説明

基地局間同期制御システム

【課題】本発明は、同期元となる基地局が再起動を行った場合においても、通信品質の劣化を防止することができる基地局間同期制御システムを提供する。
【解決手段】状態検出機12は、第二の基地局2bの起動状態を検出したとき、同期制御要求信号を送信する。そして、終端機5は、同期制御要求信号を受信したときに、同期状態に関する同期状態信号を送信する。そして、同期制御機7は、同期状態信号を受信したとき、当該同期状態信号に基づいて、第二の基地局2bが出力する第二の信号の同期を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局間同期制御システムに関する発明であり、たとえば、当該基地局同期制御システムは、漏洩同軸ケーブルを介した複数の基地局と移動体との間における通信を可能とする移動体通信システムに適用できる。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブルを用いた移動体通信システムが活用されている。当該移動体通信システムにおいて、基地局間の同期を調整する従来技術として、たとえば特許文献1,2が存在する。
【0003】
特許文献1に係る技術では、ゾーン境界において、ある基地局から送信される信号のシンボル周期およびフレーム周期を基準として、他の基地局のシンボル周期およびフレーム周期を調整している。これにより、シンボル同期およびフレーム同期の各同期が確立されており、移動局がゾーン境界を通過する際には同期外れが発生しない。
【0004】
特許文献2に係る技術では、ゾーン境界に受信機を設け、受信された2つのフレーム周期の誤差を検出し、その検出したフレーム周期誤差情報を基地局に伝送している。基地局においては、そのフレーム周期誤差情報に応じて、同軸漏洩ケーブルに伝送するフレームのタイミングを調整する。これにより、ゾーン境界における、同軸漏洩ケーブル間の線路長差に起因したフレームの遅延量の違いにより発生するフレームの同期ずれを、補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−307503号公報
【特許文献2】特開2001−268628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の基地局間同期方法では、基地局が停電・装置異常などにより再度、装置起動を開始した場合(装置立上げが発生した場合)、基地局の起動動作完了時のフレーム位相は、起動前のフレーム同期タイミングとは異なる。そのため、同期元の基地局において再起動が発生した場合には、当該同期元の基地局以降の各基地局では、再度フレーム同期を合わせる制御が実行される。このため、一時的に基地局間同期が外れる状態となる。そのような状態の時に移動局が当該基地局のゾーン境界を通過すると、瞬断のため通信品質に劣化が発生する、という問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、同期元となる基地局が再起動を行った場合においても、通信品質の劣化を防止することができる基地局間同期制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の基地局間同期制御システムは、第一のゾーンの通信を受け持つ第一の基地局と、前記第一のゾーンに隣接する第二のゾーンの通信を受け持つ第二の基地局と、前記第一の基地局と第一の漏洩ケーブルにより接続され、前記第二の基地局と第二の漏洩ケーブルにより接続され、前記第一の漏洩ケーブルを介して前記第一の基地局から送信される第一の信号と、前記第二の漏洩ケーブルを介して前記第二の基地局から送信される第二の信号とを受信することにより、前記第一の信号と前記第二の信号との同期状態を検出する終端機と、前記第二の基地局の起動状態を検出する状態検出機と、前記第二の基地局に対して、前記第二の信号の同期を調整する同期制御機とを、備えており、前記状態検出機は、前記第二の基地局の起動状態を検出したとき、同期制御要求信号を送信し、前記終端機は、前記同期制御要求信号を受信したときに、前記同期状態に関する同期状態信号を送信し、前記同期制御機は、前記同期状態信号を受信したとき、当該同期状態信号に基づいて前記第二の信号の同期を調整する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の基地局間同期制御システムは、状態検出機は、第二の基地局の起動状態を検出したとき、同期制御要求信号を送信する。そして、終端機は、同期制御要求信号を受信したときに、同期状態に関する同期状態信号を送信する。そして、同期制御機は、同期状態信号を受信したとき、当該同期状態信号に基づいて第二の信号の同期を調整する。
