説明

基材成形装置

【課題】基材の搬送不具合の発生を防止ないし抑制できる基材成形装置を提供する。
【解決手段】基材成形装置であって、板状体Wを加熱する予備加熱装置50と、板状体Wを吊り下げた状態のハンガー30を予備加熱装置50内へと搬入するためのガイドレール82及び第1スライドレール58a及び接続レール86と、接続レール86上に配されたハンガー30と当接し、接続レール86に沿ってハンガー30を予備加熱装置50外から予備加熱装置50側へ押し込むハンガーロッド76と、接続レール86に沿って筒状に延びる第1シリンダ74と、第1シリンダ74が作動することによって第1シリンダ74の延びる方向に沿って移動する第1移動部78とを備え、ハンガーロッド76は、第1シリンダ74外に配され、第1移動部78と接続されると共に、第1移動部78の移動に伴って予備加熱装置50外から予備加熱装置50側へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を基材に成形する基材成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基材成形装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この基材成形装置は、板状体を加熱する予備加熱装置と、板状体を吊り下げた状態で保持するハンガーを載置することのできるスライドレールとを備えている。板状体が予備加熱装置へ搬入される際には、予備加熱装置の搬入口からハンガーに吊り下げられた状態の板状体がスライドレールによって搬入され、板状体の予備加熱が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−20366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような基材成形装置では、通常、搬入口側にシリンダが配されており、このシリンダ内には、シリンダが作動することでシリンダ内外へと伸縮するロッドが収容されている。そして、このロッドは板状体を保持するハンガーと当接しており、シリンダを作動することでロッドが移動して予備加熱装置内へハンガーが押し込まれる構成とされている。
【0005】
しかしながら、ロッドは予備加熱装置内へハンガーを押し込む際にロッド自体も予備加熱装置内に入り込み、予備加熱装置内で加熱されたロッドが再びシリンダ内へと収容されると、シリンダ内のパッキン等が熱により損傷し、シリンダからのエア漏れや、エア漏れに伴ってエア圧が不安定となることによるロッドの飛び出し等が発生する。この結果、シリンダの故障による基材の搬送不具合が発生する。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものである。本発明は、基材の搬送不具合の発生を防止ないし抑制できる基材成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を保持装置によって吊り下げた状態で搬送しながら基材に成形する基材成形装置であって、前記板状体を加熱する加熱装置と、前記板状体を吊り下げた状態の前記保持装置を前記加熱装置外から前記加熱装置内へと搬入するための搬入レールと、前記搬入レール上に配された前記保持装置と当接し、前記搬入レールに沿って該保持装置を前記加熱装置外から前記加熱装置側へ押し込む保持装置用ロッドと、前記搬入レールに沿って筒状に延びる第1シリンダと、前記第1シリンダ外に配され、該第1シリンダが作動することによって該第1シリンダの延びる方向に沿って移動する第1移動部と、を備え、前記保持装置用ロッドは、前記第1シリンダ外に配され、前記第1移動部と接続されると共に、前記第1移動部の移動に伴って前記加熱装置外から前記加熱装置側へ移動する基材成形装置に関する。
【0008】
上記の基材成形装置によると、加熱装置内まで移動した保持装置用ロッドが第1シリンダ内に収容されることがないので、保持装置用ロッドが第1シリンダに熱影響を及ぼすことを防止することができる。このため、第1シリンダが熱によって不具合を起こすことを防止することができ、基材の搬送不具合の発生を防止ないし抑制することができる。
【0009】
前記搬入レールは、前記加熱装置外に配された外側搬入レールと、前記加熱装置内に配された内側搬入レールと、前記外側搬入レールに沿って移動可能に配された接続レールと、に分割されており、前記搬入レールに沿って筒状に延びる第2シリンダと、前記第2シリンダ外に配され、該第2シリンダが作動することによって該第2シリンダの延びる方向に沿って移動する第2移動部と、前記接続レールと前記第2移動部との間を接続する接続部材と、を備え、前記接続レールは、前記第2シリンダ外に配され、前記第2移動部の移動に伴って前記加熱装置外から前記加熱装置側へ移動してもよい。
