説明

基地局装置

【課題】無線リソース管理部からスケジューラに対して必要な情報を迅速に送る。
【解決手段】 無線通信のMAC層の処理を行うMAC部30と、無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラ10と、無線リソースの管理を行う無線リソース管理部70と、を備えている。前記スケジューラ10は、前記MAC部30を介さずに、前記無線リソース管理部70から情報を取得できるように、前記無線リソース管理部70と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基地局装置は、端末装置に対して割り当てられる無線リソース(周波数や時間など)を決定するためのスケジューリングを行うスケジューラを備えている。
スケジューラは、電波状況などに応じて、各端末への無線リソースの割り当てを適切に決定することができる。
【0003】
LTE(Long Term Evolution)においては、前記スケジューラは、無線通信のMAC(Media Access Control;第2レイヤ)の機能、すなわちMACスケジューラとして構成されることになっている。
【0004】
ここで、図9は、LTEにおける基地局装置の無線通信に関する層構造を示している。図9の層構造は、無線通信に関する第1レイヤであるPHY(Physical Layer)と、その上位層としてMACと、を有している。前記スケジューラは、MACの一機能である。
【0005】
MACの上位には、RLC(Radio Link Control)/PDCP(Packet Data Convergence Protocol)が配置される。RLC(無線リンク制御)は、信号の再送機能などを有し、PDCP(パケットデータコンバージェンスプロトコル)はセキュリティ機能などを有する(非特許文献1参照)。
【0006】
さらに、RLC/PDCPの上位には、RRC(Radio Resource Control)、RRM(Radio Resource Management)、NAS(Non−Access Stratum)が配置される。
このように、LTEでは、RRC(無線リソース制御)やRRM(無線リソース管理)といった無線リソースの管理に関する機能が、基地局装置に配置されている。
【0007】
MACの上位層に含まれるRRMは、無線リソースの管理を行い、MACのスケジューラに対して、スケジューリングに必要とされる情報(スケジューリング用情報)を提供する。RRMから提供されるスケジューリング用情報としては、QoS(Quality of Service)情報などがある。
【0008】
なお、MACの下位層であるPHYは、CQI(Channel Quality Indicator)情報を取得し、そのCQI情報は、MACのスケジューラに対し、スケジューリング用情報として提供されることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】服部武、藤岡雅宣 編著、HSPA+/LTE/SAE教科書,株式会社インプレスR&D,2009年8月1日発行,pp140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さて、前記スケジューラによるスケジューリングは、高速で行うことが求められる。例えば、LTEでは、無線リソースであるリソースブロック(リソース割り当ての最小単位)の割当情報は、各無線サブフレームに格納されており、サブフレームの周期は、1msecである。
【0011】
したがって、MAC及びMAC含まれるスケジューラは、サブフレームの周期である1msec周期で動作する必要がある。つまり、毎サブフレームのスケジューリングは、1msec以内に完了することが望ましく、もし、1msec以内でスケジューリングが完了しない場合、適切なスケジューリングが行えなくなるおそれがある。
【0012】
ここで、前記スケジューラはMACに含まれているため、MACが、RRMなどの他のレイヤの機能から、スケジューリング用情報を取得し、前記スケジューラは、MACが取得したスケジューリング用情報を用いてスケジューリングを行うことになる。
【0013】
MACは、スケジューリング用情報を取り扱う処理以外にも様々な処理を行うものである。したがって、MACが、スケジューリング用情報を取り扱う処理をも担うことになると、MACの処理負荷が増大する。
MACの処理負荷が増大すると、MACが、サブフレームの周期である1msec周期で動作することが困難となる。その結果、MACに配置されたスケジューラが、適切なスケジューリングを行うのが困難となる。
【0014】
一方、MACの処理負荷増大に対処しようとすると、MACとしての機能を実現する処理プロセッサのクロック速度を上げる必要があり、基地局装置のコスト増を招く。
【0015】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、MACの負荷が増大するのを抑制しつつ、スケジューラにおける情報の取り扱いが迅速に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明は、無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、無線リソースの管理を行う無線リソース管理部と、を備え、前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部から情報を取得できるように、前記無線リソース管理部と接続されていることを特徴とする基地局装置である。
【0017】
上記本発明によれば、スケジューラは、MAC部を介さずに情報を取得できるため、MAC部を経由することによる遅延を回避しつつ、必要な情報を無線リソース管理部から取得することができる。しかも、前記情報は、MAC部を経由しないため、MAC部の負荷増大を抑制することができる。
【0018】
(2)前記スケジューラは、前記スケジューリングを行うのに必要とされるスケジューリング用情報を、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部から取得するよう構成されているのが好ましい。この場合、スケジューラは、MAC部を介さずに、無線リソース管理部からスケジューリング用情報を取得することができる。
【0019】
(3)前記無線リソース管理部は、基地局間通信インターフェースを介して、基地局装置間で情報のやり取りが行えるよう構成され、前記スケジューラは、前記無線リソース管理部が前記基地局間通信インターフェースを介して他の基地局装置から取得した情報を、前記スケジューリング用情報として取得するのが好ましい。この場合、他の基地局装置から取得した情報を用いたスケジューリングを行うことができる。
【0020】
(4)前記スケジューリング用情報には、セル間干渉を抑制するための干渉制御に用いられる干渉制御情報が含まれ、前記スケジューラは、前記干渉制御情報を用いて、セル間干渉を抑制するように前記スケジューリングを行うのが好ましい。この場合、スケジューラは、干渉を抑制するようにスケジューリングを行うことができる。
【0021】
(5)前記スケジューラは、無線リソースの割り当て結果を示す割当情報を、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部に与えるよう構成されているのが好ましい。この場合、スケジューラは、MAC部を介さずに、割当情報を迅速に無線リソース管理部に与えることができる。
【0022】
