説明

基材の表面に表皮材を貼り合わせた複合成形品の製造装置

【課題】一台の製造装置により複数種類の複合成形品の木目込みと耳部の処理を行う。
【解決手段】下段回転ドラム5を多角形に形成してこの各面に成形品受け治具7を取り付けると共に上段回転ドラム35を多角形に形成して前記各成形品受け治具7と対となる成形品押え治具43を取り付ける。更に各成形品受け治具7側には、木目込み装置11と耳部折り返し装置12を設け、ドアトリム100の形態ごとに形状の違うものを用意し、この形態に合わせて下段回転ドラム5と上段回転ドラム35を回転させることで成形品受け治具7と成形品押え治具43を選択して一台の装置で形態の違う4枚のドアトリム100の表皮材102の木目込みと耳部折り返し加工を行うことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の形状に成形された基材の表面に、樹脂製の表皮材を貼り合わせた複合成形品の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や客車あるいは飛行機等の場合、内装材の多くに樹脂成形品が用いられている。そして、この内装材の場合、意匠性や安全性確保のために、硬質な基材の表面に樹脂製の表皮材を一体に貼り合わせている例が殆どである。このようにして基材の表面に表皮材を貼り合わせた場合、基材の周囲に端面が露出していては見栄えが悪いため、表皮材を基材の大きさよりも若干大きく裁断して耳部を形成し、この耳部を基材の端面を巻き込むようにして裏側に折り返して端面が露出しないように加工したり、基材の表面で表皮材が切れている場合には、この切れ目が露出しないように、木目込み処理ということが行われる。このような2つの処理例をドアトリムに適用した場合について、図1(a)(b)(c)(d)に基づいて説明する。
【0003】
図1において(a)はドアトリム100の表面の説明図、(b)は裏面図、(c)はB−B′線断面図、(d)はA−A′線断面図であって、101は基材、102は化粧用にドアトリム100の表面に貼り合わされた表皮材、103は基材101の端面から突出した耳部(図1ではすでに裏面に折り返されている)である。
【0004】
106は木目込み処理部、108は折り返し部であって、木目込み処理部10は図1(c)に示すように、基材101の表面に木目込み溝107が形成してあり、表皮材102の端部105をこの木目込み溝107内に折り込むことで表皮材102の端面の保護と見栄えの向上の効果を得ている。
【0005】
一方、表皮材102の耳部103は、図1(b)(d)に示すように、耳部103を基材101の裏側に折り返して貼り付けることにより、基材101の端面を覆い隠してその露出を防いでいる。
【0006】
これらの各加工方法の公知例を次に説明する。
【0007】
1.表皮材の木目処理
この木目処理として、特開平5−200878号には、ドアトリムにおける木目込み処理方法が紹介されている。
【0008】
この木目込み方法は、トリム本体の表面所定箇所に装飾シートを圧着するとともに、装飾シートの端末をトリム本体に設けた木目込み用溝部内に圧入する自動車用内装部品における装飾シートの圧着装置において、トリム本体をセットする圧着用下型と、昇降用シリンダにより昇降可能な上側ベースにエアシリンダを介して設置され、トリム本体の表面所定箇所に装飾シートを圧着する圧着用上型と、この圧着用上型の周縁に沿って配置され、上側ベースに連結されている木目込み用バーにより、上記エアシリンダ内へのエアの導入、排除操作を制御して、圧着用上型の押圧力を可変させながら処理する方法である。
【0009】
2.表皮材の折り返し処理
この折り返し処理方法として、特開平2−204123号公報には、シリンダーとクランプを利用して表皮材の耳部を基材の裏側に折り返して基材の端面を覆い隠す処理方法が紹介されている。この折り返し方法は、熱可塑性樹脂製基材周囲の裏面へ熱風を吹き付けて表面を溶かし、この後基材より張り出している表皮材の耳部を、シリンダーに連動のリンク機構で繰り出された上部型で耳部を裏側に折り返してクランプし、この折り返した耳部を前記基材の溶融面に圧着させて端面を覆い隠す方法である。
【0010】
【特許文献1】特開平2−204123号公報
