説明

基板上に構成された薄層材料を、能動的高温測定を使用して特性化する方法および装置

本発明は、小さな厚さの少なくとも1層の表面層(140)、およびそれが上に配設された厚い基板(141)を備える材料(14)を、能動的高温測定を使用して特性化する方法に関する。この方法は、次の、材料(140)の表面(ZTH)を、サイクルからサイクルへの熱の蓄積を伴う一連の「温度上昇/低下」熱サイクルを実施するように、高レートのレーザパルスで露光することにより加熱するステップと、放出される放射を収集する(16、17)ステップと、その放射を、センサ(15)を使用して測定するステップと、測定された信号を、材料を特性化するための熱物理的特性を得るように、モデリングによって得られた理論値と比較することにより取得および処理する(18)ステップとを含む。本発明は、熱源として使用される高レートでパルス化されるレーザ(10)を備えた、この方法を実施するための装置(1)にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層の薄層、およびそれが上に配設されたより厚い基板を備える材料ブロックを特性化する方法に関する。
【0002】
本発明は、この方法を実施するための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の文脈において、「特性化」とは、薄層材料の所定の物理的特性を、レーザ加熱システムによって加熱されたその材料の表面からの熱放出を測定することにより解析することを意味すると理解される。
【0004】
同様に、本発明の文脈において、薄い材料層は、単層(単一層)またはいくつかの重合せ層(多層)から構成できることを理解されたい。
【0005】
本発明は、さまざまな分野に適用可能である。非網羅的なリストを挙げると、そうした分野には、材料堆積物、薄層、および酸化物層の物理的特性の特性化、ならびに材料の表面上にある不純物の特性化がある。
【0006】
良く知られているように、どんな材料も電磁放射を放出することができ、波長の関数としてのその強度は、その温度によって変わる。この強度は、プランクの法則により説明される。
【0007】
材料から放出される電磁放射を測定する方法、およびその温度を導出する方法が、長い間開発されてきた。これらの方法は、材料の温度しか測定せず、そこから所定の物理的特性が導出されるので、「受動的な」測定方法と見なすことができる。
【0008】
これらの方法には、測定装置と材料の間の物理的接触をそれらが必要としないため、割込みがないという利点がある。
【0009】
一方、測定装置と材料の間の接触を確実に必要とする他の温度測定方法が提案されている。そうした方法には、例えば熱電対の使用がある。このタイプの測定には、他の欠点がある。具体的には、材料ブロックを事前に準備せずに測定を実施することができない。
【0010】
いわゆる「能動的」高温測定を使用して測定する方法を含む、前述の「非接触」タイプの改善された方法も、従来技術において提案されてきた。このタイプの方法は、材料ブロックを熱源、例えばレーザを使用して加熱すること、および加熱から生じる物体からの放射を、その温度を導出するために測定することからなる。放射は、電磁放射収集装置、電磁エネルギーを電気信号に変換するセンサ、および電気信号処理システムを使用して解析される。温度およびその経時変化を解析することにより、材料のいくつかの物理的特性、例えば材料の熱伝導率、材料の吸収率、または多層材料サンプルの場合、層の厚さおよび2層間の熱抵抗を導出することが可能になる。
【0011】
材料の物理的特性を、能動的高温測定を使用して温度を測定することにより解析するこのタイプの方法は、長年にわたって知られている。
【0012】
それらには、非網羅的な例のリストを挙げると、以下の方法がある。
【0013】
フランス特許出願FR 2 593 917 A1(ランスシャンパーニュアルデンヌ大学)は、吸収率、拡散率、および2材料層間の熱抵抗を測定する方法について記載している。材料サンプルは、電磁放射の波長を透過する薄層、およびそれが上に配設された厚い基板から構成される。基板は、高周波数および低周波数で振幅変調されたレーザビームを使用して加熱される。次いで、基板からの熱放出が測定される。熱放出とレーザ信号との位相差を解析することにより、透過な薄層の物理的特性を求めることが可能になる。
【0014】
フランス特許出願FR 2 647 547 A1(ランスシャンパーニュアルデンヌ大学)は、レーザ放射に不透過な2層間の熱接触抵抗を測定する方法について記載している。材料サンプルの表面が、変調レーザビームを使用して加熱され、表面温度の変調成分を解析することにより、2層間の熱接触の値を求めることが可能になる。しかし、この方法では、解析される材料の1組の代表試験サンプルに対して、事前の較正を実施する必要がある。
