基板処理システム
【課題】実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減する。
【解決手段】基板処理システムが備える群管理装置は、モニタデータを基板処理装置から受信する通信部と、モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、所定のイベントが検出されると、データ抽出条件に適合するモニタデータを基に代表値データを生成し、時刻データと併せて格納部に格納する代表値データ生成部と、代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する。
【解決手段】基板処理システムが備える群管理装置は、モニタデータを基板処理装置から受信する通信部と、モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、所定のイベントが検出されると、データ抽出条件に適合するモニタデータを基に代表値データを生成し、時刻データと併せて格納部に格納する代表値データ生成部と、代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置と、基板処理装置に接続された群管理装置と、を含む基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レシピに基づく基板処理工程(バッチ処理)を実行する基板処理装置の内部では、基板処理工程の進行状況や基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータ(例えば温度、ガス流量、圧力等の時系列データ)が多数発生する。基板処理システムでは、このモニタデータを基に基板処理工程の進行状況や基板処理装置群の稼働状態を統合的かつ効率的に管理するため、群管理装置(上位管理装置)が用いられてきた。群管理装置は基板処理装置群に接続され、例えば各基板処理装置から受信したモニタデータを格納する格納部と、格納部に格納されたモニタデータのうち、一部のモニタデータに基づくデータを表示する表示部と、を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成によれば、例えば同じレシピに基づく基板処理工程を経た複数の基板やバッチのデータを上記表示部にそれぞれ表示させることで、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較等を行うことができる。表示対象となる一部のモニタデータには、例えば1時間単位等の一定時間ごとに区切られた所定期間のモニタデータが用いられる。係るモニタデータを基に、例えば平均値、最大値、最小値等を含む代表値データが生成されて表示部に表示される。
【0004】
しかしながら、上記所定期間は、基板処理装置内で発生するイベント、例えばレシピの実行開始や実行終了、レシピに含まれる各ステップの実行開始や実行終了等とは無関係に区切られるため、同じレシピに基づく同等の結果であっても、その時々で異なる代表値データが生成され、見かけ上、異なる結果であるかのように見えてしまうことがある。つまり、例えば温度に係る代表値データが、図10に示すように、温度が略一定の保温ステップ時のモニタデータのみから生成される場合と、昇温ステップの途中状態のモニタデータを含んで生成される場合とでは、実際の装置状態や処理状態等に因らない差異が代表値データに生じ、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較が困難となる場合がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減し、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較がより容易となる基板処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置と、前記基板処理装置に接続される群管理装置と、を含む基板処理システムであって、前記群管理装置は、前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、前記データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示
させる代表値データ加工部と、を有する基板処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減し、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較がより容易となる基板処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る代表値データの生成方法の説明図であって、(a)は温度のモニタデータを例示する時系列グラフであり、(b)は代表値データを例示するテーブルである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る代表値データを加工して得られるローソク足チャートを例示するグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る代表値データを加工して得られるバーチャートの説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る代表値データを加工して得られるローソク足チャートの読み取り説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る群管理装置の内部動作を例示する模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の側面透視図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の処理炉の縦断面図である。
【図10】参考例に係る代表値データの生成方法の説明図であって、最上段から順に異なるタイミングで区間を区切られた温度のモニタデータを例示する時系列グラフ、代表値データを例示するテーブル及び平均値データを例示する時系列グラフであり、(a)及び(b)は、それぞれ同じレシピで処理された異なる基板のデータ又はグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
続いて、本実施形態に係る基板処理装置100の構成について、図7、図8を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る基板処理装置100の斜透視図である。図8は、本実施形態に係る基板処理装置100の側面透視図である。なお、本実施形態に係る基板処理装置100は、例えばウエハ等の基板に成膜処理、酸化処理、拡散処理などを行なう縦型の装置として構成されている。
【0011】
図7、図8に示すように、本実施形態に係る基板処理装置100は、耐圧容器として構成された筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの正面前方には、メンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が設けられている。正面メンテナンス口103には、正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が設けられている。
【0012】
シリコン(Si)等で構成される基板としてのウエハ200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収容器)としてのポッド110が使用される。筐体111の正面壁111aには、ポッド搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が、筐体111内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口112は、フロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉さ
れるようになっている。ポッド搬入搬出口112の正面下方側には、ロードポート(基板収容器受渡し台)114が設置されている。ポッド110は、工程内搬送装置(図示せず)によって搬送され、ロードポート114上に載置されて位置合わせされるように構成されている。
【0013】
筐体111内におけるロードポート114の近傍には、ポッド搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されている。筐体111内のポッド搬送装置118のさらに奥、筐体111内の前後方向の略中央部における上方には、回転式ポッド棚(基板収容器載置棚)105が設置されている。回転式ポッド棚105の下方には、一対のポッドオープナ(基板収容器蓋体開閉機構)121が上下段にそれぞれ設置されている。
【0014】
ポッド搬送装置118は、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと、搬送機構としてのポッド搬送機構(基板収容器搬送機構)118bとで構成されている。ポッド搬送装置118は、ポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作により、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ121の間で、ポッド110を相互に搬送するように構成されている。
【0015】
回転式ポッド棚105上には、複数個のポッド110が保管されるように構成されている。回転式ポッド棚105は、垂直に立設されて水平面内で間欠回転される支柱116と、上中下段の各位置において支柱116に放射状に支持された複数枚の棚板(基板収容器載置台)117と、を備えている。複数枚の棚板117は、ポッド110を複数個それぞれ載置した状態で保持するように構成されている。
【0016】
ポッドオープナ121が配置される筐体111内の下部には、サブ筐体119が筐体111内の前後方向の略中央部から後端にわたって設けられている。サブ筐体119の正面壁119aには、ウエハ200をサブ筐体119内外に搬送する一対のウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が、垂直方向に上下二段に並べられて設けられている。ポッドオープナ121は、上下段のウエハ搬入搬出口120にそれぞれ設置されている。
【0017】
各ポッドオープナ121は、ポッド110を載置する一対の載置台122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構(蓋体着脱機構)123と、を備えている。ポッドオープナ121は、載置台122上に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0018】
サブ筐体119内には、ポッド搬送装置118や回転式ポッド棚105等が設置された空間から流体的に隔絶された移載室124が構成されている。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、で構成されている。図7に示すように、ウエハ移載装置エレベータ125bは、サブ筐体119の移載室124前方領域右端部と筐体111右側端部との間に設置されている。ウエハ移載装置125aは、ウエハ200の載置部としてのツイーザ(基板保持体)125cを備えている。ウエハ移載装置125aを挟んでウエハ移載装置エレベータ125bとは反対の側には、ウエハ200の円周方向の位置を合わせる基板整合装置としてのノッチ合わせ装置(図示せず)が設置されている。ウエハ移載装置エレベータ125b及びウエハ移載装置125aの連続動作により、後述のボート217に対してウエハ200を装填(チャージング)及び脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0019】
移載室124の後側領域には、ボート217を収容して待機させる待機部126が構成されている。待機部126の上方には、ウエハ200を処理する処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0020】
図7に示すように、サブ筐体119の待機部126右端部と筐体111右側端部との間には、ボート217を昇降させるためのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が連結されている。アーム128には、炉口蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219は、ボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0021】
ボート(基板保持具)217は複数本の保持部材を備えている。ボート217は、複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)のウエハ200を、中心を揃えて垂直方向に整列させた状態でそれぞれ水平に保持するように構成されている。
【0022】
図7に示すように、移載室124のウエハ移載装置エレベータ125b側及びボートエレベータ115側と反対側の左側端部には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134が設置されている。クリーンユニット134から吹き出されたクリーンエア133は、ノッチ合わせ装置、ウエハ移載装置125a、待機部126にあるボート217の周囲を流通した後、図示しないダクトにより吸い込まれて筐体111の外部に排気されるか、もしくはクリーンユニット134の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環されて、移載室124内に再び吹き出されるように構成されている。
【0023】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態に係る基板処理装置100の動作について、図7、図8を参照しながら説明する。以下の動作は、例えば搬送レシピに基づいて実施される。搬送レシピは、基板処理装置100内のウエハ200の搬送に用いられ、例えば、基板処理を行うプロセスレシピと併用されて基板処理工程に適用される。
【0024】
図7、図8に示すように、ポッド110がロードポート114に載置されると、ポッド搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。ロードポート114の上のポッド110は、ポッド搬送装置118によってポッド搬入搬出口112から筐体111内部へと搬入される。
【0025】
筐体111内部へと搬入されたポッド110は、ポッド搬送装置118によって回転式ポッド棚105の棚板117上へ自動的に搬送されて一時的に保管された後、棚板117上から一方のポッドオープナ121の載置台122上に移載される。筐体111内部へと搬入されたポッド110は、ポッド搬送装置118によって直接ポッドオープナ121の載置台122上に移載されてもよい。ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120はキャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124内にはクリーンエア133が流通され、充満されている。例えば、不活性ガス等のクリーンエア133で移載室124内が充満されることにより、移載室124内の酸素濃度が例えば20ppm以下となり、大気雰囲気となっている筐体111内の酸素濃度よりも遥かに低くなるように設定されている。