【特許文献2】特開平5−200878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記したように、木目込みと折り返し加工にはそれぞれ別の加工機が必要であり、1つのドアトリムにおいて木目込みと折り返し処理がある場合には、木目加工機で木目加工した上で折り返し加工機のところへ半製品を運び、ここで折り返し加工を行う必要があることから、半製品のセットや取り出しに手間を要し、更に半製品を加工機間で移動する際に物にぶつけて損傷したりすることがある。
【0012】
また、工場には木目込み用と折り返し用の加工機を備える必要があることから、設備費が嵩み、設置面積も広くとる必要がある。
【0013】
また、ドアトリムにおいて、例えば4ドアー車の場合は、フロント側の左右のドアトリムと、リヤ側の左右のドアトリムとの4種のドアトリムがあり、それぞれが形態を異にしていることから、上記した木目込み用と折り返し用にはそれぞれ4種の治具が必要となり、このようなドアトリムの製造には多くの手間とコストがかかるという問題がある。
【0014】
本発明は斯る点に鑑みて提供されるものであって、その目的は、一台の装置を用いて、例えば4種のドアトリムについて木目込み処理と折り返し処理が可能な製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために提案される請求項1に記載の発明は、a.輪郭が所定の形状に成形された基材の表面に、表皮材を貼りあわせた構成の製品を成形するための複合成形品の製造装置であって、b.前記製造装置は、機体に対して水平な回転軸を介して回転自在に取り付けられていると共に周囲が多面に形成され、かつこの多面ごとに前記複合成形品を受け容れてセットするための成形品受け治具を上向きに取り付けた構成の下段回転ドラムと、c.前記機体に対して前記下段ドラムの上方に前記下段回転ドラムの回転軸と平行な回転軸に回転自在に取り付けられていると共に周囲が多面に形成され、かつこの多面ごとに前記成品受け治具にセットされた複合成形品の基材の裏面形状に合致し、前記基材の裏面に上方から圧着して基材と表皮材を貼り合せるための成形品押し付け治具を下向きに取り付けた構成の上段回転ドラムと、d.前記複合成形品の形状に合致する成形品受け治具と成形品押え治具が対向するように下段回転ドラムと上段回転ドラムとを回転させたのち、前記成形品受け治具内に表皮材をセットし、更にこの表皮材の上に基材をセットすると、上段回転ドラムを下降させて成形品押し付け治具を基材の裏面に圧着させることにより、表皮材を基材の表面に貼り付ける制御装置と、から成ることを特徴とするものである。
【0016】
更に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記成形品受け治具には、セットされた表皮材を吸着して成形品受け治具内に固定するための吸引孔が設けられていること、を特徴とするものである。
【0017】
この発明によると表皮材と基材を成形品受け治具内に簡単に固定することができる。
【0018】
更に、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記成形品受け治具及び成形品押え治具は、それぞれの回転ドラムに対して着脱自在に取り付けられていること、を特徴とするものである。
【0019】
この発明によると、成形品受け治具と押え治具を交換することにより、多様な成形品に対応することができる。
【0020】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記下段回転ドラムは、取り付けられている成形品受け治具が斜めになるようにその回転角を制御できること、を特徴とするものである。
【0021】
この発明によると、ドアトリムのような大きな成形品の場合でも、そのセット及び取り出しを簡単に行うことができる。
【0022】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記製造する複合成形品は、基材の周縁の一部から表皮材側に形成した耳部が突出した構成から成ること、を特徴とするものである。
【0023】
更に、請求項6に記載の発明は、前記製造する複合成形品の基材には木目込み溝が形成され、表皮材の端縁はこの木目込み溝に臨んで形成された構成から成ることを特徴とするものである。
【0024】
更に、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記下段回転ドラムにおいて、成形品受け治具に臨ませて木目込み装置が設けられていると共に機体側にはこの木目込み装置を駆動するための木目込み駆動装置が設けられていること、を特徴とするものである。
