説明

基板用コネクタ

【課題】 端子金具を奥壁の表面側から圧入するタイプと、同裏面側から圧入するタイプの両方に共用化できるハウジングを提供する。
【解決手段】 ハウジング30のフード部31の奥壁33には、タブ状端子10とプレスフィット端子20とを貫通する貫通部34が設けられる。貫通部34には圧入孔35が貫通状に形成され、その表側と裏側の端部には、それぞれ幅広の突き当て凹部36F,36Rが段差状に形成される。タブ状端子10は奥壁33の表面側から挿通され、圧入部14が圧入孔35に圧入されたところで、ストッパ17が表面側の突き当て凹部36Fに嵌り、その奥の段付面39に当たることで押し込みが停止される。一方、プレスフィット端子20は奥壁33の裏面側から挿通され、圧入部24が圧入孔35に圧入されたところで、ストッパ27が裏面側の突き当て凹部36Rに嵌って突き当たることで押し込みが停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具を圧入により装着する形式の基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
基板用コネクタの一般的な構造は、ハウジングには相手コネクタが嵌合されるフード部が設けられて、このフード部の奥壁にL形をなすタブ状の端子金具が複数本並んで貫通され、それぞれの一端がフード部内に突出して相手コネクタに装着された相手端子と接続されるとともに、奥壁の裏面側で下向きに突出した他端が、プリント回路基板の対応するスルーホールに挿入されて半田付けにより接続されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、端子金具をフード部の奥壁を貫通状態に保持する手段としては、端子金具に圧入部とその後方にストッパを設ける一方、奥壁に圧入孔とその表面側(フード部内に面した側)の口縁に突き当て凹部とを設け、端子金具が真直な状態でフード部内から圧入孔に挿通されて圧入部が圧入され、ストッパが突き当て凹部に突き当ってそれ以上の押し込みが規制されるようになっている。なお、端子金具の奥壁の裏側に突出した部分が、その後に直角曲げされる。
【0004】
一方近年、端子金具としてプレスフィット端子を用いたものも普及しつつある(例えば、特許文献2参照)。このプレスフィット端子は、プリント回路基板との接続端側に、目玉状をなす弾性膨出部が形成されたものであって、弾性膨出部が、プリント回路基板のスルーホールに弾縮しつつ挿入されて接続されるようになっている。
【特許文献1】特開2000−82515公報
【特許文献2】国際公開パンフレット WO 95/14315
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでプレスフィット端子では、奥壁に圧入する場合に、フード部側から挿通しようとすると、圧入孔に対しては先に弾性膨出部が通ったのち圧入部が圧入されるのであるから、圧入部すなわち圧入孔を幅広にする必要があり、突き当て凹部も含めると相当に幅広となって、ピッチが大きくなってしまう。そのため、プレスフィット端子については、奥壁の裏面側から挿通する構造を採る必要があるが、突き当て凹部の形成位置が変わる等、別構造のハウジングを新たに準備せねばならないという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、端子金具を奥壁の表面側から圧入するタイプと、同裏面側から圧入するタイプの両方に共用化できるハウジングを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、コネクタハウジングには相手コネクタが嵌合される接続部が形成され、この接続部の奥壁に貫通して開口された圧入孔には端子金具が挿通されて、この端子金具に設けられた圧入部が圧入されるとともに、この圧入部の後方に張り出し形成されたストッパにより押し込みが規制された状態で保持され、前記端子金具の前記接続部内に突出した一端が前記相手コネクタに装着された相手端子と接続され、前記接続部とは反対側に突出した他端が回路基板の導電路と接続されるようにした基板用コネクタにおいて、前記圧入孔の表裏両側の口縁には、前記端子金具のストッパを嵌めて突き当てる突き当て凹部が形成されている構成としたところに特徴を有する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記圧入孔の表裏両側の口縁には、前記端子金具における挿通方向の先端を当ててこの圧入孔に誘い込む誘い込み部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