【0026】
載置台122上に載置されたポッド110は、その開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aに設けられたウエハ搬入搬出口120の開口縁辺部に押し付けられるとともに
、ポッド110のキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ウエハ出し入れ口が開放される。その後、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてポッド110内からピックアップされ、ノッチ合わせ装置にて円周方向の位置合わせがされた後、移載室124の後方にある待機部126内へ搬入され、ボート217内に装填(チャージング)される。ボート217内にウエハ200を装填したウエハ移載装置125aは、ポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217内に装填する。
【0027】
ウエハ移載機構125によって、一方(上段または下段)のポッドオープナ121からボート217へとウエハ200を装填する間に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121の載置台122上には、別のポッド110が回転式ポッド棚105上からポッド搬送装置118によって搬送されて移載され、上記ウエハ200の装填作業と同時進行で、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が行われる。
【0028】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217は、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより処理炉202内へ搬入(ボートローディング)される。
【0029】
ローディング後は、処理炉202内にてウエハ200に任意の処理が実施される。処理後は、ノッチ合わせ装置によるウエハの位置合わせを除き、上述の手順とほぼ逆の手順で、処理後のウエハ200を格納したボート217が処理炉202内より搬出され、処理後のウエハ200を格納したポッド110が筐体111外へと搬出される。
【0030】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態に係る処理炉202の構成について、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る基板処理装置100の処理炉202の縦断面図である。
【0031】
図9に示すように、処理炉202は、反応管としてのプロセスチューブ203を備えている。プロセスチューブ203は、内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205と、を備えている。インナーチューブ204は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204内の筒中空部には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。処理室201内は、後述するボート217を収容可能なように構成されている。アウターチューブ205は、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。アウターチューブ205は、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウターチューブ205は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料からなる。
【0032】
プロセスチューブ203の外側には、プロセスチューブ203の側壁面を囲うように、加熱機構としてのヒータ206が設けられている。ヒータ206は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース251に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0033】
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータ206と温度センサ263とには、温度制御部237が電気的に接続されている。温度制御部237は、温度センサ263により検出された温度情報に基づいて、処理室201内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、ヒータ206への通電具合を調整するよう構成されている。
【0034】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状になるように、マニホールド209が設けられている。マニホールド209は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204の下端部とアウターチューブ205の下端部とにそれぞれ係合しており、これらを支持するように設けられている。なお、マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベース251に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ203とマニホールド209とにより反応容器が形成される。
【0035】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に垂直に設備された基板保持具昇降機構としてのボートエレベータ115によって、垂直方向に昇降されるように構成されている。シールキャップ219を昇降させることにより、ボート217を処理室201内外へ搬送することが可能なように構成されている。
【0036】
シールキャップ219の中心部付近であって処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。回転機構254は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させることが可能なように構成されている。
【0037】
ボートエレベータ115及び回転機構254には、搬送制御部238が電気的に接続されている。搬送制御部238は、回転機構254及びボートエレベータ115が所望のタイミングにて所望の動作をするように、これらを制御するよう構成されている。なお、搬送制御部238は、上述のポッドエレベータ118a、ポッド搬送機構118b、ポッドオープナ121、ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125b等にも電気的に接続され、これら各部が所望のタイミングにて所望の動作をするように、これらを制御するよう構成されている。主に、ボートエレベータ115、回転機構254、ポッドエレベータ118a、ポッド搬送機構118b、ポッドオープナ121、ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125bにより、本実施形態に係る搬送系が構成される。
【0038】
基板保持具としてのボート217は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217は、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなる円板形状をした断熱部材としての断熱板216が水平姿勢で多段に複数枚配置されており、ヒータ206からの熱がマニホールド209側に伝わり難くなるように構成されている。
【0039】
シールキャップ219には、ガス導入部としてのノズル230が処理室201内に連通するように接続されている。ノズル230の上流端には、ガス供給管232の下流端が接続されている。ガス供給管232には、上流側から順に図示しない処理ガスや不活性ガス等の1つ又は複数のガス供給源、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241、図示しない複数のバルブが接続されている。MFC241には、ガス流量制御部235が電気的に接続されている。ガス流量制御部235は、処理室201内に供給
するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFC241を制御するよう構成されている。主に、ノズル230、ガス供給管232、図示しない複数個のバルブ、MFC241、ガス供給源により、本実施形態に係るガス供給系が構成される。
【0040】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231の上流端が接続されている。排気管231は、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に配置されており、筒状空間250に連通している。排気管231の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、真空排気装置としての真空ポンプ246が上流側から順に接続されている。APC242は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能な開閉弁である。APC242及び圧力センサ245には、圧力制御部236が電気的に接続されている。圧力制御部236は、圧力センサ245により検出された圧力値に基づいて、処理室201内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、APC242を制御するよう構成されている。主に、排気管231、圧力センサ245、APC242、真空ポンプ246により、本実施形態に係るガス排気系が構成される。
【0041】
ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237、搬送制御部238は、基板処理装置100全体を制御する表示装置制御部239に電気的に接続されている(以下、ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237をI/O制御部とも呼ぶ)。これら、ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237、搬送制御部238及び表示装置制御部239は、基板処理装置用コントローラ240の構成の一部を成す。基板処理装置用コントローラ240の構成や動作については、後述する。
【0042】
(4)処理炉の動作
続いて、半導体装置の製造工程の一工程として実施される、上記構成に係る処理炉202を用いた基板処理工程について説明する。係る基板処理工程は、ウエハ200に所定の処理を施すプロセスレシピに基づいて繰り返し実行される。また、プロセスレシピには複数のステップが含まれることがある。本実施形態においては、複数のステップを含むプロセスレシピに基づく基板処理工程の一例として、CVD(Chemical Vapor
Deposition)法によりウエハ200上に薄膜を形成する成膜処理工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は基板処理装置用コントローラ240により制御される。
【0043】
(基板搬入ステップ)
まずは、基板搬入ステップを行う。すなわち、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)し、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0044】
(成膜プロセス(プロセスレシピ実行期間)S21〜S25)
続いて、図3及び図4のS21〜S25までの各ステップを行い、ウエハ200に成膜処理を施す。S21〜S25までの各ステップは、本実施形態におけるプロセスレシピである。なお、プロセスレシピが、上記の基板搬入ステップや、後述の基板搬出ステップを含む場合もある。
【0045】
(減圧ステップS21)
まず、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によっ
て処理室201内を真空排気する。この際、圧力センサ245が測定した圧力値に基づき、APC242の弁開度がフィードバック制御される。
【0046】
(昇温ステップS22)
次に、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ206によって処理室201内を加熱する。この際、温度センサ263が検出した温度値に基づき、ヒータ206への通電量がフィードバック制御される。続いて、回転機構254により、ボート217及びウエハ200を回転させる。
【0047】
(成膜ステップS23)
処理室201内の温度が安定したら、ガス供給管232が備える図示しないバルブを開き、MFC241により流量制御しながら、ガス供給源から処理室201内に処理ガスを供給する。処理ガスは処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250内に流出して排気管231から排気される。処理ガスは、処理室201内を通過する際にウエハ200の表面と接触し、熱CVD反応によってウエハ200の表面上に薄膜が堆積(デポジション)される。予め設定された処理時間が経過したら、処理室201内への処理ガスの供給を停止する。
【0048】
(降温ステップS24)
処理ガスの供給を停止したら、ヒータ206への電力供給を停止し、ボート217およびウエハ200を所定の温度にまで降下させる。
【0049】
(常圧復帰ステップS25)
ガス供給源から不活性ガスを供給し、処理室201内を不活性ガスで置換するとともに、処理室201内の圧力を常圧に復帰させる。以上により、プロセスレシピに基づく成膜プロセスが終了する。
【0050】
(基板搬出ステップ)
その後、基板搬出ステップを行う。すなわち、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降してマニホールド209の下端を開口するとともに、処理済のウエハ200を保持するボート217をマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部へと搬出(ボートアンローディング)する。処理済のウエハ200をボート217より取り出し、ポッド110内へ格納する(ウエハディスチャージ)。以上により、プロセスレシピに基づく成膜処理工程が終了する。
【0051】
(5)基板処理装置用コントローラの構成
続いて、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラ240の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置100と群管理装置500とで構成される基板処理システムのブロック構成図である。
【0052】
基板処理装置用コントローラ240は、主制御部としての表示装置制御部(操作部)239を備えている。表示装置制御部239には、ディスプレイ等のデータ表示部240aとキーボード等の入力部240bとがそれぞれ接続されている。表示装置制御部239は、操作員による入力部240bからの入力(操作コマンドの入力等)を受け付けると共に、基板処理装置100の状態表示画面や操作入力受付画面等をデータ表示部240aに表示するように構成されている。
