説明

基板を表面処理する方法およびこの方法を実施するための装置

本発明は、基板(28)をコロナ放電によって表面処理する方法に関し、エアロゾル(5)が、放電の間、コロナ電極と基板(28)の間に形成された有効間隙によって画定された放電領域の中に噴霧され、エアロゾル(5)が重力の向きとは実質的に逆の向きに噴霧されるように設計される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の基板を表面処理する方法、およびこの方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第0279371号明細書から、プラスチック材料の表面にエアロゾルを付着させて、後続のコーティングで改善されたより均一な付着を達成すること、または、エアロゾルを適切に変更してプラスチック材料の表面に直接コーティングすることが知られている。
【0003】
最初のケースでは、例えば水がエアロゾルを形成するために霧化されうるのに対して、2番目のケースでは、すなわちプラスチック表面の直接コーティングでは、適切な溶液が使用される。
【0004】
コロナ放電を発生させる場合、離間された2つの電極が必要であり、電極の少なくとも一方には高電圧が印加され、他方の電極は接地される。エアロゾルは、コロナ電極と基板との間に形成されかつ約2mm以下の幅をもつ実効間隙によって画定された放電領域内に噴霧される。コロナ処理自体は、当技術分野で、例えば前述の欧州特許第0279371号明細書から知られており、したがって、同特許を有意に参照する。
【0005】
これらの電極の構造により、エアロゾルを作り出すために使用される噴霧器は、均一な大きさをもつエアロゾルを作り出すことはできない。すなわち、様々な大きさのエアロゾルが作り出される。このことは、異なる強度の付着ネスト(巣状体)(adhesion nests)を形成することにより付着力を生成すること、ならびに基板の表面に直接コーティングするためにエアロゾルが与えられたときにコーティングを施すこと、の両方に関して、基板の表面処理を少なくすることが指摘されている。
【0006】
この状況では、エアロゾルは、噴霧器に付随するスプレーノズルまたは電極の対応する配置により、上方から重力の向きに下の基板に対して霧化されるとともに、コロナ放電自体であることに留意されたい。
【0007】
基板をコロナ放電で表面処理する方法が、別の技術分野に関係する欧州特許出願公開第0160889号明細書で論じられており、この方法では、流体がコロナ電極として働き、流体は圧力を受けて電極プロファイルから出るとともに、良好な電気伝導性を有利に有し、電極プロファイルは支持電極に対して下部に配置される。
【0008】
コロナ電極と基板との間に実効間隙が形成される同じ技術分野での方法とは対照的に、従来型の流体電極は基板に対して間隙がない。すなわち、この電極は基板と直接接触している。
【0009】
コロナ放電を得るためには、良好な電気伝導性も有しているべき流体を連続的に供給する必要がある。すなわち、コロナ放電を引き起こすように、流体が出る電極プロファイルと基板との間に永続的な流体壁が配置されなければならない。
【0010】
しかしながら、既刊文献から知られるこうした方法はいくつかの理由で実用的でない。例えば、装置の各部は、労働安全に関して許容できない電位に永久的に接続される。支持電極を電気絶縁材料から製造するとともに、流体用の供給ラインをタンクから電気的に絶縁することが推奨されるが、このタンクは満たされていなければならず、このことは設備の連続運転中に生命を危うくする。この場合、製造フローを中断するとともに装置全体の電源を切ることが推奨されるが、これは、装置を運転することおよび方法を実施することを不経済にする。
【0011】
この状況では、基板に付着する流体を所望の時間内に乾かすことができないことも考慮されるべきである。さらに、塗布された流体は基板上に完全には付着せず、それによって排出流体に対する適切な捕集手段が必要となる。それにもかかわらず、排出流体による構成要素の汚染を防止することができず、したがって、これらの構成要素を頻繁に洗浄する必要があり、損傷させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、基板の表面のコーティングおよび/または付着の質が大幅に向上するように、総称型の方法およびこの方法を実施するための装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴をもつ方法、および請求項6の特徴をもつ装置によって解決される。
【0014】
驚くべきことに、基板の表面処理は、エアロゾルを下方から重力の向きとは逆向きに放電領域内に噴霧することにより大幅に改善されうることが認められている。この改善は、視覚的に目立つより均一なコーティングにおいて特に明らかである。
【0015】
