説明

基板用高変形点ガラス組成物

本発明は、SiO:55〜70重量%、Al:0〜1重量%、ZrO:0.1〜5重量%、NaO:0.1〜5重量%、KO:7〜13重量%、MgO:7〜14重量%、CaO:0〜4重量%、SrO:7〜12重量%及びSO:0.01〜0.5重量%を含むガラス基板組成物に関する。上記組成物を使用して製造されたガラス基板は変形点が570℃以上であるので、高温の焼成にも熱変形が少なく、溶融温度が1460℃未満であることから、燃料費増加及び耐火物寿命短縮などの不利な点がなく、50〜350℃温度範囲で熱膨張係数が80〜95×10−7/℃を有する。従って、本発明に係るガラスは基板用に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ(FPD)基板用ガラス、特にプラズマディスプレイパネル(PDP)のような基板用ガラス組成物に関する。具体的に、SiO:55〜70重量%、Al:0〜1重量%、ZrO:0.1〜5重量%、NaO:
0.1〜5重量%、KO:7〜13重量%、MgO:7〜14重量%、CaO:0〜4重量%、SrO:7〜12重量%及びSO:0.01〜0.5重量%を含むことを特徴とするガラス組成物に関する。上記組成物を使用して製造されたガラスは、ガラスの変形点が従来のPDP(プラズマディスプレイ)用基板ガラスとして適用されたソーダ石灰ガラスより、さらに高い570℃以上であるので、高温の焼成にも熱変形が少ない。また、本発明の組成物を使用して製造されたガラスは、溶融温度が1460℃未満なので、燃料費増加及び耐火物寿命短縮などの不利な点がなく、50〜350℃温度範囲での熱膨張係数が80〜95×10−7/℃である。従って、本発明に係るガラスは、基板用として適している。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、不活性ガスのプラズマ放電によって横、縦に配列されたマトリックス電極の交点での発光を用いた表示装置である。PDPの基本構成を見ると、2.8〜3.0mmの厚さを有する2枚の前面及び背面の基板ガラスが、フリットの封着によって密封される。映像を表示する前面ガラスの内部表面には陰極の役割をするITO(Indium tin oxide)がコーティングされ、背面ガラスの内部表面には正極のNi、Agペーストと赤色、緑色及び青色の色を発光する蛍光物質が塗布されている。
【0003】
PDPの開発初期には、基板ガラスのサイズが20インチ以下の小型であり、使われたガラスは、建築用または自動車用ガラスの製作に一般的に使われるソーダ石灰系列のガラスであった。しかし、PDPの開発が進むにつれて、そのサイズが次第に大型化となり、そのため、熱膨張による寸法変形、取扱及び加工中のスクラッチ発生などの点が、重要な問題となってきた。
【0004】
従来、基板ガラスとして使われたソーダ石灰ガラスの場合、化学的安定性、平坦度及びガラスの光学物性などの基板ガラスの重要な要求物性を満足した。しかし、ソーダ石灰ガラスは、高い熱変形率と高いNaO含量によって基板ガラスとしては適していなかった。特に、ソーダ石灰ガラスの場合、ガラスの変形点が510℃付近であり、それにより、熱処理工程の間に、熱変形や生産性の低下が発生しやくなる。ソーダ石灰ガラスの別な問題点は、PDPの電極の一つであるAg電極との反応性があることである。この反応は、高温熱処理時、AgとNaと間のイオン浸透交換によってパネル部位にAgのコロイドを生じ、発生したAgのコロイドは、紫外線領域の波長を吸収して黄変(yellowing)現象を誘発する可能性がある。従って、ソーダ石灰ガラスは、黄変現象を防止するた
めには基板下部にSiOコーティングして、このような反応を抑制しなければならない、という短所がある。このようなAgとアルカリ金属との反応性は、体積抵抗率を測定して予測することができる。即ち、高い体積抵抗率はアルカリ金属の拡散速度が低いことを意味するので、基板ガラスの体積抵抗率を増加させることによって、黄変現象を抑制することができる。従来のソーダ石灰ガラスの体積抵抗率は、約10Ω・cmとして測定された。
【0005】
