説明

培養細胞観察用チャンバー及びその使用

【課題】培養細胞を顕微鏡観察するのに適した簡易かつ安価なチャンバーを提供する。
【解決手段】顕微鏡下で培養細胞を観察するためのチャンバーであって、細胞培養に適した濃度の二酸化炭素を含む空気を保持することを可能とし、かつ、細胞を含む培養液を導入及び保持することを可能にするスペースを有する気体透過性及び光透過性の担体(2)と、該担体の底部に密着可能に配置される光透過性の基板(4)とを含んでなるチャンバー、並びに、このチャンバーを用いて顕微鏡下で培養細胞を観察するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡下で培養細胞を観察するためのチャンバーに関する。
【0002】
本発明はまた、上記チャンバーを用いて顕微鏡下で培養細胞を観察するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学の分野では、生きた細胞の光学顕微鏡による観察がよく行われている。例えば、発生学の分野では、初期胚でみられるダイナミックな細胞の移動や、器官形成の過程の観察が行われている。また、生理学の分野では、細胞が示す様々な生命現象のメカニズムを調べるために、細胞に物理的あるいは化学的な刺激を与え、それに対する応答を細胞レベルで計測するために顕微鏡による観察が行われる。特にこの分野では、細胞内の蛋白質の局在や活性、あるいはCa2+濃度など、細胞の活性の指標となる分子やイオンの動態を測定する蛍光試薬が多数開発されており、蛍光顕微鏡による測定が主流となっている。このような手法は、創薬の分野でも細胞に作用する薬剤の効果を調べるためにも用いられている。また最近では、先端的な再生医療の分野において、幹細胞の増殖や分化の過程を連続的にモニタするために顕微鏡観察が行われている。このように、顕微鏡による細胞の観察手法は、基礎研究のみならず、医療や産業の分野でも応用される重要な技術となっている。
【0004】
このような実験に試料として供される細胞は、その生育に適した環境のもと、プラスチックやガラスのフラスコやディッシュ、マルチウェルプレートなどの容器内で培養される。これらの容器内で細胞が浸される培養液には、グルコースやアミノ酸などの栄養分、血清成分、pHを調整するための成分などが含まれている。細胞の生育に適した環境は我々の生活環境と異なるため、その環境を設定する必要がある。通常使用される培養液は5%の二酸化炭素(CO2)を含む空気の下に置かれることで、そのpHが細胞の生育に適した7.4付近に維持される。そのため、多くの細胞は温度が37℃で、CO2濃度5%の空気で満たされたインキュベータ内で培養される。しかし通常、顕微鏡は大気圧下、室温の環境に置かれているため、細胞の観察を行う際には、ディッシュをインキュベータから出すことになるが、このような条件のもとでは細胞の活性は著しく低下してしまう。観察時においても細胞に正常な活性を維持させるためには、インキュベータ内の環境が顕微鏡の観察ステージ上でも維持される必要がある。現在、そのための装置がいくつか製品化され使用されている。
【0005】
その1つの例は上に述べたようなインキュベータと顕微鏡を、1つのシステムとして組み合わせたものである(特許文献1)。インキュベータ内部は、ヒーターにより加温され、37℃など任意の温度に設定される。また、外部に置かれたボンベからCO2ガスを含む空気が供給され、内部のCO2が5%など任意の濃度に設定される。顕微鏡はインキュベータの下部に設置され、インキュベータに向かう対物レンズによりディッシュ内の細胞が観察される。この像はCCDなどの撮像装置によってとらえられ、プログラムの制御のもと細胞の像が画像として連続的に取得される。このようなシステムでは、インキュベータとして、通常の培養に使用されるものと同等のものがそのまま使われているため、細胞が正常に生育する環境下での長時間の観察が行える。しかし、システムとして高性能なインキュベータ、顕微鏡、撮像装置及びコンピュータを一式として含むため、かなりのコストを必要とする。またガスボンベを含めて、その設置にはかなりのスペースを要する。
【0006】
別の例として、細胞が培養されたディッシュを、顕微鏡のステージ上に載る程度の大きさの容器に入れて観察するものがある(特許文献2)。この装置は、小型のインキュベータといったもので、その容器内部がヒーターにより任意の温度に加温され、外部のボンベからガスを供給することにより、内部のCO2濃度を設定できる。容器の天面部および底面部は光を透過させる透明な部材でできているため、顕微鏡による観察を行うことができる。この装置では、顕微鏡や撮像装置が既存のものを使用でき、インキュベータとしてはかなりコンパクトなものになる。しかし、ヒーターやそのセンサーなどが装備されるため、まだそれなりのコストを要し、制御のためのコントローラやCO2ボンベを配置するためのスペースを顕微鏡の周辺に確保する必要がある。また、容器内に空気の密閉はできないため、任意の濃度のCO2ガスを含む空気を常に供給する必要があり、経済的とはいえない。
