説明

培養組織相当物の凍結保存および貯蔵のための方法およびパッケージデザイン

【課題】採取哺乳類組織およびインビボ技術により製造した生存培養組織相当物の、凍結保存方法を提供する。
【解決手段】哺乳類組織または培養組織相当物を凍結保護溶液中に浸し、凍結保護溶液および浸した組織を撹拌して、組織内に凍結保護溶液を浸透させ、次いで種晶を添加して、細胞外氷形成を開始させ、ゆっくりした速度で組織を凍結させる。皮膚または角膜のような凍結保存組織は、無期限に保存する事ができ、回収後、インビボで移植、またはインビトロで化合物スクリーニング等に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野:
本発明は、採取組織およびインビトロ技術を使用して製造した培養組織相当物の凍結保存に関する。本発明はまた、凍結保存すべき組織または組織相当物の最大生存率を可能にする、実際的価格で、パッケージデザイン、(設計(品)、以下同じ)の取り扱いが容易である、採取組織および培養組織相当物の凍結保存パッケージデザインにも関する。凍結保存技術の使用により、凍結保存採取組織または凍結保存培養組織を、使用前に、無期限に貯蔵し得る。培養組織は、相当ヒト組織のインビトロモデルであり、貯蔵から回収した時、インビボで移植または内移植またはインビトロで化合物スクリーニングに使用できる。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景の簡単な説明:
インビトロ技術は、インビトロ試験または創傷修復のためのインビボ移植の目的で組織相当物を開発している。このような組織相当物の製造法は、米国特許第4,485,096号、第4,604,346号、第4,835,102号および第5,374,515号および米国出願番号第08/193,809号および第08/337,830号に記載されており、これらすべてを本明細書に参考として包含させる。
【0003】
生存組織の貯蔵寿命は限度があり、従って、その使用可能期間は短く、多くの廃棄をもたらす。このような組織を、使用まで、輸送および貯蔵のために、長時間保存することが必要である。凍結保存法および凍結保存および貯蔵用のパッケージの開発は使用の窓を無限に広げ、運搬を容易にし、在庫の維持を可能にする。熱傷処置センターおよび病院での組織在庫を可能にすることもまた望ましい。他の利点は、サンプルが製造サイクルの種々の段階から、品質管理のために採取でき、それらが凍結状態で維持できる限り、大きいバッチが製造できることである。
【0004】
現在、細胞性生物学的物質の貯蔵時間は、“凍結発生(cryogenic)”温度まで冷却することにより延長される。システムの温度を下げることによる液体から固体段階への移行は、水分子の規則正しい配列を含む凍結(氷)またはこのような結晶相の規則正しい配列なしのガラス化または無定形化(ガラス形成)として進行する。凍結生物学者に課された挑戦は、細胞を傷つけることなく凍結発生温度にし、再び生物学的状態に戻すことである。
【0005】
細胞および組織の凍結保存のために二つの基本的試みがある:凍結−融解およびガラス化である。凍結−融解法において、細胞外溶液を凍結(すなわち、結晶形)させるが、細胞内氷形成を最小にする工程を行う。ガラス化方法において、全サンプル中の氷形成を防止する試みがある。前者の試みは、氷が細胞内に形成された場合、融解した時の細胞生存率に有害であることが問題である。しかしながら、細胞は、非毒性レベルの凍結保護剤の存在下で制御された速度で冷却された場合、凍結−融解サイクルで生存する。後者のガラス化の試みは、非常に高濃度の溶解物および/またはポリマーを使用して氷形成を抑制することにより、細胞内および外の氷による可能性のある障害が避けられるように思われる。しかしながら、細胞障害は、ガラス化に必要な毒性レベルのこれらの添加剤に長時間さらすことにより起こり得る。
【0006】
凍結保護剤は、凍結工程に関与する負荷から生存細胞を保護する。凍結保護剤が細胞を保護する一つの方法は、水が氷になるに連れて、非凍結溶液中で徐々に濃縮される塩を希釈することによる。氷の量は、温度および最初の溶液の組成により決められる;一方、非凍結フラクションの量は、温度のみの関数である。凍結保護剤は、他の幾つかの機能を有する。重要なものは、それらが細胞内氷形成温度を通常低下させることである。他の機能は、それらが膜およびタンパク質を安定化することである。
【0007】
すべての溶液は、それらが結晶形成のための無作為凝集地点が定まるまで、凍結点以下で超冷却である。凍結−融解法による凍結保存法する場合、細胞外培地での氷形成は低度の超冷却で種晶添加(seeding)することにより、故意に開始させなければならない。氷形成が種晶添加により誘発されない場合、氷は、溶液をその平衡凍結点より遥かに低く充分に冷却することにより、自然に形成される。この工程が、天然では無作為であるため、氷形成は無作為に予期できない温度で起こる;従って、生存率は、同じ凍結プロトコールの反復試験でその都度変化する。更に、高度に超冷却された溶液中で氷が形成される場合の非常に急速な結晶化は、細胞および組織に障害をもたらし得る。更に、細胞外氷形成が超冷却の非常に高い程度で開始した場合、細胞内氷形成の可能性は非常に増加することが示されている。この現象は、凍結−誘発細胞脱水の遅い開始に由来し、それは細胞内水の増加した保持、従って、細胞内での氷形成の高い可能性をもたらす。
【0008】
一度細胞外氷を種晶添加し、サンプルが氷相で囲まれた場合、サンプルを凍結保護段階に冷却することが必要である。冷却段階は、凍結−融解プロトコールで最も重要な段階の一つである。氷、即ち純水氷形成のため、部分的凍結細胞外溶液は細胞内区画よりも濃縮される。結果として、細胞は熱力学的平衡を保持するために、水を失うことにより脱水する。全システムが冷却するに従って、より多くの細胞外氷が形成され、溶解物の濃度が増加し、細胞をより脱水させる。その脱水速度を制御できる細胞の3つの特性がある。一つは、膜水透過性である;水透過性が低い程、細胞脱水により長い時間がかかる。他のものは細胞膜水透過性の温度依存性である;すべての細胞は温度が低下するとその水透過性を減少させる。最後は細胞サイズである;より大きい細胞は小さい細胞より脱水に時間がかかる。各細胞タイプが非常に異なる特性を有し得るとすれば、最適凍結保存状態は、異なる細胞タイプにおいて強さの程度を変化できる。
【0009】
凍結保存中の細胞障害の正確な機構はまだ完全には明瞭になっていないが、冷却速度の関数としての細胞生存率の測定により得られる特徴的生存のサインは、全ての細胞タイプで定性的に同一であるように見え、逆U字曲線を示す。細胞生存率は、非常に遅いおよび非常に速い冷却速度で低く、中間の冷却速度が最大生存率を与える。最適冷却速度および曲線の幅は異なる細胞タイプで激しく変化し得るが、定性的挙動は普遍的であるように見える。より速い冷却速度は、細胞が脱水するのに充分な時間を与えず、細胞は内部に氷を形成する。速い冷却速度での細胞障害は、細胞内氷形成による。冷却の遅い速度では、細胞障害は高濃度の細胞内塩および細胞外塩および凍結保護溶液にさらすことによるものであるか、または細胞と細胞外氷の機械的相互作用によるものであると考えられる。
【0010】
細胞を、細胞内氷凝集曲線と交差する前にできるだけ脱水することが必要である。この点で、細胞内に残る実際の全ての水が凝集し、氷を形成する。これが起こる正確な温度を決定することは実際的ではないが、細胞を1Mから2Mの濃度の凍結保護剤の存在下でゆっくり凍結した場合、−40℃から−50℃である。この点で細胞内で氷に変わる水の量は、凍結の場合無害であるが、充分に早く融解しない場合、融解において広がり、細胞を殺し得ることに注意することは重要である。(The Biophysics of Organ Cryopreservation, 117-140頁, David E. PeggおよびArmand M. Karow, Jr.編, NATO ASI Series A:Life Sciences Vol. 147 1987 Plenum Press, New York 233 Spring St., New York, NY 10013)。
