説明

基板搬送用治具及び基板搬送方法

【課題】 簡便に基板を基板搬送用治具から取り外すことができる基板搬送用治具を提供すること。また、基板の取り外しの際に生じる基板へのダメージを抑制することである。
【解決手段】
本発明にかかる基板搬送用治具は、基体101の平坦面にフレキシブル基板200を粘着材102で固定したとき、平坦面にはフレキシブル基板200の実装領域204、端子部205を含む配線形成領域以外の領域で、フレキシブル基板200の端部と対向する位置に取り外し用穴104を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板搬送用治具及び基板搬送製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)などの基板実装面には、複数の電子部品が表面実装技術(SMT:Surface Mounting Technology)を用いて実装される。例えば、FPCを電子部品実装工程(クリーム半田印刷工程、電子部品搭載工程、リフロー工程などを含む。)において搬送する際、基板搬送用治具を用いる。該治具の基体の平坦面に基板実装面の裏面を載置し、FPCの端の数箇所を片面テープで上記平坦面に固定する方法が採用されてきた。
【0003】
また、液状粘着剤を基板搬送用治具の基体の平坦面に直接塗布又は噴霧定着させ、その粘着剤上にFPCを固定する方法も利用されている(特許文献1参照。)。しかし、これらの固定方法は、FPCの固定(取り付けおよび取り外し)に手間がかかり作業性が悪いとともに、FPC実装面に粘着剤が接触・残留するという難点が認められる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2には、FPC固定用粘着シートを用いる方法が開示されている。この方法は、基材の両面に適度な弱粘着性を有する粘着剤層が形成されたFPC固定用粘着シートを用い、該シートを基板搬送用治具の平坦面の基体全面または所定位置に配設し、該シート上にFPC実装面の裏面を載置して固定するものである。
【特許文献1】特開2002−374062号公報
【特許文献2】特開2003−243819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、FPCの実装面上への電子部品の実装は、FPCが基板搬送用治具に固定された状態で行われる。その後、電子部品が実装されたFPCは、基板搬送用治具の基体から取り外される。例えば、図5に示すように、FPC20は、基板搬送用治具10の基体11の平坦面上に粘着材12を用いて固定されている。電子部品の実装後、FPC20を基体11から取り外す際、基体11とFPC20の間にピンセットなどの取り外し治具30を滑り込ませて、FPC20の一部を挟み、引き剥がすことによって、FPC20の取り外しを行っていた。しかし、FPC20と基板搬送用治具10の基体11の平坦面との隙間はほとんどなく、取り外しに時間がかかっていた。また、取り外し治具30を無理にFPC20と基体11との間にもぐりこませるため、FPC20へのダメージが懸念されていた。
【0006】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、簡便に基板を基体から取り外すことができる基板搬送用治具及び基板搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる基板搬送用治具は、実装領域及び配線形成領域を有する基板を粘着材で基体の平坦面に固定して搬送した後、取り外し治具を使用して前記基板を前記基体より取り外し可能とされた基板搬送用治具であって、前記平坦面には、前記取り外し治具を挿入可能な穴が、固定された前記基板の実装領域及び配線形成領域を除く端部と対向する位置に設けられているものである。これによって、簡便に基板を基体から取り外すことができる。また、基板の実装領域及び配線形成領域へのダメージを軽減することができる。
【0008】
本発明にかかる基板搬送用治具は、前記基板がフレキシブル基板であるときに、特に有効である。
【0009】
本発明にかかる基板搬送方法は、実装領域及び配線形成領域を有する基板を粘着材で基体の平坦面に固定して搬送した後、取り外し治具を使用して前記基板を前記基体より取り外す基板搬送方法であって、前記取り外し治具を挿入可能な穴が設けられた前記基体の平坦面に、前記基板の実装領域及び配線形成領域を除く端部が前記穴と対向するように、前記基板を固定し、前記基体に部品実装した後、前記取り外し治具を前記穴に挿入し、前記端部を前記取り外し治具で持上げて、前記基板を前記基体より取り外すようにしたことを特徴とする。これによって、より簡便に基板を基体から取り外すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、簡便に基板を基板搬送用治具から取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る基板搬送用治具の構成を示す図である。図1(a)は基板搬送用治具100の模式的平面図、図1(b)は図1(a)のA−A切断線による断面図である。
【0013】
図1において、基板搬送用治具100は、例えばアルミ等の金属で形成された平板状の基体101の表面上に、粘着材102を備える。粘着材102は、例えば、耐熱性を有する両面粘着材にて形成される。粘着材102を上記両面粘着材で形成することで、後述のフレキシブル基板の裏面を上記両面粘着材の粘着力で確実に保持することができる。