【0010】
したがって、第二の基地局が再起動されたときに、同期制御が実施され、第一の基地局が再起動されたとしても、これまでのフレーム位相を保持し続けることになる。よって、第一の基地局が再起動したとしても、第二の基地局以降の各基地局では同期制御を行わない。これにより、第二の基地局以降の基地局において、フレーム同期が一時的に外れる状態となることを防ぐことができる。以上のことから、第一の基地局が再起動を行った場合においても、第二の基地局以降を通過する移動局の通信品質劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る基地局間同期制御システムを含む移動体デジタル通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る終端機の内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る状態検出機、同期制御機の各内部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2に係る状態検出機、同期制御機および第二の基地局の各内部構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2に係る終端機の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
<実施の形態1>
本実施の形態に係る基地局間同期制御システムを含む移動体デジタル通信システム100の構成を、図1に示す。
【0014】
当該移動体デジタル通信システム100では、各基地局と移動体との間で、漏洩同軸ケーブルを利用した、高周波電波信号であるデジタルデータの送受信が実施できる。基地局間同期制御システムでは、本発明に係る基地局間における信号の同期制御を実現することができる。
【0015】
(全体構成)
図1に示す基地局間同期制御システムは、各基地局2a,2b,2cと、各漏洩同軸(LCX)ケーブル3a,3b,3cと、同期制御回線6と、同期制御機7と、状態検出機12と、同期制御要求回線13とにより、構成されている。なお、当該基地局間同期制御システムと移動局4とにより、移動体デジタル通信システム100が構成されている。
【0016】
第一の基地局2aは、図1に示す第一のゾーン1aの範囲内において、移動体4との第一の基地局2aとの間の通信を受け持つ。第二の基地局2bは、図1に示す第二のゾーン1bの範囲内において、移動体4との第二の基地局2aとの間の通信を受け持つ。第三の基地局2cは、図1に示す第三のゾーン1cの範囲内において、移動体4との第二の基地局2cとの間の通信を受け持つ。また、終端機5は、第一のゾーン1aと第二のゾーン1bとの境界に配設される。
【0017】
第一の漏洩同軸ケーブル3aは、第一の基地局2aと終端機5との間に敷設される。第二の漏洩同軸ケーブル3bは、第二の基地局2bと終端機5との間に敷設される。さらに、第三の漏洩同軸ケーブル3cは、第三の基地局2cと図示されていない終端機との間に敷設される。
【0018】
また、図1の構成では、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cの両方に係属して、同期制御機7および状態検出機12が各々配設されている。なお、同期制御機7と状態検出機12とは、通信可能に接続されており、状態検出機12と第二、三の基地局2b,2cとは、通信可能に接続されている。また、同期制御機7は、同期制御回線6を介して、終端機5と接続されており、状態検出機12は、同期制御要求回線13を介して、終端機5と接続されている。
【0019】
状態検出機12は、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cを監視している。そして、状態検出機12は、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cが、起動が開始され起動動作中である起動動作状態であるか、当該起動動作中以外の状態(たとえば起動後の定常状態)であるかを検出する。なお、状態検出機12が、第二の基地局2bおよび/または第三の基地局2cが起動動作状態であることを検出した場合には、当該状態検出機12は、同期制御要求回線13を介して同期制御要求信号を終端機5宛てに送信する。
【0020】