【0015】
フランス特許出願FR 2 663 745 A1(ランスシャンパーニュアルデンヌ大学)は、先の特許出願の方法に類似した方法について記載している。ただし、レーザビームの変調は、疑似ランダム2値信号を使用して得られる。
【0016】
上述の方法では、変調レーザビームが使用される。他の方法が文献に、パルス加熱信号を印加するものとして、すなわち、例えば短い(数ナノ秒の)、高強度パルスを放出するレーザを使用するものとして、記載されている。それらの特徴は、いくつかの利点をもたらす。まず、結果として得られる温度上昇がより高く、したがって、表面のより大きな電磁放射を得ることも可能になり、したがって、信号対雑音比を増大させることにより、測定においてより良好な精度を得ることも可能になる。
【0017】
最後に、従来技術における能動的高温測定の別の方法では、変調およびパルス化されたレーザビームの使用を提案している。そのような方法は、例えばT.Loarerにより、Mesure de temperature de surface par effet photothermique module ou impulsionnel(「Surface temperature measurement by means of a modulated or pulsed photothermal effect」)、Ecole Centrale Paris、(1989)という名称の博士論文の中で記載されている。
【0018】
この方法は、米国特許第5 957 581号(Katzir等)に対応する、番号IL 1996118611の下に出願されたイスラエル特許出願の主題であった。
【0019】
これらの文献は、レーザショット後の温度低下の時間形状を、最大温度の値を考慮せずに解析することにより、表面温度を測定する方法について記載している。この方法には、測定装置のその場較正を不要にすることができるという特定の利点がある。
【0020】
従来技術の上述の方法には、明らかに利点があるが、それらは、本発明が意図する適用分野における現在のニーズを必ずしも完全に満たすわけではない。更に、記載した最後の方法は、理論的には最も有利であると思われるが、その方法を、数マイクロメートル程度の厚さを有する材料層を解析する目的で使用するのは容易ではないことに留意されたい。実際に、材料がパルスレーザを使用して加熱されると、表面付近の材料のほんのわずかな厚さしか実際には加熱されず、薄い表面層の厚さ、およびその表面層と基板との間の熱接触の影響を明らかにするのは容易ではない。最後に、変調レーザビーム加熱は、多層材料サンプルの物理的特性の測定を明らかに可能にするが、低「信号対雑音」比となる方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、そのいくつかについて述べてきた従来技術の方法の欠点を克服することであり、本分野の現在のニーズを満たすことでもある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
基本的に、本発明は、非常に良好な「信号対雑音」比を得ることを可能にし、したがって単一の表面層単体の、その熱拡散率や密度などの所定の情報を得ることを可能にし、また薄い表面層の厚さ全体および/または2層間の熱接触が実際にかかわるのに十分な深さまで材料を加熱することを可能にする。
【0023】
この目的のために、重要な一特徴によれば、本発明は、高発射レートでパルス化されたレーザを使用して、多層材料ブロックの表面を加熱する。この材料ブロックは、以後「表面層(superficial layer(s))」と呼ぶ、小さな厚さの1層または複数の層を含む。以後「基板」と呼ぶ、より厚い層上に配設された表面層は、パルスレーザ放射を受けて、それを吸収する。理論的には、基板と表面層の間の熱接触の値は、どんな値でもよく、ゼロでもよい。
【0024】
本発明の別の重要な特徴によれば、発射レート、すなわちパルス反復周波数が、材料の表面層内にショットのたびに熱の蓄積が得られるのを可能にするのに十分なほど高くなるように選択される。基本的にこの場合、加熱された材料には、連続する2ショット間に完全に冷却するだけの時間がない。
【0025】
別の重要な特徴によれば、1ショットの間に材料が加熱されることにより、材料の表面層の、すなわちレーザ放射を吸収する体積中の情報を得ることが可能になる。
【0026】