より大きいエアロゾルは基板にまで運ばれることがなく、したがって、大きさがわずかに異なるエアロゾルだけが付着しかつ/または有効となる。いずれにしても、その結果の著しい改善が、コーティング成分が溶液の形で基板の表面に吹き付けられるようにする付着力の発生ならびにコーティングの発生の両方で認められる。
【0016】
付着力の発生に伴い、表面の付着が均一になり、それにより後続の処理、例えば完全に均一な質をもつコーティングが可能になる。
【0017】
これは不良の削減、したがって費用の著しい低減を伴い、このことは、処理される基板が通常は大量生産品として多数または多量に生産されるため、重要である。
【0018】
新規な方法は、本質的に追加費用なしに実現することもでき、最先端技術と比較すると、追加費用を発生させずに適合されうる装置で実施することもできる。すなわち、新規な方法はいわば費用中立である。
【0019】
さらに、方法では、すべての適切な基板、すなわちプラスチック、金属、木材、木質材料などを使用することができ、またプレートやプロファイルなどの安定した寸法をもつウェブまたは本体を使用することもできる。
【0020】
既述したように、様々な種類の流体をエアロゾルとして、流体自体とエアロゾルの性質の両方に関して使用することができる。
【0021】
方法を実施するための装置は少なくとも2つの電極を含み、電極の一方は電圧に接続され、他方は接地され、それによって一方のコロナ電極は基板と接触する支持面を有する支持電極を形成する。実効間隙によって形成されたコロナ電極の放電領域内にエアロゾルが噴霧器で噴霧され、それによって支持電極から外方を向く露出基板面がコロナ処理を受ける。
【0022】
本発明によれば、支持電極の下方へ向けられた面は支持面を形成し、したがって、エアロゾルは、本質的に重力の向きに逆らって、本質的に下方から上方へ放電領域内に噴霧器で噴霧される。
【0023】
同じ技術分野に関する最先端技術では放電領域は支持電極を通って広がる仮想水平面の上方に形成されるのに対して、新規な装置によるこの放電領域はこの水平面の下方に位置する。
【0024】
新規な装置は基本的に、他方のコロナ電極を単に配置することによって実施することができ、他方のコロナ電極は、180°回転することによってカウンター電極として、支持電極に付随しかつ支持電極から離間される。これにより複雑な構造的変化がなくなり、したがって、新規な装置は本質的に追加費用なしで製造することができる。
【0025】
装置は、少なくともエアロゾルが霧の形で存在しかつ基板に付着しない領域に収容されていて、エアロゾルの成分を再利用できるようにすることが好ましい。回収後にもう一度処理プロセスに運ばれた添加物をエアロゾルが含有することによる経済的利点に加えて、エアロゾルは装置のカプセル化により環境に入ることはなく、それによって、例えば添加物としてナノ粒子を含有するエアロゾルを吸い込むことにより要員に対して起こりうるリスクを効果的に回避する。
【0026】
本発明の追加の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0027】
本発明による方法およびこの方法を実施するための装置について、添付図面を参照しながら以下でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】方法を実施するための装置の概略側面図である。
【図2】装置の一部の概略側面図である。
【図3】方法で製造された基板の部分的細部の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1および図2に基板4の表面処理用の装置を示し、基板4は、図示した例ではコーティングされるべきプラスチック箔として形成される。
【0030】
図1に示されている装置は、簡略化のために3つのセクションA、B、Cに分けられており、セクションBおよびCはそれぞれ、方法を例示するための回路図を示す。
【0031】
セクションAは、図2にさらに詳細に示されている。
【0032】
表面処理はコロナ放電で行われ、その場合、2つの電極が設けられ、一方のコロナ電極は支持電極1として電線16によって発電機9に接続され、発電機9は高電圧を発生させるとともに電力線14に接続され、他方のコロナ電極はカウンター電極2として接地線15によって接地されている。別法としてカウンター電極2が電圧に接続され、支持電極1が接地されうることが理解されよう。
【0033】
カウンター電極2は、支持電極1を通って広がる水平面Hに対して支持電極1の下方に配置され、基板4は、支持電極1上に形成された支持面3と接触している。
【0034】
エアロゾル5が、複数の矢印で示されカウンター電極2と支持電極1との間に位置する放電領域内に噴霧器6で噴霧され、噴霧器6のノズルは、エアロゾルが本質的に重力の向きに逆らって導入されるように、カウンター電極2の領域内に配置される。
【0035】