終端機5は、第一の漏洩ケーブル3aを介して第一の基地局2aから送信される第一の信号と、第二の漏洩ケーブル3bを介して第二の基地局2bから送信される第二の信号とを受信する。そして、終端機5は、受信した第一の信号および第二の信号を用いて、当該第一の信号と当該第二の信号との同期状態を検出する。当該同期状態は、第一のゾーン1aと第二のゾーン1bとの境界における、第一の信号と第二の信号との同期の状態であると把握できる。上記同期制御要求信号を受信した場合において、終端機5は、当該検出された同期状態を、同期状態信号として、同期制御回線6を通じて同期制御機7に送信する。
【0021】
同期制御機7は、同期状態信号を受信したとき、第二の基地局2bおよび/または第三の基地局2cに対して、第二の基地局2bから送出される第二の信号の同期および/または第三の基地局2cから送出される第三の信号の同期を調整する。具体的に、同期制御機7は、受信した同期状態信号に基づいて、第二の基地局2bにおいて、第一の信号に対する第二の信号の同期を調整する。また、同期制御機7は、受信した同期状態信号に基づいて、第三の基地局2cにおいて、第一の信号に対する第三の信号の同期を調整する。
【0022】
ここで、図示を省略しているが、図1の右側において、第三の漏洩同軸ケーブル3c以降においてもシステム構成は続く。具体的に、第一の漏洩同軸ケーブル3aから第三の基地局2cまでの構成(各基地局2b,2cに係属する状態検出機12および同期制御機7と、各回線13,6とを含む)を単位構成とすると、図1の右方向において第三の基地局2c以降に、当該単位構成が繰り返し直列配設される。なお、当該直列配列の構成において、第一の基地局2aのみが、状態検出機12および同期制御装置7と接続されない構成となる。したがって、当該第一の基地局2aが、同期元の基地局となると把握することができる。
【0023】
上記構成の基地局間同期制御システムに沿って移動する移動局4は、漏洩同軸ケーブル3a,3b,3cおよび空間を介して、基地局2a,2b,2cとの間で、デジタル電波信号の送受信通信を行う。高周波のデジタル電波信号が漏洩同軸ケーブル3a,3b,3cを伝送する際には、漏洩同軸ケーブル3a,3b,3cから当該デジタル電波信号に関する空間電波が放出される。また、高周波のデジタル電波信号が漏洩同軸ケーブル3a,3b,3cへ伝送される際には、デジタル電波信号に関する空間電波が漏洩同軸ケーブル3a,3b,3cへと吸収される。
【0024】
したがって、第一のゾーン1a内に存する移動局4は、第一の漏洩同軸ケーブル3aおよび当該第一の漏洩同軸ケーブル3aと移動局4との間の空間を介して、第一の基地局2aとの間で通信を行う。第二のゾーン1b内に存する移動局4は、第二の漏洩同軸ケーブル3bおよび当該第二の漏洩同軸ケーブル3bと移動局4との間の空間を介して、第二の基地局2bとの間で通信を行う。同様に、第三のゾーン1c内に存する移動局4は、第三の漏洩同軸ケーブル3cおよび当該第三の漏洩同軸ケーブル3cと移動局4との間の空間を介して、第三の基地局2cとの間で通信を行う。
【0025】
(終端機5の構成)
図2は、終端機5の内部構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、終端機5は、受信回路8a,8bと、同期監視回路9と、同期制御判定回路14とから構成されている。
【0027】
第一の受信回路8aは、第一の漏洩同軸ケーブル3aを介して第一の基地局2aから送信される高周波デジタル信号を受信し、当該受信した信号を復調する。第二の受信回路8bは、第二の漏洩同軸ケーブル3bを介して第二の基地局2bから送信される高周波デジタル信号を受信し、当該受信した信号を復調する。
【0028】
同期監視回路9は、第一の受信回路8aにより復調された信号と、第二の受信回路8bにより復調された信号とを、常に監視する。そして、当該各復調された信号間において、シンボル同期およびフレーム同期の同期状態を、常に検出する。
【0029】
同期制御判定回路14は、同期監視回路9において検出された同期状態を受信する。そして、同期制御判定回路14が、同期制御要求回線13を通じて同期制御要求信号を受信したときのみ、当該受信した同期状態に関する同期状態信号を同期制御回線6に対して送信する。
【0030】
(同期制御機7および状態検出機12の構成)
図3は、同期制御機7の内部構成および状態検出機12の内部構成を示した、ブロック図である。
【0031】
同期制御機7は、同期制御回路17と、フレーム同期回路10と、シンボル同期回路11とから、構成されている。
【0032】
同期制御回路17は、同期制御回線6を経由して終端機5から送信された同期状態信号を受信する。そして、同期制御回路17は、当該同期状態信号から、フレーム同期状態に関するフレーム同期状態信号と、シンボル同期状態に関するシンボル同期状態信号とを、抽出する。同期制御回路17は、フレーム同期状態信号をフレーム同期回路10へ送信し、シンボル同期状態信号をシンボル同期回路11へ送信する。
