説明

基板画像抽出装置、基板画像抽出方法及び基板外観検査装置

【課題】吸着孔を有する載置面とこの載置面に載置された基板とが同時に撮影された画像から、正確に基板画像のみを抜き出すこと
【解決手段】区画線により区画された模様を有する載置面16aとともに、載置面上に配置された基板Sが撮影された原画像から、基板に対応する画像部分である基板画像を抽出する基板画像抽出装置10であって、基板の非存在下で撮影された載置面のみの画像であって、区画線の色を載置面の色に変換し、かつ、区画線以外の領域の色を透明化した画像を背景画像として記憶する背景画像記憶部44と、背景画像原画像とを重ね合わせて重畳画像を生成する重畳部34と、重畳画像において、載置面及び模様の双方と色が異なる領域の外縁を定める点を基板輪郭候補点として抜き出し、さらに、基板輪郭候補点の中から重畳画像と原画像とで同色の点を基板輪郭点として抜き出す解析部36とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線基板や実装基板の外観検査を行う際に用いる基板画像抽出装置、基板画像抽出方法、及びこの基板画像抽出装置を備えた基板外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板には、配線パターン、電子部品を配線パターンに接続するためのスルーホール、電子部品のリードフレームなどを配線パターンにハンダ付けするためのランドやパッド及びシルクなどが形成される。プリント配線基板の製造工程では、これら配線パターンなどの断線、短絡、パターン幅不足、異物の付着、及びピンホールなどの欠陥が発生する場合がある。
【0003】
これらの欠陥は、基板外観検査により検出される。従来、基板外観検査は、オペレータが基板外観を目視観察することで行われていた。しかし、近年、検査の高精度化と高速化とを図るために専用の基板外観検査装置が導入され、基板外観検査の自動化が図られている。
【0004】
基板外観検査装置は、搬送ステージの載置面に載置された基板を、露出した側から撮影した画像を用いて検査を行う。ところで、撮影に用いるカメラは基板と載置面とを区別することができない。その結果、通常の場合、撮影された画像には検査対象である基板とともに、外観検査には不用な載置面が写り込んでしまう。
【0005】
そこで、より正確な基板外観検査を行うに当たっては、基板及び載置面の双方が写り込んだ画像から、基板のみの画像(以下、「基板画像」と称する。)を抜き出す必要がある。この点に関連して、輝度レベルの高低を利用して、検査対象が撮影された画像に非検査領域を設定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−150646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板外観検査装置の搬送ステージには、載置面に吸着孔が設けられることがある。これは、基板を裏面側から負圧を利用して載置面に固定するため、及び基板の反りに対応するためである。吸着孔を有する載置面を基板とともに撮影すると、撮影用の照明光が反射して、画像上で吸着孔のエッジが光ってしまうことがある。
【0007】
画像上で光る吸着孔のエッジは、基板画像の抜き出しに悪影響を与えることがある。つまり、光ったエッジが基板の輪郭と誤認識されてしまい、その後の外観検査における虚報発生の原因となる。
【0008】
この発明は、このような問題に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、吸着孔を有する載置面と、この載置面に載置された基板とが同時に撮影された画像から、正確に基板画像のみを抜き出すことができる基板画像抽出装置及び基板画像抽出方法を提供することにある。
【0009】
また、この発明の別の目的は、上述した基板画像抽出装置を備えた基板外観検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、この発明を以下に示すように構成した。
【0011】
この発明の基板画像抽出装置は、区画線により区画された模様を有する載置面とともに、載置面上に配置された基板が撮影された原画像から、基板に対応する画像部分である基板画像を抽出するためのものである。
【0012】
この発明の基板画像抽出装置は、背景画像生成部と、画像記憶部と、重畳部と、解析部とを備えている。