奥壁の表面側から挿通される端子金具では、圧入部が圧入孔に圧入されたのち、ストッパが表面側の突き当て凹部に嵌って突き当たることで押し込みが規制される。一方、奥壁の裏面側から挿通される端子金具では、圧入部が圧入孔に圧入されたのち、ストッパが裏面側の突き当て凹部に嵌って突き当たることで押し込みが規制される。奥壁の表面側から圧入するタイプの端子金具と、同裏面側から圧入するタイプの端子金具の両方を共通のハウジングに装着することができ、もってコスト低減を図ることができる。
<請求項2の発明>
奥壁の表面側から挿通される端子金具と、同裏面側から挿通される端子金具のいずれも、誘い込み部で誘い込まれてスムーズに圧入孔に挿通される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図12に基づいて説明する。
本実施形態の基板用コネクタは、共通のコネクタハウジング30(以下、ハウジング30という)に対して、通常のタブ状端子10と、プレスフィット端子20とが選択的に圧入によって装着され、プリント回路基板40(以下、回路基板40という)に搭載されるようになっている。
【0009】
タブ状端子10は、導電性に優れた金属板をプレス加工することによって、図3及び図4に示すような形状に形成されている。タブ状端子10は全体としては細長い角棒状に形成されており、一端側は相手端子と接続される端子接続部11、他端側は回路基板40のスルーホール41に挿入される基板接続部12となっており、ともに先端はガイド用に先細りとされている。タブ状端子10は、長短2種類(10L,10S)が備えられている。
【0010】
タブ状端子10は、基板接続部12を、ハウジング30における詳しくは後記するフード部31の奥壁33の表面側から挿通するタイプである。各タブ状端子10L,10Sにおける端子接続部11側から挿通方向の一定寸法前方(図3の左側)の位置には、圧入部14が幅方向の両側に張り出して形成されている。圧入部14は言わば挿通方向の前方を向いて形成されており、前端側の左右両側縁は、前方に向けて次第に幅狭となるようにテーパ縁15となっている。
圧入部14の挿通方向の後方にはストッパ17が連設されている。ストッパ17は圧入部14よりもさらに幅広の段付き状に張り出し形成されている。
【0011】
プレスフィット端子20は、同じく導電性に優れた金属板をプレス加工することによって、図8に示すような形状に形成されている。プレスフィット端子20も全体としては、タブ状端子10と同じ径の細長い角棒状に形成されている。その一端側は、相手端子と接続される端子接続部21となっており、先端はガイド用に先細りに形成されている。他端には、回路基板40側と接続される基板接続部とも言うべき弾性膨出部22が形成されている。この弾性膨出部22は、間に空間を設けて目玉状をなすように幅方向の両側に膨出形成されたものであって、幅方向に弾性的に開閉可能となっている。詳細には弾性膨出部22は、図12に参照して示すように、回路基板40のスルーホール41Aに弾縮されて挿入され、復元力で拡開してスルーホール41Aの内周面に形成されたコンタクトに弾接するようになっている。プレスフィット端子20も同様に、長短2種類(20L,20S)が備えられている。
【0012】
一方プレスフィット端子20は、上記したタブ状端子10とは逆に、端子接続部21を、ハウジング30におけるフード部31の奥壁33の裏面側から挿通するタイプである。そのため、端子接続部21側から挿通方向の一定寸法後方(図8の左側)の位置に、圧入部24が幅方向の両側に張り出して形成されている。この圧入部24は、タブ状端子10の圧入部14と同じ形状であり、同様に挿通方向の前端側の左右両側縁が、前方に向けて次第に幅狭となるようにテーパ縁25となっている。また、圧入部24の挿通方向の後方にはストッパ27が連設されており、タブ状端子10のストッパ17と同じ長さと幅とを持って、段付き状に張り出し形成されている。
【0013】
ハウジング30は合成樹脂製であって、図1ないし図4に示すように、一面に開口したやや扁平な角筒状をなすフード部31が設けられている。このフード部31内には、図示しない相手コネクタが嵌合可能となっている。また、フード部31の奥側の下面側には、回路基板40の表面に当てられる脚体32が形成されている。