【0011】
商業的に実行可能な皮膚相当物の開発前は、死体皮膚を移植の目的で使用していた。凍結保存プロトコールは、熱傷センターおよび病院が皮膚バンクを維持できるように開発された。多くの異なるプロトコールが、異なる凍結保護剤、凍結速度、包装形態および貯蔵状態を用いて開発された。ほとんどの研究者が、急速融解プロトコールで同意見であった。プロトコールの成功または失敗は、創傷を埋めるのに使用した移植片または細胞生存率検定で測定した。
【0012】
Beisangの米国第3,842,831号は、死体皮膚パッチの凍結保存法を記載している。方法は、死体皮膚の粗く織ったスクリムまたは裏地への接触、並びに、皮膚パッチおよびスクリムを凍結前に巻くことを含む。凍結保護剤は、発明者はグリセリンまたはDMSOの使用を示しているが、使用しない。凍結プロトコールは、凍結発生温度−70℃までの急速非制御(固定温度)凍結速度プロトコールを使用する。
【0013】
May SRおよびFA DeClement(Skin Banking Methodology, 17, 33-45(1980))は、デルマトーム(dermatome)死体皮膚を使用して、包装幾何学および冷却および加温速度の評価を行った。結果は、死体皮膚は、巻くよりむしろ平で、凍結の遅い制御速度を用いることを示した。
【0014】
Tuboの米国第5,040,677号は、上皮細胞シートの個々の片のガス−密閉可能容器を記載している。容器は、上皮細胞シートが、クリップの使用により粘着支持体シートまたは裏地に付着していることを必要とする。
【0015】
Tuboの米国第5,145,770号は、−1℃/分の冷却速度で、デキストランのような非細胞浸透剤の凍結保護剤を使用する、角化細胞の凍結保存法を記載している。同様に、Chao et al.の欧州特許第0364306号は、生存、培養上皮細胞のシートの凍結保存法を記載しているが、DMSOおよびグリセロールの両方を凍結保護剤として使用し、好ましい凍結プロトコールは−1℃/分である。
【0016】
Cancedda et al.の米国第5,298,417号は、米国第4,016,036号、第4,304,866号および第4,456,687号に記載のように製造した上皮シートのような一層構築物のために開発した凍結保存プロトコールを記載している。上皮シートを8−15%グリセロールまたはDMSOの凍結保護剤とインキュベートし、冷却速度がプロトコールの最後よりも最初が遅く、凍結手順の頂点の前に温度が上昇することにより特徴付けられる、制御速度プロトコールを用いて凍結保存する。
【0017】
コラーゲンゲル中の皮膚線維芽細胞の凍結保存法は、Teasdale et al., Burns, 19(5)406-410(1993)により発明された。Teasdaleは、最大細胞生存率が、DMSOを凍結保護剤として−0.5℃/分の凍結で得られることを測定した。
【0018】
Nanchahal et al., "Cultured composite skin grafts:Biological skin equivalents permitting massive expansion", The Lancet, 2(8565), 191-193(July 22, 1989)は、Medium 199中に15%グリセロールおよび10%FCSの凍結保護剤を使用した合成培養組織片の貯蔵技術を記載している。移植片および凍結保護剤を37℃で2時間インキュベートし、次いで、−1℃/分で−70℃まで凍結させ、次いで、液体窒素中で保存した。移植片の急速融解後、その生存率を2週間の培養によりおよび無毛マウスへの移植により測定した。最終評価を、入れ墨消去を行っている3名の患者に移植して行った。
【0019】
Johnstone et al., "Cryopreservation of Rabbit and Cat Corneas at −18 to −24℃", Cornea, 11(3):211-220(1992)は、液体窒素または非常に低温の冷凍庫よりむしろ家庭用冷凍庫を使用した、ウサギおよびネコ角膜の凍結保存の単純な方法を記載している。凍結保護剤の浣流を、角膜を50%ウシ胎児血清および増加したグリセロールおよびグルコース濃度のMcCarey−Kaufman培地の連続溶液に置くことにより得る。
【0020】
先行技術を使用して、培養組織相当物を凍結保存することは不可能であり、これは、一部分、それらが相対的に厚く、不均質細胞層のためである。これらの組織のインビボの一つの機能は、浸透性バリアーの形成である。組織機能は、凍結保存プロトコールの開発において考えなければならない。
【0021】
本発明者は、凍結保存法、および特に、培養組織相当物の凍結保存のための驚くほど有効であり、商業的に実際的なパッケージである、多くの培養組織相当物および哺乳類皮膚に適用可能なパッケージデザインを発明した。
【0022】
発明の要約
本発明は、プログラム可能冷凍装置を使用した実行可能な温度での、有害な細胞内氷結晶の形成を避け、有害な可能性のある化学物質の有効な濃度を減少させ、凍結保護剤の急速挿入および除去を可能にした、非常に低温での培養組織相当物の優れた凍結保存法を提供する。
【0023】
本発明はまた培養組織相当物の凍結保存、貯蔵および搬送のために開発された新規パッケージデザインも提供する。新しいデザインは、既存のパッケージデザインを超える多くの利点を提供する。現在、商業的に入手可能な凍結保存培養組織相当物はなく、従って、出荷用のパッケージデザインは入手可能ではない。新規パッケージデザインはより効率的な熱伝導を用いて、凍結チャンバーの外部の温度によるパッケージ内部のより良好な温度追跡を可能にする。改善された熱伝導率は、より制御された;従って、培養組織相当物の均一な冷却および加温速度を可能にし、それにより細胞生存率のバラツキを減少させる。
【0024】
本発明者らは、組織がその生存率およびヒト組織相当物としての利用能を維持するような、インビトロ技術から製造した培養組織相当物の凍結保存を発明した。本発明は、有効な量の凍結保護剤の浸透を促進する撹拌の使用を含む。本発明法は、採取組織および培養組織相当物の両方の、構造的無傷さおよび細胞性生存率を守る方法での凍結保存法を提供する。
【0025】
本発明の方法は、以下の工程を含む:
1)採取組織または培養組織相当物を凍結保護溶液中に浸し、凍結保護溶液および浸した組織を撹拌し、組織内への凍結保護溶液の有効な浸透(組織の浣流(perfusion))を達成する;および
2)凍結保護溶液の組織への浣流の後、凍結保護剤の固体−液体相平衡温度範囲まで冷却する;細胞外氷を種晶添加し、遅い凍結速度で、少なくとも−70℃またはそれ以下、より好ましくは−120℃またはそれ以下、より更に好ましくは−140℃および最も好ましくは−196℃の温度まで、組織を凍結させることにより、凍結保存状態まで冷却する。
【0026】
一度凍結させたら、凍結保存組織は約−120℃から約−196℃の温度である液体窒素の温度で、無期限に貯蔵できる。
【0027】
凍結保存組織の融解は、約1分から2分で行う高速で、凍結組織を暖めることにより達成される。凍結組織の融解は、直接暖かい培養培地を適用することにより、または、生理学的緩衝液により、または他の急速加温法で行い得る。パッケージデザインは、組織の融解を、パッケージデザインが、重要な融解工程中の無菌状態を維持しながら、急速加温速度および熱均一性制御を確保するため、パッケージを水浴に浸すことによりできる。
【0028】
移植またはインビトロ試験のためのヒト組織の相当物の使用前に、融解培養組織を濯ぎ、凍結保護溶液を除去する。凍結保護溶液は、例えば、生理学的pHで等張性の緩衝液で濯ぐことにより除去し得る。次いで、培養組織相当物を、使用前にこのような緩衝液中に一時的に貯蔵できるか、または適当な細胞培地で再培養できる。