【0013】
背景画像生成部は、基板の非存在下で撮影された載置面のみの画像であって、区画線の色を載置面の色に変換し、かつ、区画線以外の領域の色を透明化した画像を背景画像として生成する。
【0014】
画像記憶部は、原画像と背景画像とを記憶する。
【0015】
重畳部は、背景画像と原画像とを重ね合わせて重畳画像を形成する。
【0016】
解析部は、重畳画像において、載置面及び模様の双方と色が異なる領域の外縁を定める点を基板輪郭候補点として抜き出し、さらに、基板輪郭候補点の中から重畳画像と読み出された原画像とで同色の点を基板輪郭点として抜き出して記憶部に出力する。
【0017】
上述の基板画像抽出装置において、背景画像生成部は、区画線の太線化処理を行い、及び、太線化処理された区画線の色を載置面の色に変換することが好ましい。
【0018】
また、模様は載置面に開口した吸着孔に由来し、及び区画線は吸着孔のエッジに由来してもよい。
【0019】
このように背景画像生成部は、模様の区画線を載置面の色に変換する。言わば、区画線を消してしまう。さらに、背景画像生成部は、背景画像の区画線以外の領域を透明化する。その結果、解析部での基板輪郭点の抜き出しにおいて、区画線が基板輪郭点に誤認識されることがない。
【0020】
さらに、解析部は、基板輪郭候補点から基板輪郭点を抜き出すに当たり、好ましくは基板輪郭候補点の色が、重畳画像と原画像とで同一か否かを検査するのがよい。そして、基板輪郭候補点の中から、重畳画像と原画像とで同色である点を基板輪郭点として抜き出すのが好適である。
【0021】
このような検査を行う理由は、基板輪郭候補点には、基板の輪郭を与えない点が存在するからである。つまり、背景画像は、言わば、透明な背景の中に載置面の色に変換された区画線が配置された画像である。従って、背景画像と原画像とが重畳された重畳画像では、基板領域であるにもかかわらず、区画線と重なり合ったがために、載置面の色を示す領域(以下、「偽載置面領域」と称する。)が生じてしまう。その結果、偽載置面領域と基板の輪郭線とがオーバーラップする部分では、基板輪郭候補点が基板輪郭と対応しなくなる。
【0022】
そのため、個々の基板輪郭候補点について、重畳画像と原画像の色を比較することで、偽載置面領域内に存在する基板輪郭候補点を排除する。
【0023】
この発明の基板外観検査装置は、上述の基板画像抽出装置を備えることが好ましい。
【0024】
この発明の基板画像抽出方法は、区画線により区画された模様を有する載置面とともに、載置面上に配置された基板が撮影された原画像から、基板に対応する画像部分である基板画像を抽出するものである。
【0025】
この発明の基板外観検査方法は、以下の4工程を備えている。
【0026】
(1)基板の非存在下で撮影された載置面のみの画像であって、区画線の色を載置面の色に変換し、かつ区画線以外の領域の色を透明化した画像を背景画像として生成する工程。
【0027】
(2)原画像と背景画像とを画像記憶部に記憶する工程。
【0028】
(3)画像記憶部から原画像と背景画像とを読み出してきて、読み出された背景画像と原画像とを重ね合わせて重畳画像を生成する工程。
【0029】
(4)重畳画像において、載置面及び模様の双方と色が異なる領域の外縁を定める点を基板輪郭候補点として抜き出し、さらに、基板輪郭候補点の中から重畳画像と読み出された原画像とで色が異なる点を除いた点を基板輪郭点として抜き出して記憶部に出力する工程。
【発明の効果】
【0030】
この発明の基板画像抽出装置及び基板画像抽出方法は上述のように構成されているので、吸着孔を有する載置面と、この載置面に載置された基板とが同時に撮影された画像から、正確に基板画像のみを抜き出すことができる。
【0031】
また、この基板画像抽出装置を備えた基板外観検査装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示したものにすぎない。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。なお、図3、図4、図6及び図8において、斜線を施して示してある領域があるが、これは断面を表すのではなく,その領域を強調して示しているに過ぎない。
【0033】
(構成)
図1を参照して、この発明の基板画像抽出装置の構成について説明する。
【0034】
図1は、基板画像抽出装置の機能ブロック図である。図2は、搬送ステージの載置面の平面図である。
