説明

基材の表面を改質する方法

少なくとも2種の固定可能流体材料は、基材の表面上に互いに隣接してデジタルで被着され、固定されて、異なる表面エネルギーを有する固定被膜を提供する。被覆基材は流体の流れを制御するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基材の表面を改質する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面上の液体の湿潤挙動は、典型的には基材表面の表面エネルギーおよび液体の表面張力の関数である。液体−基材表面の界面で、液体の分子が互いより強い引力を基材表面の分子に対して有する場合(接着力が凝集力より強い)、基材表面の湿潤が一般に起きる。あるいは、液体の分子が基材表面の分子に対してよりも互いに強く引きつけられる場合(凝集力が接着力より強い)、液体は一般に玉になり、基材の表面を濡らさない。
【0003】
基材の表面上の液体の表面湿潤特性を定量化する一つの方法は、当該表面上に置かれた液体の滴の接触角を測定することである。接触角は、液体の側から測定される固体/液体界面および液体/蒸気界面によって形成される角度である。液体は、液体の接触角が90度未満である時に典型的に表面を濡らす。典型的には、液体と表面との間の接触角の減少は湿潤の増加と相関関係にある。零の接触角は、一般に基材の表面上への液体の自然に起きる広がりに対応する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの用途(例えば、センサーおよび微小流体装置)のために、精密な高解像度パターンにより基材の表面上の液体の湿潤および/または流れを精密に制御する能力は重要でありうる。従って、こうした制御を提供できる追加の方法および材料を有することが必要であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、
表面を有する基材を提供する工程、
前記基材の前記表面の少なくとも一部分に、第1の固定可能流体材料をデジタルで被着させる工程、
前記第1の固定可能流体材料を固定して、前記基材の前記表面の少なくとも一部分上に、第1の固定被膜を提供する工程、
前記基材の前記表面の一部分および前記第1の固定被膜の一部分の少なくとも一方に、第2の固定可能流体材料をデジタルで被着させる工程および
前記第2の流体材料を固定して、第2の固定被膜を提供する工程、
を含む、基材の表面を改質する方法であって、
前記第1の固定被膜が、水に対して第1の平均後退接触角を有し、
前記第2の固定被膜が、前記第1の固定被膜に隣接しており、
前記第2の固定被膜が、水に対して第2の平均後退接触角を有し、かつ
前記1の平均後退接触角と前記第2の平均後退接触角との間の差の大きさが、少なくとも30度である、
基材表面を改質する方法を提供する。
【0006】
本発明による一実施形態において、第1の固定被膜および第2の固定被膜は互いに接触している。
【0007】
本発明による一実施形態において、本方法は、第1の固定被膜および第2の固定被膜の少なくとも一方に、第3の流体材料を被着させる工程を更に含む。
【0008】
もう1つの態様において、本発明は、表面を有する基材、第1の固定被膜および第2の固定被膜を含む物品であって、前記第1の固定被膜が、水に対して第1の後退接触角を有するとともに、前記基材に接触し、前記第2の固定被膜が、水に対して第2の後退接触角を有するとともに、前記基材および前記第1の固定被膜の少なくとも一方に接触し、前記第1の固定被膜と前記第2の固定被膜とが隣接しており、前記第1の後退接触角と前記第2の後退接触角との間の差の大きさが、少なくとも30度であり、前記第1の固定被膜および前記第2の固定被膜の少なくとも一方が、300ドット/インチ以上の少なくとも一次元の解像度を有するドットの配列を含む、物品を提供する。
【0009】
本発明による一実施形態において、第2の固定被膜は第1の固定被膜に接触している。
【0010】
本発明による方法および物品は、典型的には基材の表面上での流体の湿潤および/または流れを制御するために有用である。
【0011】
本願において、水に対するすべての接触角は、特に明記がないかぎり22℃で脱イオン水を用いる決定に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施技術において、第1の固定可能流体材料は、基材の表面の第1の領域にデジタルで被着され、固定されて第1の被膜を提供する。第2の固定可能流体材料は、基材の表面の第2の領域および/または第1の固定被膜に被着され、固定されて第2の固定被膜を提供する。第2の固定被膜は、第1の固定被膜に隣接しており、第1の固定被膜に接触していてもよい。本発明による一実施形態において、第2の固定被膜は、第1の固定被膜上に全く同じに重ね合わせられていてもよいが、本発明の他の実施形態において、全く同じには重ね合わせられていない。
【0013】
固定可能流体材料の固定は逐次または同時であってもよい。固定は、例えば、自然に起きてもよいか、または追加の工程から生じてもよい。固定の例証的な方法には、蒸発(例えば、揮発性溶媒の除去)、冷却(例えば、液体から固体への相変化または粘度の増粘をもたらす)および硬化(例えば、重合および/または架橋)が挙げられる。固定後、各材料は特徴的な平均表面エネルギーを有する。十分に異なる表面エネルギーを有する固定材料をもたらす材料を選択することにより、デジタル法を用いて流体制御エレメントを直接作ってもよい。第2の固定可能流体材料を印刷する前に第1の固定可能流体材料を固定しないと、例えば、第2の固定可能流体材料を印刷する前に(例えば、印刷済み基材の取扱中)基材表面上の第1の固定可能流体材料の元来の印刷位置からの移動、および/または第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料の混合をもたらしうる。従って、「固定被膜」という用語は液体である被膜を含まない。
【0014】
上述したように基材表面に材料を被着させるために、従来の方法(例えばスクリーン印刷)は、典型的には切換工程を必要とする、および/または塗布プロセス中に精密な見当合せを維持する上で問題を有する。これは、一般に無駄な材料および時間遅れにつながる。更に、従来のプロセスは、一般に短時間運転塗布(すなわち、小数の物品に画像形成した後に画像デザインの変更が必要であるプロセス)にうまく適合しない。それに反して、デジタル塗布法は、典型的には、材料を必要とする時および場所で材料を被着させることにより、こうした問題を克服する。
【0015】
更に、適切に選択された少なくとも2種の材料を被着させることにより、基材の特定の表面特性に頼らずにいかなる基材上にも流体制御エレメントを設けることが典型的に可能である。従って、同じ流体制御エレメントを似ていない材料(例えばガラスとポリオレフィン)よりなる基材上に調製してもよい。
【0016】
有用なデジタル塗布法には、例えば、スプレージェット印刷法、バルブジェット印刷法およびインクジェット印刷法が挙げられる。技術および配合の指針は周知されており(例えば、「カークオスマー化学技術エンサイクロペディア(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)」、第四版(1996)、20巻、ニューヨーク州のジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons(New York))、頁112〜117参照)、当業者の能力の範囲内である。これらの方法の組み合わせも、例えば米国特許第6,513,897号明細書(トキー(Tokie))に記載されたように本発明の実施技術において用いてよい。これらの方法の内、インクジェット印刷法は、高解像度が必要とされる用途のために典型的に適合する。
【0017】
例証的なインクジェット印刷法には、熱インクジェット印刷、連続インクジェット印刷、ピエゾインクジェット印刷、音響インクジェット印刷およびホットメルトインクジェット印刷が挙げられる。熱インクジェットプリンタおよび/またはプリントヘッドは、例えば、ヒューレット−パッカード(Hewlett−Packard Corporation(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,California))およびレックスマーク・インターナショナル(Lexmark International)(ケンタッキー州レキシントン(Lexington,Kentucky))から商業的に容易に入手できる。連続インクジェットプリントヘッドは、例えば、ドミノ・プリンティング・サイエンシーズ(Domino Printing Sciences)(英国ケンブリッジ(Cambridge,United Kingdom))などの連続プリンター製造業者から市販されている。ピエゾインクジェットプリントヘッドは、例えば、トリデント・インターナショナル(Trident International)(コネチカット州ブルックフィールド(Brookfield,Connecticut))、エプソン(Epson)(カリフォルニア州トランス(Torrance,California))、日立データ・システム・コーポレーション(Hitachi Data Systems Corporation)(カリフォルニア州サンタクララ(Santa Clara,California))、ザールPLC(Xaar PLC)(英国ケンブリッジ(Cambridge,United Kingdom))、スペクトラ(Spectra)(ニューハンプシャー州レバノン(Lebanon,New Hampshire))およびイダニト・テクノロジーズ(Idanit Technologies,Limited)(イスラエル国のリションレジオン(Rishon Le Zion(Israel))から市販されている。ホットメルトインクジェットプリンタは、例えばゼロックス(Xerox Corporation)(コネチカット州スタンフォード(Stamford,Connecticut))から市販されている。