【0007】
さらに別の例として、CO2の供給をガスボンベからではなく、CO2を発生する薬剤を使って行うものがある(特許文献3)。薬剤は、具体的には、アスコルビン酸類/金属塩の組み合わせである。この装置では、インキュベータとなる容器に細胞が培養されたディッシュとCO2発生剤を入れ、これを密封する。容器内のCO2濃度は、容器の容積に合わせ薬剤の量を調整することで任意の値に設定できる。この容器の天面と底面は透明となっているため、これを顕微鏡のステージに置くことで細胞の観察が行える。この装置では、ディッシュは密閉された容器の底面に置かれるため、倒立型の顕微鏡を使用した場合、細胞は容器とディッシュの二重の底面を通して観察されることになる。このため、作動距離の長いレンズを使うことになるが、一般的にこのようなレンズは開口数が小さく、蛍光などの光量が少ない試料の観察や高解像度の観察が行えない可能性がある。
【0008】
【特許文献1】特開2006-187205
【特許文献2】特開2004-141143
【特許文献3】特開2007-295826
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、顕微鏡ステージ上で培養細胞の活性を維持しながら細胞を顕微鏡観察することを可能にするチャンバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の特徴を含む。
【0011】
本発明は、第1の態様において、顕微鏡下で培養細胞を観察するためのチャンバーであって、細胞培養に適した濃度の二酸化炭素を含む空気を保持することを可能とし、かつ、細胞を含む培養液を導入及び保持することを可能にするスペースを有する気体透過性及び光透過性の担体と、該担体の底部に密着可能に配置される光透過性の基板とを含んでなる、前記チャンバーを提供する。
【0012】
本明細書で使用する「チャンバー」という用語は、少なくとも上記担体と上記基板とを含み、かつ、細胞の培養を可能にするスペースを有する、顕微鏡ステージに載せて培養細胞を観察するための室又はルーム(room)を指す。
【0013】
本発明の実施形態において、上記スペースは、上記担体と上記基板との接着領域に形成されることを特徴とする。
【0014】
別の実施形態において、上記スペースは、溝の形状を有することを特徴とする。
【0015】
別の実施形態において、上記溝は、図2に示されるような、細胞の培養を可能にするスペースをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
別の実施形態において、本発明のチャンバーは、上記担体の周囲を覆うためのカバーをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
別の実施形態において、本発明のチャンバーは、上記担体の周囲に配置される少なくとも1つの水槽をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
本発明はまた、上記定義の本発明のチャンバーを用いて顕微鏡下で培養細胞を観察するための方法であって、以下の(a)〜(f):
(a) 前記チャンバーを構成する部材を殺菌するステップ、
(b) 請求項1に定義された担体を、細胞培養に適した濃度の二酸化炭素を含む空気で飽和させるステップ、
(c) 担体を基板と接着させて形成されたスペースに、細胞を含む培養液を導入するステップ、
(d) 前記チャンバーを、顕微鏡の観察ステージに配置するステップ、
(e) 必要に応じて、前記チャンバーを所定の温度に保持するステップ、及び
(f) 前記細胞を観察するステップ、
からなるステップを含む、方法を提供する。
【0019】
本発明の好適実施形態において、上記方法は、ステップ(c)の後で、担体の周囲をカバーで覆うステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明のチャンバーを培養細胞の顕微鏡観察に使用することによって、インキュベータの外部でも細胞を、その成育に適した培養液のpHのもとに長時間維持することができる。これにより、顕微鏡のステージ上でも、細胞の生理的な活性を維持することができ、またこれを測定することができるようになる。従来の装置のように培養液のpHの調節に必要なCO2をボンベから与え続ける必要がない。またコントローラなどの装置類も不要である。これにより、チャンバーがコンパクト、軽量なものになり取り扱いが容易になる。また計測にかかるコストや実験室のスペースの大幅な削減を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、上記のとおり、培養細胞を顕微鏡観察するための、かつ、顕微鏡ステージ上で細胞の活性を維持するためのチャンバーを提供する。
