説明

基板検査装置

【課題】基板搬送時に振動が発生しても、基板の検査精度の低下を防止できる基板検査装置を提供する。
【解決手段】被検査基板を一方向に搬送する搬送部、搬送される被検査基板の1次元画像を取得する撮像部、被検査基板を一方向に搬送しながら撮像部により取得された複数の1次元画像を合成して2次元画像を生成する画像生成部と、生成された2次元画像のラインプロファイルから、被検査基板の振動の位相を抽出する位相抽出部と、欠陥のない基準基板を撮影して取得された振動の位相が異なる2次元画像を、振動の位相と関連付けて複数枚記憶する記憶部と、記憶された2次元画像の中から、位相抽出部により抽出された振動の位相に近い位相に関連付けられている画像を基準画像として選択する画像選択部と、画像選択部により選択された基準基板の基準画像と被検査基板の画像とを比較し、被検査基板の表面状態を検査する検査部とを備える基板検査装置を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶基板などに付着した異物や傷などを検査する基板検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板には、周期性のあるパターンを何層も重ねて集積回路が形成される。このパターンを形成するフォトリソグラフィの工程では、基板にレジスト膜を塗布し、パターンを露光してエッチングが行われる。この工程内で、基板への異物や傷の付着、レジスト膜ムラ、露光不良などが発生した場合にはパターン不良となり、集積回路として正常に動作しなくなってしまう。また、基板の裏面に異物や傷があった場合、基板が撓み露光不良を引き起こしてしまう。そこで、基板の表面および裏面とも、このような欠陥の有無を検査する必要がある。
【0003】
この検査について、従来、ラインセンサカメラと基板を搬送する1軸ステージとを用いて2次元画像を取得し、該2次元画像を解析することにより基板の検査を行う自動検査システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2001−524205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、安定的な検査を行うためには、基板とラインセンサカメラとは常に決まった位置関係にあることが望ましい。しかし、撮像時には1軸ステージが移動するため、これに伴って基板とラインセンサカメラとの間に相対的な振動が発生してしまう。この振動の大きさは、1軸ステージにおける基板の位置や搬送スピードにより異なり、また、基板の反りや保持部への押し付け状態などの違いによっても影響を受ける。
【0005】
特に、基板の裏面検査を行う場合、基板は周辺部のみを保持された状態のまま1軸ステージによって移動されるので、周辺部と中心部との保持状態の相違に基づいて、振動の態様が基板の場所により大きく異なることとなる。その結果、検査画像に1軸ステージの移動方向とは垂直な方向に、周期的なボケや明るさの変化が発生し、基板の検査精度が低下してしまうという不都合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、基板を撮像のため搬送する際に振動が発生する場合においても、基板の検査精度の低下を防止できる基板検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、被検査基板を一方向に搬送する搬送部と、該搬送部により搬送される前記被検査基板の1次元画像を取得する撮像部と、前記搬送部により前記被検査基板を一方向に搬送しながら前記撮像部により取得された複数の1次元画像を合成して2次元画像を生成する画像生成部と、該画像生成部により生成された2次元画像のラインプロファイルから、前記被検査基板の振動の位相を抽出する位相抽出部と、欠陥のない基準基板を撮影して取得された振動の位相が異なる2次元画像を、該振動の位相と関連付けて複数枚記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された2次元画像の中から、前記位相抽出部により抽出された振動の位相に近い位相に関連付けられている画像を基準画像として選択する画像選択部と、該画像選択部により選択された前記基準基板の基準画像と前記被検査基板の画像とを比較して、前記被検査基板の表面状態を検査する検査部とを備える基板検査装置を採用する。
【0008】
本発明によれば、搬送部により搬送される被検査基板について、撮像部により取得した複数の1次元画像を画像生成部により合成して2次元画像が生成され、位相抽出部により該2次元画像のラインプロファイルから振動の位相が抽出される。そして、画像選択部により記憶部に予め記憶された欠陥のない基準基板についての複数の2次元画像の中から、被検査基板の振動の位相に近い位相に関連付けられている画像が基準画像として選択され、検査部により基準基板の基準画像と被検査基板の画像とを比較して被検査基板の表面状態が検査される。これにより、被検査基板の画像と、欠陥がなく同等の振動位相を有する基準画像とを比較して、振動の影響を除外して被検査基板の欠陥のみを鮮明に抽出することができ、被検査基板を精度よく検査することが可能となる。