【0018】
本発明の実施技術において用いられる流体材料は、例えば、固定プリントヘッドを基準として基材を動かす、または基材を基準としてプリントヘッドを動かすことを含む種々の技術によって基材表面のいかなる部分にもデジタルで被着させてもよい(例えば、インクジェット印刷してもよい)。従って、本発明の方法は、基材の表面上に流体材料の詳細パターンを形成させることが可能である。流体材料は、湿潤能力および印刷パスの回数に応じて合体してもよい、分離したままでよい、またはそれらの組み合わせであってもよいドットの配列として基材の表面上に被膜として所定のパターン(但し、ランダムパターンを用いてもよい)において典型的にはデジタルで被着される。例えば、インクジェット印刷を用いると、配列は300ドット/インチ(すなわちdpi)(120ドット/cm)、600dpi(240ドット/cm)、900dpi(350ドット/cm)以上、あるいは特にインクジェット印刷技術を用いる場合、1200dpi(470ドット/cm)以上でさえある少なくとも一次元の解像度を有しうる。例証的なパターンには、例えば多角形または楕円などの幾何学的外形を形成しうる線(例えば、直線、曲線または曲線)が挙げられる。
【0019】
幾つかの実施形態において、第2の固定被膜は、ドットの傾斜パターン(例えば、パターンの少なくとも1次元に沿って増加するドット密度を有するパターン)を含んでもよい。こうした実施形態において、第1の固定被膜は不連続被膜(例えばドットの配列)または連続被膜であってもよい。例証的なこうした一実施形態において、第1の固定被膜および第2の固定被膜はそれぞれ逆に向いた傾斜パターンを含んでもよい。
【0020】
第1の流体材料および第2の流体材料を基材に被着させ、それらを特定のパターンにおいて固定することにより、基材の表面上に1個以上の流体制御エレメントを設けることが典型的に可能である。例証的な流体制御エレメントには、図1a、1b、2および3に示したようなコンジットおよびウェルが挙げられる。
【0021】
ここで図1aを参照すると、本発明による例証的な物品100は表面110を有する基材102を含む。第1の固定被膜120は第2の固定被膜130に隣接し、第2の固定被膜130を囲んでいる。第1の固定被膜120および第2の固定被膜130はそれぞれ境界160で接し、よってウェル150を形成する。例えば水性流体を制御するために適する一実施形態において、第1の固定被膜120は疎水性であり、第2の固定被膜130は親水性である。本発明による一実施形態において、第1の固定被膜120および第2の固定被膜130はそれぞれ連続膜を含んでもよい。
【0022】
もう1つの実施形態において、接近して間隔をとったドットの配列をそれぞれが含む第1の固定被膜120および第2の固定被膜130をそれぞれ図1bで示している。ドットは同じかまたは異なるサイズであってもよい。この実施形態において、境界160は、それぞれ第1の固定被膜120および第2の固定被膜130のいずれか一方または両方に連続的に接触しても、または接触してなくてもよい。
【0023】
ここで図2を参照すると、本発明による例証的な物品200は表面210を有する基材202を含む。同じ第1の固定被膜220a、bは第2の固定被膜230に隣接し、流体コンジット250を形成する。一般化された流体取扱部品241および242は、第2の固定被膜230の両方の反対端に配置される。例えば水性流体を制御するために適しうる一実施形態において、第1の固定被膜220a、bは疎水性であり、第2の固定被膜230は親水性である。従って、流体取扱部品241に接触している水性流体は、流体取扱部品242に第2の固定被膜230に沿って毛管作用によって引っ張られる。
【0024】
もう1つの実施形態において、第2の固定被膜は、例えば図3に示したように第1の固定被膜の一部分上で少なくとも部分的に支持してもよい。図3を参照すると、本発明による例証的な物品300は表面310を有する基材302を含む。第1の固定被膜320は表面310に接触する。第2の固定被膜330は第1の固定被膜320の一部分上で支持される。第1の固定被膜320および第2の固定被膜330の露出表面はそれぞれ境界360で接し、よってウェル350を形成する。例えば水性流体を制御するために適する一実施形態において、第1の固定被膜320は疎水性であり、第2の固定被膜330は親水性である。本発明による一実施形態において、第1の固定被膜320および第2の固定被膜330はそれぞれ連続膜を含んでもよい。
【0025】
第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料は、(例えばインクジェット印刷によって)基材に流体としてデジタルで被着させ、後で基材の表面に固定させうるいかなる材料であってもよい。
【0026】
本発明による一実施形態において、第1の固定被膜が固定後に比較的低い表面エネルギーを有しうる一方で、第2の固定被膜は比較的高い表面エネルギーを有する(例えば疎水性の第1の固定被膜および親水性の第2の固定被膜)。もう1つの実施形態において、第1の固定被膜が比較的高い表面エネルギーを有しうる一方で、第2の固定被膜は比較的低い表面エネルギーを有する(例えば親水性の第1の固定被膜および疎水性の第2の固定被膜)。第2の流体材料を第1の固定被膜の少なくとも一部分上に被着させる幾つかの場合、第2の流体材料の自然に起きる湿潤が第1の固定被膜上で起きるように第1の固定被膜が第2の流体材料の表面張力より高い表面エネルギーを有することが望ましい場合がある。
【0027】
有用な固定可能材料は、例えば、溶媒中の溶液または分散液、硬化性モノマーの無溶媒混合物、溶融固形物(例えば、高温のワックスまたは熱可塑性樹脂)およびそれらの組み合わせであってもよい。本発明による一実施形態において、第1の流体材料および第2の流体材料の少なくとも一方は、その中に分散および/または溶解した不揮発性成分を有する揮発性液体ビヒクル(例えば分散液または溶液)を含む。例証的な不揮発性成分には、1種以上の有機ポリマー、重合性モノマーおよびオリゴマー、コロイド無機酸化物粒子および無機酸化物前駆体、ならびに自己組織化材料が挙げられる。有用な有機ポリマーには、例えば、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよびそれらの前駆体が挙げられる。
【0028】
固定後に低い表面エネルギーを示す流体材料には、1種以上の反応性成分(例えば1種以上の重合性モノマー)と任意に組み合わせた、シリコーン、シリコーン前駆体、フルオロポリマー、フルオロポリマー前駆体、種々の自己組織化材料およびそれらの組み合わせを含む材料が挙げられる。
【0029】
本発明による一実施形態において、第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料の少なくとも一方はフルオロポリマーまたはフルオロポリマー前駆体の少なくとも一方を含んでもよい。本明細書で用いられる「フルオロポリマー」という用語は、あらゆる有機弗素化ポリマー(例えば、ポリマーの全重量を基準にして少なくとも20重量%の弗素含有率を有するポリマー)を意味する。フルオロポリマーは、例えば、溶媒に分散または溶解させてもよいか、または選択されたデジタル塗布温度で液体であってもよい。有用なフルオロポリマーは、ポリマーの主鎖および/または側鎖上に弗素を有してもよい。フルオロポリマー前駆体は、典型的には、縮合性基、重合性基および/または架橋性基を有するオリゴマーおよび/またはモノマーの弗素化有機化合物を含み、1種以上の硬化剤(例えば開始剤、ハードナー、触媒)を任意に含んでもよい。
【0030】
フルオロポリマー被覆基材を調製するために有用なフルオロポリマー溶液は、可溶性の少なくとも1種のフルオロポリマーおよび/またはフルオロポリマー前駆体を含むいかなる溶液であってもよい。有用なフルオロポリマー溶液およびフルオロポリマー前駆体溶液は、例えば、米国特許第4,132,681号明細書(フィールド(Field)ら)、第4,446,269号明細書(シルバ(Silva)ら)、第6,350,306号明細書(ツネリ(Tunelli)ら)、第5,459,191号明細書(ツミネロ(Tuminello)ら)、第6,365,276号明細書(ルジシ(Rudisi)ら)において、および2003年5月29日出願の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/477,772号明細書(ジング(Jing)ら)、発明の名称「基材の表面を改質する方法および該方法からの物品(METHOD OF MODIFYING A SURFACE OF A SUBSTRATE AND ARTICLES THEREFROM)において記載されている。
【0031】