【0010】
搬入レールを加熱装置の外側と内側とで連接されていると、加熱装置の外側から大気が流入するため、加熱装置内を温めることが難しい。上記の構成によると、搬入レールを加熱装置の外側と内側とで連接しなくとも、第2移動部が移動することで接続レールを内側搬入レール側まで移動させることができる。そして、さらに、加熱装置内まで移動した接続レールが第2シリンダ内に収容されることがないので、接続レールが第2シリンダに熱影響を及ぼすことを防止することができる。このため、加熱装置の内側と外側との間を例えば開閉扉等で物理的に遮断することができ、加熱装置内を効果的に温めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、基材の搬送不具合の発生を防止ないし抑制できる基材成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基材Kの製造方法のフローチャートを示す。
【図2】板状体Wを予備成形するための予備成形型10の断面図であり、予備成形型10が閉じる前の状態を示す。
【図3】板状体Wを予備成形するための予備成形型10の断面図であり、予備成形型10が閉じた後の状態を示す。
【図4】予備成形体W1を本成形するための本成形型20の断面図であり、本成形型20が閉じる前の状態でかつ予備成形型がセット中心に導入された状態を示す。
【図5】予備成形体W1を本成形するための本成形型20の断面図であり、本成形型20が閉じる前の状態でかつ予備成形型が成形中心側に配置された状態を示す。
【図6】予備成形体W1を本成形するための本成形型20の断面図であり、本成形型20が閉じた後の状態を示す。
【図7】板状体Wがハンガー30に吊り下げられた状態を斜め前方から視た斜視図を示す。
【図8】板状体Wがハンガー30に吊り下げられた状態を側方から視た側面図を示す。
【図9】基材成形装置100の全体を模式的に表した平面図を示す。
【図10】ハンガー回収装置70を除いた基材成形装置100の斜視図を示す。
【図11】図9の矢印A方向から視たときの側面であって、第1シリンダ74及び第2シリンダ84を作動する前のハンガー投入機構80の側面図を示す。
【図12】第1シリンダ74を作動した状態のハンガー投入機構80の側面図を示す。
【図13】第1シリンダ74及び第2シリンダ84を作動した状態のハンガー投入機構80の側面図を示す。
【図14】図13の状態において、接続レール86の先端と第1スライドレール58aの先端とが重畳する部位を矢印B方向から視たときの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して実施形態を説明する。図1は、図6に示す基材Kの製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、基材Kを製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料からなる板状体W全体を加熱した後に(予備加熱工程)、板状体Wの蓄熱状態を保持し(本加熱工程)、蓄熱した板状体Wを予備成形体Zに予備成形し(予備成形工程)、予備成形体Zを基材Kに本成形する(本成形工程)。これにより、所定の形状に成形された基材Kを得ることができる。
【0014】
板状体Wに含まれる植物性繊維とは、植物由来の繊維材料のことである。このような繊維材料は、例えば、綿、麻、サイザル、ジュート、ケナフ等から採取することが可能である。この中では、特にケナフが好ましい。ケナフは、成長が早くしかもCOを多く吸収することから、地球環境保全にとって有効だからである。また、ケナフの靭皮からは比較的長くて丈夫な繊維を採取することが可能だからである。
【0015】
板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。この中では、特にポリプロピレンが好ましい。
【0016】
板状体Wを製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料を混綿させることでマット状とした後に、得られたマット体を熱圧プレスによって板状に成形する。これにより、所定の厚みを有する板状体Wを製造することができる。このような板状体Wの製造方法は、例えば、特開2001−179716号公報、特開2002−371455号公報等に開示されている。なお、板状体Wは、「熱成形用繊維板」、「プレボード」等の別の名称で呼ばれる場合がある。