【0033】
フレーム同期回路10は、同期制御回路17から送信されたフレーム同期状態信号に基づいて、フレーム同期を調整する。フレーム同期回路10は、調整されたフレーム同期に関するフレーム同期信号を、ゲート回路19b,19cに対して送信する。
【0034】
シンボル同期回路11は、同期制御回路17から送信されたシンボル同期状態信号に基づいて、シンボル同期を調整する。シンボル同期回路11は、調整されたシンボル同期に関するシンボル同期信号を、ゲート回路19b,19cに対して送信する。
【0035】
状態検出部12は、同期制御許可回路15およびゲート回路19b,19cとから、構成されている。
【0036】
同期制御許可回路15は、第二の基地局2bから送信される監視情報、および第三の基地局2cから送信される監視情報を各々、常に監視している。当該監視において同期制御許可回路15が、少なくとも何れか一方の基地局2b,2cから、起動動作状態である旨の監視情報を検出したときには、次の各動作を行う。つまり、当該場合には、同期制御許可回路15は、同期制御要求回線13に対して同期制御要求信号を送信し、さらに、ゲート回路19b,19cに対して制御許可信号を送信する。
【0037】
ここで、当該同期制御要求信号の送信および制御許可信号の送信は、同期制御許可回路15が起動動作状態である旨の監視情報を検出している間のみ、継続的に実施される。また、同期制御許可回路15が、第二の基地局2bから起動動作状態である旨の監視情報を検出したときには、当該同期制御許可回路15は、ゲート回路19bに対して制御許可信号を送信する。また、同期制御許可回路15が、第三の基地局2cから起動動作状態である旨の監視情報を検出したときには、当該同期制御許可回路15は、ゲート回路19cに対して制御許可信号を送信する。さらに、同期制御許可回路15が、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cの両方から起動動作状態である旨の監視情報を検出したときには、当該同期制御許可回路15は、ゲート回路19bおよびゲート回路19cの両方に対して制御許可信号を送信する。
【0038】
また、ゲート回路19bは、自回路が制御許可信号を受信している期間のみ、フレーム同期回路10から受信したフレーム同期信号、およびシンボル同期回路11から受信したシンボル同期信号を各々、第二の基地局2bに対して送信する。
【0039】
また、ゲート回路19cは、自回路が制御許可信号を受信している期間のみ、フレーム同期回路10から受信したフレーム同期信号、およびシンボル同期回路11から受信したシンボル同期信号を各々、第三の基地局2cに対して送信する。
【0040】
なお、第二の基地局2bが、フレーム同期信号およびシンボル同期信号を受信すると、これらの同期信号に基づいて、第二の基地局2bから送出される第二の信号の同期(第二の信号における、フレーム同期およびシンボル同期)が制御される。同様に、第三の基地局2cが、フレーム同期信号およびシンボル同期信号を受信すると、これらの同期信号に基づいて、第三の基地局2cから送出される第三の信号の同期(第三の信号における、フレーム同期およびシンボル同期)が制御される。
【0041】
(移動体デジタル通信システム100の動作)
次に、本実施の形態に係る移動体デジタル通信システム100の動作について説明する。
【0042】
第一のゾーン1aにおいて、第一の基地局2aから移動局4へ送信される高周波の電波信号は、第一の漏洩同軸ケーブル3aを経由し、短い空間波区間を通って移動局4に至る。一方、移動局4から第一の基地局2aへ送信される高周波の電波信号は、短い空間波区間を通った後、第一の漏洩同軸ケーブル3aを経由して第一の基地局2aに至る。このようにして、第一のゾーン1a内における第一の基地局2aと移動局4との間の通信が、可能となる。
【0043】
同様に、第二のゾーン1bにおいて、第二の基地局2bから移動局4へ送信される高周波の電波信号は、第二の漏洩同軸ケーブル3bを経由し、短い空間波区間を通って移動局4に至る。一方、移動局4から第二の基地局2bへ送信される高周波の電波信号は、短い空間波区間を通った後、第二の漏洩同軸ケーブル3bを経由して第二の基地局2bに至る。このようにして、第二のゾーン1b内における第二の基地局2bと移動局4との間の通信が、可能となる。
【0044】