【0009】
上記発明において、前記位相抽出部が、前記画像生成部により生成された部分的な2次元画像から振動の位相を抽出し、前記画像選択部が、前記部分的な2次元画像から抽出された振動の位相に基づいて基準画像を選択し、前記検査部が、前記基準基板の基準画像と前記被検査基板の1次元画像とをライン毎に比較することとしてもよい。
このようにすることで、全ての1次元画像を取り終える前に、搬送部により搬送される被検査基板の表面状態をリアルタイムで検査することができ、検査時間の短縮を図ることが可能となる。また、振動の位相を抽出するために、例えば、振動1周期分の部分的な2次元画像を生成すればよいため、画像生成部の処理量を低減することができる。
【0010】
上記発明において、前記検査部が、前記基準基板の基準画像と前記被検査基板の画像とを差分演算により比較することとしてもよい。
基準基板の基準画像と被検査基板の画像との差分演算を行うことにより、振動の影響を取り除くことができ、被検査基板の表面状態の検査精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板を撮像のため搬送する際に振動が発生する場合においても、基板の検査精度の低下を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る基板検査装置について、図面を参照して説明する。
図1は、基板検査装置1が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
図1に示すように、基板検査装置1は、被検査基板101を上部に載置するサンプル台102と、サンプル台102を一方向に搬送する1軸ステージ(搬送部)106と、1軸ステージ106を駆動する駆動部111と、サンプル台102とは独立して設置され、被検査基板101の画像を取得するための照明部103、結像光学系104、およびラインセンサ(撮像部)105と、機能ブロックとして示した画像生成部107、位相抽出部120、画像記憶部(記憶部)10、画像選択部11、および検査部108と、被検査基板101の検査結果を表示する表示部109と、これらを制御する制御部110とを備えている。
【0013】
被検査基板101は、サンプル台102の上部に載置されている。駆動部111は、制御部110の移動開始命令に従って1軸ステージ106を駆動し、サンプル台102を矢印Yの方向に搬送するようになっている。これにより、被検査基板101が矢印Yの方向に搬送される。
【0014】
照明部103は、1軸ステージ106により搬送される被検査基板101にライン状の照明光を照射するようになっている。
照明部103から照射された照明光は被検査基板101により反射され、結像光学系104は、被検査基板101からの反射光をラインセンサ105に結像するようになっている。
ラインセンサ105は、制御部110の撮像開始命令に従って、結像光学系104により結像された被検査基板101の1次元画像を順次取得するようになっている。
【0015】
画像生成部107は、ラインセンサ105により取得された複数の1次元画像を合成して2次元画像を生成するようになっている。
位相抽出部120は、画像生成部107により生成された2次元画像のラインプロファイルから、被検査基板101の振動の位相を抽出するようになっている。具体的には、図3に示すように、被搬送基板101の位置とラインセンサ105により取得した1次元画像を2次元画像とし、この2次元画像の搬送方向でラインプロファイルを作成したときの輝度情報より、被検査基板101の振動の周期および位相を抽出する。ここで、図3の2次元画像のラインプロファイルには、周辺中心で小さく、中間位置で大きいといった位置による振幅の変化が見られる。また、位置Pが基板エッジの位置となっている。
【0016】
振動の周期と位相の算出方法には様々な方法が考えられるが、例えば、ラインプロファイルをフーリエ変換してもよい。その場合の手順を図4に示す。まず、2次元画像の垂直方向(Y方向)のラインプロファイルLをフーリエ変換し(S11)、振動周波数fsを求める(S12)。次に、振動周波数fsを除去したラインプロファイルL1と(S13)、振動周波数fsのみを含むラインプロファイルL2を求める(S14)。ここで、ラインプロファイルL1には、振動成分以外の基板エッジやパターンによる輝度変化が残っているので、仮に基板エッジのプロファイルL1での位置Pを検出しておく(S15)。fs成分のみのプロファイルL2には、振動による輝度変化が抽出されているので、L2での位置Pでの輝度変化から、基板エッジにおける振動成分fsの位相θが求められる(S16)。
なお、上述したフローにおいて、S14は、S13とS15の後に処理を行うこととしてもよい。
【0017】