【0025】
この発明によると、成形品受け台上にセットされた成形品ごとに木目込み駆動装置を設ける必要がない。
【0026】
更に、請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記下段回転ドラムにおいて、成形品受け治具に臨ませて耳部折り返し装置が設けられていると共に機体側にはこの耳部折り返し装置を駆動するための耳部折り返し駆動装置が設けられていること、を特徴とするものである。
【0027】
この発明によると、成形品受け台上にセットされた成形品ごとに耳部折り返し駆動装置を設ける必要がない。
【0028】
更に、請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記木目込み装置は、木目込み駆動装置側から前進して来た駆動カムにより上昇して表皮材の端縁側を基材側の木目込み溝内に折り曲げて押し込み貼り付ける構成となっていること、を特徴とするものである。
【0029】
更に、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記耳部折り返し装置は、この耳部折り返し駆動装置の駆動桿の先端の上昇により折り返し治具が上昇して表皮材側の耳部を上方に90°折り曲げたのち、駆動桿の前進により折り返し治具が耳部を基材の裏側に折り返し、駆動桿の下降により折り返し治具が下降して耳部を基材の周縁の裏側に折り返して貼り付ける構成となっていること、を特徴とするものである。
【0030】
更に、請求項11に記載の発明は、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の発明において、前記下段回転ドラムと機体には、複合成形品に木目込みと耳部の折り返し部が形成されている場合には、この両方の加工ができるように木目込み装置とこの駆動装置及び耳部折り返し装置とこの駆動装置が設けられていること、を特徴とするものである。
【0031】
更に、請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11に記載の発明において、前記制御装置は、設定された加工プログラムに基づいて下段回転ドラム及び上段回転ドラムを回転させて対となる成形品受け治具と成形品押え治具を対向させると共に成形品受け治具内の吸引孔を負圧に形成し、上段回転ドラムを下降させて成形品受け治具内の半製品を押え込んで基材と表皮材を貼着し、次に木目込み又は耳部の折り返しを行う木目込み駆動装置又は耳部折り返し駆動装置の駆動を制御し、その上で上段回転ドラムを上昇させて木目込みおよび耳部折り返し済の複合成形品を解放する制御を行うことができるように構成されていること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の効果は次のとおりである。
1.一台の製造装置において、多角形に形成された下段回転ドラムと上段回転ドラムを設け、この回転ドラムに上下が対となる成形品受け治具と成形品押え治具を取り付けておくことにより、例えば回転ドラムの断面を四角形に形成し、この4面にそれぞれ成形品受け治具と成形品押え治具を取り付けておくようにすると、4種の形態の製品を一台の装置を用いて製造することができる。
【0033】
よって、複合成形品の製造装置を形態の違う成形品ごとに用意する必要がないため、設備費を軽減することができると共に2台以上の設置面積をとる必要がなくなる。
【0034】
2.下段回転ドラム側には木目込み装置を設け、これを駆動するための駆動装置は機体側に設けたことにより、下段回転ドラムの軽量化を図り、然も駆動装置は木目込み用と耳部折り返し用の2つを設けるだけで良いため、装置製作費のコストを低減できる。
【0035】
3.木目込みと耳部折り返しが必要な製品の場合でも、製品をそれぞれの加工に合わせて装置間を持ち運びする必要がないため、製品をぶつけて損傷する虞れがない。
【0036】
4.木目込み装置及び耳部折り返し装置の原点復帰は、すべてスプリング力を利用することで、動力が不必要となり、装置の簡素化と軽量化が可能である。
【0037】
5.駆動装置はすべて機体側に設けたことにより、回転ドラムに配管や配線が必要でないため回転ドラム機構の簡素化を図り、併せて一台の駆動装置で多面にセットされた木目込み装置又は耳部折り返し装置をも駆動することができることから、装置の製作コストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0038】