市販されているフルオロポリマーおよびフルオロポリマー前駆体の有用な溶液には、例えば、「ルミフロン(LUMIFLON)」LF200、「ルミフロン(LUMIFLON)」LF600Xおよび「ルミフロン(LUMIFLON)」LF910LMという商品名で旭硝子(Asahi Glass Company)(日本国東京)によって販売されている熱硬化性FEVEフルオロポリマー溶液、「3Mノベック・エレクトロニック・コーティング(3M NOVEC ELECTRONIC COATING)」EGC−1700、「3Mノベック・エレクトロニック・コーティング(3M NOVEC ELECTRONIC COATING)」EGC−1702および「3Mノベック・エレクトロニック・コーティング(3M NOVEC ELECTRONIC COATING)」EGC−1704という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)によって販売されているフルオロポリマー溶液、ならびに「セフラル・コート(CEFRAL COAT)」A202B、「セフラル・コート(CEFRAL COAT)」A600Xおよび「セフラル・コート(CEFRAL COAT)」PX−40という商品名でセントラルガラス(Central Glass Company)(日本国東京)によって販売されているフルオロポリマー溶液が挙げられる。
【0032】
市販されている溶媒可溶性の例証的な有用なフルオロポリマーには、「カイナール(KYNAR)」2800という商品名でジネオン(Dyneon,LLC(ミネソタ州オークデール(Oakdale,Minnesota))から入手できる(90/10のモノマー重量比)VDF/HFPを有するVDFとHFPのコポリマー、「カイナール(KYNAR)」7201という商品名でジネオン(Dyneon,LLC(ミネソタ州オークデール((Oakdale,Minnesota))から入手できる(39/61のモノマー重量比)VDF/TFEを有するVDFとTFEのコポリマー、「THV200」(40/20/40のモノマー重量比)、「L−5447」(65/11/24のモノマー重量比)、「カイナール(KYNAR)」9301(56/19/25のモノマー重量比)、「ジネオン・フルオロエラストマー(DYNEON FLUOROELASTOMER)」FE−5530(63/28/9のモノマー重量比)、「ジネオン・フルオロエラストマー(DYNEON FLUOROELASTOMER)」FT−2481(44/33/23のモノマー重量比)、「ジネオン・フルオロエラストマー(DYNEON FLUOROELASTOMER)」FE−5730(41/35/24のモノマー重量比)および「ジネオン・フルオロエラストマー(DYNEON FLUOROELASTOMER)」FE−5830(36.6/38.5/24.9のモノマー重量比)という商品名を有するVDF、HFPおよびTFEモノマー(VDF/HFP/TFE)のターポリマー、「テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))」AF1600および「テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))」AF2400という商品名でE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont de Nemours & Company)によって販売されているフルオロポリマーが挙げられる。
【0033】
フルオロポリマーを溶解させるための溶媒の選択は、典型的には特定のフルオロポリマーに応じて異なる。適切な溶媒を選択する方法は当業界で周知されている。フルオロポリマーを溶解させるために用いてもよい例証的な有機溶媒には、アミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミド)、ケトン(例えばメチルエチルケトン)、アルコール(例えばメタノール)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン)、ヒドロフルオロエーテル(例えば「3Mノベック・エンジニアド・フルイッド(3M NOVEC ENGINEERED FLUID)」HFE7100、「3Mノベック・エンジニアド・フルイッド(3M NOVEC ENGINEERED FLUID)」HFE−7200という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手できるヒドロフルオロエーテル)、過弗素化溶媒(例えば「3Mフルオリナート・エレクトロニック・リキッド(3M FLUORINERT ELECTRONIC LIQUID)」FC−77という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手できる過弗素化有機溶媒)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
有用な分散性フルオロポリマーには、例えば、米国特許第6,518,352号明細書(ビスカ(Visca)ら)、第6,451,717号明細書(フィッツジェラルド(Fitzgerald)ら)、第5,919,878号明細書(ブラザーズ(Brothers)ら)および国際公開第02/20676A1号パンフレット(クルパース(Krupers)ら)、2002年3月14日公開)に記載されたフルオロポリマーが挙げられる。
【0035】
市販されているフルオロポリマーおよびフルオロポリマー前駆体の有用な分散液には、例えば、二弗化ポリビニリデン(PVDF)分散液(例えば「カイナール(KYNAR)」500という商品名でアトフィナ・ケミカル(ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,Pennsylvania))によって販売されているもの)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(例えば「テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))」GRADE30、「テフロン(登録商標)(TEFLON(登録商標))」GRADE307Aという商品名でE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont de Nemours & Company)によって販売されているもの、あるいは「ジネオン(DYNEON)」TF5032PTFEまたは「ジネオン(DYNEON)」TF5050PTFEという商品名でジネオン(Dyneon)によって販売されているもの)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−弗化ビニリデン分散液(例えば「ジネオン(DYNEON)」THV 220D FLUOROTHERMOPLASTICおよび「ジネオン(DYNEON)」THV340D FLUOROTHERMOPLASTICという商品名でジネオン(Dyneon)によって販売されているもの)が挙げられる。
【0036】
自己組織化材料は、典型的には比較的小さい(例えば、炭素原子数30以下、または炭素原子数18以下でさえある)分子であり、基材表面に配位することができる極性頭基に結合された比較的に非極性の尾によって一般に特徴付けられる。有用な自己組織化材料には、例えば、米国特許第6,433,359号明細書(ケリー(Kelley)ら)および第6,376,065号明細書(コルバ(Korba)ら)に記載されたように(例えば共有結合または非共有結合によって)基材の表面に固定(例えば単層として強く結合される)されうる材料が挙げられる。こうした材料は、例えば、銅、ニッケル、銀および金などの金属基材のために特に有用でありうる。
【0037】
例証的な有用な自己組織化材料には、式Rf−Z−X
(式中、Rfは炭素原子数1〜22のパーフルオロアルキル基であり、
Zは二価接続基または共有結合であり、
Xは、−PO3H、−CO2H、
【化1】

およびそれらの塩からなる群から選択される)
を有する材料が挙げられる。
【0038】
有用なパーフルオロアルキル基Rfには、直鎖パーフルオロアルキル基(例えばパーフルオロメチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシル、パーフルオロヘキサデシルおよびパーフルオロエイコシル)および分枝パーフルオロアルキル基(例えば、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロイソオクチルおよびパーフルオロ(1,1,2−トリメチルペンチル))が挙げられる。
【0039】
有用な二価接続基には、例えば、共有結合、炭素原子数1〜22の直鎖または分枝の二価アルキレンなどの有機基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、デシレン)または炭素原子数6〜10の二価アリーレン、二価芳香族炭化水素(例えばフェニレン)、硫黄、酸素、アルキルイミノ(例えば、−NR−(式中、Rは、より低級のアルキル基である))、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルアミノ、カルボニルジオキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、スルホンアミド、カルボンアミド、スルホンアミドアルキレン(例えば、−SO2NR1(CH2x−(式中、xは1〜6であり、R1は炭素原子数1〜4のより低級のアルキルである)、カルボンアミドアルキレン、カルボニルオキシ、ウレイレンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。他の二価接続基も用いてよい。幾つかの実施形態において、Zは活性水素原子(例えば、ヒドロキシルまたは酸の水素原子)も他の親水性基もないように選択してよい。これらが、こうした材料から調製された被膜の水との前進接触角を減らす傾向がありうるからである。幾つかの実施形態において、Zは比較的小さくてもよい(例えば、RfとXを接続する主鎖中に20個未満の原子を有する)。
【0040】
有用なX基には、−PO3H、−CO2H、
【化2】

およびそれらの塩が挙げられる。
【0041】
