデルまたは散乱をもつコンバージングスフェロイダル音響アレイモデル(converging(in−fire) spheroidal acoustic array model with scattering)を使用して必要な位置情報を提供することもできる。前述したトランスデューサの構成のそれぞれにおいては、ヘルメット(体外)トランスデューサと体内のトランスデューサとの間の通信を高精度で検査するファーストラン校正セッション(first run calibration session)が使用される。
【0163】
本発明は、人体等の水分を含む身体を無線周波数信号よりも容易に伝わる音響信号を使用しているため、既存の技術に優る利点を有している。
【0164】
特定の実施形態を用いて本発明を説明してきたが、多くの代用や修正や変更が当業者にとって自明であることは言うまでもない。したがって、本発明は、添付のクレームの広い範囲および思想に含まれるそのような代用や修正や変更の全てを包含している。
【符号の説明】
【0165】
1 トランスデューサ要素、2、50a、50b 圧電層(層)、2a、2b
層、3 変換セル部材(セル部材)、3a 第1の変換セル部材(セル部材)、
3b 第2の変換セル部材(セル部材)、4、4a、4b 孔、6、38a、38b、42a、42b 下部電極(電極)、6a、6b、8a、8b 電極、8、40a、40b、44a、44b 上部電極(電極)、9、17、20〜26、28、35a、35b、37a、37b、54〜57 導電ライン、10 壁、11 導電層(層)、12 電気絶縁層(絶縁層、基板)、14 導電層、16 シール接続部(導電ライン)、18 絶縁室、27、29 接続ライン(導電ライン)、34a、34b、36a、36b 導電ライン(ライン)、52 絶縁層、70 外周、72 中央、74a、74b コア、80a、80b 電極部、82 接続部、100 バイオセンサ(バイオセンサシステム)、105 弁、112 センサ、113 プロセッサ、114 トランスデューサ(音響トランスデューサ、音響可変トランスデューサ)、115 呼びかけ器、116 調整器、117 受信アセンブリ、118 送信アセンブリ、119 デジタイザ、124 制御コンソール、126 信号ジェネレータ(ジェネレータ)、128 電力増幅器(増幅器)、130 体外ステーション(ステーション)、132 変調器、133 復調器、134 信号調整器(調整器)、138 記録解析装置、202 シャント(脳脊髄液シャント)、204 モニタ装置、205 流体通路(通路)、206 室側端部、208 末端部、212 圧力センサ(センサ)、214 トランスデューサ(チューブ)、310 ヘルメット、321 トランスデューサ(トランシーバトランスデューサ)、350 ケーブル束、351 変換アセンブリ(アセンブリ)、381 マルチプレクサ−デマルチプレクサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−101821(P2011−101821A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17259(P2011−17259)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【分割の表示】特願2000−135205(P2000−135205)の分割
【原出願日】平成12年5月8日(2000.5.8)
【出願人】(500310856)レモン メディカル テクノロジーズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】