上記のように、従来の既存ソーダ石灰ガラスの問題点は、高温熱処理での熱変形、及びAg電極とアルカリ金属との反応性である。このような問題点を克服するために、従来の基板ガラスであるソーダ石灰ガラスに比べて、変形温度が60〜80℃高く、NaO含量を低くしたPDP基板ガラス用のガラス組成物が開発された。このようなガラスの変形点は、Al含量を増大させてアルカリ金属の含量を減少させることによって増大させることができる。しかし、このような成分含量の変化は、高温度で必然的にガラスの粘度の上昇が引き起こされ、高温粘度の上昇は、ガラス原料の溶解過程、発生気泡の脱泡過程(清澄過程)及びガラスの均質化において非常に不利な条件をもたらした。従って、高温粘度の上昇に起因する上記問題点を解決するために、持続的な努力及び新規設備の投資が行われてきた。上記基板用ガラス組成の従来技術は、以下で詳述する。
【0006】
日本特許公開平3−40933号公報は、SiO、Al、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びZrOを含むガラス組成物を開示している。上記組成物は、600℃付近の熱処理でも変形しなく、熱膨張率もソーダ石灰ガラスと同様な水準を有している。しかし、このガラス組成物は、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の場合、それぞれの具体的な含量ではなく総含量のみが記載されているので、再現することが非常に難しい。また、上記組成物は、均質化及び脱泡を誘導するために、清澄剤としてSb及びAsをさらに含んでいる。これら組成物の過度の使用は、通電溶融時の電極の腐食やガラスの着色を誘発しうる。
【0007】
また、日本特許公開平3−40933号公報の実施例によると、ガラス溶融物の粘度が10ポイズを示す温度が1500℃以上である。ガラス溶融物の粘度値が、10〜10ポイズのとき、ガラス溶融物内に存在する気泡の脱泡作業である清澄作業が行われる。
従って、上記温度が低いほど、清澄作業を容易に行うことができる。言い換えれば、ガラス溶融物の粘度値が10〜10ポイズである領域に一致する温度が低いほど、清澄作業を容易に行うことができる。また、従来ソーダ石灰ガラスの溶融物の清澄作業は、1400〜1500℃の温度範囲で行われ、ソーダ石灰ガラス溶融物の場合には粘度が10ポイズの温度は約1420℃である。
【0008】
要するに、上記特許の場合、粘度が10ポイズを示す温度が1500℃以上であることは、従来ソーダ石灰ガラスに比べて清澄作業温度を、100℃以上高い状態で行わなければならないことを意味し、これによる燃料費増加及び耐火物寿命短縮などの多くの不利な点を甘受しなければならない短所を持っている。また、溶解炉内部で発生する気泡の脱泡工程を従来ソーダ石灰ガラス生産工程水準で行うと、微細気泡による生産性低下が避けられないため、これに対する高価な補完設備を提供しなければならない短所がある。
【0009】
上記技術に対する改良特許として、米国特許第5,599,754号は、基板ガラス組成物の熱膨張係数、転移温度及び高温粘度に対する内容を言及しており、板ガラス生産法であるフロート工法で生産するプロセスを開示しているが、PDP用ガラスの核心物性である変形点に対して言及がなく、その実効性が不明である。また、上記特許の場合にも、粘度10ポイズに相当する温度が1500℃以上であるので、燃料費増加及び耐火物寿命短縮などの不利な点を甘受しなければならない短所を持っている。
【0010】
また、日本特許公開平8−133778号公報は、SiO、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物からなるガラス組成物を開示している。しかし、このようなガラス組成物で製造されたガラスはZrOを含んでいないので、ガラスの変形点の上昇效果が大きくなく、失透の発生を抑制させることができなく、また、ガラスの耐水性及び耐化学性の増大も試みることができない問題点がある。さらに、実施例で確認できるように、粘度が10ポイズに相当する温度が1500〜1560℃の範囲にあるということは、上記特許で言及したものと同じように過度な溶融負荷及びこれによる損失費用等の不利な点を有している。
【0011】
一方、日本特許公開2004-035295号公報は、MgO含量が1〜15%水準の