付着力が基板4の自由表面上にコロナ放電によって生じ、その結果として、基板表面は、例えばエアロゾルに添加物を含有していると均一にコーティングされる。
【0036】
エアロゾルが水だけで構成されている場合、後続のコーティング、例えばワニスやインプリントなどを塗布するための、基板4の自由表面の並はずれて均一な付着が、本発明を用いて達成される。
【0037】
さらに、円筒として構成された支持電極1、カウンター電極2、および噴霧器6はフレーム7の中に配置され、基板4が横切って運ばれる支持ローラ8もそうであり、支持ローラ8は、支持電極1の両側にかつ支持電極1と軸線に関して平行に延びる。
【0038】
加えて、安全な処理環境を提供するために、給気ライン10および排気ライン11が放電領域内に設置される。
【0039】
噴霧器6およびカウンター電極2は、収集容器として構成された支持体12の中に組立体として保持され、余分なエアロゾルおよび/または粒子は支持体12の中に収集され、連結部13を通って閉ループ材料フローに戻される。
【0040】
カウンター電極2は、基板が通過する幅に関する案内かつ調節手段として調節されうる少なくとも1本の、好ましくはより線で作られることが好ましい。
【0041】
カウンター電極2は、添加物を強化したエアロゾルでのコロナ放電および/またはコーティングの質を維持するために、運転中に洗浄する必要がある。この目的で、カウンター電極2は、コロナ放電の間、洗浄装置の中を特に振動運動で動かされる。しかしながら、この種の手段は、カウンター電極2が接地され、したがって触れても安全であるときにのみ可能である。
【0042】
セクションAは材料処理を示しているが、供給手段はセクションBに図式的に示されており、プロセス機能はセクションCに図式的に示されている。
【0043】
エアロゾルコーティングとして処理されるべき材料が貯蔵されかつ処理される供給タンク17は、セクションBに関連する。再生利用されるべき材料がろ過され、浄化され、スループット測定20が行われてから、材料は連結部13を通って供給タンク17に供給される。
【0044】
コーティング材料は、供給タンク17から測定装置18を通り、エアロゾル形成のために多成分噴霧19を経由してライン21および支持体12を通り、噴霧器6の中へ連続的に運ばれる。
【0045】
空気が給気部23から給気ライン10へファン22で供給されるのに対して、排気ライン11に連結された排気ダクト25が吸い込まれた空気を排気ファン24へ供給する。
【0046】
最後に、セクションCでは、コントロールセンタ26とシステムプロセス全体の処理および生産に関するデータ収集27とが、機能的プロセス構成要素として関連付けられ、プロセス機能Cに関係する機能的構成要素は、システム全体の対応する構成要素と作動可能に連結する。
【0047】
図3は、本発明の方法でコーティング29が塗布された基板28を、原寸に比例して描かれていない大きく拡大した断面図で示している。基板は、好ましくはプラスチックで作られた箔の形で設けられ、片面に200nm以下、好ましくは150nm以下の厚みに塗布されたコーティング29を有する。
【0048】
図から分かるように、コーティング29はほぼ均一な層厚を有し、表面だけはわずかな粗さを有するが、これは対象とする用途にとって重要ではない。
【0049】
原理上、コーティング29は基板28の反対側に塗布することもできる。
【0050】
新規な方法でコーティング29を生成すると非常に均一な層厚をもつコーティングになり、添加物は直径0.1nm〜1mmの調製粒子を有することができる。
【0051】
硬化および/または乾燥は、塗布されたコーティング29の特性に応じて様々な方法で行うことができる。例えば、熱/空気処理、あるいは架橋反応を引き起こす、電子ビーム硬化(ESH)、紫外光、赤外光、またはプラズマコロナ処理を用いて、個々の処理または組み合わせた処理のどちらかでの放射線硬化が考えられる。
【0052】
層厚が好ましくは150nm以下であるため、微量の材料しかコーティングに使用されないが、均一な層厚のために最適化特性を同時に作り出すことができる。
【0053】
驚くべきことに、添加物向け材料の量は大幅に低減されうることが観察されており、このことは、添加物が比較的高価な基本材料であるため特に有利であることが分かった。
【0054】
加えて、コーティング29を塗布するのに用いる装置のスループット速度を上げることができ、したがって生産量を大幅に増やすことができる。
【0055】
さらに、実質的に均一な層厚は、特定用途向けのコーティング29の特性を向上させる。これまでこの点で不可能であったコーティング29の質も監視することができる。
【0056】
原理上、各層が本発明による厚みを有する複数の層を塗布することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 支持電極
2 カウンター電極
3 支持面
4 基板
5 エアロゾル
6 噴霧器
7 フレーム
8 支持ローラ
9 発電機