【0017】
板状体Wを加熱することによって、当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。例えば、板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合には、ポリプロピレンの融点は160℃〜170℃であるため、板状体Wをこれ以上の温度(例えば200℃)に加熱することで当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。
【0018】
図2、図3は、板状体Wを予備成形するための予備成形型10の断面図である。図2に示すように、予備成形型10は、一対の金型12、14を有している。このうち一方の金型12は、中央部分が凹んだ形状を有しており、他方の金型14は、中央部分が突出した形状を有している。一対の金型12、14は、型面同士が互いに対向するようにして水平方向(図2、図3では左右方向)に配置されている。そして、金型12、14の型面間に板状体Wが金型12、14の型閉じ方向に対して垂直方向(図2、図3では上下方向)に吊り下げられた状態で配置される。図3に示すように、予備成形型10を構成するこれら一対の金型12、14は、例えば金型12を金型14側に移動させ型閉じすることで上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。これにより、板状体Wは、予備成形体W1に成形される。
【0019】
図4、図5、図6は、板状体Wを本成形するための本成形型20の断面図である。図4に示すように、本成形型20は、一対の金型22、24を有している。このうち一方の金型22は、中央部分が凹んだ形状を有しており、他方の金型24は、中央部分が突出した形状を有している。一対の金型22、24は、型面22a、24a同士が互いに対向するようにして水平方向(図では左右方向)に配置されている。図4において両型面22a、24aの中心に配置された予備成形体W1の位置を以下「セット中心」という。
【0020】
図5に示すように、予備成形体W1は、両金型22、24によって行われるプレス加工に先立って、予め他方の金型24の型面24a側(成形中心側)に配置される。次に図6に示すように、本成形型20を構成するこれら一対の金型22、24は、例えば金型22を金型24側に移動させ型閉じすることで上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。
【0021】
予備成形体W1を本成形するための本成形型20は、冷間プレス用の成形型が用いられる。ここでいう「冷間プレス」とは、本成形型20の型面を積極的に加熱しないで行うプレス成形のことを意味するが、加工熱や摩擦熱等によって本成形型20の型面22a、24aがある程度加熱される場合も含まれる。加熱した予備成形体W1を本成形型20(冷間プレス型)でプレスすることによって、予備成形体W1に含まれている熱可塑性樹脂が冷却されて固化する。これにより、所定形状に成形された基材Kを得ることができる(図6参照)。図6において両型面22a、24aの中心に配置された基材Kの位置を以下「成形中心」という。
【0022】
このようにして得られた基材Kは、軽量でかつ強度が高いことから、車両用内装材の基材として用いることができる。例えば、基材Kは、ドアトリム、インストルメントパネル、シートバックボード、パーティションボード、コンソールボックス、ピラーガーニッシュ、クォータトリム等に用いることができる。
【0023】
図2と図4を比較すればわかるように、予備成形型10を構成する一対の金型12、14のクリアランスCL1は、本成形型20を構成する一対の金型22、24のクリアランスCL2よりも大きく設定されている。例えば、CL2が5mmである場合には、クリアランスCL1がそれよりも大きい10mmに設定されている。従って、板状体Wを一回で基材Kに成形するのではなく、まず、板状体Wを予備成形体W1に成形し、次に、この予備成形体W1を基材Kに成形することにより、段階的に(2段階で)成形することが可能となっている。
【0024】
さらに、本成形工程でセット中心に導入された予備成形体W1を成形中心側に移動させて本成形することにより、両金型22、24を型閉じする途中で予備成形体W1が型面の一部に引っ掛かることを回避し、プレス加工後に基材Kの中央部分が型面の一部に引っ掛かった部分から引き延ばされて薄肉となることを規制できる。
【0025】
続いて板状体Wを保持するハンガー30の構成について説明する。図7は、板状体Wを吊り下げた状態で保持するためのハンガー30の斜視図である。図8は、ハンガー30の側面図である。