例証的な有用な塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩)、アンモニウム塩およびアンモニウム塩誘導体(例えば、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩および第四アンモニウム塩)、ならびに第四ホスホニウム塩(例えば、テトラメチルホスホニウム塩およびフェニルトリブチルホスホニウム塩)が挙げられる。
【0042】
場合によって、合一してRfおよびZが少なくとも7個の炭素原子を含むようにRfおよびZを選択することが望ましい場合がある。
【0043】
自己組織化材料および自己組織化材料の調製方法に関する更なる詳細は、例えば、2003年5月29日出願の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/448,229号明細書(ジング(Jing)ら)、発明の名称「基材の表面を改質する方法および該方法からの物品(METHOD OF MODIFYING A SURFACE OF A SUBSTRATE AND ARTICLES THEREFROM)において見られる。
【0044】
本発明による一実施形態において、第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料の少なくとも一方は、少なくとも1種のシリコーンおよび/または例えば米国特許第6,461,419号明細書(ウー(Wu)ら)に記載されたようにシリコーンを形成させるために硬化させてもよいシリコーン前駆体(例えば、−SiR13-n(OR2nなどの1個以上のシリル基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー。式中、R1はアリール基またはアルキル基を表し、各R2は独立してH、アルキル基(例えば、1〜6個の炭素原子を有する)またはアシル基を表し、nは1、2または3である)を含んでもよい。
【0045】
例証的なシリコーンおよびシリコーン前駆体には、400〜150,000の分子量を有するヒドロキシおよび/またはアルコキシ末端のポリジメチルシロキサン、ヒドロキシおよび/またはアルコキシ末端のジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ヒドロキシおよび/またはアルコキシ末端のポリジフェニルシロキサン、ヒドロキシシリルおよび/またはアルコキシシリル末端のポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、ポリエステル、ポリウレタンおよびポリアクリレート、ジアルキルジアルコキシシランおよび置換ジアルキルジアルコキシシラン(例えば、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ビス(3−シアノプロピル)ジメトキシシラン、(2−クロロエチル)メチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、(2−クロロエチル)メチルジイソプロポキシシラン、(3−クロロプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−シアノプロピル)メチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルメトキシシラン)、アリールおよびジアリール置換のアルコキシシラン(例えば、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシランおよびフェニルメチルジメトキシシラン)、ヒドロキシシリルおよびアルコキシシリル置換のアレン(例えば、1,4−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼンおよび1,3−ビス(メトキシジメチルシリル)ベンゼン)、トリアルキルシリル置換アルコキシシラン(例えば、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシランおよびトリメチルシリルメチルジメトキシシラン)、環式アルコキシシラン(例えば1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペント−3−エン)、アシルオキシ置換シラン(例えば、ジメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシランおよびジエチルベンゾイルオキシアセトキシシラン)、ジェミナルシランジオール(例えば、ジフェニルシランジオールおよびジシクロヘキシルシランジオール)、アルキルおよび/またはアリール置換の環式シロキサン(例えば、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)ヘプタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンおよびオクタメチルテトラシロキサン)、アルケニル置換アルコキシシラン(例えば、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランおよびビニルフェニルジエトキシシラン)ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
本発明による一実施形態において、シリコーン前駆体は、分子当たり少なくとも3個(例えば、4〜6個)の反応性シリル基を有する少なくとも1種の化合物を含んでもよい。反応性シリル基は、例えば、アルコキシシリル基またはアシルオキシシリル基であってもよい。こうした化合物の例には、三官能性架橋剤(例えば、イソブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン)、四官能性架橋剤(例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメトキシジシロキサン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、テトラキス(ブトキシエトキシエトキシ)シラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘクスオキシ)シラン、テトラキス(2−メタクリルオキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラ−n−プロポキシシラン)およびより高い官能性の架橋剤(例えば、ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]−ポリプロピレンオキシド、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビオ(トリエトキシシリル)メタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)−1,7−オクタジエン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリル)プロピル)ウレア、ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメチルシロキシ)シクロブテン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、テトラアセトキシシラン、テトラアリルオキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、1−トリエトキシシリル)−2−(ジエトキシメチルシリル)エタン、および官能性ポリマー(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン)、ジエトキシシロキサン−s−ブチルアルミネートコポリマー、ジエトキシシロキサン−エチルチタネートコポリマー、ジエトキシシロキサン−エチルホスフェートコポリマー)およびそれらの組み合わせが挙げられる。追加のシリコーン系固定可能流体材料は、例えば、米国特許第5,217,805号明細書(ケッセル(Kessel)ら)および第5,286,815号明細書(リール(Leir)ら)に記載されている。
【0047】
第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料のいずれか一方または両方は、固定可能流体材料を少なくとも部分的に硬化させるのに有効な量で少なくとも1種の硬化剤(例えば、触媒、開始剤、光開始剤、架橋剤またはハードナーなど)を任意に含んでもよい。こうした硬化剤は、当業界で周知されている方法を用いて固定可能流体材料の特定の化学的性質に基づいて典型的に選択される。
【0048】
触媒の1つの有用なクラスは酸発生触媒を含む。こうした触媒は、第1の流体材料中に存在しうるカチオン重合性成分(例えば、加水分解性基を有するシリコーン前駆体)の硬化(すなわち架橋)を促進する酸(例えば活性化工程後に)を提供する。活性化は、例えば、可視光線、電子ビーム線またはマイクロ波線により第1の流体材料を加熱するか、または照射することにより実行してもよい。硬化メカニズムの初期加水分解反応のために必要とされる水分は、例えば、基材、材料自体または最も一般的に大気湿度から得てもよい。触媒を用いる場合、触媒は、反応性シラン官能性化合物100重量部を基準にして典型的には0.1〜20重量部、例えば2〜7重量部の量で存在する。有用な酸触媒に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第5,554,664号明細書(ラマナ(Lamanna)ら)、第5,514,728号明細書(ラマナ(Lamanna)ら)および第5,340,898号明細書(キャヴェッザン(Cavezzan)ら)に見られる。