(6)前記無線リソース管理部は、前記スケジューラから取得した前記割当情報を、基地局間通信インターフェースを介して、他の基地局装置に送信するよう構成されているのが好ましい。この場合、無線リソース管理部が、MAC部を介さずに、迅速に取得した割当情報を他の基地局装置に送信することができる。したがって、他の基地局装置は、迅速に割当情報を取得することができる。
【0023】
(7)前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記MAC層の下位層であるPHY層の処理を行うPHY部に情報を与えることができるように、前記PHY部と接続されているのが好ましい。この場合、スケジューラは、MAC部を介さずに、必要な情報を迅速にPHY部へ与えることができる。
【0024】
(8)前記スケジューラは、無線リソースの割り当て結果を示す割当情報を、前記MAC部を介さずに、前記PHY部に与えるよう構成されているのが好ましい。この場合、スケジューラは、MAC部を介さずに、割当情報を迅速にPHY部に与えることができる。
【0025】
(9)前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記PHY部から情報を取得できるように、前記PHY部と接続されているのが好ましい。この場合、スケジューラは、MAC部を介さずに、必要な情報を迅速にPHY部から取得することができる。
【0026】
(10)前記PHY部は、前記スケジューリングを行うのに必要とされるスケジューリング用情報を、受信信号から生成するよう構成され、前記スケジューラは、前記スケジューリング用情報を、前記MAC部を介さずに、前記PHY部から取得するよう構成されているのが好ましい。この場合、スケジューラは、PHY部が生成したスケジューリング情報を迅速にPHY部から取得することができる。
【0027】
(11)他の観点からみた本発明は、無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、無線リソースの管理を行う無線リソース管理部と、を備え、前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部に情報を与えることができるように、前記無線リソース管理部と接続されていることを特徴とする基地局装置である。
上記本発明によれば、スケジューラは、MAC部を介さずに、必要な情報を迅速に無線リソース管理部に与えることができる。
【0028】
(12)他の観点からみた本発明は、無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、無線通信のPHY層の処理を行うPHY部と、無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、を備え、前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記PHY部に情報を与えることができるように、前記PHY部と接続されていることを特徴とする基地局装置である。
上記本発明によれば、スケジューラは、MAC部を介さずに、必要な情報を迅速にPHY部に与えることができる。
【0029】
(13)他の観点からみた本発明は、無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、無線通信のPHY層の処理を行うPHY部と、無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、を備え、前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記PHY部から情報を取得できるように、前記PHY部と接続されていることを特徴とする基地局装置である。
上記本発明によれば、スケジューラは、MAC部を介さずに、必要な情報を迅速にPHY部から取得することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、MACへの負荷が増大するのを抑制しつつ、スケジューラにおける情報の取り扱いを迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る基地局装置を備えた無線通信システムの構成を示す概略図である。
【図2】LTEのDLフレーム構造を示す概略図である。
【図3】基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図4】基地局装置における情報の流れを説明する図である。
【図5】MACスケジューラのスケジューラ本体部を示す図である。
【図6】データ情報スケジューラを示す図である。
【図7】VoIPスケジューラを示す図である。
【図8】電力割り当て例を示す図である。
【図9】基地局装置の層構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基地局装置を備えた無線通信システムの構成を示している。本実施形態の無線通信システムは、例えば、LTE(Long Term Evolution)が適用される携帯電話用のシステムであり、各基地局装置と、端末装置との間において、LTEに準拠した通信が行われる。ただし、通信方式は、LTEに限られるものではない。
【0033】
この無線通信システムは、複数の基地局装置1を備えている。端末装置2(移動端末;Mobile Station)は、いずれかの基地局装置1に対して無線接続して、通信を行うことができる。
【0034】
前記無線通信システムが備える基地局装置1としては、例えば数キロメートルの大きさの通信エリア(マクロセル)MCを形成するマクロ基地局装置(Macro Base Station)1aのほか、マクロセルMC内などに設置され数十メートル程度の比較的小さなフェムトセルFCを形成する複数のフェムト基地局装置(Femto Base Station)1bが設けられている。
【0035】
マクロ基地局装置(以下、「マクロBS」ともいう。)1aは、自己のマクロセルMC内にある端末装置2との間で無線通信を行うことができる。
また、フェムト基地局装置(以下、「フェムトBS」ともいう)1bは、例えば、屋内等、マクロBS1aの無線波を受信し難い場所等に配置され、上記フェムトセルFCを形成する。
【0036】
フェムトBS1bは、自己が形成するフェムトセルFC内にある端末装置(以下、「MS」ともいう)2との間で無線通信が可能である。本システムでは、マクロBS1aの無線波が受信し難い場所等においても、その場所に比較的小さいフェムトセルFCを形成するフェムトBS1bを設置することで、MS2に対して十分なスループットでのサービスの提供を可能にする。
なお、以下の説明では、フェムトBS1bに接続するMS2をフェムトMS2bともいい、マクロBS1aに接続するMS2をマクロMS2aともいう。
【0037】
複数の基地局装置1a,1b,1bは、X2インターフェースと呼ばれる基地局間通信インターフェースによって、情報交換が可能となっている。この基地局間通信インターフェースは、有線ネットワークによって構成されており、後述のスケジューリング用情報を一の基地局装置から他の基地局装置へ送信するため等に用いられる。
【0038】
LTEでは、周波数分割複信(FDD)方式が採用されており、上り信号(端末装置から基地局装置への送信信号)と、下り信号(基地局装置から端末装置への送信信号)との間で、互いに異なる使用周波数を割り当てることで、上り通信と下り通信とを同時に行うことができる。
【0039】