別の重要な特徴によれば、連続するショットの一斉発射から生じる熱の蓄積により、より深い厚さのところにある領域の情報を得ることが可能になる。
【0027】
別の重要な特徴によれば、材料の表面からの放射が変化することにより、温度の変化を求めることが可能になる。温度の変化は、熱方程式および解析される材料に特有の限界における条件に基づく数値モデルを使用して解析される。これは、当業者に公知の数学的ツールを使用して行うことができる。
【0028】
したがって、本発明の主題は、所定の初期温度にされる小さな厚さの表面層、およびそれが上に配設された厚い基板の、少なくとも2層の重合せ層を備える材料ブロックを、能動的高温測定を使用して特性化する方法であって、少なくとも以下のステップ、
−前記表面材料層の表面の少なくとも1つの所定領域を、レーザパルスの一斉発射を使用して加熱することからなる第1のステップであって、前記表面層の材料が、前記レーザパルスで前記表面層の材料が露光されるときの急速な温度上昇、およびそれに続く、前記初期温度に前記表面層の材料が戻ることが許されない、2つのレーザパルス間のゆっくりとした温度低下からなる複数の熱サイクルを受け、かつ熱サイクルから熱サイクルへと前記表面層の材料が熱を蓄積するのに十分なほど、前記レーザパルスの反復周波数が高くなり、かつ前記レーザパルスの持続時間が短くなるように前記レーザパルスの反復周波数が選択される第1のステップと、
−前記材料の表面から放出される熱放射の全部または一部を収集することからなる第2のステップと、
−前記収集された熱放射の少なくとも一部を、センサを使用して測定することからなる第3のステップと、
−前記センサにより測定され、信号取得および処理システムにより処理された前記熱放射から、前記表面の温度を求めることからなる第4のステップと、
−信号取得および処理システムにより取得された測定値を、前記材料の物理的特性に適合された熱方程式によって与えられる理論値と比較することにより、所定の時間状態を解析すること、およびこの2系列の値を、表面層を前記特性化するための前記材料の所定の熱物理的特性を導出するように、前記材料に関連する少なくとも1つの物理的パラメータを変更することにより一致させることからなる第5のステップと
を含むことを特徴とする方法である。
【0029】
本発明のもう1つの主題は、この方法を実施するための装置である。
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、添付の図の助けを得て明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明による方法を実施するための装置の一例示的実施形態を概略的に示す。
【0032】
装置1は、熱源としてレーザ10、例えばダイオード励起「Nd:YAG」(ネオジウムドープ)レーザを含む。その周波数は、図1に示していない非線形KTP(チタンリン酸カリウム)結晶を使用して2倍にされる。話を明確にするために、実際的な一実施形態では、波長が532nmであり、典型的なパルス持続時間が90nsである。レーザ10は、高発射レート、好ましくは10kHzの周波数で動作するが、1kHz〜30kHzの典型的な範囲内にあってもよい。この目的のために、従来型の電子回路11が制御パルスIを発生させ、それがレーザ10に送出される。レーザビームが多モード光ファイバ12に送り込まれ、光強度の空間プロファイルを均一化することが可能になると有利である。光ファイバ12は、出力端を介して、そのうちの1つ13だけが図1に示してある1つまたは複数の光学レンズと結合される。レンズ13は、典型的にその表面積が0.2〜5mmの範囲である加熱される領域ZTH上に0.01〜4J/cm−2のフルエンスで合焦される均一な強度の入射ビームFliを、材料ブロック14の表面上に得ることが可能になるように配設される。入射レーザビームFliにより、材料ブロック14の表面を加熱することが可能になる。その所定の熱物理的特性を知る必要があるこの材料ブロック14は、小さな厚さの表面層140と、表面層140の厚さに比べて大きな厚さの基板141の少なくとも2層から構成される。層140の厚さは典型的に、0.1μm〜900μmの範囲内である。
【0033】
本発明の範囲を超えずに、材料ブロック14は、小さな厚さを有するいくつかの重ね合わされた表面層を備えてよい。
【0034】