【0035】
基板画像抽出装置10は、撮影部12と画像処理部14とを備えている。さらに、基板画像抽出装置10は、基板Sを所定の撮影位置まで搬送するための搬送ステージ16を備えている。
【0036】
撮影部12は、例えば撮像レンズやCCDカメラで構成されたラインカメラを備えており、搬送ステージ16の載置面16aに載置された基板Sを撮影する。撮影された画像は、画像処理部14において原画像として記憶される。
【0037】
画像処理部14は、MPU18、入力部20、出力部22及び外部記憶部24を備えており、周知のコンピュータとして構成される。
【0038】
入力部20は、キーボードや、マウス等の公知の任意好適な入力装置を備える。出力部22は、ディスプレイ等の表示装置や、プリンタ等の出力装置を備えている。外部記憶部24は、例えば、ハードディスク等を備えている。
【0039】
MPU18は、CPU26、ROM28及びRAM30を備えている。
【0040】
CPU26は、制御手段32を備えている。この制御手段32は、ROM28中に記憶されているプログラムを読み出して実行する。これによりCPU26は、機能手段としての重畳部34、解析部36及び背景画像生成部38を実現する。これらの機能手段が行う処理については後述する。
【0041】
RAM30は、読み出し自在、及び書き込み自在なデータ記憶領域である。RAM30のデータ記憶領域は、上述のプログラムの実行により、画像記憶部33と記憶部35として機能する。画像記憶部33には、原画像記憶部40、重畳画像記憶部42、及び背景画像記憶部44が含まれる。記憶部35には、基板輪郭候補点記憶部46、基板輪郭点記憶部48、作業用記憶部50、及び初期設定値記憶部52が含まれる。なお、これらの記憶部33及び35については後述する。
【0042】
図2に示すように搬送ステージ16は、平板状の載置面16aを備えている。この載置面16aには、行列状に配列した複数の孔、すなわち吸着孔16bが形成されている。なお、以下の説明において、載置面16aにおいて、吸着孔16bの部分が「模様」に対応し、模様を囲む輪郭線である吸着孔16bのエッジ16cが「区画線」に対応する。
【0043】
ラインカメラで撮影された画像上では、載置面16aと、吸着孔16bと、エッジ16cとは、それぞれ異なる色を呈する。なお、撮影された画像上では、エッジ16cは光を反射して白く光って見えるが、図2以降の図面では、説明の便宜のためにエッジ16cを黒線で示している。
【0044】
構造的に見た場合、これらの吸着孔16bは、それぞれ図示しない真空ポンプに接続されている。吸着孔16bが大気を吸引することにより負圧が形成されて、基板Sは載置面16a上に吸着されて固定される。また、多少反りが存在する基板Sであっても、載置面16aへの吸着の過程で、その反りが修正される。
【0045】
(動作)
図1〜図9を参照して、この発明の基板画像抽出装置10の動作について説明する。
【0046】
図1に示すように、外観検査の検査対象である基板Sは、搬送ステージ16の載置面16aに吸着固定されて撮影位置まで搬送される。撮影部12は、撮影位置まで搬送されてきた基板Sを、ラインカメラにより撮影する。このようにして撮影された画像は通常は長方形状であって、言わば生データとしての画像を原画像G(図3参照)と称する。
【0047】
図3に示す原画像Gの平面図からも理解できるように、原画像Gには、載置面16aとともに基板Sが同時に撮影されている。これは、ラインカメラは、基板Sのみを選択して撮影することができないためである。より詳細には、原画像Gには基板Sの画像と載置面16aの画像とが含まれ、好ましくは、それぞれの画像も長方形とする。原画像G中の載置面16aに対応する画像部分には、エッジ16cで区画された吸着孔16bが含まれている。
【0048】
このようにして撮影された原画像Gは、CPU26に読み込まれたプログラムに従い、画像処理部14に取り込まれて、画像記憶部33の原画像記憶部40に、座標と関連付けて記憶される。
【0049】
続いて、基板画像抽出装置10は、以下説明するように、CPU26中の機能手段である重畳部34において、背景画像Hと原画像Gとを重ね合わせた重畳画像Tを生成する。
【0050】