【0026】
図7に示すように、ハンガー30には、鉄やアルミニウム等の金属製のパイプ状部材からなるシャフト32が設けられている。シャフト32の長さは、板状体Wの横幅よりも大きく形成されている。シャフト32の下部には、板状体Wの上縁部を挟むための2つのクランプ34が取り付けられている。シャフト32の上部には、後述する各スライドレール58a,58bに載置される2つのローラ36が取り付けられている。シャフトの両端には一対の取付部材38,38が設けられており、ローラ36は、この取付部材38を介してシャフト32の上部にそれぞれ取り付けられている。なお、ローラ36は、取付部材38の表面側と裏面側にそれぞれ取り付けられている。従って、ハンガー30には、4つのローラ36が取り付けられている。また、クランプ34及びローラ36は、シャフト32に対して垂直方向に略同軸上に位置している。
【0027】
図8に示すように、クランプ34は、鉄やアルミニウム等の金属製の板状部材からなる一対の挟持部材を有している。両挟持部材は、可動板34aと固定板34bからなり、可動板34aと固定板34b間にヒンジ35を取付け、ヒンジ35を支点としてその下端部を開閉させることで板状体Wの上縁部を挟むことができるように構成されている。即ち、両挟持部材の一方は、同他方に対して板状体Wの上縁部を保持する閉じ位置と板状体Wの上縁部を解除する開き位置との間を開閉可能とされている。可動板34aと固定板34bの上端部間には、ばね部材37が取り付けられており、このばね部材37によって可動板34aの下端部がヒンジ35を支点として閉じる方向に付勢されている。可動板34aと固定板34bの下端部の内面側には、板状体Wが下方に落ちることを規制するための滑り止め部材34cが設けられている。
【0028】
続いて基材成形装置100の全体構成について説明する。図9は、基材Kを成形するための基材成形装置100の全体を模式的に表した平面図である。また、図10は、ハンガー回収装置70を除いた基材成形装置100の斜視図である。図9に示すように、基材成形装置100は、板状体Wを加熱する加熱装置と、板状体Wを基材Kに成形する成形装置と、ハンガー回収装置70とを備えている。加熱装置は、予備成形装置(加熱装置の一例)50と本加熱装置40とから構成されている。予備加熱装置50と本加熱装置40は、基材成形装置100の搬入口Gからこの順に配置されており、本加熱装置40は、予備加熱装置50と平面視略垂直かつ略水平に配置されている。即ち、予備加熱装置50と本加熱装置40は、平面視略L字状に直交する配置で連結されている。なお、搬入口Gは開閉可能な扉とされている。
【0029】
また、図9に示すように、ハンガー回収装置70の手前側(図9の紙面下側)にはハンガー投入機構80が設けられている。ハンガー投入機構80の手前側(図9の紙面下側)は開放されており、板状体Wを吊り下げた状態のハンガー30を投入することが可能なハンガー投入口80aとされている。板状体Wは、基材成形装置100の搬入口Gから予備加熱装置50に投入され、予備加熱装置50で約170℃に加熱され、さらに、加熱状態のまま本加熱装置40に投入される。
【0030】
ハンガー回収装置70は、基材Kの成形後に、基材Kから取り出された空き状態のハンガー30を回収するための装置である。空き状態のハンガー30は、図示しない移送機構によってハンガー回収装置70の搬入部70Aまで搬送され、回収部70Bで回収される。以上のように、基材Kの成形工程は、図9の矢印方向に従ってハンガー30を搬送しながら行われる。なお、ハンガー投入機構80は、ハンガー投入口80aから投入されたハンガー30を予備加熱装置50内に移送するための機構であり、その構成については後で詳しく説明する。
【0031】
本加熱装置40は、板状体Wをその内部に通過させることで均一に加熱することのできる熱風循環式の加熱炉42と、その加熱炉42の内部において板状体Wを搬送することのできる搬送装置44とを備えている。加熱炉42の内部温度は例えば200℃に設定されており、予め170℃付近に加熱された板状体Wを200℃に加熱し保持することにより、当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂の溶融状態を維持させることが可能となっている。
【0032】
図10に示す搬送装置44は、並列に配置された2台のチェーンコンベヤ46a、46bによって構成されており、この2台のチェーンコンベヤ46a、46bは同期して作動されている。この2台のチェーンコンベヤ46a、46bの上面には、前述したハンガー30を構成するシャフト32の両端部が載置される。これにより、搬送装置44は、ハンガー30によって吊り下げられた状態で保持される板状体Wを加熱炉42の内部で搬送することができるようになっている。