【0053】
基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239にデータ交換可能なように接続された処理制御部239aと、処理制御部239aにデータ交換可能なように接続された、処理炉202を制御する上述のI/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御
部236、温度制御部237)と、を備えている。処理制御部239aは、I/O制御部を介して処理炉202の動作を制御するとともに、処理炉202の状態(温度、ガス流量、圧力等)を示すモニタデータを収集する(読み出す)ように構成されている。
【0054】
また、基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239にデータ交換可能なように接続された搬送制御部238と、搬送制御部238にデータ交換可能なように接続されたメカ機構I/O238aと、を備えている。メカ機構I/O238aには、基板処理装置100を構成する各部(例えばボートエレベータ115、回転機構254、ポッドエレベータ118a、ポッド搬送機構118b、ポッドオープナ121、ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125b等)が接続されている。搬送制御部238は、メカ機構I/O238aを介して基板処理装置100を構成する各部の動作を制御するとともに、基板処理装置100を構成する各部の状態(例えば位置、開閉状態、動作中であるかウエイト状態であるか等)を示すモニタデータを収集する(読み出す)ように構成されている。
【0055】
また、基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239に接続されたデータ保持部239eを備えている。データ保持部239eには、基板処理装置用コントローラ240に種々の機能を実現するプログラムや、処理炉202にて実施される基板処理工程の設定データ(レシピデータ)や、I/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237)や搬送制御部238から読み出した各種データ等が保持(格納)されるように構成されている。
【0056】
また、基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239に接続された通信制御部239bを備えている。通信制御部239bは、I/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237)を介して読み出した処理炉202の状態(温度、ガス流量、圧力等)を示すモニタデータを、処理制御部239a及び表示装置制御部239を介して受信し、群管理装置500へ送信することが可能なように構成されている。また、通信制御部239bは、メカ機構I/O238aを介して読み出した基板処理装置100を構成する各部の状態(位置、開閉状態、動作中であるかウエイト状態であるか等)を示すモニタデータを、搬送制御部238及び表示装置制御部239を介して受信し、群管理装置500へ送信することが可能なように構成されている。
【0057】
(6)群管理装置の構成
続いて、上述の基板処理装置100とデータ交換可能なように構成された本実施形態に係る群管理装置500の構成について、主に図1を参照しながら説明する。
【0058】
図1に示すように、群管理装置500は、中央処理装置(CPU)として構成された制御部501と、内部に共有メモリ502領域を有するメモリ(図示せず)と、HDDなどの記憶装置として構成された記憶部503と、ディスプレイ装置等の表示部としてのデータ表示部505と、キーボード等の入力部506と、通信部としての通信制御部504と、を有するコンピュータとして構成されている。上述のメモリ、記憶部503、データ表示部505、入力部506、通信制御部504は、内部バス等を介して制御部501とデータ交換可能なように構成されている。また、制御部501は、図示しない時計機能を有している。
【0059】
本実施形態に係る群管理装置500は、通信制御部504が基板処理装置100から受信した膨大な量のモニタデータの取り扱いを容易にするため、最大値、最小値、平均値等に代表値化したうえで、データの加工や参照を行うように構成されている。すなわち、所定のデータ抽出条件503pに従ってモニタデータを読み出し、読み出したモニタデータを基に代表値データを生成するように構成されている。生成された代表値データは所定の
グラフに加工され、データ表示部505に表示されるように構成されている。
【0060】
特に、本実施形態に係る群管理装置500では、実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減し、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較をより容易に行うことができる。
【0061】
(通信制御部)
通信部としての通信制御部504は、ネットワーク400を介して基板処理装置用コントローラ240の通信制御部239bに接続されていると共に、I/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237)及びメカ機構I/O238aに接続されている。通信制御部504は、基板処理装置100からモニタデータを受信し、共有メモリ502に渡すように構成されている。
【0062】
通信制御部504は、モニタデータの受信のタイミングとして、所定の間隔(例えば0.1秒間隔)で定期的に受信したり、各イベントの発生時、例えばレシピやステップが終了したタイミングで受信したり、或いはモニタデータの発生時にその都度受信したりするように構成されている。
【0063】
また、通信制御部504は、後述するように、記憶部503に読み出し可能に格納されるデータ抽出条件503pにより定義される所定のイベントを基板処理装置100から受信すると、後述する代表値データ生成部511に対して「イベント検出通知」を送信するように構成されている。なお、通信制御部504と代表値データ生成部511との通信は、例えば共有メモリ502を介して行われる。すなわち、通信制御部504が共有メモリ502に書き込んだ「イベント検出通知」を、代表値データ生成部511が所定のタイミングで読み出すことで通信が行われる。
【0064】
共有メモリ502に渡されるモニタデータには、モニタデータを特定するデータIDと、モニタデータの発生源である基板処理装置100を特定する装置特定情報(装置名称など)と、モニタデータの発生時に基板処理装置100が実行していたレシピを特定するレシピ特定情報と、モニタデータの収集時に基板処理装置100内で発生したイベントを特定するイベント特定情報と、モニタデータの発生時刻を示す時刻情報(時刻データ)と、が付加されるように構成されている。
【0065】
(記憶部)
記憶部503には、代表値データ生成プログラム、代表値データ加工プログラム及びデータベースプログラムがそれぞれ格納されている。代表値データ生成プログラムは、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、後述する代表値データ生成部511を群管理装置500に実現するように構成されている。代表値データ加工プログラムは、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、後述する代表値データ加工部512を群管理装置500に実現するように構成されている。データベースプログラムは、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、後述するデータベース503dを記憶部503内に実現するように構成されている。また、記憶部503には、後述するデータ抽出条件503pが、読み出し可能に格納されている。
【0066】
格納部としてのデータベース503dは、通信制御部504が受信して共有メモリ502に格納したモニタデータを、上述のデータID、装置特定情報、レシピ特定情報、イベント特定情報、時刻データにそれぞれ関連づけて、読み出し可能に格納するように構成されている。また、データベース503dは、後述する代表値データ生成部511が生成し
た代表値データを、読み出し可能に格納するように構成されている。
【0067】
データ抽出条件503pは、代表値データの基となるモニタデータを抽出する区間についての条件を規定する。モニタデータを抽出する区間としては、例えば基板処理装置100内での所定のイベントの発生に関連づけられた区間がある。ここで、イベントとは、基板処理装置100内において発生する事象や基板処理装置100の各部の動作等をいい、例えばレシピやステップの実行開始や実行終了等のほか、バルブの開閉動作やセンサのオン・オフ、エラーの発生、操作員による各種操作等、レシピの実行によって時系列順に発生するイベントや、必ずしもレシピの実行によらないイベントも含まれる。
【0068】
モニタデータの抽出区間を所定のイベント発生に関連づけた抽出条件の例を挙げると、例えば所定のイベント間の期間に発生したモニタデータを抽出する条件が考えられる。所定のイベント間の期間としては、例えば所定のレシピやステップの実行開始から実行終了までの期間、ウエハ200の搬入開始から搬出終了までの期間、すなわち、上述の基板搬入ステップにおけるボート217へのウエハ200の装填開始から基板搬出ステップにおけるボート217からのウエハ200の脱装終了までの期間等がある。この他にも、所定のイベント発生から一定期間内を抽出したり(例えば、バルブの開放から10秒間を抽出)、所定のイベント発生から定期的に反復して抽出したり(例えば、ヒータ206の通電開始から10分おきに抽出)、所定のイベント発生から所定数のモニタデータが得られるまでの区間、或いはモニタデータが所定値になるまでの区間で抽出したりするように抽出条件を設定することができる。また、上記に挙げた区間の設定を複数組み合わせてもよい。
【0069】
データ抽出条件503pとしては、例えばSEMI規格に準拠したデータ収集プラン(DCP:Data Collection Plan)等を用いることができる。これによって、モニタデータの収集・抽出の一括設定・一元管理が容易となり、所定のイベント発生に関連付けたモニタデータの抽出の設定が、いっそう容易となる。
【0070】
なお、データ抽出条件503pは、代表値データ生成プログラムが起動するときに代表値データ生成プログラムが管理するメモリ領域中に読み出され、代表値データ生成部511によって随時参照可能なように構成されている。
【0071】
(代表値データ生成部)
代表値データ生成部511は、通信制御部504から「イベント検出通知」を受信したら、モニタデータの抽出条件が予め定義されたデータ抽出条件503pを参照しつつ、データベース503dに格納されたモニタデータのうち、データ抽出条件503pに適合するモニタデータをデータベース503dから読み出し、読み出したモニタデータを基に代表値データを生成し、後述の時刻データと併せて、記憶部503に実現されたデータベース503aに読み出し可能に格納するように構成されている。代表値データには、例えば、代表値の名称を示す“代表値名称”情報、平均・最大・最小などの代表値の計算条件を示す“代表値計算条件”情報、代表値が抽出された区間を示す“代表値抽出区間”情報、代表値抽出区間の開始日時と終了日時を示す“代表値抽出日時”情報、代表値そのものを示す“代表値”情報、代表値を生成した日時を示す“代表値生成日時”情報、代表値計算に要した時間を示す“代表値計算時間”情報、代表値計算時に使用したデータ点数を示す“データ点数”情報等がそれぞれ含まれる。
【0072】
図2に、代表値データ生成部511による代表値データの具体的な生成方法について示す。図2の(a)は温度のモニタデータを例示する時系列グラフであり、(b)は代表値データを例示するテーブルである。図2(a)の時系列グラフは、より具体的には、上述のS21〜S25までのステップを含むプロセスレシピに基づく成膜処理工程を実施して
得られる温度のモニタデータの例であり、説明の便宜上、係るモニタデータをグラフ化して示している。図2(a)の横軸は時刻であり、縦軸は処理室201内の温度(℃)である。代表値データ生成部511は、データ抽出条件503pで定義されるモニタデータの抽出条件に従って、例えばS21〜S25までの各ステップの実行開始から実行終了までの期間ごとに、モニタデータをデータベース503dから読み出すように構成されている。また、代表値データ生成部511は、各ステップの実行期間ごとに読み出されたそれぞれのモニタデータについて、始値、終値、最大値、最小値、平均値等を検索又は計算して代表値データを生成するように構成されている。生成された代表値データには、基になったモニタデータの発生時刻を示す時刻データが付加され、例えば図2(b)に例示するような代表値データ・テーブルが作成されて、データベース503dに読み出し可能に格納されるように構成されている。
【0073】
このように、データ抽出条件503pを参照しながら、所定のイベントの発生に関連付けてモニタデータを抽出するので、例えば同一のレシピに基づくモニタデータであれば、毎回、略同じ区間内から抽出されることとなる。したがって、処理結果が同等であれば抽出されるモニタデータも略同等となり、そこから生成される代表値データも略同等となる。すなわち、抽出区間の違い等に起因するような実際の装置状態や処理状態等に因らない差異が代表値データに生じ難くなる。
【0074】
また、代表値データに始値、終値、最大値、最小値、平均値等が含まれるように構成したので、代表値データからより多くの情報を得ることができ、ウエハ200やバッチの処理状態、装置状態等の比較がいっそう容易となる。
【0075】
代表値データ生成部511は、データベース503dへの代表値データ及び時刻データの格納が完了したら、代表値データ加工部512に対して「代表値データ生成通知」を送信するように構成されている。なお、代表値データ生成部511と代表値データ加工部512との通信は、例えば共有メモリ502を介して行われる。すなわち、代表値データ生成部511が共有メモリ502に書き込んだ「代表値データ生成通知」を、代表値データ加工部512が所定のタイミングで読み出すことで行われる。
【0076】
(代表値データ加工部)
代表値データ加工部512は、「代表値データ生成通知」により通知された代表値データ及び代表値データに付加されている時刻データを、データベース503dから読み出し、これらを表示可能に加工してデータ表示部505に表示させるように構成されている。具体的には、代表値データが含む始値、終値、最大値及び最小値をそれぞれ時刻データに関連付けて視覚的に表したローソク足チャートやバーチャートに加工し、データ表示部505に表示させるように構成されている。
【0077】