ここで、まず図5(A)〜(C)を用いて、背景画像Hについて説明する。背景画像Hは、背景画像生成部38によって、基板Sの非存在下で撮影された載置面16aのみの画像を基にして生成される。背景画像生成部38は、この画像中のエッジ16cの色を載置面16aの色に変換し、かつ、エッジ16c以外の領域の色を透明化して、当該画像を背景画像Hとして生成する。背景画像Hは、基板外観抽出装置10の稼働前、すなわち原画像Gの撮影前に用意されていて、予め背景画像記憶部44に記憶されている。
【0051】
より詳細には、背景画像Hの生成手順は、次に列記する4工程を含んでいる。
(1)載置面画像の撮影
(2)載置面画像からのエッジの抜き出し
(3)エッジ領域以外の色の透明化
(4)背景画像の生成
以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0052】
(1)載置面画像の撮影
まず、撮影部12は、原画像Gの撮影に用いたと同じラインカメラを用い、かつ原画像Gの撮影条件と同条件で、載置面16aのみの画像である載置面画像SGを撮影する。このようにして撮影された載置面画像SGの平面図を図5(A)に示す。図5(A)によれば、載置面画像SGには、載置面16aの画像と、エッジ16cで区画された吸着孔16bの画像とが含まれる。
【0053】
このようにして撮影された載置面画像SGは、画像処理部14に取り込まれて、座標と関連付けて背景画像記憶部44に記憶される。
【0054】
(2)載置面画像からのエッジの抜き出し
次に、背景画像生成部38は、載置面画像SGからエッジ16cを抜き出す画像処理を行う。具体的には、背景画像生成部38は、初期設定値記憶部52に予め記憶されている載置面16aの色(以下、「載置面色」と称する。)と、吸着孔16bの色(以下、「吸着孔色」と称する。)とを読み出す。さらに、背景画像生成部38は、背景画像記憶部44から載置面画像SGを読み出す。
【0055】
そして、背景画像生成部38は、載置面画像SGの色と、初期設定値記憶部52に記憶されている載置面色及び吸着孔色とを1画素ごとに比較する。そして、載置面画像SGにおいて、載置面色及び吸着孔色の双方と異なる色を呈する画素の全てをエッジ16cとして抜き出す。抜き出された画素に対応する画像領域(以下、「エッジ領域」とも称する。)は、その座標と関連付けて作業用記憶部50に記憶される。
【0056】
(3)エッジ領域以外の色の透明化
次に、図5(B)に示すように、背景画像生成部38は、エッジ領域以外の載置面画像SGの色を透明色に変換したテンポラリ画像TGを生成する。
【0057】
具体的には、背景画像生成部38は、作業用記憶部50に記憶されているエッジ領域の座標とともに、背景画像記憶部44から載置面画像SGをそれぞれ読み出す。その上で、背景画像生成部38は、載置面画像SGにおいて、エッジ領域とは異なる座標に位置する画素の色属性を“透明”に変更する。例えば、この透明化処理は、載置面画像SGの全画素の内、載置面色及び吸着孔色を呈する画素の色の階調を0にすることにより行われる。
【0058】
このようにして生成されたテンポラリ画像TGは、載置面画像SGを更新して背景画像記憶部44に座標と関連付けて記憶される。
【0059】
(4)背景画像の生成
次に、図5(C)に示すように、背景画像生成部38は、テンポラリ画像TGにおいて、エッジ領域の色を載置面色に変換した背景画像Hを生成する。
【0060】
具体的には、まず、背景画像生成部38は、背景画像記憶部44に記憶されているテンポラリ画像TGを読み出す。また、背景画像生成部38は、作業用記憶部50に記憶されているエッジ領域の座標を読み出す。さらに、背景画像生成部38は、初期設定値記憶部52から、載置面色の情報を読み出す。
【0061】
そして、背景画像生成部38は、読み出されたエッジ領域の座標に対応するテンポラリ画像TG中の画素の色を、初期設定値記憶部52から読み出された載置面色へと変換して背景画像Hを生成する。このようにして生成された背景画像Hは、背景画像記憶部44に記憶される。
【0062】
なお、以上の説明においては、背景画像生成部38が基板画像抽出装置10に備えられている場合について説明した。しかし、背景画像Hは、原画像Gの撮影前に背景画像記憶部44に記憶されていればよい。従って、基板画像抽出装置10と別体の背景画像生成装置で背景画像Hを生成し、この背景画像Hを、入力部20を介して背景画像記憶部44に転送するようにしてもよい。
【0063】