10 給気ライン
11 排気ライン
12 支持体
13 連結部
14 電流線
15 接地線
16 電線
17 供給タンク
18 測定装置
19 多成分噴霧
20 スループット測定
21 ライン
22 ファン
23 給気部
24 排気ファン
25 排気ダクト
26 コントロールセンタ
27 データ収集
28 基板
29 コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(28)をコロナ放電で表面処理する方法であって、エアロゾル(5)が、前記放電の間、コロナ電極と基板(28)との間に形成された実効間隙によって画定された放電領域の中に噴霧される、方法において、
前記エアロゾル(5)が実質的に重力の向きに逆らって噴霧されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記基板(4)が、前記放電の間、支持電極(1)を通って広がる仮想水平面(H)の下方に位置する前記支持電極(1)の支持面(3)と接触しているカウンター電極間にフローの中で動かされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エアロゾル(5)が、水もしくは水溶液の形で、または添加物と共に噴霧されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持電極(1)に対応して配置されたカウンター電極(2)が前記コロナ放電の間に洗浄されることを特徴とする、請求項1〜3の一項に記載の方法。
【請求項5】
コーティング(29)に供給されない余分な流体および/または添加物が再利用されることを特徴とする、請求項1〜4の一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、少なくとも2つのコロナ電極を備え、前記コロナ電極の一方が電圧に接続され、他方が接地され、前記コロナ電極の一方が前記基板(4)に対する支持面(3)を有する支持電極(1)を形成し、前記他方のコロナ電極がカウンター電極を形成し、前記コロナ電極の前記放電領域内に前記エアロゾル(5)を噴霧するために使用されうる噴霧器(6)が設けられる装置において、
前記支持電極(1)の下方に向けられた面が前記支持面(3)を形成することを特徴とする、装置。
【請求項7】
前記噴霧器(6)が前記対電極(2)の前記領域内に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記支持電極(1)が円筒電極として構成されることを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
支持ローラ(8)が、前記支持電極(1)の両側にかつ前記支持電極(1)と軸線に関して平行に配置されることを特徴とする、請求項6〜8の一項に記載の装置。
【請求項10】
前記支持電極(1)が電圧に接続され、前記カウンター電極(2)が接地されることを特徴とする、請求項6〜9の一項に記載の装置。
【請求項11】
前記カウンター電極(2)が、好ましくはより線電極として構成されることを特徴とする、請求項6〜10の一項に記載の装置。
【請求項12】
洗浄装置が設けられ、前記カウンター電極(2)が前記洗浄装置で洗浄されうることを特徴とする、請求項6〜11の一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1に記載の方法で処理されかつ少なくとも1つのコーティング(29)を有する基板(28)において、前記コーティング(29)の厚みが200nm(ナノメートル)以下、好ましくは150nm未満であることを特徴とする、基板。
【請求項14】
前記コーティング(29)が、0.1nm〜1mmの大きさで前記エアロゾルの中に導入される粒子で作られることを特徴とする、請求項13に記載の基板。
【請求項15】
前記コーティング(29)が、塗布後に熱/空気処理によって乾燥されるか、あるいは電子ビーム、紫外光、赤外光またはプラズマコロナ処理で個々にまたは互いに組み合わせて硬化されることを特徴とする、請求項13または14に記載の基板。
【請求項16】
前記コーティング(29)が実質的に均一であることを特徴とする、請求項13〜15の一項に記載の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511380(P2013−511380A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539366(P2012−539366)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068150
【国際公開番号】WO2011/064268
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512133708)
【Fターム(参考)】