【0029】
図面の簡単な説明
図1Aおよび1Bは蓋を示す。
図2はシールの平面図を示す。
図3Aおよび3Bは蓋においたシールを示す。
図4Aおよび4Bは担体を示す。
図5Aおよび5Bはトレイを示す。
図6Aおよび6Bは、組み立て品の分解図および完成図の側面図を示す。
図7は、組み立て品の精密図を示す。
図8は、完成した組み立て品の平面図を示す。
図9は、非凍結保存培養組織と比較した凍結保存培養組織の生存率のグラフを示す。MTTにより測定した凍結保存培養組織の生存率を示す。LSEは更にLDH検定で測定した。全ての培養組織は、年令適合非凍結保存対象と比較し、対象のパーセントとして示す。
【0030】
発明の詳細な説明
組織工学は、培養組織細胞を使用し、化学薬品または医薬化合物による傷の応答の試験に使用できる組織相当物を利用する、新しい領域である。培養組織は、移植可能ヒト組織を形成するのにも使用し得る。
【0031】
組織相当物は、全て本明細書に参考として包含する、米国特許第4,485,096号;第4,485,097号;第4,539,716号;第4,546,500号;第4,604,346号;第4,837,379号および第5,374,515号を含む多くの特許に広範囲に記載されている。組織相当物の一つの成功した適用は、実際のヒト皮膚と類似の形態を有する“生存皮膚相当物”である。生存皮膚相当物(LSE)は二層から成る;上部は分化したおよび層状のヒト表皮角化細胞から成り、それがコラーゲンマトリックス内のヒト皮膚線維芽細胞の下層を覆う。Parenteau et al., "Epidermis Generated In Vitro:Practical Considerations and Applications", J. of Cellular Biochemicstry, 45:245-251(1991);Parenteau et al., "The organotypic culture of human skin keratinocytes and fibroblasts to acheve form and function", Cytotechnology, 9:163-171(1992);およびBell et al., "The Living Skin Equivalent:Its Manufacture, Its Organotypic Properties and Its Responses to Irritants", Toxic. in Vitro, 5:591-596(1991)。移植のためのLSEは、皮膚傷の部分的および完全な厚さに関する適応症:切除手術、熱傷、静脈停滞潰瘍、糖尿病性潰瘍および慢性炎症性潰瘍に関して臨床試験されている。LSEは、完全な厚さで、二層で、インビトロ工学皮膚組織である。
【0032】
眼の角膜のインビトロ器官相当物が、本明細書に参考として包含させる米国特許第5,374,515号に記載のように開発されている。角膜組織相当物は、3つの別の細胞層、層状鱗屑状上皮である外部層;コラーゲン線維および間質細胞の中間層;およびまた角膜内皮とも呼ぶ単層鱗屑状上皮である内部層を有する。インビトロ角膜相当物は、インビトロ毒性検定に使用でき、多くのタイプの生産物および未加工材料のインビボ眼および皮膚刺激の可能性の正確で安価な非動物予測モデルとして働く。
【0033】
凍結保存の目的は、無期限の生物学的物質の構造的無傷さおよび生存率の保存であり、これらの物質を必要に応じて利用可能および使用できるようにする。限定生存時間の複合組織は、製造物利用能および実用性を広げるために凍結保存が必要である。しかしながら、生物学的物質の凍結保存の歴史は、特定細胞の凍結保存プロトコールの最適化が、他の細胞タイプに使用した場合またはその組織の他の細胞に使用した場合に必ずしも良好な結果とはならないことを示す。完全な厚さの組織相当物の細胞密度、水含量および構造的構成のレベルの差のためのより特定化した方法の発展が必要であった。本発明の凍結保存プロトコールは、驚くべきことに、一層表皮および皮膚層単独、二層組織相当物、三層角膜相当物および採取哺乳類動物皮膚に適用可能である。パッケージデザインの開発は、これらの組織の凍結保存を、製品規模工程で実際的にする。
【0034】
本明細書で使用する限り、“培養組織相当物”は、哺乳類組織の組織相当物を意味し、組織相当物はインビトロ技術で製造され、皮膚相当物または上皮シートの何れかである一層皮膚相当物;二層皮膚相当物、特にLSE;および三層角膜相当物および皮膚相当物を含む。培養組織相当物の形態は、インビボ哺乳類器官、特にヒト器官のものと類似である。説明のために、LSEの形態は、ヒト皮膚と多くの類似性を有する。代謝的および有糸分裂的に活性なヒト皮膚線維芽細胞(HDF)は、構築物の皮膚層に見られ、格子にコラーゲンおよび他のマトリックス成分を分泌することが示されている。基底層から成る表皮は、ヒト皮膚と同じ有糸分裂速度で分裂することが示されている。基底の上の表皮は、角質層で覆われたケラトヒアリンおよび薄層顆粒を含む良く定義された棘および顆粒層と共にインビボ皮膚と同じ層を示す。免疫組織化学は、正常ヒト皮膚の皮膚−表皮接合部に通常見られるような、細胞外マトリックス成分、例えば、ラミニン、IV型コラーゲンおよびカラニン(GB3)の存在を証明する。
【0035】
生存皮膚相当物(LSE)のように、器官代表的方法により得た培養組織相当物は、その上に相当物を形成する枠組みとしての担体として利用する。培養組織相当物を、構築物に直接接触することなく、製造、輸送および最終目的使用中の構築物の操作を可能にする、担体上に組み立てる。担体上に培養組織相当物を製造する方法は、米国特許第5,374,515号、米国特許出願第08/193,809号および第08/337,380号に記載されている。
【0036】
担体は、本質的に管状支持体の一端に付着している平らな浸透可能膜を含む。管状支持体の他端は、外側に伸びているフランジを含み、それは、次いで、組織培養皿中および本発明のパッケージデザイン中のウェルの上部端を吊すことが出来るリムを有する。膜支持集合は、特異的な大きさのウェルを少なくとも一つ有する培養皿で使用するための大きさであり、支持体に関した適当な隙間を提供し、ウェルの上端と連合する。膜支持集合は、異なる大きさの培養皿および凍結保存および貯蔵パッケージで使用するように、異なる大きさで製造され得る。これらの担体の例は、米国特許第5,466,602号に記載のようなTRANSWELL(登録商標)(Costar)である。パッケージデザインの修飾は、当業者が、培養容器中の支持および連合の異なる手段を用いる類似の担体を製造するために行い得る。類似の担体が、米国特許第5,358,871号および第5,366,893号に記載され、または米国特許第4,871,674号に記載のものである。
【0037】
本発明の好ましいパッケージデザインは、担体枠組みを含み、予め決定された詳細に対して制御し得るように、組織相当物の回りの環境を限定する。本発明は、好ましくは医薬グレードの品質で、広範囲の温度に耐えることができる材料を使用する。これらの材料を、共に密封手段で密封できるトレイおよび蓋を形成するように成形する。新規パッケージは、組織相当物をその上に形成する担体支持体を含むようにデザインされる。
【0038】
新規パッケージデザインは、トレイ、蓋およびその間の緊密シールを含む。トレイおよび蓋は、付着組織相当物を含む存在する担体と適合するようにデザインする。付着組織相当物を伴う担体をトレイ中に置き、凍結保護溶液を添加する。次いで、蓋をトレイの上に置き、互いに密封して、パッケージの内部よび外部環境間に緊密な密封を形成する。
【0039】
パッケージデザインは、凍結保護剤の組織相当物およびトレイおよび蓋の両方への接触を維持しながら、担体下および組織相当物表面上の凍結保護剤の等しい分散を可能にする。パッケージのデザインは、制御冷却および凍結速度が、凍結保存すべき培養組織の上および下に類似幾何学で配置した等量の凍結保護剤で維持できるという概念に基づいている。この配置は、培養組織相当物の上および下表面からパッケージの外部壁の均質距離を提供する(ただし、パッケージはまた均質の厚さを有する)。この均質性は、冷却において組織相当物から凍結チャンバーへの;および融解において外部環境から組織相当物への均質熱交換を提供する。