【0022】
本明細書で使用する「細胞の活性を維持する」とは、細胞本来の形態を維持しながら生存することを意味する。逆に、細胞の形態変化や死滅した状態は、細胞が不活性化したことを示す。細胞の活性、形態又は生存は、例えば図5及び図6に示されるように、顕微鏡観察によって判定できる。
【0023】
本発明のチャンバーは、好適には、基板上に培養された細胞および培養液を、培養に適した空気、例えば5%濃度のCO2を含む空気で飽和させた担体で取り囲む形となっている。形態的には、従来の市販ガラスボトムディッシュやポリマーボトムディッシュで空気であった部分(すなわち、空間部分)が担体となっていることが特長である。本発明で使用される担体は、CO2や酸素などの気体を透過し易い材質からなる。従来の顕微鏡ステージ用のインキュベータでは、空気を長時間、容器内に留めることができないため、常に外部から5%CO2を含む空気を供給する必要があったが、本発明のチャンバーでは、担体から徐々に空気が放出されるため、培養液のpHを細胞の生育に適した7.4付近に長時間維持することができる。さらにこの担体を、大気との空気の交流を遮断するためのカバーで覆うことで、担体からの大気中への空気の漏出を抑えることができる。このため培養液のpHをより長時間維持することができる。
【0024】
培養液の温度は、既存の顕微鏡用の保温箱や、対物レンズヒーターを併用することで調整することができる。チャンバー内の培養液が少量の場合、長時間の観察ではこれが加温により乾燥しがちである。これを防ぐためにもカバーをかぶせて使用したほうが好ましい。
【0025】
また、チャンバー内の湿度を高めることで培養液をより長時間、乾燥から防ぐために、少量の水を担体とカバーの間に挟むこと、そのために、例えば担体の周辺に水槽を配置することが好ましい。水槽には、滅菌した水又は温水を入れることができる。
【0026】
このような構成により、顕微鏡のステージ上で細胞を生育に適した環境のもとに長時間維持することができる。
【0027】
顕微鏡は、特に限定されないが、例えば倒立型顕微鏡、蛍光顕微鏡、微分干渉顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などを含む。
【0028】
細胞は、CO2含有空気の供給下での培養が必要である細胞のすべてが包含され、通常、動物細胞がそれに含まれる。動物細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞等の脊椎動物細胞、昆虫細胞等の無脊椎動物細胞などの初代培養細胞、継代細胞、株化細胞などを含み、特に、哺乳類細胞には、非限定的に、例えば腫瘍細胞、神経細胞、器官細胞、筋肉細胞、上皮細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、幹細胞(胚性幹(ES)細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、造血幹細胞、種々の体性幹細胞、等)などが含まれる。
【0029】
培養細胞は、その種類や目的に応じて適宜選択された培地及び培養条件で培養された細胞である。動物細胞の場合、培地は、例えばDMEM(ダルベッコMEM培地)、ハムF-12、RPMI1640、MEM、それらの任意に混合された培地などの基本培地を含む。
【0030】
以下に、このチャンバーについて、図面を参照しながら詳細を述べる。
【0031】
本発明の特長を示すチャンバーの構成を図1a及び図1bに示す。チャンバーは、細胞が培養される基板(4)、細胞と培養液を覆う担体(2)から構成される。また担体から大気への空気の漏出を防ぐために、これを覆うカバー(1)を加えてもよい。培養液の乾燥を防ぐために、担体の周辺に水槽(5)を配して、これを含めてカバー(1)で覆ってもよい。
【0032】
基板(4)としては、細胞の培養によく使われるカバーグラス、スライドグラス、またはポリスチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックを使用できる。細胞の付着性を高めるため、ポリリジン、ポリエチレンイミン、コラーゲンなどの人工又は天然高分子で表面をコートしてもよい。細胞の顕微鏡観察では、倒立型の顕微鏡での蛍光観察がよく行われる。蛍光観察では開口数が大きい油浸用の対物レンズがよく使われるが、一般的にこのようなレンズは作動距離が約0.2mmと短い。したがって、基板としては厚みの少ないカバーグラスが最適である。厚みの少ないカバーガラスは紫外波長域の励起光の透過性が向上することや、自家蛍光が少なくなることからも有利である。
【0033】