複数の異なるセルであっても、同じ周波数を使って通信することがあるため、複数のセル間(特にマクロセルMCとフェムトセルFCとの間)では、セル間干渉が生じることがある。セル間干渉とは、ある基地局装置からの送信信号が、他の基地局装置に接続する端末装置への干渉信号となったり、ある基地局装置に接続する端末装置からの送信信号が他の基地局装置への干渉信号となったりすることである。
【0040】
このようなセル間干渉は、比較的大きなマクロセルMC内に、数十メートル程度の比較的小さなフェムトセルFCを形成するフェムトBS1bを設置した場合に、特に生じやすい。これは、マクロセルMCとフェムトセルFCとが重複して位置するため、マクロセルMCとフェムトセルFCとの間で相互に信号が届きやすい状態となっているからである。
【0041】
前記セル間干渉の抑制のため、自セルでは、他セルでは使用されていない周波数を使用したり、自セルの基地局装置又は端末装置から送信される信号の電力(送信電力)の大きさ制限して、他セルへ信号が届きにくくなるようにしたりすることが考えられる。後述のMACスケジューラでは、前記セル間干渉の抑制をも図るように、周波数の割り当てを行う。このMACスケジューラによるスケジューリング機能の詳細は後述する。
【0042】
図2は、LTEの下りリンクの無線フレーム(DLフレーム))の構造を示している。1つのDLフレームは、10個のサブフレームを時間軸方向に並べて構成されている(なお、図2は、1つのDLフレームの一部を示している)。1個のサブフレームは、時間軸方向に14OFDMシンボル分の長さ(=1msec)を有している。
【0043】
各サブフレームは、その先頭に、制御情報(Control Information)が格納される制御領域を有し、その後に、ユーザデータが格納されるPDSCH(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)が確保される。
【0044】
前記制御領域には、下り及び上りリンクの割当情報等を含む下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)が確保される。上記PDCCHは、前記割当情報のほか、上り送信電力制限値の情報や、下りのCQI(Channel Quality Indicator)についての報告の指示等に関する情報を含んでいる。なお、PDCCHの大きさは、制御情報の大きさに応じて変化する。
【0045】
なお、制御領域には、PDCCHのほか、PDCCHに関する情報を通知するための制御チャネル構成指示チャネル(PCFICH:Physical Control Format Indicator Channel)、PUSCHに対するハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)の受信成功通知(ACK:Acknowledgement)、受信失敗通知(NACK:Negative Acknowledgement)を送信するためのハイブリッドARQ指示チャネル(PHICH:Physical Hybrid−ARQ Indicator Channel)も割り当てられる。
【0046】
ユーザデータ等が格納されるPDSCHは、複数の端末装置で共有して用いられるエリアであり、ユーザデータの他、各端末装置個別の制御情報等も格納される。
このPDSCHは、データ伝送の上での基本単位領域(リソース割り当ての最小単位)であるリソースブロック(RB:Resource Block)を複数有して構成されている。リソースブロックは、周波数軸方向に12サブキャリア、時間軸方向に7OFDMシンボル分の大きさを有している。
【0047】
DLフレームの周波数帯域幅が10MHzに設定されている場合、601個のサブキャリアが配列される。したがって、1つのサブフレーム中に、リソースブロックは、周波数軸方向に50個配置されることになり、1つのサブフレーム中における時間軸方向のリソースブロックの数は2個となる。
【0048】
基地局装置1は、無線リソースであるリソースブロックの端末装置への割り当て及びリソースブロック毎の送信電力値を決定する電力割り当てスケジューリング機能を有している。また、LTEの上りリンクの無線フレーム(ULフレーム))も、DLフレームと同様に、複数のリソースブロックを有しており、DLフレームのリソースブロックの端末装置への割り当ても、基地局装置1によって決定される。
【0049】
基地局装置1が決定した下り及び上りのリソースブロック割り当ては、割当情報としてPDCCHに格納され、基地局装置1から端末装置2へ送信される。基地局装置1及び端末装置2は、決定された割り当て情報に従って、リソースブロックを使用して通信を行う。
【0050】
図3は、基地局装置1の構成を示している。この基地局装置の構成は、フェムトBS1bのための構成として好適であるが、マクロBS1aに適用することもできる。
図3に示すように、基地局装置1は、無線通信のMAC層に関する処理を行うMAC部30と、MAC層の下位層である物理層(PHY層)に関する処理を行うPHY部20と、を有している。
【0051】
本実施形態に基地局装置1は、MAC部30とは別に、独立したMACスケジューラ10を備えている。このMACスケジューラ10は、スケジューリング用情報を用いて、複数のリソースブロックのうち、どのリソースブロックをどの端末に割り当てるかを決定するとともに、各リソースブロックについての送信電力値を決定する。
【0052】
このMACスケジューラ10は、MAC部30と接続されており、MAC部30との間で必要な情報のやり取りが行える。
例えば、MACスケジューラ10は、MAC部30から、Common CHとDedicated CHのBuffer Occupancy、及び、ULサブフレームのControl Element、を受信する。
また、MACスケジューラ10は、MAC部30に対して、スケジューリング済みの端末装置の情報を送信する。
【0053】
MACスケジューラ10は、MAC部30を介さずに、PHY部20との間での情報のやり取りが行えるように接続されている。
例えば、MACスケジューラ10は、TTI indication、RA(Random Access) Request Indication、 HARQ feedback Indication、SR(Scheduling Request) Indication、 DL CQI Indication、 UL CQI Indication、及び、Timing Advance Indication、をPHY部20から受信する。
【0054】
また、MACスケジューラ10は、次のDLサブフレームのための制御情報(PDCCH,PCFICH,PHICH)、及び、次のULサブフレームのための受信要求、をPHY部20に対して送信する際に、MAC部30を介さずに、直接、PHY部20に送信する。
【0055】
このように、MACスケジューラ10は、MAC部30と情報交換可能に接続されているほか、MAC部30を介さずにPHY部20とも情報交換可能に接続されている。
MAC部30を介さずに、MACスケジューラ10とPHY部20との間で情報をやり取りすると、MAC部30を経由することによる遅延がなくなり、迅速にやり取りを行うことができる。また、MAC部30を経由する情報量が低下することにより、MAC部30の処理負荷を軽減できる。
【0056】
MAC部30の上位には、RLC(Radio Link Control)40、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)50、RRC(Radio Resource Control)60、及び、RRM(Radio Resource Management)70が配置されている。