次に、重畳部34における重畳画像Tの生成について説明する。図4に示す重畳画像Tの平面図から理解できるように、重畳画像Tは、エッジ16cの領域が載置面16aの色に変換された背景画像Hと、原画像Gとを重ね合わせた画像である。重畳画像Tにおいては、基板Sにより覆われていたエッジ16cの画像領域、つまり原画像Gでは目視不能であったエッジ16cの領域が基板Sにオーバーラップして現れる。
【0064】
より詳細には、重畳部34は、原画像記憶部40に記憶されている原画像Gを読み出し、作業用記憶部50に一時的に格納する。さらに、重畳部34は、背景画像記憶部44に記憶されている背景画像Hを読み出し、作業用記憶部50に一時的に格納する。
【0065】
そして、重畳部34は、読み出された原画像G及び背景画像Hを位置合わせして重ね合わせる。この位置合わせは、好ましくは、例えば原画像G及び背景画像Hに共通して設けられたアライメントマークを画像上で一致させることにより行われるのがよい。このようにして重畳部34は、原画像Gと背景画像Hとの位置を合わせて重畳した重畳画像Tを生成する。生成された重畳画像Tは、重畳画像記憶部42に記憶される。
【0066】
次に、基板画像抽出装置10は、CPU26中の機能手段である解析部36において、重畳画像Tと原画像Gとを用いて、基板画像を抽出する。
【0067】
解析部36が行う基板画像の抽出は、以下の2工程を含んでいる。
(1)基板輪郭候補点RK(以下、単に「候補点RK」とも称する。)の抜き出し
(2)候補点RKから基板輪郭点R(以下、単に「輪郭点R」とも称する。)の抜き出し
以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0068】
(1)候補点RKの抜き出し
この工程(1)では、重畳画像T(図4参照)において載置面16a及び吸着孔16bの双方と色が異なる領域の外縁を定める点を基板輪郭候補点RKとして抜き出す。
【0069】
詳細は後述するが、候補点RKの抜き出し処理は、解析部36が重畳画像Tの画素色を1画素ずつ載置面色と比較することで行われる。なお、載置面色を単に「背景色」と称することもある。
【0070】
つまり、解析部36は、長方形状の重畳画像Tの外縁(外枠)から重畳画像Tの内側に向かって設定された走査線に沿って、重畳画像Tを構成する画素色が背景色と異なっているか否かを1画素ずつ順次比較する。そして、背景色と異なった色を呈する画素が検出された段階で、該画素を候補点RKとして抜き出すとともに、その走査線に沿った画素色の比較を終了し、隣接する走査線に沿って再び画素色の比較を行う。
【0071】
以下、候補点RKの抜き出しを、図6及び7を参照して詳細に説明する。図6は、重畳画像Tの模式的な平面図であり、図7のフローチャートの説明に供するための図面である。なお、図6においては、基板S、吸着孔16b及びエッジ16cの図示を省略している。
図7は、候補点RKの抜き出し処理を説明するための示すフローチャートである。
【0072】
図6に示すように、重畳画像Tの外縁としての4辺Sは、1〜i_maxの間の整数を取る添字iにより、それぞれ区別される。この添字iを「辺番号」と称する。重畳画像Tが矩形状である場合には辺番号iの最大値i_maxは4である。
【0073】
重畳画像Tの各辺Sには、辺Sに直交して延在する走査線Lijが設定される。各走査線Lijは、1〜ij_maxの間の整数を取る添字jにより、それぞれ区別される。この添字jを「走査線番号」と称する。
【0074】
各走査線Lijには、それぞれ画素Eijkが設定される。各画素Eijkは、1〜ijk_maxの間の整数を取る添字kにより、それぞれ区別される。この添字kを「画素番号」と称する。
【0075】
なお、これらの最大値i_max,ij_max及びijk_maxは、予め設定されていて、初期設定値記憶部52に記憶されている。
【0076】
次に、図7のフローチャートを参照して候補点RKの抜き出し処理の流れについて説明する。
【0077】
まず、候補点RKの抜き出しに当って、解析部36は、重畳画像Tの各辺Sから重畳画像Tの内側、つまり対向する辺に向かってライン走査を行う。各ライン走査時に、検査対象走査線Lijに沿って1画素ずつ画素色の判定を行う。そして、背景色と異なる色が検出された画素を候補点RKとする。候補点RKが検出されると、検査対象走査線Lijにおける走査を終了し、次の走査線Lij+1に沿って走査を行う。
【0078】
以下、フローチャートの説明を行う。
【0079】