以下各図を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0039】
本実施例で製造する製品は、図1に示したドアトリム100であって、それを製造する製造装置は木目込みと耳部折り返し加工を一緒に行うことができるものである。
【0040】
図2、3において、1は機体、2は基台、3、3aは基台2から直立された側枠、4は側枠3、3aの上端間に取り付けられた天枠である。
【0041】
5は前記側枠3、3a間に回転軸6により回転自在に取り付けられた断面四角形の下段回転ドラムであって、このドラム5の各面には、図4に示すようにドアトリム100の表皮材102、基材101を受け容れる成形品受け治具7及び補助治具7aを取り付けたベース板9がボルト8により着脱自在に取り付けられている。
【0042】
また、成形品受け治具7には、図4に示すように底面に吸引孔10が設けてあり、この吸引孔10は、図外のコンプレッサーに吸引管(図示せず)を介して結ばれていて、成形品受け治具7にセットされた表皮材102を吸引することで表皮材102を成形品受け治具内に固定することができる。
【0043】
図4において簡易に表示しているが、11は木目込み装置、12は耳部折り返し装置であって、本実施例では図1に示した木目込み部106を上記木目込み装置11で処理し、耳部折り返し部108を耳部折り返し装置12で処理する。
【0044】
図5は成形品押え治具43を示し、成形品受け治具7内にセットされた成形品を押え込むためのもので、後述する上段回転ドラム35に取り付けられる。
【0045】
更に具体的に木目込み装置11を図6に基づいて説明すると、この木目込み装置11は、成形品受け治具7の側方において、ベース板9に直立させたガイド13に対して先端に木目込み用刃14を取り付けた昇降桿15が上下動自在に取り付けられている。
【0046】
なお、昇降桿15は、本実施例では、自重でガイド13に沿って下降した位置にあるが、スプリングの力で一旦上昇したものが、下降し、復帰するように構成しても良い。
【0047】
次に、耳部折り返し装置12を図7を基に説明する。
【0048】
この図7において、耳部折り返し装置12は、ベース板9に対してスプリング23により下降するようにして上下動自在に直立され、かつスプリング23aにより前進したものが後退するように賦勢されている支軸22に対して取付板22a上に係合環25aを間隔を空けて取り付けることにより、係合部24aを形成している係合部材25と、前記取付板22aから直立させた直立桿26の上部に成形品受け治具7側に向けて取り付けられた下面に逃げ溝28を形成した折り返し治具27を取り付けた構成である。
【0049】
図7において、29は耳部折り返し装置12の駆動装置であって、この装置29は、機体1に取り付けられた下向きのシリンダー30のロッド31に対して水平方向に向けて取り付けられた水平動シリンダー32のロッド33の先端に、前記係合部材25の係合部24aに前進して係合することができるフック部材34を取り付けた構成である。
【0050】
なお、本実施例で処理されるドアトリム100側の基材101の端部は、90°裏側に折り返した折り返し縁105が形成されたものである。
【0051】
図2、3において、35は前記下段回転ドラム5の上方において回転軸36により機体1に対して上下動自在に取り付けられた上段回転ドラムであって、この上段回転ドラム35は断面四角形から成り、各面にベース板44を介して成形品押え治具43が下向きに取り付けられている。
【0052】
38、38aは取付アングル34の両端に垂下固定された取付具で、その取付具38,38aの先端に回転軸36が取付けられている。39、39aはブレ止め用ガイドピン、40、40aはガイドピン39、39aが入り込むためのピン受けである。
【0053】
41は下段回転ドラム駆動用サーボモータ、42は上段回転ドラム駆動用サーボモータであって、各ドラムを90°ずつ、及び下段回転ドラム5側については35°前傾させることも可能である。
【0054】
なお、前記上段回転ドラム35に取り付けられた成形品押え治具43は、図7に示すようにピン45を介して上段回転ドラム35の取付面35aに対して上下動自在に取り付けられていると共に、上昇するときにスプリング46の作用で成形品押え治具43に負荷がかかる構造となっていて、成形品押え治具43が基材101を押えるときに、弾力的に圧接(密着)するようにして押え効果を高めている。