【0049】
シリコーン、シリコーン前駆体、フルオロポリマー、フルオロポリマー前駆体、弗素化自己組織化材料およびそれらの組み合わせは、第1の固定可能材料中でいかなる濃度でも存在してよい。しかし、こうした材料の基材表面上への沈着の比率を促進するために、第1の固定可能材料中のそれらの濃度は、材料の全重量を基準にして5、10、20、30、40重量%を上回る、または50重量%を上回ってさえもよい。シリコーン、シリコーン前駆体、フルオロポリマー、フルオロポリマー前駆体、弗素化自己組織化材料およびそれらの組み合わせは、第1の固定可能材料の不揮発性成分の20、30、40、50、60、70、80重量%を上回る、または90重量%を上回ってさえも含んでよい。
【0050】
もう1つの実施形態において、第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料の少なくとも一方は、前述したフルオロポリマーおよびシリコーン、および/またはそれらの前駆体、および/または自己組織化材料の組み合わせを含んでもよい。
【0051】
本発明による一実施形態において、第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料の少なくとも一方は、例えば、親水性ポリマーまたはその前駆体の溶液、あるいはコロイド無機酸化物ゾルまたはその前駆体あるいはそれらの組み合わせなどの親水性被膜前駆体を含んでよい。
【0052】
有用な親水性ポリマーには、ヒドロキシルポリマー(例えば、ビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、ポリアクリル酸ホモポリマーおよびコポリマー)、アミド官能性ポリマー(例えば、ビニルピロリドンホモポリマーおよびコポリマー、ポリアクリルアミドホモポリマーおよびコポリマー)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのセグメントを含むポリマー)、セルロース系ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびそれらの組み合わせ)、スルホン化フルオロポリマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
有用なコロイド無機酸化物は、典型的には分散媒体に懸濁された少なくとも1種の無機酸化物の粒子を含む。無機酸化物は、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、珪素、チタン、錫、インジウム、亜鉛、鉛、ゲルマニウム、ハフニウム、クロム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、イットリウム、ニオブ、タンタルおよびモリブデンから選択された少なくとも1種の元素を含む少なくとも1種の酸化物を含んでもよい。例証的なコロイド無機酸化物(ゾルを含む)には、コロイドアルミナ、コロイドシリカ、コロイドジルコニアおよびそれらの組み合わせが挙げられる。無機コロイドを用いる場合、無機コロイドは、典型的には、無機コロイドが通過しなければならないあらゆるオリフィス(例えばノズル)より小さい最大粒度を有するべきである。典型的には、100ナノメートル未満(例えば20nm未満)の最大粒度を有するコロイド無機酸化物をインクジェット印刷法のために用いてもよい。インクジェット印刷性コロイド無機酸化物に関する更なる詳細は、例えば米国特許第6,485,138号明細書(クボタ(Kubota)ら)に見られる。分散媒体は、典型的には水、または水と良好な相溶性を有する少なくとも1種の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコール)と水を含む混合溶媒である。コロイド無機酸化物は、例えば、「ナイアコル(NYACOL)」という商品名でナイアコル・ナノテクノロジーズ(Nyacol Nanotechnologies,Inc.(マサチューセッツ州アシュランド(Ashland,Massachusetts))、「レバシン(LEVASIN)」という商品名でバイエル(Bayer Corporation)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,Pennsylvania))および「スノーテックス(SNOWTEX)」という商品名で日産化学・アメリカ(Nissan Chemical America Corp.)(テキサス州ヒューストン(Houston,Texas))からなどの供給業者から商業的に容易に入手できる。
【0054】
本発明による幾つかの実施形態において、第1の固定材料は、80度を上回る、または110度を上回りさえする水との後退接触角を有してもよい。
【0055】
後退接触角は、例えばASTM D5725−99「自動接触角試験機を用いるシート材料の表面湿潤性および吸収性のための標準試験法(Standard Test Method for Surface Wettability and Absorbency of Sheeted Materials Using an Automated Contact Angle Tester)(1999)を含め、当業界で周知されている様々な方法により容易に測定することが可能である。評価しようとする材料の表面積が分析のために小さ過ぎるか、または表面が得られる結果に影響を及ぼしうる地形的特徴を有する事例において、同じ組成のより大きな平滑フィルムに基づく結果を用いるべきである。
【0056】
第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料の少なくとも一方は、溶媒(例えば揮発性溶媒)を含んでもよい。溶媒は、例えば選択されたデジタル塗布法に第1の流体材料の粘度を調節するのに十分な量で存在してもよい。例えば、インクジェット印刷をデジタル塗布法として選択する場合、第1の流体材料は、60℃で30ミリパスカル・秒以下の粘度まで溶媒を添加することにより調節してもよい。例証的な溶媒には、水、有機溶媒(例えば、モノ−、ジ−またはトリ−エチレングリコールあるいはより高級なエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールまたはこうしたグリコールのエーテル、チオジグリコール、グリセロールおよびそのエーテルおよびエステル、ポリグリセロール、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミン、プロパノールアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、炭酸プロピレン)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料のいずれか一方または両方は、例えば、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、チキソトロープ、増粘剤またはそれらの組み合わせなどの1種以上の任意の添加剤を含んでもよい、しかし、基材表面に塗布中に小さいオリフィスを通して材料を押し進める場合(例えばインクジェット印刷)、オリフィスを目詰まりさせる傾向がありうる分散した微粒子が本質的にない材料を用いることが望ましい場合がある。
【0058】
第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料は、例えば、攪拌、加熱、超音波処理、ミリングおよびそれらの組み合わせなどの1つ以上の周知された技術によって構成成分を組み合わせることにより調製してもよい。典型的には、いかなる固体基材も本発明の実施技術において用いてもよい。例えば、有用な基材は、不透明、半透明、透明、表面模様付き、型模様付き、粗い、平滑、硬い、柔らかい、処理済み、下塗り済みまたはそれらの組み合わせであってもよい。基材は、典型的には有機材料および/または無機材料を含む。基材は、例えば、熱可塑性、熱硬化性またはそれらの組み合わせであってもよい。例証的な基材には、フィルム、プレート、テープ、ロール、型、シート、ブロック、成形品、布地および繊維複合材(例えば回路板)が挙げられ、ポリイミド、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、ポリアミドおよびそれらの組み合わせなどの少なくとも1種の有機ポリマーを含んでもよい。例証的な無機基材には、金属(例えば、クロム、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金およびそれらの合金)、セラミック、ガラス、磁器、石英、ポリシリコンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
基材表面は、例えば、基材表面へのフルオロポリマーの粘着力を促進するために処理してもよい。例証的な処理には、コロナ処理、火炎処理および化学処理が挙げられる。基材表面の化学処理(例えば、カップリング剤による処理)は、基材表面への第1の固定被膜および/または第2の固定被膜の粘着力を強化することが多い。適するカップリング剤には、熱分解するとチタン、ジルコニウムまたは酸化珪素をもたらすことができる従来のチタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤およびシランカップリング剤が挙げられる。例証的なシランカップリング剤には、ビニルトリエトキシシラン、ガンマメルカプトプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジアリルジクロロシラン、ガンマアミノプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラノール、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、テトラエチルオルトシリケートおよびそれらの組み合わせが挙げられる。カップリング剤を用いる場合、カップリング剤を原液で、または例えば揮発性有機溶媒中の溶液から被着させてもよい。化学的表面処理技術に関する更なる詳細は、例えば、ウー(S.Wu)著「ポリマー界面および粘着性(Polymer interface and Adhesion」(1982)、ニューヨーク州のマーセル・デッカー(Marcel Dekker(New York))、頁406〜434に記載されている。