【0040】
トレイは、側壁およびフランジと隣接する底表面を含む。フランジは、トレイの蓋への密封のための平らな表面を提供する。トレイの側壁は、側壁から内部に伸び、必須の一つの連続したまたは複数の不連続支持体を有する。培養組織相当物を含む担体の上部端は、トレイ中に置いた場合、トレイの側壁により提供される支持体上に吊り下げる。空間は、吊り下げられる担体と、トレイの底表面との間として定義され、該組成相当物のサイズほどの面積であり、約1.0mmの厚さである。
【0041】
蓋は、側壁およびフランジに続く平らな底表面を含む。蓋フランジの直径は、トレイフランジの直径より僅かに小さい。蓋フランジは、担体を含むトレイ上に置いた場合、担体に寄り掛かり、トレイフランジおよび蓋フランジの両方の上表面は同じ平面にまたはほぼ同じ平面に方向づけられて接触している。第2の空間は、蓋と、培養組織相当物の表面とで定義され、また該組織相当物のサイズほどの面積であり、約1.0mmの厚さである。
【0042】
デザインは、トレイおよびその中に入れた組織相当物を含む担体の底の合計約1mmおよび蓋と蓋およびトレイの両方に接触した組織相当物の上および下の凍結保護剤を伴う組織相当物間の約1mmを可能にする。蓋が培地を含むトレイ中に置かれる場合、蓋はパッケージ内の空気を、担体の管状支持体を含む末端領域まで排気する。
【0043】
蓋は、トレイおよび蓋フランジの上部表面に作られた曝露した平面に沿ってトレイを密封する。密封は、加熱、接着剤または当分野で既知の他の手段により行い得る。蓋およびトレイの間の密封は、凍結保護剤の漏出を防止し、ユニットの内部の無菌性を維持する。好ましくは加熱密封可能蓋素材の環状シートがトレイおよび蓋フランジの両方を加熱密封する。蓋素材は、好ましくは、組織相当物に近付くために蓋をトレイから剥がして取って、密封を解くためのつまみを有する。他の態様において、トレイフランジとほぼ同じ直径のフランジを有する蓋を、その中に担体を含むトレイ中に置き、蓋フランジの底表面が密接にトレイフランジの上表面と接触するようにする。次いで、フランジを密封可能手段により互いに密封する。
【0044】
図1Aおよび1Bは、蓋10;蓋フランジ11;蓋側壁12;および底表面13を示す。蓋フランジ11、蓋側壁12および底表面13は連続表面を形成する。 図2環状シール20および取っ手21を示す。
【0045】
図3Aおよび3Bは、シール20;蓋10;蓋フランジ11を示す。シール20を、蓋10の蓋フランジ11の上に使用前に置き、密封工程中にシールを直線にするのを容易にする。
【0046】
図4Aおよび4Bは担体30;担体リム31;浸透可能膜32;および管状支持体33を示す。浸透可能膜32は、管状支持体33により結合した、その中に入れられた培養組織相当物を含む。担体30は、凍結保存工程中の組織相当物への接触および除去なしの組織相当物の移動を可能にする。
【0047】
図5Aおよび5Bはトレイ40;トレイ底表面41;トレイ側壁42;トレイフランジ43;および担体支持体44を含む。トレイ底表面41、トレイ側壁42、トレイフランジ43および担体支持体44は連続表面を形成する。担体支持体44はトレイ内の担体と接触し、支持する。
【0048】
図6Aおよび6Bはシール20;蓋10;担体30;およびトレイ40を示す。その中に組織相当物を含む担体30をトレイ40内に入れ、トレイ内に吊す。シール20を伴う蓋10を担体30上に置き、担体上に吊す。
【0049】
図7はシール20;蓋フランジ11;蓋10;担体30;担体リム31;担体支持体44;およびトレイ40を含む。その中に組織相当物を含む担体30をトレイ40内に入れ、担体リム31の底表面を担体支持体44の上表面に接触させることによりトレイ内に吊す。シール20を有する蓋10を担体30上に置き、蓋フランジ11の底表面を担体リム31の上表面に接触させることにより、担体上に吊す。蓋フランジ11およびトレイフランジ43の両方の上表面はシール20のための平らな表面を形成する。
【0050】
図8は組み立ての鳥瞰図である。
【0051】
トレイおよび蓋を形成し得る材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)のような、硬性または半軟性熱可塑性樹脂であり、加熱した時、真空または注入造形により造形される。パッケージトレイおよび蓋は、好ましくは、使用前に、滅菌の分野で既知の方法で滅菌する。トレイおよび蓋を形成するのに使用される材料が、使用できる滅菌法を決める。PTFEまたはPETGを滅菌するために、2.5から3.0メガラドのガンマ放射線が好ましい。当業者に既知の滅菌の電気的および化学的法をまた代わりに使用し得る。
【0052】
培養組織相当物は、試薬により収縮された水和コラーゲン格子、好ましくは線維芽細胞の皮膚相当物を含む。一つの態様において、表皮細胞の層状層を皮膚相当物の表面で培養する。他の態様において、角膜細胞により縮合された水和縮合コラーゲン格子を、格子の表面で培養した角膜上皮細胞の層状層を有する角膜内皮細胞の層上に置く。あるいは、表皮細胞単独を培養し、層誘発し、表皮シートを形成し得る。培養組織相当物は、担体の上の多孔性膜上または担体規底表面の多孔性膜に粘着したコラーゲンゲル上のいずれかに形成される。加えて、培養表皮シート、培養皮膚相当物、培養角膜相当物または採取哺乳類皮膚を含むがこれらに限定されない他の培養組織相当物が本発明の方法に従い凍結保存され得る。
【0053】
本発明を、組織相当物および図説のような好ましいパッケージデザインを使用して記載する。当業者は、記載の方法に修飾ができ、本発明の範囲内であることを理解する。
【0054】
組織相当物を凍結保護溶液で浣流する方法は、組織相当物およびその付着担体を、サンプルを浸し、組織相当物の上および下に等量の凍結保護溶液を有するのに充分な量の凍結保護剤に浸す。組織相当物および担体を含む100mmペトリ皿に、DMEM中の2Mグリセロール25mLを、サンプルに完全に浸透するのに充分な時間、好ましくは1時間から2時間の間であるが、最も好ましくは約1時間入れる。凍結保護溶液中での長時間は、組織の細胞生存率の減少をもたらすが、短すぎる時間は組織内への凍結保護剤の浸透が確実ではない。単層構築物は、典型的には、少ない細胞層を有し、少ないバリアー機能を有するため、必要な浣流の時間が短い。この時間中、サンプルと凍結保護溶液を攪拌して、典型的にはペトリ皿を、10%COガスチャンバー中で70rpmでオービタルプラットフォーム(orbital platform)振盪器(Bello orbital shaker)で撹拌して、凍結保護溶液の浸透を、促進する。組織相当物を製造した培養環境と同じ10%CO環境は、培地の脱気を防止し、したがって凍結保護剤の塩基性培地成分のpHを維持する。撹拌は、凍結保護剤の組織相当物へのより早いおよびより完全な浣流をさせ、凍結組織相当物間の結果の再現性が良好である。オービタル振盪器を他の空間平面の動きで撹拌を行う装置と変えることができる。加えて、機械的浣流促進の他の方法は、構築物を凍結保護剤と、プラットフォーム上の容器中で振盪させるか、構築物と凍結保護剤の遠心およびポンプを使用した構築物の回りの凍結保護剤の浣流を含むが、これらに限定されない。
【0055】
担体および付着組織相当物をトレイ中に置き、全量約16.0mlの凍結保護溶液を添加する。パッケージデザインは、凍結保護剤の均質分散を可能にする:担体の下に約8.0mlおよび組織相当物の表面に約8.0ml。次いで、蓋をトレイの上に置き、二つの部分を、好ましくは、蓋素材に、加熱密封する。
【0056】