温度測定は、熱放射波長の範囲内で感応するセンサ15を使用して実施され、したがって十分な信号を得ることが可能になるが、その範囲は、レーザ10から放出される波長とは十分に異なり、したがってレーザ10から放出される波長が測定を妨げない。更に、このセンサ15は、連続する2ショット間の時間よりもずっと短い応答時間を有する。このセンサ15は、熱放射を電気出力信号Vに変換し、Vは、信号取得および処理システム18に送出される。信号取得および処理システム18は、当業者に既知の方法を使用して温度を導出することを可能にする。図1に示す実施形態では、センサ15は光ファイバ16と結合され、光ファイバ16自体は、そのうちの1つ17だけが図示してある1つまたは複数の光学レンズに入力端を介して結合される。光学レンズ17が、ブロック14の表面から放出される放射を収集する。
【0035】
更なる一実施形態(図示せず)では、「センサ15−信号取得および処理システム18」の組合せを、高温計と置き換えることができる。実際的な一例示的実施形態では、1.58〜2.2μmの波長範囲内で感応するKleiber(登録商標)C−LWL高温計が使用される。この測定装置には、被試験材料から放出される放射の一部を収集するためのレンズが装備されている。
【0036】
好ましい一実施形態では、信号取得および処理システム18が、センサ15により変換された信号を受領する特定の取得カードを備え、かつLabVIEW(登録商標)(「Laboratory Virtual Instrument Engineering Workbench」)ソフトウェアと関連付けられた、コンピュータシステム18および蓄積プログラムによって実施される。このタイプの動作モードは、当業者に本質的に公知であり、それを更に説明する必要はない。
【0037】
好ましい一実施形態では、専用ソフトウェア、例えば、数値解析アルゴリズムに基づく数値シミュレーションの実施を可能にする、市場で入手可能なMATLAB(登録商標)対話式計算ソフトウェアを使用して、温度解析を実施することができる。本発明の文脈では、このソフトウェアにより、当該の被試験媒体における熱方程式を、レーザパルス加熱となっている内部熱源を考慮に入れて解くことが可能になる。層の厚さ、2層間の熱抵抗、材料の熱拡散率、吸収係数および/または密度などの熱物理的パラメータが変数であり、それらを実験結果に基づいて調整することができる。
【0038】
このタイプのソフトウェアを使用した計算プログラムの作成は、本質的に当業者の能力の範囲内にある作業である。この場合もやはり、これについて更に詳細に説明する必要はない。
【0039】
好ましい一実施形態では、加熱および放射測定が、制御雰囲気中、例えば窒素、アルゴン、または真空雰囲気中で実施される。実施形態の更なる一変形形態(図示せず)では、加熱される表面に対する周囲雰囲気のどんな影響も防ぐために、材料の表面(表面層140)上にガスジェットを吹き付けてよい。
【0040】
別の実施形態では、表面層の熱物理的特性のマッピングを得るために、例えば回転軸上に配設された光学素子13(ミラーおよびレンズ)のアレイと機械的に結合されたモータ19を備えるガルバノメータ式走査装置の制御下で表面全体にわたって走査されるレーザビームを使用して、材料の加熱を得ることもできる。この実施形態では、熱放射を収集するための光学レンズ17を、レーザにより加熱される領域から発する熱放射を連続して収集するように移動させなければならない。
【0041】
別の実施形態では、表面層の熱物理的特性のマッピングを得るために、材料14の表面が、光学レンズ13のアレイを通り越して移動させられる。
【0042】
次に、本発明の方法を使用して得られた結果の第1の例について、図2を参照して説明する。
【0043】
図1のレーザ10から発生された高周波数パルスレーザビームが、表面層140および基板141の2層を備える材料ブロック14上に投影されると仮定する。小さな厚さの表面層140が、レーザ10から発生されたビームの電磁放射を高度に吸収し、かつ表面上でそれほど熱拡散しない材料から構成されるとも仮定する。
【0044】
実験は、さまざまな厚さ、すなわち、説明する例では2、3および4μm(それぞれ曲線C〜C)を有する表面層140について繰り返される。
【0045】
材料が、高発射レート(10kHz)で放出される非常に短い持続時間(90ns)のレーザパルスにより加熱される。上述のように、本発明の重要な特徴の1つによれば、周波数をこのように選択することにより、パルス間に完全に冷却するだけの時間が表面材料140にないので、ショットのたびに熱を蓄積させることが可能になる。
【0046】
図2の例では、ショットの一斉発射が、0.1msの時間間隔(0〜1msまで目盛りを付けた横時間軸t)後に繰り返される、連続する10ショット(レーザパルス)tir〜tir10を含むと仮定する。
【0047】