【0060】
デジタル塗布後、第1の流体材料および第2の流体材料は基材の表面に固定される。本明細書で用いられる「固定される」という用語は、基材表面への結合(例えば、物理的および/または化学的)を意味する。固定は自然に起きてもよいか(例えば、幾つかのチキソトロピー材料の場合のように)、または追加の工程から生じてもよい。例証的な固定方法には、蒸発(例えば、揮発性溶媒の除去)、冷却(例えば、液体から固体への相変化または粘度の増粘をもたらす)および硬化(例えば、重合および/または架橋)が挙げられる。
【0061】
蒸発は、例えば、空気乾燥、オーブン乾燥、マイクロ波乾燥および減圧下(例えば真空)での蒸発を含む様々な従来の方法のいずれかによって達成してもよい。蒸発中、第1の固定被膜および/または第2の固定被膜の不揮発性成分は、例えば連続薄膜または不連続薄膜として基材の表面上に沈着する。
【0062】
第1の固定可能流体材料および第2の固定可能流体材料は、典型的には、第1の固定被膜および第2の固定被膜の表面エネルギーがそれぞれ異なるように選択されるべきである。例えば、固定材料の一方は親水性であってもよく、他方は疎水性であってもよい。従って、表面エネルギーの相違は、典型的には、第1の固定材料または第2の固定材料のいずれかに被着させてもよい一切の後続流体を第1の固定材料または第2の固定材料のいずれかの表面上に優先的に浸させる。
【0063】
基材表面上の隣接固定被膜の間の境界または複数の境界は連続であってもよいか、または隣接不連続部分の間の間隔が基材の一部分への第3の流体材料の自然に起きる湿潤を妨げるように十分に狭い場合に不連続であってもよい。
【0064】
典型的には、本発明により調製された流体制御エレメントの有効性は、第1の固定材料と第2の固定材料との間の表面エネルギーの差の大きさの増加につれて増加する。従って、水性流体を制御しようとする場合、第1の固定材料と第2の固定材料との間の水との平均後退接触角の差の大きさは零を上回るべきである。例えば、第1の固定材料と第2の固定材料との間の水との平均後退接触角の差の大きさは、少なくとも30度、40度、50度、60度、70度、または少なくとも90度でさえあってもよい。水性流体が関わる用途に関して、第1の固定材料と第2の固定材料の一方または両方が固定材料の表面の湿潤を促進するために水との比較的低い平均後退接触角(例えば20度未満)を有することができることが望ましい場合がある。他方、水性流体による湿潤が必要である場合、第1の固定材料と第2の固定材料の一方または両方が水との比較的より高い平均後退接触角(例えば、80度を上回るおよび/または110度を上回る)を有することが有用である場合がある。
【0065】
本発明による方法は、例えば、微小流体装置(チップ上のラブおよびドラッグデリバリーデバイス)、分析試験細片(例えば血糖試験細片)を含む様々な物品の製造において有用性を有する。
【0066】
本発明により調製された物品は単独で、または第3の材料(典型的には流体)と組み合わせて用いてもよい。こうした場合、第3の流体材料は、典型的には第1の固定材料と第2の固定材料に接触するようにされ、ここで、例えば、第3の流体材料を閉じ込めてもよいか、または毛管作用によって流体コンジットに沿って向けてもよい。例証的な第3の流体材料には、水、生体流体(例えば、血清、尿、唾液、涙および血液)、有機溶媒(弗素化有機溶媒を含む)およびインキが挙げられる。第3の材料は、例えば、ナイフ塗布、グラビア塗布、フラッド塗布、ロッド塗布、バー塗布およびスプレー塗布を含むいずれかの方法によって被覆してもよい。
【0067】
本発明の目的および利点を以下の非限定的な実施例によって更に例示するが、これらの実施例において挙げた特定の材料および材料の量、ならびに他の条件および詳細は本発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0068】
特に注記がない限り、実施例において用いられたすべての試薬は購入したか、またはアルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,Wisconsin))などの一般化学供給業者から入手できるか、あるいは既知の方法によって合成してもよい。
【0069】
以下の実施例において、接触角は、脱イオン水および「VCA2500XEビデオ・コンタクト・アングル・メジャリング・システム(VCA2500XE VIDEO CONTACT ANGLE MEASURING SYSTEM)」という商品名でASTプロダクツ(AST Products)(マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica,Massachusetts))から得られる接触角測定装置を用いて測定した。報告された接触角は、少なくとも3個の滴の測定から決定された平均値を表す。
【0070】
フルオロポリマー分散液Aの調製
250mL三口フラスコにコンデンサ、スターラーおよび温度計を取り付けた。窒素装備品もコンデンサの出口で鉱油バブラー付きガラス器具に取り付けた。25gのN−メチルパーフルオロオクチルスルホンアミドエチルアクリレート(米国特許第2,803,615号明細書(アールブレヒト(Ahlbrecht)ら)に記載された一般手順により調製されたもの)、32gのアセトン、128gの水、「V−50」という商品名で和光ケミカルUSA(Wako Chemical USA,Inc.)(バージニア州リッチモンド(Richmond,Virginia))から得られる0.2gの水溶性ラジカル開始剤および「エトクアッド(ETHOQUAD)」18/12という商品名でアクゾ・ノーベル・ケミカルズ(Akzo Nobel Chemicals,Inc.)(イリノイ州シカゴ(Chicago,Illinois))から得られる1.7gの界面活性剤をフラスコに投入した。混合物を窒素下で20分にわたり攪拌し、加熱マントルおよび熱コントローラを用いて65℃で加熱した。発熱を監視し制御しつつ反応を放置して8時間にわたり進めた。反応生成物を冷却し、排出し、濾過し、減圧での蒸発によってアセトンを除去した。得られた分散液(フルオロポリマー分散液A)を室温に冷却した。分散液は、動的光散乱によって測定して100nm未満の粒度を有していた。分散液の固形物含有率は15重量%であり、表面張力は28ダイン/センチメートルであった。
【0071】
スルホポリエステルジオール前駆体(PCPSSIP)の調製のための一般手順
337.3部のジメチル−5−ソジオスルホイソフタレート、483部のジエチレングリコールおよび0.82部の酢酸亜鉛の混合物を180℃で加熱し、メタノール副生物を反応混合物から蒸留した。4.5時間後、反応生成物の1H NMR分析によると、1%未満の残留メチルエステルが生成物中に存在したことが示された。ジブチル錫ジラウレート(1.51部)を反応混合物に添加し、温度を180℃で保持し、1753部のイプシロンカプロラクタム(ユニオン・カーバイド(Union Carbide Corp.)(コネチカット州ダンベリー(Danbury,CT))から得られたもの)を約30分にわたって分割して添加した。添加が完了した時、反応混合物を180℃で4時間にわたり保持し、その後冷却して、製品であるポリカプロラクトンスルホイソフタル酸ナトリウム(PCPSSIP)をもたらした。
【0072】
SUS分散液Aの調製
64.8gのPCPSSIP(スルホポリエステルジオール前駆体の調製のための一般手順により調製され、ヒドロキシル当量=370g/当量を有するもの)、10.86gのポリカプロラクトンジオール(「トーン(TONE)」201という商品名でユニオン・カーバイド(Union Carbide Corporation)から得られたもの、ヒドロキシル当量262g/当量)、14.30gのエチレングリコール、80.36gのイソホロンジイソシアネート、0.13gのジブチル錫ジラウレートおよび90mLのメチルエチルケトンを1リットル三口丸底フラスコ内で組み合わせることによりシラノール末端スルホポリ(エステル−ウレタン)の水性分散液を調製した。混合物を80℃で4時間にわたり加熱し、その時間後に、83mLのメチルエチルケトン中の5.34gの3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび5.43gのブチルアミンの溶液をフラスコに添加し、混合物を55℃で更に15分にわたり攪拌した。混合物を激しく攪拌しながら、260mLの水を15分にわたりフラスコに添加した。その後、フラスコに蒸留ヘッドおよびコンデンサを取り付け、メチルエチルケトンを減圧下でフラスコから蒸留除去して、水中のシラノール末端スルホポリ(エステル−ウレタン)の分散液をもたらした(SUS分散液A、固形物41%)。
【0073】
SUS分散液Bの調製