ステップS1において、解析部36は各種変数の初期化を行う。すなわち、辺番号i、走査線番号j及び画素番号kをそれぞれ1に設定する。
【0080】
ステップS2において、解析部36は、画素番号kの画素色が、初期設定値記憶部52から読み出された背景色と等しいか否かを判断する。つまり、ステップS2においては、候補点RKの選別が行われる。判断の結果が“YES”である場合、ステップS3の処理を行う。判断の結果が“NO”である場合、ステップS5の処理を行う。
【0081】
ステップS3においては、画素番号kが、最大値ijk_maxであるかどうかが判断される。つまり、ステップS3においては、検査対象の画素Eijkが走査線Lijに属する最後の画素であるかどうかが判断される。判断の結果が“YES”である場合には、ステップS6の処理を行う。判断の結果が“NO”である場合には、ステップS4の処理を行う。
【0082】
ステップS4は、検査対象の画素Eijkが走査線Lijの最後の画素でない場合の処理である。この場合には、画素番号kのインクリメントを行う。つまり、検査対象画素をEijk+1に設定する。その後に、ステップS2以降の処理を繰り返す。
【0083】
ステップS2の判断結果が“NO”であった場合、つまり、画素Eijkの色が載置面色及び吸着孔色の双方と異なっており、検査対象の画素を候補点RKと判断した場合には、ステップS5の処理が行われる。ステップS5では、画素Eijkを基板輪郭候補点RKとして、RAM30中の基板輪郭候補点記憶部46に、座標と関連付けて記憶する。そして、ステップS6の処理を行う。
【0084】
ステップS6においては、走査線番号jが最大値ij_maxであるかどうかが判断される。つまり、ステップS6においては、検査対象となっている辺Sで、全ての走査線を走査し終わったかどうかが判断される。ステップS6の判断の結果が“YES”である場合には、ステップS9の処理を行う。判断の結果が“NO”である場合には、ステップS7の処理を行う。
【0085】
ステップS7は、検査対象となっている辺Sで走査すべき走査線が残っている場合の処理である。この場合には、走査線番号jのインクリメントを行い、検査対象を次の走査線Lij+1に設定する。そして、ステップS8の処理を行う。
【0086】
ステップS8においては、次に行われる検査に備えて、画素番号Eijkにおいて、画素番号kを1に初期化する。そして、ステップS2に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0087】
ステップS9においては、辺番号iが最大値i_maxであるかどうかが判断される。つまり、全ての辺Sを検査し終わったかどうかを判断する。ステップS9での判断の結果が“YES”である場合には、候補点RKの抜き出し処理が終了する。判断の結果が“NO”である場合には、ステップS10の処理を行う。
【0088】
ステップS10は、検査を終了していない辺Sが残っている場合の処理である。この場合には、辺番号iのインクリメントを行い、検査対象を次の辺Si+1に設定する。そして、ステップS11の処理を行う。
【0089】
ステップS11では、次に行われる検査に備えて、画素番号k及び走査線番号jをそれぞれ1に初期化する。そして、ステップS2に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0090】
以上の処理を経ることにより、候補点RKの画素、従って画像領域が、基板輪郭候補点記憶部46に座標と関連付けて記憶される。
【0091】
(2)候補点RKから輪郭点Rの抜き出し
この工程(2)においては、候補点RKの中から重畳画像Tと原画像Gとで同色の点を輪郭点Rとして抜き出す。
【0092】
図8は、工程(2)の処理が必要である理由を説明するための模式図である。図9は、候補点RKの中から輪郭点Rを抜き出す処理を説明するためのフローチャートである。
【0093】
図8に示すように、工程(1)の処理で抜き出された候補点RKの中には、基板Sの輪郭点Rに対応する点(例えば点A)と基板Sの輪郭点Rに対応しない点(例えば点B,C及びD)とが含まれている。基板Sの正確な輪郭点Rを抜き出すためには、候補点RKから点B,C及びDのような点を除く必要がある。
【0094】