図3に、代表値データ加工部512により代表値データを加工して得られるローソク足チャートの具体例を示す。図3は、図2(b)に例示する代表値データから加工されたローソク足チャートである。図3の横軸は時刻であり、縦軸は処理室201内の温度(℃)である。各ローソク足のローソク部分(実体)が有する底辺又は上辺は、基になったモニタデータの始値又は終値を示している。ローソク部分が白抜きの場合は、底辺が始値を示し、上辺が終値を示しており、温度が上昇したことを示す。黒塗りの場合は、底辺が終値、上辺が始値であり、温度が降下したことを示す。ローソク部分の紙面に向かって左右の辺の位置は、モニタデータの始値と終値とが発生した時刻をそれぞれ示しており、ローソク部分の幅は、モニタデータが抽出された期間の長さ(ここでは、各ステップの実行期間の長さ)に対応している。また、それぞれの期間内における最大値はローソク部分の上辺から突き出た上ヒゲで表わされ、上ヒゲの位置は最大値が発生した時刻に対応している。最小値は、発生時刻の位置に下ヒゲで示される。
【0078】
また、上記のローソク足チャートに替えて、図4(b)に示すように、最大値と最小値とを線分で結び、線分の左右に始値と終値を示すバーをそれぞれ有するバーチャートとすることもできる。本実施形態に係るバーチャートにおいては、始値及び終値のバーのそれぞれの端部の位置及び全体の幅を、モニタデータが抽出された時刻の位置及び期間の長さにそれぞれ対応させる。また、図4(c)及び(d)に示すように、最大値及び最小値の表示位置をそれぞれが発生した時刻の位置に対応させ、その間を屈曲した線分で結んだバーチャートとしてもよい。あるいは、図4(e)に示すように、最大値・最小値間を矩形で繋いでもよい。
【0079】
このように、上記に述べる本実施形態のように、始値、終値、最大値、最小値、時刻データ等を盛り込んだローソク足チャートやバーチャートを表示させることで、より多くの情報を視覚的に捉え易くなって、より容易にウエハ200やバッチの処理状態、装置状態を把握することができる。
【0080】
なお、代表値データ加工部512は、代表値データの加工・表示のタイミングとして、代表値データ生成部511から「代表値データ生成通知」を受信したタイミングや、入力部506から操作員による「代表値データ表示要求」を受け付けたタイミング等で代表値データの加工・表示を行うように構成されていてもよい。さらに、「代表値データ生成通知」により通知された最新の代表値データを読み出す際に、同一のレシピやステップにおける過去の他の代表値データを読み出すように構成されていてもよい。読み出した過去の代表値データのそれぞれを上記と同様に加工してチャートを作成し、直近の代表値データに基づくチャートと併せてデータ表示部505に複数並べて、或いは重ねて表示させることで、同一のレシピ間やステップ間でのウエハ200比較、バッチ比較が、いっそう容易となる。
【0081】
また、代表値データ加工部512は、作成したチャートを代表値データに付加してデータベース503dに格納するように構成されていてもよい。このように構成することで、過去の代表値データについて繰り返し加工を行う必要がなくなり、データの再読み出し・再表示の効率を高めることができる。
【0082】
図5に、ローソク足チャートをデータ表示部505に複数並べて表示させた場合について例示する。図5の横軸は時刻であり、数日間に亘る期間の特定の時刻が示されている。図5の縦軸は、処理室201内の温度(℃)である。複数のローソク足チャートは、同一のレシピ、具体的には上述のS21〜S25を含むプロセスレシピにおける数日間の複数の代表値データからそれぞれ加工されたものであり、通常であれば略同等のチャートとなる。図5の例では、一部のチャートに他のチャートとは異なる点が認められ、基板処理装置100やウエハ200の処理状態に何らかの異常が生じた可能性を示唆している。例えば、符号M1が指し示す領域では、昇温ステップS22における温度の最大値に増大がみられ、温度が一旦超過したのち所定値に落ち着くオーバーシュートの度合いが大きかったことが疑われる。また、符号M2の領域ではレシピの実行間隔に空きが生じている。符号M3の領域では低い温度からレシピがスタートしており、装置待機時の温度低下があったことが読み取れる。符号M4の領域では、昇温ステップS22に長時間を要している。
【0083】
以上のように、ローソク足チャート等を複数並べて、或いは重ねて表示させることで、同一のレシピやステップ間におけるウエハ200やバッチの状態比較がいっそう容易となり、日単位や月単位、或いは年単位に亘る長期間のデータ推移をいっそう把握し易くなる。
【0084】
(7)群管理装置の動作
続いて、本実施形態に係る群管理装置500の動作について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る群管理装置500の内部動作を例示する模式図である。係る動作は、半導体装置の製造工程の一工程として行われる。
【0085】
代表値データ生成プログラム、代表値データ加工プログラム、データベースプログラムが、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、代表値データ生成部511、代表値データ加工部512、データベース503dが起動する。また、データ抽出条件503pに定義されているモニタデータの抽出条件が、代表値データ生成プログラムが管理するメモリ領域中に読み出される。
【0086】
群管理装置500の通信制御部504が、モニタデータを基板処理装置100から受信し、共有メモリ502に格納する。次に、記憶部503に実現されたデータベース503dが、共有メモリ502に格納されたモニタデータを読み出し可能に格納する。また、通信制御部504は、データ抽出条件503pにより定義される所定のイベント、例えば所定のレシピやステップの実行終了等を基板処理装置100から受信すると、代表値データ生成部511に対して「イベント検出通知」を送信する。
【0087】
代表値データ生成部511は、通信制御部504から「イベント検出通知」を受信すると、予め記憶部503から読み出しておいたデータ抽出条件503pを参照しつつ、格納されたモニタデータのうち、データ抽出条件503pに適合するモニタデータをデータベース503dから読み出す。さらに、代表値データ生成部511は、読み出したモニタデータを基に代表値データを生成し、生成した代表値データと、これに関連する時刻データとを併せて、記憶部503に実現されたデータベース503dに読み出し可能に格納する。データベース503dへの格納が済むと、代表値データ生成部511は、代表値データ加工部512に対して「代表値データ生成通知」を送信する。
【0088】
代表値データ加工部512は、代表値データ生成部511が格納した代表値データ及び時刻データをデータベース503dから読み出し、これらを表示可能に加工する。すなわち、代表値データを始値、終値、最大値、最小値、時刻データ等が表されたローソク足チャートやバーチャートに加工し、加工したチャートを群管理装置500のデータ表示部505に表示させる。
【0089】
(8)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0090】
(a)本実施形態によれば、代表値データ生成部511は、データ抽出条件503pに適合するモニタデータをデータベース503dから読み出して代表値データを生成するように構成されている。データ抽出条件503pには、所定のイベントの発生に関連づけられた区間内のモニタデータを抽出するよう、予め抽出条件が定義されている。これによって、例えば同一のレシピに基づく同等の結果であれば、毎回、略同一の区間内から略同等のモニタデータが抽出されることとなる。よって、生成される代表値データについても、抽出区間の違い等に起因するような実際の装置状態や処理状態等に因らない差異を低減することができる。従って、同一のレシピ間や同一のステップ間でのウエハ200やバッチの状態比較がより容易となり、監視作業の負担軽減や効率化が可能となる。また、装置異常の兆候となり得る微細な装置状態変化に気付き易くなるため、装置トラブルや基板処理不良を未然に回避することが容易となる。
【0091】
(b)また、本実施形態によれば、所定のレシピやステップの実行期間ごとに、モニタデータを抽出するように構成されている。これによって、装置異常時には、異常値を示す代表値データが、どのレシピ、或いはステップから生成されたかを特定することができ、異
常が発生したレシピやステップを容易に特定することができる。したがって、より効率的により素早く装置異常に対応でき、装置の故障時間を低減することができる。
【0092】
(c)また、本実施形態によれば、代表値データ生成部511は、始値、終値、最大値、最小値等を含む代表値データを生成するように構成されている。これによって、より多くの情報を代表値データから得ることができ、ウエハ200やバッチの処理状態、装置状態等の把握がいっそう容易となる。
【0093】
(d)また、本実施形態によれば、代表値データ加工部512は、代表値データをローソク足チャートやバーチャートに加工してデータ表示部505に表示させるように構成されている。これによって、より多くのデータを視覚的に捉え易くなり、ウエハ200やバッチの処理状態、装置状態の把握がいっそう容易となる。
【0094】
(e)また、本実施形態によれば、上記のチャートの始値及び終値の端部、最大値、最小値の表示位置が時刻データを表す構成となっている。これによって、所定期間内のデータ推移を把握することが可能となる。
【0095】
(f)また、本実施形態によれば、データ表示部505は、ローソク足チャートやバーチャートを複数並べて、或いは重ねて表示可能なように構成されている。これによって、同一のレシピ間や同一のステップ間でのウエハ200やバッチの状態比較がいっそう容易となり、長期間のデータ推移を把握し易くなる。
【0096】
<本発明の第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0097】
本実施形態に係る基板処理装置は、図1に示す上述の実施形態に係る基板処理装置用コントローラ240と同様の構成を備える基板処理装置用コントローラを有している。本実施形態に係る基板処理装置用コントローラは、第1実施形態に係る代表値データ生成部511、代表値データ加工部512、データベース503dの機能を有するように構成されている。また、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラは、第1実施形態におけるデータ抽出条件503pに相当する条件を保有し、これらを参照しながらモニタデータの抽出を行うように構成されている。
【0098】
また、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラが備えるデータ表示部は、代表値データを加工して得られる各種チャートを表示可能なように構成されている。
【0099】
本実施形態においては、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラによって、上述の群管理装置500と同様の効果を奏する。
【0100】
<本発明の他の実施形態>
本発明は、基板処理装置100と群管理装置500とが同じフロア(同じクリーンルーム内)に配置される場合に限定されない。例えば、基板処理装置100をクリーンルーム内に配置すると共に、群管理装置500を事務所内(クリーンルームとは異なるフロア)に配置し、レシピの進行状況や基板処理装置100の状態を遠隔から監視するようにしてもよい。或いは、群管理装置500が備える一部の構成、例えばデータ表示部505や入力部506のみを事務所内に配置してもよい。
【0101】
本発明は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、PVD(Physical
Vapor Deposition)法等による酸化膜や窒化膜、金属膜等の種々の膜
を形成する成膜処理に適用できるほか、拡散処理、アニール処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理にも適用できる。また、基板処理中のみならず、処理炉202内のクリーニングやコンディショニングの実施時にも適用できる。或いは、装置の所定状態の監視にも適用可能である。さらに、本発明は、薄膜形成装置の他、アニール処理装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置等の他の基板処理装置にも適用できる。
【0102】
本発明は、本実施形態に係る基板処理装置のような半導体ウエハを処理する半導体製造装置等に限らず、ガラス基板を処理するLCD(Liquid Crystal Display)製造装置等の基板処理装置にも適用できる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0104】
<本発明の好ましい態様>
以下に本発明の望ましい態様について付記する。
【0105】
本発明の一態様は、
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置と、前記基板処理装置に接続される群管理装置と、を含む基板処理システムであって、
前記群管理装置は、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、前記データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
基板処理システムである。
【0106】
好ましくは、
前記代表値データは、前記モニタデータの前記区間内の始値、終値、最大値、最小値、平均値の少なくともいずれかを含む。
【0107】
好ましくは、
前記代表値データ加工部は、前記代表値データを、ローソク足チャート、バーチャートの少なくともいずれかに加工して前記表示部に表示させる。
【0108】
さらに好ましくは、
前記ローソク足チャートは、最大値及び最小値を表すヒゲを有する。
【0109】
好ましくは、
前記表示部は、ローソク足チャート、バーチャートの少なくともいずれかを複数表示可能なように構成されている。
【0110】
好ましくは、
前記モニタデータを抽出する前記区間には、所定のイベント間の期間が規定されている
。
【0111】
好ましくは、
前記モニタデータを抽出する前記区間には、所定のレシピの実行開始から実行終了までの期間、前記所定のレシピに含まれる所定のステップの実行開始から実行終了までの期間、前記基板の搬入開始から搬出終了までの期間、の少なくともいずれかが規定されている。
【0112】
本発明の他の態様は、
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置に接続される群管理装置であって、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
群管理装置である。
【0113】
本発明のさらに他の態様は、
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置であって、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
基板処理装置である。
【符号の説明】
【0114】
100 基板処理装置
500 群管理装置
503d データベース(格納部)
503p データ抽出条件
504 通信制御部(通信部)
505 データ表示部(表示部)
511 代表値データ生成部