次いで、包装組織相当物を、ほぼ室温、好ましくは20.0℃の最初の温度に設定されたプログラム可能冷凍庫(CryomedまたはPlaner)に入れる。包装組織相当物を含む冷凍チャンバーを、通常、DEME中の2.0Mグリセロールについて、約−5.3℃から−6.0℃の間である、凍結保護剤の固体−液体相平衡温度範囲まで−10.0℃/分で下げる。固体−液体相平衡温度は、凍結保護剤中に氷を種晶添加するのに必要な温度である。チャンバー温度を、包装組織相当物の内部温度とチャンバー温度の平衡化の目的で、しばらく保つ。種晶温度を得るために使用する冷却速度は重要ではない。約40分の保持時間が熱平衡化に充分であるが、時間は、チャンバーの大きさ、チャンバー内の空気循環および凍結するパッケージの数に依存して変化する。少なくとも30分が典型的に必要であり、1時間まで、平衡化を確実するために行い得る。保持時間の後、種晶添加による細胞外氷形成を開始させる。
【0057】
氷種晶添加は、細胞外凍結保護剤中の氷形成の開始の方法と定義される。氷種晶添加の一つの好ましい方法は、組織を含むトレイの側面を、液体窒素冷却(−196℃)鉄棒のような冷却針と接触させることによる。パッケージに対する棒の接触面は、パッケージ内の凍結保存冷凍培地のレベルより下でなければならない。他の好ましい方法は、パッケージの外へのフレオンまたはCOのような膨張ガスの直接排気である。氷形成は、チャンバーの温度を、氷結晶形成に充分な範囲内で低下および上昇させる、チャンバースパイク波形により開始させる。当分野で既知の氷種晶添加の他の方法に変え得る。
【0058】
全ての組織相当物に氷結晶を種晶添加した後、ユニットを更に1時間、熱平衡化および凍結保護剤への氷種晶添加結晶の増殖のために保持する。次いで、冷却を、好ましくは約−0.02℃から約−0.3℃;より好ましくは−0.05から約−0.1℃/分;および最も好ましくは約−0.07℃/分の速度で、好ましくは、少なくとも−70℃またはそれ以下;より好ましくは−120℃;更により好ましくは−140℃;または最も好ましくは−196℃まで再開する。最終凍結温度は、水のガラス遷移温度、−120℃に近付くため、最終貯蔵場所への移動中に有害な温度変動はありそうにない。
【0059】
凍結保存組織相当物をプログラム可能冷凍室から移し、約−120℃から−150℃の蒸気相液体窒素貯蔵タンク(Dewer)または−196℃の液体窒素中に使用まで貯蔵する。
【0060】
融解のために、凍結保存培養組織相当物を蒸気相液体窒素貯蔵から除き、ドライアイスに移して、約−75℃に暖める。一度−75℃で平衡化したら、次いで、培養組織相当物を、37℃;またはより好ましくは4℃;または最も好ましくは室温に設定した環境、好ましくは、水浴に移す。一度、凍結保護培地が液相に変わるのが見えたら、培養組織相当物パッケージ単位を、好ましくは、生物学的安全キャビネット、または他の無菌領域に移し、エタノールで滅菌する。皿の蓋を、蓋材料をユニットの底から剥がすか切断して除く。次いで、過剰の凍結保護剤を注ぎ出しながら、培養組織相当物を含む担体をペトリ皿に移す。次いで、培養組織相当物に残っている凍結保護剤を濯ぐために、濯ぎ液、好ましくはDMEM25mlを室温で、培養組織相当物を含むペトリ皿に約30分添加する。他の充分な濯ぎ液、細胞培養培地またはリン酸緩衝食塩水のような好ましくは生物学的強度溶液が、当業者により決定され得る。濯ぎ液を、2回目、更に30分交換する。濯ぎ時間は組織の複雑さに依存して変化し得る。
【0061】
次いで、培養組織相当物ユニットをその元の培養皿に戻し、培養維持培地で37℃/10%COで再培養する。あるいは、相当物を患者に適用するか、または、米国特許第4,835,102号に記載のように、物質との接触の応答を試験する。
【0062】
以下の実施例は、本発明の実施をより明瞭にするために提供し、本発明の範囲をいかなる意味でも限定して妨害するものではない。当業者は、種々の修飾が本明細書に記載の方法でできるが、本発明の精神および範囲から外れないことを認識する。
【実施例】
【0063】
実施例
実施例1から3
実施例1から3は、本発明の凍結保存および融解技術を、好ましいパッケージデザインと共に示す。
【0064】
実施例1:生存皮膚相当物(LSE)の凍結保存とパッケージデザイン
生存皮膚相当構築物(LSE)は、米国出願第08/193,809号に従って製造した。LSEおよび付着した75mm担体挿入物(TRANSWELL(登録商標), Costar, Cambridge)を、空輸後9から10日目で、100mmペトリ皿(Costar)に入れた。LSE構築物を、構築物およびトランスウェル(transwell)を凍結保護培地、100mmペトリ皿中のDMEM中の2Mグルセロール25mLに1時間浸すことにより凍結保護剤を浣流した。浣流中、構築物を1時間、オービタル振盪器(Bellco)で、70rpmで10%COガスチャンバー内で撹拌した。撹拌は、より完全な浣流および凍結保存法の良好な再現性を可能にする。LSEを浣流した後、LSE、担体挿入物および細胞外凍結培地(2MグリセロールおよびDMEM)を含むペトリ皿を凍結保存パッケージ中に入れ、加熱密封した。凍結保存パッケージは、本明細書と同日に出願した、同時継続出願米国特許出願第・・・号に記載されている。
【0065】
プログラム可能冷凍庫(Planar)のチャンバーに、ここに記載した本発明品を供給した。冷凍庫は、開始温度20℃に設定した。配管ラインは、一秒間隔でフレオンを排気し、ライン内の空気を除いた。包装LSEユニットをそれぞれ8つのLSEユニットを収納するラックにしっかりと置いた。設立されたピンにより誘導されたラックを、スプレーレールの隣に置いた。冷凍庫のチャンバードアを閉じ、チャンバーを外部環境から密封した。
【0066】
LSEユニットを−10℃/分で−6℃まで冷却し、チャンバー温度を−6℃に40分維持し、凍結保護剤および浣流構築物をチャンバー温度と平衡化させた。40分保持後、細胞外氷を、直接フレオンを、パッケージの側面の極めて近くに1秒間直接排気することにより開始させた。パッケージの表面から揮発するため、フレオンはフレオンの接触領域の、細胞外氷形成に充分な温度までの低下をもたらした。
【0067】
全てのLSEユニットが氷結晶で種晶添加された後、ユニットを1時間、−6℃で平衡化した。次いで、チャンバー温度を−0.07℃/分で最終温度−20℃まで冷却した。次いで、チャンバーを、−0.5℃/分で、最終温度−70℃まで冷却した。一度、LSEユニットが凍結保存されたら、それらを、−120℃から−150℃の蒸気層貯蔵タンク(Dewar)に移した。
【0068】
実施例2:凍結保存LSEの融解
凍結保存LSEを、蒸気層液体窒素貯蔵から取り出し、ドライアイスに移し、−75℃まで暖めた。一度−75℃で平衡化したら、次いで、培養組織相当物を好ましくは37℃;より好ましくは4℃;または最も好ましくは室温に調節した水浴に移す。全ての凍結保護培地が液層に変わったのを一度見ることができたら、培養組織相当物パッケージユニットを好ましくは生物学的安全キャビネットまたは他の無菌領域に移し、エタノールで滅菌する。皿の蓋をユニットの底から蓋素材をはぎ取るかまたは切り取って除く。次いで、培養組織相当物を含む担体を、過剰の凍結保護剤を注ぎ出しながらペトリ皿に移す。残った凍結保護剤を培養組織相当物から濯ぐために、次いで、濯ぎ液(室温)、好ましくはDMEM 25mLを、培養組織相当物を含むペトリ皿に約30分添加する。他の細胞培養培地またはリン酸緩衝食塩水のような他の充分な生理学的濯ぎ液が、当業者により決められ得る。濯ぎ液を、2回目、更に30分交換する。
【0069】
融解凍結保存および対照サンプルを組織学的方法で処理し、光顕微鏡で形態学的組成および生存率を評価し、ほとんど100%の生存率を示し、ほとんど対照と区別がつかなかった。
【0070】
実施例3:加温速度および熱均質性に関する凍結保存パッケージデザインの評価