画像記憶部10は、欠陥のない基準基板を撮影して取得された振動の位相が異なる2次元画像を、該振動の位相と関連付けて複数枚記憶するようになっている。
画像選択部11は、画像記憶部10に記憶された2次元画像の中から、位相抽出部120により抽出された振動の位相に近い位相に関連付けられている画像を基準画像として選択するようになっている。ここで、基準画像も、前述した図3と同様の位置による振幅の変化が見られる画像となっている。
【0018】
検査部108は、画像選択部11により選択された前記基準基板の基準画像と画像生成部107により生成された被検査基板101の2次元画像とを比較して、被検査基板101の表面状態を検査するようになっている。具体的には、基準基板の基準画像と被検査基板101の2次元画像とを差分演算により比較するようになっている。
表示部109は、検査部108による検査結果、すなわち、被検査基板101の傷等の欠陥の有無や種類・個数などを表示するようになっている。
【0019】
上記構成を有する基板検査装置1の作用について以下に説明する。
まず、被検査基板101の検査を行う前の初期動作として、予め欠陥の無い基準基板をサンプル台102に載置して1軸ステージ106上を搬送し、その1次元画像をラインセンサ105により取得する。そして、画像生成部107により、取得された複数の1次元画像を合成して2次元画像を生成し、該2次元画像を画像記憶部10に記憶させておく。また、位相抽出部120により、生成された2次元画像の搬送方向のラインプロファイルから、基準基板の振動の位相を抽出するとともに、該2次元画像との対応付けが行われる。
【0020】
このような基準基板についての2次元画像の取得を、振動の位相が異なる条件で複数回行う。具体的には、1軸ステージ106の動作とラインセンサ105の撮像開始のタイミングをずらしたり、基準基板を変える等を行い、振動の位相が少しずつ異なる2次元画像を画像記憶部10に記憶させる。例えば、求めた振動周期の1/4ずつ位相の異なる画像4枚を画像記憶部10に記憶させる。
【0021】
上記の初期動作の終了後、被検査基板101をサンプル台102に載置して、被検査基板101の検査を行う。
被検査基板101を載せたサンプル台102が、1軸ステージ106により搬送されると、基準基板と同様に、ラインセンサ105により取得された1次元画像が画像生成部107に逐次入力され、画像生成部107によりこれら1次元画像を合成して2次元画像が生成されるとともに、位相抽出部120により被検査基板101の振動の位相が抽出される。
【0022】
そして、画像選択部11により、画像記憶部10に記憶された2次元画像の中から、位相抽出部120により抽出された振動の位相に近い位相に関連付けられている2次元画像が基準画像として選択される。
【0023】
次に、検査部108により、画像選択部11により選択された基準基板の基準画像と画像生成部107により生成された被検査基板101の2次元画像との差分演算が行われる。この差分演算により得られる画像は、基板上に存在するチップや配線パターンに加えて、振動の影響も取り除いた画像となり、被検査基板101に欠陥が存在する場合にはその欠陥のみが抽出された画像となる。このように得られた画像を用いて、被検査基板101の表面状態が検査され、その検査結果が表示部109によりユーザが目視可能に表示される。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る基板検査装置1によれば、被検査基板101の2次元画像のラインプロファイルから振動の位相が抽出され、該振動の位相に基づいて予め記憶された欠陥のない基準基板の画像が基準画像として選択され、該基準画像と被検査基板101の2次元画像とを比較して被検査基板101が検査される。このように、被検査基板101の画像と、欠陥がなく同等の振動位相を有する基準画像とを比較することにより、振動の影響を除外して被検査基板101の欠陥のみを鮮明に抽出することができ、被検査基板101を精度よく検査することが可能となる。
【0025】
また、検査部108により、基準基板の基準画像と被検査基板101の2次元画像との差分演算を行うことにより、振動の影響を取り除くことができ、被検査基板101の表面状態の検査精度を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態においては被検査基板101の2次元画像全体を生成した後に検査を行うこととして説明したが、これに代えて、位相抽出部120が、部分的な2次元画像から振動の位相を抽出することとしてもよい。これにより、2次元画像全体を構成するための1次元画像の取得を待たずに、画像選択部11が、部分的な2次元画像から抽出された振動の位相に基づいて基準画像を選択し、検査部108が、基準基板の基準画像と被検査基板101の1次元画像とをライン毎に比較することができる。この場合、被検査基板101の振動の位相を抽出するために、例えば、振動1周期分の部分的な2次元画像を生成すればよい。
【0027】
この場合の処理について図2のフローチャートを用いて以下に説明する。