512 代表値データ加工部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置と、基板処理装置に接続された群管理装置と、を含む基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レシピに基づく基板処理工程(バッチ処理)を実行する基板処理装置の内部では、基板処理工程の進行状況や基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータ(例えば温度、ガス流量、圧力等の時系列データ)が多数発生する。基板処理システムでは、このモニタデータを基に基板処理工程の進行状況や基板処理装置群の稼働状態を統合的かつ効率的に管理するため、群管理装置(上位管理装置)が用いられてきた。群管理装置は基板処理装置群に接続され、例えば各基板処理装置から受信したモニタデータを格納する格納部と、格納部に格納されたモニタデータのうち、一部のモニタデータに基づくデータを表示する表示部と、を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成によれば、例えば同じレシピに基づく基板処理工程を経た複数の基板やバッチのデータを上記表示部にそれぞれ表示させることで、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較等を行うことができる。表示対象となる一部のモニタデータには、例えば1時間単位等の一定時間ごとに区切られた所定期間のモニタデータが用いられる。係るモニタデータを基に、例えば平均値、最大値、最小値等を含む代表値データが生成されて表示部に表示される。
【0004】
しかしながら、上記所定期間は、基板処理装置内で発生するイベント、例えばレシピの実行開始や実行終了、レシピに含まれる各ステップの実行開始や実行終了等とは無関係に区切られるため、同じレシピに基づく同等の結果であっても、その時々で異なる代表値データが生成され、見かけ上、異なる結果であるかのように見えてしまうことがある。つまり、例えば温度に係る代表値データが、図10に示すように、温度が略一定の保温ステップ時のモニタデータのみから生成される場合と、昇温ステップの途中状態のモニタデータを含んで生成される場合とでは、実際の装置状態や処理状態等に因らない差異が代表値データに生じ、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較が困難となる場合がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減し、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較がより容易となる基板処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置と、前記基板処理装置に接続される群管理装置と、を含む基板処理システムであって、前記群管理装置は、前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、前記データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示
させる代表値データ加工部と、を有する基板処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減し、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較がより容易となる基板処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る代表値データの生成方法の説明図であって、(a)は温度のモニタデータを例示する時系列グラフであり、(b)は代表値データを例示するテーブルである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る代表値データを加工して得られるローソク足チャートを例示するグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る代表値データを加工して得られるバーチャートの説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る代表値データを加工して得られるローソク足チャートの読み取り説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る群管理装置の内部動作を例示する模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の側面透視図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の処理炉の縦断面図である。
【図10】参考例に係る代表値データの生成方法の説明図であって、最上段から順に異なるタイミングで区間を区切られた温度のモニタデータを例示する時系列グラフ、代表値データを例示するテーブル及び平均値データを例示する時系列グラフであり、(a)及び(b)は、それぞれ同じレシピで処理された異なる基板のデータ又はグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
続いて、本実施形態に係る基板処理装置100の構成について、図7、図8を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る基板処理装置100の斜透視図である。図8は、本実施形態に係る基板処理装置100の側面透視図である。なお、本実施形態に係る基板処理装置100は、例えばウエハ等の基板に成膜処理、酸化処理、拡散処理などを行なう縦型の装置として構成されている。
【0011】
図7、図8に示すように、本実施形態に係る基板処理装置100は、耐圧容器として構成された筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの正面前方には、メンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が設けられている。正面メンテナンス口103には、正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が設けられている。
【0012】
シリコン(Si)等で構成される基板としてのウエハ200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収容器)としてのポッド110が使用される。筐体111の正面壁111aには、ポッド搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が、筐体111内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口112は、フロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉さ
れるようになっている。ポッド搬入搬出口112の正面下方側には、ロードポート(基板収容器受渡し台)114が設置されている。ポッド110は、工程内搬送装置(図示せず)によって搬送され、ロードポート114上に載置されて位置合わせされるように構成されている。
【0013】
筐体111内におけるロードポート114の近傍には、ポッド搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されている。筐体111内のポッド搬送装置118のさらに奥、筐体111内の前後方向の略中央部における上方には、回転式ポッド棚(基板収容器載置棚)105が設置されている。回転式ポッド棚105の下方には、一対のポッドオープナ(基板収容器蓋体開閉機構)121が上下段にそれぞれ設置されている。
【0014】
ポッド搬送装置118は、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと、搬送機構としてのポッド搬送機構(基板収容器搬送機構)118bとで構成されている。ポッド搬送装置118は、ポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作により、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ121の間で、ポッド110を相互に搬送するように構成されている。
【0015】
回転式ポッド棚105上には、複数個のポッド110が保管されるように構成されている。回転式ポッド棚105は、垂直に立設されて水平面内で間欠回転される支柱116と、上中下段の各位置において支柱116に放射状に支持された複数枚の棚板(基板収容器載置台)117と、を備えている。複数枚の棚板117は、ポッド110を複数個それぞれ載置した状態で保持するように構成されている。
【0016】
ポッドオープナ121が配置される筐体111内の下部には、サブ筐体119が筐体111内の前後方向の略中央部から後端にわたって設けられている。サブ筐体119の正面壁119aには、ウエハ200をサブ筐体119内外に搬送する一対のウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が、垂直方向に上下二段に並べられて設けられている。ポッドオープナ121は、上下段のウエハ搬入搬出口120にそれぞれ設置されている。
【0017】
各ポッドオープナ121は、ポッド110を載置する一対の載置台122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構(蓋体着脱機構)123と、を備えている。ポッドオープナ121は、載置台122上に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0018】
サブ筐体119内には、ポッド搬送装置118や回転式ポッド棚105等が設置された空間から流体的に隔絶された移載室124が構成されている。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、で構成されている。図7に示すように、ウエハ移載装置エレベータ125bは、サブ筐体119の移載室124前方領域右端部と筐体111右側端部との間に設置されている。ウエハ移載装置125aは、ウエハ200の載置部としてのツイーザ(基板保持体)125cを備えている。ウエハ移載装置125aを挟んでウエハ移載装置エレベータ125bとは反対の側には、ウエハ200の円周方向の位置を合わせる基板整合装置としてのノッチ合わせ装置(図示せず)が設置されている。ウエハ移載装置エレベータ125b及びウエハ移載装置125aの連続動作により、後述のボート217に対してウエハ200を装填(チャージング)及び脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0019】
移載室124の後側領域には、ボート217を収容して待機させる待機部126が構成されている。待機部126の上方には、ウエハ200を処理する処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0020】
図7に示すように、サブ筐体119の待機部126右端部と筐体111右側端部との間には、ボート217を昇降させるためのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が連結されている。アーム128には、炉口蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられている。シールキャップ219は、ボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0021】
ボート(基板保持具)217は複数本の保持部材を備えている。ボート217は、複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)のウエハ200を、中心を揃えて垂直方向に整列させた状態でそれぞれ水平に保持するように構成されている。
【0022】
図7に示すように、移載室124のウエハ移載装置エレベータ125b側及びボートエレベータ115側と反対側の左側端部には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134が設置されている。クリーンユニット134から吹き出されたクリーンエア133は、ノッチ合わせ装置、ウエハ移載装置125a、待機部126にあるボート217の周囲を流通した後、図示しないダクトにより吸い込まれて筐体111の外部に排気されるか、もしくはクリーンユニット134の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環されて、移載室124内に再び吹き出されるように構成されている。
【0023】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態に係る基板処理装置100の動作について、図7、図8を参照しながら説明する。以下の動作は、例えば搬送レシピに基づいて実施される。搬送レシピは、基板処理装置100内のウエハ200の搬送に用いられ、例えば、基板処理を行うプロセスレシピと併用されて基板処理工程に適用される。
【0024】
図7、図8に示すように、ポッド110がロードポート114に載置されると、ポッド搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。ロードポート114の上のポッド110は、ポッド搬送装置118によってポッド搬入搬出口112から筐体111内部へと搬入される。
【0025】
筐体111内部へと搬入されたポッド110は、ポッド搬送装置118によって回転式ポッド棚105の棚板117上へ自動的に搬送されて一時的に保管された後、棚板117上から一方のポッドオープナ121の載置台122上に移載される。筐体111内部へと搬入されたポッド110は、ポッド搬送装置118によって直接ポッドオープナ121の載置台122上に移載されてもよい。ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120はキャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124内にはクリーンエア133が流通され、充満されている。例えば、不活性ガス等のクリーンエア133で移載室124内が充満されることにより、移載室124内の酸素濃度が例えば20ppm以下となり、大気雰囲気となっている筐体111内の酸素濃度よりも遥かに低くなるように設定されている。
【0026】
載置台122上に載置されたポッド110は、その開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aに設けられたウエハ搬入搬出口120の開口縁辺部に押し付けられるとともに
、ポッド110のキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ウエハ出し入れ口が開放される。その後、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてポッド110内からピックアップされ、ノッチ合わせ装置にて円周方向の位置合わせがされた後、移載室124の後方にある待機部126内へ搬入され、ボート217内に装填(チャージング)される。ボート217内にウエハ200を装填したウエハ移載装置125aは、ポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217内に装填する。
【0027】