【0033】
加熱炉42の内部には、板状体Wを予備成形するための予備成形型10が設置されている。搬送装置44と予備成形型10は、加熱炉42の内部においてオフセット位置に設置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、搬送装置44の中心軸P1と、予備成形型10の中心軸P2が水平方向に離れた位置という意味である。
【0034】
予備成形型10の下方には、本成形型20が設置されている。予備成形型10と本成形型20は、オフセット位置に配置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、予備成形型10の中心軸P2と、本成形型20の中心軸P3が上下方向に離れた位置という意味である。なお、加熱炉42の略後半部は、平面視において略L字形に形成されており、オフセット位置に配置された搬送装置44と予備成形型10をともに収容できるようになっている。本成形型20は、予備成形型10の下方であって、かつ、加熱炉42の外部に設置されている。
【0035】
図10に示すように、基材成形装置100は、ハンガー30に取り付けられたローラ36を回転可能に載置することが可能な第1スライドレール(搬入レール、内側搬入レールの一例)58aと、第2スライドレール58bとを備えている。第1スライドレール58aは、搬送装置44の手前側において搬送装置44と平面視略垂直かつ略水平に配置され、予備加熱装置50の搬入部50Aから本加熱装置40の搬入部40A(搬送装置44の手前側)まで延設されている。第2スライドレール58bは、搬送装置44の奥側において搬送装置44と平面視略垂直かつ略水平に配置され、搬送装置44の終端部40Bから予備成形型10まで延設されている。ハンガー30のローラ36(図7及び図8参照)が第1スライドレール58aに載置される際には、取付部材38の手前側(図8の左側)に取り付けられている2つのローラ36のみが載置される。ハンガー30のローラ36が第2スライドレール58bに載置される際には、取付部材38の奥側(図8の右側)に取り付けられている2つのローラ36のみが載置される。各スライドレール58a,58bに載置されたローラ36は各スライドレール58a,58bの頂点部(図示しない)に深く嵌り込むため、スライドレール58a,58bから外れ難い。このため、このように2つのローラ36のみが載置された状態でも、ハンガー30を第1スライドレール58aや第2スライドレール58bに沿って安定して搬送させることができる。
【0036】
第1スライドレール58aや第2スライドレール58bの近傍には、図示しない水平方向移動機構がそれぞれ設けられている。水平方向移動機構は、第1スライドレール58aや第2スライドレール58bに載置されているハンガー30を水平方向に移動させることが可能である。このため、第1スライドレール58aに載置されたハンガー30を、水平方向移動機構によって予備加熱装置50の搬入部50Aから本加熱装置40の搬入部40Aまで移送することが可能となっている。さらに、第2スライドレール58bに載置されたハンガー30を、水平方向移動機構によって搬送装置44の終端部40Bから予備成形型10まで移送することが可能となっている。また、基材成形装置100は、第1スライドレール58aから搬送装置44にハンガー30を受け渡すための図示しない第1ハンガー受け渡し機構と、搬送装置44から第2スライドレール58bにハンガー30を受け渡すための図示しない第2ハンガー受け渡し機構とを備えている。
【0037】
続いてハンガー投入機構80の構成について説明する。ここで、図11は、図9の矢印A方向から視たときの側面であって、第1シリンダ74及び第2シリンダ84を作動する前のハンガー投入機構80の側面図を示している。また、図12は、第1シリンダ74を作動した状態のハンガー投入機構80の側面図を示している。また、図13は、第1シリンダ74及び第2シリンダ84を作動した状態のハンガー投入機構80の側面図を示している。また、図14は、図13の状態において、接続レール86の先端と第1スライドレール58aの先端とが重畳する部位を矢印B方向から視たときの平面図を示している。
【0038】