図2の時間軸t上の時点0〜0.9msと同期したレーザパルスにより、急な温度上昇が引き起こされ、連続的に到達する温度が最高点に達して、ショットからショットへと着実に上昇する値Tmax(典型的に3000〜3500℃、縦軸Tは0〜3500℃までの温度)になる。レーザパルスが停止すると、表面材料層140の温度が、温度上昇中にそれが上昇したよりもずっとゆっくりとではあるが(自然冷却)、ショットからショットへと着実に上昇する最小値Tmin(典型的に250〜500℃)に到達するように低下する。
【0048】
1ショット(第1のショットtir)における温度の変化では、さまざまな層厚間の挙動の任意の顕著な差異を区別することが可能にならないことが、図2から容易に分かる。曲線C〜Cは実質的に同じである。一方、ショットのたびに熱が蓄積されることにより、さまざまな層厚間の明白な差異を区別することが可能になる。図2に示す例では、曲線C〜Cのこの差異が、第3のパルスtir以降完全に認識可能になる。
【0049】
更なる一連の実験を行い、このとき、表面層140の厚さはもはや変化させないが、厚い基板141を形成する高度に熱拡散する材料上に配設した、高度に伝導するが表面上でそれほど拡散しない薄い材料層を選択した。これらの実験を行うために、3つの異なる熱接触値を選択した。
【0050】
熱接触値は3クラスに分かれており、2つの極値がそれぞれ、「完全」熱接触、および「非接触」である。「中間」熱接触値も選択した。図3のそれぞれに対応する曲線C’、C’およびC’は、前述の3つのクラスに対応する。
【0051】
前と同じように、横軸は時間単位t(0〜1msまで)、縦軸は温度単位T(0〜4500℃まで)で目盛り付けしてあり、ショットの一斉発射が、0.1msごとに繰り返し、かつ90nsに等しい持続時間を有する10個のパルスt〜t10を含む。
【0052】
連続的に到達する温度が最高点に達して、ショットからショットへと着実に上昇する値T’max(典型的に2500〜4500℃)になる。先の場合と同じように、レーザパルス発生が停止すると、温度が、温度上昇中にそれが上昇するよりもずっとゆっくりとではあるが、やはりショットからショットへと着実に上昇する最小値T’min(典型的に250〜750℃)に到達するように低下する。
【0053】
この場合もやはり、1ショット(第1のパルスtir)で異なるクラスの熱接触間の差異を認識することは不可能である。曲線C’〜C’は実質的に同じである。一方、ショットのたびに熱が蓄積することにより、接触のさまざまなクラス間の挙動の差異を明らかにすることが、図3に示す例では、この場合もやはり第3のパルスtir以降可能になる。更に、この差異は、説明した例でもやはり、「非接触」クラス(曲線C’)と残りの2つのクラス(曲線C’およびC’)との間でますます大きくなる。
【0054】
上述の2つの例示的実験では、表面層140の1組の所定の情報を、前記材料(140)の所定の加熱時間状態および冷却時間状態を解析することによって得ることが可能である。この解析は、次の状態、前記材料(140)の温度の平均上昇の測定値、各熱サイクルにおける、または選択的に所定の熱サイクルに関する、加熱中の温度の経時変化、飽和時に到達する平均温度値、熱サイクルごとに、または選択的に所定の熱サイクルに関して到達する最大温度値(Tmax)、各レーザパルスの直前に、または選択的に所定のレーザパルスの前に到達する温度値、2つのレーザパルス間の1つまたは複数の予め定義された時間間隔中の、以前のレーザパルスと比較した温度値、2つのレーザパルス間の温度の経時変化、前記レーザパルスの一斉発射終了後の温度の経時変化、ならびに/あるいは前記レーザパルスの一斉発射後の1つまたは複数の所定期間中に到達する温度値(図2および3には図示せず)の全部または一部に焦点を当てるものである。
【0055】
次に、本発明による方法の主要ステップを詳細に説明する。
【0056】
第1のステップは、典型的に1マイクロメートル程度の小さな厚さを有する表面層140と、それが上に配設された(表面層140の厚さと比べて)厚い基板141の少なくとも2層の異なる層を備える材料ブロック14の表面を加熱することからなる。しかし、表面層140の厚さは、本発明の範囲を超えることなく、1マイクロメートルを上回っても、それ未満でもよい。加熱は、高発射レートでパルス化されるレーザ10を使用して実施され、そのため、材料が2つのショットの間にレーザ放射を吸収、昇温し、一部冷却する。基本的には、発射レート、すなわちレーザ10により供給されるパルスの反復周波数は、到達する最大温度Tmaxが初期温度に戻ることができない(Tmin)ように、十分高くなるように選択される。材料ブロック14に印加されるショット数は、平均温度上昇が飽和に到達し、ほぼ一定にとどまるように十分大きくすることができるが、実施される測定のタイプに応じて、より小さくすることもできる。レーザパルスのエネルギーは、十分な信号対雑音比で熱信号を測定することができるように、十分高くなければならない。測定は非破壊的でなければならないので、このエネルギーはまた、材料に損傷を与えないように十分低くなければならないことが理解されよう。