【0055】
以上に説明した本発明に係る製造装置について、その作用(ドアトリム製造工程)を図8乃至図11に基づいて詳細に説明する。
【0056】
先ず図8に示すように、複合成形品に適合した成形品受け治具7と成形品押え治具43を選定し、下段回転ドラム5と上段回転ドラム35をサーボモータ41、42により回転させて対向させる。但し、表皮材102と基材101及びドアトリム100を成形品受け治具7にセットしやすくするために、下段回転ドラム5側のみ図8に示すように手前に約35°傾斜させたところで止めておく。7aはドアトリム受け補助治具である。
【0057】
その上で、図9に示すように、裏面に接着剤を塗布した表皮材102を成形品受け治具7内にセットした上で、図10に示すようにこの表皮材102の上にドアトリム100をセットする。
【0058】
次に、図11に示すように下段回転ドラム5を回転させて成形品受け治具7を上向きに設定し、次に図12に示すように昇降シリンダー37を駆動して回転軸36を下降させることにより上段回転ドラム35を下降させ、成形品押え治具43を基材101の上面(裏面)に当接させ、更に下降させると、成形品押え治具43はスプリング46を圧縮するようにして僅かに上昇(後退)しながら、密着力(押圧力)を保持する(図7参照)。
【0059】
この間に、表皮材102は接着剤によりドアトリム100の基材101に貼着する。
【0060】
基材101に表皮剤102を貼り付けただけの製品の場合には、この工程で終り、あとは上段回転ドラム35を上昇させて成形品受け治具7内からドアトリム100を取り出し、作業を終る。
【0061】
一方、図1(a)(b)(c)(d)に示したような木目込み部107と折り返し部108の存在するドアトリム100の製造においては、基材101の端面の露出を防ぎ、意匠性を高めるために、あらかじめ表皮材102に折り返し用の耳部103を形成しておき(図1(a)一点鎖線)これを折り返して基材101の端面を処理することが必要になる。
【0062】
この工程を図13乃至図20で説明すると、図13は基材101と表皮材102とを成形品受け治具7と成形品押え治具43間に挟んで押えた状態である。この状態において、図14に示すように、上下動シリンダー30により駆動装置29を下降させたのち水平動シリンダー32のロッド33を前進させてフック部材34の先端を係合部24aに係合させる。
【0063】
次に、図15に示すようにロッド33を駆動してフック部材34を上昇させることにより、折り返し治具27で表皮材102の耳部103を上方へ90°折り曲げる。
【0064】
次に図16に示すようにロッド33を前進させることにより、折り返し治具27で耳部103を水平方向に90°折り曲げる。
【0065】
その上で図16に示すように、折り返し治具27の逃げ溝28のところに耳部103の端部105が来たところで前進を止める。
【0066】
次に図17に示すように折り返し治具27を下降させ、端部105を逃げ溝28内に押し込んで貼りつけることにより、基材101の端面104を耳部103で覆う。
【0067】
次に、図18に示すように、シリンダー32のロッド33を後退させてフック部材34を係合部24aから外すと、スプリング23aにより折り返し治具27も後退し、スプリング23により下降して元の位置に復帰する。このように、耳部折り返し装置12においては、すべてスプリング23、23aが復帰を司っている。
【0068】
以上でドアトリム100の加工が終了すると、図19に示すように上段回転ドラム35がシリンダー37により上昇して成形品押え治具43がドアトリム100から離れる。
この状態でドアトリム100を成形品受け治具7から取り出す事ができるが、図20に示す様に下段回転ドラム5を傾斜させて静止することにより、ドアトリム100が容易に取り出せる効果を得られる場合がある。
【0069】
次に、木目込み加工を図21(a)〜(c)に基づいて説明する。
木目込みとは、ドアトリム100の、基材101に逆U字状の木目込み溝107が形 成されており、この木目込み溝107内に表皮材102の端部を折り返して押し込み、 貼着することである。
【0070】