同様に、第三のゾーン1cにおいて、第三の基地局2cから移動局4へ送信される高周波の電波信号は、第三の漏洩同軸ケーブル3cを経由し、短い空間波区間を通って移動局4に至る。一方、移動局4から第三の基地局2cへ送信される高周波の電波信号は、短い空間波区間を通った後、第三の漏洩同軸ケーブル3cを経由して第三の基地局2cに至る。このようにして、第三のゾーン1c内における第三の基地局2cと移動局4との間の通信が、可能となる。
【0045】
ここで、電波の有効活用のために、第一の基地局2a−移動局4間で使用される電波、第二の基地局2b−移動局4間で使用される電波および第三の基地局2c−移動局4間で使用される電波は、全ての同一周波数である。
【0046】
以上が、各基地局2a,2b,2cが安定稼動している状態における、移動体デジタル通信システム100の通信動作である。
【0047】
(基地局間同期制御システムの動作)
次に、本実施の形態に係る基地局間同期制御システムの動作について説明する。
【0048】
(第二の基地局2bおよび/または第三の基地局2cが起動する場合)
状態検出機12内の同期制御許可回路15は、第二の基地局2bから送信される監視情報および第二の基地局2cから送信される監視情報を、各々監視している。各ゾーン1a,1b,1cにおいて信号同期が確立して運用されている状態から、第二の基地局2bおよび/または第三の基地局2cにおいて、停電等の障害が発生し、その後復旧したとする。当該場合には、同期制御許可回路15は、基地局2b,2cが起動状態である旨の監視情報を検出する。
【0049】
ここで、当該起動状態である旨の監視情報は、基地局2b,2cの起動動作中の間、継続的に送信される。なお、第二の基地局2bが起動動作中である場合には、第二の基地局2bから、当該起動状態である旨の監視情報が送信される。また、第三の基地局2cが起動動作中である場合には、第三の基地局2cから、当該起動状態である旨の監視情報が送信される。さらに、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cが共に起動動作中である場合には、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cの両方から、当該起動状態である旨の監視情報が各々送信される。
【0050】
当該起動状態である旨の監視情報を検出した同期制御許可回路15は、当該検出の期間継続的に、同期制御要求回線13を介して終端機5へ同期制御要求信号を送信すると共に、ゲート回路19b,19cに制御許可信号を送信する。
【0051】
ここで、第二の基地局2bが起動動作中である場合には、制御許可信号はゲート回路19bに送信される。また、第三の基地局2cが起動動作中である場合には、制御許可信号はゲート回路19cに送信される。さらに、第二の基地局2bおよび第三の基地局2cが共に起動動作中である場合には、制御許可信号はゲート回路19bおよびゲート回路19cの両方に送信される。
【0052】
一方で、第一のゾーン1aと第二のゾーン1bとの境界に設置された終端機5では、第一の漏洩同軸ケーブル3aから受信する高周波電波信号を受信回路8aにて受信している。さらに、当該終端機5では、第二の漏洩同軸ケーブル3bから受信する高周波電波信号を受信回路8bにて受信している。各受信回路8a,8bで受信された高周波電波信号は、各受信回路8a,8bにおいて復調される。そして、復調後の信号は、終端機5内の同期監視回路9に送信される。
【0053】
同期監視回路9では、各受信回路8a,8bから受信した各信号を用いて、上記第一の信号と上記第二の信号との同期状態を検出する。具体的に、同期監視回路9では、第一の信号および第二の信号間における、シンボル周期の同期の差分(シンボル同期状態)およびフレーム周期の同期の差分(フレーム同期状態)を各々検出する。同期監視回路9は、当該検出結果を、同期状態に関する同期状態信号として、終端機5内の同期制御判定回路14に送信する。
【0054】
同期制御判定回路14は、同期制御要求回線13から送信される同期制御要求信号の受信の有無を、監視している。同期制御判定回路14は、同期制御要求信号を受信している期間のみ、同期監視回路9から受信した同期状態信号を、同期制御回線6を介して同期制御機7へ送信する。
【0055】
同期制御機7において同期制御回路17が同期状態信号を受信したとき、当該同期制御回路17は、当該同期状態信号から、シンボル同期状態とフレーム同期状態とを各々抽出す。そして、抽出されたシンボル同期状態は、シンボル同期回路11に送信され、抽出されたフレーム同期状態は、フレーム同期回路10に送信される。
【0056】