ハンガー投入機構80は、図11に示すように、側面視において略水平に設けられた壁部72を備えている。壁部72は、板状体Wの搬入方向(図11の紙面左右方向)に沿って延びており、その手前側(図11の紙面手前側)の側面には、第1シリンダ74と、第2シリンダ84と、ガイドレール(搬入レール、外側搬入レールの一例)82とが設けられている。ガイドレール82は、第1シリンダ74と第2シリンダ84の間において第1スライドレール58aと同じ高さで設けられており、搬入レール72に沿って延びている。
【0039】
先に、第2シリンダ84について説明する。第2シリンダ84は、図11に示すように、壁部72の側面上方に設けられており、壁部72に沿って略水平に筒状に延びている。第2シリンダ84の手前側の側面には、当該側面に沿って移動可能な第2移動部88が取り付けられている。この第2移動部88には、L字状の接続部材87を介して第2シリンダ84に沿って延びる接続レール86が接続されている。接続レール86は、第1スライドレール58a及び第2スライドレール58bと同様の形状とされており、ハンガー30に取り付けられたローラ36を回転可能に載置することが可能とされている。また、接続レール86は、ガイドレール82よりわずかに短い長さとされている。接続レール86の裏面(手前側の面とは反対側の面)には、接続レール86に沿って溝(図示せず)が形成されている。この溝はガイドレール82の手前側においてガイドレール82と嵌合されており、これにより、接続レール86はガイドレール82に沿って移動可能とされている。即ち、第2シリンダ84を作動することによって第2移動部88が第2シリンダ84の側面に沿って移動し、これに伴って第2移動部88と接続された接続レール86がガイドレール82上を移動する構成となっている。このように第2シリンダ84は、シリンダを作動した場合にシリンダの外側において第2移動部88及び接続レール86が移動するいわゆるロッドレスシリンダとされている。
【0040】
第1シリンダ74は、図11に示すように、壁部72の側面下方に設けられており、壁部72に沿って略水平に筒状に延びている。第1シリンダ74の手前側の側面には、当該側面に沿って移動可能な第1移動部78が取り付けられている。この第1移動部78からは、第1シリンダ74に沿って予備加熱装置50側に向かって軸状のハンガーロッド(保持装置用ロッドの一例)76が延びている。このため、第1シリンダ74を作動することによって第1移動部78が第1シリンダ74の側面に沿って移動し、これに伴って第1移動部78から延びるハンガーロッド76が移動する構成となっている。このように第1シリンダ74についても、シリンダを作動した場合にシリンダの外側において第1移動部78及びハンガーロッド76が移動するいわゆるロッドレスシリンダとされている。
【0041】
続いて板状体Wが吊り下げられたハンガー30がハンガー投入機構80のハンガー投入口80aから予備加熱装置50内へと投入される態様について順に説明する。ハンガー30がハンガー投入機構80のハンガー投入口80aから投入される際には、まず、ハンガー30のローラ36のうち取付部材38の奥側に取り付けられている2つのローラ36のみが接続レール86上に載置される(図11の状態)。また、このとき、ハンガーロッド76の先端面76aが、図11に示すように、ハンガー30の取付部材38のうち搬入方向前側(図11の左側)に位置する取付部材38の側面と当接した状態となるように載置される。
【0042】
次に、図11の状態において、搬入口Gを開き、第2シリンダ84を作動して第2移動部88を移動させる。すると、第2移動部88と接続された接続レール86がガイドレール82に沿って搬入口Gから予備加熱装置50側へ移動する。第2シリンダ74が作動して第2移動部88が第2シリンダ84の側面の先端(図12における左端)まで移動した状態となると、接続レール86の先端部(図12における左端部)は、予備加熱装置50内に配された第1スライドレール58aの先端部(図12における右端部)と水平方向において重畳する。即ち、第1スライドレール58aの端部が図11の紙面手前側で、接続レール86の先端部が図11の紙面奥側で重畳した状態となる(図14参照)。また、予備加熱装置50内まで移動した接続レール86の先端部は、予備加熱装置50内で予備加熱炉52によって加熱される。一方、接続レール86上に載置されたハンガー30は、接続レール86の移動に伴って予備加熱装置50側へと移動し、ハンガー投入機構80と予備加熱装置50との間に位置した状態となる(図12の状態)。ハンガー30が予備加熱装置50側へと移動すると、ハンガー30と当接していたハンガーロッド76の先端面76aはハンガー30から離間する。
【0043】