本発明の凍結保存パッケージを、均質熱移動について評価した。培養組織相当物無しの担体膜に、5つの熱電対を乗せ、一つは中央および4つは担体の末端壁から等しく1.0mm離した。熱電対は、蓋とトレイフランジの間からパッケージを出て温度記録器(Azonix Scanner Plus)に導かれた。パッケージを凍結保護剤17mLで満たし、パッケージを加熱密封した。パッケージを−70℃に平衡化し、次いで、20℃に設定した水浴に移した。温度記録器は、各熱電対の温度を加温中、1から2秒毎に記録した。パッケージは最初700℃/分の速度で暖められ、それが凍結保護溶液の融点に近付くに連れて、遅くなった。熱均質性は、最も早い加温速度で平均熱電対温度の2℃から6℃の間であり、溶液の融点に到達するに連れ、8℃に近付いた。
【0071】
実施例4から12は、異なる組織での本発明の凍結保存法を示す。
実施例4:表皮シートの凍結保存
表皮シートを、空輸後12日目の成熟LSEから製造した。表皮シートの除去は、表皮基層を表皮層から鉗子で剥がし、皮膚層を廃棄することにより行った。各シートを3つの同じ切片に切った。各シートの一つのを対照として固定した。各シート由来の残った二つの切片を100mm培養皿(Costar)中の75mmポリカーボネートトランスウェル膜(Costar)の上に置いた。各切片をDEME 25mLおよび2モル グリセロールで1時間浣流した。構築物を含む皿をオービタル振盪器(Bellco)に70rpmで1時間、10%COガスチャンバーに入れた。表皮シートが浣流した後、表皮シート、トランスウェルおよび細胞外凍結培地(2MグリセロールおよびDEME)を含むペトリ皿をを袋内に入れ、5秒間真空および3.9秒間シール時間のプログラムで、真空密封(Audiovox)した。
【0072】
包装表皮シートを、開始温度20℃で、プログラム可能冷凍庫(Planer)に入れた。表皮シートを−10.0℃/分で−6.0℃まで冷却した。温度を−6.0℃に20分保ち、チャンバー温度と平衡化した。20分保持後、細胞外氷を、袋の外に、凍結培地のレベルより下で、液体窒素冷却針と接触させることにより開始させた。全ての表皮シートが氷結晶を種晶添加された後、温度を皿に5分間−6.0℃に保った。次いで、チャンバーを、−1.0℃/分で−8.0℃まで冷却した。次いで、温度を30分間−8.0℃に保ち、サンプルの氷分散を均質にさせた。次いで、チャンバーを−0.1℃/分で最終温度−70.0℃まで冷却した。
【0073】
凍結保存表皮シートを冷凍庫から除去し、袋をペトリ皿から切り取り、蓋を除いた。融解のために、暖かい(37℃)DMEM 40mLを各皿に無菌的に注いだ。45秒後、液体を皿から除き、皿に40mLのアリコートを各皿に2分添加した。全ての氷が溶けた後、表皮シートをDMEM 25mLで30分濯いだ。培地を、2回目、更に30分交換した。次いで、表皮シートを、分析前に、培養維持培地中で、37℃/10%COで24時間培養した。インキュベーション時間は、凍結細胞に通常見られる遅延が、定常状態を再確立するのを可能にする。また、インキュベーション時間は、凍結細胞に通常見られる遅延が、定常状態を再確立するのを可能にする。
【0074】
各表皮シートの二つの残った切片の内、それぞれ由来の一方は、組織学的によりし、それぞれ由来の他方はMTT検定プロトコールに従って検定した。非凍結保存表皮シートおよび実施例4の凍結保存表皮シートの間の光顕微鏡での比較は、表皮の3つの基本性質を示した:表皮の基底層、表皮の基底の上の層および表皮の角質層が本発明により全て保存された。全ての層は無傷であり、凍結保存表皮シートの全ての形態学は、非凍結保存表皮シートのものと同一であった。
【0075】
実施例5:皮膚相当物の凍結保存
本研究に使用した皮膚相当物は、LSEの非表皮化成分であった。皮膚相当物を剥いだ後8日目に凍結させた。100mmペトリ皿(Costar)中に置いた75mmトランスウェル(Costar)に付着した皮膚相当物をDMEM 25mLおよび2モルグリセロールで1時間浸すことにより、皮膚相当物を凍結保護剤で浣流した。ペトリ皿をオービタル振盪器(Bellco)上に、70rpmで1時間、10%COガスチャンバー内で置いた。皮膚相当物を浣流後、ペトリ皿、皮膚相当物、トランスウェルおよび細胞外凍結培地をプログラム可能冷凍庫(Planer)中に、開始温度20.0℃で入れた。次いで、チャンバーを−10.0℃/分で−6.0℃まで冷却した。その温度を20分維持し、チャンバー温度と平衡化した。20分維持後、細胞外氷を、皿の外側に、凍結培地のレベルより下で、液体窒素冷却針に接触させることにより開始させた。全ての皮膚相当物を氷結晶で種晶添加した後、温度を更に5分間、−6.0℃に維持した。次いで、チャンバーを−1.0℃/分で−8.0℃まで冷却した。チャンバー温度を再び−8.0℃に30分保ち、サンプル中の氷の均一分散をさせた。次いで、皮膚相当物ユニットを−0.1℃/分で最終温度−70.0℃まで冷却させた。
【0076】
次いで、凍結保存皮膚相当物を冷凍庫から出し、皿の蓋を除いた。融解のために、暖めた(37℃)DMEM 40mLを各ペトリ皿に無菌的に注いだ。45秒後、全ての液体を皿から回収し、更に40mLのアリコートを2分間皿に加えた。全ての氷が融解した後、皮膚相当物をDMEM 25mLで30分濯いだ。培地を2回目、更に30分間、交換した。トランスウェルにまだ付着している皮膚相当物を、次いで、培養皿に戻し、培養維持培地中で37℃/10%COで24時間、分析前にインキュベートした。インキュベーション時間は、凍結細胞で通常見られる遅れについて、定常状態が再確立するのを可能にする。サンプルを、MTT検定プロトコールを使用して検定した。
【0077】
実施例6:角膜相当物の凍結保存
24mm培養トランスウェル(Costar)に付着した、湿潤空輸後9日の角膜相当物を、6ウェルクラスター皿(Costar)に入れた。角膜相当物を凍結保護剤で浣流する方法は、各角膜相当物およびトランスウェルを細胞外凍結培地(DMEM中2Mグリセロール)4mLで、6ウェルクラスター皿中、1時間浸すことによるものであった。角膜構築物含有6ウェルクラスター皿を1時間、オービタル振盪器で、70rpmで、10%COガスチャンバー内で振盪した。角膜相当物を浣流した後、角膜相当物、トランスウェルおよび細胞外凍結培地含有ペトリ皿をプログラム可能冷凍庫(Planer)中に、開始温度20.0℃で入れた。次いで、チャンバーを−10.0℃/分で−6.0℃まで冷却した。その温度を20分維持し、チャンバー温度と平衡化した。20分維持後、細胞外氷を、皿の外側に、凍結培地のレベルより下で、液体窒素冷却針に接触させることにより開始させた。全ての皮膚相当物を氷結晶で種晶添加した後、温度を更に5分間、−6.0℃に維持し、その後チャンバーを−1.0℃/分で−8.0℃まで冷却した。温度を再び−8.0℃に30分保ち、サンプル中の氷の均一分散をさせた。角膜相当物ユニットを−0.1℃/分で最終温度−70.0℃まで冷却させた。
【0078】
凍結保存角膜相当物を冷凍庫から出した。皿の蓋を除いた。融解のために、暖めた(37℃)DMEM 6mLを各ペトリ皿に無菌的に注いだ。45秒後、全ての液体を皿から回収し、更に6mLのアリコートを2分間皿に加えた。滅菌鉗子を使用して、皮膚相当物および付着トランスウェルを新しいクラスター皿に移した。濯ぐために、DMEM 4mLを各ウェルに30分加えた。培地を2回目、更に30分間、交換した。次いで、角膜ユニットを同じクラスター皿に戻し、角膜維持培地中で37℃/10%COで24時間、分析前にインキュベートした。インキュベーション時間は、凍結細胞で通常見られる遅れについて、定常状態が再確立するのを可能にする。サンプルを、MTT検定プロトコールを使用して検定した。
【0079】
実施例7:採取マウス皮膚の凍結保存
野生型マウス、B6CB6YF1種を、ネンブタール過投与により安楽死させた。皮膚を無菌的に採取した。過剰な血管、脂肪および結合組織を皮膚から除いた。マウス皮膚を長方形1cm×2cm切片に調整した。次いで、マウス皮膚切片を100mmペトリ皿(Costar)中の75mmトランスウェル(Costar)に入れた。マウス皮膚を、100mmペトリ皿中のDMEM中の2Mグリセロール25mL中に浸すことにより浣流した。浣流中、それぞれマウス皮膚およびトランスウェルを含むペトリ皿を1時間、オービタル振盪器で、70rpmで、10%COガスチャンバー内で振盪した。非凍結保存マウス皮膚である対照を、皮膚移植前に、栄養培地中に4℃で、凍結保存および融解工程中(2日)維持した。