この輪郭点Rの抜き出しにおいては、原画像Gと重畳画像Tとで、候補点RKの画素の色が等しいか等しくないかを利用した色判定が行われる。つまり、真の輪郭点R(例えば図8の点A)では、原画像Gと重畳画像Tとで候補点RKの画素色が等しくなる。それに対し、輪郭点Rでない場合(例えば図8の点B,C及びD)では、原画像Gと重畳画像Tとで候補点RKの画素色が異なる。
【0095】
図9に示すフローチャートを利用して、候補点RKから輪郭点Rを抜き出す処理の流れについて説明する。
【0096】
まず、ステップS21において、解析部36は、RAM30の原画像記憶部40から原画像Gを読み込み、作業用記憶部50に格納する。また、解析部36は、RAM30の重畳画像記憶部42から重畳画像Tを読み込み、作業用記憶部50に格納する。さらに、解析部36は、RAM30の基板輪郭候補点記憶部46から候補点RKを読み込み、作業用記憶部50に格納する。
【0097】
続いて、ステップS22において、解析部36は、作業用記憶部50に格納された原画像G、重畳画像T及び候補点RKを用いて、候補点RKから輪郭点Rの抜き出しを行う。具体的には、候補点RKの座標値に対応する点の色を原画像Gと重畳画像Tとで比較する。比較の結果、原画像Gと重畳画像Tとで色が等しい場合(YES)、つまり、候補点RKが輪郭点Rである場合には、ステップS23の処理を行う。逆に、原画像Gと重畳画像Tとで色が異なる場合(NO)つまり、候補点RKが輪郭点Rではない場合には、ステップS24の処理を行う。
【0098】
ステップS23では、原画像Gと重畳画像Tとで色が等しい候補点RKを輪郭点Rとして、RAM30中の基板輪郭点記憶部48に座標と関連付けて記憶する。
【0099】
ステップS24では、全ての候補点RKを検査したかどうかが判断される。全ての候補点RKを検査した場合(YES)には、輪郭点Rの抜き出し処理を終了する。それに対し、検査すべき候補点RKが残っている場合(NO)には、ステップS25の処理を行う。
【0100】
ステップS25では、候補点RKのインクリメントを行い、次に検査すべき候補点RKを設定して、ステップS22に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0101】
図9に示した処理を行うことで、輪郭点Rが基板輪郭点記憶部48に記憶される。
【0102】
最後に解析部36は、上述した処理に基づいて抜き出された輪郭点Rを結んで得られる領域を原画像Gから基板画像として抜き出す。
【0103】
以上説明したように、(1)及び(2)の処理を行うことにより、吸着孔16bを有する載置面16aと、この載置面16aに載置された基板Sとが同時に撮影された原画像Gから、正確に基板画像のみを抜き出すことができる。
【0104】
なお、この実施の形態では、候補点RKの抜き出しに当たり、走査線Lijに沿って重畳画像Tのライン走査を行い、候補点RK(重畳画像Tの画素色と背景色とが異なった点)が検出された段階で、その走査線Lijでの検査を終了し、次の走査線Lij+1に沿った検査を実行していた。つまり、解析部36は、重畳画像Tの全画像領域を走査する必要がなかった。しかし、候補点RKを抜き出すべき基板Sが凹凸を有する複雑な平面形状を有している場合には、重畳画像Tの全体を走査して、画素色と背景色とが異なる点を候補点RKとしてもよい。この場合、解析部36が検査すべき画素数は、この実施の形態で説明したよりも増加するものの、確実に候補点RKを抜き出すことができる。
【0105】
なお、載置面画像SGから背景画像Hを作成する際に、吸着孔16bのエッジ16cに対応するエッジ領域を太線化処理してもよい。つまり、画像処理によって、エッジ16cに対応する画像領域を膨張させた領域をエッジ領域としてもよい。このようにすることにより、たとえ原画像Gと背景画像Hとの重ね合わせ位置が若干ずれたとしても、太線化されたエッジ領域が原画像Gのエッジ16cを確実に覆うことができる。
【0106】
また、この実施の形態においては、載置面16a設けられた吸着孔16bが模様である場合について説明した。しかし、模様は、載置面16aに形成されていて、載置面16aの他の領域と異なる色を呈していればよく、吸着孔16bには限定されない。
【0107】
また、この発明の基板画像抽出装置10を構成要素として含む基板外観検査装置も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】基板画像抽出装置の機能ブロック図である。
【図2】搬送ステージの載置面の平面図である。
【図3】原画像の平面図である。