ウエハ移載機構125によって、一方(上段または下段)のポッドオープナ121からボート217へとウエハ200を装填する間に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121の載置台122上には、別のポッド110が回転式ポッド棚105上からポッド搬送装置118によって搬送されて移載され、上記ウエハ200の装填作業と同時進行で、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が行われる。
【0028】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217は、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより処理炉202内へ搬入(ボートローディング)される。
【0029】
ローディング後は、処理炉202内にてウエハ200に任意の処理が実施される。処理後は、ノッチ合わせ装置によるウエハの位置合わせを除き、上述の手順とほぼ逆の手順で、処理後のウエハ200を格納したボート217が処理炉202内より搬出され、処理後のウエハ200を格納したポッド110が筐体111外へと搬出される。
【0030】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態に係る処理炉202の構成について、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る基板処理装置100の処理炉202の縦断面図である。
【0031】
図9に示すように、処理炉202は、反応管としてのプロセスチューブ203を備えている。プロセスチューブ203は、内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205と、を備えている。インナーチューブ204は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204内の筒中空部には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。処理室201内は、後述するボート217を収容可能なように構成されている。アウターチューブ205は、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。アウターチューブ205は、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウターチューブ205は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料からなる。
【0032】
プロセスチューブ203の外側には、プロセスチューブ203の側壁面を囲うように、加熱機構としてのヒータ206が設けられている。ヒータ206は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース251に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0033】
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータ206と温度センサ263とには、温度制御部237が電気的に接続されている。温度制御部237は、温度センサ263により検出された温度情報に基づいて、処理室201内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、ヒータ206への通電具合を調整するよう構成されている。
【0034】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状になるように、マニホールド209が設けられている。マニホールド209は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204の下端部とアウターチューブ205の下端部とにそれぞれ係合しており、これらを支持するように設けられている。なお、マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベース251に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ203とマニホールド209とにより反応容器が形成される。
【0035】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に垂直に設備された基板保持具昇降機構としてのボートエレベータ115によって、垂直方向に昇降されるように構成されている。シールキャップ219を昇降させることにより、ボート217を処理室201内外へ搬送することが可能なように構成されている。
【0036】
シールキャップ219の中心部付近であって処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。回転機構254は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させることが可能なように構成されている。
【0037】
ボートエレベータ115及び回転機構254には、搬送制御部238が電気的に接続されている。搬送制御部238は、回転機構254及びボートエレベータ115が所望のタイミングにて所望の動作をするように、これらを制御するよう構成されている。なお、搬送制御部238は、上述のポッドエレベータ118a、ポッド搬送機構118b、ポッドオープナ121、ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125b等にも電気的に接続され、これら各部が所望のタイミングにて所望の動作をするように、これらを制御するよう構成されている。主に、ボートエレベータ115、回転機構254、ポッドエレベータ118a、ポッド搬送機構118b、ポッドオープナ121、ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125bにより、本実施形態に係る搬送系が構成される。
【0038】
基板保持具としてのボート217は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217は、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなる円板形状をした断熱部材としての断熱板216が水平姿勢で多段に複数枚配置されており、ヒータ206からの熱がマニホールド209側に伝わり難くなるように構成されている。
【0039】
シールキャップ219には、ガス導入部としてのノズル230が処理室201内に連通するように接続されている。ノズル230の上流端には、ガス供給管232の下流端が接続されている。ガス供給管232には、上流側から順に図示しない処理ガスや不活性ガス等の1つ又は複数のガス供給源、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241、図示しない複数のバルブが接続されている。MFC241には、ガス流量制御部235が電気的に接続されている。ガス流量制御部235は、処理室201内に供給
するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFC241を制御するよう構成されている。主に、ノズル230、ガス供給管232、図示しない複数個のバルブ、MFC241、ガス供給源により、本実施形態に係るガス供給系が構成される。
【0040】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231の上流端が接続されている。排気管231は、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に配置されており、筒状空間250に連通している。排気管231の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、真空排気装置としての真空ポンプ246が上流側から順に接続されている。APC242は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能な開閉弁である。APC242及び圧力センサ245には、圧力制御部236が電気的に接続されている。圧力制御部236は、圧力センサ245により検出された圧力値に基づいて、処理室201内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、APC242を制御するよう構成されている。主に、排気管231、圧力センサ245、APC242、真空ポンプ246により、本実施形態に係るガス排気系が構成される。
【0041】
ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237、搬送制御部238は、基板処理装置100全体を制御する表示装置制御部239に電気的に接続されている(以下、ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237をI/O制御部とも呼ぶ)。これら、ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237、搬送制御部238及び表示装置制御部239は、基板処理装置用コントローラ240の構成の一部を成す。基板処理装置用コントローラ240の構成や動作については、後述する。
【0042】
(4)処理炉の動作
続いて、半導体装置の製造工程の一工程として実施される、上記構成に係る処理炉202を用いた基板処理工程について説明する。係る基板処理工程は、ウエハ200に所定の処理を施すプロセスレシピに基づいて繰り返し実行される。また、プロセスレシピには複数のステップが含まれることがある。本実施形態においては、複数のステップを含むプロセスレシピに基づく基板処理工程の一例として、CVD(Chemical Vapor
Deposition)法によりウエハ200上に薄膜を形成する成膜処理工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は基板処理装置用コントローラ240により制御される。
【0043】
(基板搬入ステップ)
まずは、基板搬入ステップを行う。すなわち、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)し、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0044】
(成膜プロセス(プロセスレシピ実行期間)S21〜S25)
続いて、図3及び図4のS21〜S25までの各ステップを行い、ウエハ200に成膜処理を施す。S21〜S25までの各ステップは、本実施形態におけるプロセスレシピである。なお、プロセスレシピが、上記の基板搬入ステップや、後述の基板搬出ステップを含む場合もある。
【0045】
(減圧ステップS21)
まず、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によっ
て処理室201内を真空排気する。この際、圧力センサ245が測定した圧力値に基づき、APC242の弁開度がフィードバック制御される。
【0046】
(昇温ステップS22)
次に、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ206によって処理室201内を加熱する。この際、温度センサ263が検出した温度値に基づき、ヒータ206への通電量がフィードバック制御される。続いて、回転機構254により、ボート217及びウエハ200を回転させる。
【0047】
(成膜ステップS23)
処理室201内の温度が安定したら、ガス供給管232が備える図示しないバルブを開き、MFC241により流量制御しながら、ガス供給源から処理室201内に処理ガスを供給する。処理ガスは処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250内に流出して排気管231から排気される。処理ガスは、処理室201内を通過する際にウエハ200の表面と接触し、熱CVD反応によってウエハ200の表面上に薄膜が堆積(デポジション)される。予め設定された処理時間が経過したら、処理室201内への処理ガスの供給を停止する。
【0048】
(降温ステップS24)
処理ガスの供給を停止したら、ヒータ206への電力供給を停止し、ボート217およびウエハ200を所定の温度にまで降下させる。
【0049】
(常圧復帰ステップS25)
ガス供給源から不活性ガスを供給し、処理室201内を不活性ガスで置換するとともに、処理室201内の圧力を常圧に復帰させる。以上により、プロセスレシピに基づく成膜プロセスが終了する。
【0050】
(基板搬出ステップ)
その後、基板搬出ステップを行う。すなわち、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降してマニホールド209の下端を開口するとともに、処理済のウエハ200を保持するボート217をマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部へと搬出(ボートアンローディング)する。処理済のウエハ200をボート217より取り出し、ポッド110内へ格納する(ウエハディスチャージ)。以上により、プロセスレシピに基づく成膜処理工程が終了する。
【0051】
(5)基板処理装置用コントローラの構成
続いて、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラ240の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置100と群管理装置500とで構成される基板処理システムのブロック構成図である。
【0052】
基板処理装置用コントローラ240は、主制御部としての表示装置制御部(操作部)239を備えている。表示装置制御部239には、ディスプレイ等のデータ表示部240aとキーボード等の入力部240bとがそれぞれ接続されている。表示装置制御部239は、操作員による入力部240bからの入力(操作コマンドの入力等)を受け付けると共に、基板処理装置100の状態表示画面や操作入力受付画面等をデータ表示部240aに表示するように構成されている。
【0053】
基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239にデータ交換可能なように接続された処理制御部239aと、処理制御部239aにデータ交換可能なように接続された、処理炉202を制御する上述のI/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御
部236、温度制御部237)と、を備えている。処理制御部239aは、I/O制御部を介して処理炉202の動作を制御するとともに、処理炉202の状態(温度、ガス流量、圧力等)を示すモニタデータを収集する(読み出す)ように構成されている。
【0054】
また、基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239にデータ交換可能なように接続された搬送制御部238と、搬送制御部238にデータ交換可能なように接続されたメカ機構I/O238aと、を備えている。メカ機構I/O238aには、基板処理装置100を構成する各部(例えばボートエレベータ115、回転機構254、ポッドエレベータ118a、ポッド搬送機構118b、ポッドオープナ121、ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125b等)が接続されている。搬送制御部238は、メカ機構I/O238aを介して基板処理装置100を構成する各部の動作を制御するとともに、基板処理装置100を構成する各部の状態(例えば位置、開閉状態、動作中であるかウエイト状態であるか等)を示すモニタデータを収集する(読み出す)ように構成されている。