【0057】
第2のステップは、材料の表面から放出される熱放射の全部または一部を収集することからなる。放射の収集および移送は、光学レンズ17および光ファイバ16を使用して実施することができる。
【0058】
第3のステップは、この収集された熱放射の少なくとも一部を、ターゲットから放出される放射にスペクトル感度範囲が適合されたセンサ15を使用して測定し、それを電気信号に変換することからなる。
【0059】
測定は、例えば高温計、有利には、材料に特有の放射率を不要にするために多チャネル高温計を使用して実施することができる。その場合、高温計には通常、被試験材料から放出される放射を収集するレンズが設けられているので、第2および第3のステップを組み合わせて単一のステップにすることができる。
【0060】
第4のステップは、材料の所定の加熱時間状態、すなわち具体的には、温度の平均上昇、各ショットに伴う(すなわち各レーザパルスに伴う)、または選択的に所定のショットに関する、加熱中の温度の経時変化、平均最大温度値、ショットごとに、または選択的に所定のショットに関して到達する最大温度値Tmax、各ショットの直前に到達する温度値T’min、または選択的に所定のショットの前に到達する温度値、2つのショット間の1つまたは複数の時間間隔中の、以前のショットと比較した温度値、2つのショット間の温度の経時変化、ショットの一斉発射後の温度の経時変化、ならびに/あるいはショットの一斉発射後の1つまたは複数の所定期間中に到達する温度値を解析することからなる。
【0061】
第5のステップは、実施および取得された測定の値を、被試験材料ブロックに適合された熱方程式によって与えられる理論値であって、数値モデリング法を使用して得られる理論値と比較すること、ならびにこの2系列の値を、表面層の厚さ、表面層の熱伝導率、表面層の吸収係数、および/または表面層の密度など、材料の1つまたは複数の物理的パラメータを変更することによって一致させることからなる。
【0062】
数値モデリングは、上記で示したように、前述のMATLAB(登録商標)または任意の類似ソフトウェアなど、市場で入手可能な計算ソフトウェアを使用して得ることができる。
【0063】
好ましくは、加熱の理論計算には、材料の表面の粗さ、(例えば、材料の本質的な不均一性、またはレーザビームの強度の不均一性による)材料の不均一な加熱、表面層内でのビームに対する干渉、温度が測定される厚さなどの影響を考慮に入れる。
【0064】
上記で示した説明に鑑みて、本発明が記載の目的を達成することが容易に分かる。
【0065】
本発明は、特に、非常に良好な「信号対雑音」比を得ること、ならびに薄い表面層の厚さ全体および/または2層間の熱接触が実際にかかわるのに十分な深さまで材料を加熱することを可能にするという点で、いくつかの利点をもたらす。
【0066】
しかし本発明は、個々に図1〜3を参照して明示的に説明した例示的実施形態に限定されない。
【0067】
同様に、正確な数値例は、本発明の基本的な特徴をより良く実証するためだけに挙げられており、それらは、特定の意図される適用分野に応じた、本質的に当業者の能力の範囲内に含まれる技術的選択の結果に他ならない。それらは、本発明の範囲をいかなる形であれ全く限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明による方法を実施するための装置の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【図2】高レートの複数の連続レーザショットを受けた、さまざまな厚さを有する薄い材料層の温度変化を示す曲線を表す図である。
【図3】高レートの複数の連続レーザショットを受けた、厚い基板上に配設され、その基板とのさまざまな値の熱接触を有する薄い材料層の温度変化を示す曲線を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の初期温度にされる小さな厚さの表面層、およびそれが上に配設された厚い基板の、少なくとも2層の重合せ層を備える材料ブロックを、能動的高温測定を使用して特性化する方法であって、少なくとも以下のステップ、