組成物を開示しているが、MgO含量増加による液相温度変化での測定結果がなく、失透化傾向の増加による欠陥発生に対する解決方案がないので、その実効性が不明である。従って、板ガラスの製造工程上避けられない失透欠陥によって、高品質のディスプレイパネル用基板ガラスに好適なガラスの生産が難しいと判断される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような問題点を解決するために、本発明は、PDP製造過程で行う600℃付近の熱処理で、寸法安定性及び平坦度を確保するガラス組成を開発した。この組成物は、従来のソーダ石灰板ガラスと同様な水準の熱膨張係数を示すので、従来のソーダ石灰板ガラスを製造するために開発されたペースト材料をそのまま適用することができ、さらに従来のPDP基板ガラスの短所を克服できる
【0013】
このような開発過程中で、MgO含量が増加するほど、失透化傾向が増加して液相温度が上昇することが確認された。MgOの場合、アルカリ土類金属類元素中で最も強い結合力によりガラス組成中に4〜6%水準以上で添加されれば、失透欠陥発生頻度が大きく増
加することは、当業者には公知である。このようにして発生する結晶欠陥の中で最も代表的な結晶には、透輝石(diopside)(MgO・CaO・SiO)があり、組成実験を通じてMgO含量増加によって発生率が増加することが確認できた。このような失透傾向を抑制するための実験を行った結果、従来の高変形点の基板ガラスの一般的な組成では、失透化傾向を抑制できないことを確認した。そこで、本発明の発明者らは、持続的な開発を通じてAl含量とCaO含量を減少させた新規組成を開発し、この組成系ではMgO含量増加による失透化傾向の増大現象を效果的に抑制することができることを確認した。
【0014】
従って、本発明の目的は、ガラスの熱的変形の基準点である変形点温度が570℃以上であり、そしてソーダ石灰板ガラスと同様な水準の80〜95×10−7/℃の熱膨張係数を有する基板用ガラス組成物を提供することにある。本発明の別な目的は、従来のPDP基板ガラスの短所を克服するために、MgOの含量を増加させてガラスの高温粘度を效果的に下げ、また、溶融温度も1460℃未満に下げることができ、同時に基板ガラスの耐スクラッチ性向上及びAg電極との反応性を抑制することができる基板用ガラス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、ガラス基板組成物は、SiO:55〜70重量%、Al:0〜1重量%、ZrO:0.1〜5重量%、NaO:0.1〜5重量%、KO:7〜13重量%、MgO:7〜14重量%、CaO:0〜4重量%、SrO:7〜12重量%及びSO:0.01〜0.5重量%を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の特徴を詳細に説明すれば次の通りである。
本発明のPDP基板用ガラス組成物は、組成成分の種類及び含量を調節することによって、下記特徴を有する。本組成物は、従来のPDP用基板ガラスとして適用されたソーダ石灰ガラスより高い、570℃以上の変形点となるので、基板ガラスとして適用された場合、寸法安定性及び平坦度を有する。従って、本組成物は高温の焼成にも熱変形が少ない。また、本組成物の溶融温度が1460℃未満であるので、燃料費増加及び耐火物寿命短縮などの不利な点がない。さらに、本組成物は、50〜350℃の温度範囲で熱膨張係数が80〜95×10−7/℃で、従来のソーダ石灰板ガラスと同様な水準を示すので、従来のソーダ石灰板ガラスの製造時に適用されたペースト材料をそのまま使用することができる。従って、本組成物は、基板用に適している。
【0017】
従来のPDP基板用ガラス組成物は、上記した物性を満足するが、低いアルカリ金属含量と高いAl含量によって、高い溶融温度と高温での粘度が高い短所を持っていた。それに比べて、本発明に係るガラス組成物は、MgOの含量を7重量%以上に増加させることによって、強力な溶融剤であるNaO含量を高めることなく、ガラスの溶融温度とガラス溶融物の高温粘度を従来の基板用ガラス組成より低くすることができるので、溶融加熱炉への負荷が少なく、清澄性に優れた特性を有している。
【0018】