担体(2)の一面には細胞および培養液を保持するための溝(3)が彫られ、この面と基板(4)を接着させることで細胞を培養するスペース(溝(3)と細胞培養スペース(6)からなる)が形成される。担体(2)のサイズ及び形状は、非限定的に、好ましくは、直径30mm〜50mm、厚さ5mm〜25mmの円柱形である。また、溝(3)のサイズ及び形状は、非限定的に、好ましくは、幅0.5mm〜3mm、深さ0.3mm〜2mmであり、担体の直径(円形の場合)と同程度の長さを有する直線形である。溝(3)上の任意の位置に形成された細胞培養スペース(6)のサイズ及び形状は、非限定的に、好ましくは、直径2mm〜5mm、深さ0.3mm〜2mmの円形である。細胞培養スペース(6)の好ましい位置は、溝(3)の中央部である。
【0034】
担体(2)の材料としては、以下のような性質をもつものが適している。
・細胞培養スペースをつくるために、微細な加工が容易なこと。
・基板となるガラス等への接着性が高いこと。
・酸素やCO2などの気体の透過性が高いこと。
・顕微鏡観察のため可視域、近赤外の光に対して吸収が少ないこと。また自家蛍光が少ないこと。
・細胞など生体に対して無害であること。
・滅菌処理のため、高圧、高温、紫外線、エタノールに耐性があること。
【0035】
このような性質をもつ担体としては、例えばシリコーン樹脂の1つであるpoly(dimethylsiloxane)(PDMS)が使用できる。任意の形状に加工できるが、図2に示した例では、底面の直径が33mm、高さが9mmの円柱状のPDMSのブロックの1つの平面に幅1mm,深さ0.5mmの溝(3)が彫られている。その溝の中央部付近に多数の細胞が培養できるよう、直径3mmの円形のスペース(6)を設けた。この面を基板に接着させることで細胞培養スペースがつくられる。溝や細胞培養スペースは複数(例えば2つ又は3つ)存在してもよく、この場合、複数の細胞種の観察が可能になる。
【0036】
PDMSは、カバーグラスなど基板となる材料に接着性が高く、ガラスに対して軽く押しつけるだけで培養液が漏れない程度に強く接着させることができる。この溝(3)の一端から、浮遊状態の細胞を含む培養液をマイクロピペットやポンプを使って流し込むことで、チャンバー内に細胞を導入する。フォトリソグラフィーでは溝の切口を滑らかに作製できるため、途中に気泡が残ることなく培養液を流し込むことができる。この溝の形状および配置は、計測の目的に合わせて変更してもよい。例えば、互いに交わらない複数の溝を彫ることで、異なる種類の細胞や、同種類の細胞でも前処理の条件や培養液の成分を変えたものを同時に培養し、計測に用いることができる。また、PDMSは気体に対する透過性が高いために、細胞培養用のインキュベータ内に置いておくだけで、あらかじめその内部をインキュベータ内の組成の空気で満たすことができる。
【0037】
カバー(1)は、担体(2)全体を隙間がほとんどないように覆い、担体の底部は基板(4)に接することで、担体(2)と外界との間の空気の交流を遮断する。このため、担体(2)に含まれた空気は、培養液側のみに流れることになる。透過照明による顕微鏡観察を行うためには、材料としては無色透明のガラスやプラスチック(例えば、アクリル製)がよい。また外界との空気の交流を抑えるため、細胞に対して害がなく、取り外しが容易なシリコングリースなどの接着剤を使用して基板と接着させることが望ましい。カバー(1)と基板(4)をより強固に接着させるために、カバー(1)の上部にウェイトを載せてもよい。この場合、透過光による顕微鏡観察を行うために、ウェイトの中央部は光が通過できるよう、くりぬかれた構造のものがよい。ウェイトは、カバーと基板が密着して担体から放出される空気が外界に漏出しないように、カバーの上面に荷重がかかる程度の重さを有する材質のものであればいずれでもよい。材質としては、例えば金属、樹脂、ゴムなどが挙げられる。
【0038】
水槽(5)は、チャンバー内の湿度の保持のために、場合により培養液の保温のために、担体の周辺に存在しうる(図1b)。水槽(5)は、担体(2)と一体成形してもよいし、或いは、担体(2)と分離して担体の周囲に対称的に配置してもよい。水槽(5)の個数は、特に制限されないが、操作のし易さを考慮すると、1又は2個が好ましい。水槽の材質は、成形加工の容易なプラスチック、樹脂、ゴムなどが好ましい。
【0039】
本発明のチャンバーの好ましい形態は、担体(2)、水槽(5)、基板(4)及びカバー(1)から構成される。チャンバーの組み立ては、担体(2)の周囲に水槽(5)を配置し、基板(4)と接着し、これによって細胞培養スペース(6)を形成し、最後にカバー(1)を被せることによって行うことができる。実際に使用する時には、約8時間かけてCO2を含む空気で飽和した担体(2)と基板(4)とを接着させて形成された上記細胞培養スペース(6)の一端からマイクロピペットで細胞培養液を導入したのち、カバー(1)を被せ、顕微鏡ステージに載せて観察を行う。
【0040】