フレーム同期回路10は、受信したフレーム同期状態を用いてフレーム同期を調整する。そして、フレーム同期回路10は、調整後のフレーム同期信号を、ゲート回路19b,19cに送信する。他方、シンボル同期回路11は、受信したシンボル同期状態を用いてシンボル同期を調整する。そして、シンボル同期回路11は、当該調整後のシンボル同期信号を、ゲート回路19b,19cに送信する。
【0057】
状態検出機12における各ゲート回路19b,19cは、同期制御許可回路15から制御許可信号を受信しているときのみ、受信したフレーム同期信号および受信したシンボル同期信号を、基地局2b,2cに送信する。
【0058】
たとえば、ゲート回路19bのみが制御許可信号を受信しているときは、ゲート回路19bのみが、フレーム同期信号およびシンボル同期信号を、第二の基地局2bに送信する。また、ゲート回路19cのみが制御許可信号を受信しているときは、ゲート回路19cのみが、フレーム同期信号およびシンボル同期信号を、第三の基地局2cに送信する。また、ゲート回路19bおよびゲート回路19cが共に制御許可信号を受信しているときは、ゲート回路19bは、フレーム同期信号およびシンボル同期信号を、第二の基地局2bに送信し、ゲート回路19cは、フレーム同期信号およびシンボル同期信号を、第三の基地局2cに送信する。
【0059】
当該フレーム同期信号および当該シンボル同期信号が各基地局2b,2cに送信されることにより、各基地局2b,2cにおけるフレーム同期およびシンボル同期の調整が行われる。
【0060】
(第一の基地局2aが起動する場合)
上記と異なり、各ゾーン1a,1b,1cにおいて信号同期が確立して運用されている状態から、第一の基地局2aにおいて、停電等の障害が発生し、その後復旧したとする。当該場合には、上記状態検出機7および同期制御機7および終端機5による、信号同期調整動作は実施されない。したがって、起動動作後の第一の基地局2aでは、起動動作の前後において、フレーム位相が相違する。また、第一の基地局2aの再起動により、第二の基地局2b、第三の基地局2cでは上記信号同期調整は実施されない。したがって、第一の基地局2aが再起動されたとしても、基地局2b以降の基地局では、当該第一の基地局2aの再起動に関係なく、これまでのフレーム位相を保持し続けることになる。
【0061】
(効果)
以上のように、本実施の形態では、状態検出機12は、第二の基地局2b、第三の基地局2cの起動状態を検出したときのみ、同期制御要求信号を送信する。そして、終端機5は、同期制御要求信号を受信したときのみに、検出した同期状態に関する同期状態信号を送信する。そして、同期制御機7は、同期状態信号を受信したときのみ、同期状態信号に基づいて第二の信号、第三の信号の同期を調整する。
【0062】
したがって、基地局2b,2cが再起動されたときのみに、同期制御が実施され、同期元である第一の基地局2aが再起動されたとしても、これまでのフレーム位相を保持し続けることになる。よって、同期元の第一の基地局2aが停電等の障害が発生し、その後復旧した場合に、第二の基地局2b以降の各基地局では同期制御を行わない。これにより、第二の基地局2b以降の基地局において、フレーム同期が一時的に外れる状態となることを防ぐことができる。したがって、同期元の第一の基地局2aが再起動を行った場合においても、第二の基地局2b以降を通過する移動局4の通信品質劣化を防止することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、第一のゾーン1aと第二のゾーン1bとの境界に配設された終端機5により、第一の基地局2aから送信される信号を基準として、基地局2b,2cの信号同期を検出している。
【0064】
これにより、移動局4が第一のゾーン1aと第二のゾーン1bとの境界を通過する際には、同期外れが発生しない。
【0065】
<実施の形態2>
実施の形態1では、状態検出機12から終端機5に同期制御要求回線13を用いて、同期制御要求信号を出力している。本実施の形態では、第二の漏洩同軸ケーブル3bを介して第二の基地局2bから送信されるデジタルデータの伝送フォーマットの一部に、同期制御要求信号の情報を割り当てる。これにより、同期制御要求回線13を別途配設する必要がなくなり、接続構成が単純化できる。
【0066】
(構成および動作)
図4に示すように、本実施の形態では、第二の基地局2bは、送信回路31および信号合成回路32を備えている。
【0067】
信号合成回路32では、同期制御許可回路15から送信される同期制御要求信号を受信する。そして、信号合成回路32は、外部から受信した伝送データ(実施の形態1で述べた第二の信号と把握できる)のデジタルデータの伝送フォーマットに割り当てられた所定の領域に、当該受信した同期制御要求信号を合成させる。第二の信号の伝送フォーマットに割り当てられた所定の領域に、同期制御要求信号を合成して生成された信号を、合成信号と称する。当該合成信号は、送信回路31に伝送される。伝送回路31は、第二の漏洩同軸ケーブル3bを介して、受信した合成信号を終端機5へ送信する。