【0014】
なお、両面粘着材として、例えば、フレキシブル基板の取り付けおよび取り外しが容易となるように工夫された特開2003−243819号公報に記載のFPC固定用粘着シートを用いることが、より好ましい。このFPC固定用粘着シートは、アルキル基の炭素数が4〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし且つ分子ないに官能基を含有しているアクリル系ポリマーと、アルミニウム系架橋剤とからなる粘着剤層が、基材の両面に形成されているものである。このFPC固定用粘着シートは、特にフレキシブル基板に対する粘着性や剥離性を保持しつつ、剥離後には粘着剤成分がフレキシブル基板に残存せず、しかも、電子部品の実装時のリフロー工程などの加熱工程を経ても粘着性及び剥離性が優れている。
【0015】
位置決め部103は、後述のフレキシブル基板200を基体101上の所定位置に位置決めする部材であり、図1に示される通り、例えば基体101表面に2個配設される。この位置決め部103は、フレキシブル基板の形状に応じて、個数、配置が変更される。なお、図1では両位置決め部103はフレキシブル基板の特定辺に平行に配設されているが、対角線上に配設されてもよい。
【0016】
また、基体101の平坦面には、電子部品の実装後のフレキシブル基板を取り外す際に使用する、取り外し用穴104が設けられている。取り外し用穴104は、フレキシブル基板を固定したときにフレキシブル基板の基板端と対向する位置に形成されている。または、取り外し用穴104の一部とフレキシブル基板の基板端とが重なるようにフレキシブル基板を固定する。取り外し用穴104の配置位置、フレキシブル基板の取り外し方法については、後に詳述する。取り外し用穴104は、図1(b)に示すように基体101の平坦面上に凹部を形成して設けてもよいし、あるいは貫通孔としてもよい。
【0017】
次に、フレキシブル基板の構成を説明する。図2は、フレキシブル基板200の平面図である。フレキシブル基板200には、図1で示される基板搬送用治具100の位置決め部103の位置に対応して、位置決め穴203が設けられている。図2に示されるように、フレキシブル基板200の実装面には、電子部品を実装するための実装領域204が複数個設けられており、フレキシブル基板200に配線された電極線(不図示)と接続されている。また、この実装領域204には接続パッド(不図示)が設けられており、電子部品をフレキシブル基板200の電極線と電気的に接続するためのクリーム半田が接続パッド上に塗布されるようになっている。また、フレキシブル基板200の実装面上には、他の電子機器に接続するための端子部205が設けられている。ここで、フレキシブル基板に配線された電極線と端子部205とを配線形成領域という。
【0018】
なお、フレキシブル基板200の裏面には、補強板が取り付けられていてもよい。補強板の装着部位の実装面側に電子部品が実装されていることもある。この場合、基体101に逃がし穴(不図示)を設ける。補強板が基体101に設けられた逃がし穴に収容されることによって、基板101は平坦に保たれ、安定して電子部品の実装を行うことができる。逃がし穴は、フレキシブル基板200の実装面の裏面に取り付けられた補強板の位置に応じて基体101の表面に設けられるが、フレキシブル基板200の端部にかかるように設けられるものではない。
【0019】
次に、フレキシブル基板200を基板搬送用治具100に取り付けた状態について、図3を参照して説明する。図3では、フレキシブル基板200で隠れた部分を破線で示している。図3(a)は、フレキシブル基板200を基板搬送用治具100に取り付けた状態を示す平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A切断線による断面図である。
【0020】
図3において、位置決め部103に位置決め穴203をはめ合わせることにより、フレキシブル基板200が所定の位置に配置される。また、粘着材102は、基体101の平坦面上にフレキシブル基板200が確実に固定されるようにフレキシブル基板200の裏面の略全面に接するように配置されることが好ましい。基板搬送用治具100にフレキシブル基板100裏面のほぼ全面を粘着することができるため、浮きや撓みの発生が抑えられて実装品質を向上することができる。
【0021】
なお、粘着材102は、フレキシブル基板200の実装面の一部に接するように配置されていてもよい。その際、フレキシブル基板200と粘着材102との貼着面積を考慮して、最適な粘着力が得られるようにすると安定的かつ効率的に、電子部品の実装を行うことができる。
【0022】
取り外し用穴104は、フレキシブル基板200の基板端にかかるように配置される。これによって、図2(b)に示すように、簡単に取り外し治具300をフレキシブル基板200の下に挿入することができ、フレキシブル基板200の取り外しにかかる時間を短くすることができる。
【0023】
また、取り外し用穴104は、実装領域204及び端子部205を含む配線形成領域以外の領域で、フレキシブル基板200の端部にかかるように設けられている。これによって、取り外しの際にかかるフレキシブル基板へのダメージを抑制することができる。
【0024】