【0055】
また、基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239に接続されたデータ保持部239eを備えている。データ保持部239eには、基板処理装置用コントローラ240に種々の機能を実現するプログラムや、処理炉202にて実施される基板処理工程の設定データ(レシピデータ)や、I/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237)や搬送制御部238から読み出した各種データ等が保持(格納)されるように構成されている。
【0056】
また、基板処理装置用コントローラ240は、表示装置制御部239に接続された通信制御部239bを備えている。通信制御部239bは、I/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237)を介して読み出した処理炉202の状態(温度、ガス流量、圧力等)を示すモニタデータを、処理制御部239a及び表示装置制御部239を介して受信し、群管理装置500へ送信することが可能なように構成されている。また、通信制御部239bは、メカ機構I/O238aを介して読み出した基板処理装置100を構成する各部の状態(位置、開閉状態、動作中であるかウエイト状態であるか等)を示すモニタデータを、搬送制御部238及び表示装置制御部239を介して受信し、群管理装置500へ送信することが可能なように構成されている。
【0057】
(6)群管理装置の構成
続いて、上述の基板処理装置100とデータ交換可能なように構成された本実施形態に係る群管理装置500の構成について、主に図1を参照しながら説明する。
【0058】
図1に示すように、群管理装置500は、中央処理装置(CPU)として構成された制御部501と、内部に共有メモリ502領域を有するメモリ(図示せず)と、HDDなどの記憶装置として構成された記憶部503と、ディスプレイ装置等の表示部としてのデータ表示部505と、キーボード等の入力部506と、通信部としての通信制御部504と、を有するコンピュータとして構成されている。上述のメモリ、記憶部503、データ表示部505、入力部506、通信制御部504は、内部バス等を介して制御部501とデータ交換可能なように構成されている。また、制御部501は、図示しない時計機能を有している。
【0059】
本実施形態に係る群管理装置500は、通信制御部504が基板処理装置100から受信した膨大な量のモニタデータの取り扱いを容易にするため、最大値、最小値、平均値等に代表値化したうえで、データの加工や参照を行うように構成されている。すなわち、所定のデータ抽出条件503pに従ってモニタデータを読み出し、読み出したモニタデータを基に代表値データを生成するように構成されている。生成された代表値データは所定の
グラフに加工され、データ表示部505に表示されるように構成されている。
【0060】
特に、本実施形態に係る群管理装置500では、実際の装置状態や処理状態等に因らない代表値データの差異を低減し、同一レシピ間での基板やバッチの状態比較をより容易に行うことができる。
【0061】
(通信制御部)
通信部としての通信制御部504は、ネットワーク400を介して基板処理装置用コントローラ240の通信制御部239bに接続されていると共に、I/O制御部(ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部237)及びメカ機構I/O238aに接続されている。通信制御部504は、基板処理装置100からモニタデータを受信し、共有メモリ502に渡すように構成されている。
【0062】
通信制御部504は、モニタデータの受信のタイミングとして、所定の間隔(例えば0.1秒間隔)で定期的に受信したり、各イベントの発生時、例えばレシピやステップが終了したタイミングで受信したり、或いはモニタデータの発生時にその都度受信したりするように構成されている。
【0063】
また、通信制御部504は、後述するように、記憶部503に読み出し可能に格納されるデータ抽出条件503pにより定義される所定のイベントを基板処理装置100から受信すると、後述する代表値データ生成部511に対して「イベント検出通知」を送信するように構成されている。なお、通信制御部504と代表値データ生成部511との通信は、例えば共有メモリ502を介して行われる。すなわち、通信制御部504が共有メモリ502に書き込んだ「イベント検出通知」を、代表値データ生成部511が所定のタイミングで読み出すことで通信が行われる。
【0064】
共有メモリ502に渡されるモニタデータには、モニタデータを特定するデータIDと、モニタデータの発生源である基板処理装置100を特定する装置特定情報(装置名称など)と、モニタデータの発生時に基板処理装置100が実行していたレシピを特定するレシピ特定情報と、モニタデータの収集時に基板処理装置100内で発生したイベントを特定するイベント特定情報と、モニタデータの発生時刻を示す時刻情報(時刻データ)と、が付加されるように構成されている。
【0065】
(記憶部)
記憶部503には、代表値データ生成プログラム、代表値データ加工プログラム及びデータベースプログラムがそれぞれ格納されている。代表値データ生成プログラムは、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、後述する代表値データ生成部511を群管理装置500に実現するように構成されている。代表値データ加工プログラムは、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、後述する代表値データ加工部512を群管理装置500に実現するように構成されている。データベースプログラムは、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、後述するデータベース503dを記憶部503内に実現するように構成されている。また、記憶部503には、後述するデータ抽出条件503pが、読み出し可能に格納されている。
【0066】
格納部としてのデータベース503dは、通信制御部504が受信して共有メモリ502に格納したモニタデータを、上述のデータID、装置特定情報、レシピ特定情報、イベント特定情報、時刻データにそれぞれ関連づけて、読み出し可能に格納するように構成されている。また、データベース503dは、後述する代表値データ生成部511が生成し
た代表値データを、読み出し可能に格納するように構成されている。
【0067】
データ抽出条件503pは、代表値データの基となるモニタデータを抽出する区間についての条件を規定する。モニタデータを抽出する区間としては、例えば基板処理装置100内での所定のイベントの発生に関連づけられた区間がある。ここで、イベントとは、基板処理装置100内において発生する事象や基板処理装置100の各部の動作等をいい、例えばレシピやステップの実行開始や実行終了等のほか、バルブの開閉動作やセンサのオン・オフ、エラーの発生、操作員による各種操作等、レシピの実行によって時系列順に発生するイベントや、必ずしもレシピの実行によらないイベントも含まれる。
【0068】
モニタデータの抽出区間を所定のイベント発生に関連づけた抽出条件の例を挙げると、例えば所定のイベント間の期間に発生したモニタデータを抽出する条件が考えられる。所定のイベント間の期間としては、例えば所定のレシピやステップの実行開始から実行終了までの期間、ウエハ200の搬入開始から搬出終了までの期間、すなわち、上述の基板搬入ステップにおけるボート217へのウエハ200の装填開始から基板搬出ステップにおけるボート217からのウエハ200の脱装終了までの期間等がある。この他にも、所定のイベント発生から一定期間内を抽出したり(例えば、バルブの開放から10秒間を抽出)、所定のイベント発生から定期的に反復して抽出したり(例えば、ヒータ206の通電開始から10分おきに抽出)、所定のイベント発生から所定数のモニタデータが得られるまでの区間、或いはモニタデータが所定値になるまでの区間で抽出したりするように抽出条件を設定することができる。また、上記に挙げた区間の設定を複数組み合わせてもよい。
【0069】
データ抽出条件503pとしては、例えばSEMI規格に準拠したデータ収集プラン(DCP:Data Collection Plan)等を用いることができる。これによって、モニタデータの収集・抽出の一括設定・一元管理が容易となり、所定のイベント発生に関連付けたモニタデータの抽出の設定が、いっそう容易となる。
【0070】
なお、データ抽出条件503pは、代表値データ生成プログラムが起動するときに代表値データ生成プログラムが管理するメモリ領域中に読み出され、代表値データ生成部511によって随時参照可能なように構成されている。
【0071】
(代表値データ生成部)
代表値データ生成部511は、通信制御部504から「イベント検出通知」を受信したら、モニタデータの抽出条件が予め定義されたデータ抽出条件503pを参照しつつ、データベース503dに格納されたモニタデータのうち、データ抽出条件503pに適合するモニタデータをデータベース503dから読み出し、読み出したモニタデータを基に代表値データを生成し、後述の時刻データと併せて、記憶部503に実現されたデータベース503aに読み出し可能に格納するように構成されている。代表値データには、例えば、代表値の名称を示す“代表値名称”情報、平均・最大・最小などの代表値の計算条件を示す“代表値計算条件”情報、代表値が抽出された区間を示す“代表値抽出区間”情報、代表値抽出区間の開始日時と終了日時を示す“代表値抽出日時”情報、代表値そのものを示す“代表値”情報、代表値を生成した日時を示す“代表値生成日時”情報、代表値計算に要した時間を示す“代表値計算時間”情報、代表値計算時に使用したデータ点数を示す“データ点数”情報等がそれぞれ含まれる。
【0072】
図2に、代表値データ生成部511による代表値データの具体的な生成方法について示す。図2の(a)は温度のモニタデータを例示する時系列グラフであり、(b)は代表値データを例示するテーブルである。図2(a)の時系列グラフは、より具体的には、上述のS21〜S25までのステップを含むプロセスレシピに基づく成膜処理工程を実施して
得られる温度のモニタデータの例であり、説明の便宜上、係るモニタデータをグラフ化して示している。図2(a)の横軸は時刻であり、縦軸は処理室201内の温度(℃)である。代表値データ生成部511は、データ抽出条件503pで定義されるモニタデータの抽出条件に従って、例えばS21〜S25までの各ステップの実行開始から実行終了までの期間ごとに、モニタデータをデータベース503dから読み出すように構成されている。また、代表値データ生成部511は、各ステップの実行期間ごとに読み出されたそれぞれのモニタデータについて、始値、終値、最大値、最小値、平均値等を検索又は計算して代表値データを生成するように構成されている。生成された代表値データには、基になったモニタデータの発生時刻を示す時刻データが付加され、例えば図2(b)に例示するような代表値データ・テーブルが作成されて、データベース503dに読み出し可能に格納されるように構成されている。
【0073】
このように、データ抽出条件503pを参照しながら、所定のイベントの発生に関連付けてモニタデータを抽出するので、例えば同一のレシピに基づくモニタデータであれば、毎回、略同じ区間内から抽出されることとなる。したがって、処理結果が同等であれば抽出されるモニタデータも略同等となり、そこから生成される代表値データも略同等となる。すなわち、抽出区間の違い等に起因するような実際の装置状態や処理状態等に因らない差異が代表値データに生じ難くなる。
【0074】
また、代表値データに始値、終値、最大値、最小値、平均値等が含まれるように構成したので、代表値データからより多くの情報を得ることができ、ウエハ200やバッチの処理状態、装置状態等の比較がいっそう容易となる。
【0075】
代表値データ生成部511は、データベース503dへの代表値データ及び時刻データの格納が完了したら、代表値データ加工部512に対して「代表値データ生成通知」を送信するように構成されている。なお、代表値データ生成部511と代表値データ加工部512との通信は、例えば共有メモリ502を介して行われる。すなわち、代表値データ生成部511が共有メモリ502に書き込んだ「代表値データ生成通知」を、代表値データ加工部512が所定のタイミングで読み出すことで行われる。
【0076】
(代表値データ加工部)
代表値データ加工部512は、「代表値データ生成通知」により通知された代表値データ及び代表値データに付加されている時刻データを、データベース503dから読み出し、これらを表示可能に加工してデータ表示部505に表示させるように構成されている。具体的には、代表値データが含む始値、終値、最大値及び最小値をそれぞれ時刻データに関連付けて視覚的に表したローソク足チャートやバーチャートに加工し、データ表示部505に表示させるように構成されている。
【0077】
図3に、代表値データ加工部512により代表値データを加工して得られるローソク足チャートの具体例を示す。図3は、図2(b)に例示する代表値データから加工されたローソク足チャートである。図3の横軸は時刻であり、縦軸は処理室201内の温度(℃)である。各ローソク足のローソク部分(実体)が有する底辺又は上辺は、基になったモニタデータの始値又は終値を示している。ローソク部分が白抜きの場合は、底辺が始値を示し、上辺が終値を示しており、温度が上昇したことを示す。黒塗りの場合は、底辺が終値、上辺が始値であり、温度が降下したことを示す。ローソク部分の紙面に向かって左右の辺の位置は、モニタデータの始値と終値とが発生した時刻をそれぞれ示しており、ローソク部分の幅は、モニタデータが抽出された期間の長さ(ここでは、各ステップの実行期間の長さ)に対応している。また、それぞれの期間内における最大値はローソク部分の上辺から突き出た上ヒゲで表わされ、上ヒゲの位置は最大値が発生した時刻に対応している。最小値は、発生時刻の位置に下ヒゲで示される。
【0078】
また、上記のローソク足チャートに替えて、図4(b)に示すように、最大値と最小値とを線分で結び、線分の左右に始値と終値を示すバーをそれぞれ有するバーチャートとすることもできる。本実施形態に係るバーチャートにおいては、始値及び終値のバーのそれぞれの端部の位置及び全体の幅を、モニタデータが抽出された時刻の位置及び期間の長さにそれぞれ対応させる。また、図4(c)及び(d)に示すように、最大値及び最小値の表示位置をそれぞれが発生した時刻の位置に対応させ、その間を屈曲した線分で結んだバーチャートとしてもよい。あるいは、図4(e)に示すように、最大値・最小値間を矩形で繋いでもよい。
【0079】
このように、上記に述べる本実施形態のように、始値、終値、最大値、最小値、時刻データ等を盛り込んだローソク足チャートやバーチャートを表示させることで、より多くの情報を視覚的に捉え易くなって、より容易にウエハ200やバッチの処理状態、装置状態を把握することができる。
【0080】