フード部31の奥壁33には、上記したタブ状端子10またはプレスフィット端子20を貫通して保持する貫通部34が、一定ピッチで8箇所ずつ上下2段にわたって形成されている。
【0014】
各貫通部34の構造を説明する。各貫通部34には、タブ状端子10とプレスフィット端子20の圧入部14,24が圧入される圧入孔35が貫通状に形成されている。圧入孔35は、両端子10,20の圧入部14,24の厚さにほぼ等しい高さ寸法と、圧入部14,24の幅よりも狭い幅寸法を有している。
図3に示すように、圧入孔35の表側の端部と裏側の端部とには、それぞれタブ状端子10とプレスフィット端子20のストッパ17,27を突き当てて収める幅広の突き当て凹部36F,36Rが、段差状に形成されている。
また、図4に示すように、表裏の突き当て凹部36F,36Rの上下の口縁には、外方に向けて次第に広がったテーパ状をなす誘い込み面37F,37Rが形成されている。
【0015】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
タブ状端子10を装着するには、図3及び図4に示すように、基板接続部12をハウジング30の奥壁33の表面と対向した姿勢とし、長い方のタブ状端子10Lは上段の貫通部34に、短い方のタブ状端子10Sは下段の貫通部34にそれぞれ表面側から挿通する。タブ状端子10L,10Sは、基板接続部12側から表面側の誘い込み面37Fで芯出しされつつ圧入孔35にスムーズに挿通される。
【0016】
挿通の終盤になると、圧入部14が圧入孔35に臨んで、図5に示すように、圧入部14がテーパ縁15側から圧入孔35の両側壁に食い込むようにして圧入される。それとともにストッパ17が表面側の突き当て凹部36Fに嵌り、その奥の段付面39に当たることで押し込みが停止される。これにより、タブ状端子10L,10Sはハウジング30の奥壁33に圧入により保持された状態となり、図6に示すように、上下両段の端子接続部11が、奥壁33の表面側からフード部31内に同じ寸法突出した状態とされる。
一方タブ状端子10L,10Sにおける奥壁33の裏面側に突出した部分の途中位置が、同図の鎖線位置から実線位置に向けて直角曲げされることでL形とされ、長い方のタブ状端子10Lの基板接続部12と、短い方のタブ状端子10Sの基板接続部12とが、前後2列に分かれて下向きの姿勢で整列される。
【0017】
各タブ状端子10L,10Sの基板接続部12は、図7に示すように、回路基板40の対応するスルーホール41に挿入され、下面側でフロー半田(半田部42)を行うことにより、その内周面のコンタクトと電気的接続が取られる。
そののち、脚体32が回路基板40にねじ止めされることで、ハウジング30が回路基板40に固定される。そして、ハウジング30のフード部31内に相手コネクタが嵌合されることで、タブ状端子10L,10Sの端子接続部11と相手コネクタに装着された相手端子とが嵌合して接続される。
【0018】
プレスフィット端子20を装着する場合は、図8の実線に示すように真直姿勢にあるプレスフィット端子20L,20Sが、途中位置から直角曲げされ、同図の鎖線並びに図9に示すように、弾性膨出部22が下を向いたL形に予め形成される。このようにL形に形成されたプレスフィット端子20は、端子接続部21がハウジング30の奥壁33の裏面と対向した姿勢とされ、長い方のプレスフィット端子20Lは上段の貫通部34に、短い方のプレスフィット状端子20Sは下段の貫通部34にそれぞれ裏面側から挿通される。プレスフィット端子20L,20Sは、端子接続部21側から裏面側の誘い込み面37Rで芯出しされつつ圧入孔35にスムーズに挿通される。
【0019】
挿通の終盤になると、圧入部24が圧入孔35に臨んで、図10に示すように、圧入部24がテーパ縁25側から圧入孔35の両側壁に食い込むようにして圧入される。それとともにストッパ17が裏面側の突き当て凹部36Rに嵌り、その奥の段付面39に当たることで押し込みが停止される。これにより、プレスフィット端子20L,20Sはハウジング30の奥壁33に圧入により保持された状態となり、図11に示すように、上下両段の端子接続部21が、奥壁33の表面側からフード部31内に同じ寸法突出した状態とされる。それとともに、奥壁33の裏面側では、長い方のプレスフィット端子20Lの弾性膨出部22と、短い方のプレスフィット端子20Sの弾性膨出部22とが、前後2列に分かれて下向きの姿勢で整列される。