【0068】
さて、本実施の形態では、同期制御要求信号は、合成信号に含められて、漏洩同軸ケーブル3bを通じて伝送される。当該合成信号は、終端機5が受信する。図5に示すように、本実施の形態に係る終端機5は、実施の形態1に係る終端機5に、信号分離回路40を加えた構成となっている。
【0069】
受信回路8bにおいて受信され復調された信号は、本実施の形態では、同期監視回路9および信号分離回路40に各々送信される。信号分離回路40が受信回路8bから信号を受信すると、当該信号分離回路40は、復調された合成信号から同期制御要求信号を分離し、抽出する。そして、当該抽出された同期制御要求信号は、同期制御判定回路14に送信される。
【0070】
なお、同期制御許可回路15が同期制御要求信号を送出しない場合には、第二の基地局2bから送信される信号には、当然同期制御要求信号が合成されない。したがって、当該場合には、当然、信号分離回路40において同期制御要求信号が抽出されず、信号分離回路40から同期制御判定回路14への同期制御要求信号の送信も実施されない。
【0071】
実施の形態1同様、同期制御判定回路14は、同期制御要求信号を受信している期間のみ、同期監視回路9から受信した同期状態信号を、同期制御回線6を介して、同期制御機7へ送信する。
【0072】
ここで、システムにおける上記以外の構成および動作(具体的に、同期制御要求信号を第二の基地局2bに送信すること、第二の基地局2bにおいて上記合成信号を生成し送信すること、終端機5で合成信号から同期制御要求信号を分離すること以外の、構成および動作)は、実施の形態1で説明したシステムの構成および動作を同じである。したがって、ここでの当該他の動作・構成の説明は省略する。
【0073】
(効果)
以上のように、本実施の形態では、状態検出機12は、同期制御要求信号を第二の基地局2bへ送信する。そして、第二の基地局2bは、第二の信号に同期制御信号を合成した合成信号を生成する信号合成回路32と、合成信号を第二の漏洩ケーブル3bを介して終端機5に送信する送信回路31とを、備えている。
【0074】
したがって、実施の形態1で記載した同期制御要求回線13を別途配設する必要がなくなる。よって、実施の形態1に係るシステム構成よりも、本実施の形態に係るシステム構成の方が、接続構成が単純化できる。
【0075】
また、本実施の形態では、終端機5は、信号分離回路40を備えている。したがって、終端機5側において合成信号から同期制御要求信号を第二の信号から分離することができる。
【0076】
なお、第一の基地局2aの再起動により、第一の基地局2aと第二の基地局2bとの間で、同期外れが発生する(第二の基地局2b以降の各基地局間では同期は取れている)。当該第一の基地局2aと第二の基地局2bとの間における同期外れは、以下の要領で調整可能である。
【0077】
つまり、第二の基地局2bに同期状態表示器を配設し、第一の基地局2aに手動同期制御機を配設する。そして、何れかのタイミングで次の処理を実行する。具体的に、まず、第二の基地局2bにおいて一方の保守員が上記同期状態表示器で、第一の基地局2a−第二の基地局2b間の同期差分値を確認する。そして、当該一方の保守員が、第一の基地局2aに存する他方の保守員に、当該確認結果を通知する。そして、当該他方の保守員が上記手動同期制御機を操作して、第一の基地局2aと第二の基地局2bとの間における同期を合わせる。
【0078】
なお、上記のように、従来技術の場合には、第一の基地局2aの再起動により、全基地局間において同期外れが発生し、システムにおける全基地局において同期制御が必要となる。したがって、システム上における各移動局において、通信品質の劣化が発生する。
【0079】