さらに、本発明のガラス組成物は、高温粘度の減少時に発生する液相温度上昇を適切な組成比構成を通じて克服しているので、従来の基板ガラス製造方式であるフロート工法を介して容易に基板を製造することができる。また、本発明のガラス組成物は、MgO/CaO比を8以上に調整して耐スクラッチ性に優れており、KO/NaO比を2.5以上に調節して基板ガラスのAg電極との反応性を低くしている。
【0019】
このような本発明の基板用ガラス組成物の個々の成分は、具体的に説明すれば下記通りである。
まず、SiOは、ガラスの基本構造である網目を形成する。含有量が55重量%未満のとき、ガラスの構造が不安定になるので、耐化学性や耐水性が低下する傾向がある。その含量が70重量%以上のとき、ガラスの高温粘度増加と溶融性低下によって発生しうる失透などの欠陥によって生産性が減少する。SiOの好ましい含量は、59〜67重量%である。
【0020】
Alは、ガラスの高温粘度を増加させ、少量添加する場合、ガラスの耐久性を向上させる。しかし、MgO含量の高い組成系でAlが増加するほど、結晶化傾向が増加することが確認された。従って、本発明のガラス組成物でのAlの最適含有量は、0〜1重量%であるが、好ましくは0.2重量%未満である。
【0021】
ZrOは、ガラスの耐水性、耐化学性及び変形点を増加させる。本発明のガラス組成物では、0.1〜5重量%のZrOが使用される。含量が0.1重量%未満のとき、ガラスの耐水性及び耐化学性が低下し、含量が5重量%以上のとき、結晶化が容易に起き、溶融性低下による溶融負荷が増加しうる。ZrOの好ましい含量範囲は、2.5〜4重量%である。
【0022】
上記成分において、より好ましくは、SiO+Al+ZrOの総量が、全体組成物の60〜72重量%の範囲である。総量が72重量%以上の場合、基板用ガラスの重要物性である熱膨張係数が減少し、それと同時に、ガラスの高温粘度の増加に伴い清澄性低下及び溶融負荷が増加しうる。総量が60重量%未満の場合、アルカリ金属酸化物の含量が過度になり、ガラスの比重が増加し、耐化学性の低下及び熱膨張係数の増加が起こる。本発明で使用されるSiO+Al+ZrOの総量は、62〜70重量%であることが好ましい。
【0023】
NaOは、KOと共にガラス組成物を円滑に溶融させる溶融剤として作用する成分であり、熱膨張率に重要な影響があるので、適切な熱膨張係数値を調節する必須の成分である。本発明のガラス組成物では、NaOを0.1〜5重量%使用する。含量が0.1重量%未満の場合、ガラスの溶融性低下によって均質化が乏しくなる傾向がある。含量が5重量%以上の場合、熱膨張係数が増加し、ガラスの変形点が低下し、そしてガラスの耐水性と耐化学性が低下する問題点がある。また、NaOはPDP製作時に使用されるAg電極との反応による黄変(yellowing)現象を誘発させる物質であるので、含量を低い水準で保持
することが好ましい。NaOの好ましい含量は、1〜3.5重量%である。
【0024】
Oは、高温及び低温でのガラス組成物の粘度を調節する成分である。NaOと共に使用される混合アルカリ効果によって、アルカリイオンのガラス内での移動を制御し、ガラスの電気抵抗率に影響を及ぼす。本組成物に使用されるKO含量は、7〜13重量%である。含量が7重量%未満の場合、ガラス溶融性が低下し、含量が13重量%以上の場合、ガラスの熱膨張率が増加し、変形点が低下するという問題点がある。KOの好ましい含量は、9.0〜12.5重量%である。
【0025】
また、アルカリ金属とAg電極との反応性を抑制のために、KO/NaO含量比を2.5以上に調整することが好ましく、より好ましくは2.5〜10.0に調整する。アルカリ金属とAg電極との反応性の判定基準である体積抵抗率は、KO/NaO含量比を2.5以上に調整した場合、高くなることが確認された。この値が高くなるほど電極との反応性が低くなる。また、その値が10以上のとき、KO含量増加によって原料のコストが増加することになる。さらに好ましくは、KO/NaO含量比を4〜9に調整する。
【0026】