【図4】重畳画像の平面図である。
【図5】(A)は、載置面画像の平面図である。(B)は、テンポラリ画像の平面図である。(C)は、背景画像の平面図である。
【図6】重畳画像の模式的な平面図であり、図7のフローチャートの説明に供するための図面である。
【図7】候補点の抜き出しアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図8】候補点から輪郭点を抜き出す処理の説明に供する重畳画像の平面図である。
【図9】候補点の中から輪郭点を抜き出す処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
10 基板画像抽出装置
12 撮影部
14 画像処理部
16 搬送ステージ
16a 載置面
16b 吸着孔
16c エッジ
18 MPU
20 入力部
22 出力部
24 外部記憶部
26 CPU
28 ROM
30 RAM
32 制御手段
33 画像記憶部
34 重畳部
35 記憶部
36 解析部
38 背景画像生成部
40 原画像記憶部
42 重畳画像記憶部
44 背景画像記憶部
46 基板輪郭候補点記憶部
48 基板輪郭点記憶部
50 作業用記憶部
52 初期設定値記憶部
S 基板
G 原画像
H 背景画像
T 重畳画像
SG 載置面画像
TG テンポラリ画像
RK 基板輪郭候補点
R 基板輪郭点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画線により区画された模様を有する載置面とともに、該載置面上に配置された基板が撮影された原画像から、前記基板に対応する画像部分である基板画像を抽出する基板画像抽出装置であって、
前記基板の非存在下で撮影された前記載置面のみの画像であって、前記区画線の色を該載置面の色に変換し、かつ、該区画線以外の領域の色を透明化した当該画像を背景画像として生成する背景画像生成部と、
前記原画像と前記背景画像とを記憶する画像記憶部と、
前記背景画像と前記原画像とを重ね合わせて重畳画像を生成する重畳部と、
該重畳画像において、前記載置面及び前記模様の双方と色が異なる領域の外縁を定める点を基板輪郭候補点として抜き出し、さらに、該基板輪郭候補点の中から前記重畳画像と前記読み出された原画像とで同色の点を基板輪郭点として抜き出して記憶部に出力する解析部と
を有する基板画像抽出装置。
【請求項2】
前記背景画像生成部は、前記区画線の太線化処理を行い、及び、太線化処理された当該区画線の色を前記載置面の色に変換することを特徴とする請求項1に記載の基板画像抽出装置。
【請求項3】
前記模様は載置面に開口した吸着孔に由来し、及び前記区画線は該吸着孔のエッジに由来していることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板画像抽出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板画像抽出装置を備えた基板外観検査装置。
【請求項5】
区画線により区画された模様を有する載置面とともに、該載置面上に配置された基板が撮影された原画像から、前記基板に対応する画像部分である基板画像を抽出する基板画像抽出方法であって、
前記基板の非存在下で撮影された前記載置面のみの画像であって、前記区画線の色を該載置面の色に変換し、かつ該区画線以外の領域の色を透明化した当該画像を背景画像として生成する工程と、
前記原画像と前記背景画像とを画像記憶部に記憶する工程と、
該画像記憶部から前記原画像と前記背景画像とを読み出してきて、前記読み出された背景画像と前記原画像とを重ね合わせて重畳画像を生成する工程と、
該重畳画像において、前記載置面及び前記模様の双方と色が異なる領域の外縁を定める点を基板輪郭候補点として抜き出し、さらに、該基板輪郭候補点の中から前記重畳画像と前記読み出された原画像とで色が異なる点を除いた点を基板輪郭点として抜き出して記憶部に出力する工程と
を有する基板画像抽出方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−292348(P2008−292348A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139001(P2007−139001)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】