また、接続レール86の先端部と第1スライドレール58aの先端部(図12における右端部)とが水平方向に重畳した状態(図12の状態)では、平面視おいて接続レール86と第1スライドレール58aとの間の間隔は、ハンガー30のシャフト32の直径よりもわずかに大きいものとなっている(図14参照)。このため、接続レール86が第1スライドレール5と水平方向に重畳した状態となると、当該重畳した部分では、ハンガー30のローラ36のうち取付部材38の手前側に取り付けられているローラ36が第1スライドレール58a上に載置されることとなる。従って、図12の状態では、予備加熱装置50内に位置するハンガー30の2つのローラ36のうち、取付部材38の奥側に取り付けられたローラ36が接続レール上に載置され、取付部材38の手前側に取り付けられたローラ36が第1スライドレール58a上に載置された状態となっている。
【0044】
次に、図12の状態において、第1シリンダ74を作動して第1移動部78を移動させる。すると、第1移動部78から延びるハンガーロッド76が搬入口Gから予備加熱装置50側へ移動する。そして、ハンガーロッド76が移動してハンガー30の取付部材38のうち搬入方向後側(図12の右側)に位置する取付部材38の側面と当接すると、その後ハンガーロッド76は、ハンガー30を予備加熱装置50側へと押し出しながら移動する。これにより、ハンガー投入機構80と予備加熱装置50との間に位置した状態のハンガー30は、ハンガーロッド76によって予備加熱装置50内へと押し込まれる(図13の状態)。なお、この状態では、図14に示すように、第1スライドレール58aの端部が図13の紙面手前側で、接続レール86の後端部(図13における右端部)が図13の紙面奥側で重畳した状態となる。また、予備加熱装置50内まで移動したハンガーロッド76の先端部は、予備加熱装置50内の予備加熱炉52によって加熱される。
【0045】
また、予備加熱装置50内へハンガー30が投入されると、上述したように、ハンガー30の取付部材38の奥側に取り付けられたローラ36が接続レールから離れ、ハンガー30の取付部材38の手前側に取り付けられたローラ36が第1スライドレール58a上に載置される。即ち、予備加熱装置50内へハンガー30が投入されることで、ハンガー30は、接続レール86から第1スライドレール58aへと移送される。
【0046】
以上の手順によって、板状体Wが吊り下げられたハンガー30は、ハンガー投入機構80のハンガー投入口80aから予備加熱装置50内へと投入される。その後、図13の状態から、第1シリンダ74及び第2シリンダ84を作動し、ハンガーロッド76及び接続レール86を再びハンガー投入機構80側へと戻す。そして、板状体Wが吊り下げられた他のハンガー30を接続レール86上に載置し、同様の手順により、他のハンガー30を予備加熱装置50内へと投入する。このようにして、板状体Wが吊り下げられた複数のハンガー30を、ハンガー投入機構80から予備加熱装置50内へと投入することができる。
【0047】
さて、上述したように、ハンガーロッド76及び接続レール86は、各シリンダ74、84の外側で各シリンダ74、84の側面に沿って移動するため、予備加熱装置50内へと投入されたハンガーロッド76の先端部及び接続レール86の先端部が再びハンガー投入機構80側へ戻った際に、ハンガーロッド76及び接続レール86が各シリンダ74、84内へ収容されることがない。このため、ハンガーロッド76の先端部及び接続レール86の先端部が予備加熱装置50内で加熱されたとしても、ハンガーロッド76や接続レール86に蓄積された熱が各シリンダ74、84内まで伝わり難く、各シリンダ74、84の作動に悪影響を及ぼすことがない。
【0048】
以上のように本実施形態に係る基材成形装置100では、予備加熱装置50内まで移動したハンガーロッド76が第1シリンダ74内に収容されることがないので、ハンガーロッド76が第1シリンダ74に熱影響を及ぼすことを防止することができる。このため、第1シリンダ74が熱によって不具合を起こすことを防止することができ、板状体Wの搬送不具合の発生を防止ないし抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る基材成形装置100では、予備加熱装置50外に配されたガイドレール82と予備加熱装置50内に配された第1スライドレール58aとの間が分割されている。そして、ガイドレール82に沿って移動可能に配された接続レール86と、第2シリンダ84外に配され、第2シリンダ84が作動することによって第2シリンダ84の延びる方向に沿って移動する第2移動部88と、接続レール86と第2移動部88との間を接続する接続部材87とを備えている。このため、ガイドレール82と第1スライドレール58aとの間を予備加熱装置50の外側と内側とで連接しなくとも、第2移動部88が移動することで接続レール86を第1スライドレール58a側まで移動させることができる。そして、さらに、予備加熱装置50内まで移動した接続レール86が第2シリンダ84内に収容されることがないので、接続レール86が第2シリンダ84に熱影響を及ぼすことを防止することができる。この結果、ガイドレール82と第1スライドレール58aとの間を開閉可能な搬入口Gで物理的に遮断することができ、予備加熱装置50内を効果的に温めることができる。