MgOは、高温領域でガラス組成物の粘度を低下させ、低温領域ではガラス組成物の粘度を増加させる作用があり、ガラス組成物の変形点を上昇させる効果がある。本発明のガラス組成物では、MgOは、7〜14重量%使用する。7重量%以上投入すると、高温粘度を減少させて、低い温度でも清澄作業が行える。しかし、14重量%を超えると、ガラスの高温粘度減少に伴う液相温度の上昇が発生し、熱膨張係数が減少しうる。好ましいMgOの使用量は、8.0〜11重量%である。
【0027】
CaOは、MgOと同様な役割を持ち、ガラス溶融液の高温粘度を減少させる効果がある。MgOの含量が7重量%以上である本発明の組成系の場合、0〜4重量%のCaOを使用することが好ましく、含量が4重量%を超えると、結晶化が容易に発生する問題点がある。より好ましくは、0〜2.9重量%のCaO使用であり、最も好ましくは、CaOを非常に微量、即ち、1重量%未満の使用である。
【0028】
また、MgO/CaO含量比を8以上に調整することが好ましく、より好ましくは8〜35に調整する。MgO/CaO重量比が上記範囲内にある場合、MgOとCaOの混合イオン効果及びガラスネットワーク内でMgOの結合力が他のアルカリ土類金属より高く、そしてイオン半径が小さいことによる、密度低下の効果によって、ガラスの耐スクラッチ性を示す基準となる脆性指標値を下げることができる。
【0029】
SrOは、MgO及びCaOと同様な役割をし、BaOと共に代表的なアルカリ土類金属成分である。SrOの含量が増加するほど変形点の上昇を誘導でき、黄変及び変形点減少を誘発するアルカリ元素を代替することができる。このようなSrOの使用量は、7〜12重量%であるが、その使用量が7重量%未満の場合、ガラス溶融時の高温粘度の減少及び結晶化抑制の効果が少なく、12重量%を超える場合にはガラスの変形点が低下し、比重が増加する問題点がある。好ましいSrOの含量は、9.5〜11.5重量%である。
【0030】
一方、MgO+CaO+SrOの好ましい総量は、全体組成物の15〜24重量%であり、15重量%未満の含量ではガラスの溶融性が低下し、高温粘度が上昇しうる。24%を超える場合には、ガラスの比重増加による基板荷重増加や液相温度の上昇が発生しうる。より好ましいMgO+CaO+SrOの総量は、17〜22重量%の範囲である。
【0031】
SOは、清澄剤として使用され、原料溶融時に発生する気泡を除去するのに必須の成分である。使用されるSO量は0.01〜0.5重量%であり、上記範囲を保持することが気泡を除去するのに適切である。
また、本発明では、TiO、Fe、FeO、As、Sb、CoO、NiO、CrまたはCeOなどの成分をさらに、総量1重量%未満で含む。
【0032】
上記のような組成を有する本発明のガラス基板は、板ガラスの成形方法として広く知られているフロート法、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法等の方法に従って製造することができる。
本発明を以下の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例によって限定されるものではない。
【0033】
(実施例)
実施例1〜7及び比較例1〜5
ガラス組成物の各組成成分を混合して、白金るつぼで1550℃に加熱し、4時間溶融した。この溶融が行われる間、ガラス組成物の均質化のために白金撹拌機を使用して30分間、混合物を攪拌した。上記溶融されたガラス組成物を金属板または黒鉛板に注いで成形し、その後、焼きなまし点以上の温度を保持した後、焼鈍してガラスを製造した。各ガラス組成物の成分別含量と物性値は、表1に示した。比較例5は、ソーダ石灰ガラスである従来の基板ガラスの組成と物性値である。
【0034】
表1に記載された実施例1〜7及び比較例1〜5によって製造されたガラスを試片とし、下記方法によって熱膨張係数、変形点、液相温度、溶融温度、脆性指標及び体積抵抗率を測定した。
【0035】
熱膨張係数は、特定温度範囲で既存長さの対比試片に対する相対的膨脹率を示した値を意味し、膨張計(Dilatometer)を利用してDIN 51045の手順に従って、50〜
350℃温度範囲で測定した。
【0036】
変形点は、ガラスの変形が始まる温度であり、上記温度で熱処理する場合の生成される応力を解消するのに16時間が必要とする温度を意味し、ここでは、ガラスの粘度が1014.5ポイズに相当する変形点を、ASTM C598-88に記載の方法で測定した