木目込み装置11は、成形品受け治具7と成形品押え治具43間にドアトリム100 を押えた状態で木目込み駆動装置シリンダー21がカム桿19を前進させると、図21 (b)に示すようにカム桿19の上昇カム面19aが昇降桿15のローラー16の下に 入り込んで行く。
【0071】
この結果、昇降桿15がカム面19aの作用で上昇し、これにより刃14が上昇して 表皮材102の端部を基材101に形成した木目込み溝107内に折り込んで貼着する 。
【0072】
この折り込みが終了すると、図21(c)に示すようにシリンダー21によりカム桿 19が後退し、これにつれて昇降桿15が下降し、刃14が木目込み溝107内から下 方に逃れて木目込み加工が終了する。
【0073】
以上が木目込み工程であって、このフローを図22に示す。
【0074】
以上の説明と実施例はドアトリム100において、表皮材102の加工に木目込み及 び折り返しが併用される場合であるが、成形品の形態によっては、木目込み装置11又 は耳部折り返し装置12のみが下段回転ドラム7側に設けられる場合もある。
【0075】
図3において、47は制御装置であって、この制御装置47は、加工対象物を入力す るとこの加工対象物に合った成形品受け治具7と成形品押え治具43を選定して下段回 転ドラム5と上段回転ドラム35を回転させることにより対向させ、更に木目込み又は 折り返し加工の設定を入力することにより木目込み装置11又は折り返し装置12のそ れぞれの駆動装置17、29を駆動して木目込みと耳部折り返し加工の一連を自動的に 制御する構成である。
【産業上の利用分野】
【0076】
1.自動車、飛行機、列車、住宅等の内装材の製造
2.家具、各種ケース等の外装材の製造
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】(a)はドアトリムの外面の説明図、(b)はドアトリムの内面の説明図、(c)はB−B´線断面図、(d)はA−A'線断面図
【図2】ドアトリム製造装置全体を示す正面図
【図3】一部を断面した装置の側面図
【図4】成形品受け治具の説明図
【図5】成形品押え治具の説明図
【図6】木目込み装置の説明図
【図7】耳部折り返し装置の説明図
【図8】耳部折り返し工程の説明図
【図9】耳部折り返し工程の説明図
【図10】耳部折り返し工程の説明図
【図11】耳部折り返し工程の説明図
【図12】耳部折り返し工程の説明図
【図13】耳部折り返し工程の説明図
【図14】耳部折り返し工程の説明図
【図15】耳部折り返し工程の説明図
【図16】耳部折り返し工程の説明図
【図17】耳部折り返し工程の説明図
【図18】耳部折り返し工程の説明図
【図19】耳部折り返し工程の説明図
【図20】耳部折り返し工程の説明図
【図21】(a)乃至(c)木目込み工程の説明図
【図22】木目込み工程のフローの説明図
【符号の説明】
【0078】
100 ドアトリム
101 基材
102 表皮材
103 耳部
104 端面
105 木目
1 機体
5 下段回転ドラム
7 成形品受け治具
11 木目込み装置
12 耳部折り返し装置
14 刃
17 木目込み駆動装置
27 折り返し治具
29 折り返し駆動装置
35 上段回転ドラム
43 成形品押え治具
47 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 輪郭が所定の形状に成形された基材の表面に、表皮材を貼りあわせた構成の製品を成形するための複合成形品の製造装置であって、
b. 前記製造装置は、機体に対して水平な回転軸を介して回転自在に取り付けられていると共に周囲が多面に形成され、かつこの多面ごとに前記複合成形品を受け容れてセットするための成形品受け治具を上向きに取り付けた構成の下段回転ドラムと、
c. 前記機体に対して前記下段ドラムの上方に前記下段回転ドラムの回転軸と平行な回転軸に回転自在に取り付けられていると共に周囲が多面に形成され、かつこの多面ごとに前記成品受け治具にセットされた複合成形品の基材の裏面形状に合致し、前記基材の裏面に上方から圧着して基材と表皮材を貼り合せるための成形品押し付け治具を下向きに取り付けた構成の上段回転ドラムと、
d. 前記複合成形品の形状に合致する成形品受け治具と成形品押え治具が対向するように下段回転ドラムと上段回転ドラムとを回転させたのち、前記成形品受け治具内に表皮材をセットし、更にこの表皮材の上に基材をセットすると、上段回転ドラムを下降させて成形品押し付け治具を基材の裏面に圧着させることにより、表皮材を基材の表面に貼り付ける制御装置と、