【0020】
そうしたら、図12に示すように、各プレスフィット端子20L,20Sにおける弾性膨出部22の上方に形成された治具受け部28を治具で押さえ付けることで、各弾性膨出部22が回路基板40の対応するスルーホール41Aに挿入され、その内周面のコンタクトに弾接して電気的接続が取られる。
そののち上記したと同様に、脚体32が回路基板40にねじ止めされることで、ハウジング30が回路基板40に固定される。そして、ハウジング30のフード部31内に相手コネクタが嵌合されることで、プレスフィット端子20の端子接続部21と相手コネクタに装着された相手端子とが嵌合して接続される。
【0021】
以上説明したように本実施形態によれば、ハウジング30の奥壁33の表面側から圧入するタイプのタブ状端子10と、同裏面側から圧入するタイプのプレスフィット端子20の両方を共通のハウジング30に装着することができる。そのため、ハウジング30の成形金型費や管理費を削減でき、もって大幅なコスト低減を図ることができる。
また、奥壁33の表裏両側から挿通されるタブ状端子10とプレスフィット端子20のいずれも、誘い込み面37F,37Rで誘い込んでスムーズに圧入孔35に挿通することができ、もって作業能率が向上される。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態ではタブ状端子、プレスフィット端子ともにL形のものを例示したが、ストートタイプの端子金具を装着するものにも同様に適用することができる。
(2)奥壁の裏側から挿通される形式の端子金具としては、上記実施形態に例示したタブ状端子以外に、基板接続部が回路基板上の導電路や接点に載せられて、リフロー半田によって接続される、いわゆる表面実装タイプの端子金具が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るハウジングの正面図
【図2】同背面図
【図3】タブ状端子を挿通する前の平断面図
【図4】同側断面図
【図5】圧入完了時の平断面図
【図6】タブ状端子をL形に形成した状態の側断面図
【図7】ハウジングを回路基板に搭載した状態の一部切欠背面図
【図8】プレスフィット端子を挿通する前の平断面図
【図9】同側断面図
【図10】圧入完了時の平断面図
【図11】同側断面図
【図12】ハウジングを回路基板に搭載した状態の一部切欠背面図
【符号の説明】
【0024】
10,10L,10S…タブ状端子
11…端子接続部
12…基板接続部
14…圧入部
17…ストッパ
20,20L,20S…プレスフィット端子
21…端子接続部
22…弾性膨出部
24…圧入部
27…ストッパ
30…コネクタハウジング
31…フード部(接続部)
33…奥壁
34…貫通部
35…圧入孔
36F,36R…突き当て凹部
37F,37R…誘い込み面(誘い込み部)
39…段付面
40…プリント回路基板
41,41A…スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングには相手コネクタが嵌合される接続部が形成され、この接続部の奥壁に貫通して開口された圧入孔には端子金具が挿通されて、この端子金具に設けられた圧入部が圧入されるとともに、この圧入部の後方に張り出し形成されたストッパにより押し込みが規制された状態で保持され、前記端子金具の前記接続部内に突出した一端が前記相手コネクタに装着された相手端子と接続され、前記接続部とは反対側に突出した他端が回路基板の導電路と接続されるようにした基板用コネクタにおいて、
前記圧入孔の表裏両側の口縁には、前記端子金具のストッパを嵌めて突き当てる突き当て凹部が形成されていることを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項2】
前記圧入孔の表裏両側の口縁には、前記端子金具における挿通方向の先端を当ててこの圧入孔に誘い込む誘い込み部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板用コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−19228(P2006−19228A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198488(P2004−198488)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】