本発明のチャンバーに導入された細胞は、市販されている一般的な顕微鏡で、透過光や蛍光、発光などによる観察が可能である。冷却CCDカメラなどのイメージング機器を顕微鏡に接続することで、細胞の動態を連続的に記録し解析することができる。複数の細胞培養スペースを、観察視野内に同時に入るように配置することで、これらを同時に観察することができる。また、顕微鏡に電動のXYステージを取り付け、これを駆動しながらイメージングを行うことで、1つの視野に入らなかった複数の細胞培養スペースでも、連続的に観察を行うことができる。
【0041】
したがって、本発明はさらに、上記定義のチャンバーを用いて顕微鏡下で培養細胞を観察するための方法を提供する。この方法は、以下のステップ:
(a)チャンバーを構成する部材を殺菌するステップ、
(b)担体(2)を、細胞培養に適した濃度のCO2を含む空気で飽和させるステップ、
(c)担体(2)を基板(4)と接着させて形成されたスペースに、細胞を含む培養液を導入するステップ、
(d)チャンバーを、顕微鏡の観察ステージに配置するステップ、
(e)必要に応じて、チャンバーを所定の温度に保持するステップ、及び
(f)細胞を観察するステップ、
を含むことができる。
【0042】
ステップ(a)では、チャンバーを構成する部材、すなわち担体(2)及び基板(4)、追加部材としてのカバー(1)及び水槽(5)、が殺菌される。殺菌手段は、例えばオートクレーブ殺菌、煮沸殺菌、紫外線殺菌などのいずれでもよく、当業界で一般的に使用される手段が望ましい。
【0043】
ステップ(b)では、担体(2)を、細胞培養に適した濃度のCO2を含む空気(通常、5% CO2を含む空気)と約8時間以上接触させて、担体(2)を該空気で飽和させる。
【0044】
ステップ(c)では、担体(2)と基板(4)を接着させてスペースを形成する。このスペースは、担体(2)の底面に形成された溝(3)であり、好ましくはその中央部付近に細胞を培養する空間部(6)が存在する。該スペースの一端に導入された細胞を含む培養液は、空間部に滞留する。もし水槽(5)が存在する場合には、担体(2)の周囲に水槽(5)を配置し、これらはこの状態で基板(4)に接着される。
【0045】
担体(2)及び水槽(5)の周囲に、備え付けのカバー(1)を被せ、担体(2)から放出される空気が外界にもれ出ないように、例えばカバー(1)の上部にウェイトをかける。しかし、観察に必要とされる時間以上にCO2が維持できるほど、担体(2)の体積をより大きくするときには、カバー(1)は必ずしも必要ではない(実施例4、図7参照)。
【0046】
ステップ(d)では、チャンバーを顕微鏡の観察ステージに配置する。このとき、顕微鏡用の保温箱や、対物レンズヒーターを併用して、チャンバーを所定の温度に保持してもよい(ステップ(e))。
【0047】
最後に、ステップ(f)では、チャンバー内の培養細胞を顕微鏡で観察する。
【0048】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
【実施例】
【0049】
実施例1 担体への空気の充填
チャンバーへの細胞の導入は、担体にその生育条件に適した組成の空気を十分に充填させてから行うほうがよい。そこで、担体が置かれた環境の空気によって飽和されるまでの時間を測定した。
【0050】
担体(2)として図2に示した円柱形のPDMSのブロックを使用した。この担体(2)と、基板(4)としてのカバーグラス(40×50mm,厚さ0.12〜0.17mm)をオートクレーブ(120℃,20分)で滅菌した。その後、担体(2)の溝(3)が作られた面とカバーグラス(4)を押しつけることで両者を接着させた。細胞培養スペース(6)を有する溝(3)に培養液を入れ、これを5%のCO2を含む空気で満たされたインキュベータ内に一定の時間置くことで、その空気を担体(2)および培養液に取り込ませた。
【0051】
この空気を取り込んだ培養液は大気よりも高濃度のCO2を含むため、大気下に置かれたものよりもpHが低くなる。そこで、インキュベータ内にある時間置かれたときの培養液のpHの低下を測定することで、担体(2)が5%のCO2の空気で満たされる時間を測定した。培養液としてDulbecco’s modified eagle medium (DMEM)を使用し、これに蛍光性のpH指示薬である2’,7’-Bis(carboxyethyl)-4 又は 5-carboxyfluorescein (BCECF)を1μMの濃度になるように加えた。この指示薬はpHの変化にともない励起スペクトルが変化する特性をもち、溶液のpHが高くなるにつれ490nmの励起で測定される蛍光の強度が増加する。また440nmの励起では、pHが変化しても蛍光強度がほとんど変化しない。そこで440nm励起での蛍光をリファレンスとして、この2つの励起波長による蛍光を測定し、そのレシオ(490nm/440nm)の変化をpHの変化として測定した。