【0080】
マウス皮膚を浣流した後、マウス皮膚、トランスウェルおよび細胞外凍結培地含有ペトリ皿をPlanerプログラム可能冷凍庫中に、開始温度20.0℃で入れた。マウス皮膚を−10.0℃/分で−6.0℃まで冷却し、−6.0℃で20分維持し、チャンバー温度と平衡化した。20分維持後、細胞外氷を、皿の外側に、液体窒素冷却針に接触させることにより開始させた。接触部位は凍結培地のレベルより下でなければならない。全ての皮膚相当物を氷結晶で種晶添加した後、温度を更に5分間、−6.0℃に維持し、その後チャンバーを−1.0℃/分で−8.0℃まで冷却した。温度を再び−8.0℃に30分保ち、サンプル中の氷の均一分散をさせた。次いで、ユニットを−0.1℃/分で最終温度−70.0℃まで冷却させた。
【0081】
凍結保存マウス皮膚を冷凍庫から出し、皿の蓋を除いた。融解のために、暖めた(37℃)DMEM 40mLをペトリ皿に無菌的に注いだ。45秒後、全ての液体を皿から回収し、更に40mLのアリコートを2分間皿に加えた。全ての氷が融解した後、マウス皮膚をDMEM 25mLで30分間濯いだ。培地を2回目、更に30分間、交換した。
【0082】
融解した凍結保存および対照サンプルを組織学的に処理するかまたはマウスに移植した。凍結保存マウス皮膚と比較した非凍結保存マウス皮膚の光顕微鏡は、マウス皮膚の4つの基本的性質、線維芽細胞を有する皮膚、表皮の基底層、表皮の基底の上の層および表皮の角質層が、本方法で保存されていることを示した。全ての層は無傷であり、凍結保存マウス皮膚の全ての形態は、非凍結保存マウス皮膚のものと同一であった。
【0083】
実施例8:ATS SKIN2(商標)の凍結保存
SKIN2(商標)、モデルZK 1300(Advanced Tissue Science)を到着してから輸送挿入物による包装から出し、培養皿(Costar)に入れた。トランスウェル挿入物をSKIN2(商標)上に置き、皮膚構築物を浸した。SKIN2(商標)をDMEM中の2Mグリセロールに、培養皿中で1時間浸すことにより、凍結保護剤で浣流した。浣流間、構築物およびトランスウェルを含む培養皿を、1時間、オービタル振盪器で、70rpmで、10%COガスチャンバー内で振盪した。
【0084】
SKIN2(商標)を浣流した後、ユニットをプログラム可能冷凍庫中(Planar)に、開始温度20.0℃で入れた。SKIN2(商標)ユニットを−10.0℃/分で−6.0℃まで冷却し、−6.0℃で20分維持し、チャンバー温度と平衡化した。20分維持後、細胞外氷を、皿の外側に、凍結培地のレベルより下で、液体窒素冷却針に接触させることにより開始させた。全てのSKIN2(商標)ユニットを氷結晶で種晶添加した後、温度を更に5分間、−6.0℃に維持した。次いで、チャンバーを−1.0℃/分で−8.0℃まで冷却した。SKIN2(商標)ユニットを−8.0℃に30分保ち、サンプル中の氷の均一分散をさせた。次いで、SKIN2(商標)ユニットを−0.1℃/分で最終温度−70.0℃まで冷却させた。
【0085】
凍結保存SKIN2(商標)を冷凍庫から出し、皿の蓋を除き、暖めた(37℃)DMEMを各ペトリ皿に無菌的に注いだ。45秒後、全ての液体を皿から回収し、更にDMEMを、各皿に2分間に加えた。一度融解したら、SKIN2(商標)ユニットおよび付着トランスフェルを、滅菌鉗子を使用して新しい培養皿に移した。SKIN2(商標)から凍結保護剤を濯ぐために、DMEMを、SKIN2(商標)を含む各皿に30分、添加した。培地を、2回目、更に30分間、交換した。次いで、SKIN2(商標)ユニットを同じタイプの培養皿に戻し、分析前に、培養維持培地中で37℃/10%COで24時間インキュベートした。また、インキュベーション時間は、凍結細胞に通常見られる遅延が、定常状態を再確立するのを可能にする。
【0086】
凍結保存および対照構築物を、生産物で囲まれている、SKIN2(商標)モデルZK1300のためのMTT検定プロトコールに従って、また組織学的評価により検定した。凍結保存SKIN2(商標)のものと比較した非凍結保存SKIN2(商標)の光顕微鏡は、マウス皮膚の4つの基本的性質、線維芽細胞を有するコラーゲン格子、表皮の基底層、表皮の基底の上の層および表皮の角質層が、本方法で保存されていることを示した。全ての層は無傷であり、凍結保存SKIN2(商標)の全ての形態は、非凍結保存SKIN2(商標)のものと同一であった。
【0087】
実施例9:代謝性ミトコンドリア活性検定(MTT)
凍結および非凍結(対照)LSE、表皮シート、皮膚相当物および角膜相当物をMTT検定を使用して試験した。[SKIN2(商標)構築物は、輸送挿入物に囲まれて、“MTT Assay Protocol for use with Model ZK1300”に従って検定した。]構築物の細胞生存率は、MTT検定、細胞成育および生存率の測定のために開発された比色MTT変換検定を使用して測定した。本検定は、詳細は、Gay et al., "The Living Skin Equivalent as a Model In Vitro for Ranking the Toxic Potential of Dermal Irritants", Toxic. in Vitro, 6:303-315(1992)に記載されている。可溶性テトラゾリウム塩の青色フォルマザン沈殿への代謝的沈殿は、無傷ミトコンドリア機能の生存細胞の存在に依存する。本検定は、培養ヒト角化細胞を含む種々の細胞タイプの細胞毒性定量に使用されている。
【0088】
LSE、上皮シートおよび皮膚相当物を含む培養皿に、培養培地40mLを添加し、角膜相当物を含むウェルに、0.33mg/mL MTT(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)含有培養培地1.5mLを添加した。組織相当物をMTT検定培地中で3〜4時間インキュベートした。変換時間の最後に、組織相当物を8mm直径皮膚生検穿孔機を使用して生検した。次いで、穿孔生検を2〜3時間、室温で0.04N HClで酸性化したイソプロパノール0.3mLで抽出した。抽出時間の最後に、各抽出物0.2mLを96ウェルプレートのウェルに移した。吸光度を、イソプロパノール抽出培地をブランクとして、570nmでプレート読み取り器で読んだ。融解凍結保存サンプルから得たMTT値を対応する対照サンプルと比較し、対照のパーセントとして表した(図9)。
【0089】
実施例10:ラクトースデヒドロゲナーゼ検定(LDH)
LDHは生存細胞に典型的に見られる酵素である。細胞の傷害が酵素の遊離をおよび本検定で検出される酵素の対応する減少をもたらす。
LSEの融解凍結保存および対照サンプルを8mm直径生検穿孔器で穿孔した。3つのサンプルを各LSEユニットから取った。穿孔サンプルを、0.1Mトリエタノールアミン緩衝液1mL含有15mm管に入れ(氷上)、電気組織ホモジナイザーで1分間均質化した。次いで、サンプルを1000gで4.0℃で遠心した。次いで、上清を検定した。LDHカクテル試薬を以下のものを互いに混合することにより製造した:リン酸緩衝液3.00mL(0.1mol/l:pH7.0)、ピルビン酸Na塩0.1mL(2.5mg/mL)およびNADH Na塩0.05mL(10mg/mL)。サンプル上清100μLを試薬900μLに添加し、2分間反応させた。2分間にわたる吸光度の変化を記録した。凍結保存LSEユニット当たりの3つのサンプルの平均を、非凍結対照と比較した。サンプル値は対応する対照値と比較し、対照のパーセントとして表した(図9)。
【0090】
実施例11:凍結保存LSEと非凍結保存LSEの生物相同性