【0037】
液相温度は、ガラス内の結晶が生成されうる最大温度として定義され、電気炉内の温度勾配を設定しうる炉(Gradient furnace)を利用して、ASTM C829-81によっ
て測定した。
【0038】
溶融温度は、その温度でのガラス溶融粘度が10ポイズの温度であり、DIN 52312によって測定した。この温度が低いほど清澄作業が容易である。即ち、ガラス溶融物の粘度が10ポイズに相当する温度が高いほど、配合原料の溶融時の必然的に発生するガラス溶融物内の気泡の浮上が難しくなり、微細気泡の清澄がさらに難しくなる。1200℃〜1500℃領域での高温粘度測定も、また同様の方法で測定した。
【0039】
脆性指標は、ガラスの耐スクラッチ性を示す代表的な物性値として知られている。このような脆性指標をガラス物性に適用するのは、破壊靱性(Kc)を正確に測定することが難しいからである。このような破壊靱性の測定の難しさを克服するための研究が行われて、脆性指標がKc(破壊靱性)と反比例の相関関係があることが明らかとなった。脆性指標は、ビッカース圧子(indenter)をガラス表面に押し付けて発生する圧子痕跡のサイズと、その矩形状の圧子痕跡から形成される亀裂の長さと間の関係から、定量的に測定することができる。脆性値が減少するほど、外部から作用する荷重によるスクラッチの発生率が低くなると報告された。測定はビッカース硬度計を用いて、文献(Journal of Non-crystalline Solids 253(1999)126-132)に記載の方法に従って実施した。
【0040】
体積抵抗率は、ガラスの抵抗を代表する電気的物性であり、ASTM C657によって測定しており、本発明では150℃での測定値を基準とした。体積抵抗率は、ガラスの電気抵抗度を示すと同時に、PDP基板ガラス上部面に被覆されるAg電極と、アルカリ金属との反応性を予測できる基準値でもある。この値が高いほどAg電極とアルカリ金属との反応性は低くなり、Agコロイドによる黄変を抑制することができる。
【0041】
【表1】

【0042】
表1で示されるように、実施例1〜7の組成で製造されたガラス試片は、いずれも熱膨張係数が80〜95×10−7/℃範囲であり、変形点も570℃以上である。上記結果は、PDP用ガラス基板に適用する場合、その生産に好適な物性であることを示し、PDP用基板ガラスに適用時、優れた特性を有する。
【0043】
また、ガラス溶融物の粘度が10ポイズになる溶融温度では、既存のPDP基板ガラス組成物である比較例1及び2と比較すると、約90〜109℃程度低いことがわかる。
つまり、本発明に係るガラスの溶融温度は1460℃未満であり、一般ソーダ石灰ガラスと同様な水準で管理することができる。従って、既存の基板ガラス組成において問題となる高い高温粘度による清澄作業の困難性や溶融負荷などの短所を克服することができる。
【0044】
このような高温領域(1200〜1500℃)での粘度分布を、図1に示した。図1に示されるように、実施例1及び2の場合、既存PDPガラス組成物である比較例1及び2と対比して同じ温度で、より低い粘度を示すことがわかる。
【0045】
比較例3及び4の場合、MgO含量の増加によって変形点及び熱膨張係数では、基板ガラスの要求物性を満足し、ガラスの溶融温度を一般ソーダ石灰ガラス水準に低くすることができたが、AlとCaOの含量増加によって液相温度が1200℃以上に上昇することになる。このような場合、板ガラス製造工程上、失透欠陥の発生確率が急激に増加し、これにより高透過率及び欠陥を最小化させることが必須的であるPDP基板ガラスの生産性が低下することになる。
【0046】
比較例5は、一般のソーダ石灰板ガラスの組成で熱膨張係数は要求物性を満足するが、変形点が510℃近辺であるため、PDP生産の570〜600℃温度帯の焼成工程で寸法安定性の顕著な低下を引き起し、ガラスの変形によって基板上部面の積層物質が剥離され得る問題点を有する。
【0047】
MgO/CaO重量比の場合、実施例はいずれも8以上を示し、脆性指標が6500〜6900m−1/2に減少する。これは外部荷重及びその他の発生原によるスクラッチの発生率が減少することを意味する。一方、比較例の場合、脆性指標が7100〜7530m−1/2水準で、本発明の実施例と比較する場合、スクラッチに脆弱であることが確認される。従って、比較例1及び2は、基板ガラスの生産、加工及び取扱時に、スクラッチによる原板不良率が上昇する短所がある。