【0052】
測定は倒立型蛍光顕微鏡(IX70,オリンパス)を用いて行った。励起光をそれぞれ半値幅20nmの440nm,490nmのバンドパスフィルタを通して交互に照射し、それぞれの蛍光を515-560nmのバンドパスフィルタを通して検出した。対物レンズは20倍、開口数0.75のものを使用した。蛍光像は3板式の冷却CCDカラーカメラ(ORCA-3CCD,浜松ホトニクス)によりデジタル画像として取得した。取得された画像から、ダークノイズ分の輝度を減算した後、BCECFの蛍光の大部分が取得されるGreenチャンネルの全画素(336×256画素)の平均の輝度をもとめ、490nm/440nmのレシオを計算した。演算は画像解析装置AQUACOSMOS(浜松ホトニクス)により行った。
【0053】
結果を図3に示す。担体をインキュベータに置いてから、1時間後からチャンバー内の培養液のpHの低下が観察され、8時間後に蛍光のレシオが安定した。したがって、使用した担体では8時間で全体がインキュベータ内の空気で満たされることがわかった。pHメータで測定された、大気下に置かれた培養液のpHは8.4であり、インキュベータ内の空気で飽和させた培養液のpHは7.5であった。したがって、この実験の開始時のBCECFの蛍光のレシオ4.24および、8時間後のレシオ3.55はpHとしてはこれらの値に相当する。
【0054】
実施例2 培養液のpHが維持される時間
インキュベータ内の空気で満たされた担体(2)をもつチャンバーで、どの程度培養液のpHが維持されるか測定した。担体(2)として実施例1と同じ、図2に示したPDMSのブロックを使用し、これをカバーグラス(4)に接着させることでチャンバーを作製した(PDMSチャンバー)。細胞培養スペースに、1μMのBCECFを含むDMEMを入れたものを2式用意し、これらを5%CO2のインキュベータ内に8時間以上置くことで、担体およびDMEMをその空気で飽和させた。また、通常の細胞観察に用いられる条件である、35mmφのガラスボトムチャンバー(自家製。Corning社のプラスチック製ディッシュの底の中央部に14mmφの孔を開け、松浪硝子社の22mmφの丸形カバーグラスを貼り付けたもの)にDMEMを1ml入れたものを対照として、これに1μMのBCECFを加えたものを2式用意し、同様にインキュベータ内に置いた。その後、1つのPDMSチャンバーには、厚さ2mmのアクリル製のカバー(1)をかぶせ、基板(4)との間をシリコングリースにより封じた。さらにカバー(1)の上に330gのステンレスのウェイトを置くことで、基板(4)との接着を強固なものにした。もう1つのPDMSチャンバーは、カバーをかぶせない状態で測定に使用した。ガラスボトムチャンバーは、通常使用するようにふたをかぶせたものと、ふたをはずしたものの2通りで測定に使用した。測定のための装置および方法は実施例1と同じである。
【0055】
CO2インキュベータから出してからのDMEMのpHの変化を経時的に測定した。結果を図4に示す。ガラスボトムチャンバーでは2式とも、測定開始後から急速なpHの増加が見られ、20分後には大気下のDMEMのpHの値に戻された。ガラスボトムチャンバーでは、インキュベータから出すことで培養液内のCO2の放出が急速に起こり、培養液のアルカリ化が起きていると思われる。また、ふたをはずしたものでは培養液の乾燥も急速で、120分後にはほとんどの液が消失した。
【0056】
一方、PDMSチャンバーを使用したもののうち、カバー(1)をかぶせなかったものでは、約100分後まではpHはほぼ一定に保たれたが、その後次第に上昇した。使用した形状のPDMSの担体では、大気に対して開放状態であっても、100分間は5%のCO2の環境を培養液に対して維持させるほどの空気を保持していたが、その後は徐々に外部の空気との交換によりCO2濃度が低下したものと考えられる。
【0057】
PDMSチャンバーで、カバー(1)により担体(2)を封じたものは、計測を行った24時間後にもpHの増加がほとんど見られなかった。このことは、5%CO2で飽和された担体(2)をカバー(1)で封じることで、長時間安定して培養液のpHが維持できることを示している。しかし、担体(2)をカバー(1)で封じた場合でも外界との空気の交流を完全に遮断することは困難である。したがって、担体内に保持させた空気は徐々に大気下の空気と入れ替わる。チャンバーがインキュベータ内の空気を保持できる時間は担体の容積に依存する。したがって、より長時間の計測を行うためには、より容積の大きい担体を使ったほうがよい。
【0058】
実施例3 細胞の観察