前記表面材料層(140)の表面の少なくとも1つの所定領域を、レーザパルス(tir〜tir10)の一斉発射を使用して加熱することからなる第1のステップであって、前記表面層(140)の材料が、前記レーザパルス(tir〜tir10)で前記表面層(140)の材料が露光されるときの急速な温度上昇、およびそれに続く、前記初期温度に前記表面層(140)の材料が戻ることが許されない、2つのレーザパルス間のゆっくりとした温度低下からなる複数の熱サイクルを受け、かつ熱サイクルから熱サイクルへと前記表面層(140)の材料が熱を蓄積するのに十分なほど、前記レーザパルス(tir〜tir10)の反復周波数が高くなり、かつ前記レーザパルス(tir〜tir10)の持続時間が短くなるように、前記レーザパルス(tir〜tir10)の反復周波数が選択される、第1のステップと、
前記材料(140)の表面から放出される熱放射の全部または一部を収集することからなる第2のステップと、
前記収集された熱放射の少なくとも一部を、センサ(15)を使用して測定することからなる第3のステップと、
前記センサ(15)により測定され、信号取得および処理システム(18)により処理された前記熱放射から、前記表面層(140)の表面の温度を求めることからなる第4のステップと、
前記信号取得および処理システム(18)により取得された測定値を、前記材料(14)の物理的特性に適合された熱方程式によって与えられる理論値と比較することにより、所定の時間状態を解析すること、およびこの2系列の値を、前記表面層(140)を前記特性化するための前記材料(14)の所定の熱物理的特性を導出するように、前記材料(14)に関連する少なくとも1つの物理的パラメータを変更することにより一致させることからなる第5のステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面層(140)の厚さが、0.1μm〜900μmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザパルス(tir〜tir10)の前記反復周波数が、1kHz〜30kHzであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザパルス(tir〜tir10)の前記反復周波数が10kHzであり、前記持続時間が90nsに等しいことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面層(140)が到達する平均温度が、前記温度蓄積の結果、各前記熱サイクルに伴って次第に上昇し、前記レーザパルス(tir〜tir10)の一斉発射が、前記平均温度の飽和を得るのに十分な数の連続パルスを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第5のステップ中に前記表面層(140)の所定の加熱時間状態および冷却時間状態を前記解析することが、前記表面層(140)の温度の平均上昇、各熱サイクルにおける、または選択的に所定の熱サイクルに関する、前記加熱中の温度の経時変化、到達する平均最大温度値、熱サイクルごとに、または選択的に所定の熱サイクルに関して到達する最大温度値(Tmax)、各レーザパルス(tir〜tir10)の直前に、または選択的に所定のレーザパルスの前に到達する温度値、2つのレーザパルス間の1つまたは複数の予め定義された時間間隔中の、以前のレーザパルスと比較した温度値、2つのレーザパルス間の温度の経時変化、前記レーザパルス(tir〜tir10)の一斉発射終了後の温度の経時変化、ならびに/あるいは前記レーザパルス(tir〜tir10)の一斉発射後の1つまたは複数の所定期間中に到達する温度値を、測定および評価することからなることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第5のステップ中に実施される、前記表面材料層(140)の少なくとも1つの物理的パラメータの前記変更が、前記表面層(140)の厚さ、その熱伝導率、2材料層間の熱抵抗、前記表面層(140)の吸収係数および/または密度を修正することにより得られることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第5のステップ中に実施される前記比較のための前記理論値が、数値モデリング法を使用して得られることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記数値モデリングが、MATLAB(登録商標)計算ソフトウェアを使用して実施されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の、材料ブロックを特性化