e. から成る複合成形品の製造装置
【請求項2】
前記成形品受け治具には、セットされた表皮材を吸着して成形品受け治具内に固定するための吸引孔が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項3】
前記成形品受け治具及び成形品押え治具は、それぞれの回転ドラムに対して着脱自在に取り付けられていること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項4】
前記下段回転ドラムは、取り付けられている成形品受け治具が斜めになるようにその回転角を制御できること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項5】
前記製造する複合成形品は、基材の周縁の一部から表皮材側に形成した耳部が突出した構成から成ること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項6】
前記製造する複合成形品の基材には木目込み溝が形成され、表皮材の端縁はこの木目込み溝に臨んで形成された構成から成ること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項7】
前記下段回転ドラムには、成形品受け治具に臨ませて木目込み装置が設けられ、機体側にはこの木目込み装置を駆動するための木目込み駆動装置が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項8】
前記下段回転ドラムには、成形品受け治具に臨ませて耳部折り返し装置が設けられ、機体側にはこの耳部折り返し装置を駆動するための耳部折り返し駆動装置が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項9】
前記木目込み装置は、前記木目込み駆動装置側から前進して来た駆動カムにより上昇して表皮材の端縁側を基材側の木目込み溝内に折り曲げて押し込み貼り付ける構成となっていること、を特徴とする請求項7に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項10】
前記耳部折り返し装置は、前記耳部折り返し駆動装置の駆動桿の先端の上昇により折り返し治具が上昇して表皮材側の耳部を上方に90°折り曲げたのち、駆動桿の前進により折り返し治具が耳部を基材の裏側に折り返し、駆動桿の下降により折り返し治具が下降して耳部を基材の周縁の裏側に折り返して貼り付ける構成となっていること、を特徴とする請求項8に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項11】
前記下段回転ドラムと機体には、複合成形品に木目込みと耳部の折り返し部が形成されている場合には、この両方の加工ができるように木目込み装置とこの駆動装置及び耳部折り返し装置とこの駆動装置が設けられていること、を特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項12】
前記制御装置は、設定された加工プログラムに基づいて下段回転ドラム及び上段回転ドラムを回転させて対となる成形品受け治具と成形品押え治具を対向させると共に成形品受け治具内の吸引孔を負圧に形成し、上段回転ドラムを下降させて成形品受け治具内の半製品を押え込んで基材と表皮材を貼着し、次に木目込み又は耳部の折り返しを行う木目込み駆動装置又は耳部折り返し駆動装置の駆動を制御し、その上で上段回転ドラムを上昇させて木目込みおよび耳部折り返し済の複合成形品を解放する制御を行うように構成されていること、を特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の複合成形品の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2010−162794(P2010−162794A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7910(P2009−7910)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(591061769)ムネカタ株式会社 (40)
【出願人】(000225728)南条装備工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】