PDMSチャンバーで実際に細胞がどの程度培養できるか観察した。試料として、蛍光蛋白質であるVenusを発現させたCos7細胞(Nagai,T., Nature Biotechnology, Vol.20, p.87-90, 2002)を使用した。担体として実施例1と同じ、図2に示したPDMSブロック(2)を使用し、これをカバーグラス(4)に接着させることでチャンバーを作製した。これをCO2インキュベータ内に8時間以上置き、5%CO2を含む空気を保持させた。浮遊状態の細胞を培養液(DMEM)とともにマイクロピペットで流し込むことでチャンバーの細胞培養スペースに導入した。チャンバーをさらに1日CO2インキュベータ内に置くことで細胞を基板に定着させた。このチャンバーを実施例2と同様にカバー(1)で封入しウェイトで固定した状態で、蛍光顕微鏡で観察を行った。顕微鏡、冷却CCD、画像解析装置は実施例1と同じものを使用した。励起光を半値幅20nmの490nmのバンドパスフィルタを通して照射し、蛍光を515-560nmのバンドパスフィルタを通して検出した。対物レンズは60倍、開口数1.40(油浸)のものを使用した。細胞の活性を維持するように、観察視野の培養液の温度を対物レンズヒーター(MATS-LH,東海ヒット)により、約37℃に加温した。加温による培養液の乾燥を抑えるため、担体(2)上面とカバー(1)の間に500μlの水をはさみこみ、チャンバー内の湿度を保持した。対照として同様にVenusを発現させたCos7細胞をガラスボトムチャンバーに培養したものでも観察を行った。
【0059】
発現されたVenusの蛍光は細胞全体で観察されたため、細胞全体の形態が明確に観察できた。そこで細胞の蛍光像のタイムラプスイメージングを行い、その形態の変化から細胞の活性を評価した。結果を図5、図6に示す。Cos7細胞は不定形の細胞形態を示すが、培養状態では基板(4)との接着面を広げたよく伸展した像が観察される。PDMSチャンバーに培養された細胞では、大きな移動は見られなかったが、よく伸展した状態を保ち、活発に細胞の周辺部を動かしている様子が観察された。観察を行った24時間後までの活性の維持が確認された。PDMSブロック(2)からの蛍光はほとんどなく背景光が低く保たれたため、クリアな細胞の蛍光像が取得できた。
【0060】
一方、ガラスボトムチャンバーで培養された細胞は、培養液のアルカリ化が起きていると思われる1時間後には収縮による細胞の形態変化が観察された。その後、その形態で数時間は生存したが、やがてさらに収縮を起こし、9時間後には崩壊した。崩壊した細胞からはほとんどの蛍光蛋白質が流出したため、一部の残存した蛍光のみが観察された。これらの結果から、PDMSチャンバーによる培養液のpHの維持が、顕微鏡ステージ上での細胞の活性の維持に有効であることが示された。
【0061】
実施例4 カバーがないチャンバーの形態
実施例2の培養液のpH維持の計測で示されたように、PDMSチャンバーでは、担体(2)にカバー(1)を被せないものでも、短時間ではあるが培養液のpHを維持する効果がある(図4,PDMS w/o Cover)。細胞の活性を評価する実験において、生理現象によっては数分から数十分程度で測定できるものも多い。このような短時間の測定系においては、必ずしもカバー(1)による担体(2)の封入は必要ない。したがって、計測に必要な時間、pHの維持が可能な形状の担体(2)を用いることで、カバー(1)がなくてもチャンバーとしての利用が可能となる。培養液のpHを維持できる時間は、担体の形状および容積に依存する。一例として、図2に示した33mmφ×9mmのPDMSブロック(2)と、これよりも大きい37mmφ×20mmのPDMSブロック(2)でDMEMのpHが維持される時間を実施例2と同様の計測を行うことで比較した。結果を図7に示す。33mmφ×9mmのものでは100分までpHが維持されるのに対し、37mmφ×20mmのものではpHが維持される時間が4時間まで延長された。この場合、チャンバーを封入により外界から遮断する必要がなくなるため、細胞培養スペース(6)へ薬剤を投与し、その応答を測定する実験も可能となる。細胞が活性を維持した状態での測定が行えるため、より正確な細胞の応答を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のチャンバーは、顕微鏡ステージ上の培養細胞の活性を長時間維持したまま顕微鏡観察を可能にする非常にシンプルな構造のチャンバーであるため、大掛かりな装置を必要とせずに培養細胞の観察が可能となる。このため、このチャンバーは、培養細胞を扱い、顕微鏡観察が行われる、工学分野、農学分野、医学分野などの分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のチャンバーの構成を示す。図1aは、細胞を含む培養液を導入及び保持することを可能にするスペースを含む担体(2)と、該担体(2)と密着させて細胞培養可能なスペース(溝(3)と細胞培養スペース(6)からなる)を形成するための基板(4)と、該担体(2)を覆うためのカバー(1)とからなる、チャンバーの構成を示す。図1bは、担体(2)と、基板(4)と、カバー(1)と、水槽(5)とからなる、チャンバーの構成を示し、ここで、該水槽(5)は、培養液の乾燥を防ぎ、チャンバー内の湿度を保持するためのものであり、内部に水又は温水を入れることができる。水槽(5)は、担体(2)の周囲に2個配置されている。