857.5gのPCPSSIP(スルホポリエステルジオール前駆体の調製のための一般手順により調製され、ヒドロキシル当量=333g/当量を有するもの)、655gのポリカプロラクトンジオール(「トーン(TONE)」201という商品名でユニオン・カーバイド(Union Carbide Corporation)から得られたもの)、749.4gの4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1.1mLのジブチル錫ジラウレートおよび2261.8gのアセトンを1リットル三口丸底フラスコ内で組み合わせることによりシラノール末端スルホポリ(エステル−ウレタン)の水性分散液を調製した。混合物を45℃で38時間にわたり攪拌し、その後、141gのアセトン中の141.1gの3−アミノプロピルトリエトキシシランの溶液をフラスコに添加し、混合物を45℃で更に15分にわたり攪拌した。混合物を激しく攪拌しながら、3566gの水を30分にわたりフラスコに添加した。その後、フラスコに蒸留ヘッドおよびコンデンサを取り付け、メチルエチルケトンを減圧下でフラスコから蒸留除去して、水中のシラノール末端スルホポリ(エステル−ウレタン)の分散液をもたらした(SUS分散液B、固形物43%)。
【0074】
実施例1
12gのSUS分散液A、12gのSUS分散液B、12.66gのジエチレングリコール、13.34gの脱イオン水および「シルウェット(SILWET)」L−77という商品名でクロンプトンOSiスペシャルティーズ(Crompton OSi Specialties(コネチカット州ミドルベリー(Middlebury,Connecticut))から得られる0.205gのシリコーン界面活性剤を手により混合することで組み合わせることにより第1の固定可能流体材料(FFM1)を調製した。
【0075】
15gのフルオロポリマー分散液A、7.0gのジエチレングリコールおよび「シルウェット(SILWET)」L−77という商品名でクロンプトンOSiスペシャルティーズ(Crompton OSi Specialties)から得られる0.205gのシリコーン界面活性剤を手により混合することで組み合わせることにより第2の流体材料(SFM1)を調製した。
【0076】
プリントヘッド(「ザールジェット(XAARJET)」XJ128−360という商品名でザールPLC(Xaar,PLC)(英国のケンブリッジ(Cambridge,United Kingdom))から得られるもの)を用いて、FFM1材料およびSFM1材料をビニルシート(厚さ50マイクロメートル、「コントロールタック・プラス・グラフィック・フィルム(CONTROLTAC PLUS GRAPHIC FILM)」180−10という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)から得られる)上にインクジェット印刷した。プリントヘッドを固定位置に取り付け、ビニルシートをx−y並進可能ステージ上に取り付け、プリントヘッドとステージとの間の一定距離を維持しつつステージをプリントヘッドに対して動かした。従って、公称滴体積30ピコリットルにより295×317ドット/インチ(116×124ドット/cm)の解像度で室温で材料を印刷した(35Vパルス電圧、1.25kHz発射周波数)。
【0077】
FFM1材料を4.5インチ×6インチ(11cm×15cm)ソリッドフィルド矩形パターンでビニルシート上に二回インクジェット印刷(すなわち、印刷し、その後、見当合せで上に印刷した)し、その後、熱対流炉内で70℃で乾燥させた。次に、SFM1材料を図4に示したパターン(基準化目的で、印刷パターン中の大きな正方形は各辺で1インチ(2.54cm)であった)によりビニルシート上に四回インクジェット印刷した。ここで、図4の黒っぽい部分に対応する部分はSFM1材料で印刷し、その後、熱対流炉内で130℃で乾燥させた。
【0078】
得られた印刷フィルムは、隣接固定親水性被膜(乾燥FFM1材料から生じたもの)上に印刷され、その被膜によって囲まれた固定疎水性被膜(乾燥SFM1材料から生じたもの)の正方形および円形の領域を有していた。固定疎水性被膜は、それぞれ121/130/91度の脱イオン水との静的/前進/後退接触角を有していた。固定親水性被膜は、それぞれ75/86/27度の脱イオン水との静的/前進/後退接触角を有していた。
【0079】
この被覆膜を水でフラッド被覆した。水は、疎水性被膜で被覆された膜の領域から後退したが、図5で示したように親水性被膜で被覆された表面を浸した。
【0080】
RDスペシャルティーズ(RD Specialties)(ニューヨーク州ウェブスター(Webster,New York))から得られるナンバー6線巻棒を用いてFFM1材料をビニルシート(厚さ50マイクロメートル、「コントロールタック・プラス・グラフィック・フィルム(CONTROLTAC PLUS GRAPHIC FILM)」180−10という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)から得られる)上に被覆し、70℃で5分にわたりオーブン内で加熱することにより乾燥させた。得られた乾燥被膜は、それぞれ73/80/26度の脱イオン水との静的/前進/後退接触角を有していた。
【0081】
RDスペシャルティーズ(RD Specialties)から得られるナンバー6線巻棒を用いてSFM1材料をビニルシート(厚さ50マイクロメートル、「コントロールタック・プラス・グラフィック・フィルム(CONTROLTAC PLUS GRAPHIC FILM)」180−10という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)から得られる)上に被覆し、135℃で5分にわたりオーブン内で加熱することにより乾燥させた。得られた乾燥被膜は、それぞれ118/124/109度の脱イオン水との静的/前進/後退接触角を有していた。
【0082】
実施例2
FFM1を図4に示したパターンの逆であるパターンにより見当合せで2回印刷した(すなわち、図4の明るい部分を印刷した)ことを除き、実施例1の手順を繰り返した。得られた印刷フィルムは、隣接固定親水性被膜(乾燥FFM1材料から生じたもの)によって囲まれた固定疎水性被膜(乾燥SFM1材料から生じたもの)の正方形および円形の領域を有していた。
【0083】
この被覆膜を水でフラッド被覆した。水は、疎水性被膜で被覆された膜の領域から後退したが、図6で示したように親水性被膜で被覆された表面を浸した。
【0084】
実施例3
2.5gのポリアクリル酸(カタログ番号32,366−7、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Company)から得られるGPCによる分子量2000)、2,5gのコロイドシリカ(粒径20nm、固形物40重量%、「ナルコ(NALCO)」2327という商品名でオンデア・ナルコ(Ondea Nalco)(イリノイ州ナパービル(Naperville,Illinois))から得られる)、45gの脱イオン水および「シルウェット(SILWET)」L−77という商品名でクロンプトンOSiスペシャルティーズ(Crompton OSi Specialties)から得られる0.066gのシリコーン界面活性剤を手により混合することで組み合わせることにより第1の固定可能流体材料(FFM2)を調製した。
【0085】
FFM2を実施例1で用いられたFFM1の代わりに用いたことを除き、実施例1の手順を繰り返した。
【0086】
得られた印刷フィルムは、隣接固定親水性被膜(乾燥FFM2材料から生じたもの)上に印刷され、その被膜によって囲まれた固定疎水性被膜(乾燥SFM1材料から生じたもの)の正方形および円形の領域を有していた。固定疎水性被膜は、それぞれ114/116/77度の水との静的/前進/後退接触角を有していた。固定親水性被膜は、それぞれ75/82/34度の水との静的/前進/後退接触角を有していた。
【0087】
この被覆膜を水で湿らせた。水は、疎水性被膜で被覆された膜の領域から後退したが、図7で示したように親水性被膜で被覆された表面を浸した。
【0088】
RDスペシャルティーズ(RD Specialties)から得られるナンバー6線巻棒を用いてFFM2材料をビニルシート(厚さ50マイクロメートル、「コントロールタック・プラス・グラフィック・フィルム(CONTROLTAC PLUS GRAPHIC FILM)」180−10という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)から得られる)上に被覆し、70℃で5分にわたりオーブン内で加熱することにより乾燥させた。得られた乾燥被膜は、それぞれ75/82/34度の脱イオン水との静的/前進/後退接触角を有していた。
【0089】
実施例4
FFM2を図4に示したパターンの逆であるパターンにより見当合せで2回印刷した(すなわち、図4の明るい部分を印刷した)ことを除き、実施例3の手順を繰り返した。得られた印刷フィルムは、隣接固定親水性被膜(乾燥FFM2材料から生じたもの)によって囲まれた固定疎水性被膜(乾燥SFM1材料から生じたもの)の正方形および円形の領域を有していた。
【0090】
この被覆膜を水で湿らせた。水は、疎水性被膜で被覆された膜の領域から後退したが、図8で示したように親水性被膜で被覆された表面を浸した。
【0091】
本発明の種々の予見できない修正および変更を本発明の範囲および精神から逸脱せずに当業者によってなすことができ、本発明が本明細書で記載された例証的な実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1a】本発明の一実施形態による例証的な物品の斜視図である。
【図1b】図1aの境界160の拡大図である。
【図2】本発明の一実施形態によるもう1つの例証的な物品の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による例証的な物品の斜視図である。