図2に示すように、制御部110の命令に従って、1軸ステージ106により被検査基板101の移動が開始され(S1)、ラインセンサ105により1次元画像の撮影が開始される(S2)。画像生成部107にはラインセンサ105から逐次1次元画像が入力され、被検査基板101全体の画像が取得される前に、一部の長方形範囲の画像の取得が済んだ段階において、位相抽出部120により、この一部の長方形範囲の搬送方向のラインプロファイルを用いて、検査画像(被検査基板101の2次元画像)に含まれる振動の位相が算出される(S3)。
【0028】
次に、画像選択部11により、検査画像の位相に最も近い位相と有する画像が基準画像として画像記憶部10から読み出され(S4)、検査部108により、検査画像と基準画像との差分演算が行われる(S5)。さらに検査画像の次の1ラインに対しても、同様に基準画像の対応する1ラインとの差分演算が行われる。この動作が基板全体の画像取得完了まで行われ(S6)、その結果として求まる変換後画像が表示部109に転送される(S7)。
【0029】
このようにすることで、全ての1次元画像を取り終える前に、軸ステージ106により搬送される被検査基板101の表面状態をリアルタイムで検査することができ、検査時間の短縮を図ることが可能となる。また、振動の位相を抽出するために、例えば、振動1周期分の部分的な2次元画像を生成すればよいため、画像生成部107の処理量を低減することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、本実施形態において、被検査基板101の振動の位相を2次元画像のラインプロファイルから抽出するとして説明したが、例えば、振動箇所である被検査基板101またはサンプル台102または結像光学系104に距離センサや加速度センサなどを搭載し、これらセンサの測定結果から被検査基板101の振動の位相を求めることとしてもよい。
また、検査部108により基準基板の基準画像と被検査基板101の2次元画像との差分演算を行うこととして説明したが、これら画像の除算を行うことにより振動の影響を抽出することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板検査装置の機能ブロック図である。
【図2】図1の基板検査装置の変形例における処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の位相抽出部の動作を説明する図である。
【図4】振動の位相を抽出する際の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 基板検査装置
10 画像記憶部
11 画像選択部
101 被検査基板
105 ラインセンサ
106 1軸ステージ
107 画像生成部
108 検査部
109 表示部
110 制御部
111 駆動部
120 位相抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査基板を一方向に搬送する搬送部と、
該搬送部により搬送される前記被検査基板の1次元画像を取得する撮像部と、
前記搬送部により前記被検査基板を一方向に搬送しながら前記撮像部により取得された複数の1次元画像を合成して2次元画像を生成する画像生成部と、
該画像生成部により生成された2次元画像のラインプロファイルから、前記被検査基板の振動の位相を抽出する位相抽出部と、
欠陥のない基準基板を撮影して取得された振動の位相が異なる2次元画像を、該振動の位相と関連付けて複数枚記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶された2次元画像の中から、前記位相抽出部により抽出された振動の位相に近い位相に関連付けられている画像を基準画像として選択する画像選択部と、
該画像選択部により選択された前記基準基板の基準画像と前記被検査基板の画像とを比較して、前記被検査基板の表面状態を検査する検査部とを備える基板検査装置。
【請求項2】
前記位相抽出部が、前記画像生成部により生成された部分的な2次元画像から振動の位相を抽出し、
前記画像選択部が、前記部分的な2次元画像から抽出された振動の位相に基づいて基準画像を選択し、
前記検査部が、前記基準基板の基準画像と前記被検査基板の1次元画像とをライン毎に比較する請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記検査部が、前記基準基板の基準画像と前記被検査基板の画像とを差分演算により比較する請求項1または請求項2に記載の基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−192508(P2009−192508A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36500(P2008−36500)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】