なお、代表値データ加工部512は、代表値データの加工・表示のタイミングとして、代表値データ生成部511から「代表値データ生成通知」を受信したタイミングや、入力部506から操作員による「代表値データ表示要求」を受け付けたタイミング等で代表値データの加工・表示を行うように構成されていてもよい。さらに、「代表値データ生成通知」により通知された最新の代表値データを読み出す際に、同一のレシピやステップにおける過去の他の代表値データを読み出すように構成されていてもよい。読み出した過去の代表値データのそれぞれを上記と同様に加工してチャートを作成し、直近の代表値データに基づくチャートと併せてデータ表示部505に複数並べて、或いは重ねて表示させることで、同一のレシピ間やステップ間でのウエハ200比較、バッチ比較が、いっそう容易となる。
【0081】
また、代表値データ加工部512は、作成したチャートを代表値データに付加してデータベース503dに格納するように構成されていてもよい。このように構成することで、過去の代表値データについて繰り返し加工を行う必要がなくなり、データの再読み出し・再表示の効率を高めることができる。
【0082】
図5に、ローソク足チャートをデータ表示部505に複数並べて表示させた場合について例示する。図5の横軸は時刻であり、数日間に亘る期間の特定の時刻が示されている。図5の縦軸は、処理室201内の温度(℃)である。複数のローソク足チャートは、同一のレシピ、具体的には上述のS21〜S25を含むプロセスレシピにおける数日間の複数の代表値データからそれぞれ加工されたものであり、通常であれば略同等のチャートとなる。図5の例では、一部のチャートに他のチャートとは異なる点が認められ、基板処理装置100やウエハ200の処理状態に何らかの異常が生じた可能性を示唆している。例えば、符号M1が指し示す領域では、昇温ステップS22における温度の最大値に増大がみられ、温度が一旦超過したのち所定値に落ち着くオーバーシュートの度合いが大きかったことが疑われる。また、符号M2の領域ではレシピの実行間隔に空きが生じている。符号M3の領域では低い温度からレシピがスタートしており、装置待機時の温度低下があったことが読み取れる。符号M4の領域では、昇温ステップS22に長時間を要している。
【0083】
以上のように、ローソク足チャート等を複数並べて、或いは重ねて表示させることで、同一のレシピやステップ間におけるウエハ200やバッチの状態比較がいっそう容易となり、日単位や月単位、或いは年単位に亘る長期間のデータ推移をいっそう把握し易くなる。
【0084】
(7)群管理装置の動作
続いて、本実施形態に係る群管理装置500の動作について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る群管理装置500の内部動作を例示する模式図である。係る動作は、半導体装置の製造工程の一工程として行われる。
【0085】
代表値データ生成プログラム、代表値データ加工プログラム、データベースプログラムが、記憶部503から上述のメモリ(図示せず)に読み出されて制御部501に実行されることにより、代表値データ生成部511、代表値データ加工部512、データベース503dが起動する。また、データ抽出条件503pに定義されているモニタデータの抽出条件が、代表値データ生成プログラムが管理するメモリ領域中に読み出される。
【0086】
群管理装置500の通信制御部504が、モニタデータを基板処理装置100から受信し、共有メモリ502に格納する。次に、記憶部503に実現されたデータベース503dが、共有メモリ502に格納されたモニタデータを読み出し可能に格納する。また、通信制御部504は、データ抽出条件503pにより定義される所定のイベント、例えば所定のレシピやステップの実行終了等を基板処理装置100から受信すると、代表値データ生成部511に対して「イベント検出通知」を送信する。
【0087】
代表値データ生成部511は、通信制御部504から「イベント検出通知」を受信すると、予め記憶部503から読み出しておいたデータ抽出条件503pを参照しつつ、格納されたモニタデータのうち、データ抽出条件503pに適合するモニタデータをデータベース503dから読み出す。さらに、代表値データ生成部511は、読み出したモニタデータを基に代表値データを生成し、生成した代表値データと、これに関連する時刻データとを併せて、記憶部503に実現されたデータベース503dに読み出し可能に格納する。データベース503dへの格納が済むと、代表値データ生成部511は、代表値データ加工部512に対して「代表値データ生成通知」を送信する。
【0088】
代表値データ加工部512は、代表値データ生成部511が格納した代表値データ及び時刻データをデータベース503dから読み出し、これらを表示可能に加工する。すなわち、代表値データを始値、終値、最大値、最小値、時刻データ等が表されたローソク足チャートやバーチャートに加工し、加工したチャートを群管理装置500のデータ表示部505に表示させる。
【0089】
(8)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0090】
(a)本実施形態によれば、代表値データ生成部511は、データ抽出条件503pに適合するモニタデータをデータベース503dから読み出して代表値データを生成するように構成されている。データ抽出条件503pには、所定のイベントの発生に関連づけられた区間内のモニタデータを抽出するよう、予め抽出条件が定義されている。これによって、例えば同一のレシピに基づく同等の結果であれば、毎回、略同一の区間内から略同等のモニタデータが抽出されることとなる。よって、生成される代表値データについても、抽出区間の違い等に起因するような実際の装置状態や処理状態等に因らない差異を低減することができる。従って、同一のレシピ間や同一のステップ間でのウエハ200やバッチの状態比較がより容易となり、監視作業の負担軽減や効率化が可能となる。また、装置異常の兆候となり得る微細な装置状態変化に気付き易くなるため、装置トラブルや基板処理不良を未然に回避することが容易となる。
【0091】
(b)また、本実施形態によれば、所定のレシピやステップの実行期間ごとに、モニタデータを抽出するように構成されている。これによって、装置異常時には、異常値を示す代表値データが、どのレシピ、或いはステップから生成されたかを特定することができ、異
常が発生したレシピやステップを容易に特定することができる。したがって、より効率的により素早く装置異常に対応でき、装置の故障時間を低減することができる。
【0092】
(c)また、本実施形態によれば、代表値データ生成部511は、始値、終値、最大値、最小値等を含む代表値データを生成するように構成されている。これによって、より多くの情報を代表値データから得ることができ、ウエハ200やバッチの処理状態、装置状態等の把握がいっそう容易となる。
【0093】
(d)また、本実施形態によれば、代表値データ加工部512は、代表値データをローソク足チャートやバーチャートに加工してデータ表示部505に表示させるように構成されている。これによって、より多くのデータを視覚的に捉え易くなり、ウエハ200やバッチの処理状態、装置状態の把握がいっそう容易となる。
【0094】
(e)また、本実施形態によれば、上記のチャートの始値及び終値の端部、最大値、最小値の表示位置が時刻データを表す構成となっている。これによって、所定期間内のデータ推移を把握することが可能となる。
【0095】
(f)また、本実施形態によれば、データ表示部505は、ローソク足チャートやバーチャートを複数並べて、或いは重ねて表示可能なように構成されている。これによって、同一のレシピ間や同一のステップ間でのウエハ200やバッチの状態比較がいっそう容易となり、長期間のデータ推移を把握し易くなる。
【0096】
<本発明の第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0097】
本実施形態に係る基板処理装置は、図1に示す上述の実施形態に係る基板処理装置用コントローラ240と同様の構成を備える基板処理装置用コントローラを有している。本実施形態に係る基板処理装置用コントローラは、第1実施形態に係る代表値データ生成部511、代表値データ加工部512、データベース503dの機能を有するように構成されている。また、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラは、第1実施形態におけるデータ抽出条件503pに相当する条件を保有し、これらを参照しながらモニタデータの抽出を行うように構成されている。
【0098】
また、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラが備えるデータ表示部は、代表値データを加工して得られる各種チャートを表示可能なように構成されている。
【0099】
本実施形態においては、本実施形態に係る基板処理装置用コントローラによって、上述の群管理装置500と同様の効果を奏する。
【0100】
<本発明の他の実施形態>
本発明は、基板処理装置100と群管理装置500とが同じフロア(同じクリーンルーム内)に配置される場合に限定されない。例えば、基板処理装置100をクリーンルーム内に配置すると共に、群管理装置500を事務所内(クリーンルームとは異なるフロア)に配置し、レシピの進行状況や基板処理装置100の状態を遠隔から監視するようにしてもよい。或いは、群管理装置500が備える一部の構成、例えばデータ表示部505や入力部506のみを事務所内に配置してもよい。
【0101】
本発明は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、PVD(Physical
Vapor Deposition)法等による酸化膜や窒化膜、金属膜等の種々の膜
を形成する成膜処理に適用できるほか、拡散処理、アニール処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理にも適用できる。また、基板処理中のみならず、処理炉202内のクリーニングやコンディショニングの実施時にも適用できる。或いは、装置の所定状態の監視にも適用可能である。さらに、本発明は、薄膜形成装置の他、アニール処理装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置等の他の基板処理装置にも適用できる。
【0102】
本発明は、本実施形態に係る基板処理装置のような半導体ウエハを処理する半導体製造装置等に限らず、ガラス基板を処理するLCD(Liquid Crystal Display)製造装置等の基板処理装置にも適用できる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0104】
<本発明の好ましい態様>
以下に本発明の望ましい態様について付記する。
【0105】
本発明の一態様は、
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置と、前記基板処理装置に接続される群管理装置と、を含む基板処理システムであって、
前記群管理装置は、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、前記データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
基板処理システムである。
【0106】
好ましくは、
前記代表値データは、前記モニタデータの前記区間内の始値、終値、最大値、最小値、平均値の少なくともいずれかを含む。
【0107】
好ましくは、
前記代表値データ加工部は、前記代表値データを、ローソク足チャート、バーチャートの少なくともいずれかに加工して前記表示部に表示させる。
【0108】
さらに好ましくは、
前記ローソク足チャートは、最大値及び最小値を表すヒゲを有する。
【0109】
好ましくは、
前記表示部は、ローソク足チャート、バーチャートの少なくともいずれかを複数表示可能なように構成されている。
【0110】
好ましくは、
前記モニタデータを抽出する前記区間には、所定のイベント間の期間が規定されている
。
【0111】
好ましくは、
前記モニタデータを抽出する前記区間には、所定のレシピの実行開始から実行終了までの期間、前記所定のレシピに含まれる所定のステップの実行開始から実行終了までの期間、前記基板の搬入開始から搬出終了までの期間、の少なくともいずれかが規定されている。
【0112】
本発明の他の態様は、
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置に接続される群管理装置であって、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
群管理装置である。
【0113】
本発明のさらに他の態様は、
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置であって、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
基板処理装置である。
【符号の説明】
【0114】
100 基板処理装置
500 群管理装置
503d データベース(格納部)
503p データ抽出条件
504 通信制御部(通信部)
505 データ表示部(表示部)
511 代表値データ生成部
512 代表値データ加工部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置と、前記基板処理装置に接続される群管理装置と、を含む基板処理システムであって、
前記群管理装置は、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、前記データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
ことを特徴とする基板処理システム。
【請求項1】
複数のイベントを発生させながらレシピを実行する基板処理装置と、前記基板処理装置に接続される群管理装置と、を含む基板処理システムであって、
前記群管理装置は、
前記レシピの進行状況又は前記基板処理装置の稼働状態を示すモニタデータを前記基板処理装置から受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記モニタデータを読み出し可能に格納する格納部と、
所定のイベントが検出されると、前記モニタデータを抽出する区間を規定するデータ抽出条件を参照しつつ、前記格納部に格納された前記モニタデータのうち、前記データ抽出条件に適合する前記モニタデータを前記格納部から読み出し、読み出した前記モニタデータを基に代表値データを生成し、生成した前記代表値データと前記代表値データに関連する時刻データとを併せて前記格納部に格納する代表値データ生成部と、
前記格納部に格納された前記代表値データを加工して表示部に表示させる代表値データ加工部と、を有する
ことを特徴とする基板処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−64881(P2012−64881A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209731(P2010−209731)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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