【0057】
RRM(無線リソース管理部)70は、PHY制御71、C−PLANE制御72、及び、U−PLANE制御73などの機能を有している。
【0058】
また、RRM(無線リソース管理部)70は、MACスケジューラ10に与えるスケジューリング用情報(Schedule Information)を生成・管理するスケジュール情報管理部74を備えている。このスケジュール情報管理部74は、スケジューリングに必要とされるスケューリング用情報のうち、X2情報、QoS情報、CQI情報の取得、生成、管理、及び送信を行う。
さらに、RRM70は、他の基地局装置との基地局間通信インターフェースであるX2インターフェース75を介して、他の基地局装置と通信可能になっている。
【0059】
前記MACスケジューラ10は、MAC部30を介さずに、RRM70(のスケジュール情報管理部74)との間で情報のやり取りが行えるように接続されている。
例えば、MACスケジューラ10は、RRM70から、Cell Config情報、UE(User Equipment;端末装置) config情報、及び、LCH(Logical Channel) config情報、を受信する。
【0060】
前記Cell Config情報は、セルクリエイト時に、MACスケジューラ10がRRM70から受信するものである。
前記Cell Config情報は、Bandwidth情報、UL Subband情報、RA config、SRS(Sounding Reference Signal) config、及び、System Information Configなどの情報を含んでいる。
【0061】
前記UE config情報は、端末装置2のRRCコネクション確立時に、MACスケジューラ10がRRM70から受信するものである。
前記UE config情報は、RNTI(Radio Network Temporary Identifier)、DRX(Discontinuous Reception) config、TimeAlignmentTimer、measurement Gap Pattern、Semi Persistent Scheduling Config、SR config、CQI config、及び、HARQ configなどの情報を含んでいる。
【0062】
前記LCH config情報は、端末装置の無線ベアラ(Radio Beare)確立時に、MACスケジューラ10がRRM70から受信するものである。
前記LCH config情報は、Logical CH Group Config、及び、QoS(Quality of Service)情報などの情報を含んでいる。
【0063】
前記QoS情報には、QCI(QoS Class Indicator)、GBR(Guaranteed bit rate)、及び、MBR(Maximum Bit Rate)が含まれる。
【0064】
なお、MACスケジューラ10がRRM70から受信する上記情報について、必要であれば、3GPP TS36.331 v8.50 6.3.2章“Radio Resource Control information element”を参照のこと。
【0065】
また、MACスケジューラ10は、割り当て結果を示す情報を、MAC部30を介さずに、直接、RRM70に送信することができる。
【0066】
このように、MACスケジューラ10は、MAC部30を介さずに、RRM(無線リソース管理部)70との間で情報交換可能に接続されている。
MAC部30を介さずに、MACスケジューラ10とRRM70との間で情報をやり取りすると、MAC部30を経由することによる遅延がなくなり、迅速にやり取りを行うことができる。また、MAC部30を経由する情報量が低下することにより、MAC部30の処理負荷を軽減できる。
【0067】
つまり、図4の矢印Aで示すように、MAC部30を介して、MACスケジューラ10とRRM70との間で情報(スケジューリング用情報)のやり取りを行う場合、やり取りされる情報は、MAC部30及びその他の機能ブロックを通過するために時間を要する。また、情報を通過させる処理のため、MAC部30等への処理負荷が増加する。
【0068】
これに対し、図4の矢印Bで示すように、MAC部30を介さずに、MACスケジューラ10とRRM70との間で、直接、情報(スケジューリング用情報)のやり取りを行う場合、迅速に行え、しかもMAC部30の処理負荷を軽減できる。この結果、MAC部30を構成する処理プロセッサは比較的低速でもよく、コスト低減を図ることができる。
【0069】
しかも、図4の構成において、MACスケジューラ10とRRM70との間でスケジューリング用情報(Schedule Information)を、直接、やり取りしない場合には、スケジューリング用情報を、RRM70とMAC部30の両方に持つ必要がある。この場合、RRM70及びMAC部30それぞれにあるスケジューリング用情報の排他制御が必要となり、排他制御に関するオーバヘッドが生じる。
そのため、MAC部30を構成する処理プロセッサの高速化が必要となるが、MACスケジューラ10とRRM70との間で直接やり取りすることで、これを回避することができる。
【0070】
前記MACスケジューラ10は、複数のリソースブロックのうち、どのリソースブロックをどの端末に割り当てるかを決定するとともに、各リソースブロックについての送信電力値を決定するスケジューラ本体部11を有している。
このスケジューラ本体部11は、所定のスケジューリングアルゴリズムに従って、スケジューリングを行うよう構成されている。
【0071】
図5に示すように、スケジューラ本体部11には、スケジューリング用情報として、端末別優先度α、端末別規定スループットβ、CQI情報γkn、電力制限情報Pが入力される。
そして、スケジューラ本体部11は、スケジューリングの結果として、PDCCHのシンボル数、各端末装置へのリソースブロック割り当て情報S、及び各リソースブロックの送信電力値pknを出力する。
【0072】
なお、kは、端末装置(ユーザ)の番号であり、k=1〜K(Kは自セル内の端末装置の数)である。Sは、k番目の端末装置に割り当てられるリソースブロックの集合を表す。また、nは、リソースブロックの番号であり、n=1〜N(Nは全リソースブロック数)である。pknは、k番目の端末装置に対し割り当てられたリソースブロックのうち、n番目のリソースブロックの送信電力値を示している。
【0073】
スケジューラ本体部11から出力されたスケジューリングの結果(PDCCHのシンボル数、S、pkn)は、適応変調制御部12に出力される。
スケジューラ本体部11からS及びpknを受け取った適応変調制御部12は、それらの情報S及びpknに基づいて、各端末装置に対し、変調方式(符号化率を含む)を適応的に決定する。
【0074】
MACスケジューラ10は、スケジューラ本体部11によって決定された割り当て及び送信電力、並びに適応変調制御部12によって決定された変調方式を示す情報を、MAC部30を介さずに、PHY部20に対して送信する。
【0075】
また、PHY部20には、MAC部30のデータバッファ31に蓄積されたデータが、変調等のために与えられる。データバッファ31は、上位層から送信すべきデータを受け取って蓄え、リソースブロックの割り当て結果に応じて、必要なデータを、PHY部20に対して送出する。
【0076】