する前記方法を実施するための装置であって、所定の波長のパルスを前記高反復周波数で発生させるレーザ(10)を備える少なくとも1つの熱源と、前記レーザパルスを送出し、前記表面層(140)の表面の全部または一部(ZTH)を加熱するようにそれを露光するための光学手段(12、13)と、前記表面材料層(140)の表面から放出される放射の少なくとも一部を収集するための光学手段(16、17)と、前記収集された放射の少なくとも一部を測定して、それを電気信号(V)に変換するためのセンサ(15)と、前記変換された信号(V)を受領し、温度の変化を求めるのを可能にし、それらを、前記表面層を前記特性化するための前記材料(14)の前記所定の熱物理的特性を導出するように理論値と比較する、データ取得および処理手段(18)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記レーザ(10)が、ダイオード励起「Nd:YAG」レーザであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記レーザ(10)が、その波長が532nmに等しくなるように放出される周波数を2倍にするために、非線形KTP結晶に関連付けられることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記レーザパルスを送出し、前記表面材料層(140)の表面の全部または一部を露光するための前記光学手段が、前記レーザパルスを前記表面材料層(140)の表面上に投影する少なくとも1つの光学レンズ(13)を備える光学合焦素子(optical focusing element)に出力端を介して結合された多モード光ファイバ(12)を備えることを特徴とする、請求項10から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記光学合焦素子(13)が、前記光学レンズ(17)と同じであり、前記表面層(140)の表面全体にわたってビームを走査するようにモータ(19)により移動させられるガルバノメータ式素子であることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記表面材料層の表面から放出される放射の少なくとも一部を収集するための前記光学手段が、前記表面材料層(140)から放出される放射の全部または一部を受け取る光学レンズ(17)を備え、前記レンズ(17)が、前記収集された放射を前記センサ(15)に移送する光ファイバ(16)と結合されることを特徴とする、請求項10から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記センサ(15)ならびに前記信号取得および処理システム(18)が、前記表面材料層(140)から放出される放射の全部または一部を受け取るレンズを装備した高温計により構成されることを特徴とする、請求項9から14のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記高温計が、前記材料(140)に特有の放射率を不要にするために、いわゆる多チャネル高温計であることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記データ取得および処理手段が、前記センサ(15)により変換された前記電気信号(V)を受領する特定の取得カードを装備したコンピュータシステム(18)および蓄積プログラムにより構成されることを特徴とする、請求項10から17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記表面層(140)の前記熱物理的特性のマッピングを実施するために、前記材料(14)が、少なくとも1つのレンズ(13)を備える前記光学合焦素子および前記光学レンズ(17)により構成される組立体に対して移動することを特徴とする、請求項10から18のいずれかに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−526983(P2009−526983A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554823(P2008−554823)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050803
【国際公開番号】WO2007/093744
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508246869)
【Fターム(参考)】