【図4】実施例において用いられたプリントパターンのデジタル写真である。
【図5】本発明の例証的な一実施形態により調製された湿潤被覆フィルムのデジタル写真である。
【図6】本発明の例証的な一実施形態により調製された湿潤被覆フィルムのデジタル写真である。
【図7】本発明の例証的な一実施形態により調製された湿潤被覆フィルムのデジタル写真である。
【図8】本発明の例証的な一実施形態により調製された湿潤被覆フィルムのデジタル写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基材を提供する工程、
前記基材の前記表面の少なくとも一部分に、第1の固定可能流体材料をデジタルで被着させる工程、
前記第1の固定可能流体材料を固定して、前記基材の前記表面の少なくとも一部分上に、第1の固定被膜を提供する工程、
前記基材の前記表面の一部分および前記第1の固定被膜の一部分の少なくとも一方に、第2の固定可能流体材料をデジタルで被着させる工程、および
前記第2の流体材料を固定して、第2の固定被膜を提供する工程、
を含む、基材の表面を改質する方法であって、
前記第1の固定被膜が、水に対して第1の平均後退接触角を有し、
前記第2の固定被膜が、前記第1の固定被膜に隣接しており、
前記第2の固定被膜が、水に対して第2の平均後退接触角を有し、かつ
前記第1の平均後退接触角と前記第2の平均後退接触角との間の差の大きさが、少なくとも30度である、
基材の表面を改質する方法。
【請求項2】
前記第2の固定被膜が、前記第1の固定被膜に接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の固定被膜を、前記第1の固定被膜上に全く同じには重ね合わさない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の後退接触角と前記第2の後退接触角との間の差が、少なくとも70度である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の後退接触角と前記第2の後退接触角との間の差が、少なくとも90度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の固定被膜が、20度未満の水に対する後退接触角を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の固定材料が、80度超の水に対する後退接触角を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の固定材料が、110度超の水に対する後退接触角を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の材料を、前記第1の固定被膜の領域に被着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方が、60℃で30ミリパスカル.秒未満の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方を、インクジェット印刷によって被着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方を、ピエゾインクジェット印刷によって被着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方を固定する工程が、乾燥を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方を固定する工程が、冷却を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の材料または前記第2の流体材料を固定する工程が、重合または架橋の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基材が、ポリシリコン、セラミック、ガラス、布地または有機ポリマーの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方が、フルオロポリマー分散液、フルオロポリマー溶液、シリコーンポリマーまたはそれらの組み合わせの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の流体材料および前記第2の流体材料の少なくとも一方が、下記の式を有する自己組織化材料を含む、請求項1に記載の方法:
f−Z−X
(Rfは、炭素原子数1〜22のパーフルオロアルキル基であり、
Zは、二価接続基または共有結合であり、かつ
Xは、−PO3H、−CO2H、
【化1】

およびそれらの塩からなる群から選択される)。
【請求項19】
前記第2の流体材料が、少なくとも1種の親水性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の固定被膜または前記第2の固定被膜の一方が親水性であり、かつ前記第1の固定被膜または前記第2の固定被膜の一方が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の固定材料および前記第2の固定材料の少なくとも一方に、第3の材料を被着させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第3の材料が生体流体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第3の材料が水を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の固定被膜および前記第2の固定被膜の少なくとも一方が、ドットの配列を含み、前記配列が、300ドット/インチ以上の少なくとも一次元の解像度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記解像度が600ドット/インチ超である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の領域および前記第2の領域の少なくとも一方が、線、コンジット、英数字および円からなる群から選択された少なくとも1つのデザインエレメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法により調製される物品。
【請求項28】
表面を有する基材、第1の固定被膜および第2の固定被膜を含む物品であって、前記第1の固定被膜が、水に対して第1の後退接触角を有するとともに、前記基材に接触しており、前記第2の固定被膜が、水に対して第2の後退接触角を有するとともに、前記基材および前記第1の固定被膜の少なくとも一方に接触しており、前記第1の固定被膜および前記第2の固定被膜が隣接しており、前記第1の後退接触角と前記第2の後退接触角との間の差の大きさが、少なくとも30度であり、かつ前記第1の固定被膜および前記第2の固定被膜の少なくとも一方が、300ドット/インチ以上の少なくとも一次元の解像度を有するドットの配列を含んでいる物品。
【請求項29】
前記第2の固定被膜が、前記第1の固定被膜に接触している、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記第2の固定被膜が、前記第1の固定被膜上に全く同じには重ね合わされていない、請求項28に記載の物品。
【請求項31】
前記解像度が600ドット/インチ超である、請求項28に記載の物品。
【請求項32】
前記第1の後退接触角と前記第2の後退接触角との間の差が、少なくとも70度である、請求項28に記載の物品。
【請求項33】
前記第1の後退接触角と前記第2の後退接触角との間の差が、少なくとも90度である、請求項28に記載の物品。
【請求項34】
前記第2の固定被膜が、20度未満の水に対する後退接触角を有する、請求項28に記載の物品。
【請求項35】
前記第1の固定被膜が、80超の水に対する後退接触角を有する、請求項28に記載の物品。
【請求項36】
前記第1の固定被膜が、110度超の水に対する後退接触角を有する、請求項28に記載の物品。
【請求項37】
前記基材が、ポリシリコン、セラミック、ガラス、布地または有機ポリマーの少なくとも1種を含む、請求項28に記載の物品。
【請求項38】
前記基材が可撓性である、請求項28に記載の物品。
【請求項39】
前記第1の固定被膜および前記第2の固定被膜の少なくとも一方が、下記の式を有する自己組織化材料を含む、請求項28に記載の物品:
f−Z−X
(Rfは、炭素原子数1〜22のパーフルオロアルキル基であり、
Zは、二価接続基または共有結合であり、かつ
Xは、−PO3H、−CO2H、
【化2】

およびそれらの塩からなる群から選択される)。
【請求項40】
前記第2の固定被膜が、少なくとも1種の親水性ポリマーを含む、請求項28に記載の物品。
【請求項41】
前記第1の固定被膜または前記第2の固定被膜の一方が親水性であり、かつ前記第1の固定被膜または前記第2の固定被膜の一方が疎水性である、請求項28に記載の物品。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−501708(P2007−501708A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533090(P2006−533090)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015217
【国際公開番号】WO2004/106077
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】