データバッファ31からPHY部20へのデータ送出タイミングの制御のため、MACスケジューラ10からMAC部30に対して、スケジューリング結果として、リソースブロックが割り当てられた端末装置の情報が与えられる。MAC部30では、データを送信すべき端末装置に、リソースブロックが割り当てられたことを把握すると、そのデータをデータバッファ31からPHY部20に対して送出する。
【0077】
PHY部20は、MAC部30のデータバッファ31から与えられたデータに対して、MACスケジューラ10の割り当て結果等を示す情報に従って、リソースブロックの割り当て、送信電力の調整、データの変調を実際に行う。
【0078】
このように、MAC部30では、MACスケジューラ10におけるスケジューリング結果に基づいて、データバッファ31からデータを送出するだけでよく、スケジューリング自体を行う必要がないので、処理負荷が軽減されている。
しかも、スケジューラ本体部11によって決定された割り当て及び送信電力、並びに適応変調制御部12によって決定された変調方式を示す情報は、MAC部30を介さずに、PHY部20に与えられるため、この点からも、MAC部30の処理負荷が軽減されている。
【0079】
さらに、スケジューラ本体部11によって決定された割当情報S及び送信電力pknなどのスケジューリング結果は、MACスケジューラ10から、MAC部30を介さずに、RRM70に与えられる。
RRM70が受け取った前記スケジューリング結果S,pkn及び他の基地局装置における干渉抑制制御に利用できるその他の情報は、基地局間通信インターフェースであるX2インターフェースを介して、他の基地局装置1に送信される。
【0080】
スケジューリング結果S,pkn及び前記その他の情報を、X2インターフェースを介して受信した他の基地局装置は、受信した情報を用いて、使用してもセル間干渉が生じないリソースブロックを使用したり、使用するとセル間干渉を生じるおそれのあるリソースブロックの送信電力を抑えたりするといった、干渉抑制制御を行うことができる。
【0081】
前記他の基地局装置が、干渉抑制制御を適切に行うには、スケジューリング結果S,pkn及び前記その他の情報は、可能な限り迅速に送られるのが好ましい。本実施形態では、スケジューリング結果S,pknは、MACスケジューラ10から、MAC部30を介さずに、直接RRM70に与えられるため、MAC部30を経由する場合によりも迅速に情報を他の基地局装置に送信することができる。
【0082】
さて、前記スケジューラ本体部11は、端末装置毎の優先度α(k:1〜K)、端末装置毎の規定スループットβ(k:1〜K)、各端末装置についてのリソースブロック毎の通信品質値γkn(k:1〜K,n:1〜N)といった情報(スケジューリング用情報)を用いて、リソースブロックの最適な割り当てを決定する。
【0083】
スケジューラ本体部11は、端末装置毎の優先度αを、MACスケジューラ10に設けられたQoS(Quality of Service)制御部14から取得する。QoS制御部14は、上位層から取得したアプリケーション情報や、MAC部30のデータバッファ31から取得したデータ遅延情報に基づいて、端末装置毎の優先度αを生成する。この優先度αは、端末装置に割り当てられるリソースブロックの数を左右するものである。つまり、スケジューラ本体部11は、優先度αの値が大きい端末装置には、より多くのリソースブロックを割り当て、優先度αの値が小さい端末装置には、より少ないリソースブロックを割り当てることになる。
【0084】
スケジューラ本体部11は、端末装置毎の規定スループットβも、QoS制御部14から取得する。規定スループットβは、端末装置別に要求されるスループットの規定値であり、QoS制御部14は、上位層から取得したアプリケーション情報や、データバッファ31から取得したデータ遅延情報に基づいて、規定スループットβを生成する。
【0085】
Qos制御部14は、優先度αや規定スループットβを生成するための情報(かかる情報も「スケジューリング用情報」である)を、主に、MAC部30から取得する。
【0086】
スケジューラ本体部11は、各端末装置についてのリソースブロック毎の通信品質値γknを、MACスケジューラ10に設けられたCQI情報制御部15から取得する。ここでの通信品質値γknは、CQIである。CQI情報制御部15は、上り及び下りリンクにおける各リソースブロックの通信品質を示すCQI(Channel Quality Indicator)情報に基づいて、通信品質値γknを生成する。なお、上りリンクのCQIは基地局装置1自身が測定することで取得でき、下りリンクのCQIは端末装置が測定したものを基地局装置が受け取ることで取得できる。なお、CQIは、例えば、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)に基づいて生成することができる。
【0087】
通信品質が良好であれば、通信速度を高くすることができ、同じ数のリソースブロックを割り当てた場合であっても、通信品質が悪い場合に比べて、多くのデータを送信することができる。
【0088】
CQI情報制御部は、通信品質値γknを生成するための情報 (かかる情報も「スケジューリング用情報」である)として自セルの上り及び下りのCQIを、MAC部30を介さずに、PHY部20から取得する。
【0089】
スケジューラ本体部11は、リソースブロック毎の送信電力制限値(電力制限情報)P(n:1〜N)を、MACスケジューラ10に設けられた電力制限制御部16から取得する。ここでの送信電力制限値Pは、基地局装置自身又は端末装置から送信される信号の送信電力の上限値を、リソースブロック毎に規定するものである(下限値も規定してもよい)。
【0090】
送信電力の制限は、他セル(の基地局装置又は端末装置)に対して干渉を与えるのを防止するためのものである。つまり、他セルにおいて使用されているリソースブロックを、自セルにおいても使用すると、自セルの基地局装置又は端末装置から送信された信号が、他セルにおいて干渉信号となるおそれがあるため、送信電力は低く抑えるべきである。一方、他セルにおいて使用されていないリソースブロックについては、送信電力を大きくしてスループットを高くすることが可能である。
【0091】
このため、他セルにおけるリソースブロックの使用状況に応じて、送信電力を異ならせることが、干渉を防止しつつ、効率的な通信を行う上で望まれる。もっとも、各リソースブロックにおける送信電力値pknは、干渉抑制の観点だけで決定されるものではない。そこで、本実施形態の電力制限制御部16では、各リソースブロックの実際の送信電力値pknを決定するのではなく、他セルへ干渉を与えない大きさに実際の送信電力値pknが抑えられるように、送信電力値の上限値(送信電力制限値)Pをリソースブロック毎に設定する。
【0092】
そして、スケジューラ本体部11では、送信電力制限値(上限値)Pの範囲内で、各リソースブロックの送信電力値pknを調整し、リソースブロック毎の送信電力値pknの調整を含めたリソースブロック割り当てを行う。
【0093】
電力制限制御部16は、リソースブロック毎の送信電力制限値(電力制限情報)Pを生成するため、CQI情報制御部15、X2情報制御部17、PHY測定情報制御部18などから、リソースブロック毎の干渉制御情報(干渉電力情報)を取得し、取得した干渉制御情報に基づいて、リソースブロック毎の送信電力制限値Pを決定する。
【0094】
本実施形態において前記干渉制御情報には、他セルから干渉を受けた場合の被干渉電力情報と、他セルに対して干渉を与えた場合の与干渉電力情報とがある。いずれの干渉電力情報も、リソースブロック毎の送信電力制限値Pを決定するために利用可能である。