また、取り外し用穴104は、粘着材102と重ならない位置に設けられることが好ましい。フレキシブル基板200を粘着材102から剥がす際に、フレキシブル基板200だけを取り外し用治具300で挟むことができ、めくり上げて引き剥がすだけで、粘着材102を基板搬送用治具100に残したまま、フレキシブル基板200だけを簡単に剥がすことができる。これによって、粘着材102を繰り返し使用することができ、生産性が向上する。
【0025】
また、取り外し用穴104の一部に、粘着材102が重なる場合、粘着材102は、取り外し用穴104の内側に入り込んでおり、取り外し用穴104の内側においては、基体101とフレキシブル基板とは固定されていなければ、フレキシブル基板200だけを取り外し用治具300で挟んで取り外すことができ、粘着材102を繰り返し使用することができる。
【0026】
本実施の形態では、取り外し用穴104が凹状の場合について説明したが、貫通孔であってもよい。この場合も上記説明したように、取り外し治具を貫通孔の中に挿入して、フレキシブル基板200を挟み、引き剥がすことで、フレキシブル基板200の取り外しを行うことができる。
【0027】
また、基体101のフレキシブル基板200を取り付ける面の裏側から貫通孔を通って、フレキシブル基板200を押し上げる押し上げ治具を設けてもよい。この押し上げ治具によって、フレキシブル基板200を押し上げ、押し上げられてできた隙間に取り外し治具300を挿入し、フレキシブル基板200の取り外しを行うことができる。このようにすることで、簡便にフレキシブル基板200の取り外しを行うことができる。
【0028】
本実施形態における、電子部品が実装されたフレキシブル基板の搬送方法について図4を参照して説明する。まず、フレキシブル基板200に設けられている位置決め穴203と基板搬送用治具100の位置決め部103とをはめ合わせ、フレキシブル基板200を所定の位置に位置決めをする(ステップS101)。このとき、フレキシブル基板200の実装領域204及び端子部205を含む配線形成領域を除く端部が取り外し用穴104と対向するように、フレキシブル基板200を配置する。
【0029】
次に、基板搬送用治具100の平坦面に粘着材102を介して、フレキシブル基板200を基体101に貼り付け、固定する(ステップS102)。そして、フレキシブル基板200が基板搬送用治具100の基体101に固定された状態で、電子部品の実装を行う。まず、フレキシブル基板200の実装面に設けられた実装領域204に、メタルマスクを介してクリーム半田を自動印刷する(ステップS103)。さらに、その後、クリーム半田が印刷された部分に電子部品を載置する(ステップS104)。この状態で、基板搬送用治具100をリフロー炉に送り、熱風及び/または赤外線により加熱されて電子部品の半田付けを行う(ステップS105)。
【0030】
そして、電子部品の実装が終わったフレキシブル基板200を基板搬送用治具100の基体101から取り外す(ステップS106)。まず、取り外し用穴104に取り外し治具300を挿入し、フレキシブル基板200の端部を挟む。そして、取り外し治具300で挟んだ状態で引き剥がすようにして、フレキシブル基板200を基板搬送治具100から取り外すことができる。このようにして、簡便にフレキシブル基板200の取り外しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる基板搬送用治具の構成を示す模式図である。
【図2】フレキシブル基板の構成を示す模式図である。
【図3】フレキシブル基板を基板搬送用治具に取り付けた状態を示す模式図である。
【図4】フレキシブル基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】従来の基板搬送用治具からフレキシブル基板を取り外すときの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
100 基板搬送用治具
101 基体
102 粘着材
103 位置決め部
104 取り外し用穴
200 フレキシブル基板
203 位置決め穴
204 実装領域
205 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装領域及び配線形成領域を有する基板を粘着材で基体の平坦面に固定して搬送した後、取り外し治具を使用して前記基板を前記基体より取り外し可能とされた基板搬送用治具であって、
前記平坦面には、前記取り外し治具を挿入可能な穴が、固定された前記基板の実装領域及び配線形成領域を除く端部と対向する位置に設けられていることを特徴とする基板搬送用治具。
【請求項2】
前記基板がフレキシブル基板である請求項1に記載の基板搬送用治具。
【請求項3】
実装領域及び配線形成領域を有する基板を粘着材で基体の平坦面に固定して搬送した後、取り外し治具を使用して前記基板を前記基体より取り外す基板搬送方法であって、
前記取り外し治具を挿入可能な穴が設けられた前記基体の平坦面に、前記基板の実装領域及び配線形成領域を除く端部が前記穴と対向するように、前記基板を固定し、前記基体に部品実装した後、前記取り外し治具を前記穴に挿入し、前記端部を前記取り外し治具で持上げて、前記基板を前記基体より取り外すようにしたことを特徴とする基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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