凍結保存および非凍結保存LSEの生物相同性を証明するために、無胸腺マウスへの移植研究を行った。
実施例1に概説の方法に従った凍結保存LSEユニットを移植1日前に融解し、24時間維持培地中で回復させた。
4つの実験を行い、その中で全66匹のB6CB6YF/J-nu種(Jackson Harbor Labs)の無胸腺マウスに凍結保存LSE(n=43)または非凍結保存(対照)LSE(n=23)を移植した。動物をネンブタールで麻酔した。2×2cmの完全な厚さの皮膚部分を、各マウスの背中から、パニキュラス・カルノーサス(panicculus carnosus)に害を与えずに切り取った。対照または凍結保存のLSE移植片を傷の上に置き、合うように切り落とした。すべての移植片を一層のワセリンに浸したガーゼ(ベンダー)で浸し、2つの粘着性包帯(ベンダー)で覆った。浸したものを移植7日後に除去した。
【0091】
移植後14日目にすべての動物を安楽死させ、写真を撮った。次いで、移植部位を組織学的分析および評価のために切除した。全体の写真および顕微鏡は、対照LSEまたは融解、凍結保存LSEの移植片統合に差がないことを示した。対照または凍結保存移植片の間で傷収縮の速度に明白な差は見られなかった。
【0092】
実施例12:凍結保存および対照マウス皮膚の同遺伝子型(syngenaic)皮膚移植
凍結保存および非凍結保存マウス皮膚の生物相同性を証明するために、同遺伝子型皮膚移植を行った。
野生型マウス、B6CB6YF1種をネンブタール過投与により安楽死させた。皮膚を無菌的に採取した。過剰な血管、脂肪および結合組織を、皮膚移植編の製造において真皮から取り除いた。マウス皮膚を実施例7に記載の方法に従って凍結保存および融解し、対照、非凍結保存マウス皮膚を、皮膚移植前に、栄養培地中で4℃で凍結保存および融解工程中、2日間維持した。
【0093】
同種の6匹のマウスが皮膚移植を受け、その中で2匹が対照、非凍結保存マウス皮膚および4匹が融解、凍結保存マウス皮膚であった。マウスをネンブタールで麻酔した。2×2cmの完全な厚さの皮膚部位を各マウスの背中から、パニキュラス・カルノーサス(panicculus carnosus)に害を与えずに切り取った。対照または凍結保存のマウス皮膚移植片を傷の上に置き、合うように切り落とした。すべての移植片を一層のワセリンに浸したガーゼで浸し、2つの粘着性包帯で覆った。浸したものを移植7日後に除去した。
【0094】
移植後30日目にすべての動物を安楽死させ、写真を撮った。次いで、移植部位を組織学的分析および評価のために切除した。全体の写真および顕微鏡は、対照LSEまたは融解、凍結保存LSEの移植片統合に差がないことを示した。対照または凍結保存移植片の間で傷収縮の速度に明白な差は見られなかった。
【0095】
前述の本発明は、理解を明確にさせるために図説および実施例により詳述しているが、当業者には、ある変化および修飾を添付の請求の範囲内でし得ることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1Aおよび1Bは蓋を示す。
【図2】図2はシールの平面図を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは蓋においたシールを示す。
【図4】図4Aおよび4Bは担体を示す。
【図5】図5Aおよび5Bはトレイを示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、組み立て品の分解図および完成図の側面図を示す。
【図7】図7は、組み立て品の精密図を示す。
【図8】図8は、完成した組み立て品の平面図を示す。
【図9】図9は、非凍結保存培養組織と比較した凍結保存培養組織の生存率のグラフを示す。MTTにより測定した凍結保存培養組織の生存率を示す。LSEは更にLDH検定で測定した。全ての培養組織は、年令適合非凍結保存対象と比較し、対象のパーセントとして示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組織を凍結保護溶液中に浸し、凍結保護溶液および浸した組織を撹拌し、組織内への凍結保護溶液の有効な浸透を達成し、組織の浣流を達成する;
(b)凍結保護溶液および浣流組織に細胞外氷を種晶添加する;
(c)工程(b)由来の組織を、少なくとも約−70℃またはそれ以下の温度までゆっくりした凍結速度で組織を凍結させることにより凍結保存状態まで冷却し、凍結保存組織を製造する;および
(d)凍結保存組織を−70℃またはそれ以下の温度で貯蔵する:
工程を含む、採取哺乳類組織または培養組織相当物を凍結保存する方法。
【請求項2】
浸漬工程(a)を、開始温度20℃で、次いで、浣流中、−10℃/分の速度で約−6℃まで冷却することにより達成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(c)において、凍結が、−1℃/分の速度で約−8℃までであり、該組織中の該凍結保護溶液の物理的および生物学的平衡化を達成するのに充分な時間維持する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(c)において、温度が該組織中の該凍結保護溶液の物理的および生物学的平衡化を達成するのに充分な時間維持される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
冷却が約−0.3℃から−0.02℃の速度で約−70℃またはそれ以下まで続けられる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
採取哺乳類組織が採取哺乳類皮膚である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
培養組織相当物が、培養上皮相当物、培養皮膚相当物および培養角膜相当物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該凍結保存状態の温度が−120℃またはそれ以下もしくは−196℃またはそれ以下である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
凍結保護溶液が、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)の主成分中の1.5Mから2.5Mグリセロールである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
更にガラス化組織の融解を含み、該組織が約1分から約2分で融解される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
側壁およびフランジに続く底表面を含むトレイ(ここで、側壁は側壁から伸び、必須の内部に伸びた支持体を有する);
本質的に管状支持体の一端に付着している平らな浸透性膜および該管状支持体の反対側にリムを含む担体(ここで、リムはトレイの内部に伸びる支持体により支持されている);
側壁およびフランジに続く平らな底表面を含む蓋(ここで、フランジはトレイのフランジと密接に接触する);および
トレイと蓋の間のシール:
を含む、採取哺乳類組織または培養組織相当物の凍結保存用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−161723(P2007−161723A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107(P2007−107)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【分割の表示】特願平8−523665の分割
【原出願日】平成8年1月30日(1996.1.30)
【出願人】(398054362)オーガノジェネシス・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】ORGANOGENESIS INC.
【Fターム(参考)】