【0095】
他セルからの被干渉がある場合、他セルからの信号が届きやすい状態にあることになる。したがって、被干渉があるリソースブロックについては、自セルにおいて使用した場合、他セルに対して干渉を与えるおそれがある。
このため、他セル(マクロセル)の通信を阻害しない観点からは、自セルにおいては、そのリソースブロックの送信電力は小さくすべきである。
【0096】
また、他セルへの与干渉があるリソースブロックについても、他セル(マクロセル)の通信を阻害しない観点からは、自セルにおいては、そのリソースブロックの送信電力は小さくすべきである。
【0097】
基地局装置1のPHY部20は、自セルにおける通信を休止して、他セル(マクロセル)の基地局装置1a−端末装置2a間の通信を傍受(sniffing)し、他セルからの信号のリソースブロック毎の受信電力を測定するメジャメント部21を備えている。他セルからの信号の受信電力の大きさは、被干渉電力の大きさを示している。
そこで、前記PHY測定情報制御部18では、MAC部30を介さずに、前記メジャメント部21から他セルからの信号のリソースブロック毎の受信電力を取得して、リソースブロック毎の被干渉電力情報を生成し、その被干渉電力情報(スケジューリング用情報)を、電力制限制御部16に与える。
【0098】
また、他セルからの被干渉電力は、自セルの端末装置1bによって測定させ、それを基地局装置1がCQIレポートとして受け取っても良い。前記CQI情報制御部15は、端末装置1bから受け取ったCQIレポートを、MAC部30を介さずに、PHY部20から取得して、リソースブロック毎の被干渉電力情報を生成し、その被干渉電力情報を、電力制限制御部16に与える。
【0099】
さらに、本実施形態のMACスケジューラ10は、他セルからの被干渉電力情報だけではなく、他セル(マクロセル)において測定された被干渉電力情報(スケジューリング用情報)を、当該他セルを形成する他の基地局装置(マクロBS)から、X2インターフェースを介して取得する。
【0100】
他セル(マクロセル)において測定された被干渉電力は、自セル(フェムトセル)からの与干渉電力の大きさを示している。
そこで、RRM70のスケジュール情報管理部74は、X2インターフェースを介して、他の基地局装置から被干渉電力情報を取得し、MAC部30を介さずに、MACスケジューラ10のX2情報制御部17に送信する。
X2情報制御部17は、他セル(マクロセル)において測定された被干渉電力の大きさに基づいて、他の基地局装置(マクロBS)への与干渉電力の大きさを示す与干渉電力情報を生成し、その与干渉電力情報(スケジューリング用情報)を電力制限制御部16に与える。
【0101】
なお、CQI情報制御部15及びPHY測定情報制御部18は、自セルの被干渉電力情報を、MAC部30を介さずに、RRM70(のスケジュール情報管理部74)に与える。RRM70は、自セルの被干渉電力情報を、X2インターフェースを介して、他の基地局装置へ送信する。当該他の基地局装置では、受信した前記被干渉情報を、自セルへの与干渉電力情報として用いてスケジューリングを行うことができる。
【0102】
さて、前記電力制限制御部16では、各リソースブロックについて、被干渉電力情報及び/又は与干渉電力情報が示す干渉電力が大きいほど、送信電力制限値(上限値)Pを低く抑え、前記干渉電力が小さいほど、送信電力制限値(上限値)Pが大きくなるように、リソースブロック毎の送信電力制限値(上限値)Pを決定する。送信電力制限値Pは、干渉電力情報に基づき、自セルの送信電力が、他セルに干渉を与えない大きさに収まるように決定される。
【0103】
図5に示すように本実施形態のスケジューラ本体部11は、制御領域スケジューラ11a、VoIPスケジューラ(音声・動画系スケジューラ)11b、HRQスケジューラ(再送用スケジューラ)11c、及びデータ情報スケジューラ11dを備えている。
【0104】
制御領域スケジューラ11aは、各端末装置に対して共通して与えられる制御情報を格納する制御領域を確保するためのものである。
VoIPスケジューラ11b、HRQスケジューラ(再送用スケジューラ)11c、及びデータ情報スケジューラ11dは、いずれも各端末装置宛のユーザデータを格納する領域を確保して、リソースブロック割り当てを行うものである。
【0105】
VoIPスケジューラ11b、HRQスケジューラ(再送用スケジューラ)11c、及びデータ情報スケジューラ11dは、いずれも、送信電力制限値Pを用いて、スケジューリングを行う。一方、制御領域スケジューラ11aは送信電力制限値Pを用いない。
【0106】
図6は、前記データ情報スケジューラ11dを示している。このデータ情報スケジューラ11dは、Qos情報に応じた重み付けスループットの和を最大化(スループット最適化)するように、各端末装置へのリソースブロック割り当てと、リソースブロック毎の送信電力を決定する。
【0107】
より具体的には、データ情報スケジューラ11dは、図6中に示す評価関数の値(重み付けスループットの和)が、図6中に示す制約条件1〜3の下で、最大化するように、各端末装置へのリソースブロック割り当てSと、リソースブロック毎の送信電力値pknを調整する。スケジューラ11dは、図6の評価関数を、凸線形計画問題として解くことができる。そして、評価関数が最大化したときのS及びpknが、スケジューラ11dから出力される。
【0108】
図6中の制約条件1は、リソースブロック毎の送信電力pknの総和が、規定の最大総電力Ptotを超えないようにするためのものである。規定の最大総電力Ptotは、PHY部20において実際に出力可能な電力の最大値であり、これを超える電力での送信は不可能である。
【0109】
図6中の制約条件2は、ある端末装置(ユーザ)kに対してあるリソースブロックnが割り当てられる場合において、そのリソースブロックnの送信電力値pknが、当該リソースブロックnの送信電力制限値(上限値)Pで規定される範囲に収まるようにするためのものである。送信電力値pknが送信電力制限値(上限値)Pを超えないようにすることで、他セルへの干渉を防止できる適切な送信電力値pknをリソースブロック毎に設定することができる。
【0110】
図6中の制約条件3は、ある端末装置(ユーザ)kが、あるリソースブロックnを使用している場合、他の端末装置(ユーザ)k(≠k)に対しては、そのリソースブロックnを割り当てないためのものである。つまり、ある端末装置(ユーザ)kが、あるリソースブロックnを使用している場合、そのリソースブロックの送信電力は0よりも大きくなり、そのときには、他の端末装置(ユーザ)k(≠k)に対しては、そのリソースブロックnの送信電力pknとしては、「0」がセットされる。つまり、そのリソースブロックnは、他の端末装置(ユーザ)k(≠k)に対して割り当てられない。
【0111】
図6の評価関数によれば、各端末装置には、通信品質値(CQI)の良好なリソースブロックが割り当てられるため、他セルからの被干渉を回避することができる。また、図6中の制約条件2によって、リソースブロック単位における送信電力制限が成されているため、他セルへの与干渉を防止することができる。
【0112】
図7は、前記VoIPスケジューラ11bを示している。なお、HARQスケジューラ11cも同様の構成である。
VoIPスケジューラ11bは、端末装置(ユーザ)kのスループット(その端末装置に割り当てられる各リソースブロックにおけるスループットの和)が、規定スループットβとなる(又はβ以上となる)もののうち、送信電力値pknが最小化(電力最適化)するように、各端末装置へのリソースブロック割り当てと、リソースブロック毎の送信電力を決定する。