【0048】
実施例1〜7の場合、KO/NaO重量比を2.5以上に調節した結果、体積抵抗率が1012.5〜1013.6Ω・cm水準に達している。既存のPDP基板ガラス組成物である比較例1〜2及び一般ソーダ石灰ガラス組成物である比較例5の場合、108.9〜1011.7Ω・cm水準と測定された。従って、本発明は、KO/NaOの重量比を2.5以上に増加させ、既存のPDP基板ガラスに比較して、体積抵抗率を上昇させることができ、これによりAg電極とアルカリ金属との反応性を效果的に低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る基板用ガラス組成物は、50〜350℃温度範囲で熱膨張係数が80〜95×10−7/℃を有して、従来のソーダ石灰ガラスと同様な水準であるため、従来のペースト材料等と互換性が保持され、そして変形点が570℃以上であることから、高温の焼成工程での寸法安定性が保持される等の耐熱性に優れ、従来の板ガラス生産工法であるフロート法等で生産が可能なガラス組成物であって、PDP用などの基板ガラスに適用するのに十分な物性を有する。
【0050】
また、本発明の組成物は、MgOの含量を重量比7%以上に増加させることによって、ガラス溶融物の高温粘度及び溶融温度を従来のソーダ石灰ガラス水準に対して低くすることができ、溶融炉の負荷が少なく、清澄性に優れている。
さらに、本発明の組成物は、MgO/CaO重量比を8以上に調整して耐スクラッチ性の基準である脆性指標を低くし、そしてKO/NaO重量比を2.5以上に調節してAg電極とアルカリ金属との反応性を低くした。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例1〜2及び比較例1〜2の組成のガラス溶融物の高温粘度を、1200〜1500℃の温度範囲で測定して示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO:55〜70重量%、Al:0〜1重量%、ZrO:0.1〜5重量%、NaO:0.1〜5重量%、KO:7〜13重量%、MgO:7〜14重量%、CaO:0〜4重量%、SrO:7〜12重量%及びSO:0.01〜0.5重量%を含むことを特徴とするガラス組成物。
【請求項2】
SiO+Al+ZrOの総量が、組成物全体の60〜72重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
MgO+CaO+SrOの総量が、組成物全体の15〜24重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
MgO/CaOの重量比が、8〜35であることを特徴とする、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項5】
O/NaOの重量比が、2.5〜10.0であることを特徴とする、請求項1に
記載のガラス組成物。
【請求項6】
熱膨張係数が、50〜350℃温度範囲で80〜95×10−7/℃の範囲であり、変形点が570℃以上であり、溶融温度が1460℃未満であることを特徴とする、第1項に記載のガラス組成物を含んでなる基板用ガラス。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−540314(P2008−540314A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511062(P2008−511062)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002380
【国際公開番号】WO2006/137683
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507310879)ケーシーシー コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】