これに対して、本発明では、第一の基地局2aの再起動により、同期外れが発生するのは、第一の基地局2aと第二の基地局2bとの間だけである。このように、当該同期外れの影響はシステム上の極めて限定的な区間だけなので、通信品質の劣化の影響も当該限定的な区間に限られる。したがって、ユーザは、第一の基地局2aと第二の基地局2bとの間における上記同期合わせ処理を省略しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば列車無線システムのような、基地局と漏洩同軸ケーブルとを用いた移動体通信システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1a 第一のゾーン、1b 第二のゾーン、1c 第三のゾーン、2a 第一の基地局、2b 第二の基地局、2c 第三の基地局、3a 第一の漏洩同軸ケーブル、3b 第二の漏洩同軸ケーブル、3c 第三の漏洩同軸ケーブル、4 移動局、5 終端機、6 同期制御回線、7 同期制御機、8a 第一の受信回路、8b 第二の受信回路、9 同期監視回路、10 フレーム同期回路、11 シンボル同期回路、12 状態検出機、13 同期制御要求回線、14 同期制御判定回路、15 同期制御許可回路、17 同期制御回路、19b,19c ゲート回路、31 送信回路、32 信号合成回路、40 信号分離回路、100 移動体デジタル通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のゾーンの通信を受け持つ第一の基地局と、
前記第一のゾーンに隣接する第二のゾーンの通信を受け持つ第二の基地局と、
前記第一の基地局と第一の漏洩ケーブルにより接続され、前記第二の基地局と第二の漏洩ケーブルにより接続され、前記第一の漏洩ケーブルを介して前記第一の基地局から送信される第一の信号と、前記第二の漏洩ケーブルを介して前記第二の基地局から送信される第二の信号とを受信することにより、前記第一の信号と前記第二の信号との同期状態を検出する終端機と、
前記第二の基地局の起動状態を検出する状態検出機と、
前記第二の基地局に対して、前記第二の信号の同期を調整する同期制御機とを、備えており、
前記状態検出機は、
前記第二の基地局の起動状態を検出したとき、同期制御要求信号を送信し、
前記終端機は、
前記同期制御要求信号を受信したときに、前記同期状態に関する同期状態信号を送信し、
前記同期制御機は、
前記同期状態信号を受信したとき、当該同期状態信号に基づいて前記第二の信号の同期を調整する、
ことを特徴とする基地局間同期制御システム。
【請求項2】
前記終端機は、
前記第一のゾーンと前記第二のゾーンとの境界に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局間同期制御システム。
【請求項3】
前記同期制御機は、
受信した前記同期状態信号から、シンボル同期状態とフレーム同期状態とを抽出し、
抽出された前記シンボル同期状態により、前記第二の信号のシンボル同期を調整し、
抽出された前記フレーム同期状態により、前記第二の信号のフレーム同期を調整する、
ことを特徴とする請求項2に記載の基地局間同期制御システム。
【請求項4】
前記第二のゾーンに隣接する第三のゾーンの通信を受け持つ第三の基地局を、さらに備えており、
前記状態検出機は、
前記第三の基地局の起動状態を検出したときにおいても、前記同期制御要求信号を送信し、
前記終端機は、
前記同期制御要求信号を受信したときに、前記同期状態に関する同期状態信号を送信し、
前記同期制御機は、
前記同期状態信号を受信したとき、当該同期状態信号に基づいて、前記第三の基地局が送信する第三の信号の同期を調整することもできる、
ことを特徴とする請求項2に記載の基地局間同期制御システム。
【請求項5】
前記同期制御機は、
受信した前記同期状態信号から、シンボル同期状態とフレーム同期状態とを抽出し、
抽出された前記シンボル同期状態により、前記第三の信号のシンボル同期を調整し、
抽出された前記フレーム同期状態により、前記第三の信号のフレーム同期を調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載の基地局間同期制御システム。
【請求項6】
前記状態検出機は、
前記同期制御要求信号を、前記第二の基地局へ送信し、
前記第二の基地局は、
前記第二の信号に前記同期制御信号を合成した合成信号を生成する信号合成回路と、
前記合成信号を前記第二の漏洩ケーブルを介して前記終端機に送信する送信回路とを、備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局間同期制御システム。
【請求項7】
前記終端機は、
前記合成信号から、前記同期制御信号を分離する信号分離機回路を、備えている、
ことを特徴とする請求項6に記載の基地局間同期制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−120034(P2011−120034A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276068(P2009−276068)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】