【0113】
より具体的には、VoIPスケジューラ11bは、図7中に示す評価関数の値(リソースブロック毎の送信電力pknの総和)が、図7中に示す制約条件1〜3の下で、最小化するように、各端末装置へのリソースブロック割り当てSと、リソースブロック毎の送信電力値pknを調整する。スケジューラ11bは、図7の評価関数を、凸非線形計画問題として解くことができる。そして、評価関数が最小化したときのS及びpknが、スケジューラ11bから出力される。
【0114】
図7中の制約条件1は、端末装置(ユーザ)kのスループット(その端末装置に割り当てられる各リソースブロックにおけるスループットの和)が、端末装置k毎の規定スループットβとなる(又はβ以上となる)ようにするものである。VoIPデータでは、スループットを可能な限り大きくすることよりも、円滑な通話のための最低限のスループット(規定スループット)が常に確保されることが重視される。この場合、スループット最大化よりも、規定スループットβを確保した上で、送信電力を小さくするのが効率的となる。
【0115】
図7中の制約条件2は、図6中の制約条件2と同じものである。この制約条件2によって、送信電力値pknが送信電力制限値(上限値)Pを超えなくなり、他セルへの干渉を防止できる適切な送信電力値pknをリソースブロック毎に設定することができる。
また、図7中の制約条件3も、図6中の制約条件3と同じものである。
【0116】
VoIPスケジューラ11bによって決定された割り当ては、Semi−Persistent Schedulingにより、数フレーム分にわたって有効とされる。VoIPスケジューラ11bによってVoIPデータ用に確保されたリソースブロック以外の残りのリソースブロックが、他のユーザデータのために割り振られる。
【0117】
図5に戻り、スケジューラ11に含まれる各スケジューラ11a〜11dについて説明する。
まず、制御領域スケジューラ11aが、サブフレーム中に、全端末装置に対して共通して与えられる制御情報が格納される制御領域(PDCCH)を確保する。そして、制御領域スケジューラ11aは、制御領域(PDCCH)として確保されたシンボル数を出力する。制御領域スケジューラ11aによる制御領域の確保は、数十msec周期(数十サブフレーム周期)で行われる。つまり、一旦確保された制御領域は、複数のサブフレームにわたって固定されたものとなる。
また、制御領域スケジューラ11aは、無線フレームの制御領域以外の他の領域を示す情報を、他のスケジューラ11b〜11dが使用可能な領域の情報として、VoIPスケジューラ11bに通知する。
【0118】
VoIPスケジューラ11bは、通知された使用可能領域情報に基づいて、制御領域として確保されずに残った領域を認識し、その残った領域に含まれるリソースブロックの幾つかを、VoIPデータを格納するVoIP領域として確保する。VoIPスケジューラ11bは、先に説明した評価関数を用いて、VoIP領域として確保されるリソースブロック(及びその送信電力)を決定する。そして、VoIPスケジューラ11bは、VoIPデータのためのS,pknの情報を出力する。
【0119】
VoIPスケジューラ11bによるVoIP領域の確保も、数十msec周期(数十サブフレーム周期)で行われる。つまり、一旦確保されたVoIP領域は、複数のサブフレームにわたって固定されたものとなり、安定した通話が可能となる。
しかも、VoIPデータを確保する領域は、他のユーザデータに先立って、優先的に確保されるため、この点からも安定した通話が可能である。
【0120】
VoIPスケジューラ11bは、無線フレームにおいて、制御領域及びVoIP領域のいずれとしても確保されずに残った他の領域を示す情報を、他のスケジューラ11c,11dが使用可能な領域の情報として、HARQスケジューラ11cに通知する。
【0121】
HARQスケジューラ(再送用スケジューラ)11cは、通知された使用可能領域情報に基づいて、制御領域及びVoIP領域のいずれとしても確保されずに残った領域を認識し、その残った領域に含まれるリソースブロックの幾つかを、再送用のデータを格納する再送用データ領域として確保する。HARQスケジューラ11cも、VoIPスケジューラ11bと同様に、HARQデータ領域として確保されるリソースブロック(及びその送信電力)を決定する。そして、HARQスケジューラ11cは、HARQデータのためのS,pknの情報を出力する。
【0122】
HARQスケジューラ11cによるHARQデータ領域の確保は、1msec周期(1サブフレーム周期)で行われる。再送用データは、送信の緊急性が高いため、他のユーザデータよりも優先して割り当てを決定することで、再送用データの確実な送信が可能となる。
【0123】
HARQスケジューラ11cは、無線フレームにおいて、制御領域、VoIP領域、及び再送用データ領域のいずれとしても確保されずに残った他の領域を示す情報を、データ情報スケジューラ11dが使用可能な領域の情報として、データ情報スケジューラ11dに通知する。
【0124】
データ情報スケジューラ11dは、通知された使用可能領域情報に基づいて、制御領域、VoIP領域、再送用データ領域のいずれとしても確保されずに残った領域を認識し、その残った領域に含まれるリソースブロックの幾つかを、VoIP及び再送用データ以外のユーザデータが格納される一般データ領域として確保する。
データ情報スケジューラ11dは、先に説明した評価関数を用いて、一般データ領域として確保されるリソースブロック(及びその送信電力)を決定する。そして、データ情報スケジューラ11dは、一般データのためのS,pknの情報を出力する。
なお、データ情報スケジューラ11dによる一般データ領域の確保も、1msec周期(1サブフレーム周期)で行われる。
【0125】
以上のように、制御領域以外の領域のリソースブロックを、VoIPデータ、再送用データ、一般データの順で、割り当てることで、データの優先度に応じた割り当てが可能である。
なお、本実施形態のスケジューラ11では、VoIPデータ以外のユーザデータについての割り当て制御及び電力制御は、1msec毎(1サブフレーム)毎に行われるが、数サブフレーム毎に行っても良い。
【0126】
前述のようにして得られたスケジューリング結果(S,pkn)等は、MAC部30を介さずにPHY部20に与えられるほか、MAC部30を介さずにRRM70に与えられ、X2インターフェースを介して、他の基地局装置に送信される。
【0127】
図8は、前述のような機能を有する基地局装置をフェムトBS1bとして採用し、隣接するマクロセルへの干渉を防止した場合の電力割り当て例を示している。図8におけるマクロセルのユーザ(端末装置)Bは、セルエッジユーザ(フェムトセルの近傍に存在するユーザ)であり、フェムトセルにおける信号は、ユーザBに対して干渉しやすい状況であるとする。
【0128】
この場合、マクロBS1aは、X2インターフェース経由で、フェムトBS1bに対して、電力抑制の指示として、自セルにおけるスケジューリング結果(S,pkn)やフェムトセルから受ける被干渉電力情報(干渉制御情報 )を送信する。
【0129】
マクロBS1aから前記指示を受けたフェムトBS1bは、X2情報制御部17において、リソースブロック毎の与干渉電力情報を生成する。
さらに、電力制限制御部16は、与干渉電力情報に基づいて、マクロセルのユーザBに割り当てられているリソースブロックと同じリソースブロック(フェムトセルにおいてユーザEに割り当てられているリソースブロック)についての電力制限情報Pnを生成する。