【0050】
上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施形態では、第1スライドレールとガイドレールとが分割されており、第2シリンダを作動させて接続レールを移動することで両者を接続する構成を例示したが、第1スライドレールとガイドレールとが連接されている構成であってもよい。
【0051】
(2)上記の実施形態では、第1移動部及び第2移動部が第1シリンダ及び第2シリンダの側方にそれぞれ配されている構成を例示したが、シリンダ外に移動部が配されていればよく、例えば、移動部がシリンダの上方に配された構成であってもよい。
【0052】
(3)上記の実施形態では、基材成形装置が予備加熱装置を備える構成を例示したが、例えば、基材成形装置が予備加熱装置を備えておらず、本加熱装置のみ備える構成であってもよい。この場合、本加熱装置の投入口近傍に本実施形態の第1シリンダが設けられた構成としてもよい。
【0053】
(4)上記の実施形態以外にも、各シリンダ及び各ロッドの構成については、適宜に変更可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0055】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0056】
10…予備成形型、12、14、22、24…金型、20…本成形型、22a、24a…型面、30…ハンガー、32…シャフト、34…クランプ、36…ローラ、38…取付部材、40…本加熱装置、42…加熱炉、44…搬送機構、50…予備加熱装置、52…予備加熱炉、58a…第1スライドレール、58b…第2スライドレール、70…ハンガー回収機構、74…第1シリンダ、76…ハンガーロッド、78…第1移動部、80…ハンガー投入機構、80a…ハンガー投入口、82…ガイドレール、84…第2シリンダ、86…接続レール、88…第2移動部、100…基材成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を保持装置によって吊り下げた状態で搬送しながら基材に成形する基材成形装置であって、
前記板状体を加熱する加熱装置と、
前記板状体を吊り下げた状態の前記保持装置を前記加熱装置外から前記加熱装置内へと搬入するための搬入レールと、
前記搬入レール上に配された前記保持装置と当接し、前記搬入レールに沿って該保持装置を前記加熱装置外から前記加熱装置側へ押し込む保持装置用ロッドと、
前記搬入レールに沿って筒状に延びる第1シリンダと、
前記第1シリンダ外に配され、該第1シリンダが作動することによって該第1シリンダの延びる方向に沿って移動する第1移動部と、を備え、
前記保持装置用ロッドは、前記第1シリンダ外に配され、前記第1移動部と接続されると共に、前記第1移動部の移動に伴って前記加熱装置外から前記加熱装置側へ移動することを特徴とする基材成形装置。
【請求項2】
前記搬入レールは、前記加熱装置外に配された外側搬入レールと、前記加熱装置内に配された内側搬入レールと、前記外側搬入レールに沿って移動可能に配された接続レールと、に分割されており、
前記搬入レールに沿って筒状に延びる第2シリンダと、
前記第2シリンダ外に配され、該第2シリンダが作動することによって該第2シリンダの延びる方向に沿って移動する第2移動部と、
前記接続レールと前記第2移動部との間を接続する接続部材と、を備え、
前記接続レールは、前記第2シリンダ外に配され、前記第2移動部の移動に伴って前記加熱装置外から前記加熱装置側へ移動することを特徴とする請求項1に記載の基材成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−10193(P2013−10193A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142805(P2011−142805)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】