【図2】本発明のチャンバーを構成するPDMS担体(2)の加工例を示す投影図である。担体(2)は、直径33mm、高さ9mmの円柱形の形状を有し、担体(2)の底面に幅1mm、流路の高さ(深さ)500μm(0.5mm)の溝(3)が彫られており、その中央部にはさらに、細胞の培養が可能なように直径3mmの円形スペース(6)が彫られている。
【図3】培地中の担体(2)(図2に示す構造)が5% CO2含有空気で飽和されるまでの時間(hr)を示す。培地としてDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を使用し、pH指示薬であるBCECF(2’,7’-ビス(カルボキシエチル)−4-又は5-カルボキシフルオレセン)の励起スペクトル(490nm/440nm)の変化をpHの変化として測定した結果を示す。
【図4】PDMS細胞培養チャンバー(図2の担体)及び、対照としてのガラスボトム(G.B.)チャンバー(自家製。Corning社のプラスチック製ディッシュの底の中央部に14mmφの孔を開け、松浪硝子社の22mmφの丸形カバーグラスを貼り付けたもの)による培養液(DMEM)のpHの維持がカバー(Cover)の有無によって影響を受けることを示す図である。横軸は、培養時間(hr)を示し、縦軸は、BCECFレシオ(490nm/440nm)を示す。
【図5】PDMS細胞培養チャンバー内のCos7細胞の蛍光顕微鏡で観察された経時的形態変化を示す図である。数字は、培養試験開始からの時間(hr)を表す。
【図6】ガラスボトムチャンバー(対照)内のCos7細胞の蛍光顕微鏡で観察された経時的形態変化を示す図である。数字は、培養試験開始からの時間(hr)を表す。
【図7】PDMS細胞培養チャンバー(カバーなし)による培養液(DMEM)のpHの維持に及ぼす担体の容積の影響を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 カバー
2 担体、PDMSブロック
3 溝
4 基板、カバーグラス
5 水槽
6 細胞培養スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡下で培養細胞を観察するためのチャンバーであって、細胞培養に適した濃度の二酸化炭素を含む空気を保持することを可能とし、かつ、細胞を含む培養液を導入及び保持することを可能にするスペースを有する気体透過性及び光透過性の担体と、該担体の底部に密着可能に配置される光透過性の基板とを含んでなる、前記チャンバー。
【請求項2】
前記スペースが、前記担体と前記基板との接着領域に形成される、請求項1に記載のチャンバー。
【請求項3】
前記スペースが、溝の形状を有する、請求項1又は2に記載のチャンバー。
【請求項4】
前記溝が、細胞の培養を可能にするスペースをさらに含む、請求項3に記載のチャンバー。
【請求項5】
前記担体の周囲を覆うためのカバーをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のチャンバー。
【請求項6】
前記担体の周囲に配置される少なくとも1つの水槽をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のチャンバー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のチャンバーを用いて顕微鏡下で培養細胞を観察するための方法であって、以下の(a)〜(f):
(a) 前記チャンバーを構成する部材を殺菌するステップ、
(b) 請求項1に定義された担体を、細胞培養に適した濃度の二酸化炭素を含む空気で飽和させるステップ、
(c) 担体を基板と接着させて形成されたスペースに、細胞を含む培養液を導入するステップ、
(d) 前記チャンバーを、顕微鏡の観察ステージに配置するステップ、
(e) 必要に応じて、前記チャンバーを所定の温度に保持するステップ、及び
(f) 前記細胞を観察するステップ、
からなるステップを含む、前記方法。
【請求項8】
ステップ(c)の後で、担体の周囲をカバーで覆うステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−11814(P2010−11814A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176138(P2008−176138)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】