スケジューラ11は、この電力制限情報Pnに基づいて、ユーザEに割り当てられるリソースブロックの送信電力値pknを小さくする。これにより、フェムトセルから、マクロセルへの干渉が防止される。
【0130】
なお、フェムトセルのユーザFのように、マクロセルに対して干渉を与えないケースについても、送信電力値pknが小さくなることがある。これは、図6の評価関数から明らかなように、通信チャネルの状態(通信品質;CQI)の状況によっては、リソースブロックの送信電力が小さく抑えられる場合もあるからである。
【0131】
本実施形態によれば、マクロBS1aから前記指示を受けたフェムトBS1bは、その指示に含まれる情報を、MAC部30を介さずに、RRM70から直接MACスケジューラ10に迅速に与えることができる。したがって、フェムトBS1bでは、マクロBS1aのリソースブロック使用状況を反映したスケジューリングを迅速に行うことができる。
しかも、フェムトBS1bは、自らのスケジューリング結果などを、マクロBS1aや他のフェムトBS1bに対して、X2インターフェースを介して、迅速に送信することができるため、他のBS1a,1bにおける迅速な対応も可能となる。
【0132】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
1 基地局装置
1a マクロ基地局装置
1b フェムト基地局装置
2a マクロ端末装置
2b フェムト端末装置
10 MACスケジューラ
11 スケジューラ本体部
11a 制御領域スケジューラ
11b VoIPスケジューラ
11c HARQスケジューラ
11d データ情報スケジューラ
16 電力制限制御部
20 PHY部
30 MAC部
70 RRM(無線リソース管理部)
MC マクロセル
FC フェムトセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、
無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、
無線リソースの管理を行う無線リソース管理部と、
を備え、
前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部から情報を取得できるように、前記無線リソース管理部と接続されている
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記スケジューラは、前記スケジューリングを行うのに必要とされるスケジューリング用情報を、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部から取得するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
前記無線リソース管理部は、基地局間通信インターフェースを介して、基地局装置間で情報のやり取りが行えるよう構成され、
前記スケジューラは、前記無線リソース管理部が前記基地局間通信インターフェースを介して他の基地局装置から取得した情報を、前記スケジューリング用情報として取得する
請求項2記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スケジューリング用情報には、セル間干渉を抑制するための干渉制御に用いられる干渉制御情報が含まれ、
前記スケジューラは、前記干渉制御情報を用いて、セル間干渉を抑制するように前記スケジューリングを行う
請求項2又は3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記スケジューラは、無線リソースの割り当て結果を示す割当情報を、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部に与えるよう構成されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記無線リソース管理部は、前記スケジューラから取得した前記割当情報を、基地局間通信インターフェースを介して、他の基地局装置に送信するよう構成されている
請求項5記載の基地局装置。
【請求項7】
前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記MAC層の下位層であるPHY層の処理を行うPHY部に情報を与えることができるように、前記PHY部と接続されている
請求項1〜6のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項8】
前記スケジューラは、無線リソースの割り当て結果を示す割当情報を、前記MAC部を介さずに、前記PHY部に与えるよう構成されている
請求項7記載の基地局装置。
【請求項9】
前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記PHY部から情報を取得できるように、前記PHY部と接続されている
請求項1〜8のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記PHY部は、前記スケジューリングを行うのに必要とされるスケジューリング用情報を、受信信号から生成するよう構成され、
前記スケジューラは、前記スケジューリング用情報を、前記MAC部を介さずに、前記PHY部から取得するよう構成されている
請求項9記載の基地局装置。
【請求項11】
無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、
無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、
無線リソースの管理を行う無線リソース管理部と、
を備え、
前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記無線リソース管理部に情報を与えることができるように、前記無線リソース管理部と接続されている
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項12】
無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、
無線通信のPHY層の処理を行うPHY部と、
無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、
を備え、
前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記PHY部に情報を与えることができるように、前記PHY部と接続されている
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項13】
無線通信のMAC層の処理を行うMAC部と、
無線通信のPHY層の処理を行うPHY部と、
無線リソースの割り当てを決定するスケジューリングを行うスケジューラと、
を備え、
前記スケジューラは、前記MAC部を介さずに、前記PHY部から情報を取得できるように、前記PHY部と接続されている
ことを特徴とする基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−223102(P2011−223102A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87194(P2010−87194)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】